説明

電気ポット

【課題】適切な沸騰時の圧抜き機能を有し、かつ保温性が高い電気ポットを提供する。
【解決手段】液体を収容する内容器および該内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆蓋する蓋体と、上記内容器の内部に連通する蒸気入口と上記容器本体の外部に連通する蒸気出口との間に配設された圧抜き機能を有する蒸気通路とからなる電気ポットであって、上記蒸気通路は、上記内容器内に連通する蓋体側通路と外部に連通する容器本体側通路とを閉蓋時において連通せしめるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電気ポットに関し、さらに詳しくは保温性の高い圧抜き通路を備えた電気ポットの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気ポットは、一般に液体(水)を入れる内容器および該内容器内の液体(水)を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体上部の開口を覆蓋する蓋体とからなっており、該蓋体の上面(上板部)には、加熱沸騰時等に外部(室内空間)に蒸気を排出する蒸気排出口が設けられている。
【0003】
該蒸気排出口は、蓋体の内面側(内容器開口部側)における蒸気導入口部分から内容器内の蒸気を導入し、転倒止水弁を介した蓋体厚さ方向の極めて距離の短かい蒸気排出通路を通して、蓋体の上面側に形成したスリット構造の蒸気排出口から室内空間上方に向けて、同蒸気を蒸気のまま放出させるようになっている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
したがって上記蒸気排出通路は、加熱沸騰時等における内容器内の圧力を外部に逃がす圧抜き通路として機能し、それによって加熱沸騰時における内容器内の圧力が低下し、内容器内の液体(水)は、安全かつスムーズに沸騰する。
【0005】
なお、特許文献1記載の従来例の場合、上記蒸気排出通路に加えて、容器本体の転倒方向に応じて内容器内の水を溜め込む水溜り部を形成するとともに、上記転倒止水弁の弁室の弁口を迂回して容器本体内の内圧を蒸気通路の上記水溜り部に逃がす迂回通気路を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−95835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、電気ポットでは、沸騰時における内容器内の内圧上昇による圧力を逃がすための圧抜き通路が必ず必要となる。そして、一般に同圧抜き通路は、上述のように沸騰時の蒸気排出通路と兼用されている。
【0008】
しかし、同通路は、常時外部に開放されている。
【0009】
そのため、保温時における内容器内の熱が同通路を介して外部に放熱され、保温性能が低下するとともに省エネ性能が害される問題がある。
【0010】
この問題は、上記蒸気排出通路(圧抜き通路)の蒸気入口側から蒸気出口側までの距離が短かく、迂回度が小さい通路構造の場合ほど顕著となる。
【0011】
また、上記特許文献1のように、本来の蒸気排出通路とは別に周囲に放射状に迂回通路を形成した場合には、より放熱されやすくなるので、やはり上述の問題が顕著となる。
【0012】
ここで、上記蒸気排出通路における放熱メカニズムを分析して見ると、保温時に、蒸気排出通路を通して温度の高い空気が入口側から出口側に上昇し、外部に放出されてしまうことによるが、この時、高温の空気の上昇によって上昇対流が生じ、同上昇対流によって、さらに対流が促進されて内容器内の高温の熱が外部にポンピングされてしまうことが原因となっている。
【0013】
したがって、上記従来例のように、蓋体の上面側に蒸気口を設け、その下方側に蒸気入口を設けた上下方向の通路構造の場合、上記対流が生じやすく、放熱量も大きくなり、保温性能が大きく低下する。
【0014】
本願発明は、このような問題を解決するためになされたもので、上記のように内容器の内側と外側間を連通させる圧抜き機能をもった蒸気通路を、蓋体側と容器本体側とを連ぬく通路距離の長い1本の通路に形成するか、または同通路の途中に下向きの部分を設けることによって、可及的に外部への放熱量を低減して、保温性能を向上させた電気ポットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1) 第1の課題解決手段
本願発明では、上記課題を解決するための第1の課題解決手段として、液体を収容する内容器および該内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆蓋する蓋体と、上記内容器の内部に連通する蒸気入口と外部に連通する蒸気出口との間に配設された圧抜き機能を有する蒸気通路とからなる電気ポットであって、上記蒸気通路は、上記内容器内に連通する蓋体側通路と上記容器本体の外部に連通する容器本体側通路とを閉蓋時において連通せしめるようにしてなることを特徴としている。
【0016】
このような構成によると、蓋体側通路は、それ自体として外部に開放させる必要がなくなり、その下面側又は側面側から容器本体側の通路の一端に連通せしめれば足りるようになるので、蓋体の上面側に開放させない通路構造を容易に実現することができるようになる。
【0017】
しかも、通路距離を十分に長く取ることができ、同通路の途中で外部への放熱を遮断することができるので、保温性能が向上する。
【0018】
また、同蓋体側の通路を蒸気冷却通路として、排出される蒸気を効果的に冷却し、凝縮した結露水を容易に内容器内に回収することができる。
【0019】
他方、容器本体側の通路他端は、本体側の構造から言って容易に外部に開放した構造とすることができるし、そのレイアウトの自由度も高くなり、実現が容易である。
【0020】
そして、この場合において、例えば上記蓋体側、容器本体側各通路の一部を下向きのものとすれば、容易に対流による放熱効果をも抑制することができ、さらに保温性能を向上させることができる。
【0021】
(2) 第2の課題解決手段
