説明

電気二重層コンデンサ用保護装置

【課題】簡易な回路構成で信頼性の高い保護機能を有する電気二重層コンデンサ用保護装置を提供する。
【解決手段】電気二重層コンデンサ4から構成されるコンデンサブロック3が直列接続されたコンデンサモジュールに対し、各コンデンサブロック3の電圧を均等に分圧する分圧抵抗2がコンデンサブロック3ごとに設けられている。このコンデンサブロック3の電圧を検出し、コンデンサブロック3の電圧が予め設定された設定電圧以上になるとトランジスタ11をオフ状態からオン状態に切り替え、オン状態となったトランジスタ11を通じてコンデンサブロック3からの電流を放電抵抗30において放電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層コンデンサ用保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層コンデンサ(EDLC)は、単一のセルでは定格電圧が1.5〜3V程度と低いため、複数個のセルを直列に接続したコンデンサモジュールとして用いられる。
【0003】
このようなコンデンサモジュールは、直列に接続された各セルに分圧用の抵抗が並列に接続されることで、均等に電圧が付加されるようになっている。
しかしながら、静電容量や内部抵抗のばらつきにより各セルに電圧差が生じてしまい、電圧印加時にセルの定格電圧を超えて過電圧となってしまう場合があった。
【0004】
このような問題に対し、電気二重層コンデンサを保護するものとして、特許文献1記載の装置がある。
特許文献1には、コンデンサモジュールの各セルにバイパストランジスタを並列接続し、セルの過電圧検出時にはバイパストランジスタをオンさせて電気二重層コンデンサを短絡して電荷を放電させると共に、このバイパストランジスタの過電流を検出してバイパストランジスタの過負荷を保護する電気二重層コンデンサ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−094894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の電気二重層コンデンサ装置では、セルの保護回路を保護するための回路が必要であるため複雑な回路構成となり、セルの保護機能の信頼性が低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、簡易な回路構成で信頼性の高い保護機能を有する電気二重層コンデンサ用保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、電気二重層コンデンサ単体をセルとし、該セルから構成されるコンデンサブロックが直列接続されたコンデンサモジュールに対し、該コンデンサブロックごとに設けられ、各コンデンサブロックの電圧を均等に分圧する分圧抵抗に並列接続された電気二重層コンデンサ用保護装置において、前記コンデンサブロック電圧を検出する電圧検出部と、前記コンデンサブロックの電圧が予め設定された設定電圧以上になるとオフ状態からオン状態に切り替わるスイッチング素子と、オン状態となった前記スイッチング素子を通じて前記コンデンサブロックからの電流を放電させる放電抵抗と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、電気二重層コンデンサが設定電圧に達して過電圧となった場合、スイッチング素子がオン状態に切り替えられ、電気二重層コンデンサからの電流がオン状態となったスイッチング素子を通じて放電抵抗に流れる。これにより、過電圧となった電気二重層コンデンサからの電流が放電されるため、電気二重層コンデンサの過電圧を解消することができる。
【0010】
また、本発明の電気二重層コンデンサ用保護装置は、前記スイッチング素子と前記放電抵抗とが直列に接続され、前記スイッチング素子と前記放電抵抗とからなる直列回路が、前記分圧抵抗に並列接続され、前記スイッチング素子がオン状態に切り替わることにより、前記セルに並列接続された抵抗の合成抵抗値を低下させる構成にされていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、スイッチング素子がオン状態に切り換わると、放電抵抗が分圧抵抗に並列に接続されることになるため、スイッチング素子がオフ状態である場合よりもセルに並列接続された抵抗の合成抵抗値が小さくなる。これにより、放電される電流が定常時よりも増加するため、電気二重層コンデンサの過電圧を解消することができる。
