説明

電気貯湯容器の蒸気通路装置

【目的】 蒸気通路における転倒時止水弁の弁口との圧着による問題を、蒸気通路での内容液の外部への流出防止機能を損なわずに、迂回通気により解消する。
【構成】 弁口105の口縁に閉じ状態の転倒時止水弁106に対し迂回通気部となる切り込み614を設けるとともに、蒸気通路87の蓋体6の枢支部68近くを経由する経路部87aに、弁口612と、器体1の転倒時に前記弁口612を自重や流出内容液の押動により閉じる補助転倒時止水弁613を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電気貯湯容器の蒸気通路装置に関し、詳しくは器体を開閉する蓋体に、器体内で加熱される内容液から発生する蒸気を外部に排出して内圧の自然昇圧を防止するとともに、器体が転倒したときこの蒸気通路を通じて内容液が外部に流出するのを防止する転倒時止水弁を有する電気貯湯容器の蒸気通路装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の蒸気通路装置は、本発明の一実施例を示す図1を参照して説明すると、器体1を開閉するよう後部が器体1の肩部にヒンジピン68により枢支された器体蓋6に、器体1内で発生する蒸気を外部に排出する蒸気通路87を設け、この蒸気通路87の器体1内からの蒸気の流出口86を器体蓋6の前記枢支部から前方側に離れた位置に開口させるとともに、蒸気通路87の器体蓋6外への蒸気の排出口52を器体蓋6の枢支部近くを経由する経路87aにて器体蓋6の外面に開口させ、器体1の転倒時に蒸気通路87途中の弁口105を自重や流出内容液の押動によって閉じる転倒時止水弁106を蒸気通路87の前記流出口86近くに設けた構造としている。
【0003】器体蓋6の枢支部から前方側に離れた位置に開口される蒸気の流出口86は、図1に示すように器体蓋6のほぼ中央に位置して、器体1がどちらむきに転倒したとしても、内容液の残量が半分以下である場合は内容液が流出しにくい位置にあることができ、また前記器体蓋6の枢支部近くを経由して器体蓋6外への蒸気の排出口52が器体蓋6の外面に開口している通路構造上、蒸気通路87の流出口86から排出口52までの経路長を大きくとることができるので、器体1が転倒して内容液が蒸気通路87を通じて器体蓋6外へ流出するまでの時間を遅らせることができ、内容液が外部に流出するまでに措置する余裕を得やすい。
【0004】また、転倒時止水弁106が前記流出口86の近くに設けられていると、器体1の転倒時に蒸気通路87を通じて流出しようとする内容液を蒸気通路87の流出初期位置にて阻止することができ、外部への流出防止に有利である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで器体蓋6は、開き状態にて後部側にやや傾いた状態で安定するようにされていて、例えば器体蓋6を開いたままにして器体1内に内容液を投入するような場合に、器体蓋6が不用意に閉じるような不都合は生じない。
【0006】しかし、この開き状態に安定している器体蓋6を閉じるのに、瞬間的な、あるいは急激な押動操作等にて強く倒して閉じるようにすることがときとして行われる。
【0007】この場合、器体蓋6の流出口近くに設けられた弁口105部の器体蓋6の閉じ方向への大きな移動速度に対し、転倒時止水弁106が自身の慣性によって弁口105に一部が嵌まり合って圧着し、内外圧力のアンバランス状態つまり内圧が高圧気味になることの影響で圧着状態のままに維持されて内容器31内が異常昇圧したり、加圧注出型の電気ポットでは内容液が不用意に押し出されてしまうと云ったことがある。
【0008】本発明は、蒸気通路87での内容液の流出防止を十分にしながら、前記転倒時止水弁106部での迂回通気を図ることによって、前記従来のような問題を解消することができる電気貯湯容器の蒸気通路装置を提供することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は上記のような課題を達成するため、器体を開閉するよう後部が器体に枢支された蓋体に、器体内蒸気を外部に排出する蒸気通路を設け、この蒸気通路の器体内からの蒸気の流出口を蓋体の前記枢支部から前方側に離れた位置に開口させるとともに、蒸気通路の蓋外への蒸気の排出口を蓋体の枢支部近くを経由する経路にて蓋体の外面に開口させ、器体の転倒時に蒸気通路途中の弁口を自重や流出内容液の押動によって閉じる転倒時止水弁を蒸気通路の前記流出口近くに設けた電気貯湯容器の蒸気通路装置において、前記弁口の口縁に閉じ状態の転倒時止水弁に対し迂回通気部となる切り込みを設けるとともに、蒸気通路の前記蓋体の枢支部近くを経由する経路部に、弁口と、器体の転倒時に前記弁口を自重や流出内容液の押動により閉じる補助転倒時止水弁を設けたことを特徴とするものである。
