説明

電気負荷制御装置

【課題】安価な構成で、発電機の発電電圧の変動が電気負荷の動作に影響を与えることを防止できる、電気負荷制御装置を提供する。
【解決手段】バッテリ3および電気負荷4は、オルタネータ2と並列に接続されている。オルタネータ2と電気負荷4との間には、スイッチング素子9が介在されている。スイッチング素子9のオン/オフを制御するためのコントローラ10により、オルタネータ2の発電電圧に関する情報が取得され、その情報に基づいて、電気負荷4にほぼ一定の電圧が印加されるように、スイッチング素子9のオン/オフのデューティ比が設定される。そして、その設定されたデューティ比でスイッチング素子9がオン/オフされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備えられた電気負荷を制御する電気負荷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、たとえば、オルタネータおよびバッテリが備えられている。オルタネータは、エンジンなどから動力(運動エネルギー)を受け、その動力を電力(電気エネルギー)に変換する。オルタネータが発生する電力は、ワイパモータやヘッドライトなどの電気負荷に供給される。また、その余剰電力により、バッテリが充電される。
【0003】
オルタネータには、ICレギュレータが内蔵されている。ECU(電子制御ユニット)からICレギュレータに電圧調整信号が入力され、ICレギュレータにより、その電圧調整信号に基づいて、オルタネータの発電電圧が制御される。この制御により、オルタネータの発電電圧は、約11〜16Vの範囲で変動する。
【0004】
オルタネータの発電電圧が変動すると、電気負荷の動作に影響が現れる。たとえば、オルタネータの発電電圧の変動に伴って、ワイパモータの回転速度が変動し、ワイパの動作スピードが変動する。ワイパの動作スピードが変動すると、自動車の乗員は、違和感を感じる。
【0005】
そこで、ワイパモータの回転速度を検出する回転速度センサを設け、この回転速度センサの出力に基づいて、ワイパモータの回転速度が設定速度に保持されるように、ワイパモータに供給される電圧のオン/オフの時間の割合(デューティ比)を変更する制御手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−315620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、その提案に係る制御では、ワイパモータの回転速度の変動が検出されてから、ワイパモータへの供給電圧が調整される。そのため、オルタネータの発電電圧が変動したときに、その変動直後のワイパの動作スピードの変動を抑制しきれず、ワイパの動作スピードの変動による違和感を自動車の乗員に与えるおそれがある。また、回転速度センサが必要であり、しかも、その回転速度センサの感度が制御レスポンスに影響するため、高感度の回転速度センサを用いることによるコストの増大という問題も生じる。
【0008】
本発明の目的は、安価な構成で、発電機の発電電圧の変動が電気負荷の動作に影響を与えることを防止できる、電気負荷制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係る電気負荷制御装置は、発電機ならびに前記発電機と並列接続された蓄電デバイスおよび電気負荷を備える車両に適用されて、前記電気負荷を制御する電気負荷制御装置であって、前記発電機と前記電気負荷との間に介在されたスイッチング手段と、前記発電機の発電電圧に関する情報を取得する電圧情報取得手段と、前記電圧情報取得手段によって取得される情報に基づいて、前記電気負荷に所定の電圧が印加されるように、前記スイッチング手段のオン/オフのデューティ比を設定するデューティ比設定手段と、前記デューティ比設定手段によって設定されるデューティ比で前記スイッチング手段をオン/オフさせるスイッチング制御手段とを含む。
【0010】
車両において、蓄電デバイスおよび電気負荷は、発電機と並列に接続されている。これにより、発電機が発生する電力は、電気負荷に供給されるとともに、蓄電デバイスに供給されて、蓄電デバイスを充電する。
【0011】
発電機と電気負荷との間には、スイッチング手段が介在されている。スイッチング手段のオン/オフにより、電気負荷への電力の供給/遮断が切り替えられる。
【0012】
