電気式床暖房パネルおよびそれを用いた電気式床暖房装置

【課題】電気式床暖房パネルは製品寿命を超えて継続使用していると、3線式コード状ヒータに疲労断線が生じて発熱し出火に至るのことを防止する安全設計を提供する。
【解決手段】3線式コード状ヒータ20は、通電により発熱する第1と第2の2本のヒータ線21,22と検知線23を有し、第1のヒータ線と検知線は第1の被覆樹脂24,26で被覆されており、第2のヒータ線は第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂25で被覆される。第1と第2の2本のヒータ線の一方端は直接的にまたは間接的に電源に接続しており、他方端は互いに接続し、発熱回路には第1の被覆樹脂が溶融することにより生じる第1のヒータ線と検知線との短絡により抵抗器53が発熱することに起因して溶断するヒューズ51が第2のヒータ線側に接続される。抵抗器は、第2のヒータ線の抵抗値と等しいかそれよりも高い値の抵抗値を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱源であるコード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルと、その複数枚が電気的に接続して床下地面に敷き詰られて形成される電気式床暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材の裏面にコード状ヒータによる発熱回路を組み込んだ電気式床暖房パネルの複数枚を電気的に接続しながら床下地面に敷き詰め、コントローラを介して電気式床暖房パネルに所要の電力を供給するようにした電気式床暖房装置は知られている(特許文献1等参照)。コントローラには、加熱エリアの特定、通電の開始と停止、定常運転モードでの温度レベル設定、などの機能が備えられ、電気式床暖房装置の安全性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−308202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気式床暖房装置の安全運転は、通常の使用状態では充分に保証されている。しかし、一般に構造部材は、その構造上からくる寿命を当然に有しており、例えば電気式床暖房パネルの場合、10年程度の長期にわたって継続して使用されると、歩行等による荷重が繰り返し加わることで、内部に組み込んだコード状ヒータにひずみによる応力が繰り返しかかり、その影響で疲労断線が起こる可能性がある。断線すると断線箇所でスパークが発生し、燃焼を起こす恐れがある。
【0005】
本発明は、上記のように製品寿命を超えたときに起こる可能性のある、コード状ヒータの断線に起因する燃焼等の不都合に対して、安全設計を施した電気式床暖房パネルおよびそれを用いた電気式床暖房装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する本発明による電気式床暖房パネルは、木質基材の裏面にコード状ヒータによる発熱回路を組み込んだ電気式床暖房パネルであって、前記コード状ヒータは、第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなり、前記第1のヒータ線と前記検知線とはそれぞれが第1の被覆樹脂で被覆されており、前記第2のヒータ線は前記第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている3線式コード状ヒータであり、前記3線式コード状ヒータの前記第1と第2の2本のヒータ線の一方端は直接的にまたは間接的に電源に接続しており、他方端は互いに接続しており、前記発熱回路には、少なくとも前記第1の被覆樹脂が溶融することにより生じる前記第1のヒータ線と前記検知線との短絡により、前記検知線に接続された抵抗器が通電されて発熱することに起因して溶断するヒューズが、前記第2のヒータ線側に接続されており、前記抵抗器は、前記第2のヒータ線の抵抗値と等しいかそれよりも高い値の抵抗値を有することを特徴とする。
【0007】
また、上記の課題を解決する本発明による電気式床暖房装置は、上記本発明による電気式床暖房パネルの複数枚が並列接続した状態で床下地面に敷き詰められていることを特徴とする。
