説明

電気式床暖房用パネルおよびそれを用いた電気式床暖房構造とその施工方法

【課題】一業者での施工が可能な電気式床暖房構造において、施工コストをさらに低減できるようにした、電気式床暖房用パネルおよびそれを用いた電気式床暖房構造とその施工方法が提供する。
【解決手段】電気式床暖房用パネル10として、一側縁側に発熱源への導電線3を備えた面状発熱体1と、面状発熱体1の導電線3を備えた側縁側に固定された床仕上げ材5と、電源ケーブル11とを備えたものを用いる。施工に際して、電気式床暖房用パネル10の所要枚数を床下地上に配置する。その際に、前記電源線11を床下地の下方に落とし込む。配置した電気式床暖房用パネル10における床仕上げ材5が固定されていない面状発熱体1の領域に所要枚数の床面用床仕上げ材30を敷設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式床暖房用パネルおよびそれを用いた電気式床暖房構造とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通電することにより発熱する線状または面状の発熱源を備えた発熱体を用いて床暖房構造を施工することは知られている。従来の電気式床暖房構造は、その施工に際して、例えば特許文献1や2に記載されるように、ヒータを備えた熱源器材を電気施工業者が床下地面に配置する工程と、配置された熱源器材の上に別の業者が木質床材のような床仕上げ材を敷設していく工程とを別々に行う、いわゆる「分離型」施工と、例えば特許文献3に記載のように、予め熱源器材を一体に組み込んだヒータ一体型床仕上げ材を一業者が床下地の上に施工していく「一体型」施工とが、採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−148754号公報
【特許文献2】特開2006−292311号公報
【特許文献3】特開2008−57280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した「分離型」による施工は二業者による施工のため、業者間での作業日程の調整が必要であり、またトータルとしての作業工賃が高くなることもあって、「一体型」施工が望まれることが多い。しかし、「一体型」施工の場合、複数枚のヒータ一体型床仕上げ材に内蔵されている熱源体を電気接続するために、多数個のコネクタを必要としており、部品費用の面でなお改良すべき点を残している。また、ヒータを一体に組み込んだ床仕上げ材を製造するにも、多くの作業量とコストが必要となっている。
【0005】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、一業者での施工が可能な電気式床暖房構造において、施工コストをさらに低減することができるようにした、電気式床暖房用パネルおよびそれを用いた電気式床暖房構造とその施工方法を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電気式床暖房用パネルは、一側縁側に発熱源への導電線を備えた面状発熱体と、該面状発熱体の前記導電線を備えた側縁側に固定された床仕上げ材と、電源ケーブルと、を備え、前記電源ケーブルの一方端と前記導電線とは前記床仕上げ材の部分において結線されており、かつ電源ケーブルの他方端は床仕上げ材の下側面から外部に延出していることを特徴とする。
【0007】
上記の電気式床暖房用パネルは、所要に加熱面積を備えた面状発熱体の一方端に1個の床仕上げ材が固定されているだけの構成であり、構成を簡素化できると共に、製造コストを低減することができる。また、電気式床暖房用パネル同士を電気接続するためのコネクタを備えないので、部品点数および部品コストも低減することができる。
【0008】
本発明による電気式床暖房構造は、床下地面に配置された所要枚数の上記電気式床暖房用パネルと、前記電気式床暖房用パネルにおける前記床仕上げ材が固定されていない面状発熱体の領域に敷設された所要枚数の床面用床仕上げ材とを少なくとも備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明による電気式床暖房構造の施工方法は、上記の電気式床暖房用パネルの所要枚数を床下地上に配置する工程、各電気式床暖房用パネルに固定した床仕上げ材の下側面から延出している電源線を電力供給側に接続する工程、各電気式床暖房用パネルにおける前記床仕上げ材が固定されていない面状発熱体の領域に所要枚数の床面用床仕上げ材を敷設する工程、とを少なくとも備えることを特徴とする。
【0010】
上記の電気式床暖房構造およびその施工方法では、本発明による電気式床暖房用パネルの必要枚数を床下地上に配置しながら、各電気式床暖房用パネルに固定した床仕上げ材の下側面から延出している電源線を床下地の下方に落とし込む作業を行い、その後、各電気式床暖房用パネルにおける前記床仕上げ材が固定されていない面状発熱体の領域に所要枚数の床面用床仕上げ材を敷設する作業を行うことにより、電気式床暖房構造の施工を終えることができる。この作業は、電気式床暖房用パネルを提供する側の作業者のみで行うことができるので、高い施工性が得られる。また、施工コストも低減する。さらに、前記床面用床仕上げ材には、従来のフロア施工で使用されている床仕上げ材をそのまま用いることができるので、この点でも施工コストを低減することができる。
