説明

電気自動車用の情報端末及びクルーズコントロール装置

【課題】充電時間を含む目的地までの総所要時間を短縮することができる可能な走行方法を運転者に提供する電気自動車用の情報端末又はクルーズコントロール装置。
【解決手段】地図情報に基づいて自車両が現在位置から目的地までの経路を走行する所要時間を演算する電気自動車用の情報端末において、目的地までの経路を検索し設定する経路設定手段と、前記経路設定手段で設定された目的地までの経路途中における充電場所を設定する補充電場所設定手段と、前記補充電場所設定手段で設定された充電場所に関する情報を取得する充電設備情報取得手段と、を備えて、前記充電場所までの区間における推奨車速又は前記推奨車速を含む車速範囲を演算すること、更に、該推奨車速を基準車速に設定すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に用いられる車載情報端末およびそれを用いた車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の車載バッテリは、充電に数十分から数時間を要するため、目的地までの経路途中で追加充電が必要となると、総所要時間に占める充電時間の割合が無視できないほど大きい。そのことが電気自動車の利便性を損ない、電気自動車の普及を妨げる一つの要因となっている。
【0003】
本発明の背景技術を示すものとして特許文献1がある。この特許文献1は、電気自動車のナビゲーションシステムに関するものであり、ここでは、目的地までの総所要時間を、充電にかかる時間を含めて表示し、また、充電設備近辺の食事場所、観光スポット、レジャー施設等の情報も提供するナビゲーションシステムが開示されている。このシステムを利用することにより、充電時間を含む目的地までの総所要時間を把握する共に、充電時間中の待機期間を、食事、観光等に有効活用することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−112932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、充電時間を含む総所要時間を把握することは可能であったが、更に、その総所要時間の短縮を可能とする走行方法を運転者に提供することが求められていた。本発明は、かかるニーズに応えることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の電気自動車用の情報端末は、地図情報に基づいて自車両が現在位置から目的地までの経路を走行する所要時間を演算する電気自動車用の情報端末において、目的地までの経路を検索し設定する経路設定手段と、前記経路設定手段で設定された目的地までの経路途中における充電場所を設定する補充電場所設定手段と、前記補充電場所設定手段で設定された充電場所に関する情報を取得する充電設備情報取得手段と、を備えて、前記充電場所までの区間における推奨車速又は前記推奨車速を含む車速範囲を演算することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の電気自動車用の情報端末は、車載バッテリの残容量を取得するバッテリ残量取得手段と、を更に備えて、前記充電場所における充電時間、目的地までの前記充電時間を含む総所要時間を、更に演算することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の電気自動車用の情報端末は、車載補機の使用状況を検出する補機使用検出手段と、を更に備えて、前記補機使用検出手段により、補機使用電力の増加が確認された場合に、該補機使用電力の増加が確認される前と比較して、前記推奨車速又は前記推奨車速を含む前記車速範囲を、高車速側に変更すること、を特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の電気自動車用のクルーズコントロール装置は、上記情報端末を装備し、前記推奨車速を基準車速に設定する車速設定手段を、更に備えて、前記電気自動車の車速を、前記基準車速に自動的に追従させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、現在位置から目的地まで電気自動車で走行する際に、目的地までの走行中に車載バッテリに追加充電が必要となる場合に、充電時間を含む総所要時間を短縮する走行方法を可能とするので、電気自動車の利便性を高め、運転者又は同乗者には運転方法の検討に要する労力を軽減すると共に時間の有効活用を可能とするという便宜を与える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の車載情報端末のシステム構成の一例を示す。