【0010】蒸気通路の前記転倒時止水弁と補助転倒時止水弁との間の部分に通路を拡張した液溜りを形成しておくのが好適である。
【0011】
【作用】本発明の上記構成によれば、器体内で内容液から発生する蒸気を外部に逃がすように蓋体に設けられた蒸気通路の器体からの蒸気の流出口が、蓋体の器体への枢支部から前方側に離れて位置し、この流出口近くに設けられた転倒時止水弁が、蓋体の急な閉じ状態のときの弁口部の蓋体閉じ方向への大きな移動速度に対し、自身の慣性によって弁口に圧着するようなことがあっても、弁口の口縁に設けられた切り込みが転倒時止水弁まわりの迂回通気路を形成し、転倒時止水弁が弁口に密着したり、内外圧力のアンバランス状態つまり内圧が高圧気味になることの影響で圧着状態のままに維持され、器体内が自然昇圧してしまうようなことを回避することができる。
【0012】そして、蒸気通路の外部への蒸気の排出口を蓋体外に開口させるのに、この蓋体の枢支部の近くを経由する経路部に設けられた補助転倒時止水弁およびこれと協働する弁口が蓋体の枢支部に近いことにより、蓋体の急な閉じ動作時にもこの弁口部には蓋体の閉じ方向への大きな移動速度が生じないので、補助転倒時止水弁には小さな慣性しか働かず、弁口に圧着するようなことを防止することができ、切り込みのない弁口との間で相互の密着による自然昇圧を回避しながら内容液の外部への流出を防止することができ、前記転倒時止水弁と補助転倒時止水弁との間で内容液の流出を遅らせることができるのと併せ、転倒時止水弁での前記切り込みにより形成する迂回通気部が内容液の若干の流出部となることを十分に補うことができる。
【0013】また蒸気通路の転倒時止水弁と補助転倒時止水弁との間に通路が拡幅した液溜りを形成しておくと、転倒時止水弁の部分を内容液が越えて流出することがあっても、この液溜りに内容液を溜め込む間内容液の外部への流出をさらに遅らせることができる。
【0014】
【実施例】図1〜図6は、本発明が適用された電気ポットの場合の一実施例を示している。
【0015】図1に示すように、金属製で容器型の内装ケース2を金属製で筒状の外装ケース3内に収容して二重壁構造の器体1を構成し、金属製の内容器31を器体1内に上端開口1aを通じ上方より嵌め入れてこれを出し入れできるように収容するようにしている。
【0016】内装ケース2は外装ケース3の上端に上方から嵌め合わせた合成樹脂製の肩部材4によって上端フランジ2aが受けられ、ビス345によって取り付けられている。
【0017】外装ケース3の下端には、合成樹脂製の底環7が当てがわれ、これの開口には、合成樹脂製の底蓋10が自身に設けられている複数の爪の嵌め合わせと一箇所のビス止めにて取り付けられている。
【0018】この底蓋10の下面外周部には、自身に設けられた複数の爪によって回転座体9が回転可能に嵌め付けられ、器体1を定置したとき回転座体9上で器体1を軽く回転させられるようになっている。
【0019】内装ケース2の内底面上には、シーズヒータ・タイプのヒータ8a、8bを図3に示すパターンにて埋設したアルミニウム製の熱盤8が設けられている。ヒータ8a、8bは湯沸かしヒータと保温ヒータとである。
【0020】内装ケース2の底部下には遮熱板12が当てがわれ、内装ケース2の胴部下端の内曲げ縁2a部に受止め、遮熱板12と底環7とを金具601によって連結し、内装ケース2、外装ケース3、肩部材4、底環7、および遮熱板12が一体となって前記器体1を確固なものに固定している。
【0021】そして熱盤8は前記遮熱板12の上面に受載し、円周上の1か所をネジ11で取付けるとともに、他の部分の熱盤8の突起8dを遮熱板12の取付け穴12bに嵌め合わせることにより熱盤8を遮熱板12上に固定している。
