説明

電気透析装置、排水処理方法、およびフッ素処理システム

【課題】 電極腐食を伴うことなく、安定してフッ素含有排水を電気透析することができる電気透析装置を提供する。
【解決手段】 電気透析装置は、陽極2を有する陽極室10と、陰極3を有する陰極室50と、供給された排水からフッ素イオンを除去して処理水を生成する脱塩室40と、脱塩室40から移動した排水中のフッ素イオンを濃縮して濃縮水を生成する濃縮室30と、排水中のフッ素イオンが濃縮室30から直接陽極室10に流入しないように遮断するバッファ室20とを備えている。また、電気透析装置は、陽極室10に純水を供給する経路と、陽極室10から出た流出水をバッファ室20に供給する経路とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気透析装置に係り、特にフッ素を含む液体、例えば、(1)半導体製造、液晶製造または電子部品製造に関する装置からの排水または該排水を前処理した排水、(2)半導体製造、液晶製造または電子部品製造に用いられたPFCガスを除害装置で分解して生成したガスを、水またはアルカリ水で洗浄することにより発生する排水または該排水を前処理した排水、(3)フロン類破壊業者におけるフロン類破壊施設でフロンを分解して生成したガスを、水またはアルカリ水で洗浄することにより発生する排水または該排水を前処理した排水、(4)水溶液中のフッ素をフッ化カルシウム(CaF)として回収するフッ素再資源化装置の処理水である排水または該排水を前処理した排水などを処理対象とする電気透析装置に関するものである。また、本発明は、かかる電気透析装置を用いた排水処理方法に関するものである。さらに、本発明は、かかる電気透析装置を用いてフッ素を処理するフッ素処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種工程から副生成物または廃棄物として排出される排水中に含まれる中性塩、廃酸、廃アルカリによる環境負荷を小さくし、かつ副生成物または廃棄物中の有用成分を回収して再利用できる技術を開発することは種々のプラントにおける大きな課題である。また、排水中から環境に負荷を与える物質を除去した際に得られる処理水がプラント内で再利用可能となればさらに望ましいことはいうまでもない。
【0003】
例えば、半導体、液晶または電子部品の製造工程からは、数十から数百mg−F/Lの希薄なフッ素含有排水が大量に発生してくる。この希薄フッ素含有排水は、これまでは水酸化カルシウム(Ca(OH))を用いる凝集沈殿法により処理されてきた。しかしながら、この凝集沈殿法によれば、取り扱い性の悪い汚泥が大量に発生するという問題があった。このフッ素に由来する汚泥発生量は、排水の水量とともに増加するため、希薄なフッ素含有排水の減容化が検討されてきたが、効率的に濃縮する技術はこれまでなかった。発生した汚泥はフッ素が再利用されることなく埋設処分され、処理水もCaを多量に含んでいるため再利用が困難であり外部に放流されるのが通常であった。
【0004】
排ガス洗浄装置の洗浄用水として工業用水または市水を用いることが安価であり多用されているため、特にPFCガスを除害装置で分解して生成したガスを水洗浄する際に発生する排水には、工業用水や市水にもともと含まれていたCaが含まれている。Caはフッ素と反応して難溶性のフッ化カルシウム(CaF)を形成して沈降したり、あるいはアルカリ性の水溶液中では水酸化物を形成して沈殿したりしやすい。このため、上記排水中に含まれるフッ素を分離したり濃縮したりすることは困難であった。
【0005】
水溶液の濃縮操作に用いられる通常の水処理技術をフッ素含有排水の処理に適用しようとすると、種々の問題があることが知られている。例えば、フッ素含有排水をRO膜処理で濃縮しようとした場合、フッ化水素酸(HF)は膜透過性が高いため膜透過水側にリークするHFが多く、効率的に濃縮できないとともに処理水中のフッ素濃度が高いという問題がある。
【0006】
また、蒸発濃縮法は、10,000mg/L程度以上の濃厚な排水をさらに濃縮しようとする際には有効な方法であるが、希薄排水に適用しようとしても、水蒸発に関わるエネルギー消費が大きくなるため適用しにくいという問題がある。また、蒸留水中にもフッ素イオンがキャリーオーバーするため蒸留水のフッ素濃度が高く、そのままでは再利用しにくいという欠点もある。
【0007】
これらの方法に対して、電気透析法は、イオン濃度が1,000mg/Lから10,000mg/L程度の濃度の排水を濃縮または脱塩するには優れた方法であり、かん水から飲料水の製造、酸の回収、塩類の濃縮技術として実用化されている。しかしながら、電気透析法は、高度な脱塩はできないため処理水中にイオンが多く残存するので、排水処理に適用しようとすると、処理水の二次処理が必要となる場合がある。
【0008】
また、金属水酸化物を形成する金属イオンを含有する酸排水の処理に電気透析法を適用する場合には、電気透析槽内で金属水酸化物が生成しないよう対策をとる必要があった。また、フッ素を含有する排水の処理に適用しようとすると、電気透析槽の電極がフッ素で腐食してしまうという問題がある。
【0009】
また、フッ素イオンは、人の健康に係わる被害を生じるおそれがある有害な物質として排水規制の対象物質であり、日本では、海域以外の公共用水域に排出されるもので8mg/L以下、海域に排出されるもので15mg/L以下が一律排水基準として定められている。また、人の健康の保護を目的とした環境基準では0.8mg/Lが定められており、フッ素含有排水を処理した処理水中のフッ素濃度は一律排水基準を満たすだけでなく、可能な限り環境基準に近づけることが望まれている。
【0010】
ところが、フッ素含有排水の処理において凝集沈殿法を用いた場合に、処理水中のフッ素濃度を環境基準に近づけようとすると、凝集沈殿に必要な薬品の使用量が急激に増加し、汚泥の発生量が著しく増加するという問題がある。
【0011】
また、フッ素含有排水からフッ素を除去して純水製造用の原水等として再利用を図る場合は、フッ素濃度が低減されているのが望ましく、好ましくは1mg/L以下にまで低減されているのが望ましい。これは、フッ素濃度が1mg/Lを超えている場合には、例えば地下水や水道水などのCa含有水と混合して純水製造用原水とした場合には、純水製造の過程での不純物の分離・濃縮操作でフッ化カルシウムが生成して純水製造装置を閉塞させてしまうおそれがあるからである。
【0012】
電気透析技術を用いてフッ素含有排水等を処理する従来技術としては、以下に示すようなものがある。
【0013】
特許文献1には、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を使用する電気透析槽の中でフッ素イオン(F)およびカルシウムイオン(Ca2+)を含有する電解質水溶液を脱塩濃縮する電気透析処理方法が開示されている。この方法では、脱塩室と濃縮室を交互に配置した電気透析槽を用いて限界電流密度の1/2以下の電流密度で運転し、他の陰イオンと比べて陰イオン交換膜中を移動しにくいフッ素イオンを脱塩室に残存させて、濃縮室でのCaFスケール析出を抑えることにより脱塩処理する。
【0014】
特許文献2には、フッ素イオンを含む少なくとも2種の異種陰イオンと少なくとも2種の塩とを含む混合塩の水溶液(ステンレス鋼酸洗い廃液)から公知のバイポーラ膜を用いた3室法による電気透析式水解離装置を用いて混合酸を回収する方法が開示されている。この方法では、重金属イオンを含む廃液をあらかじめアルカリ溶液(好ましくはKOH)を加えて沈殿させ、得られた懸濁液はろ過ユニットを通すことにより沈殿をろ過することにより、可溶性混合塩の溶液を形成させ、その可溶性混合塩の溶液を電気透析式水解離装置の脱塩室に供給することにより、混合酸を回収する。
【0015】
特許文献3には、金属イオン含有の硝フッ酸廃液の再生処理方法が開示されている。この方法では、金属イオンを含有する硝フッ酸廃液に電気透析操作における硝酸の回収効率を高めるためにフッ酸を添加してF/NO3−モル比を高めた廃液とした後、酸回収用イオン交換膜電気透析槽を用いて透析脱酸処理(硝酸を回収)する。次に、処理水中に含まれる金属イオンはアルカリを加えて水酸化物として沈殿させて除去する。そして、バイポーラ膜と陰イオン交換膜陽イオン交換膜を組合せてなるイオン交換膜電気透析装置により硝フッ酸とアルカリとに分離して回収する。
【0016】
特許文献4には、金属イオンおよび油類を含有するアルカリ性のフッ化物廃液の処理方法が開示されている。この方法では、金属イオンおよび油類を含有するアルカリ性のフッ化物廃液をフッ酸の添加により中和処理し、油類の除去処理をした後、キレート樹脂による金属イオンの吸着除去処理をし、ついでバイポーラ膜と陰イオン交換膜陽イオン交換膜を組合せてなるイオン交換膜電気透析装置により、アルカリとフッ酸とに分離して再生回収する。
【0017】
特許文献5には、フッ素を含む排水の処理方法が開示されている。この方法では、フッ素を含む排水からフッ素吸着剤によってフッ素を除去した処理水を生成するとともに、フッ素吸着剤からフッ素を溶離した液を電気透析してフッ素濃縮水とフッ素希薄水とに分離し、得られたフッ素希薄水から再びフッ素吸着剤によってフッ素を除去した処理水を生成する。
【0018】
特許文献6には、主に半導体工場から排出されるBHF溶液等のフッ素およびアンモニア含有の水溶液からフッ素を分離して、得られたフッ素を炭酸カルシウムと反応させてフッ素を回収する方法が開示されている。この方法では、フッ素およびアンモニウム含有排水を、陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に並べた電気透析槽を用いて、排水と鉱酸を一室おきに交互に供給することで排水処理を行い、フッ素イオンは炭酸カルシウム粒による処理に適した濃度にまで濃縮した液として回収し、アンモニウムイオンは鉱酸の塩の形で回収し、処理水はフッ素イオンおよびアンモニウムイオンとも50〜100mg/Lと樹脂吸着等の二次処理工程に流せる濃度範囲にまで低減させる。
【0019】
特許文献7には、半導体デバイスの製造工程で発生するフッ酸および鉱酸を含有する希薄な混合酸性排水を電気式脱イオン装置で処理する方法が開示されている。この方法では、鉱酸およびフッ酸を含有する希薄酸性水を弱電解質であるフッ酸が解離するpH値までアルカリを添加し、イオン交換樹脂、イオン交換繊維などのイオン交換体が充填された脱塩室とイオン交換膜を介して仕切られた濃縮室を有する電気式脱イオン装置(EDI)で処理することにより、フッ酸が除去された処理水を得る。また、塩類が濃縮された濃縮水を得る。
【0020】
特許文献8には、半導体製造工場において半導体製造時に発生する廃液の処理を行う廃液処理装置が開示されている。この廃液処理装置では、半導体製造時に発生する廃液を、電気透析装置の廃液室内にイオン交換樹脂を充填した電気透析装置を用いて、廃液中のフッ素をフッ化水素として回収する。また、金属イオンは陰極室に回収する。廃液室から陰イオン交換膜を透過して酸回収室に移動してきたF成分は、陽イオン交換膜によって酸回収室に留まり陽極室に達しくい構造となっている。金属イオン成分は廃液室からカチオン交換膜を介して陰極側極液室へ透過し、陰極側電極に析出した金属は電極の極性を短期間だけ逆極性にすることにより、陰極側電極に析出した金属を再度イオン化させて、陰極側極液タンクへ移動させ、濃縮後水酸化物として沈殿させることにより、金属成分も回収する構成としているものである。
【0021】
特許文献9には、フッ素含有水を電気脱塩装置で処理する方法が開示されている。この方法は、電気脱塩装置に供給される水のカルシウム濃度とフッ素濃度との濃度積と電気脱塩装置の水回収率の関係を制約することにより、濃縮室におけるフッ化カルシウムスケールの生成を防止するというものである。
【0022】
特許文献10は、フッ酸を含む希薄酸性排水の回収・再利用のための電気透析装置が開示されている。この装置では、正負の両電極間に、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を少なくとも一部交互に配列することによって脱塩室と濃縮室とが形成されており、少なくとも脱塩室と極室にはイオン交換体が充填されている。電極室への供給水として脱塩室からの処理水を使用することにより、電極室にはフッ酸が低減された液が供給されるので、電極を腐食することなく脱塩処理を行うことができる。また、この特許文献10には、使用された電極液が原水タンクに戻され、被処理水と混合されることが記載されている。