【0008】
本発明による電気式床暖房パネルおよび電気式床暖房装置において、通常の使用状態では、3線式コード状ヒータの前記第2のヒータ線側に接続されているヒューズには、ヒータ線の持つ抵抗値に応じた電流が流れており、ヒューズが溶断することなく、正常な運転が継続する。
【0009】
製品寿命を超えた長期の使用等により、電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式コード状ヒータに疲労断線等による部分断線等が生じた場合、スパーク等の発生によりその近傍に設定値以上の発熱が生じ、そのまま使用を継続すると発火に至る恐れがある。本発明による電気式床暖房パネルは、発火に至るような危険が生じるのを確実に回避する。
【0010】
すなわち、本発明による電気式床暖房パネルでは、前記した第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなる固有の構成の3線式コード状ヒータを用いており、第1と第2の2本のヒータ線のいずれかの箇所において断線が生じて設定以上の異常発熱が生じた場合、その発熱により、前記第2のヒータ線を被覆している第2の被覆樹脂と比較して溶融温度が低い前記第1のヒータ線と検知線とを被覆している第1の被覆樹脂が溶融する。
【0011】
絶縁層として機能していた第1の被覆樹脂が溶融することにより、第1のヒータ線と検知線が短絡状態となる。この短絡により検知線には高い値の短絡電流が流れ、この短絡電流に起因して、第2のヒータ線側に接続しているヒューズが溶断する。このヒューズの溶断により、当該電気式床暖房パネルに対するコントローラからの電力の供給は完全に遮断されるので、それ以降は、断線箇所においてスパーク等が発生することはなく、燃焼に至るような事態となるのを確実に阻止される。すなわち、事故発生時に安全サイドに導かれる。
【0012】
本発明による電気式床暖房パネルにおいて、前記したヒューズの例として過電流ヒューズが挙げられる。この場合には、前記した検知線を流れる高い値の短絡電流がヒューズを流れることによって、ヒューズは溶断する。前記ヒューズの他の例として、検知線に流れる電流が抵抗器に流れて発熱することに起因して溶断するヒューズが挙げられる。より具体的には、抵抗器付き温度ヒューズである。この場合、前記検知線は前記抵抗器付き温度ヒューズの抵抗器に接続している。
【0013】
上記のように、本発明による電気式床暖房パネルでは、3線式コード状ヒータのいずれの箇所で断線による異常発熱が生じても、検知線は必ず第1のヒータ線側と短絡するので、検知線に流れる電流に起因して溶断するヒューズを1個のみ第2のヒータ線側に接続すればすみ、また、ダイオードも不要となるので、有効ヒータゾーンが大きくなると共に、低コストで発熱回路を構成することが可能となる。
【0014】
前記3線式コード状ヒータは、第1と第2の2本のヒータ線の一方端は直接的にまたは間接的に電源に接続し、他方端は互いに接続している構成であり、木質基材の裏面に3線式コード状ヒータによる発熱回路を組み込む作業は、ヒータ線を単に床基材裏面に形成した溝内に埋め込んでいけばよく、閉ループを作る必要がないので、電気式床暖房パネルへのヒータ線の組み込み作業は簡素化され、NCによる配線も可能となる。さらに、一本の3線式コード状ヒータ内で、実質的に平行に走る第1と第2の2本のヒータ線を電流が往復で流れることから磁界が打ち消し合うようになり、電気式床暖房パネルからの電磁波の発生もカットされる。
【0015】
本発明による電気式床暖房パネルの全体形状は任意であり、矩形状、長尺状の単位ピースが長手方向に位置をずらしながら雁木状に組み付けられた形状、などを例示できる。木質基材の裏面に緩衝材層が貼着されている形態であってもよく、この形態の電気式床暖房パネルは、直貼り式の床暖房パネルとして有効に用いることができる。
【0016】