【図2】実施例1の表示手段で表示されたガイダンスの一例を示す。
【図3】実施例1の表示手段で表示されるガイダンスの他の一例を示す。
【図4】実施例1の表示手段で表示されるガイダンスの更なる他の一例を示す。
【図5】実施例1の音声案内手段でアナウンスされるガイダンスの一例を示す。
【図6】実施例1の音声案内手段でアナウンスされるガイダンスの他の一例を示す。
【図7】実施例1の車載端末の全体処理のフローチャートの一例を示す。
【図8】実施例1の経路・補充電場所設定の処理のフローチャートの一例を示す。
【図9】実施例1の走行経路設定の処理のフローチャートの一例を示す。
【図10】実施例1の補充電場所設定の処理を説明するフローチャートの一例を示す。
【図11】実施例1の総所要時間算出で用いるパラメータの一部を説明する概念図を示す。
【図12】走行時間と充電時間のトレードオフによって総所要時間が最短となる車速が存在することを示す図である。
【図13】使用する充電設備の出力によって総所要時間が最短となる車速が異なることを示す図である。
【図14】補機の使用有無によって総所要時間が最短となる車速が異なることを示す図である。
【図15】実施例2のクルーズコントール装置のシステム構成の一例を示す。
【図16】実施例2の全体処理のフローチャートの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例について、以下、図面を参照して説明する。
【0013】
[実施例1]
実施例1は、車速をガイダンスする車載情報端末の一例であり、充電時間を含む総所要時間を短縮することを可能とするものである。
【0014】
まず始めに、車速と、充電時間を含む総所要時間との関係を説明する。図12は、電気自動車で100kmの平坦路を所定車速で走行した後、本走行で消費したエネルギを充電する場合の、走行時間と、充電時間、及びこれらの和である総所要時間を示す。なお、電気自動車の車格は軽自動車クラスとし、充電設備の出力は10kWとする。また、走行中の補機使用によるエネルギ消費は計算に含めない。
【0015】
100kmを走りきるために必要な走行時間は、高車速になる程短くなる。他方、100km走行後の充電時間は、高車速になる程長くなる。これは、高車速になる程、空気抵抗が大きくなるためである。空気抵抗は車速の二乗に比例することが知られている。同じ距離の走行であっても高車速走行ではより多くのエネルギを消費し、充電で補うエネルギ量が多いことを意味している。
【0016】
図12のような車速に対する所要時間の関係を示すグラフにおいて、走行時間と充電時間の変化を示す線は、それぞれ下に凸の曲線を描くので、それらの和である総所要時間の線も下に凸の曲線を描くこととなり、ある車速で最短の総所要時間を与える。図12に示す例では、時速80キロメートルでの走行で総所要時間が最短となり、同距離を時速120キロメートルで走行した場合と比較して、総所要時間が20分以上短縮される。
【0017】
総所要時間が最短となる車速は、充電設備の出力によってその値が変化する。その変化を図13に示す。上記のように、充電時間は車速の二乗に比例するのであるが、その比例係数は充電設備の出力に反比例するため、充電設備の出力が大きければ充電時間の変化を示す線の傾きが小さくなる。その結果、充電設備の出力が大きければ、総所要時間を最短とする車速は高車速側にシフトし、反対に、充電設備の出力が小さければ、総所要時間を最短とする車速は低車速側にシフトする。
【0018】
総所要時間が最短となる車速は、走行中における、走行用バッテリに接続された電気/電子機器であるエアコンなどの補機使用状況によっても変化する。この変化を図14に示す。補機における消費電力が大きい場合、そうでない場合と比較して、高車速走行で走行時間を短縮することにより補機由来のエネルギ消費量を低減でき、充電時間を短縮することができる。そのため、走行中の補機消費電力が大きい場合、総所要時間を最短にする車速は高車速側にシフトする。
【0019】
総所要時間が最短となる車速は、充電設備付近の外気温によっても変化する。バッテリ温度が高くなりやすい状況では、充電中にバッテリが加熱し過ぎることを防ぐため、充電中にバッテリ電力を用いた冷房を使用してバッテリを冷却する。充電しながら放電することになるため、充電設備の出力が小さい場合と同等の影響を与える。その結果、総所要時間を最短にする車速は低車速側にシフトする。外気温が氷点下など極端に低い場合においても、充電中のバッテリ温度を保つために暖房を使用し、総所要時間を最短にする車速が低車速側にシフトする。
【0020】
