説明

電気機器用ケース

【課題】大掛かりな位置決め装置を不要とし、且つ底板3の位置決めを容易にして電気機器用ケースの製造を能率良く行わせる。
【解決手段】ケース胴板2の下端から所定距離離隔した位置の内壁部に周方向に所定間隔をおいて複数の位置決め用係止突起2cが前記ケース胴板2の径方向に突設され、この位置決め用係止突起2cに底板3が当接されて溶接される。また、前記ケース胴板2の下端部分は互いに離間する方向に拡開されたテーパ部となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油入変圧器等の電気機器に使用されるケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気機器本体を収納するケースの底板は、発錆による油漏れ等を防止する目的で床面から10mm以上離隔させることが電力事業連合会発行の電力規格C−501により規定されているため、平形鋼を所定高さに加工したベースを底板に取付けるか、あるいは底板をケース胴板の下端から所定寸法上方に位置させた状態で溶接して一体化することにより、前記電力規格に適合させている。
【0003】
電気機器本体を収納するケース1は一般的に特許文献1に示されているように、上端にフランジ2Aを有するケース胴板2と、該ケース胴板2の下端を閉じるように溶接により取付けた底板3とからなり、ケース1内に充填された絶縁油内に電気機器本体を収納した後フランジ2Aに図示しない蓋板が取付けられる。この様な電気機器用ケース1においてケース胴板2に底板3を取付けるに当たっては、ケース胴板2をフランジ2A面側が下方に向いた状態とし、底板3をケース胴板2内側の任意な位置に配置した後架台4に保持させる。しかる後、上部駆動軸6を上部より下方に移動させ、底板位置決め金具6Aをケース胴板2の下端2Bに当接させ、その後下部駆動軸5を下部より上方に移動させ、底板保持金具5Aで底板3を押し上げ、底板位置決め金具6Aとで挟み付けて仮固定する。その後横駆動軸7をケース胴板2方向に移動させ、可動締め付け治具7Bと固定締め付け治具7Aとでケース胴板2と底板3を締め付け仮固定する。その後、下部駆動軸5と上部駆動軸6とを移動させて底板保持金具5Aと底板位置決め金具6Aとを所定位置に退避させ、次いで溶接トーチ8により底板3を上方からケース胴板2に溶接にて固定していた。
【特許文献1】特開平5−335165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケース胴板2に底板3を取付ける場合、上記のような方法では下部駆動軸5、底板保持金具5Aと、上部駆動軸6、底板位置決め金具6Aとを用いるため、大掛かりな設備が必要であり、コストが高くなるという問題がある。また底板3の位置決めのための工数が多くなり、製造能率が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、大掛かりな設備を用いることなくケース胴板に底板を容易に取付けるようにした電気機器用ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、両端が開口し上端にフランジを有するケース胴板と、該ケース胴板の下端を閉じるようにケース胴板の下端から上方へ所定距離離隔させた位置に設けられる上面側に電気機器本体の振れ止め金具を有する底板とからなる電気機器用ケースであって、第1の発明においては、前記ケース胴板の前記所定距離離隔した位置の内壁部に周方向に所定間隔をおいて複数の位置決め用係止突起が前記ケース胴板の径方向に突設されていることを特徴とする電気機器用ケース。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に記載の上記ケース胴板の下端部分が互いに離間する方向に拡開されたテーパ部となっていることを特徴とする電気機器用ケース。
【0008】
第3の発明は、第1の発明に記載の上記底板の上面側周方向の上記位置決め用係止突起と対応する位置に該位置決め用係止突起に係合する凹部が設けられていることを特徴とする電気機器用ケース。
【発明の効果】
【0009】
上記第1の発明によれば、ケース胴板の下端から上方へ所定距離離隔した位置の内壁部に周方向に所定間隔をおいて複数の位置決め用係止突起が前記ケース胴板の径方向に突設されているため、ケース胴板内へ底板を挿入して位置決め用係止突起に当接させることにより、底板を容易に所定位置に配置でき、大掛かりな設備が不要となり、コストの低減が図られる。また底板の位置決めのための工数を削減することができ、電気機器用ケースの製造を能率良く行うことができる。