【0023】
特許文献11には、有害ガスを無害化する排ガスの処理方法が開示されている。この方法では、フッ化水素を含む酸性ガスを(アルカリ性水溶液の)吸収液と湿式スクラバーで気液接触・分解吸収させ、生成する排液は陰イオン選択透過膜を有する電気透析装置に送って透析処理し、吸収した陰イオンの一部または全部を系外に排出し、得られた(アルカリ性水溶液の)処理液を吸収液として再び湿式スクラバーに送って循環させる。
【0024】
特許文献12には、フッ素イオン含有水を電気再生式脱イオン装置で脱イオンして純水を製造する方法が開示されている。この方法では、電気再生式脱塩装置の濃縮水をアニオン交換樹脂で処理してフッ素イオン濃度1mg/L以下の水、必要に応じて塩水溶液を加えることにより電気伝導度が10μS/cm以上の水、あるいは陽極室の入口pHを8以上とする水を調製して、極液として通液することにより電極の腐食を防止する。
【0025】
特許文献13には、フッ素イオンなどの腐食性の強いイオンを含む被処理水であっても電極に腐食させることなく、電気脱イオン装置で脱イオン処理する装置が開示されている。この装置では、導電性の基板の表面にホウ素をドープしたCVDダイヤモンド薄膜を成膜した陽極板および陰極板を使用することにより、フッ酸による腐食を防止する。
【0026】
特許文献14には、ステンレス鋼の酸洗に用いられた廃液等の金属とフッ素イオンを含有する廃液を処理する方法が開示されている。この方法では、まず金属とフッ素イオンを含有する廃液をアルカリ溶液で中和し、次いでろ過し、フッ素イオン非含有金属水酸化物スラッジとフッ素イオン含有中和液とに分離し、次いでフッ素イオン含有中和液をバイポーラ膜電気透析により酸アルカリ分離してフッ素イオン含有酸溶液とアルカリ溶液に分離し、その後フッ素イオン含有溶液は多段水蒸気精留塔を用いてフッ素イオン濃縮液と希薄酸溶液に分離する。この特許文献14には、バイポーラ電気透析装置により分離濃縮されたフッ素イオン含有酸溶液のフッ素イオン濃度が例えば20g/L(2%)であり、さらに多段水蒸気精留塔で濃縮された再利用可能なフッ素イオン含有濃縮液のフッ素イオン濃度が130g/L(13%)程度であることが記載されている。
【0027】
特許文献15には、フッ素含有排水の処理方法が開示されている。この方法は、フッ素含有排水を脱塩および濃縮する電気透析工程を備え、脱塩処理液をフッ素含有排水の発生源への補給水として再生し、フッ酸濃縮液は利用可能な濃度のフッ酸溶液として再生する程度に電気透析する。電気透析工程においては、対向状に配置される負極部と正極部とを備える電気透析手段を用いる。この電気透析手段の負極部および中央部には、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とが交互に配置され、正極部近傍には、陽イオン交換膜が複数枚連続して配置されている。負極部と正極部に脱塩処理水を供給し、正極部近傍の陽イオン交換膜配置部位(遮断室)にも脱塩処理液を供給することで、電極循環液および遮断液のフッ酸濃度を低く抑え正極の腐食を防止する。また、被処理水の一部が濃縮液となり、濃縮液を循環することにより、濃縮倍率を高くする。また、フッ酸濃縮液中のフッ素イオン濃度および/または電解質濃度を計測し、この濃度の変動に応じて濃縮倍率を制御する。
【0028】
【特許文献1】特開昭54−20196号公報
【特許文献2】特許第2726657号公報
【特許文献3】特公平7−112558号公報
【特許文献4】特公平7−112559号公報
【特許文献5】特許第3364308号公報
【特許文献6】特開平9−262588号公報
【特許文献7】特許第3555732号公報
【特許文献8】特開2000−176457号公報
【特許文献9】特開2000−229289号公報
【特許文献10】特開2001−121152号公報
【特許文献11】特開2001−145819号公報
【特許文献12】特開2002−119974号公報
【特許文献13】特開2003−126863号公報
【特許文献14】特開2003−159593号公報
【特許文献15】特開2004−174439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
上述した従来の電気透析装置によれば、イオン交換膜のフッ素透過性が高いために極室にフッ素イオンが流入して、電極を腐蝕するため、安定した運転が継続できないという問題があった。また、カルシウムを含有する希薄フッ酸排水を処理対象とする場合には、濃縮室中にフッ化カルシウムが析出するため、安定した運転が継続できないという問題があった。さらに、アンモニウムイオンを含むフッ素含有排水は、フッ素再資源化が困難であった。また、従来の電気透析装置では、希薄なフッ素含有排水からフッ素濃度が1mg/L未満の再利用可能な処理水を得ると同時に、フッ素再資源化装置に供給できるまで濃縮水中のフッ素濃度を高めることができなかった。
【0030】
さらに、特許文献1に記載の方法では、処理水中にフッ素イオンが残存したままであり、残存するフッ素の処理が必要という問題がある。また、この特許文献1には、フッ素による電極腐食の回避方法については何ら開示されていない。
【0031】
特許文献2に記載の方法は、前処理としてアルカリを加えて、混合塩の水溶液中の重金属イオンを水酸化物として沈殿させて除去することにより、電気透析槽内での水酸化物形成を防止する方法であるが、沈殿装置と沈殿物のろ過装置が必要となるので装置が大きくなるとともに操作も煩雑となるという問題がある。また、この方法は、濃厚なステンレス鋼酸洗い溶液から酸を回収するのを目的としており、処理水中にはまだフッ素が多量に残存しているので、そのままでは到底再利用できないという問題がある。また、特許文献3に記載の方法は、特許文献2と同様の課題を有している。
【0032】
特許文献4に記載の方法は、有機化学プラントから発生する油分を含むアルカリ性のフッ化物廃液という特異な廃液を対象とするものである。この方法では、フッ酸を加えての中和処理と油分除去処理をした後、金属イオンはキレート樹脂で除去し、その後バイポーラ膜法を用いた電気透析装置でフッ酸とアルカリを回収する。この特許文献4には、フッ素による電極の腐食を回避する方法については開示されていない。
【0033】
特許文献5に記載の方法は、フッ素吸着剤からフッ素を溶離し、該溶離液を電気透析してフッ素濃縮水とフッ素希薄水とに分離し、上記フッ素希薄水から上記フッ素吸着剤によってフッ素を除去した処理水を得るという方法であるが、フッ素の一部が吸着剤と電気透析槽とを循環するので処理の効率が悪いという問題がある。また、この特許文献5には、フッ素による電極の腐食を回避する方法については開示されていない。
【0034】
特許文献6に記載の方法は、電気透析槽を用いてアンモニア濃度を低下させフッ素濃度を高めた濃縮水をフッ素回収のための炭酸カルシウム粒による濃度にまで適した液として回収する方法であるが、処理水中のフッ素濃度が高くそのまま再利用することができないため、樹脂による処理水の二次処理が必要になる。また、この特許文献6には、フッ素による電極の腐食を回避する方法については開示されていない。
【0035】
特許文献7に記載の方法は、フッ酸を含有する混合酸性水にアルカリを添加して電気式脱イオン装置で処理することにより、フッ酸が除去された処理水を得る方法であるが、フッ素が塩の形で濃縮されるためフッ酸またはフッ素の回収や再利用に適さない。また、極室に濃縮水を供給していることから、フッ素により電極の腐食が回避できないという問題がある。
【0036】
特許文献8に記載の装置では、陰極に析出した金属を溶解させるために逆極性にしたときに、析出に要した電流量と同等の溶解電流量が必要となり、また、処理水にフッ素および金属イオンが漏洩するため、処理水の二次処理が必要となるという問題がある。
【0037】
特許文献9に記載の方法では、運転可能なカルシウムおよびフッ素の濃度領域が狭いため、前処理としてフッ素含有水をイオン交換樹脂で処理して、スケール成分のフッ素イオンまたはカルシウムイオンを予め除去する必要がある。また、この特許文献9には電極の腐食を回避する方法については開示されていない。
【0038】
特許文献10に記載の装置は、バッファ室を設けた構造ではないので、濃縮室中のフッ素濃度を大きく高めると濃縮室から極室にフッ素の漏洩が始まるので、希釈してフッ素濃度を低下させるために、電極室に供給する電気室脱塩装置の処理水流量を大きくする必要があり、濃縮室のフッ素濃度を高めての回収はできないという問題点がある。また、希薄酸性排水中にCaイオンを含む場合は、濃縮室内でCaイオンおよびフッ素イオンとも濃縮され、CaFが析出するので適用できない。
【0039】
特許文献12に記載の方法では、極液のフッ素濃度をアニオン交換樹脂で除去して低く抑えながら、かつ極液の導電率を高く保つために塩水溶液を加えるなどの煩雑な管理が必要になるという問題がある。
【0040】
特許文献13に記載の装置では、電極製作に高価な大型CVD装置が必要となるという問題がある。
【0041】
また、特許文献14に記載の方法では、前処理としてアルカリを用いて金属イオンを予め分離する必要がある。また、この特許文献14にはバイポーラ膜電気透析装置の電極の腐食を回避する方法については開示されていない。
【0042】
特許文献15に記載の方法は、電気透析処理した脱塩水を遮断室および電極室に導入することにより電極の腐蝕を防止する方法であるが、脱塩水を供給することに伴う運転電圧の上昇を抑制する対策がとられていないので、運転電圧が高くなるという問題がある。また、高倍率濃縮された濃縮室と隣接する遮断室中にはフッ素が漏洩してくるので遮断室循環液はフッ素含有水となり、フッ素を除去するか、あるいは回収するという後処理が必要となるという問題が生じる。また、電極循環液および遮断液のフッ素濃度は、脱塩水の水質に依存するので、印加電流などの運転条件および原水の水質変動により脱塩水のフッ素濃度が高まった場合は、電極が腐食するおそれがあるという問題点がある。
【0043】
以上のような問題があるため、フッ素含有排水を効率的にかつ安定して処理する技術が待望されていた。また、フッ素含有排水からフッ素を濃縮し、再利用に供する技術および同時に処理水を再利用可能なまでにフッ素を除去する技術が待望されていた。
【0044】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、電極腐食を伴うことなく、安定してフッ素含有排水を電気透析することができる電気透析装置を提供することを第1の目的とする。
【0045】
また、フッ素含有排水を電気透析した後の処理水のフッ素濃度が1mg/L未満と低く、処理水を再利用することができる電気透析装置を提供することを第2の目的とする。
【0046】
また、アンモニウムイオンを含むフッ素含有排水を電気透析してアンモニウムイオンを分離したフッ素濃縮水を得ることができる電気透析装置を提供することを第3の目的とする。
【0047】
また、金属水酸化物スラッジを形成する金属イオンを含むフッ素含有排水を電気透析する場合に、金属水酸化物スラッジを形成することなく、金属イオンを分離したフッ素濃縮水を得ることができる電気透析装置を提供することを第4の目的とする。
【0048】
また、フッ素含有排水を電気透析したフッ素濃縮水をフッ素再資源化装置に供給することにより、フッ化カルシウム(CaF)として回収することができる電気透析装置を提供することを第5の目的とする。
【0049】
また、アンモニウムイオンを含むフッ素含有排水からアンモニウムイオンを分離してフッ素再資源化を容易にしたフッ酸濃縮水をフッ素再資源化装置に供給することにより、フッ化カルシウム(CaF)として回収することができる電気透析装置を提供することを第6の目的とする。
【0050】
また、上述した電気透析装置を用いて効果的にフッ素を処理するフッ素処理システムを提供することを第7の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0051】