【0012】
また、本発明の電気二重層コンデンサ用保護装置は、前記スイッチング素子のオン/オフ状態を検出し、前記スイッチング素子がオン状態に切り替わると、過電圧故障信号を出力する過電圧故障信号出力回路をさらに備える構成にされていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、電気二重層コンデンサが過電圧となってスイッチング素子のオン状態を検出した場合に、過電圧故障信号を出力することができ、電気二重層コンデンサの異常を容易に検知することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な回路構成で信頼性の高い保護機能を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明をコンデンサモジュールに適用したブロック図である。
【図2】本実施形態に係る電気二重層コンデンサ用保護装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電気二重層コンデンサ用保護装置は、コンデンサバンク装置や瞬時電圧低下補償装置等に適用される。
以下、本実施の形態における電気二重層コンデンサ用保護装置について図面を用いて説明する。
【0017】
(構成)
図1は、本発明を複数個のコンデンサブロック3からなるコンデンサモジュールに適用したブロック図を示す。図1に示すように、本実施形態のコンデンサモジュール300は、コンデンサブロック3が複数個、直列に接続されている。例えば、コンデンサバンク装置に用いられるコンデンサモジュール300の場合は、コンデンサモジュール300の両端に商用電源を直流電流に変換する充電装置が配設される。
【0018】
コンデンサブロック3は、並列に接続された2個の電気二重層コンデンサ単体からなるセル4から構成されている。このコンデンサブロック3と並列に分圧抵抗2が接続されている。分圧抵抗2は、コンデンサブロック3に加えられる電圧が均等となるように分圧する機能を有している。そして、このコンデンサブロック3ごとに、電気二重層コンデンサ用保護装置1が並列に接続されている。
【0019】
このように、本実施形態では、並列に接続された2個のセル4から構成されるコンデンサブロック3に対して、分圧抵抗2と電気二重層コンデンサ用保護装置1とが、それぞれ並列に接続されるものであるが、これに限定されることはない。例えば、コンデンサブロック3が1個の電気二重層コンデンサで構成され、直列に接続された一列のコンデンサブロック3のそれぞれに並列に分圧抵抗と電気二重層コンデンサ用保護装置とを配設する構成であってもよい。
【0020】
上記のように配設された電気二重層コンデンサ用保護装置1について説明する。
図2は、この電気二重層コンデンサ用保護装置1の回路図である。図2に示すように、本実施形態の電気二重層コンデンサ用保護装置1は、トランジスタ(スイッチング素子)11と、電圧検出部20と、放電抵抗30と、過電圧故障信号出力回路40と、を備えている。
【0021】
トランジスタ11と放電抵抗30とからなる直列回路は、コンデンサブロック3と並列に接続されている。すなわち、トランジスタ11と放電抵抗30とからなる直列回路は、分圧抵抗2と並列になっている。また、トランジスタ11のコレクタに放電抵抗30が直列に接続され、エミッタにコンデンサブロック3の(+)端子が接続されている。したがって、トランジスタ11がオン状態となった場合には、コンデンサブロック3からの電流が放電抵抗30に流れるようになっている。
【0022】
電圧検出部20は、コンデンサブロック3と並列に接続されている。すなわち、電圧検出部20は、分圧抵抗2、およびトランジスタ11と放電抵抗30の直列回路と並列になっている。
具体的に、電圧検出部20は、リファレンス電圧検出用抵抗21・22と、シャントレギュレータIC23と、ノイズ除去用コンデンサ24と、スイッチング制御用抵抗25と、を有している。
【0023】
直列に接続されたリファレンス電圧検出用抵抗21・22は、分圧抵抗2に並列に接続され、コンデンサブロック3の両端電圧値をリファレンス電圧として検出する。