以上のように、経路途中に充電機会が存在する場合には、総所要時間を最短とする車速が存在し、その値は、少なくとも使用する充電設備の出力、走行時の補機使用、充電設備付近の外気温によって変化する。実施例1では、これらの要素を考慮し、充電時間を含む総所要時間を短縮することを可能とする車速ガイダンスを行う車載情報端末の例を説明する。
【0021】
図1を用いて、実施例1の車載情報端末のシステム構成の一例を概説する。実施例1の車載情報端末100は、以下に説明するブロック101〜110の各手段で構成される。
【0022】
経路設定手段101において、運転者又は同乗者(運転者等)によって設定された目的地までの経路を検索して設定する。バッテリ残量取得手段102では車載バッテリに残されている電力の残量を車両ECUから取得する。バッテリ残量目標設定手段103は、運転者等の入力に基づいて又は自動的に、設定された目的地におけるバッテリ残量の目標を設定する。
【0023】
補充電場所設定手段104は、経路設定手段101で設定された経路と、バッテリ残量取得手段102で取得されたバッテリ残量と、バッテリ残量目標設定手段103で設定されたバッテリ残量目標とから、目的地までの経路途中で追加の充電(以下「補充電」という。)が必要であるか否かを判定し、必要な場合には使用する補充電場所を立ち寄り地点として設定する。
【0024】
充電設備情報取得手段105は、補充電場所設定手段104で設定された補充電場所に設置されている充電設備について、充電設備の充電出力定格と、望ましくは充電設備付近の予想気温及び充電設備を使用するための予想待ち時間を、ナビ地図データ又はデータセンタから取得する。
【0025】
補機使用取得手段106は、車両ECUから直近の補機使用状況を取得し、望ましくは補機で使用されている電力を算出する。車速取得手段107は、車両ECUから直近の車両速度を取得する。所要時間演算手段108は、補充電場所までの区間について数パターンの車速を仮定し、ブロック101から107の各手段からの情報に基づいて、数パターンの車速で走行した場合の、走行時間と充電時間の和として示される総所要時間を演算する。表示手段109は、総所要時間の演算結果に基づいて、総所要時間を短縮可能な車速を表示する。
【0026】
実施例1のシステム構成は、望ましくは音声案内手段110を有し、所要時間演算手段108で算出された、車速別の総所要時間を参照し、総所要時間が最短となる車速を、図5に示すように、推奨車速として音声でアナウンスする。音声案内手段110のアナウンスの他の例として、現在の車速が前記推奨車速を超過している場合には、図6に示すように、速度低下を促すようにアナウンスすることも考えられる。
【0027】
次に、実施例1に係る車載情報端末の全体処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。ステップS701において、経路設定手段101と補充電場所設定手段104を用いて、車両の走行経路と必要に応じて補充電場所を設定する。ステップS701の経路・補充電場所設定処理の詳細は後述する。
【0028】
ステップS702において、充電設備情報取得手段105を用いて、補充電場所に設置されている充電設備に関する情報を取得する。ここでは、充電設備の充電出力定格と、望ましくは充電設備付近の予想気温及び充電設備を使用するための予想待ち時間を取得する。充電出力定格は、充電設備固有の値であるが、補充電場所の混雑具合や時間帯などによって変化することが考えられる。すなわち、補充電場所に複数の充電設備が用意され、補充電場所が混雑している場合には、各充電設備の定格出力が小さく絞られることが考えられる。また、時間帯によって電力料金が異なることに配慮し、電力料金が高い時間帯においては各充電設備の定格出力が小さく絞られることも考えられる。また、予想気温を取得することで、補充電中のバッテリ冷却又は暖房に使用される空調の消費エネルギを予想し、充電時の出力を下方補正することができる。また、予想待ち時間を取得することで、充電設備使用を待っている時間における補機による消費エネルギ量を予想することで、補充電すべきエネルギ量をより正確に見積もることが可能となる。
【0029】
ステップS703において、ステップS701の経路・補充電場所設定の結果に基づいて、経路案内を開始する。
【0030】
ステップS704において、補機使用取得手段106を用いて、走行用バッテリに接続された電気/電子機器である空調機器を始めとする補機の使用状況を取得し、補機で使用されている電力を取得する。
【0031】
ステップS705において、車速取得手段107を用いて、直近の車速履歴を取得し、現在車速を算出する。例えば、直前1分間の平均車速を、現在車速とすることが考えられる。
【0032】