本発明による電気式床暖房パネルは、コード状ヒータとして3線式コード状ヒータを用いており、結線箇所が通常のコード状ヒータの場合と比較して多くなる。そのために、結線箇所を一箇所に集中させると、結線箇所を収容するために木質基材の裏面に形成する空所が広い面積のものとなる。木質基材の裏面にそのような広い面積の空所を形成すると、木質基材の強度低下とともに、床面を歩いたときに、少し凹むような他の部分と異なる踏み感(歩行感)を歩行者に与える恐れがある。それを回避するために、本発明による3線式コード状ヒータの一端側が木質基材側に配線してある電源線からのリード線と直接またはヒューズを介して結線している電気式床暖房パネルにおいて、好ましくは、前記各結線箇所を、木質基材の長手方向または幅方向またはその双方向に分散して配置するようにされる。この形態では、接線箇所を収容する空所を、複数個のより小さな面積のものに分散させることができ、強度低下もなく快適な歩行感を維持することができる。
【0017】
本発明による電気式床暖房装置は、上記した電気式床暖房パネルの複数枚が並列接続した状態で床下地面に敷き詰められて構成される。並列接続した構成であることから、事故発生時に安全サイドに導かれて使用できなくなった電気式床暖房パネルを、それ単独で、新しいものと交換することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製品寿命を超えたときにあるいは地震のような異常事態が発生したときに起こる可能性のある、3線式コード状ヒータの断線に起因する燃焼等の不都合に対して、有効な安全設計を施した電気式床暖房パネルが提供される。また、本発明による電気式床暖房パネルは、3線式コード状ヒータの木質基材への組み込みを容易であり、部品数も少なくてすむことから、低コストでの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による電気式床暖房装置の全体を示す概略図。
【図2】電気式床暖房パネルの一例を説明する図。
【図3】本発明による電気式床暖房装置の電気回路図。
【図4】電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式コード状ヒータを説明する図。
【図5】電気式床暖房パネルに組み込まれる発熱回路を説明する図。
【図6】発熱回路に異常発熱が生じたときの第1の態様を説明する図。
【図7】発熱回路に異常発熱が生じたときの第2の態様を説明する図。
【図8】電気式床暖房パネルの他の形態を説明する図。
【図9】電気式床暖房パネルのさらに他の形態を説明する図。
【図10】電気式床暖房パネルにおける結線具は分散状態のさらに他の態様を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態により説明する。図1は電気式床暖房装置の全体を示す概略図、図2は電気式床暖房パネルの一例を説明する図、図3は電気式床暖房装置全体の電気回路図の一例である。図4は電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式コード状ヒータを説明する図、図5は電気式床暖房パネルにおける発熱回路を説明する図、図6と図7は発熱回路に断線が発生したときの2つの態様を説明するための図である。図8から図10は、本発明による電気式床暖房パネルにおけるさらに他の態様を説明している。
【0021】
電気式床暖房装置Aは、床下地10の上に、図2に一例を示すような、木質基材31の裏面に3線式コード状ヒータ20による発熱回路を組み込んだ電気式床暖房パネル30の複数枚を電気的に並列に接続して敷き詰めて構成され、各電気式床暖房パネル30には、外部からの商用電力がコントローラ40を介して供給される。コントローラ40は、前記特許文献1に記載のような従来知られた電気式床暖房装置で用いられているものであってよく、加熱エリアの特定、通電の開始と停止、定常運転モードでの温度レベル設定、などの機能が備えられる。
【0022】
電気式床暖房パネル30は、図2(a)に緩衝材層を除去した状態の背面図の一例に示すように、木質基材31を有し、その裏面には配線溝が形成され、該配線溝の中には、図4に示す3線式コード状ヒータ20が埋め込まれている。埋め込まれた3線式コード状ヒータ20の一方端側は、後記する抵抗器付き温度ヒューズセット50(図5参照)を介して、電源コンセント60に接続しており、他方端側はフリーとなっている。また、木質基材31の裏面には、必須ではないが、図2(b)に示すように、遮音溝36が形成され、さらに、直貼り床材として用いることができるように、緩衝材層37が貼り付けられている。この例において緩衝材層37は、不織布層38と樹脂発泡体層39との2層構成とされている。