電気負荷制御装置には、電圧情報取得手段、デューティ比設定手段およびスイッチング制御手段が備えられている。電圧情報取得手段により、発電機の発電電圧に関する情報が取得される。この取得された情報に基づいて、デューティ比設定手段により、電気負荷に所定の電圧が印加されるように、スイッチング手段のオン/オフのデューティ比が設定される。そして、スイッチング制御手段により、その設定されたデューティ比でスイッチング手段がオン/オフされる。
【0013】
これにより、発電機の発電電圧が変動したときに、電気負荷に印加される電圧がそれに伴って変動する前に、デューティ比制御手段により、その発電電圧に関する情報に基づいて、電気負荷に所定の電圧が印加されるように、デューティ比を設定することができる。そのため、発電機の発電電圧が変動したときに、電気負荷に印加される電圧がそれに伴って変動することを防止できる。その結果、発電機の発電電圧の変動が電気負荷の動作に影響を与えることを防止できる。たとえば、電気負荷がワイパモータである場合には、発電機の発電電圧の変動がワイパモータの回転速度(ワイパの動作スピード)に影響を与えることを防止できる。また、電気負荷がヘッドライトである場合には、発電機の発電電圧の変動がヘッドライトの明るさに影響を与えることを防止できる。
【0014】
また、デューティ比の設定のために、電気負荷の動作状態を検出を必要としないので、その動作状態の検出のためのセンサが不要である。
【0015】
よって、安価な構成で、発電機の発電電圧の変動が電気負荷の動作に影響を与えることを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発電機の発電電圧が変動したときに、電気負荷に印加される電圧がそれに伴って変動することを防止できる。また、その変動防止のための制御に、電気負荷の動作状態を検出するセンサを必要としない。よって、安価な構成で、発電機の発電電圧の変動が電気負荷の動作に影響を与えることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る電気負荷制御装置が備えられた車両の要部の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、オルタネータの発電電圧値の変動の一例を示すグラフである。
【図3】図3は、スイッチング素子のオン/オフの波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る電気負荷制御装置が備えられた車両の要部の構成を示すブロック図である。
【0020】
車両1は、エンジンを駆動源とする自動車である。車両1には、オルタネータ2およびバッテリ3が備えられている。また、車両1には、ワイパモータ、ヘッドライト、エアコンディショナおよびオーディオ機器などの電装品が電気負荷4として備えられている。
【0021】
オルタネータ2には、ロータコイル(フィールドコイル)を有するロータ、ステータコイルを有するステータ、レクチファイアおよびICレギュレータが内蔵されている。エンジンの出力軸の回転に伴って、ロータが回転する。このとき、ロータコイルに界磁電流が供給されていれば、ロータの回転に伴って、ステータコイルに電磁誘導による三相交流電流が流れる。三相交流電流は、レクチファイアにより、直流電流に変換される。そして、直流電流がオルタネータ2から出力される。
【0022】
オルタネータ2のプラス端子は、バッテリ3および電気負荷4のプラス端子と電気的に接続されている。たとえば、バッテリ3のプラス端子に接続された電線5と電気負荷4のプラス端子に接続された電線6とは、それらの先端で接続され、1本の電線7として、オルタネータ2のプラス端子に接続されている。オルタネータ2、バッテリ3および電気負荷4のマイナス端子は、接地(ボディアース)されている。これにより、バッテリ3および電気負荷4は、オルタネータ2と並列に接続されている。よって、オルタネータ2が発生する電力は、電気負荷4に供給されるとともに、バッテリ3に供給されて、バッテリ3を充電する。
【0023】
電気負荷4に関連して、電気負荷4への給電を制御するためのリレーボックス8が設けられている。
【0024】
リレーボックス8には、電気負荷4に接続された電線6の途中部に介裝されたスイッチング素子9と、スイッチング素子9のオン/オフを制御するためのコントローラ10と、リレーボックス8の出力電流値(電気負荷4に供給される直流電流値)を検出する電流センサ11とが備えられている。