本願発明では、上記課題を解決するための第2の課題解決手段として、液体を収容する内容器および該内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆蓋する蓋体と、上記内容器の内部に連通する蒸気入口と外部に連通する蒸気出口との間に配設された圧抜き機能を有する蒸気通路とからなる電気ポットであって、上記蒸気通路は、上記蒸気入口側から蒸気出口までの間の所望の位置に下向きの通路が形成されていることを特徴としている。
【0022】
このような構成によると、対流作用を伴いながら上記蒸気通路内を上記蒸気入口側から蒸気出口側にかけて流れる高温の空気が、上記下向き通路部分で対流作用を抑制されるようになり、下方には流れにくくなる。
【0023】
この結果、同部分で蒸気出口側への熱の移動を阻止され、保温性能が向上する。
【0024】
下向きの通路は、蒸気通路の途中でも、蒸気出口そのものを下方、または斜め下方に向けて形成したものでもよい。
【0025】
(3) 第3の課題解決手段
本願発明では、上記課題を解決するための第3の課題解決手段として、液体を収容する内容器および該内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆蓋する蓋体と、該蓋体内にあって、上記内容器の内部に連通する蒸気入口と外部に連通する蒸気出口との間に配設された圧抜き機能を有する蒸気通路とからなる電気ポットであって、上記蒸気通路は、上記蒸気入口側から蒸気出口までの間の所望の位置に下向きの通路が形成されていることを特徴としている。
【0026】
このような構成によると、対流作用を伴いながら上記蒸気通路内を上記蒸気入口側から蒸気出口側にかけて流れる高温の空気が、上記下向き通路部分で対流作用を抑制されるようになり、下方には流れにくくなる。
【0027】
この結果、同部分で蒸気出口側への熱の移動を阻止され、保温性能が向上する。
【0028】
下向きの通路は、蒸気通路の途中でも、蒸気出口そのものを下方、または斜め下方に向けて形成したものでもよい。
【0029】
(4) 第4の課題解決手段
本願発明では、上記課題を解決するための第4の課題解決手段として、上記第1,第2又は第3の課題解決手段の構成において、上記蒸気通路の外部への開放部には、結露水の貯留部を設けたことを特徴としている。
【0030】
このような構成によると、圧抜き通路最終段において、排出される空気中に結露水が混入している場合にも、それを確実に捕獲して外に出さないようにすることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上の結果、本願発明によると、沸騰時の適切かつ効果的な圧抜きを図りながら、しかも有効に保温性能を向上させた高性能の電気ポットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明の実施の形態にかかる電気ポットの蓋閉状態における外部構成を示す斜視図である。
【図2】本願発明の実施の形態にかかる電気ポットの蓋開状態における内外構成を示す斜視図である。
【図3】本願発明の実施の形態にかかる電気ポットの蓋閉状態における上下方向の断面図である。
【図4】本願発明の実施の形態にかかる電気ポットの蓋体部分の拡大断面図(図1A−A切断部、図6のA′−A′切断部)である。
【図5】本願発明の実施の形態にかかる電気ポットにおける蓋体部分の斜視図である。
【図6】本願発明の実施の形態にかかる電気ポットにおける蓋体部分(図5)の上板を取り外した状態を示す斜視図である。
【図7】本願発明の実施の形態にかかる電気ポットにおける蓋体に取り付けられる蒸気回収ユニットおよび圧抜き通路ユニット部分の構成を示す斜視図である。
【図8】図7に示す圧抜き通路ユニット部分の上下分解斜視図である。
【図9】図7に示す蒸気回収ユニット部分の斜視図である。
【図10】図9に示す蒸気回収ユニットの分解斜視図である。
【図11】本願発明の実施の形態にかかる電気ポットの蒸気回収ユニットにおける蒸気冷却通路内の蒸気の流れを示す説明図である。
【図12】図3に示すX部拡大図の蒸気経路における内容器側から蒸気センサ部までの蒸気の流れおよび結露水の戻り状態を示す説明図である。
【図13】本願発明の実施の形態に係る電気ポットの蓋体部分中央の断面図である。
【図14】同図13の蓋体を下面側内カバー部材を取り除いて見た時の下面図である。
【図15】図13、図14の蓋体構造を前提として構成した空炊きおよび沸騰検知制御の内容を示すフローチャートである。
【図16】上記実施の形態の変形例1に係る電気ポットの蓋および下口部材部分の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図1〜図15を参照して、本願発明の実施の形態に係る蒸気レス電気ポットの構成および作用について、詳細に説明する。
【0034】
この電気ポットは、湯沸かしおよび保温の両機能を備えており、例えば図1〜図4に示すように、液体(水)を収容する内容器3を備えた容器本体1と、該容器本体1の上部側開口部を開閉する蓋体2と、上記内容器3を湯沸かし時および保温時において加熱する加熱手段である電気ヒータ4と、上記内容器3内のお湯を外部へ給湯注出するための給湯通路5と、AC電源が接続されている状態において上記給湯通路5を介して上記内容器3内のお湯を外部へ注出する電動式の給湯ポンプ6と、該給湯ポンプ6を駆動操作する給湯操作レバー4とを備えて構成されている。符号5aは上記給湯通路5の出口(即ち、吐出口)、5bは上記給湯通路5において上記容器本体1の前部に位置する直管部に設けられた透明な計量管である。
【0035】
上記容器本体1は、外側面部を構成する合成樹脂製の筒状(本実施の形態の場合、四角筒状)の外ケース7と、内側面部を構成する上記内容器3と、上記外ケース7と上記内容器3とを上部側で一体的に結合固定するとともに、上記蓋体2が閉蓋時に装着される合成樹脂製の環状の肩部材8と、底面部を構成する合成樹脂製の皿状の底部材9とからなっている。符号10は上記外ケース7の前部において上記水量管5bが見える位置に設けられた透明な水量覗き窓である。
【0036】