【0023】
図3は、電気式床暖房装置Aの電気回路図であり、交流電源は、コントローラ40から並列接続した複数枚の電気式床暖房パネル30にそれぞれ供給される。
【0024】
図4に示すように、3線式コード状ヒータ20は、第1のヒータ線21と、第2のヒータ線22と、銅線のような電気抵抗の小さい線からなる検知線23とからなる3線式ヒータであり、各線は、ヒータ線の異常発熱等で溶融する非導電性材料からなる被覆樹脂24,25,26でそれぞれ被覆されている。図4(b)に示すように3本の線は寄り合わされて一本の線となり、その全体が図4(a)に示すように耐熱PVCのような断熱性のある非導電性材料からなる被覆材27により覆われている。
【0025】
被覆樹脂24,25,26は、ナイロン系樹脂あるいはポリアミド系樹脂のような熱可塑性樹脂である。ただし、第1のヒータ線21を被覆する第1の被覆樹脂24と第2のヒータ線22を被覆する第2の被覆樹脂25には、溶融温度の異なる樹脂が用いられており、この例で、第1の被覆樹脂24の溶融温度は170℃、第2の被覆樹脂25の溶融温度は220℃である。すなわち、第2のヒータ線22は第1の被覆樹脂24の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂25で被覆されている。また、検知線23を覆う被覆樹脂26には、前記した比較して溶融温度の低い第1の被覆樹脂24と同じ樹脂が用いられている。
【0026】
これらの被覆樹脂24,25,26は、通常の運転時ではそのままで存在しており、絶縁材として機能している。しかし、第1のヒータ線21または第2のヒータ線22に断線あるいは部分断線等が生じてスパーク等が発生して、溶融温度を超える異常加熱状態が部分的に発生したときには、溶融して絶縁機能を喪失する。
【0027】
本発明において、各電気式床暖房パネル30における発熱回路は、図5に示すような構成を備える。図5において、20は上記の3線式コード状ヒータを示し、50は抵抗器付き温度ヒューズセット50を示す。3線式コード状ヒータ20の一方端側は、抵抗器付き温度ヒューズセット50を介して、電源に接続しており、他方端側は直接あるいはこの例のようにサーモスタット54を介して互いに接続している。
【0028】
より詳しくは、抵抗器付き温度ヒューズセット50は、一方側で電源コンセント60の一方極に適宜の結線具を介して接続し、他方側で3線式コード状ヒータ20の第2のヒータ線22と検知線23に結線具を介して接続する。そして、前記第2のヒータ線22に接続する側にはヒューズ51が備えられる。さらに、前記検知線23に結線具を介して接続する配線52を備えており、該配線52の他端は第2のヒータ線22側に接続している。そして、前記配線52には前記ヒューズ51に近接する位置に抵抗器53が取り付けてあり、検知線23に流れる電流が抵抗器53に流れて発熱するときに、その熱によってヒューズ51は溶断するように設計されている。この例で、抵抗器53の抵抗は150Ωであり、第1と第2のヒータ線21,22の抵抗値(例えば300Ω)よりも低い。また、ヒューズ51は99℃で溶断するようにされている。電源コンセント60の他方極は3線式コード状ヒータ20の第1のヒータ線21に接続している。
【0029】
上記の発熱回路において、電気式床暖房Aが正常に運転している環境では、供給される電力は、高い抵抗値を持つ第1のヒータ線21と第2のヒータ線22とを循環するように流れ、その発熱により床暖房が行われる。正常運転での温度制御等は前記したコントローラ40により行われる。正常運転時に前記配線52および検知線23には電流は流れず、またヒューズ51を流れる電流は、大きな抵抗値を持つヒータ線22の抵抗値に依存する小さな値であり、ヒューズ51が溶断することはない。
【0030】
製品寿命を超えてもなお継続使用していると、使用者が知らないうちに第1のヒータ線21と第2のヒータ線22のいずれかに部分断線が生じ、接触抵抗が異常に増加してスパーク等による異常加熱が生じる場合がある。図6は、そのような断線が第1のヒータ線21において起こった場合の状態を説明している。第1のヒータ線21のいずれかの箇所Pでスパーク等による異常加熱が生じたときに、その箇所の第1の被覆樹脂24は溶融し、そこに近接する検知線23を被覆する被覆樹脂26も溶融する。