ステップS706において、バッテリ残量取得手段102を用いて、現在のバッテリ残量を取得する。
【0033】
ステップS707において、走行中の道路の法定車速以下の範囲で、複数の車速候補を設定する。例えば、法定上限車速が時速100キロメートルの高速道路であれば、時速80キロメートル、時速90キロメートル、時速100キロメートルの車速候補の設定が考えられる。車速候補の最小値は、当該道路の交通流を乱さない範囲で小さく設定される。
【0034】
ステップS708においては、ステップS705で算出された現在車速と、ステップS707で設定された各車速候補、その他の情報から、走行時間と充電時間の和としての総所要時間を算出し、配列として記憶する。ただし、的外れな所要時間の導出を避けるために、現在車速から車両が明らかな低速走行状態(時速20キロメートル以下など)にあると判断される場合には、現在車速についての計算を実施しない。ステップS708の車速別所要時間算出の計算詳細については後述する。
【0035】
ステップS709において、ステップS708で配列として記憶された車速別所要時間のデータに基づいて、総所要時間を短縮可能な車速を推奨車速としてガイダンスする。ただし、渋滞のように、推奨車速で走行することが明らかに困難な状況が確認された場合には、ガイダンスを行わないようにすることで、運転者等に煩わしさを感じさせにくくすることができる。
【0036】
推奨車速のガイダンスの方法には多くのパターンが考えられる。図2は、その一例を示すものであるが、ここでは、車速候補のそれぞれについて、目的地到着予想時刻(所要時間)と、予想される充電時間を表示している。このように複数の車速のそれぞれについてデータを示すことで、運転者等は、車速を変更することの効果を明確に知ることができる。さらに、図2の表示に、現在車速で走行を続けた場合の目的地到着予想時間と、そこに含まれる充電時間を追加表示することで、推奨される状態と現状とを容易に比較することができる。また、表示された充電時間と、運転者等の休憩に必要な時間とを照らし合わせて、時間の無駄のない車速を選択することも可能となる。
【0037】
図3は、ステップS709のガイダンスの表示の他の例を示す。ここでは、補充電場所における充電時間に関する情報とともに、補充電場所までの区間における推奨車速を表示している。図2と比較して情報量は少ないが、視覚的に分かりやすい表示となっている。
【0038】
図4は、ステップS709のガイダンスの表示の更なる他の例を示すものであり、ここでは、速度計上に推奨車速を重畳表示している。この場合に、推奨車速の上下に所定の幅(例えば±時速5キロメートル)を加えて表示することにより、視認性を向上することができる。運転者は、速度計の針がその範囲に入るように巡航すれば、総所要時間を短縮する運転をすることができる。ステップS709のガイダンスとして、音声によるガイダンスを併用又は単独に使用してもよい。
【0039】
図5は、現在走行中の区間における推奨車速をアナウンスする場面の一例を示し、図6は、現在の車速が推奨車速を超過している場合に速度低下を促すようにアナウンスする場面の一例を示す。ステップS709のガイダンスの方法については、図2〜図6の例に限定されることなく、総所要時間の短縮を可能とする速度又は速度範囲をガイダンスするものであれば、どのような形態でも構わない。
【0040】
ステップS710において、車速別所要時間算出の再計算に関して、再計算のパターンとして(a)、(b)、(c)の三種類を用意し、いずれのパターンの再計算を行うべきかを判定する。(a)のパターンに分類されるのは、経路・補充電場所設定から再設定する必要がある場合であり、案内経路が取り消された場合、経路から外れた場合、予定外の場所で補充電が行われた場合が該当する。(b)のパターンに分類されるのは、充電設備情報を取得し直す必要がある場合で、補充電場所が手動で変更された場合、使用予定充電設備の情報に大きな更新があった場合(充電設備の故障や待ち時間の延長)が該当する。(c)のパターンは、最も頻繁に実施される再計算(更新)であり、所定時間経過(例えば1分)した場合や、空調機器をはじめとする補機使用状況の大きな変更があった場合が該当する。
【0041】
ステップS711では、ステップS710における上記(a)、(b)、(c)の三つのパターンに基づき、それぞれ対応づけられたステップに戻る。(a)のパターンでは、ステップS701に戻る。上記(b)のパターンでは、ステップS702に戻る。上記(c)のパターンでは、ステップS704に戻る。ステップS710において、上記(a)、(b)、(c)のいずれのパターンにも該当しない場合には、ステップS711において、再計算が必要でないと判定されて、ステップS712に進む。