本発明の第1の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から対象イオンを除去して該対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の対象イオンを濃縮して該対象イオンの濃度が高められた濃縮水を生成する濃縮室とを備えている。また、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記濃縮室に供給する経路とを有している。
【0052】
本発明の第2の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から対象イオンを除去して該対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の対象イオンを濃縮して該対象イオンの濃度が高められた濃縮水を生成する濃縮室と、上記被処理水中の対象イオンが上記濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室とを備えている。また、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記濃縮室に供給する経路とを有している。
【0053】
本発明の第3の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から対象イオンを除去して該対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の対象イオンを濃縮して該対象イオンの濃度が高められた濃縮水を生成する濃縮室と、上記被処理水中の対象イオンが上記濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室とを備えている。また、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記バッファ室に供給する経路とを有している。
【0054】
本発明の第4の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から対象イオンを除去して該対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の対象イオンを濃縮して該対象イオンの濃度が高められた濃縮水を生成する濃縮室と、上記被処理水中の対象イオンが上記濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室とを備えている。また、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記バッファ室を経由して上記濃縮室に供給する経路とを有している。
【0055】
本発明の第5の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、上記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを上記第2の濃縮室に供給するイオン供給室とを備えている。また、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記第1の濃縮室に供給する経路とを有している。
【0056】
本発明の第6の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記被処理水中の第1の対象イオンが上記第1の濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室とを備えている。また、電気透析装置は、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、上記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを上記第2の濃縮室に供給するイオン供給室とを備えている。さらに、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記バッファ室に供給する経路を有している。
【0057】
本発明の第7の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記被処理水中の第1の対象イオンが上記第1の濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室とを備えている。また、電気透析装置は、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、上記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを上記第2の濃縮室に供給するイオン供給室とを備えている。さらに、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記第1の濃縮室に供給する経路を有している。
【0058】
本発明の第8の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記被処理水中の第1の対象イオンが上記第1の濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室とを備えている。また、電気透析装置は、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、上記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを上記第2の濃縮室に供給するイオン供給室とを備えている。さらに、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記バッファ室を経由して上記第1の濃縮室に供給する経路を有している。
【0059】
本発明の第9の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室とを備えている。また、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記第1の濃縮室に供給する経路とを有している。
【0060】
本発明の第10の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記被処理水中の第1の対象イオンが上記第1の濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室とを備えている。また、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記バッファ室に供給する経路とを有している。
【0061】
本発明の第11の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記被処理水中の第1の対象イオンが上記第1の濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室とを備えている。また、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記第1の濃縮室に供給する経路とを有している。
【0062】
本発明の第12の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記被処理水中の第1の対象イオンが上記第1の濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室とを備えている。また、電気透析装置は、上記陽極室に純水を供給する経路と、上記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を上記バッファ室を経由して上記第1の濃縮室に供給する経路とを有している。
【0063】
本発明の第13の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から対象イオンを除去して該対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の対象イオンを濃縮して該対象イオンの濃度が高められた濃縮水を生成する濃縮室と、上記被処理水中の対象イオンが上記濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室とを備えている。また、電気透析装置は、上記バッファ室に純水を供給する経路と、上記バッファ室から出た流出水の少なくとも一部を上記濃縮室に供給する経路とを有している。
【0064】
上記電気透析装置は、上記バッファ室から出た流出水の少なくとも一部を上記被処理水または上記処理水に混合する経路をさらに備えていてもよい。
【0065】
本発明の第14の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記被処理水中の第1の対象イオンが上記第1の濃縮室から直接上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室とを備えている。また、電気透析装置は、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室を備えている。さらに、電気透析装置は、上記陽極室と上記バッファ室との間に設けられた第1のカチオン交換膜と、上記陰極室と上記第2の濃縮室との間に設けられた第1のアニオン交換膜と、上記バッファ室と上記第1の濃縮室との間に設けられた第2のカチオン交換膜と、上記第1の濃縮室と上記脱塩室との間に設けられた第2のアニオン交換膜と、上記脱塩室と上記第2の濃縮室との間に設けられた第3のカチオン交換膜とを有している。
【0066】
本発明の第15の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記被処理水中の第1の対象イオンが上記第1の濃縮室から上記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室とを備えている。また、電気透析装置は、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、上記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを上記第2の濃縮室に供給するイオン供給室を備えている。さらに、電気透析装置は、上記陽極室と上記バッファ室との間に設けられた第1のカチオン交換膜と、上記陰極室と上記イオン供給室との間に設けられた第1のアニオン交換膜と、上記バッファ室と上記第1の濃縮室との間に設けられた第2のカチオン交換膜と、上記第1の濃縮室と上記脱塩室との間に設けられた第2のアニオン交換膜と、上記脱塩室と上記第2の濃縮室との間に設けられた第3のカチオン交換膜と、上記第2の濃縮室と上記イオン供給室との間に設けられた第3のアニオン交換膜とを有している。
【0067】
本発明の第16の態様によれば、陽極を有する陽極室と、陰極を有する陰極室とを有する電気透析装置が提供される。この電気透析装置は、複数の室からなる複数の室構造と、電極を有する少なくとも1つの複極室と、上記陽極室と上記室構造との間に設けられた第1のカチオン交換膜と、上記陰極室と上記室構造との間に設けられた第1のアニオン交換膜と、上記複極室の上記陽極側に設けられた第2のアニオン交換膜と、上記複極室の上記陰極側に設けられた第2のカチオン交換膜とを備えている。上記複極室は、上記複数の室構造の間に配置され、イオン交換体が充填されている。上記室構造は、供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して上記第1の対象イオンおよび上記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、上記被処理水中の第1の対象イオンが上記第1の濃縮室から上記陽極室または上記複極室に直接流入しないように遮断するバッファ室とを備えている。また、室構造は、上記脱塩室から移動した上記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、上記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを上記第2の濃縮室に供給するイオン供給室とを備えている。また、電気透析装置は上記陽極室および上記複極室に純水を供給する経路を備えている。さらに、室構造は、上記バッファ室と上記第1の濃縮室との間に設けられた第3のカチオン交換膜と、上記第1の濃縮室と上記脱塩室との間に設けられた第3のアニオン交換膜と、上記脱塩室と上記第2の濃縮室との間に設けられた第4のカチオン交換膜と、上記第2の濃縮室と上記イオン供給室との間に設けられた第4のアニオン交換膜とを有している。