【0031】
双方の被覆樹脂が溶融することにより、図6に領域Qで示すように、第1のヒータ線21と検知線23とが短絡した状態となり、電流は、その短絡箇所から検知線23側に流れる。検知線23に電流が流れることにより、前記のように抵抗器53は発熱し、その熱によってヒューズ51は溶断する。ヒューズ51が溶断することよりコントローラ40から発熱回路への電力供給は完全に遮断されるので、断線箇所Pでのそれ以上の発熱やスパークは起こらない。それにより、電気式床暖房パネル30の裏面に積層した前記した不織布層38や樹脂発泡体層39からなる緩衝材層37が着火するという事態は確実に回避される。
【0032】
図7は、断線が第2のヒータ線22において起こった場合の状態を説明している。第2のヒータ線22のいずれかの箇所でスパーク等による異常加熱が生じたときに、その箇所の第2の被覆樹脂25が昇温する。第2の被覆樹脂25の溶融温度は、第1のヒータ線21および検知線23を被覆している第1の被覆樹脂24,26の溶融温度よりも高く設定してあるので、第2の被覆樹脂25が溶融する前に、第1のヒータ線21および検知線23を被覆している第1の被覆樹脂24,26が溶融する。それにより、図6において説明したと同様に、領域Qにおいて、第1のヒータ線21と検知線23とが短絡した状態となる。
【0033】
抵抗器53の抵抗値は第2のヒータ線22の抵抗値より低い値に設定してあるので、第1のヒータ線21と検知線23との短絡により、検知線23側により多くの電流が流れるようになり、抵抗器53は発熱する。それにより、この場合にも、第1のヒータ線21側で断線が起こった場合と同様に、ヒューズ51は溶断する。
【0034】
上記した形態の抵抗器付き温度ヒューズセット50を用いる場合に、抵抗器53の容量が小さい場合には、短絡時に抵抗器53からの発熱によりヒューズ51が溶断する前に、短絡時に抵抗器53を流れる電流によって、抵抗器53そのものが破損(抵抗器断線)することが起こり得る。そのような場合には、第2のヒータ線22の抵抗値と等しいかそれよりも高い値の抵抗値を持つ抵抗器53を用いる。それにより、ヒューズ51が溶断するまでに要する時間は長くはなるとしても、抵抗器53の破損によりヒューズ51の溶断が起こらないという不都合を回避できる。以下に、本発明者らが行った試験例を示す。
【0035】
抵抗値が300Ωである第1と第2のヒータ線を持つ3線式コード状ヒータと、抵抗値が100Ωである抵抗器53を備えた抵抗器付き温度ヒューズセット50を用いて、発熱回路を形成した。電源線付近で短絡を発生させたところ、抵抗器53からの発熱によりヒューズ51が溶断する前に、抵抗器断線が生じた。同じ形態の抵抗器付き温度ヒューズセットであって、抵抗値が異なる抵抗値53を備えた抵抗器付き温度ヒューズセットを用いて発熱回路を形成したところ、抵抗器断線は生じずに、ヒューズ溶断が得られた。表1にその結果を示した。
【表1】

【0036】
図3に示すように、本発明による電気式床暖房装置Aでは、上記の電気式床暖房パネル30の複数枚が並列接続した状態で床下地面に敷き詰められている。そのために、上記のようなヒューズ51の溶断は、個々の電気式床暖房パネル30において生じることとなり、他の電気式床暖房パネル30の運転には影響を与えない。必要な場合には、電気式床暖房装置Aはそのまま継続して運転することもできる。その際にも、安全性は確保される。また、溶断が生じた電気式床暖房パネル30のみを簡単に交換することも可能である。
【0037】
なお、上記した例は、本発明の好ましい態様であって、本発明はこれに限らない。別途形成した抵抗器付き温度ヒューズセット50を用い、それを介して電源60と3線式コード状ヒータ20を接続するようにしたが、抵抗器付き温度ヒューズと3線式コード状ヒータとが一体化したもの作り、それを木質基材31の裏面に形成した配線溝内に埋め込むようにしてもよい。この態様は、電気式床暖房パネル30の製造工程をより簡素化できる利点がある。なお、過電流ヒューズを使用する場合には、前記した抵抗器53は組み込まれない。
【0038】