上記内容器3は、ステンレス製の有底円筒形状の内筒3Aと、同じくステンレス製で底部のない円筒形状の外筒3Bとを、上端側部分および下端側部分で相互に接合し、それら内筒3Aと外筒3Bとの間に真空断熱空間を設けた保温性能の高い真空二重壁構造の断熱構造体からなっており、その底部には、外周側における内筒3Aと外筒3Bとの接合部までを除いて、上記内筒3Aの底面部のみにより構成された1枚板部3aが形成されている。
【0037】
該一枚板部3aは、若干上方に高く突出して形成されていて、その下面側には、上記電気ヒータ4(例えば、雲母板にワット数の異なる2組の発熱体を保持させたマイカヒータ)が取り付けられている。
【0038】
上記蓋体2は、合成樹脂製の上板11(外カバー)と、該上板11に対して外周縁同士が相互に結合された合成樹脂製の下板(内カバー)12とからなっており、上記肩部材8の後端部8a(図3参照)に対してヒンジピン13およびヒンジロック部材14を介して上下方向に開閉自在且つ着脱自在に支持されている。
【0039】
また、上記蓋体2内には、上記内容器3内と連通する蒸気入口16と上記蓋体2の上面以外の位置(例えば、本実施の形態の場合には右前端部下面側)に開口する蒸気出口17(図4参照)とを結ぶジグザグに蛇行した蒸気冷却通路15が形成されている。該蒸気冷却通路15は、以下に述べるように平面的に上記蓋体2内に広く配設された蒸気回収ユニット18内に形成されている。そして、同蒸気冷却通路15内を流れる蒸気Vの冷却による凝縮効果を促進するために、上記蒸気回収ユニット18と蓋体2の上板11との間には、放熱用および断熱用の空間部32が設けられている一方、上記蒸気回収ユニット18と蓋体2の下板12との間には、下方側内容器3内からの熱の伝達を阻止して蒸気回収ユニット18が加温されないようにするとともに内容器3内で湯の保温性能を維持する発泡スチロールなどの断熱材よりなる断熱部材28が設けられている。
【0040】
なお、必要に応じて、上記蒸気回収ユニット18の上面(即ち、後述する上部構成部材18bの上面)に放熱効果の高いアルミ箔などを貼設しておけば、上記蒸気冷却通路15内を流れる蒸気Vから上記空間部32の空気に対する放熱効果がより一層高くなり、凝縮効果も向上する。
【0041】
上記蒸気回収ユニット18は、例えば図6〜図11に示すように、合成樹脂製の下部構成部材18aと同じく合成樹脂製の上部構成部材18bとを一体的に結合して構成されており、その半円形部後端(即ち、蓋体2の後端側)に位置する矩形部分19と、該矩形部分19の前方側に位置する半円形状の拡大部分20と、該拡大部分20の他端(例えば、図11の平面視状態における左側下端)から蓋体2の前方側(紙面下方側)に所定の長さ細長く延出する延出部分21とからなっている。
【0042】
そして、上述した蒸気入口16部分は、上記拡大部分20の後端部中央の下面側から下方に向けて筒状に設けられているとともに、上記蒸気出口17は、上記延出部分21の先端部下面側に下方に向けて筒状に設けられている。
【0043】
すなわち、この蒸気出口17は、図4、図7、図9、図10に示すように、下方に向けて所定の長さ筒状に延び、その先端側中心部に3本の扁平なリブを介して設けられた凸部17aが、上述した肩部材8の肩部前端側コーナ部8b部分に設けられている円筒状の止水弁SV部分の上部に嵌入されるようになっている。
【0044】
そして、同嵌入状態では、当該凸部17aが止水弁SVの断面T型の弁体aを上方側閉弁方向への付勢スプリングSの付勢力に抗して押し下げ、同円筒状の止水弁SVの蒸気通路40を上記蒸気冷却通路15(第6冷却通路15f)の蒸気出口17側に開放する。
【0045】
一方、止水弁SV側の蒸気通路40の出口部40aには、例えばラバー製の可撓性のある圧抜きパイプ41の一端41aが連結されており、該圧抜きパイプ41の他端は上記肩部材8の前部から所定寸法前方にフラットに延びた下口部材42の中央部寄り下方位置に延びて配設されている。そして、同延設端部には、下方に向けて開口し、上記下口部材42の下面側に組み付けられている下口カバー部材43に設けられた圧抜き用の空気出口44に対して連通せしめられている。
【0046】
この空気出口44は、図示のように左右方向に長い楕円形状の筒体よりなっており、その外周囲には、水平方向に所定の間隔を保って所定の高さ上方に立設された方形のリブ45が立設されており、楕円形状の筒体よりなる空気出口44の周囲に結露水を貯留するための結露水貯留ポケット45aを形成している。
【0047】
そして、上記圧抜きパイプ41の延設端部41bは、同結露水貯留ポケット45aを覆う形で嵌合する同じく方形の嵌合部に形成されている。
【0048】
なお、本実施の形態の場合、上記蒸気出口17は、蓋体2の下面側に向けて開口させ、その下部に止水弁SVを対応させるようにしたが、この蒸気出口17は、例えば蓋体2の外部であって、上面部以外の位置であれば、いずれの位置(例えば側面部)に開口するように構成してもよい。
【0049】
上記蒸気冷却通路15は、例えば図10、図11、図12に示すように、下方から上方に向けて延びる上記蒸気入口16から導入された蒸気Sを一旦後方側(即ち、上記矩形部分19の後端部側)に略ストレートに導く左側第1冷却通路15aと、該第1冷却通路15aの後端側から右側にUターンして矩形部分を前方側拡大部分20の後端部側まで略ストレートに延びた後、周方向に沿って前方に延びる第2冷却通路15bと、該第2冷却通路15bに続いて上記拡大部分20の前後方向略中間位置において左右両側に延びる第3冷却通路15cと、該第3冷却通路15cに続いて上記拡大部分20の左右両側に延びる第4冷却通路15dと、該第4冷却通路15dに続いて上記拡大部分20の前端部(最大径部分)において左右両端間に延びる第5冷却通路15eと、該第5冷却通路15eに続いて上記突出部分21の前端部まで延びて上記蒸気出口17部分の上部に達する第6冷却通路15fとからなっている。
【0050】
つまり、該蒸気冷却通路15は、該蒸気冷却通路15部分を流れる蒸気Vが通路内および外周囲(特に上面側)の空気層と効率良く熱交換(放熱)することによって凝縮、結露し易いように、蓋体2の全体から見て、その後端側にある蒸気入口16側から前端側にある蒸気出口17側にかけて、それらの間の最短距離ではなく、当該蓋体2の左右両端側間をジグザグ形状に時間をかけて複数回迂回(蛇行)する可及的に距離の長い蒸気冷却通路に構成されている。