【0022】遮熱板12の中央には筒部12aが設けられ、熱盤8の中央に設けた貫通孔8c内に位置するようにしてある。筒部12a部にはセンサセンサケース15を嵌め合わせて固定するとともに、このセンサケース15内にセンサホルダ17を上下動自在に収容し、センサホルダ17とサンサケース15の底部との間に働かせたばね16によってセンサホルダ17をセンサケース15の天井部に規制される上限位置に常時あるように付勢してある。
【0023】この上限位置ではセンサホルダ17の温度センサ18を保持した上端部17aが熱盤8の上面に所定量突出するようになっている。またセンサホルダ17の本体部には、センサケース15に固定されたマグネット19に磁気的に反応するリードスイッチ20を保持している。
【0024】内容器31は、器体1内に出し入れできるように収容されるが、収容状態では前記熱盤8の上面に載り、前記熱盤8上に突出していたセンサホルダ17の上端部17aを図1、図4に示すように、熱盤8の上面と面一になるように押し下げる。
【0025】センサホルダ上端部17aが熱盤8上に突出しているとき、リードスイッチ20はマグネット19と対向せず、マグネット19に反応しないで、オンまたはオフのいずれかのノーマル状態にされる。
【0026】しかし内容器31が器体1に収容され熱盤8の上に載ることによってセンサホルダ上端部17aが押し下げられると、リードスイッチ20はマグネット19と対向してこれに磁気的に反応するので、リードスイッチ20は前記ノーマル状態からこれと反対の動作状態に戻る。
【0027】そしてこのリードスイッチ20の動作状態とノーマル状態との間の変化によって内容器31の着脱を自動的に判別することができる。
【0028】また図1、図5に示すように遮熱板12の外周部に温度ヒューズ672がビス672によって取付けられ、空炊き状態での以上昇温により溶断して給電を断つようにしてある。
【0029】底環7には回路収容ボックス40が下向きに開口して一体成形して設けられており、回路収容ボックス40に収容される回路基板41が、上方からの漏水に対して防水されている。また回路収容ボックス40には下方から底蓋44が被せ付けられ、器体1が溜め水にジャブ漬けされた場合等の下方からの浸水にも対応できるようにしている。
【0030】この回路基板41に装備された制御回路42は、マイクロコンピュータ43を利用したものである。このマイクロコンピュータ43には、肩部材4の前方に突出した嘴状突出部4aの前面に設けられた操作パネル118からの出力信号、前記温度センサ18やリードスイッチ20等の各種検出信号を受けて、沸騰、保温の動作制御を行うとともに、その動作表示やタイマ設定による表示制御等を行うようになっている。
【0031】図1に戻って器体1の上端には、肩部材4がなす器体1の上端開口1aを施蓋する器体蓋6が設けられている。この器体蓋6は、図1、図6に示すように後部で肩部材4にヒンジピン68によって開閉可能に枢着されている。この器体蓋6の枢着は肩部材4に一体形成された一部開放型の軸受69に対して行い、器体蓋6の開き状態にてヒンジピン68を軸受69から着脱できるようにしている。
【0032】このヒンジピン68の着脱によって器体蓋6を着脱でき、自身の洗浄や、器体1に内容器31を収容したままでの内容液の給排等が容易となる。
【0033】器体蓋6の自由端には、図6に示すようにこの器体蓋6の裏板81にガイドされて進退し、器体蓋6が閉じられたときばねの付勢によって肩部材4の一部に形成した係止部45に係合して器体蓋6を閉じ状態にロックするロック部材71が設けられている。
【0034】このロック部材71は、操作部79aを備えたロック解除レバー79と、これのカム部79bやレバー等の適宜運動伝達機構によって連結され、ロック解除レバー79の操作部79aが起こされて軸73を中心に回動することにより、前記ロック部材71をばね72に抗して後退させ、ロックを解除する。またこれと同時にロック解除レバー79の操作部79aをさらに持ち上げることにより、ロックの解除に引き続いて器体蓋6をそのまま上方へ開くことができる。
【0035】なおロック解除レバー79の操作部79aの初期の上動は、例えば、ロック解除レバー79の操作部79aとは反対側部分を、操作部79aを親指で上動させようとする場合に同じ手の人指し指にて押圧すると云ったことにより連続した簡易な操作で行うことができる。