【0068】
上記被処理水はフッ素を含有する排水であることが好ましい。また、上記陽極室または上記陰極室から出た流出水のフッ素濃度が1mg−F/L以下となるように、上記陽極室または上記陰極室に供給する純水の水量を調整することが好ましい。
【0069】
上記陽極室および上記陰極室にはイオン交換体が充填されていることが好ましい。また、それぞれの室には、上記カチオン交換膜に接するカチオン交換繊維材料または上記アニオン交換膜に接するアニオン交換繊維材料が充填されていることが好ましい。
【0070】
本発明の第17の態様によれば、少なくともアンモニウムイオンとフッ素を含有する排水を電気透析装置により処理する排水処理方法が提供される。これにより、上記排水からアンモニウムイオンおよびフッ素を除去してアンモニウムイオンおよびフッ素の濃度が低められた処理水を生成するとともに、フッ素の濃度を高めた第1の濃縮水とアンモニウムイオンの濃度を高めた第2の濃縮水とを生成する。
【0071】
本発明の第18の態様によれば、少なくとも金属水酸化物スラッジを形成する金属イオンとフッ素を含有する排水を電気透析装置により処理する排水処理方法が提供される。これにより、上記排水から上記金属イオンおよびフッ素を除去して上記金属イオンおよびフッ素の濃度が低められた処理水を生成するとともに、フッ素の濃度を高めた第1の濃縮水と上記金属イオンの濃度を高めた第2の濃縮水とを生成する。
【0072】
ここで、少なくとも過酸化水素とフッ素を含む排水を過酸化水素分解処理し、上記過酸化水素分解処理後の排水を上記電気透析装置に供給してもよい。また、上記排水のフッ素濃度は1mg/Lを超え10,000mg/L以下であることが好ましい。さらに、上記処理水のフッ素濃度は1mg/L未満であることが好ましい。また、上記第1の濃縮水の少なくとも一部をフッ素再資源化装置に供給して、上記排水中のフッ素をフッ化カルシウム(CaF)として回収することもできる。
【0073】
なお、電気透析装置の導入目的によっては、処理水のフッ素濃度を1mg/L以上のものとしてもよい。処理水を再利用しないで外部に放流する場合には、放流基準の8mg/L以下にすればよい。そのために、処理水のフッ素濃度を5mg/L程度に維持することは電気透析槽の運転電流を調整することにより可能であり、フッ素濃度を1mg/L未満に維持して運転することよりも省エネルギーな運転方法となる。
【0074】
また、電気透析装置の別の導入目的によっては、フッ素濃縮水をフッ素再資源化装置に供給せず、従来処理方式の凝集沈殿設備に供給してもよい。この場合でも被処理水であるフッ素含有排水をそのままで凝集沈澱処理するよりも、凝集沈澱処理に必要な薬品の使用量が減少し、したがって、発生するスラッジの量が減少するというメリットが生じる。また、濃縮されることによって処理対象の廃水の量が減少するため、廃水処理設備の規模が小さくてすむというメリットも生じる。例えば、10mg/Lのフッ素含有排水を1000mg/Lに濃縮することにより、排水量が100分の1になり、排水量に応じて注入する凝集沈殿に必要な凝集剤の必要量が約100分の1となり、結果として発生するスラッジの量を著しく低減できる。
【0075】
また、アンモニウムイオンを含むフッ素含有排水から、アンモニウムイオンとフッ素イオンをともに同一の液体中に濃縮したフッ素濃縮水を得てもよい。一般にフッ素の再資源化を行うときは、フッ素濃縮水中にアンモニウムイオンを含んでいると、フッ素再資源化のための反応が阻害されて反応効率が低下するが、フッ素濃縮水を凝集沈殿処理する時にはアンモニウムイオンが存在しても反応効率には影響しないためである。
【0076】
本発明の第19の態様によれば、上述した電気透析装置と、上記電気透析装置から得られるフッ素濃縮水をフッ化カルシウムとして回収するフッ素再資源化装置とを備えたフッ素処理システムが提供される。
【0077】
本発明の第20の態様によれば、上述した電気透析装置と、上記電気透析装置で得られたフッ素濃縮水の少なくとも一部を含む水を凝集沈澱処理する凝集沈澱装置とを備えたフッ素処理システムが提供される。
【0078】
本発明の第21の態様によれば、上述した電気透析装置と、上記電気透析装置から得られる処理水を原水として純水を製造する純水製造装置とを備えた水リサイクルシステムが提供される。
【0079】
本発明の第22の態様によれば、上述した電気透析装置と、除害装置と、上記除害装置の排水を上記電気透析装置に供給する経路と、上記電気透析装置で得られる処理水の一部を上記除害装置に供給する経路とを備えた水リサイクルシステムが提供される。
【0080】
本発明の第23の態様によれば、上述した電気透析装置と、少なくともフッ素を含有する排水の固液分離を行う固液分離手段と、上記固液分離手段により固液分離がなされた排水を上記電気透析装置に供給する経路とを備えたフッ素処理システムが提供される。
【0081】
本発明の第24の態様によれば、上述した電気透析装置と、少なくともフッ素を含有する排水の有機物分離を行う有機物分離手段と、上記有機物分離手段により有機物分離がなされた排水を上記電気透析装置に供給する経路とを備えたフッ素処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0082】
本発明によれば、電極腐食を伴うことなく、安定してフッ素含有排水を電気透析することができる。また、フッ素含有排水を電気透析した後の処理水のフッ素濃度が1mg/L未満と低く、処理水を再利用することができる。さらに、アンモニウムイオンを含むフッ素含有排水を電気透析してアンモニウムイオンを分離したフッ素濃縮水を得ることができる。また、金属水酸化物スラッジを形成する金属イオンを含むフッ素含有排水を電気透析する場合に、金属水酸化物スラッジを形成することなく、金属イオンを分離したフッ素濃縮水を得ることができる。さらに、フッ素含有排水を電気透析したフッ素濃縮水をフッ素再資源化装置に供給することにより、フッ化カルシウム(CaF)として回収することができる。また、アンモニウムイオンを含むフッ素含有排水からもアンモニウムイオンを分離してフッ素再資源化を容易にしたフッ酸濃縮水をフッ素再資源化装置に供給することにより、フッ化カルシウム(CaF)として回収することができる。
【0083】
また、水溶液中のフッ素をフッ化カルシウム(CaF)として回収するフッ素再資源化装置の処理水である排水または該排水を前処理した排水などを処理対象として、本発明に係る電気透析装置による処理を行う場合においては、フッ素再資源化装置のフッ素再資源化率つまりはフッ化カルシウム結晶としての回収率を向上させることができる。これは、フッ素再資源化装置では、受け入れたフッ素のうち約10〜20%程度が希薄フッ酸排水として排出されているが、これに含まれるフッ素を本発明に係る電気透析装置で濃縮することにより、フッ素再資源化装置の原水として再び利用できるようになるからである。フッ素再資源化装置は、希薄フッ酸排水を対象とした場合には、再資源化つまりはフッ化カルシウム結晶としての回収が困難であり、濃厚フッ酸排水を対象とした場合に、十分な性能を発揮する性質を有しているからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
以下、本発明に係る電気透析装置の実施形態について図1から図14を参照して詳細に説明する。なお、図1から図14において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0085】
図1は、本発明の第1の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、この電気透析装置は、陽極室10と、バッファ室20、濃縮室30、脱塩室40、濃縮室21、陰極室50を有する電気透析槽1を備えている。また、電気透析装置は、ポンプ70を介して純水を陽極室10および陰極室50に供給する極液タンク71と、ポンプ72を介してバッファ水をバッファ室20および濃縮室21に供給するバッファ水タンク73と、ポンプ74を介して濃縮水を濃縮室30に供給する濃縮水タンク75とを備えている。
【0086】
陽極室10の内部には陽極2が配置され、陰極室50の内部には陰極3が配置されている。脱塩室40は、フッ素を含有する原水(被処理水)からフッ素イオンを除去してフッ素濃度が低められた処理水を生成する。また、バッファ室20は、原水中のフッ素イオン(対象イオン)が濃縮室30から直接陽極室10に流入しないように遮断する。さらに、濃縮室30は、脱塩室40から移動した原水中のフッ素イオンを濃縮してフッ素イオン濃度が高められた濃縮水を生成する。
【0087】
図2は、図1の電気透析槽1を示す模式図である。図2に示すように、陽極室10とバッファ室20とは、イオン交換膜の一種であるカチオン交換膜CM1で仕切られ、バッファ室20と濃縮室30とは、イオン交換膜の一種であるカチオン交換膜CM2で仕切られている。また、濃縮室30と脱塩室40とは、イオン交換膜の一種であるアニオン交換膜AM1で仕切られ、濃縮室21と脱塩室40とは、イオン交換膜の一種であるカチオン交換膜CM3で仕切られている。また、陰極室50と濃縮室21とは、イオン交換膜の一種であるアニオン交換膜AM2で仕切られている。なお、図2において、イオン交換膜の両側に位置するパッキンの図示は省略してある。
【0088】
陽極室10には、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF1が充填されている。バッファ室20には、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF2、イオン交換体の一種であるカチオン交換スペーサCS1、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF3が充填されている。イオン交換不織布は細くて表面積が大きい繊維で密に構成された不織布状のイオン交換体であるので、イオンの捕捉能力および伝導能力が高いが、電気透析槽に充填した場合に圧損が大きくなるという問題がある。一方、イオン交換スペーサは従来の電気透析槽に通常用いられている網状のスペーサの表面にイオン交換機能を導入したものであり、水の分散性に優れ、圧損が低いがイオンの捕捉能力は低いという問題がある。本実施形態における電気透析槽1では、イオン交換不織布とイオン交換スペーサを組み合わせて充填することで、イオンの捕捉能力と伝導能力を高く維持したまま、圧損を低くすることができる。
【0089】
濃縮室30には、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF4、イオン交換体の一種であるカチオン交換スペーサCS2、イオン交換体の一種であるアニオン交換不織布AF1が充填されている。脱塩室40には、イオン交換体の一種であるアニオン交換不織布AF2、イオン交換体の一種であるアニオン交換スペーサAS1、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF5が充填されている。
【0090】
濃縮室21には、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF6、イオン交換体の一種であるカチオン交換スペーサCS3、イオン交換体の一種であるアニオン交換不織布AF3が充填されている。陰極室50には、イオン交換体の一種であるアニオン交換不織布AF4が充填されている。
【0091】