【0051】
このようにすると、上記蓋体2の後端部側から前端部側にかけてそれらの間を左右両端側間に亘って複数回蛇行することによって蓋体2内に広く配設した第1〜第6冷却通路15a〜15fが、蒸気入口16から導入された蒸気Vの効果的な冷却空間として機能し、導入された蒸気Vが上記第1冷却通路15aから第6冷却通路15fに到る間で通路内外の空気と効果的に熱交換(放熱)されて効率良く凝縮し、ほぼ全ての蒸気が液滴化されて結露水Wとなる。
【0052】
そして、該液滴化された結露水Wは、後述のように蓋体2の連通穴23側方向に下降傾斜した同第1〜第5冷却通路15a〜15eを介して逆方向に還流され、第2冷却通路15bからユーターン部15Uを経て第1冷却通路15aに戻り、続く蒸気入口16側から下板12の蒸気導入口12a、下板12と内カバー部材26との間の蒸気周回通路122、内カバー部材26の結露水戻し口26bを介して内容器3内に回収される。
【0053】
また、上記のような冷却通路15a〜15fの場合、電気ポットが左右のどちら側に転倒したとしても、上記左右ジグザグ形状の冷却通路のいずれか一方が上側となるところから、内容器3内のお湯が漏れ出ることがなくなる。
【0054】
そして、この場合、上記蓋体2後端側の上記第1冷却通路15aと第2冷却通路15bとの連通部(下板12の後端側縦壁部)、即ち、2つの通路のUターン部15u部分には、蒸気Vの温度を検出すべく肩部材8の側部内周面側に取り付けられているピン状の蒸気センサ22を臨ませるための連通穴(蒸気Vおよび結露水Wの出入口)23が形成されており、該連通穴23の開口周縁部には、上記蓋体2の閉蓋時において上記連通穴23の外周縁部分と肩部材8側の蒸気センサ22取付部外周面との間をシールするためのシールパッキン24が設けられている。
【0055】
そして、それにより上記第1冷却通路15aと上記第2冷却通路15bとは、上記蓋体2の閉蓋時においてのみ蒸気センサ22を介して相互にU状に連通されるようになっており、蓋体2の開蓋時において、上記連通穴23を介して第1冷却通路15aからの蒸気Vが第2冷却通路15bへ、また第6,第5,第4,第3,第2の冷却通路15f,15e,15d,15c,15bからの上述した結露水Wが蒸気入口16等を介して上述のように内容器3内へ還流される。
【0056】
なお、上記蓋体2の下板12の縦壁部分に形成された上記連通穴23の内側には、上記蒸気回収ユニット18の後端側矩形部分19の左右開口部19a(第1冷却通路15aの蒸気出口部),19b(第2冷却通路15bの蒸気導入口)が当接せしめられており、同開口部19a,19bの外周囲を上記パッキン24の内側リップ部分でシールすることにより、上記第1,第2の冷却通路15a,15bを相互に連通させている。
【0057】
一方、上記蒸気回収ユニット18の上記第1〜第6冷却通路15a〜15fは、例えば図9〜図11に示すように、当該蒸気回収ユニット18の上述した下部構成部材18aの上面に一体に設けられた成型段部25aおよびリブ(隔壁)25bによって区画形成されている。
【0058】
なお、上記蒸気冷却通路15の構成は、本実施の形態におけるように平面方向左右にジグザグに蛇行する形状の他、平面方向に螺旋状に迂回する通路あるいは蓋体2の外周を通る略円形の形状など種々の形状に変形することができる。
【0059】
そして、この実施の形態の場合、上記第3冷却通路15cには、上記第2冷却通路15bの出口側に位置して通路断面積が広がる通路拡大部15c1と、該通路拡大部15c1の右端側に位置して電気ポットの前方傾斜時あるいは前方転倒時に結露水Wをトラップするトラップ部15c2とが形成され、上記第4冷却通路15dには、上記第3冷却通路15cの出口側に位置して通路断面積が広がる通路拡大部15d1と、該通路拡大部15d1の左端側に位置して電気ポットの前方傾斜時あるいは前方転倒時に結露水Wをトラップするトラップ部15d2とが形成され、上記第5冷却通路15eには、上記第4冷却通路15dの出口側に位置して通路断面積が広がる通路拡大部15e1と、該通路拡大部15e1の右端側に位置して電気ポットの前方傾斜時あるいは前方転倒時に結露水Wをトラップするトラップ部15e2とが形成され、上記第6冷却通路15fには、上記第5冷却通路15eの出口側に位置して電気ポットの前方傾斜時あるいは前方転倒時に結露水Wをトラップするトラップ部15f2と、上記第6冷却通路15fの出口側に位置して電気ポットの前方傾斜時あるいは前方転倒時に結露水Wをトラップするトラップ部15f3とが形成されている。
【0060】
なお、本実施の形態においては、上記通路拡大部15c1,15d1,15e1は、第3ないし第5冷却通路15c〜15eと同一平面上において通路が拡大する構成となっているが、要は通路断面積が広がればよいのであって、上下方向(即ち、深さ方向)において通路断面積が広がるように構成することもできる。
【0061】
そして、上記蒸気回収ユニット18は、上記第6冷却通路15f、第1冷却通路15aを除く第2〜第5冷却通路15b〜15e部分が上記蓋体2の閉蓋時において、上記蓋体2の連通穴23(矩形部分19の開口部19a,19b)に向かって所定の傾斜角で下り傾斜となるように取り付けられている。
【0062】
なお、一方第1冷却通路15aは、同状態において、それとは逆方向に連通穴23部分から蒸気入口16方向に部分的に下降傾斜するように形成されている。
【0063】
このようにすると、第1〜第6冷却通路15a〜15fを流れる蒸気Vが凝縮して生じた結露水Wが、先ず蓋体2の連通穴23部分(ユーターン部15U)を介して第1冷却通路15aへ、そして該第1冷却通路15aから蒸気入口16、下板12の蒸気導入口12a、内カバー部材26の蒸気戻し口26b,26b・・を経て上記内容器3内に還流され易くなる。
【0064】
また、同第2〜第5冷却通路15b〜15e部分を以上のように傾斜させると、例えば図3,図4から明らかなように、上記蓋体2の上板11と当該蒸気回収ユニット18の第1〜第5冷却通路15a〜15e部分との間に、通路上流側(蒸気回収ユニット18後端側)ほど上下方向の間隔が大きくなる有効な放熱および断熱用の空間部32が形成されることになる。