【0036】内容器31の上端には図1、図3、図6に示すように合成樹脂製の肩部材32を設け、これの下端の段部に内容器31のフランジ31aを受け止めて図1R>1、図2に示すようにビス345にて固定してある。
【0037】内容器31が器体1内に収容されたとき、肩部材32は器体1の肩部材4に図1、図6に示すように嵌まり合い、二重の肩構造をなすようにしてある。ここで内容器31の肩部材32も嘴状突出部32aを有し、器体1の肩部材4の嘴状突出部4aの凹陥部4bに嵌まり合うようになっている。
【0038】内容器31の外面前部に、内容器31の下部に基部が接続されて立ち上がり、内容器31の満水位置Aよりも上方位置で下向きに屈曲する屈曲路33aをなして内容液を器体1外に注出できる位置に臨む内容液注出路33が設けられている。33bは屈曲路33aの下向き先端部に形成された吐出口を示している。
【0039】この内容液注出路33は屈曲通路33aを含め、内容器31とともに器体1に対し前記上端開口1aを通じて出し入れできるようにしてあるが、この出し入れのために器体1側には内容器31および屈曲路33aを含む内容液注出路33が上下方向に出し入れされるに必要な、前記凹陥部4bを含む内周面形状を有している。
【0040】そして内容液注出路33の屈曲路33aの吐出口33bは、図1、図6に示すように器体1の嘴状突出部4aの凹陥部4b前部途中に内側やや斜め上向きに開口した注出口201を通じて、内容器31の器体1への出し入れに際し嘴状突出部4a内に上下方向に出し入れされ、内容器31を器体1に嵌め入れた状態では吐出口33bが嘴状突出部4a内に臨んで、内容液を実質的に器体1外に吐出できるようにしてある。
【0041】したがって、内容液注出路33は、内容器31とともに器体蓋6の開閉に無関係に位置し、吐出口33bが嘴状突出部4a部に臨んで、内容液を器体1外に注出できるようにする。
【0042】嘴状突出部4a内には注液ガイド202が設けられ、内容液注出路33の吐出口33bから吐出される内容液を一旦大気に開放した後受入れて前方斜め下方に案内し、嘴状突出部4aの底部の開口203を通じて内容液をスプラッシュなく静かに注液できるようにしてある。
【0043】ここで注液ガイド202は、内容液注出路33の吐出口33bから吐出される内容液を受け入れてこれを案内するが、この案内方向が前記前方斜め下方であることにより、内容液注出路33の吐出口33bが器体1の胴部に対して外方へ大きく突出しなくても、注液ガイド202の案内によって吐出内容液を器体1の胴部から大きく離れた位置にまで案内して注液でき、急須のように胴部まわりよりも口が小さく、この口を器体1に近づけにくい形状をしたものへの注液等にも便利なものとすることができる。
【0044】このため、内容液を器体1の外部まで実質的に案内し吐出できる内容液注出路33の吐出口33bまでの全体を、内容器31とともに器体蓋6の開閉構造等による他の制約を受けることなく器体1に対して出し入れできるようにすることが、内容液注出路33の吐出口33bの器体1の胴部からの外方への突出を少なくして達成され、内容液注出路33の内容器31とともの出し入れ構造を単純化することができるし、器体蓋6の開閉に伴って接続しあったり、接続が解除されたりするような複雑な途中の接続構造を採らなくてよい利点がある。
【0045】しかも前記器体蓋6の開閉に伴う通路の接続、接続解除が液漏れなく適正に達成されるようにするための、通路どうしの位置合わせや相互間の離接可能なシール構造等が一切不要となるし、シール構造部が経時的に疲労して頻繁に取り替えなければならなくなる不便も解消する。
【0046】また内容液注出路33の途中部分を透明管340によって形成し、これに流入している内容液の液位が内容器31の前面に設けた樹脂製の保護カバー38の液量表示窓37を通じ外部から見えるようにしてある。さらに器体1側にも、内装ケース2および外装ケース3の前記液量表示窓37に対応したスリット2bおよび3bを設けて器体1外からも内容器31内の液量を透視できるようにしてある。
【0047】なお、外装ケース3のスリット3bには透明なカバーシート600が貼着され、これには透視できる液位に対応する目盛等の表示が印刷等により設けられている。