【0025】
スイッチング素子9は、たとえば、MOSFETからなる。スイッチング素子9がオンされると、リレーボックス8から電気負荷4に電力が供給される。一方、スイッチング素子9がオフされると、リレーボックス8から電気負荷4への電力の供給が遮断される。
【0026】
また、車両1には、マイクロコンピュータを含む構成のECU(電子制御ユニット)12が備えられている。
【0027】
ECU12には、車両1の各部の情報が入力される。ECUは、その入力される情報に基づいて、たとえば、オルタネータ2のICレギュレータに向けて電圧調整信号を出力する。電圧調整信号がICレギュレータに受け取られると、ICレギュレータにより、その電圧調整信号に基づいて、オルタネータのロータコイルに供給される界磁電流が制御される。この制御により、オルタネータ2から出力される電圧(発電電圧)は、約11〜16Vの範囲で変動する。
【0028】
リレーボックス8に備えられたコントローラ10は、マイクロコンピュータを含む構成である。コントローラ10には、ECU12からオルタネータ2の発電電圧に関する情報を乗せた信号(発電情報信号)、具体的には、ECU12からオルタネータ2のICレギュレータに送信される電圧調整信号に応じた信号が入力されるようになっている。また、コントローラ10には、電気負荷4の作動/停止を切り替える電気負荷スイッチ13のオン/オフ状態に応じた信号が入力されるようになっている。さらに、コントローラ10には、電流センサ11によって検出される電流値Ioutおよびリレーボックス8に入力される電圧値(電線6におけるスイッチング素子9よりも通電方向の上流側の部分に印加される電圧値)Vinが与えられるようになっている。
【0029】
コントローラ10は、スイッチング素子9のオン/オフの制御のために、プログラム処理によってソフトウエア的に実現される機能処理部として、電圧情報取得部21、デューティ比設定部22およびスイッチング制御部23を実質的に備えている。
【0030】
電圧情報取得部21は、ECU12からの発電情報信号に基づいて、オルタネータ2の発電電圧値Vgを取得する。
【0031】
デューティ比設定部22は、電圧情報取得部21によって取得されるオルタネータ2の発電電圧値Vg、電流センサ11によって検出される出力電流値Ioutおよびリレーボックス8への入力電圧値Vinに基づいて、スイッチング素子9のオン/オフのデューティ比Dを設定する。
【0032】
具体的には、デューティ比設定部22は、下記式(1)に従って、デューティ比Dを設定する。
【0033】
=D+{(DN−2+3×DN−1)/4−D
+K1・Vg+K2・Vin+K3・Iout ・・・(1)
ただし、D:初期値
N−1:1制御周期前に設定されたデューティ比
N−2:2制御周期前に設定されたデューティ比
K1,K2,K3:係数
【0034】
初期値Dは、電気負荷スイッチ13がオフからオンに切り替えられたときの発電電圧値Vgから算出される値である。
【0035】
そして、スイッチング制御部23は、デューティ比設定部22によって設定されたデューティ比Dでスイッチング素子9をオン/オフさせる。これにより、リレーボックス8から、デューティ比Dに応じたほぼ一定の電圧Voutが出力され、その電圧Voutが電気負荷4に印加される。
【0036】
図2は、オルタネータの発電電圧値の変動の一例を示すグラフである。図3は、スイッチング素子のオン/オフの波形(PWM(Pulse Width Modulation)制御波形)を示す図である。
【0037】
図2に示されるように、オルタネータ2の発電電圧値Vgが低下すると(時刻T1)、これに応答して、デューティ比Dが大きい値に設定され、図3に示されるように、それ以前と比較して、スイッチング素子9のオン時間が長くなる(時間T1−T2)。これにより、リレーボックス8に供給される電圧(オルタネータ2の発電電圧)が低下しても、その電圧の低下が生じる前と同じ電力をリレーボックス8から電気負荷4に供給することができる。
【0038】
また、図2に示されるように、オルタネータ2の発電電圧値Vgが上昇すると(時刻T2)、これに応答して、デューティ比Dが小さい値に設定され、図3に示されるように、それ以前と比較して、スイッチング素子9のオン時間が短くなる(時刻T2以降)。これにより、リレーボックス8に供給される電圧(オルタネータ2の発電電圧)が上昇しても、その電圧の上昇が生じる前と同じ電力をリレーボックス8から電気負荷4に供給することができる。