【0042】
ステップS712において、ガイダンス終了の条件を判定する。ガイダンス終了の条件としては、補充電場所に到着した場合や所定時間以上(例えば5分)の停車が確認された場合が該当する。
【0043】
ステップS713において、ステップS712の判定結果がガイダンス終了条件を満たしている場合にはステップS714へ進み、ガイダンスを終了する。上記判定結果がガイダンス終了条件を満たしていない場合には、ステップS709に戻り、ガイダンスを続ける。
【0044】
以上、実施例1の車載情報端末の全体処理を説明したが、次に、図7のフローチャート中のステップS701の経路・補充電場所設定の処理について、図8を参照して説明する。
【0045】
ステップS801において、ナビゲーション機能が起動中であれば、ステップS802に進む。
ステップS802において、目的地の設定があれば、ステップS803に進む。
【0046】
ステップS803において、バッテリ残量取得手段102を用いてバッテリ残量を取得する。次のステップS804において、バッテリ残量目標設定手段103によって設定されたバッテリ残量目標を取得する。バッテリ残量目標は、運転者により手動で設定される外、自動的に設定されるようにしてもよい。自動的に設定される場合、目的地における充電設備の有無を取得し、目的地に充電設備が無い場合には、少なくとも目的地に最も近い充電設備まで走行できる電力量を残すよう設定されることが望ましい。
【0047】
ステップS805において、目的地までの走行経路を設定する。走行経路設定の詳細については後述する。
【0048】
ステップS806において、ステップS805で設定された経路の途中で補充電が必要であるか否かを判定する。ステップS806の補充電要否判定は、ステップS803で取得されたバッテリ残量と、ステップS804で設定されたバッテリ残量目標と、ステップS805で設定された経路の長さと、望ましくはステップS805で設定された経路の法定車速および道路形状と、から判定される。
【0049】
ステップS807において、ステップS806の補充電要否判定結果に基づき補充電が必要である場合、ステップS808に進み、そこで補充電場所を設定する。ステップS808の補充電場所の設定については後述する。
【0050】
ステップS807において、補充電が必要ない場合、経路・補充電場所設定処理を終了し、図7のフローに戻り、ステップS702に進む。
【0051】
次に、ステップS805(図8)の走行経路設定の処理について、図9を参照して説明する。
ステップS901で設定された目的地を取得する。ステップS902において、目的地への経路を複数検索する。複数経路の例としては、距離優先経路(経路長さが短い)、時間優先経路(走行時間が短い)、有料道路優先経路(使用可能な有料道路がある場合、その使用を優先する)、一般道優先経路(有料道路を使わない)、補充電無し優先経路(補充電無しで目的地に到達できる経路)などの例が考えられる。ここで、補充電無し優先経路で目的地に到着可能か否かの判定は、当該経路を、法定速度を基に算出された基準車速で走行すると仮定して計算する方法が考えられる。
【0052】
ステップS903において、ステップS902で検索された複数経路を、運転者等に表示する。ステップS904では、ステップS903の表示に対する運転者等の選択結果を取得し、経路を決定し、図8のフローに戻る。
【0053】
次に、図8のステップS808における補充電場所設定の処理について、図10を参照して説明する。ステップS1001では、ステップS805で設定された走行経路を取得する。
【0054】
ステップS1002において、走行経路上及びその近傍に存在する補充電場所候補を取得する。補充電場所候補は、カーナビゲーションの地図データから、又は車両と無線通信を行うデータセンタから、取得するのがよい。ステップS1002で取得された補充電場所候補が複数存在する場合には、ステップS1003からステップS1004に進み、複数の補充電場所候補を表示し、運転者等の選択を待つ。ステップS1005において、選択された補充電場所を取得し、使用する補充電場所として設定し、図8のフローに戻り、更に図7のフローに戻って、ステップS702に進む。なお、運転者等の選択を待たずに、ステップS1004とステップS1005を自動的に処理するようにしてもよい。
【0055】
他方、ステップS1003において、補充電場所候補が単一候補である場合には、前記単一候補を使用する補充電場所として設定し、図8のフローに戻り、更に図7のフローに戻って、ステップS702に進む。
【0056】