【0011】
床下地の下方に落とし込んだ1本あるいは複数本の電源線を商用電源側に接続する作業が必要となるが、この作業と前記した電気式床暖房用パネルの必要枚数を床下地上に配置する作業および床面用床仕上げ材とは、まったく分離して行うことができるので、従来の「分離型」による施工で必要とされた二業者間での作業日程の調整は不要であり、この点からも施工性は向上する。
【0012】
なお、本発明において用いる面状発熱体は、従来知られた任意の面状発熱体を適宜用いることができる。フィルム状ヒータであってもよく、シート状ヒータであってもよい。可撓性を備えていてもよく、備えてなくてもよい。より具体的な例として、布材や合成樹脂材などの耐熱性および絶縁性を有する面状基材にニクロム線などの発熱体を敷設して絶縁処理した面状発熱体、前記発熱体としてニクロム線の代わりに絶縁性繊維を芯線として、当該芯線にカーボン粉末などの導電性材料を付着させた形態の面状発熱体、カーボン粉末あるいはカーボンの短繊維を母材中に含ませた導電性の層を絶縁性基板の表面に形成した面状発熱体、PTC面状発熱体、さらには、特開平6−76926号公報に記載されるような、絶縁性繊維と導電性繊維とからなる布状体に樹脂材を含浸させ、導電性繊維に通電することによって発熱させるようにした1または2以上の発熱層と、絶縁性繊維からなる布状体に樹脂を含浸させた1または2以上の絶縁層とを積層させて構成した面状発熱体、などが挙げられる。
【0013】
また、本発明において、面状発熱体の導電線を備えた側縁側に固定される床仕上げ材と床面用床仕上げ材は、異なる形状のものであってもよいが、好ましくは、同じ形状および同じ表面模様のものを用いる。それにより、コストの低減と電気式床暖房構造の高意匠性が得られる。その場合、面状発熱体に固定される床仕上げ材の裏面には、面状発熱体の導電線と電源ケーブルとを案内しかつ結線するための凹溝が形成される。床面用床仕上げ材は裏面に凹溝が形成されていてもよく、裏面が平坦なものであってよい。また、床仕上げ材および床面用床仕上げ材は、従来知られた木質系床材であることが好ましいが、構築する電気式床暖房構造によっては、タイルやクッションシート材などであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一業者での施工が可能な電気式床暖房構造において、施工コストをさらに低減できるようにした、電気式床暖房用パネルおよびそれを用いた電気式床暖房構造とその施工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による電気式床暖房用パネルの一例をその製造過程と共に説明する図。
【図2】図1に示した電気式床暖房用パネルを上から見た斜視図。
【図3】本発明による電気式床暖房構造の一例をその製造過程と共に説明する図。
【図4】本発明による電気式床暖房構造の要部を示す断面図。
【図5】本発明による電気式床暖房用パネルの他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施の形態に基づき説明する。
図1に示すように、電気式床暖房用パネル10は、面状発熱体1と床仕上げ材5とからなる。前記したように面状発熱体1は従来知られている任意の形態の面状発熱体であってよい。面状発熱体1の形状や大きさも任意である。例えば、厚さは0.3〜2.0mm、横幅aは1800mm、長さbは600〜3000mm程度の矩形状のものが例として挙げられる。図1(a)に示すように、面状発熱体1は、その一方側端側に、導電線取り出し部2を有しており、そこから内部の電気加熱体に接続する導電線3が引き出されている。床仕上げ材5は、この例では、例えば合板基材6と表面化粧層7とからなる従来知られた木質系床材であり、厚さは12mm程度、長さは1800mm、幅は300mm程度のものである。床仕上げ材5の裏面には、前記導電線3を案内するための凹溝8が形成され、凹溝8の一部は面積の大きい結線部9とされている。
【0017】
図1(a)に示すように、床仕上げ材5は、面状発熱体1の前記導電線3を備えた側縁側に、一部が重なるようにして、接着剤など適宜の固定手段によって固定される。その際に、図1(b)に示すように、面状発熱体1から引き出されている導電線3を床仕上げ材5の裏面に形成した凹溝8内に入れ込んでおく。
【0018】
次に、図1(c)に示すように、電源ケーブル(例えば、VVF)11を用意し、前記凹溝8に形成した結線部9において、導電線3と電源ケーブル11とを結線する。結線後、結線した部分12に対して適宜の絶縁処理を施すことにより、図1(d)に示すように、また、その上面から見た斜視図を図2に示すように、本発明による電気式床暖房用パネル10とされる。なお、結線後の電源ケーブル11の他方端は、床仕上げ材5の下側面から外部に延出させた状態としておく。
【0019】
なお、図示しないが、前記凹溝8および結線部9に収容した導電線3が、作業時等にそこから離脱しないように、適宜の手段を講じておくことは好ましい。具体的には、少なくとも凹溝8の部分に蓋をする、凹溝8の幅を導電線3の太さをほぼ一致させて摩擦抵抗を両者間に生じさせる、粘着テープを利用する、フックのような適宜の落下防止部品を別途取り付ける、等の手段が挙げられる。
【0020】