シャントレギュレータIC23は、リファレンス電圧検出用抵抗21・22によって分圧された電圧をリファレンス電圧としてリファレンス端子に印加可能にされている。シャントレギュレータIC23は、内部に基準電圧を有しており、リファレンス電圧が基準電圧を超える(コンデンサブロック3が過電圧である)場合には、シャントレギュレータIC23が動作状態となり、カソード側からアノード側への導通を許容するようになっている。
【0024】
なお、コンデンサブロック3の過電圧設定は、通常2.5Vに設定されるがこれに限定されるものではない。また、シャントレギュレータIC23は、このコンデンサブロック3が過電圧として判定される電圧を設定電圧として設定され、当該設定電圧以上となった場合に動作状態となることが望ましい。
【0025】
スイッチング制御用抵抗25は、シャントレギュレータIC23のカソード側に接続されている。なお、このスイッチング制御用抵抗25とシャントレギュレータIC23との接続点がトランジスタ11のベース側に接続されている。したがって、シャントレギュレータIC23が動作状態となり導通した場合には、スイッチング制御用抵抗25において電圧降下が発生し、トランジスタ11からベース電流が流れてトランジスタ11がオン状態となる。
【0026】
ノイズ除去用コンデンサ24は、シャントレギュレータIC23のノイズを除去するために一端がシャントレギュレータIC23のカソードに、他端が電圧検出用抵抗21、22の接続部に接続されている。
【0027】
このように、電圧検出部20は、コンデンサブロック3の充電電圧を検出し、該充電電圧が設定電圧以上になるとトランジスタ11をオン状態に切り替えて、コンデンサブロック3からの電流を放電抵抗30へ導通させる機能を有している。すなわち、スイッチング素子としてのトランジスタ11は、コンデンサブロック3の電圧が予め設定された設定電圧以上になるとオフ状態からオン状態に切り替わる機能を有している。
【0028】
放電抵抗30は、上述のとおり、トランジスタ11のコレクタ側に、トランジスタ11と直列に接続されている。すなわち、放電抵抗30は、コンデンサブロック3からの電流が流れた場合にコンデンサブロック3を放電させる機能を有している。
すなわち、コンデンサブロック3が過電圧である場合には、分圧抵抗2に放電抵抗30が並列に接続されるため、コンデンサブロック3に並列接続される抵抗の合成抵抗値が低下する。
【0029】
過電圧故障信号出力回路40は、放電抵抗30と並列に接続された、LED(Light Emitting Diode)41と、半導体リレー42とを有している。LED41及び半導体リレー42は、コンデンサブロック3が過電圧である場合に、トランジスタ11がオン状態に切り替えられることで導通する。すなわち、LED41は、接続されているEDLCセル3が過電圧であることを目視で確認可能にするものである。
【0030】
また、半導体リレー42は、導通することで外部(出力端子T1・T2)に過電圧故障信号を出力することができるようになっている。すなわち、半導体リレー42は、自身が導通することでトランジスタのオン状態を検出して過電圧故障信号を出力し、自身が非導通となることでトランジスタのオフ状態を検出して過電圧故障信号の出力を停止する。
なお、半導体リレー42は、定常時(非導通状態)に接点が閉(すなわち過電圧時の導通時に開)となるものであってもよいし、その逆でもよい。また、半導体リレー42はホトカプラを用いるものであってもよい。
【0031】
また、過電圧故障信号は、電気二重層コンデンサ用保護装置1の出力用プラス端子および出力用マイナス端子である出力端子T1・T2ごとに個別に出力されるものであってもよいし、各電気二重層コンデンサ用保護装置1の出力端子T1と出力端子T2とを接続して最上段のプラス端子と最下段のマイナス端子から出力されるものであってもよい。
また、各電気二重層コンデンサ用保護装置1の出力端子T1および出力端子T2を並列接続してまとめたプラス端子とマイナス端子とから出力されるものであってもよい。
【0032】
(動作)
上記のように構成された電気二重層コンデンサ用保護装置1の動作について説明する。
先ず、定常状態時には、各コンデンサブロック3には、分圧抵抗2で均等に分圧された電圧が加えられている。
【0033】
そして、何れかのコンデンサブロック3が過電圧状態となった場合、リファレンス電圧検出用抵抗21・22によって検出されるリファレンス電圧が、シャントレギュレータIC23が有する内部電圧以上となるため、シャントレギュレータIC23が動作状態となり、カソード側からアノード側へ降伏電流が流れる。
【0034】