以上、図7のステップS701の「経路・補充電場所設定」の処理内容を説明したが、次に、ステップS708の「車速別所要時間算出」の計算方法について、式(1)〜(8)を用いて説明する。
【0057】
図11は、計算に現れるパラメータの一部を模式的に示す。ここでは、補充電の機会が1回の場合の例とする。
【0058】
総所要時間Tsumは、走行時間Tdrv、充電時間Tchg、及び充電設備の待ち時間Twaitの和として、次の式(1)で表すことができる。

【0059】
走行時間Tdrv、充電時間Tchgは、次の式(2)及び(3)で表すことができる。

【0060】
待ち時間Twaitは、ステップS702(図7)で取得した値を使用する。
充電時間Tchgを与える式(3)の右辺の分母は、使用する充電設備の充電設備出力から、充電時の空調消費電力を減じたものであり、充電時の有効な充電出力と言える。充電時の空調はバッテリを所定範囲の温度に保つための措置であり、ステップS702で取得した充電設備周辺気温によって、空調の出力を予測する。
【0061】
式(3)の右辺の分子第1項のQchgは補充電後の目標バッテリ容量であり、目的地における目標バッテリ残量Qrestと、補充電場所から目的地までのエネルギ消費量と、から、式(4)により、Qchgの最小値を算出する。実際の補充電にあたっては、補充電後の目標バッテリ容量は充電設備において数段階に選択可能であることが考えられ、式(4)で導かれたQchg以上の値まで充電するように自動設定又は手動設定するようにガイダンスされる。

【0062】
式(3)及び式(4)中で使われる走行抵抗Rsumは、空気抵抗Ra、転がり抵抗Rr、勾配抵抗Rgに分けられ、式(5)〜式(8)で表すことができる。ここで道路勾配θは、カーナビゲーションシステムの地図データに高度データ又は勾配データを含む場合に活用可能であり、道路勾配θを用いることでエネルギ消費量の予測精度を向上することができる。

【0063】
式(1)〜式(8)の各記号は下記の通りである。

【0064】
式(2)及び式(3)におけるV(現在地から補充電場所までの車速)に、ステップS707(図7)で設定した各車速候補の車速を代入することで、各車速候補での総所要時間を算出する。補充電場所から目的地までの車速νは、法定速度を基にして算出された基準車速を採用する。上記の説明では、補充電機会が1回と仮定したが、補充電機会が複数回ある場合であっても、同様の計算方法で、各補充電場所までの区間の車速と総所要時間の関係を導出すればよい。以上が、ステップS708における車速別所要時間算出の計算方法である。
【0065】
また、以上の実施例1においては、ブロック101〜110を一体に構成した情報端末を、車載情報端末100として説明したが、本発明は、この車載情報端末に限定されるものではなく、その機能の一部を、別個に構成するようにしてもよい。具体的には、例えば、車両に搭載されたECU、運転者の携帯端末、無線により通信可能とされた地上設備により、ブロックブロック101〜110の機能の一部を分割し、互いに組み合わされて上記の作用を奏するようにしてもよく、その場合には、ブロック101〜110の機能の一部を有する端末のすべてが、本発明の「情報端末」に含まれる。
【0066】
[実施例2]
実施例2は、総所要時間を短縮するように車速追従の目標車速を設定するクルーズコントロール装置である。
【0067】
図15は、実施例2のクルーズコントロール装置の構成の一例を示す。実施例2のクルーズコントロール装置1500は、以下に説明するブロック101〜108及びブロック1508の手段で構成される。実施例2のブロック101〜108の手段については、実施例1のブロック101〜108と同一の機能を有する同一のものであるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
図15の車速設定手段1508は、所要時間演算手段108で算出された車速別の総所要時間を参照し、最も短い総所要時間となる車速を、クルーズ走行の車速として設定する。そして、設定された車速は、図示しない目標トルク演算部に入力されて、車両の制駆動が制御される。
【0069】
図16は、実施例2のクルーズコントロール装置の全体処理のフローチャートを示す。実施例2のステップS701〜ステップS704、ステップS706〜ステップS708は、実施例1のステップS701〜ステップS704、ステップS706〜ステップS708と同一の処理であるため、ここでは説明を省略する。
【0070】
そして、ステップS1609は、ステップS708で算出し、配列として記憶した車速別総所要時間のデータに基づいて、総所要時間を短縮可能な車速をクルーズコントロールの車速として設定する。ステップS710及びステップS711は、実施例1のステップS710及びステップS711と同一の処理であるため、ここでは説明を省略する。