次に、上記の電気式床暖房用パネル10を用いて電気式床暖房構造を施工する方法について説明する。最初に、床暖房を施工しようとする床下地面の所要の領域1枚または必要枚数の電気式床暖房用パネル10を配置する。図4はその一例を示しており、ここで床下地面は、根太20、20の間に配置された発泡樹脂等である断熱材22とその上に敷き詰めた厚さ12mm程度の下地合板23とで作られている。施工にあたって、配置する電気式床暖房用パネル10の前記床仕上げ材5の下側面から延出している電源ケーブル11が位置することとなる個所には、下地合板23および断熱材22を貫通する貫通孔24を形成しておく。なお、下地合板23に替えて、同じ厚さのパーティクルボードのような木質板を用いるようにしてもよい。
【0021】
作業者は、前記貫通孔24に前記電源ケーブル11を通して床下地の下方に落とし込みながら、必要枚数の電気式床暖房用パネル10を床下地面に配置する。その状態が図4に示される。次に、図3に示すように、好ましくは床仕上げ材5と同じ形状であり、裏面が平坦面である床面用床仕上げ材30を、電気式床暖房用パネル10における床仕上げ材5が固定されていない面状発熱体1の領域に敷設する。さらに、床下地面における電気式床暖房用パネル10が配置されていない領域にも床面用床仕上げ材30を敷設する。それにより、図3に示すように、本発明による電気式床暖房構造が形成される。
【0022】
適当な時に、床下地の下方に落とし込んだ1本あるいは複数本の電源線11を商用電源側(例えば、従来知られた電気式床暖房用コントローラ)に接続する。それにより、電気式床暖房構造を実際に使用できるようになる。電気式床暖房用コントローラを設置する作業も含めた前記の接続作業は、電気式床暖房用パネル10を床下地上に配置する作業および床面用床仕上げ材30を敷設する作業とは、まったく分離して行うことができる。
【0023】
なお、電気式床暖房用パネル10が配置されている領域と配置されていない領域とで、床面用床仕上げ材30を敷設したときに、無視できない大きさの段差が生じるような場合には、段差を解消するために、電気式床暖房用パネル10が配置されていない領域に、適宜の嵩上げ材を敷き詰めるようにしてもよい。
【0024】
図示しないが、前記面状発熱体1に適数の穴をあけておき、その上に床面用床仕上げ材30を敷設するときに、床面用床仕上げ材30の裏面に塗布した接着剤が該穴を通して床下地面に透過するようにすることは好ましい。それにより、面状発熱体1を介して、床面用床仕上げ材30と床下地面とを容易に接着一体化することができる。その際に、釘打ちを併用するようにしてもよい。
【0025】
図5は、電気式床暖房用パネルの他の形態を示している。この電気式床暖房用パネル10Aは、面状発熱体が従来知られた面状PTCヒータ1aであり、この例では、その複数枚(図示の例では、厚さ0.5mm、幅270mm、長さ600mmの面状PTCヒータが6枚)が、適宜の隙間p(30mm程度であってよい)をおいて配置しており、各面状PTCヒータ1aは、電気的に並列接続となるように、その導電線3(図5には示されない)を前記電源ケーブル11に対して前記床仕上げ材(例えば、厚さ12mm程度、長さは1800mm、幅は150mm程度)5内で結線している。この場合、前記隙間pは、電気式床暖房用パネル10Aを床下地面上に配置し、その上に床面用床仕上げ材30を敷き詰めるときの、接着剤および釘打ち等の領域として、利用される。
【符号の説明】
【0026】
1、1a…面状発熱体、
2…導電線取り出し部、
3…導電線、
5…床仕上げ材、
8…凹溝、
9…結線部、
10、10A…電気式床暖房用パネル、
11…電源ケーブル、
12…結線した部分、
20…根太、
22…断熱材、
23…下地合板、
24…貫通孔、
30…床面用床仕上げ材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側縁側に発熱源への導電線を備えた面状発熱体と、該面状発熱体の前記導電線を備えた側縁側に固定された床仕上げ材と、電源ケーブルと、を備え、
前記電源ケーブルの一方端と前記導電線とは前記床仕上げ材の部分において結線されており、かつ電源ケーブルの他方端は床仕上げ材の下側面から外部に延出していることを特徴とする電気式床暖房用パネル。
【請求項2】
床下地面に配置された所要枚数の請求項1に記載の電気式床暖房用パネルと、前記電気式床暖房用パネルにおける前記床仕上げ材が固定されていない面状発熱体の領域に敷設された所要枚数の床面用床仕上げ材とを少なくとも備えることを特徴とする電気式床暖房構造。
【請求項3】
請求項1に記載の電気式床暖房用パネルの所要枚数を床下地上に配置する工程、
各電気式床暖房用パネルに固定した床仕上げ材の下側面から延出している電源線を床下地の下方に落とし込む工程、
各電気式床暖房用パネルにおける前記床仕上げ材が固定されていない面状発熱体の領域に所要枚数の床面用床仕上げ材を敷設する工程、
とを少なくとも備えることを特徴とする電気式床暖房構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−175147(P2010−175147A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18615(P2009−18615)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】