【0065】
この空間部32は、まず上記上流側ほど温度が高く、凝縮度が低い第1,第2,第3の冷却通路15a,15b,15c内を流れる蒸気Vに対して、より放熱熱交換能力の大きな効果的な冷却空気層として機能とするとともに、蓋体2の上板11部分に対して高温蒸気の熱が伝わらないようにする有効な断熱空間部として機能する。
【0066】
すなわち、上記第1〜第6冷却通路15a〜15f内を流れる蒸気は、上流側ほど温度が高く、凝縮度も低い。
【0067】
したがって、同部分では十分な温度差のある十分な量の空気(蓋体2の隙間から入った外気を含む)と熱交換させることによって可能な限り凝縮・液滴化するとともに、人が触れる上板11部分の温度が高くならないように可及的有効な断熱を図る。
【0068】
一方、下流側に行くと冷却通路内を流れる蒸気の温度も下がり、凝縮も進んでいるので、必ずしも多くの空気量を必要とせず、或る程度の量の空気との有効な熱交換によって凝縮作用を促進するとともに、念のために上板11との断熱をも図る。
【0069】
これらの構成によると、上記第5冷却通路15e部分までの間で殆どの蒸気Vが凝縮回収されてしまい、通路部分の温度も略安全な低い温度に低下する。
【0070】
このため、上記最終段の第6冷却通路15f部分に到ると、最早殆ど蒸気は消失しており、蒸気出口17から止水弁SV側に出るのは略内圧上昇に伴う空気圧(図10中の破線矢印参照)のみとなる。
【0071】
したがって、同部分における上板11との間の隙間は、図示のような小さなものでも十分であり、特に断熱空間という程のものを設置しなくても足りる。
【0072】
そして、最終的に蒸気出口17から止水弁SVを介して圧抜きパイプ41内に逃がされた空気圧は、同圧抜きパイプ41終端の上述した空気出口44部分に供給されて下口カバー部材43の下方に排出される。
【0073】
この場合、同排出空気中に少しでも凝縮後の水滴が含まれているような場合(場合によっては、圧抜き通路内で結露する可能性もある)、同水滴は上述した結露水貯留ポケット45a内に貯留される。ここで貯留された結露水は、給湯時の降圧により外気が吸入されるので、同空気により速やかに蒸発してしまう。
【0074】
なお、符号50,50・・は、蒸気回収ユニット18の上面側に立設された上板11用の支柱である。
【0075】
また、上記のように蓋体2における下板12の下面側には、上記蒸気入口16への蒸気導入口26a,26a・・と結露水戻し口26b,26b・・を備えた金属製の内カバー部材26が固定されており、該内カバー部材26の外周縁(全周)には、上記蓋体2の閉蓋時において上記内容器3の上端側開口部に圧接される耐熱ラバー製のシールパッキン27が設けられている。
【0076】
そして、蒸気導入口26a,26a・・は、円錐台形状に上方に凸となり、その外周囲の底部寄りも高くなった凸部260部分の天面部分に形成されている一方、結露水戻し口26b,26b・・は、それよりも低い底部部分に形成されている。
【0077】
したがって、結露水Wが戻されている時にも蒸気導入口26a,26a・・は、常に開放されており、スムーズな蒸気の導入が可能となる。
【0078】
すなわち、上記蓋体2の下板12部分は、例えば図3、図13、図14に示すように、全体が断面ハット形に成型され、その本体部分が内容器3の開口径に対応した所定の深さの筒体に形成されている。
【0079】
そして、同筒体部の下面12b部分には、その中心部O′を筒体部下面12bの中心部Oよりも所定寸法aだけ後端側に偏位させて蒸気導入空間Aを形成するための所定の径の上方側に凹んだ円形の凹溝部121が形成されている。
【0080】
この凹溝部121内には、外周壁121aとの間に所定の間隔Wを保って、前端側の一部(123)が切り欠かれた下方側から見た時の平面形状がC字形状の隔壁121bが下方に向けて同心円状に立設されている。
【0081】
そして、その後端側の上記外周壁121aと隔壁121bとの間に位置して、上述の下板側蒸気導入口12aが形成されている。この下板12の蒸気導入口12aは、上下方向に所定の長さ延びる筒体よりなり、その上端側を上記蒸気回収ユニット18の筒状の蒸気入口16の下端に連接されている一方、下端側は周壁部の両側面側が周方向に向けて開口され、上記凹溝部121の外周壁121aと隔壁121bとの間に形成された幅Wの左右両方向への蒸気周回通路122に連通されている。
【0082】
また、外周壁121a前端部の隔壁121b前端側切欠部123に対向する内周面部分には、上記蒸気周回通路122側に突出する蒸気分流凸部120が設けられている。
【0083】
また、上記外周壁121a部分は、内カバー部材26との間で、上記凹溝部121内の蒸気導入空間Aおよび蒸気周回通路122部分をシールするリング状のシールパッキン124が設けられている。
【0084】
そして、その外周縁部には、同パッキン124を挟んで内カバー部材26を取り付けるための螺合溝を備えたボス部125,125,125が設けられている。
【0085】
一方、内カバー部材26は上述のように、下板12の筒体部下面12b側の上記螺合ボス部125,125,125に、ビスネジ126,126,126を介して取り付けられるが、その後端寄り部分には、上記下板12の凹溝部121の円形の隔壁121b内に対応する形で円錐台形状に上方に向けて立設した上述の凸部260が設けられており、同凸部260の上面に位置して、例えば図3、図13、図14に示すように、比較的大きな3つの蒸気導入口26a,26a,26aが設けられている(前方側に1つ、後方側に2つ)。
【0086】
また、同内カバー部材26の上記下板12側蒸気周回通路122の前部に対応する底部部分には(蒸気導入口12aから最も遠く離れた部分には)、上述のように蒸気周回通路122側の結露水Wを内容器3内に戻すための結露水戻し口26b,26b,26bが設けられている。
【0087】
本実施形態のような、沸騰開始時の蒸気Vを蒸気センサ22により速やかに検知して可及的に早く電気ヒータ4をOFFにし、効果的な蒸気レス沸騰を実現する電気ポットにおいて、沸騰時に発生する蒸気Vをより早く検知し、蒸気発生量を出来る限り少なく抑えるためには、上記蓋体2内の蒸気Vが蒸気センサ22部分に到達するまでの通路経路は可能な限り短かい方が良い。