極液タンク71からは極液としての純水が陽極室10および陰極室50に供給されるようになっている。陽極室10から出た流出水は、フッ素イオン濃度が純水より高いことから、本実施形態では、極液タンク71に循環せずに、全量をバッファ水タンク73に供給するようになっている。陰極室50から出た流出水は、通常フッ素イオン濃度が極めて希薄であり、純水とほぼ同じ濃度レベルであることが実験的に確認されていることから、本実施形態では、極液を補給するために極液タンク71に循環するようになっている。なお、陽極室10から出た流出水についても、一部または全量を極液タンク71に循環する構成としてもよい。また、陽極室10から出た流出水を濃縮水タンク75に供給する構成としてもよい。
【0092】
また、バッファ水タンク73からはバッファ水がバッファ室20および濃縮室21に供給されるようになっている。バッファ室20および濃縮室21から出た流出水は、バッファ水タンク73と濃縮水タンク75とに供給されるようになっている。なお、本実施形態では、バッファ室20および濃縮室21から出た流出水の一部を濃縮水タンク75に供給する構成としているが、該流出水の全量を濃縮水タンク75に供給する構成としてもよい。
【0093】
また、濃縮水タンク75からは濃縮水が濃縮室30に供給されるようになっている。濃縮室30から出た流出水は、濃縮水として取り出されるほか、一部は濃縮水タンク75に供給されるようになっている。
【0094】
脱塩室40には原水が供給されるようになっており、脱塩室40から出た流出水は処理水として取り出される。
【0095】
このような構成により、陽極室10において水の電気分解反応で生成した水素イオンは、カチオン交換体CF1,CM1,CF2,CS1,CF3,CM2,CF4,CS2上をイオン伝導し、バッファ室20を経由して濃縮室30まで到達することが可能となる。したがって、陽極室10およびバッファ室20にかかる電圧は、陽極液およびバッファ水のイオン濃度に依存せず、低く維持することが可能となる。
【0096】
陰イオンを含む水を電気透析処理する場合は、原水中の陰イオンが濃縮水中に濃縮される。通常、濃縮された陰イオンが陽極2側のカチオン交換膜CM2,CM1を透過して例えばバッファ室20や陽極室10に漏洩することはほとんどないが、濃縮対象がフッ素イオンである場合は、濃縮水中のフッ素イオンの一部が濃縮室30とバッファ室20を隔てているカチオン交換膜CM2を透過して、濃縮室30よりも陽極2側に位置するバッファ室20ひいては陽極室10に達する現象が起きる場合がある。
【0097】
本実施形態においては、上述した構成により、陽極室10には常に純水が補給されることとなり、バッファ室20から陽極室10に漏洩するフッ素イオンを陽極室10の外に排出して陽極室10のフッ素濃度を極めて低い値に維持することができる。また、フッ素による電極腐食を抑制することができる。
【0098】
また、バッファ室20中のフッ素濃度についても、バッファ水タンク73のバッファ水に陽極室10からの流出水が補給されることより、濃縮室30からバッファ室20に漏洩してきたフッ素イオンをバッファ室20の外部に排出することができる。これにより、陽極室10よりは濃度がやや高まるものの、バッファ室20のフッ素濃度を低い値に維持することができる。また、バッファ室20および濃縮室21からの流出水により濃縮水を補給しているので、濃縮水タンク75に追加する補給純水の量を低減することができる。
【0099】
また、極液の補給水として純水を用いているので、補給水中のフッ素濃度が運転条件により変動したり高まったりすることはない。このため、運転条件に関わらず、常に陽極室10のフッ素濃度を極めて低い値に維持することができる。また、陽極2の腐食防止をより確実にすることができる。ここで、電気透析装置の処理水の水質が純水並みである場合など、処理水を純水の代わりに用いることができる場合は、純水の代わりに処理水を用いてもよい。
【0100】
また、陽極室10からの流出水によりバッファ水を補給しているので、陽極室10から装置の外部に排出される水の量およびバッファ水に追加する補給純水の量を少なくすることができる。特に、陽極室10からの流出水の全量をバッファ水タンク73に供給すれば、陽極室10から装置の外部に排出される水の量およびバッファ水に追加する補給純水の量をゼロにすることができる。
【0101】
また、バッファ室20および濃縮室21からの流出水により濃縮水を補給しているので、濃縮水に追加する補給純水の量およびバッファ室20ならびに濃縮室21から装置の外部に排出される水の量を少なくすることができる。特に、濃縮水の全量をバッファ室20および濃縮室21からの流出水でまかなう場合は、濃縮水に追加する補給純水の量およびバッファ室20ならびに濃縮室21から装置の外部に排出される水の量をゼロにすることができる。
【0102】
電気透析槽1から排出される排水の種類としては、陽極室10から装置の外部に排出される水の量およびバッファ室20ならびに濃縮室21から装置の外部に排出される水の量がゼロの場合には、処理水と濃縮水の2系統のみとなり、配管系統が複雑となることがない。陽極室10、バッファ室20、および濃縮室21における平衡フッ素濃度は、陽極室10および陰極室50に供給する極液の量およびバッファ室20ならびに濃縮室21に供給するバッファ水の量を調整することにより任意に調整することができる。なお、図1に示す実施形態において、極液および/またはバッファ水の少なくとも一部を原水または処理水と混合してもよい。
【0103】
図3は、本発明の第2の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。本実施形態における電気透析装置は、第1の実施形態における電気透析装置と基本的に同様の構成を有しているが、以下の点で第1の実施形態における電気透析装置と異なっている。
【0104】
バッファ水タンク73からはバッファ水がバッファ室20にのみ供給されるようになっており、濃縮室21には供給されないようになっている。その代わりに、陰極室50から出た流出水が濃縮室21に供給されるようになっている。また、濃縮室21から出た流出水は、極液を補給するために極液タンク71に供給されるようになっている。
【0105】
原水中に存在するカチオンは陰極室50に隣接する濃縮室21に濃縮されるが、濃縮されたカチオンが電気透析装置の処理性能に悪影響を与えないと判断される場合には、図3に示すような構成を用いることができる。なお、濃縮室21から出た流出水をバッファ水タンク73に供給してもよいことは言うまでもない。このような構成によっても、本発明の効果を奏することができる。
【0106】
図4は、本発明の第3の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。本実施形態における電気透析装置は、第1の実施形態における電気透析装置と基本的に同様の構成を有しているが、以下の点で第1の実施形態における電気透析装置と異なっている。
【0107】
バッファ水タンク73からはバッファ水がバッファ室20にのみ供給されるようになっており、濃縮室21には供給されないようになっている。その代わりに、極液タンク71からは極液としての純水が陽極室10と濃縮室21に供給されるようになっている。また、濃縮室21から出た流出水は、濃縮室21に隣接する陰極室50に供給されるようになっている。このような構成によっても、本発明の効果を奏することができる。
【0108】
図5は、本発明の第4の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図、図6は図5の電気透析槽101aを示す模式図である。本実施形態における電気透析装置は、第1の実施形態における電気透析装置と基本的に同様の構成を有しているが、陰極室50に隣接し、バッファ水(図1)、極液(図3)または純水(図4)が供給されていた濃縮室21を、図5では濃縮水が供給される濃縮室31として用いている点で第1の実施形態における電気透析装置と異なっている。このような構成によっても、本発明の効果を奏することができる。
【0109】
図7は本発明の第5の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図、図8は図7の電気透析槽101bを示す模式図である。本実施形態における電気透析装置は、第1の実施形態における電気透析装置と基本的に同様の構成を有しているが、図1における脱塩室40と濃縮室30との間に濃縮室30と脱塩室40とをさらに追加した点で第1の実施形態における電気透析装置と異なっている。このような構成によっても、本発明の効果を奏することができる。なお、図5の場合と同様に、陰極室50に隣接した濃縮室21を濃縮室31として用いて、この濃縮室31に濃縮水を供給するようにしてもよい。
【0110】
図9は、本発明の第6の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。この電気透析装置は、図1に示す電気透析装置と同様に、陽極の腐食を防止する効果が得られるとともに、金属イオンを含むフッ酸排水を対象とした場合においても、フッ酸と金属イオンを個別に濃縮することができる。しかも、金属イオンは、析出する水酸化物としてではなく、溶解性の塩化物として分離濃縮するため、電気透析槽内における析出などのトラブルを回避することができる。
【0111】
図9に示すように、電気透析装置は、陽極室210、バッファ室220、酸濃縮室230、脱塩室240、アルカリ濃縮室231、酸供給室260、複極室261、バッファ室220、酸濃縮室(第1の濃縮室)230、脱塩室240、アルカリ濃縮室(第2の濃縮室)231、酸供給室(イオン供給室)260、陰極室250を有する電気透析槽201を備えている。このように、本実施形態においては、複極室261を挟んで両側に、バッファ室220、酸濃縮室230、脱塩室240、アルカリ濃縮室231、酸供給室260がそれぞれ設けられている。
【0112】
また、図9に示すように、電気透析装置は、ポンプ270を介して純水を陽極室210および陰極室250に供給する極液タンク271と、ポンプ272を介してバッファ水をバッファ室220に供給するバッファ水タンク273と、ポンプ274を介して酸濃縮水を酸濃縮室230に供給する酸濃縮水タンク275と、ポンプ276を介してアルカリ濃縮水をアルカリ濃縮室231に供給するアルカリ濃縮水タンク277と、ポンプ278を介して酸供給水を酸供給室260に供給する酸供給水タンク279とを備えている。
【0113】
また、電気透析装置は、ポンプ280を介してHClなどの酸原液を酸供給水タンク279に供給する酸原液タンク281と、酸供給水タンク279のpHを測定するpHモニタ282とを備えている。さらに、電気透析装置は、ポンプ283を介して原水を脱塩室240に供給する原水タンク284と、除害排水(フッ素を含有する被処理水)を活性炭285およびカートリッジフィルタ286を介して原水タンク284に供給するポンプ287とを備えている。
【0114】
陽極室210の内部には陽極202が配置され、陰極室250の内部には陰極203が配置されている。また、複極室261の内部には電極204が配置されている。脱塩室240は、原水(被処理水)からフッ素イオン(第1の対象イオン)およびカルシウムイオン(第2の対象イオン)を除去してフッ素濃度およびカルシウムイオン濃度が低められた処理水を生成する。また、バッファ室220は、原水中のフッ素イオンが酸濃縮室230から直接陽極室210に流入しないように遮断する。さらに、酸濃縮室230は、脱塩室240から移動した原水中のフッ素イオンを濃縮してフッ素イオン濃度が高められた(第1の)濃縮水を生成する。また、アルカリ濃縮室231は、脱塩室240から移動した原水中のカルシウムイオンを濃縮してカルシウムイオン濃度が高められた(第2の)濃縮水を生成する。酸供給室260は、排水中のカルシウムイオンとは反対の極性を有するイオンをアルカリ濃縮室231に供給する。
【0115】
図10は、図9の電気透析槽201を示す模式図である。図10に示すように、陽極室210とバッファ室220とは、イオン交換膜の一種であるカチオン交換膜CM11で仕切られ、バッファ室220と酸濃縮室230とは、イオン交換膜の一種であるカチオン交換膜CM12で仕切られている。酸濃縮室230と脱塩室240とは、イオン交換膜の一種であるアニオン交換膜AM11で仕切られ、脱塩室240とアルカリ濃縮室231とは、イオン交換膜の一種であるカチオン交換膜CM13で仕切られている。アルカリ濃縮室231と酸供給室260との間は、イオン交換膜の一種であるアニオン交換膜AM12で仕切られ、酸供給室260と複極室261との間は、イオン交換膜の一種であるアニオン交換膜AM13で仕切られている。なお、図10において、イオン交換膜の両側に位置するパッキンの図示は省略してある。