また、上記したように、本発明による電気式床暖房パネル30は、異常時での安全性が確保されることに加え、木質基材31の裏面に3線式コード状ヒータ20による発熱回路を組み込む作業は、3線式コード状ヒータ20を単に床基材裏面に形成した溝内に埋め込んでいけばよく、閉ループを作る必要がないので、電気式床暖房パネルへのヒータ線の組み込み作業は大きく簡素化される効果がもたらされる。場合によっては、NCによる配線も可能となる。さらに、一本の3線式コード状ヒータ20内で、実質的に平行に走る第1と第2の2本のヒータ線21,22を電流が往復で流れることから磁界が打ち消し合うようになり、電気式床暖房パネル30からの電磁波の発生もカットされる。
【0039】
図8(a)は、本発明による電気式床暖房パネル30の他の例を、緩衝材層を除去した状態の背面図で示している。電気式床暖房パネル30は木質基材31を有し、木質基材31の裏面には配線溝が形成され、配線溝の中には前記3線式コード状ヒータ20が埋め込まれている。さらに、電気式床暖房パネル30は2つの電源コンセント60を有し、その間に電源線61が配設され、そこからリード線62,63が引き出されている。これらも木質基材31に形成した配線溝に入り込んでいる。
【0040】
一方のリード線62は、適宜の結線具64を介して、3線式コード状ヒータ20の第1のヒータ線21に接続し(接続箇所1)、他方のリード線63は、図5に示した形態の抵抗器付き温度ヒューズセット50のヒューズ51側に接続し(接続箇所2)、該ヒューズ51からの配線51aは、やはり結線具64を介して、3線式コード状ヒータ20の第2のヒータ線22に接続している(接続箇所3)。さらに、抵抗器付き温度ヒューズセット50の抵抗器53に接続する配線52は、やはり結線具64を介して、3線式コード状ヒータ20の検知線23に接続している(接続箇所4)。さらに、3線式コード状ヒータ20の他端側において、前記検知線23については端末処理23aがなされると共に、第1と第2のヒータ線21,22の末端は、ここでも適宜の結線具64を介して、サーモスタット54の端子線に接続している(接続箇所5,6)。
【0041】
特に図示しないが、従来のものでは、電源線とサーモスタットリード線、サーモスタットリード線とヒータ線、ヒータ線と温度ヒューズ、温度ヒューズと電源リード線、の4つの接続箇所であり、本発明による回路では、接続箇所が増加する。
【0042】
図8(a)に示すように、上記した各結線部は、裏面の平坦性を確保するために、抵抗器付き温度ヒューズセット50あるいはサーモスタット54と共に、木質基材31の裏面に形成された空所70内に入り込むようにされるが、結線具64は比較的大きなものであり、図8(b)に示すように、3線式コード状ヒータ20の第1と第2のヒータ線21,22および検知線23の外側被覆材27から外に出ている長さを同じ長さに切断して、結線作業を行うと、図8(a)に示すように、2個あるいは3個の結線具64が一箇所に集中しかつ並列した状態となり、その全体を収容するためには、大きな面積の空所70を木質基材31の裏面に形成することが必要となる。特に、リード線62,63と3線式コード状ヒータ20との結線部では、3つの結線具64が存在することから、より幅が広くかつ大面積の空所70が必要となる。
【0043】
木質基材31の裏面に広い面積の空所70を形成すると、前記したように、木質基材31の強度低下とともに、施工後の暖房床面を歩いたときに、わずかな凹みが生じて他の部分と異なる踏み感を歩行者に与える恐れがある。図9(a)は、本発明による電気式床暖房パネル30の他の例を示す図8(a)に相当する図であり、この電気式床暖房パネル30は、結線部を改良することにより、上記の不都合を解消している。
【0044】
すなわち、ここでは、図9(b)に示すように、3線式コード状ヒータ20の第1と第2のヒータ線21,22および検知線23の外側被覆材27から外に出ている長さが異なる長さとなるように切断し、それを用いて、図8(a)に示したものと同様にして、結線作業を行っている。なお、図9(a)において、図8(a)におけると同じ部材には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0045】