【0048】保護カバー38は、内容液注出路33の透明管340の上下部に後ろ向き突片部38aが嵌まり合い、内容器31の前部の下部位置にある内容液注出路33と内容器31との接続部構造を利用して下部が取付けられ、上部が肩部材32の嘴状突出部32aに下方より嵌め込んで保持され、肩部材32の嘴状突出部32aとともに内容液注出路33の外側を覆っている。これによって、内容器31を器体かた取り出し、独立して取り扱うのに、内容液注出路33が他のものと当接したり引っ掛かり合って外力を受けるようなことを回避することができる。
【0049】また屈曲路33aは内容器31の満水位置Aよりも上方位置で下向きに屈曲して前記内容液の注出を可能にするので、内容液に満水位置Aまで内容液が入れられてもこれが内容液注出路33の屈曲路33aから溢れて自然流出するようなことを防止することができる。
【0050】内容液注出路33の下部は、透明管340と内容器31の胴部に形成された接続口602に嵌め付けられる金属製の接続管603とをシリコンゴム等の樹脂製エルボ604を介し接続することにより行われ、保護カバー38の下部を透明管340を介し安定させられるようにしてある。
【0051】接続管603は、外周に設けたフランジ605よりも内端部側となる外周にシールパッキング606を嵌め付け、このシールパッキング606を、前記接続口602に無理嵌めするとともにフランジ605をシールパッキング606の弾性によって内容器31の胴部外面に圧着させることにより、接続管603が接続口602に確固に安定するように取付け、また液漏れがないようにしている。
【0052】保護カバー38の下端部には指掛け穴607が形成され、内容器31をこれに連結した図2に示すハンドル671を把持して器体1から抜き出したとき、前記指掛け穴607に別の手の指を掛けて内容器31の底部を持ち上げるようにすると、内容器31を傾けて内容液を排出するのが容易となる。
【0053】内容液注出路33の屈曲路33aの途中には転倒時止水弁76が設けられている。
【0054】器体蓋6と裏板81との間にはベローズポンプ101が設けられ、器体蓋6の上面に露出した押圧板102によって押圧操作されて、加圧空気を吐出口103から吐出し内容器31内に送り込めるようになっている。
【0055】加圧空気が内容器31内に送り込まれると、内容液を加圧しこれを押し出そうとし、内容液注出路33を通じて器体1外に注出し注液ガイド202に流し込めるようにする。
【0056】器体蓋6の裏板81の下面には、内容器31の口部を閉じる金属製の内蓋85が当てがわれ、ビス83にて止められている。内蓋85の外周と裏板81との間には、内容器31の口縁に対向するシールパッキング84が挟持されており、器体蓋6が閉じられると内蓋85はこのシールパッキング84で内容器31の口縁に接し、内容器31を閉じる。
【0057】裏板81と内蓋85との間には、図1、図6R>6に示すように、内容器31内で発生する蒸気を外部に逃がす蒸気通路87が、前記吐出口103からの吐出空気を内容器31内に導く通路を一部を兼用する状態に、補助板104を利用して形成されている。
【0058】蒸気通路87は内蓋85に内容器31側への給気兼用の蒸気流出口としての開口86を持ち、器体蓋6の枢支部であるヒンジピン68のに近い部分を経由する経路87aを通じ、器体蓋6の後部側の上面に外部への蒸気の排出口として開口52を設けている。
【0059】これによって、従来例として述べたように、器体蓋6の枢支部から前方側に離れた位置に開口される蒸気流出口としての開口86は、器体蓋6のほぼ中央に位置して、器体1がどちらむきに転倒したとしても、内容液の残量が半分以下である場合は内容液が流出しにくい位置にあることができ、また前記器体蓋6の枢支部近くを経由して器体蓋6外への蒸気の排出口52が器体蓋6の外面に開口している通路構造上、蒸気通路87の開口86から排出口52までの経路長を大きくとることができるので、器体1が転倒して内容液が蒸気通路87を通じて器体蓋6外へ流出するまでの時間を遅らせることができ、内容液が外部に流出するまでに措置する余裕を得やすい。