【0116】
陽極室210には、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF11が充填されている。バッファ室220には、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF12、イオン交換体の一種であるカチオン交換スペーサCS11、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF13が充填されている。
【0117】
酸濃縮室230には、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF14、イオン交換体の一種であるカチオン交換スペーサCS12、イオン交換体の一種であるアニオン交換不織布AF11が充填されている。脱塩室240には、イオン交換体の一種であるアニオン交換不織布AF12、イオン交換体の一種であるアニオン交換スペーサAS11、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF15が充填されている。
【0118】
アルカリ濃縮室231には、イオン交換体の一種であるカチオン交換不織布CF16、イオン交換体の一種であるカチオン交換スペーサCS13、イオン交換体の一種であるアニオン交換不織布AF13が充填されている。酸供給室260には、イオン交換体の一種であるアニオン交換不織布AF14、イオン交換体の一種であるアニオン交換スペーサAS12、イオン交換体の一種であるアニオン交換不織布AF15が充填されている。
【0119】
複極室261には、イオン交換体の一種であるアニオン交換不織布AF16およびカチオン交換不織布CF11が充填されている。複極室261の電極204から陰極室250の陰極203までの構造は、上述したカチオン交換不織布CF11からアニオン交換不織布AF16までの構造と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0120】
極液タンク271からは極液としての純水が陽極室210、複極室261、および陰極室250に供給されるようになっている。陽極室210、複極室261、および陰極室250から出た流出水は、極液を補給するために極液タンク271に循環するようになっている。
【0121】
また、バッファ水タンク273からはバッファ水がバッファ室220に供給されるようになっている。バッファ室220から出た流出水は、バッファ水タンク273と原水タンク284とに供給されるようになっている。なお、陽極室210、複極室261、および陰極室250から出た流出水の一部は、このバッファ室220から出た流出水と混合される。
【0122】
また、酸濃縮水タンク275からは酸濃縮水が酸濃縮室230に供給されるようになっている。酸濃縮室230から出た流出水は、濃縮水として取り出されるほか、一部は酸濃縮水タンク275に供給されるようになっている。また、アルカリ濃縮水タンク277からはアルカリ濃縮水がアルカリ濃縮室231に供給されるようになっている。アルカリ濃縮室231から出た流出水は、アルカリ濃縮水タンク277に供給されるようになっている。
【0123】
原水タンク284からは原水が脱塩室240に供給されるようになっている。脱塩室240から出た流出水は処理水として取り出される。
【0124】
複極室261の陰極室250側に隣接するバッファ室220から複極室261にフッ素が流入することが懸念されるため、本実施形態では、複極室261には、陽極室210と同様に純水が供給される。また、複極室261を出た流出水についても、陽極室210を出た流出水と同様にバッファ水タンク273の補給水として用いられる。
【0125】
このような構成により、酸と金属イオンとを個別に濃縮することが可能となる。また、金属イオンは、酸供給室260から電気泳動により供給される鉱酸由来の陰イオンと溶解性の塩を形成することにより、金属水酸化物などが析出することが防止される。例えば、鉱酸として塩酸を用いる場合は、原水中に含まれるカルシウムイオンを溶解度が高い塩化カルシウムとして濃縮させることが可能となる。
【0126】
図11は本発明の第7の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図、図12は図11の電気透析槽301を示す模式図である。この電気透析槽301は、上述した第6の実施形態の電気透析槽におけるアルカリ濃縮室231の陰極203側に設けられた酸供給室260を省略したものである。このような構成は、アンモニウムイオンなどアルカリ性でも析出しない陽イオン(カチオン)を濃縮する場合に用いることができる。
【0127】
図13は、本発明の第8の実施形態における電気透析装置の電気透析槽401を示す模式図である。図13に示すように、この電気透析槽401は、陽極室210、バッファ室220、酸濃縮室230、脱塩室240、アルカリ濃縮室231、酸供給室260と、陰極室250とを備えており、上述した第6の実施形態の電気透析槽201において、複極室261をなくしてそれぞれの室を1つだけにしたものである。このような構成によっても、本発明の効果を奏することができる。
【0128】
上述した各実施形態において、電気透析装置は、定電流運転または定電圧運転を行うことが好ましく、電流密度は10A/dm以下、特に3A/dm以下にすることが好ましい。脱塩室および濃縮室の厚みは1〜10mm、好ましくは2〜4mmとする。イオン交換体として、不織布状またはスペーサ状などのシート状のものを用いる場合、各室の充填枚数および種類は任意に設定することができる。好ましくは、陽極室のフッ素濃度が1mg/L未満、バッファ室のフッ素濃度が10mg/L未満となるように各室に液を供給する。
【0129】
電極の材料としては、白金、タンタル、ニオブ、ダイヤモンド、SUSなどを用いることができる。また、チタン、ニッケル、モネル、ハステロイ、インコネルなどの基材に、白金、金、酸化イリジウムなどをめっきしたものを電極として用いることができる。
【0130】
電極の形状は、平板状でもよく、あるいは通水性および通ガス性を有するラス網状などでもよい。濃縮水中のイオン濃度には特に制限はないが、カチオンまたはアニオンの濃度が100〜100,000mg/Lの範囲内にあることが好ましい。原水の濃度には特に制限はないが、カチオンまたはアニオンの濃度が5〜500mg/Lの範囲内にあることが好ましい。この場合に得られる処理水の濃度は、電流値などの運転条件を設定することにより所望の値に調整することができる。例えば、カチオンまたはアニオンの濃度が0.01〜10mg/Lの範囲内にある処理水が得られる。
【0131】
陽極室、陰極室、複極室に供給する純水としては特に制約がなく、当業者が通常用いている純水製造方法により製造される純水がすべて使用可能である。例えばRO(逆浸透膜)、イオン交換法、蒸留法、電気式脱塩法等の公知の技術またはその組み合わせにより製造した純水またはその純水の純度をさらに高めた超純水を使用することができる。なお、陽極室へ供給する純水の量は、陽極室中のフッ素濃度が1mg/L未満となるように設定するのが最も好ましい。
【0132】
上述した電気透析装置の陽極室、陰極室、複極室、バッファ室、脱塩室、濃縮室の中に充填するイオン交換体としては、高分子繊維基材にイオン交換基をグラフト重合法によって導入したものを用いることが好ましい。高分子繊維よりなるグラフト化基材は、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの一種の単繊維であってもよく、また、軸芯と鞘部とが異なる高分子によって構成される複合繊維であってもよい。用いることのできる複合繊維の例としては、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンを鞘成分とし、鞘成分として用いたもの以外の高分子、例えばポリプロピレンを芯成分とした芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。かかる複合繊維材料に、イオン交換基を、放射線グラフト重合法を利用して導入したものが、イオン交換能力に優れ、均一な厚みに製造できるので、上述した目的で用いられるイオン交換繊維材料として好ましい。イオン交換繊維材料の形態としては、織布や不織布などを挙げることができる。
【0133】
また、斜交網等のスペーサ部材の形態のイオン交換体としては、ポリオレフィン系高分子製樹脂、例えば、電気透析槽において広く使用されているポリエチレン製の斜交網(ネット)を基材として、これに、放射線グラフト重合法を用いてイオン交換機能を付与したものが、イオン交換能力に優れ、被処理水の分散性に優れているので好ましい。
【0134】
なお、放射線グラフト重合法とは、高分子基材に放射線を照射してラジカルを形成させ、これにモノマーを反応させることによってモノマーを基材中に導入するという技法である。放射線グラフト重合法に用いることができる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等を挙げることができるが、ガンマ線や電子線を用いることが好ましい。放射線グラフト重合法には、グラフト基材に予め放射線を照射した後、グラフトモノマーと接触させて反応させる前照射グラフト重合法と、基材とモノマーの共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあるが、いずれの方法も用いることができる。
【0135】
また、モノマーと基材との接触方法により、モノマー溶液に基材を浸漬させたまま重合を行う液相グラフト重合法、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後モノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸気相グラフト重合法などを挙げることができるが、いずれの方法も用いることができる。
【0136】
不織布などの繊維基材やスペーサ基材に導入するイオン交換基としては、特に限定されることなく種々のカチオン交換基またはアニオン交換基等を用いることができる。例えば、カチオン交換基としては、スルホン基などの強酸性カチオン交換基、リン酸基などの中酸性カチオン交換基、カルボキシル基などの弱酸性カチオン交換基、アニオン交換基としては、第1級〜第3級アミノ基などの弱塩基性アニオン交換基、第4アンモニウム基などの強塩基性アニオン交換基を用いることができる。あるいは、上記カチオン交換基およびアニオン交換基の両方を併有するイオン交換体を用いることもできる。
【0137】
また、官能基として、イミノジ酢酸およびそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリンおよびプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有するイオン交換体を用いてもよい。
【0138】
上述した目的で用いることのできるイオン交換基を有するモノマーとしては、アクリル酸(AAc)、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0139】
例えば、スチレンスルホン酸ナトリウムをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強酸性カチオン交換基であるスルホン基を導入することができ、また、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を導入することができる。
【0140】