【0071】
ステップS1612は、車速設定終了の条件を判定する。車速設定終了の条件としては、補充電場所に到着した場合、所定時間以上(例えば5分)の停車が確認された場合、又は運転者がアクセル操作やブレーキ操作を行ってクルーズコントロールが解除された場合が該当する。ステップS1613においては、ステップS1612の判定結果に基いて、車速設定終了条件が満たされている場合はステップS1614に進み、車速設定を終了する。他方、車速設定終了条件が満たされていない場合にはステップS1609に戻り、車速設定を続ける。
【0072】
以上、本発明は、実施例1及び2に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明に基づいて、本発明の課題を解決する多くの異なる態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
100 車載情報端末、101 経路設定手段、102 バッテリ残量取得手段、103 バッテリ残量目標設定手段、104 補充電場所設定手段、105 充電設備情報取得手段、106 補機使用取得手段、107 車速取得手段、108 所要時間演算手段、109 表示手段、110 音声案内手段、1500 クルーズコントロール装置、1508 車速設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報に基づいて自車両が現在位置から目的地までの経路を走行する所要時間を演算する電気自動車用の情報端末において、
目的地までの経路を検索し設定する経路設定手段と、
前記経路設定手段で設定された目的地までの経路途中における充電場所を設定する補充電場所設定手段と、
前記補充電場所設定手段で設定された充電場所に関する情報を取得する充電設備情報取得手段と、を備えて、
前記充電場所までの区間における推奨車速又は前記推奨車速を含む車速範囲を演算することを特徴とする電気自動車用の情報端末。
【請求項2】
請求項1に記載された電気自動車用の情報端末において、
車載バッテリの残容量を取得するバッテリ残量取得手段と、を更に備えて、
前記推奨車速又は前記推奨車速に加えて、前記充電場所における充電時間、目的地までの前記充電時間を含む総所要時間を、更に演算することを特徴とする電気自動車用の情報端末。
【請求項3】
請求項2に記載された電気自動車用の情報端末において、
車載補機の使用状況を検出する補機使用検出手段と、を更に備えて、
前記補機使用検出手段により、補機使用電力の増加が確認された場合に、該補機使用電力の増加が確認される前と比較して、前記推奨車速又は前記推奨車速を含む前記車速範囲を、高車速側に変更すること、を特徴とする電気自動車用の情報端末。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかの請求項に記載された電気自動車用の情報端末において、
前記充電設備情報取得手段により、使用予定の充電設備出力の増加が確認された場合に、前記充電設備出力の増加が確認される前と比較して、前記推奨車速又は前記推奨車速を含む車速範囲を、高車速側に変更すること、及び
前記充電設備情報取得手段により、使用予定の充電設備出力の減少が確認された場合に、前記充電設備出力の減少が確認される前と比較して、前記推奨車速又は前記推奨車速を含む車速範囲を、低速側に変更すること、を特徴とする電気自動車用の情報端末。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの請求項に記載された電気自動車用の情報端末において、
表示手段を、更に備え、
該表示手段は、前記演算結果の情報を表示することにより、運転者に提供することを特徴とする電気自動車用の情報端末。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかの請求項に記載された電気自動車用の情報端末を装備し、
前記推奨車速を基準車速に設定する車速設定手段を、更に備えて、
前記電気自動車の車速を、前記基準車速に自動的に追従させることを特徴とする電気自動車用のクルーズコントロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−15493(P2013−15493A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150192(P2011−150192)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】