【0060】また、蒸気通路87の補助板104と裏板81との間には、蒸気通路87の途中であるが前記開口86の近くに位置する弁口105を形成し、補助板104と内蓋85との間には、器体1が転倒したときに前記弁口105を閉じる転倒時止水弁106が設けられている。
【0061】このように、転倒時止水弁106が前記開口86の近くに設けられているので、器体1の転倒時に蒸気通路87を通じて流出しようとする内容液を蒸気通路87の流出初期位置にて阻止することができ、外部への流出防止に有利である。
【0062】一方押圧板102の内側に位置するベローズポンプ上板111の裏面中央には長さ方向のスリット112aを持った保持筒112が設けられ、この保持筒112の内周に中空の弁杆113を上下摺動可能に嵌め合わせて前記スリット112aに上端のフック113aを係合させ、弁杆113とベローズポンプ上板111との間に働かせたばね114によって弁杆113を下方に付勢するとともに、弁杆113は前記スリット112aとフック113aとの係合によって図1に示すように保持筒112からの最大下動位置が規制されている。
【0063】弁杆113はまた下端部が裏板81の中央に設けられた開口115に上下摺動可能に嵌め合わされている。
【0064】ベローズポンプ101の吐出口103は弁杆113の下端開口を利用して形成しており、弁杆113の途中部分にはベローズポンプ101を圧縮させて給気するときには開いて給気を可能にし、その他のときには自信の弾性復元力および内圧で閉じる舌片状の弁611が設けられ、給気時以外のときに、ベローズポンプ101内に弁杆113を通じて蒸気が入り込むようなことがないようにしている。
【0065】裏板81の中央の開口115のまわりの円周位置にて外周部が裏板81と補助板104との間で環状に挟持され、かつ内周部が弁杆113の下端部外周に嵌め合わされて開口86の口縁の上に位置する弁部116bを有した弁膜116が設けられている。
【0066】これによって、弁膜116は弁杆113と開口115との嵌め合わせ部での隙間を通じて、加圧空気が漏れたり、蒸気がベローズポンプ111内に入り込んだりするのを防止し、弁部116bは、押圧板102による押圧にてベローズ上板111が下動されるときに弁杆113がこれに同動することによりいち早く開口115の口縁に圧接され、ベローズポンプ101と内容器31とを蒸気通路87の一部および弁杆113を介し通じ合うようにし、それ以降得られる十分なベローズポンプ101の押圧ストロークにて十分な加圧空気を内容器31内に送り込み、内容液を加圧して注出することができるし、前記弁部116bが開口115の口縁から離れない状態でベローズポンプ101を繰り返し押圧操作するようにして、途中加圧空気が開放されてしまうようなことなしに、内容液の加圧注出操作を間断的に続行することができる。
【0067】弁杆113は、途中部分に前記舌状弁611を設けるのに、内外2つの筒部材113a、113bを2重筒に組み合わせ、両者間で上下方向から挟持するようにしてある。図の675は弁杆113の通気口を示している。
【0068】本実施例では特に、蒸気通路87の前記器体蓋6のヒンジピン68の側に寄った位置にある経路87a部に、弁口612を設け、その下に器体1が転倒したときに自重や内容液による押動にて弁口612を閉じる補助転倒時止水弁613を設けてあり、前記転倒時止水弁106とで、器体1の転倒時の蒸気通路87を通じた内容液の流出をさらに防止しやすくしてある。
【0069】この内容液流出に対する安全性を利用して本実施例では、転倒時止水弁106によって閉じられる開口105の開口縁の数カ所に切り込み614を入れてある。したがって、器体蓋6が急激に閉じられた場合に、このような切り込み614がない従来では、転倒時止水弁106が自身の慣性によって開口105に一部が嵌まり合って圧着し、内外圧力のアンバランス状態つまり内圧が高圧気味になることの影響で圧着状態のままに維持され、内容器31内が自然昇圧してしまうようなことがあったのを、前記切り込み614部での通気によって前記密着や密着が維持されるようなことを回避し、前記のような自然昇圧が起きないようにすることができる。