また、イオン交換基に転換可能な基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)などが挙げられる。例えば、メタクリル酸グリシジルを放射線グラフト重合によって基材に導入し、次に亜硫酸ナトリウムなどのスルホン化剤を反応させることによって強酸性カチオン交換基であるスルホン基を基材に導入したり、またはクロロメチルスチレンをグラフト重合した後に、基材をトリメチルアミン水溶液に浸漬して4級アンモニウム化を行うことによって、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を基材に導入することができる。
【0141】
また、基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、スルフィドを反応させてスルホニウム塩とした後、イミノジ酢酸ナトリウムを反応させることによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。あるいは、まず基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、クロロ基をヨウ素で置換し、次にイミノジ酢酸ジエチルエステルを反応させてヨウ素をイミノジ酢酸ジエチルエステル基で置換し、次に水酸化ナトリウムを反応させてエステル基をナトリウム塩に変換することによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。
【0142】
上述の各種の形態のイオン交換体の中では、不織布または織布などの形態のイオン交換繊維材料が特に好ましい。織布や不織布などの繊維材料は、樹脂ビーズや斜交網などの形態の材料と比較して表面積が極めて大きいのでイオン交換基の導入量が大きく、また、樹脂ビーズのようにビーズ内部のミクロポアまたはマクロポア内にイオン交換基が存在するということはなく、すべてのイオン交換基が繊維の表面上に配置されるので、処理水中の金属イオンが容易にイオン交換基の近傍に拡散され、イオン交換によって吸着される。従って、イオン交換繊維材料を用いると、金属イオンの除去・回収効率をより向上させることができる。
【0143】
なお、上記のイオン交換繊維材料など以外でも、公知のイオン交換体樹脂ビーズを用いることもできる。例えば、ポリスチレンをジビニルベンゼンで架橋したビーズなどを基材樹脂として用い、これを硫酸やクロロスルホン酸のようなスルホン化剤で処理してスルホン化を行って基材にスルホン基を導入することにより、上述した各実施形態で使用可能な強酸性カチオン交換樹脂ビーズを得ることができる。
【0144】
このような製造方法は周知であり、またこのような手法によって製造されたカチオン交換樹脂ビーズとしては、種々の商品名で市販されているものを挙げることができる。また、官能基としてイミノジ酢酸およびそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリンおよびプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有する樹脂ビーズを用いてもよい。
【0145】
上述した実施形態における電気透析装置により、少なくともアンモニウムイオンとフッ素を含有する排水を処理すれば、排水からアンモニウムイオンおよびフッ素を除去してアンモニウムイオンおよびフッ素の濃度が低められた処理水を生成するとともに、フッ素の濃度を高めた第1の濃縮水とアンモニウムイオンの濃度を高めた第2の濃縮水とを生成することができる。あるいは、上述した各実施形態における電気透析装置により、少なくとも金属水酸化物スラッジを形成する金属イオンとフッ素を含有する排水を処理すれば、排水から前記金属イオンおよびフッ素を除去して金属イオンおよびフッ素の濃度が低められた処理水を生成するとともに、フッ素の濃度を高めた第1の濃縮水と金属イオンの濃度を高めた第2の濃縮水とを生成することができる。
【0146】
過酸化水素とフッ素を含む排水の場合には、排水を過酸化水素分解処理した後、電気透析装置に供給してもよい。また、排水のフッ素濃度は1mg/Lを超え10,000mg/L以下であることが好ましく、処理水のフッ素濃度は1mg/L未満であることが好ましい。
【0147】
また、上述した電気透析装置は、フッ素再資源化装置と組み合わせてフッ素処理システムを構成することができる。例えば、図14に示すように、フッ素含有排水を上述した電気透析装置で処理し、電気透析装置で得られたフッ素濃縮水をフッ素再資源化装置500に供給して、排水中のフッ素をフッ化カルシウム(CaF)の結晶として回収することができる。
【0148】
上述した電気透析装置の運転方法または制御方法としては、以下のような方法がある。まず、本発明に係る電気透析装置より得られる処理水、フッ素濃縮水、または原水のフッ素濃度を測定するフッ素濃度測定手段(例えば、導電率を測定する導電率計やイオン電極法によりフッ素濃度を測定するフッ素濃度計)を設けることで、処理性能をモニタリングすることが可能となる。また、原水ラインおよび/または処理水ラインに流量計を設けることで、フッ素負荷のモニタリングが可能となる。
【0149】
また、処理水のフッ素濃度を制御するフッ素濃度制御手段を設けることが好ましく、このフッ素濃度制御手段としては、原水、処理水または濃縮水のフッ素濃度、フッ素負荷または処理性能のモニタリング値により電気透析装置への通電量を自動的に調整したり、流量調整バルブにより原水の流量を自動的に調整したりするものがよい。これにより、処理水のフッ素濃度の自動制御が可能となる。また、処理水のフッ素濃度が所定の値より高い場合にのみ、自動的にイオン交換樹脂層に通水する構成としてもよい。この場合には、処理水質の安定性をより高めることが可能となる。また、フッ素濃縮水の濃度が所定値未満に低下していることまたは処理水の濃度が所定値以上に高まっていることをフッ素濃度測定手段により検知してもよい。これにより、電気透析槽内部の破損、例えばイオン交換膜の破れなどをエラー信号として出力することが可能となる。
【0150】
また、フッ素濃縮水の二次的処理手段(例えば、フッ素再資源化装置(CaF晶析装置、フッ素を炭酸カルシウムと反応させてフッ素を回収するCaF置換装置)、凝集沈殿装置、減圧蒸留装置)の種類にかかわらず、フッ素濃縮水のフッ素濃度を安定した濃度として供給することで、これらの二次的処理を行う装置の性能を安定したものとすることができる。
【0151】
フッ素濃縮水のフッ素濃度を制御する手段としては、フッ素濃縮水が流れるラインに取り付けた導電率計やフッ素濃度計などのフッ素濃度測定手段の測定値に基づいて、フッ素濃縮水のラインや濃縮水タンクからのフッ素濃縮水引き抜き水量(二次的処理を行う装置へのフッ素濃縮水の送水量)またはフッ素濃縮水のラインや濃縮水タンクへの補給水量を調整するのがよい。また、電気透析装置における通電量や原水の流量を自動的に調整するものでもよい。
【0152】
ここで、フッ素濃縮水の二次的処理を行う装置の運転条件を適性とするためには、例えば、以下に示すような構成が考えられる。例えば、図15に示すように、本発明に係る電気透析装置をフッ素再資源化装置としてのCaF置換装置501と組み合わせて、排水中のフッ素をCaF結晶として回収するフッ素処理システムを構成することができる。上述した電気透析装置で得られたフッ素濃縮水のpH値またはα値(酸性度の値)の測定手段を設け、この値が適性となるように酸やアルカリを注入して調整するpH値またはα値調整手段502を設けるのがよい。これにより、CaF置換装置501で使用する炭酸カルシウム粒の溶解を防止することができる。また、得られるCaF結晶の純度が高まる。
【0153】
特に除害排水中には、フッ酸以外に塩酸、硫酸、硝酸などが混在している場合があり、フッ酸以外の酸は、炭酸カルシウムを溶解させる性質がある。本発明に係る電気透析装置によれば、これらの酸もフッ酸とともに濃縮する場合がある。したがって、例えば、除害装置排水(除害排水)のフッ素濃縮水を対象とした場合においても、上述したpH値またはα値調整手段502によりpHを高く、あるいは酸性度を低くすることにより炭酸カルシウムの溶解を防止することが可能となる。CaF置換装置501から排出される残液に含まれるフッ素は、凝集沈澱装置504で汚泥として分離除去するのがよい。
【0154】
本発明に係る電気透析装置は、処理水のフッ素濃度が排水基準値8mg−F/Lを下回るように運転条件を設定することが可能であるので、この処理水をさらに凝集沈殿する必要はない。したがって、大規模な凝集沈殿処理施設を必要とせず、放流または水の再利用が可能となる。例えば、図15に示すように、電気透析装置から排出された処理水を純水製造装置505の原水などに再利用することにより、施設の水使用量(水購入量)を減らすことが可能となる。
【0155】
また、例えば、図16に示すように、本発明に係る電気透析装置をフッ素再資源化装置としてのCaF晶析装置506と組み合わせて、排水中のフッ素をCaF結晶として回収するフッ素処理システムを構成することができる。この場合には、pH値またはα値調整手段502により、フッ素濃縮水を晶析に適したpHまたは酸性度に調整することができる。
【0156】
さらに、CaF晶析装置506で添加するカルシウム化合物(例えば塩化カルシウムや水酸化カルシウム)の添加量を調整するカルシウム化合物添加量調整手段507を設けて、フッ素濃縮水のフッ素濃度測定手段で得られる測定値に応じてカルシウム化合物の添加量が適性となるように調整することができる。これにより、フッ素濃縮水中のフッ素濃度の変動が生じた場合においても、これに適応したカルシウム化合物の添加量に調整することができ、得られるCaF結晶の純度および粒径を所望のものにすることが可能となる。CaF晶析装置506から排出される残液に含まれるフッ素は凝集沈澱装置504で汚泥として分離除去するのがよい。
【0157】
また、例えば、図17に示すように、本発明に係る電気透析装置を、フッ素濃縮水の少なくとも一部を含む水を凝集沈澱処理する凝集沈澱処理装置508と組み合わせて、フッ素濃縮水中のフッ素をCaF含有汚泥として分離除去することもできる。この場合には、フッ素含有排水のフッ素濃度が極めて低くて凝集沈澱処理に不適な場合であっても、フッ素の濃度を凝集沈澱処理に適した濃度まで高めることができ、また、フッ素含有排水の水量よりもフッ素濃縮水の水量の方が少ないので、フッ素含有排水をそのまま凝集沈殿処理する場合に比べて、凝集剤の添加量(例えば、1日あたりの使用量)を少なくすることができ、また、小さな規模の処理施設で固液分離することが可能となる。例えば、フッ素含有排水中のフッ素を10倍濃縮する場合は、凝集沈澱処理装置508の処理水量を10分の1にまで小さくすることが可能となる。
【0158】
フッ素含有排水が懸濁物質や粉体などの固体を含む場合は、これらの固体を予め分離することで、このような排水からもフッ素の分離濃縮を行うことが可能となる。このような排水の例としては除害排水がある。除害装置では、PFCガスの他にシリカ含有ガスも導入されるため、除害装置によるガス分解処理後にシリカ粉末が大量に発生し、これが排水に混入する。除害装置としては、燃焼式、加熱式など稼動時に排水を発生するものが挙げられる。
【0159】
このような除害装置を用いる場合には、例えば、図18に示すように、沈降分離槽550などの固液分離手段を介してフッ素含有排水を電気透析装置に導入するフッ素処理システムが好適である。図18では、排水に含まれる固体を沈降させて、汚泥層552として分離している。また、上澄水554を電気透析装置に導入している。この場合において、上澄水554には浮遊性の固体が微量に含まれている場合があるため、更に保安フィルターを介して電気透析装置に導入するのがよい。また、排水に有機物が含まれることが懸念される場合は、電気透析装置内のイオン交換膜の有機物による汚染を回避するために、さらに活性炭処理層を介して電気透析装置に導入するのがよい。
【0160】
固液分離手段としては、公知のあらゆる手段、例えば沈降分離槽550の他に、公知の膜(フィルター)分離手段や遠心分離手段などを用いることができる。排水に含まれる固形物量が大量の場合には、固液分離手段として沈降分離槽550を用いるのが好ましい。なお、図18では、汚泥552の後段への流出防止および水流の迂回を目的として、複数の仕切板556が設置されている。なお、除害装置内部にも、粗大粒子の固形物を分離するための手段、例えば固液分離槽やフィルターが設けられている場合があるが、前記固液分離手段は、この後段側に別に設けるのが望ましい。
【0161】