【0088】
一方、蓋体2を構成する内カバー部材26と下板12との間には、蒸気導入空間Aや蒸気周回通路122があり、上述のように蒸気漏れを防ぐシール用のパッキン124を入れる必要がある。このパッキン124およびパッキン124を取り付ける外周壁121aの径は大きすぎるとシール力が弱くなり、コストアップにもなるため、出来る限り小さい方が良い。
【0089】
一方、蓋体2内で蒸気Vを結露させ、蒸気レス沸騰を実現する電気ポットにおいては、上記蓋体2の内部に生じた結露水Wを、効率良く内容器3内に戻す必要がある。このため、上記のように内カバー部材26の最下面となる底部位置に結露水の戻し口26b,26b,26bが設けられる。
【0090】
これらに関し、本実施形態の場合、例えば図13、図14に示すように、内カバー部材26の蒸気が通過する3つの蒸気導入口26a,26a,26aのうち少なくとも1つは内カバー部材26自体の下面部中心Oよりも蒸気センサ22寄り、すなわち隔壁121bの切欠部123側に設ける。
【0091】
これにより、可能な限り蒸気検知時間を短かくすることができる。また、蒸気が通過する蒸気導入口26a,26a,26aはパッキン124および内周隔121bの内側に設ける必要があるため、これによりパッキン124および外周壁121aの径も小さくてすむ。
【0092】
そして、内カバー部材26の結露水の戻し口26b,26b,26bの位置は上記の蒸気が通過する蒸気導入口26a,26a,26aよりも蒸気センサ22から遠い側前端側寄りとする。これにより容器本体1が転倒した時にも、お湯が流入する経路を長くでき、より安全な構造となる。
【0093】
ところで、本実施の形態の電気ポットの場合にも、連続再沸騰制御が可能であり、そのような連続再沸騰操作を行うと、上記蒸気回収ユニット18内に蒸気が充満した状態となり、必ずしも有効な蒸気レス機能を満足できないケースが生じる。
【0094】
また、お湯が高温である時(例えば沸騰が近い湯沸し時や98℃の高温での保温時など)に蓋体2を開閉すると、蓋体2を閉めた時点で高温の蒸気Vが蒸気導入口26a、蒸気導入空間A、蒸気周回通路122、蒸気導入口12a、蒸気入口16から蒸気冷却通路15の内部へと周り、蒸気センサ22の温度も一気に上がるため、蒸気センサ22での温度制御が不能となることがある。
【0095】
したがって、そのような問題を避け、お湯の温度は確実に沸騰させつつ、蒸気を最小限に抑える構成が必要となる。
【0096】
そこで、本実施の形態では、次のような構成を採用している。
【0097】
(1) 蒸気センサ22は、沸騰検知温度(絶対温度もしくは勾配による相対温度どちらでも可)Taによるヒーター加熱停止温度とは別に、それよりも所定温度(2〜3℃程度)低い第2のヒーター加熱停止温度Tbを持たせるようにする。
【0098】
(2) 内カバー部材26の凸部260上面の蒸気導入口26a,26a,26aから蒸気検出センサ22までの経路には、断面積が少なくとも複数回小→大となる圧力低減用の通路構造を形成する。
【0099】
(3) 電気ヒーター4による加熱開始時(湯沸し時)、蒸気センサ22の検知温度Tが、上記第2の電気ヒータ4の加熱停止温度Tbよりも高い場合には、沸騰検知に優先して電気ヒータ4の加熱を停止する。
【0100】
(4) 電気ヒータの加熱開始時、蒸気センサ22の検知温度Tが沸騰検知温度Taより低い上記第2の電気ヒータの加熱停止温度Tbよりも低い場合には、同電気ヒータ4の加熱を開始し、上記第2の電気ヒータの加熱停止温度Tbよりも高い本来の沸騰検知温度Taまで加熱するようにする。
【0101】
先ず、上記(2)の蓋体2内部への蒸気導入口26a,26a,26aから蒸気センサ22までの通路断面積を小から大に変化させる構成として、上述の図13、図14のように、内カバー部材26の凸部260天面の小さな蒸気導入口26a,26a,26aから侵入した蒸気が大径の広い蒸気導入空間Aに導入されて大きく拡散され、さらに隔壁121bの小さな切欠部123から出て、上述した分流凸部120部分で左右に部分された後、再び周方向に広い蒸気周回通路122に導かれて左右周方向に拡散される。
【0102】
そして、その後、下板12の小径の蒸気導入口12aから蒸気回収ユニット18の小径の蒸気入口16を経て、第1の蒸気冷却通路15aで拡散されて蒸気センサ22に到達する構成が採用されている。
【0103】
このように、小から大、大から小、小から大と複数回異なる空間容積の通路を通過させることで、効果的に蒸気の圧力を緩和することができ、仮に蓋体2の開閉動作が行われても蒸気センサ22の温度が高温の湯温に追随しにくくなる。
【0104】
その結果、連続沸騰時等の蒸気量の多い時にも、蒸気センサ22の温度制御機能が確保される。
【0105】
また、その場合(1)のように、沸騰検知によるヒーター加熱停止温度と同沸騰検知温度よりも低い第2のヒーター加熱停止温度とのヒーター加熱停止温度を2段階に設けるようにすると、上記蒸気センサ22が高温状態の場合でも蒸気レス機能を確実に実現することができるようになる。
【0106】
今、図15のフローチャートは、そのように沸騰検知温度Taでのヒーター加熱停止と沸騰検知温度Taよりも所定温度低い第2のヒーター加熱停止温度Tbでのヒーター加熱停止の2つの温度でのヒーター加熱停止機能を実現した空炊きおよび沸騰検知制御の内容を示している。
【0107】
すなわち、同制御では、当該電気ポットのAC電源回路にAC電源が接続されると制御動作を開始する。
【0108】
そして、先ず安全のためにステップS1で当該システムの空炊き検知制御ルーチンをトリガーした上で、ステップS2で上述の電気ヒータ4をONにし、内容器3内の湯の加熱を開始する
この結果、上記内容器3の底部に設けられている底センサの検出温度が上昇するとともに、内容器3内に水が入っている場合には、やがて水の温度が上昇して沸騰し、蒸気が発生することから、蒸気センサ22の検知温度Tも上昇する。
【0109】
そこで、続いて、ステップS3で、蒸気センサ22の検知温度Tが本来の沸騰検知温度Taよりも所定温度(例えば2〜3℃程度)低い上述した第2のヒーター加熱停止温度Tb以下であるか否かを判定する。