【0070】なお、図6に給気の際の圧縮空気の流れを実線矢印で示し、蒸気放出の際の蒸気の流れを破線矢印によって示している。蒸気通路87の前記転倒時止水弁106および613の各設置部の間には、貯湯部615が設けられ、器体1の転倒時に前記切り込み614等が原因して内容液が蒸気通路87を通じて流出しようとする場合、これを一時溜め込み次へ流出するのを邪魔し、遅らせるようにしてある。また、蒸気通路87の転倒時止水弁106から補助転倒時止水弁613までの通路長を長くして、内容液の流出をさらに遅らせる迂回経路87bも、仕切り周壁104aによって形成してある。
【0071】そして器体蓋6が開かれたとき前記蒸気通路87に流出している、あるいは結露している内容液を内容器31内に戻す戻し口616を設けてあり、この戻し口616には器体蓋6が閉じている間は内容器31の肩部材32の内周面に当接して戻し口616を閉じるシールパッキング617を装着してある。
【0072】また、ベローズポンプ101の上板111の一部には、図3に示すように樹脂製の吸気弁211が設けられ、ベローズポンプ101が押圧操作後に復元する際に吸気弁211が開かれて吸気口212を通じ外気を吸引できるようにしている。この際吸気口212はベローズポンプ101の内容器31内から遠く、外部に近い位置にあって冷たい空気を吸引しやすい。このため次にベローズポンプ101が押圧されることによりベローズポンプ101内の空気を内容器31内に吹き込んだときの空気の膨張を大きく見込むことができ、内容液の加圧効率を向上することができる。
【0073】器体蓋6の押圧板102が設けられている部分のまわりに、回動位置によって押圧板102の押し下げを阻止し、またこの阻止を解除する注出ロック部材122が設けられ、器体蓋6の上面に突出した操作突起122aにより操作されるようにしてある。
【0074】さらに図1、図5に示すように内容器31の胴部前面の一部にはマグネット621が押え金具622によって取付けられ、これに対応する内容器31の内面には前記マグネット621によって浄化器623を吸着保持できるようにしてある。
【0075】具体的には浄化器623は金属製のケース624が前記マグネット621によって吸着されることにより、内容器31の胴部内面に保持される。そして、この金属製のケース624の口部に樹脂製の格子状の蓋625を嵌め合わせ、この蓋625の裏面に多孔な浄化材ケース626を着脱自在に嵌め付けるようにしてある。
【0076】浄化材ケース626内には活性炭やセラミック等の浄化材が収容され、蓋625や浄化材ケース626の格子目や多孔部を通じて内容液が浄化材に浸透および通過してこの浄化材に触れるので、内容液を貯湯中に浄化し、臭いやトリハロメタンと云った有害な塩素化合物等を除去することができる。
【0077】しかも内容液は加熱により、特に沸騰により活発に対流させられるので、前記浄化材への通過を促し、また内容液の全体が万遍なく浄化されるようにすることができる。
【0078】もっともこのような浄化作用に加え、制御回路42によって内容液を必要に応じて、あるいは所定の時期に沸騰を所定の時間持続させ、あるいは繰り返させることにより、臭いや有害物質を発散させることを併用することができる。
【0079】そして浄化器623は、内容器31内にあって内容液と触れるもので、内容器31および内容液注出路33とともに、器体1に対し出し入れでき、内容器31の器体2に対する前記出し入れを損なわない上、浄化器263そのものの洗浄を器体1側に関係なく簡易に行えるようにすることができる。特に本実施例では、浄化器623を内容器31内面にマグネット621の吸着力によって保持しているので、この吸着力に打ち勝つだけで浄化器623を簡易に取外せるので、浄化器623そのものの洗浄も単独に取り扱って極く簡単に行うことができ有利である。
【0080】さらに内容器31の下部外周にはスカート状の筒壁627を無理嵌めして装着し、これが内容器31の底部よりも下方に延びているようにしてある。これにより内容器31を器体1から抜き出して直置きするような場合でも、内容器31の底部が直接定置面に当接したり、取扱い中に外力を受けたりして変形するようなことを防止することができ、前記変形によって熱盤8との接触不良が生じるようなことを回避することができる。また内容器31が熱盤8の上に載置されるとき、筒壁627は図1、図4、図5に示すように熱盤8の外周に被さるので、熱盤8からの熱を内容器31内の内容液を加熱するのに有効利用することができ熱効率が向上する。