シャントレギュレータIC23に降伏電流が流れることにより、スイッチング制御用抵抗25において、電圧降下が発生する。これにより、トランジスタ11からシャントレギュレータIC23へベース電流が流れる。
【0035】
トランジスタ11にベース電流が流れることで、トランジスタ11がオン状態となり、エミッタ側からコレクタ側へ電流が流れ、放電抵抗30に電流が流れてコンデンサブロック3が放電される。すなわち、主に分圧抵抗2のみで放電されていたコンデンサブロック3の放電電流が、トランジスタ11がオン状態(過電圧状態)では分圧抵抗2に並列に接続された放電抵抗30においても放電されるようになる。
ここで、分圧抵抗2と放電抵抗30との合成抵抗値は、定常時における分圧抵抗2の抵抗値よりも小さくなる。したがって、トランジスタ11がオン状態となってコンデンサブロック3からの電流が放電抵抗30に流れた場合、放電量は定常時よりも増加するため、コンデンサブロック3の過電圧を解消することができるようになっている。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその趣旨を超えない範囲
において変更が可能である。
【0037】
例えば、本実施形態においては、過電圧の目視確認用にLED41を設けた構成にしていたがこれに限定されず、LED41の無い構成であってもよい。
【0038】
また、本実施形態では、並列に接続された2個のセル4から構成されるコンデンサブロック3が複数直列に接続されたコンデンサモジュール300に適用するものであったが、適用対象はこのような形態に限定されず、セルは1個または3個以上でもよい。
また、シャントレギュレータIC23等による構成で例示された電圧検出部、トランジスタ11で例示されたスイッチング素子、半導体リレー42等による構成で例示された過電圧故障信号出力回路等はこのような形態に限定されない。
【符号の説明】
【0039】
1 電気二重層コンデンサ用保護装置
2 分圧抵抗
3 コンデンサ(電気二重層コンデンサ)ブロック
4 セル(電気二重層コンデンサ)
11 トランジスタ
20 電圧検出部
21、22 リファレンス電圧検出用抵抗
23 シャントレギュレータ
24 ノイズ除去用コンデンサ
25 スイッチング制御用抵抗
30 放電抵抗
40 過電圧故障信号出力回路
41 LED
42 半導体リレー
300 コンデンサモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気二重層コンデンサ単体をセルとし、該セルから構成されるコンデンサブロックが直列接続されたコンデンサモジュールに対し、該コンデンサブロックごとに設けられ、各コンデンサブロックの電圧を均等に分圧する分圧抵抗に並列接続された電気二重層コンデンサ用保護装置において、
前記コンデンサブロック電圧を検出する電圧検出部と、
前記コンデンサブロック電圧が予め設定された設定電圧以上になるとオフ状態からオン状態に切り替わるスイッチング素子と、
オン状態となった前記スイッチング素子を通じて前記コンデンサブロックからの電流を放電させる放電抵抗と、
を備えたことを特徴とする電気二重層コンデンサ用保護装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子と前記放電抵抗とが直列に接続され、
前記スイッチング素子と前記放電抵抗とからなる直列回路が、前記分圧抵抗に並列接続され、
前記スイッチング素子がオン状態に切り替わることにより、前記セルに並列接続された抵抗の合成抵抗値を低下させることを特徴とする請求項1記載の電気二重層コンデンサ用保護装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子のオン/オフ状態を検出し、前記スイッチング素子がオン状態に切り替わると、過電圧故障信号を出力する過電圧故障信号出力回路をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の電気二重層コンデンサ用保護装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−170226(P2012−170226A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29077(P2011−29077)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】