【0110】
その結果、第2のヒーター加熱停止温度Tbよりも高いNOの時は、上述の蒸気温度が高いケースであると認められるので、先ずステップS4に進んで、本件制御シーケンスにおける「空炊き検知処理」行った上で、最終的にステップS8に進み、上記電気ヒータ4をOFFにして制御を終了する。
【0111】
他方、YESの蒸気センサ22の検知温度Tが、本来の沸騰検知温度Taよりも所定温度低い上記第2の電気ヒータ停止温度Tb以下である時には、蒸気温度が高い場合でもなく、未だ沸騰状態にもなっていないと考えられるので、続くステップS5で上記電気ヒータ4のON状態を継続して湯沸しを続ける。
【0112】
そして、その途中(ステップS6)で一旦空炊き検知をを行う。この空炊き検知は、内容器3底部の底センサの検出温度の単位時間当りの上昇度合が所定の基準レベルを超えているか否かで判断される。
【0113】
その結果、基準レベルを超えているYESの時は「空炊き」と判定され、上述のステップS4に進んで所定のアラームを出して空炊き報知その他の「空炊き検知処理」を行った上で、さらにステップS8に進んで電気ヒータ4をOFFする。
【0114】
一方、NOの空炊き状態ではない時には、ステップS7に進んで通常通り沸騰検知判定を行う。
【0115】
この沸騰検知判定では、蒸気センサ22および底センサ各々の検知温度に基いて、それら検知温度の何れか一方が沸騰状態を示す値になった時に沸騰と判定するように構成されており、何れか一方の検出値が沸騰状態を示す所定の判定基準値以上となった時に直ちに沸騰開始と判定して、ステップS8に進み、応答性良く電気ヒータ4をOFFにする。NOの時は、湯沸しを継続する。
【0116】
この結果、沸騰が始まるのと略同時に電気ヒータ4をOFFにすることができ、可能な限り速やかに沸騰を抑えて、蒸気の発生量を少なくすることができる。
【0117】
なお、上述の図1、図5、図6中において、符号29は蓋体2の開閉状態を操作する蓋開閉レバー、29a,29aはロック用の係合片、図1〜図4中の符号30は各種スイッチ類の操作面や液晶表示手段の表示面を備えた操作パネル部、31は電気ポットを持ち運ぶ際に用いる把手を示している。
【0118】
以上のように構成したことにより、例えば図3〜図14のように、沸騰開始後、蓋体2下部の蒸気導入口26a,26a・・、蒸気導入空間A、蒸気周回通路122、下板12の蒸気導入口12aを経て、蒸気回収ユニット18の蒸気入口16に導かれた内容器3からの蒸気Vは、蒸気冷却通路15(15a〜15f)を蒸気出口17側に向かって流れる過程において(図11参照)、先ず第1冷却通路15aを出て直ぐに蒸気センサ22により蒸気温度が検出される。そして、同時点で直ちに沸騰と判定し、直に電気ヒータ4をOFFして蒸気が出ないようにする。
【0119】
従って、同構成によると、従来の内容器3の底部の温度を検出する底センサによる沸騰検知よりも遥かに早く沸とう検知することができるようになり、沸とう開始後直ちに電気ヒータ4による加熱を停止するので、内容器3内のお湯から生ずる蒸気が極めて少なくなるとともに、省エネになる。
【0120】
その後、蒸気Vは、該蒸気センサ22部分をUターンして第2冷却通路15bから第3冷却通路15cに入り、該第3冷却通路15cおける通路拡大部15c1部分において圧力が低減されるとともに通路内空気によって冷却され、凝縮が促進される。その後、第4冷却通路15dおよび第5冷却通路15eを流れる過程においても、それぞれその通路拡大部15d1および15e1において同様に圧力が低減されるとともに通路内空気によって冷却され、凝縮が促進される。従って、第1冷却通路15aから第2,第3,第4,第5,第6冷却通路15b,15c,15d,15e,15fを流れる過程において、殆ど全ての蒸気Vが凝縮して結露水Wに変えられ、蒸気出口17からは蒸気の排出が殆どなくなる。
【0121】
そして、上記第1〜第6の各冷却通路において結露した結露水Wは、上記蓋体2の閉蓋状態において略全体が蒸気入口16側連通穴23に向かって下り傾斜となっている蒸気冷却通路15を介して蒸気Vとは逆方向に流れ、第2冷却通路15bからユーターン部15U、ユーターン部15Uから第1冷却通路15aを経て、蒸気入口16、下板12の蒸気導入口12a、内カバー部材26の結露水戻し口26b,26b・・から内容器3内に還流される。
【0122】
従来の電気ポットでは、蒸気排出通路は蓋体2の部品内面に這わされているので配設上の制約が多かったが、本実施の形態の電気ポットでは、上記のように蓋体2部分に蒸気回収ユニット18が別体で内蔵されていて、蒸気通路を自由に配置することができる。
【0123】
そして、それを利用して、蓋閉時に電気ポットの容器本体1側部分に設けた圧抜きパイプ41よりなる圧抜き通路の通路入り口41a部分に、上記蒸気通路(蒸気回収ユニット)15の蒸気出口17を任意に接続する構造にすることができる。そして、容器本体1部分に設けた当該圧抜き通路の通路入り口41a部分への接続部および容器本体1部分に設けた圧抜き通路の通路下流側から、外気への圧力の開放部である空気出口44、または接続部や開放部だけでなく、当該空気出口44への連接通路自体(終端41b部分)が、「下向き」(下方向成分を含む向きであり、斜め下方も含む)になる構造になっている。
【0124】
このように、それらの各部分が下向きになっていると、湯からの熱が伝わった温度の高い空気が、蒸気通路15を通り蒸気出口17(圧抜き通路との接続部)および空気出口44(開放部)を通過するときに、それぞれ下向きに動いて通過しなければならず、これは温度の高い空気が上昇する対流現象と相反する逆の動きになるため、対流の働きを効果的に抑制する作用を果たす。
【0125】
このため、圧抜き用の空気出口44が開いていても、有効に対流を抑制することができ、十分に保温効果が高めることができる。
【0126】
また、以上の構成では、上記蒸気通路は、上記内容器3内に連通する蓋体2側通路15と上記容器本体1の外部に連通する容器本体1側圧抜き通路41とを閉蓋時において1本の通路に連通せしめるように構成している。
【0127】