【0010】
上記第2の発明によれば、上記の効果に加えて、ケース胴板の下端部分が互いに離間する方向に拡開されたテーパ部となっているため、上記底板を前記ケース胴板内に容易に挿入することができる。
【0011】
上記第3の発明によれば、上記の効果に加えて、底板の上面側周方向の上記位置決め用係止突起と対応する位置に該位置決め用係止突起に係合する凹部が設けられているため、前記位置決め用係止突起に前記凹部を係合させることにより、前記底板の上面側に予め取付けられている振れ止め金具を決められた方向に向けて自動的に位置合わせをすることができるとともに、底板が周方向に移動するのを阻止することができ、底板を決まった方向に正確に配置させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明に係る電気機器用ケースの一実施形態を示した要部の縦断面図、図2は本発明の電気機器用ケースの組立て時に用いる装置の概略構成図である。
【0013】
1は鋼板からなる電気機器用ケースで、この電気機器用ケース1は、フランジ2a、折返し部2bを有するケース胴板2と、該ケース胴板2の下端を閉じるように、前記ケース胴板2の下端から上方へ所定距離離隔させた位置に取付けられた底板3とにより構成されている。
【0014】
上記ケース胴板2は、所定の長さに切断された図示しない矩形板状の鋼板の長辺部分の一端部をプレス加工により外側に向けて直角に折り曲げてフランジ2aを形成し、他端部をプレス加工により内側に向けてヘミング曲げして折返し部2bを形成し、この折返し部2b側の下端部から上方へ所定距離離隔させた位置にプレス加工により内側に向かって突出する複数の位置決め用係止突起2cを所定の間隔をあけて設けた後、この矩形板状の鋼板をロール機により丸めて両側端部を溶接して円筒形に成形されており、前記ケース胴板2の下端部分は互いに離間する方向(位置決め用係止突起の位置からケース胴板の下端部側に向かって次第に径が大きくなる向き)に拡開されたテーパ部2dとなっている。
【0015】
上記ケース胴板2の下端部をヘミング曲げして折返し部2bを形成することにより、前記ケース胴板2の下端部の強度を補うことができ、電気機器を運搬する際の衝撃による電気機器用ケース下端部の変形を防止することができる。
【0016】
上記底板3の上面側には、上記ケース1内に収納される図示しない電気機器本体が水平方向に移動するのを阻止するために予め振れ止め金具4が取付けられている。該振れ止め金具4は、前記ケース胴板2に前記底板3を配置する際に決められた方向に向くように定められている。
【0017】
上記ケース胴板2の内径は、上記底板3の挿入および上記振れ止め金具4の位置合わせを容易にするために、前記底板3の外径よりも若干大きく設定するのが好ましい。
【0018】
上記ケース胴板2に上記底板3を取付けるに当たっては、先ず、前記ケース胴板2を図示しない搬送装置により支持台5の位置まで搬送して該支持台5の上にフランジ2a面側が下方に向いた状態で載置する。次いで前記支持台5の周囲に複数配設されている各固定手段駆動機構6を動作させて各固定部材7を同時に同じ変位量だけ前記支持台5側に前進させ、前記各固定部材7の外周の溝7aにケース胴板2のフランジ2aを嵌合させる。このようにして前記ケース胴板2を前記支持台5の上に位置決め固定した後、先ず、上面側に振れ止め金具4を有する前記底板3を斜めにして前記ケース胴板2内に挿入し、前記底板3の一端部側をケース胴板2の内壁に当接させる。次に前記底板3の他端部側をハンマー等により叩き、前記ケース胴板2の内壁に沿わせて前記ケース胴板2の上端部側に移動させ、第2図に示すように前記底板3を前記位置決め用係止突起2cに当接させて水平状態に配置させる。次に、図示しない電磁石または永久磁石を用いて前記底板3を掴み、底板3を周方向に回転させて前記振れ止め金具4を決められた方向に向けて位置合わせをする。次いで溶接トーチ8を上方から前記ケース胴板2と前記底板3との接合部に指向させて仮固定のための仮付け溶接を行った後、溶接トーチ8を前記支持台5の中心軸線を中心にして移動させつつ前記ケース胴板2および前記底板3の全周に亘って本溶接を行い、前記ケース胴板2に前記底板3を接合して上記電気機器用ケース1を組立てる。しかる後前記各固定手段駆動機構6を動作させて前記各固定部材7を後退させることにより前記ケース胴板2の固定を解除する。上記の実施例では、上記ケース胴板2が円筒形に形成されていたが、断面が略矩形状を呈する角形のケース胴板に略矩形板状の底板を溶接する場合にも同様に本発明を適用することができる。この場合ケース胴板の断面の長辺部分に対して固定部材を2個ずつ設け、短辺部分に対しては固定部材を1個ずつ設ける等、固定部材の数はケース胴板の形状に応じて適宜に増減させればよい。また支持台がケース胴板の断面形状に合せて略矩形状の断面を有する形状に構成される。