図示されるように、抵抗器付き温度ヒューズセット50と3線式コード状ヒータ20との間の2つの結線具64a,64bは、木質基材31の長手方向に分散して配置しており、そのために、空所70aは、図8(a)に示した電気式床暖房パネル30における空所70よりも、幅の狭いものとなっている。また、リード線62と3線式コード状ヒータ20(の第1のヒータ線21)との間の結線具64cは、前記結線具64a,64bから木質基材31の幅方向に分散した位置に配置され、該結線具64cを収容するために、空所70aとは異なる独立した小さな空所70bが木質基材31の裏面に形成されている。
【0046】
このように、電源線61からのリード線62,63と3線式コード状ヒータ20との結線箇所を木質基材31の長手方向または幅方向またはその双方向に分散して配置させることにより、結線具64を収容するための空所70をより小さなものとすることができ、前記した、木質基材31の強度低下や、施工後の暖房床面を歩いたときに感じる異なる踏み感等を解消することができる。
【0047】
図10は、3個の結線具64を分散させる他の態様を示している。図10(a)では、3個の結線具64をすべて木質基材31の長手方向にずらして配置しており、このように分散させることによって、図8(a)に示したものと比較して、空所70の横幅を狭くしている。図10(b)では、3個の結線具64を個々に分散させ、それぞれ独立した小さな空所70内に収容している。このような態様も、検知線23に流れる電流に起因して溶断するヒューズの形態およびそのヒューズと第2のヒータ線側との接続態様を適宜選択することにより、採用可能である。
【符号の説明】
【0048】
A…電気式床暖房装置、10…床下地、20…3線式コード状ヒータ、21…第1のヒータ線、22…第2のヒータ線、23…検知線、27…被覆材、24、26…第1の被覆樹脂、25…第2の被覆樹脂、30…電気式床暖房パネル、31…木質基材、36…遮音溝、37…緩衝材層、40…コントローラ、50…抵抗器付き温度ヒューズセット、51…ヒューズ、52…検知線に接続する配線、53…抵抗器、54…サーモスタット、60…電源コンセント、61…電源線、62,63…リード線、64,64a,64b…結線具、70,70a,70b…主に結線具を収容するため空所



【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の裏面にコード状ヒータによる発熱回路を組み込んだ電気式床暖房パネルであって、
前記コード状ヒータは、第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなり、前記第1のヒータ線と前記検知線とはそれぞれが第1の被覆樹脂で被覆されており、前記第2のヒータ線は前記第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている3線式コード状ヒータであり、
前記3線式コード状ヒータの前記第1と第2の2本のヒータ線の一方端は直接的にまたは間接的に電源に接続しており、他方端は互いに接続しており、
前記発熱回路には、少なくとも前記第1の被覆樹脂が溶融することにより生じる前記第1のヒータ線と前記検知線との短絡により、前記検知線に接続された抵抗器が通電されて発熱することに起因して溶断するヒューズが、前記第2のヒータ線側に接続されており、
前記抵抗器は、前記第2のヒータ線の抵抗値と等しいかそれよりも高い値の抵抗値を有することを特徴とする電気式床暖房パネル。
【請求項2】
前記ヒューズが抵抗器付き温度ヒューズであり、前記抵抗器が前記抵抗器付き温度ヒューズの抵抗器であることを特徴とする請求項1電気式床暖房パネル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気式床暖房パネルの複数枚が並列接続した状態で床下地面に敷き詰められていることを特徴とする電気式床暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−57497(P2013−57497A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227963(P2012−227963)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【分割の表示】特願2008−54784(P2008−54784)の分割
【原出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】