【0081】
【発明の効果】本発明によれば、蓋体の急な閉じ状態のときの弁口部の蓋体上の位置条件による蓋体閉じ方向への大きな移動速度に対し、この弁口と協働する転倒時止水弁が自身の慣性によって弁口に圧着するようなことがあっても、弁口の口縁に設けられた切り込みが形成する転倒時止水弁まわりの迂回通気部により、転倒時止水弁が弁口に密着したり、内外圧力のアンバランス状態つまり内圧が高圧気味になることの影響で圧着状態のままに維持され、器体内が自然昇圧してしまうようなことを回避するので、器体内が異常昇圧したり、加圧注出式の電気貯湯容器において内容液を不用意に押し出してしまうようなことを防止することができ、使用の安全性が向上する。
【0082】そして、蒸気の排出口を蓋体外部に開口するために、蒸気通路の蓋体の枢支部近くを経由している経路部に設けた補助転倒時止水弁およびこれと協働する弁口が蓋体の枢支部に近くにあって、蓋体の急な閉じ動作時にもこの弁口部に蓋体の閉じ方向への大きな移動速度が生じてこれに補助転倒時止水弁が弁口に圧着するようなことなく、切り込みのない弁口との間で相互の密着による自然昇圧を回避しながら内容液の外部への流出を防止し、前記転倒時止水弁と補助転倒時止水弁との間で内容液の流出を遅らせることができるのと併せ、転倒時止水弁での前記切り込みにより形成する迂回通気部が内容液の若干の流出部となることを十分に補うので、内容液の外部への流出に対する安全性を確保することができ、器体転倒時の安全性を確保することができる。
【0083】また蒸気通路の転倒時止水弁と補助転倒時止水弁との間に通路が拡幅した液溜りを形成しておくと、転倒時止水弁の部分を内容液が越えて流出することがあっても、この液溜りに内容液を溜め込む間内容液の外部への流出をさらに遅らせるられるので、内容液の外部への流出に対する安全性をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された電気貯湯容器の一実施例としての電気ポットの断面図である。
【図2】図1の電気ポットの斜視図である。
【図3】図1の電気ポットの熱盤のヒータの埋設パターンを示す平面図である。
【図4】図1の電気ポットの底部分を示す断面図である。
【図5】図1の電気ポットの内容器の底部の一部断面図である。
【図6】図1の電気ポットの器体蓋装着部分および転倒時止水弁部の各断面図である。
【符号の説明】
1 器体
4 肩部材
6 器体蓋
52、86 開口
68 ヒンジピン
69 軸受
87 蒸気通路
87a 迂回した経路
105、612 弁口
106 転倒時止水弁
613 補助転倒時止水弁
614 切り込み
615 液溜り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 器体を開閉するよう後部が器体に枢支された蓋体に、器体内蒸気を外部に排出する蒸気通路を設け、この蒸気通路の器体内からの蒸気の流出口を蓋体の前記枢支部から前方側に離れた位置に開口させるとともに、蒸気通路の蓋外への蒸気の排出口を蓋体の枢支部近くを経由する経路にて蓋体の外面に開口させ、器体の転倒時に蒸気通路途中の弁口を自重や流出内容液の押動によって閉じる転倒時止水弁を蒸気通路の前記流出口近くに設けた電気貯湯容器の蒸気通路装置において、前記弁口の口縁に閉じ状態の転倒時止水弁に対し迂回通気部となる切り込みを設けるとともに、蒸気通路の前記蓋体の枢支部近くを経由する経路部に、弁口と、器体の転倒時に前記弁口を自重や流出内容液の押動により閉じる補助転倒時止水弁を設けたことを特徴とする電気貯湯容器の蒸気通路装置。
【請求項2】 蒸気通路の前記転倒時止水弁と補助転倒時止水弁との間の部分に通路を拡張した液溜りを形成した請求項1に記載の電気貯湯容器の蒸気通路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平6−284969
【公開日】平成6年(1994)10月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−73130
【出願日】平成5年(1993)3月31日
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)