【0019】
上記振れ止め金具4を決められた方向に向けて容易に位置合わせをするために、上記ケース胴板2と上記底板3とに予め目印を付けておくことが好ましい。
【0020】
上記のように、ケース胴板2と底板3とに予め目印を付けておけば、前記ケース胴板2内に底板3を挿入する際、前記ケース胴板2の目印と前記底板3の目印とを合致させることにより、振れ止め金具4を決められた方向に向けて自動的に位置合わせをすることができる。
【0021】
図3は本発明に係る電気機器用ケースの他の実施形態を示したケースの縦断面図、図4は図3に示した電気機器用ケースの平面図、図5は図3の要部を示した拡大図、図6は図4の要部を示した拡大図である。
【0022】
本例の電気機器用ケース1では、上記底板3の上面側周方向の上記位置決め用係止突起2cと対応する位置に該位置決め用係止突起2cに係合する凹部3aが設けられている。その他の構成は、第1例と同様になっている。
【0023】
上記実施の形態の第2例において、位置決め用係止突起2cと底板3の凹部3aとの位置合わせを容易にするために、上記ケース胴板2の位置決め用係止突起2cが設けられている位置と、底板3の凹部3aが設けられている位置には予め目印を付けておくことが好ましい。
【0024】
上記のように、ケース胴板2の位置決め用係止突起2cが設けられている位置と、底板3の凹部3aが設けられている位置に予め目印を付けておけば、前記ケース胴板2内に底板3を挿入する際、前記ケース胴板2の目印と前記底板3の目印とを合致させることにより、前記位置決め用係止突起2cに前記凹部3aを容易に係合させることができるとともに、振れ止め金具4を決められた方向に向けて自動的に位置合わせをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る電気機器用ケースの一実施形態を示した要部の縦断面図である。
【図2】本発明の電気機器用ケースの組立て時に用いる装置の概略構成図である。
【図3】本発明に係る電気機器用ケースの他の実施形態を示した縦断面図である。
【図4】図3に示した電気機器用ケースの平面図である。
【図5】図3の要部を示した拡大図である。
【図6】図4の要部を示した拡大図である。
【符号の説明】
【0026】
1 電気機器用ケース
2 ケース胴板
2a フランジ
2b 折返し部
2d テーパ部
2c 位置決め用係止突起
3 底板
3a 凹部
4 振れ止め金具
5 支持台
6 固定手段駆動機構
7 固定部材
7a 溝
8 溶接トーチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口し上端にフランジを有するケース胴板と、該ケース胴板の下端を閉じるように前記ケース胴板の下端から上方へ所定距離離隔した位置に設けられる上面側に電気機器本体の振れ止め金具を有する底板とからなる電気機器用ケースにおいて、前記ケース胴板の前記所定距離離隔した位置の内壁部に周方向に所定間隔をおいて複数の位置決め用係止突起が前記ケース胴板の径方向に突設されていることを特徴とする電気機器用ケース。
【請求項2】
上記ケース胴板の下端部分は互いに離間する方向に拡開されたテーパ部となっていることを特徴とする請求項1に記載の電気機器用ケース。
【請求項3】
上記底板の上面側周方向の上記位置決め用係止突起と対応する位置には該位置決め用係止突起に係合する凹部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気機器用ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−286671(P2006−286671A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100417(P2005−100417)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】