このような構成によると、蓋体側通路15は、それ自体として外部に開放させる必要がなくなり、その下面側又は側面側から容器本体1側の圧抜き通路41の一端に連通せしめれば足りるようになるので、蓋体2の上面側に開放させない通路構造を容易に実現することができるようになる。
【0128】
しかも、通路距離を十分に長く取ることができ、同通路の途中で外部への放熱を遮断することができるので、保温性能が向上する。
【0129】
また、同蓋体2側の通路を蒸気冷却通路15として、排出される蒸気を効果的に冷却し、凝縮した結露水を容易に内容器3内に回収することができる。
【0130】
他方、容器本体1側の通路41の他端は、容器本体1側の構造から言って容易に外部に開放した構造とすることができるし、そのレイアウトの自由度も高くなり、実現が容易である。
【0131】
そして、この場合において、例えば上記蓋体側、容器本体側各通路の一部を下向きのものとすれば、容易に対流による放熱効果をも抑制することができ、さらに保温性能を向上させることができる。
【0132】
(変形例1)
次に図16は、上記実施の形態の変形例1に係る構成を示している。
【0133】
この例では、上記図4の構成における蒸気出口17から圧抜きパイプ41を経た空気出口44までの部分を、例えば図15に示すように、止水弁SVを設けることなく、また蒸気出口17部分を下方に向けるのではなく前方側水平方向に向けてストレートに開口せしめ、同開口部分に相互に当接する第1,第2のシールパッキンP1,P2を設けて、蓋体2の閉蓋時に圧抜きパイプ(圧抜き通路)41の一端(通路入口部分)41aが突き合わせ接続されるようになっている。
【0134】
この場合、第1のシールパッキンP1は蒸気出口17の開口縁部に、第2のシールパッキンP2は圧抜きパイプ41の一端側通路入口周縁部に設けられており、相互に当接した時にシール状態で2つの通路を連通させる。
【0135】
圧抜きパイプ41の他端側は、図示のように、所定長さ前方に向けてストレートに延びた後、下方側に向けて略直角に曲成され、その延設端部41bは、上記実施の形態の場合同様に方形の結露水貯留ポケット45aを覆う形で嵌合する同じく方形の嵌合部に形成されている。
【0136】
そして、同延設端部41b内の方形の開口部を、上記下口部材42の下面側に組み付けられている下口カバー部材43に設けられた圧抜き用の空気出口44に対して連通せしめられている。
【0137】
このような構成にしても、蒸気出口17部分から圧抜きパイプ41部分で、圧抜き通路が確実に下方に向いて所定長さ延設されることになるので、この部分で確実に対流が阻止されることになり、仮に第6冷却通路15f、蒸気出口17部分に比較的温度の高い空気が到達したとしても、蒸気出口17部分から先には出て行きにくくなる。
【0138】
そのため、対流による放熱作用が抑制され、その分保温性能が向上する。
【0139】
また、この場合、上述したように止水弁(転倒止水弁)SVを省略したが、上述のように本実施の形態の蒸気回収ユニット18の構造では、その第2〜第5冷却通路15b〜15e部分に各々通路拡大部および水トラップ部が設けられており、容器本体1が前後左右何れの方向転倒したとしても、想到量の水のトラップが可能となっており止水弁SVがなくても、圧抜きパイプ41側に水が到達する恐れは先ず生じない。
【0140】
(変形例2)
さらに、以上の例では、その何れにあっても、蓋体2側蒸気出口17部分を容器本体1側下口部材42中の圧抜きパイプ41部分に接続した上で、外部に空気を逃がすようにしたが、これは例えば上記蓋体2側蒸気出口17部分を容器本体肩部材8部分等において、直接外部に開放させるようにしても良く、その場合において、上記蒸気出口17を蓋体2の側方、または下方、さらには斜め下方に向けて開口させる構造としても良い。
【0141】
その場合にも、略同様の対流抑制による保温性能作用を実現することができる。
【符号の説明】
【0142】
1は容器本体
2は蓋体
3は内容器
4は電気ヒータ(加熱手段)
15は蒸気冷却通路
15aは第1冷却通路
15bは第2冷却通路
15cは第3冷却通路
15dは第4冷却通路
15eは第5冷却通路
15fは第6冷却通路
15uはユーターン部
16は蒸気入口
17は蒸気出口
41は圧抜きパイプ
44は空気出口
45aは結露水貯留ポケット
Vは蒸気
Wは結露水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する内容器および該内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆蓋する蓋体と、上記内容器の内部に連通する蒸気入口と外部に連通する蒸気出口との間に配設された圧抜き機能を有する蒸気通路とからなる電気ポットであって、上記蒸気通路は、上記内容器内に連通する蓋体側通路と上記容器本体の外部に連通する容器本体側通路とを閉蓋時において連通せしめるようにしてなることを特徴とする電気ポット。
【請求項2】
液体を収容する内容器および該内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆蓋する蓋体と、上記内容器の内部に連通する蒸気入口と外部に連通する蒸気出口との間に配設された圧抜き機能を有する蒸気通路とからなる電気ポットであって、上記蒸気通路は、上記蒸気入口側から蒸気出口までの間の所望の位置に下向きの通路が形成されていることを特徴とする電気ポット。
【請求項3】
液体を収容する内容器および該内容器を加熱する加熱手段を備えた容器本体と、該容器本体の上部側開口部を覆蓋する蓋体と、該蓋体内にあって、上記内容器の内部に連通する蒸気入口と外部に連通する蒸気出口との間に配設された圧抜き機能を有する蒸気通路とからなる電気ポットであって、上記蒸気通路は、上記蒸気入口側から蒸気出口までの間の所望の位置に下向きの通路が形成されていることを特徴とする電気ポット。
【請求項4】
上記蒸気通路の外部への開放部には、結露水の貯留部を設けたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の電気ポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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