【0039】
以上のように、車両1において、バッテリ3および電気負荷4は、オルタネータ2と並列に接続されている。これにより、オルタネータ2が発生する電力は、電気負荷4に供給されるとともに、バッテリ3に供給されて、バッテリ3を充電する。
【0040】
オルタネータ2と電気負荷4との間には、スイッチング素子9が介在されている。スイッチング素子9のオン/オフにより、電気負荷4への電力の供給/遮断が切り替えられる。
【0041】
スイッチング素子9のオン/オフを制御するためのコントローラ10には、電圧情報取得部21、デューティ比設定部22およびスイッチング制御部23が実質的に備えられている。電圧情報取得部21により、オルタネータ2の発電電圧に関する情報が取得される。この取得された情報に基づいて、デューティ比設定部22により、電気負荷4にほぼ一定の電圧Voutが印加されるように、スイッチング素子9のオン/オフのデューティ比Dが設定される。そして、スイッチング制御部23により、その設定されたデューティ比Dでスイッチング素子9がオン/オフされる。
【0042】
これにより、オルタネータ2の発電電圧が変動したときに、電気負荷4に印加される電圧がそれに伴って変動することを防止できる。その結果、オルタネータ2の発電電圧の変動が電気負荷4の動作に影響を与えることを防止できる。たとえば、電気負荷4がワイパモータである場合には、オルタネータ2の発電電圧の変動がワイパモータの回転速度(ワイパの動作スピード)に影響を与えることを防止できる。また、電気負荷4がヘッドライトである場合には、オルタネータ2の発電電圧の変動がヘッドライトの明るさに影響を与えることを防止できる。
【0043】
また、デューティ比Dの設定のために、電気負荷4の動作状態(たとえば、ワイパモータの回転速度)を検出を必要としないので、その動作状態の検出のためのセンサが不要である。
【0044】
よって、安価な構成で、オルタネータ2の発電電圧の変動が電気負荷4の動作に影響を与えることを防止できる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0046】
たとえば、車両1として、エンジンを駆動源とする自動車を例示したが、本発明に係る電気負荷制御装置は、電気自動車やハイブリッドカーに適用されてもよいし、自動車以外の車両全般に広く適用することもできる。
【0047】
また、発電機の一例として、オルタネータ2を取り上げたが、発電機は、オルタネータ2に限らず、モータとしての機能とジェネレータ(発電機)としての機能との両方を有するモータジェネレータであってもよい。
【0048】
また、蓄電デバイスの一例として、バッテリ3を取り上げたが、蓄電デバイスは、バッテリ3に限らず、キャパシタであってもよい。
【0049】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 車両
2 オルタネータ(発電機)
3 バッテリ(蓄電デバイス)
4 電気負荷
9 スイッチング素子
10 コントローラ
21 電圧情報取得部(電圧情報取得手段)
22 デューティ比設定部(デューティ比設定手段)
23 スイッチング制御部(スイッチング制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機ならびに前記発電機と並列接続された蓄電デバイスおよび電気負荷を備える車両に適用されて、前記電気負荷を制御する電気負荷制御装置であって、
前記発電機と前記電気負荷との間に介在されたスイッチング手段と、
前記発電機の発電電圧に関する情報を取得する電圧情報取得手段と、
前記電圧情報取得手段によって取得される情報に基づいて、前記電気負荷に所定の電圧が印加されるように、前記スイッチング手段のオン/オフのデューティ比を設定するデューティ比設定手段と、
前記デューティ比設定手段によって設定されるデューティ比で前記スイッチング手段をオン/オフさせるスイッチング制御手段とを含む、電気負荷制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−91392(P2013−91392A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234175(P2011−234175)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)