電気透析装置の処理水は、フッ素濃度が十分に低減されているため、除害装置558の供給水として循環させることができ、水使用量の削減をすることも可能となる。また、電気透析装置の処理水の一部を排水することで、系内への微量物質の蓄積防止も可能となる。
【0162】
フッ素含有排水が界面活性剤などの有機物を含む場合は、これらの有機物を予め分離することで、このような排水からもフッ素の分離濃縮を行うことが可能となる。このような排水の例としては、界面活性剤を含むフッ酸またはバッファードフッ酸(NHF)に由来する排水、および微量な有機物を含有する工業用水が給水される除害装置からの排水が挙げられる。
【0163】
このような場合においても、例えば、図19に示すように、活性炭吸着層560などの有機物分離手段を介してフッ素含有排水を電気透析装置に導入するフッ素処理システムが好適である。有機物分離手段としては、活性炭吸着層の他に、公知の有機物分離手段、例えば膜分離手段などを用いることができる。また、公知の有機物分解手段なども用いることができることはいうまでもない。
【0164】
また、図20に示すように、本発明に係る電気透析装置で得られるフッ素濃縮水をさらに減圧蒸留装置562などの水蒸発手段でフッ素濃度を高めることも可能である。この場合は、フッ素濃縮水濃度が1000〜10000mg/Lの場合においてもフッ素濃度が1〜10%以上にまでさらに容易に高めることができるので、鉄鋼業界におけるステンレス酸洗用途に用いることができるなど、再利用の用途が拡大する。
【実施例1】
【0165】
図1に示す電気透析装置を用いて、フッ素含有排水(60mg−F/L)を対象としたフッ素濃縮試験を行った。電気透析装置の仕様は以下の通りである。
・透析面積:6dm
・カチオン交換膜:アストム社製ネオセプタCMB
・アニオン交換膜:アストム社製ネオセプタAHA
・カチオン交換不織布:基材はポリエチレン製不織布。官能基はスルホン基。グラフト重合法により作成。
・アニオン交換不織布:基材はポリエチレン製不織布。官能基は4級アンモニウム基。グラフト重合法により作成。
・カチオン交換スペーサ:基材はポリエチレン製斜孔網。官能基はスルホン基。グラフト重合法により作成。
・アニオン交換スペーサ:基材はポリエチレン製斜孔網。官能基は4級アンモニウム基。グラフト重合法により作成。
・陽極:チタンに白金メッキを施したもの。ラス網形状。
・陰極:SUS304、ラス網形状
【0166】
また、電気透析装置の運転条件は以下の通りである。
・電流密度:1A/dm
・原水の流量:500ml/min
・陽極液の供給水量:25ml/min
・陰極液の循環水量:25ml/min
・バッファ水の循環水量:250ml/min
・濃縮水タンクへのバッファ水補給水量:25ml/min
・濃縮水の循環水量:250ml/min
【0167】
この結果、濃縮室内のフッ素濃度は1200mg−F/Lと高いものの、バッファ室の濃度は5〜10mg−F/L、陽極室の濃度は1mg−F/L未満であり、陽極室のフッ素濃度は極めて低い値に維持された。陽極の腐食も認められなかった。陰極室のフッ素濃度も1mg−F/L未満であり、極めて低濃度であった。陰極の腐食も認められなかった。なお、極間電圧は約10Vであった。
【実施例2】
【0168】
図3から図5に示す電気透析装置を用いて、フッ素含有排水(60mg−F/L)を対象としたフッ素濃縮試験を行った。電気透析装置の仕様は以下の通りである。
・透析面積:6dm
・カチオン交換膜:アストム社製ネオセプタCMB
・アニオン交換膜:アストム社製ネオセプタAHA
・カチオン交換不織布:基材はポリエチレン製不織布。官能基はスルホン基。グラフト重合法により作成。
・アニオン交換不織布:基材はポリエチレン製不織布。官能基は4級アンモニウム基。グラフト重合法により作成。
・カチオン交換スペーサ:基材はポリエチレン製斜孔網。官能基はスルホン基。グラフト重合法により作成。
・アニオン交換スペーサ:基材はポリエチレン製斜孔網。官能基は4級アンモニウム基。グラフト重合法により作成。
・陽極:チタンに白金メッキを施したもの。ラス網形状。
・陰極:SUS304、ラス網形状
【0169】
また、電気透析装置の運転条件は以下の通りである。
・電流密度:1A/dm
・原水の流量:500ml/min
・陽極液の供給水量:25ml/min
・陰極液の循環水量:25ml/min
・バッファ水の循環水量:250ml/min
・濃縮水タンクへのバッファ水補給水量:25ml/min
・濃縮水の循環水量:250ml/min
【0170】
これら場合においても、濃縮室内のフッ素濃度は約1200mg−F/Lと高いものの、バッファ室の濃度は5〜10mg−F/L、陽極室の濃度は1mg−F/L未満であり、陽極室のフッ素濃度は極めて低い値に維持された。陰極室のフッ素濃度は、いずれの電気透析装置においても1mg−F/L未満となり、極めて低濃度であった。陽極の腐食も認められず、陰極の腐食も認められなかった。
【実施例3】
【0171】
図9に示す電気透析装置を用いて、カルシウムイオンを10mg/L、有機物3mg/L(全有機炭素として)含む除害排水(60mg−F/L)を対象としたフッ素濃縮試験を行った。除害装置は、シリカ含有ガスおよびPFCガスを燃焼処理により除害する構成のものであった。本実施例における除害排水は、沈降分離槽により除害排水に含まれる固体を沈降分離した後の上澄水を用いた。なお、この実験では、カルシウムイオンを塩酸塩としてフッ酸とは別の室(アルカリ濃縮室)に濃縮する構成としている。また、電気透析セル2組を1組の押え板の間にまとめた構造であり、境界には複極室が設けられている。複極室には陽極室と同様に純水が供給されており、複極室からの流出水はバッファ水として用いている。バッファ室からの流出水の一部は原水と混合されている。電気透析装置の仕様は以下の通りである。
・透析面積:6dm
・カチオン交換膜:アストム社製ネオセプタCMB
・アニオン交換膜:アストム社製ネオセプタAHA
・カチオン交換不織布:基材はポリエチレン製不織布。官能基はスルホン基。グラフト重合法により作成。
・アニオン交換不織布:基材はポリエチレン製不織布。官能基は4級アンモニウム基。グラフト重合法により作成。
・カチオン交換スペーサ:基材はポリエチレン製斜孔網。官能基はスルホン基。グラフト重合法により作成。
・アニオン交換スペーサ:基材はポリエチレン製斜孔網。官能基は4級アンモニウム基。グラフト重合法により作成。
・陽極:チタンに白金メッキを施したもの。ラス網形状。
・陰極:SUS304、ラス網形状
・複極:チタンに白金メッキを施したもの。ラス網形状。
・カートリッジフィルタ:孔径5μm
・活性炭:粒状活性炭充填層
【0172】
また、電気透析装置の運転条件は以下の通りである。
・電流密度:1A/dm
・原水の流量:1000ml/min
・陽極液の供給水量:25ml/min
・複極液の供給水量:25ml/min
・陰極液の供給水量:25ml/min
・バッファ水タンクへの極液補給水量:50ml/min
・バッファ水の循環水量:500ml/min
・濃縮水の補給水量:50ml/min
・濃縮水の循環水量:500ml/min
【0173】
これら場合においても、酸濃縮室内のフッ素濃度は約1200mg−F/Lと高いものの、バッファ室の濃度は5〜10mg−F/Lと低かった。また、陽極室および複極室の濃度は1mg−F/L未満であり、陽極室および複極室のフッ素濃度は極めて低い値に維持された。また、陰極室のフッ素濃度は1mg−F/L未満であり、極めて低濃度であった。陽極および複極室の電極の腐食も認められず、陰極の腐食も認められなかった。
【実施例4】
【0174】
図11に示す電解透析装置を用いて、アンモニウムイオンを40mg/L含むフッ素含有排水(60mg−F/L)を対象としたフッ素濃縮試験を行った。なお、この実験では、アンモニウムイオンをフッ酸とは別の室(アルカリ濃縮室)に濃縮する構成としている。また、電気透析セル2組を1組の押え板の間にまとめた構造であり、境界には複極室が設けられている。複極室には陽極室と同様に純水が供給されており、複極室からの流出水はバッファ水として用いている。バッファ室からの流出水の一部は酸濃縮タンクに供給されている。電気透析装置の仕様は以下の通りである。
・透析面積:6dm
・カチオン交換膜:アストム社製ネオセプタCMB
・アニオン交換膜:アストム社製ネオセプタAHA
・カチオン交換不織布:基材はポリエチレン製不織布。官能基はスルホン基。グラフト重合法により作成。
・アニオン交換不織布:基材はポリエチレン製不織布。官能基は4級アンモニウム基。グラフト重合法により作成。
・カチオン交換スペーサ:基材はポリエチレン製斜孔網。官能基はスルホン基。グラフト重合法により作成。
・アニオン交換スペーサ:基材はポリエチレン製斜孔網。官能基は4級アンモニウム基。グラフト重合法により作成。
・陽極:チタンに白金メッキを施したもの。ラス網形状。
・陰極:SUS304、ラス網形状
・複極:チタンに白金メッキを施したもの。ラス網形状。
【0175】
また、電気透析装置の運転条件は以下の通りである。
・電流密度:1A/dm
・原水の流量:1000ml/min
・陽極液の供給水量:25ml/min
・複極液の供給水量:25ml/min
・陰極液の供給水量:25ml/min
・バッファ水タンクへの極液補給水量:50ml/min
・バッファ水の循環水量:500ml/min
・酸濃縮タンクへのバッファ水補給水量:50ml/min
・酸またはアルカリ濃縮水の循環水量:500ml/min
【0176】
酸濃縮室にはフッ酸としてフッ素イオンが濃縮され、フッ素濃度は約1200mg−F/Lと高いものの、バッファ室の濃度は5〜10mg−F/Lと低かった。また、陽極室および複極室の濃度は1mg−F/L未満であり、陽極室および複極室のフッ素濃度は極めて低い値に維持された。また、陰極室のフッ素濃度は1mg−F/L未満であり、極めて低濃度であった。アルカリ濃縮室には、アンモニア水としてアンモニウムイオンが約1000mg/Lの濃度で濃縮された。アンモニウムイオンとフッ素イオンは個別に濃縮可能であった。陽極および複極室の電極の腐食も認められず、陰極の腐食も認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の第1の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1の電気透析槽を示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の第3の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。
【図5】本発明の第4の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。
【図6】図5の電気透析槽を示す模式図である。
【図7】本発明の第5の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。
【図8】図7の電気透析槽を示す模式図である。
【図9】本発明の第6の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。
【図10】図9の電気透析槽を示す模式図である。
【図11】本発明の第7の実施形態における電気透析装置の構成を示す模式図である。
【図12】図11の電気透析槽を示す模式図である。
【図13】本発明の第8の実施形態における電気透析装置の電気透析槽を示す模式図である。
【図14】本発明に係る電気透析装置とフッ素再資源化装置とを組み合わせたフッ素処理システムの一例を示す概念図である。
【図15】本発明に係る電気透析装置とCaF置換装置とを組み合わせたフッ素処理システムの一例を示す概念図である。
【図16】本発明に係る電気透析装置とCaF晶析装置とを組み合わせたフッ素処理システムの一例を示す概念図である。
【図17】本発明に係る電気透析装置と凝集沈澱装置とを組み合わせたフッ素処理システムの一例を示す概念図である。
【図18】本発明に係る電気透析装置と除害装置とを組み合わせたフッ素処理システムの一例を示す概念図である。
【図19】本発明に係る電気透析装置と活性炭吸着層とを組み合わせたフッ素処理システムの一例を示す概念図である。
【図20】本発明に係る電気透析装置と減圧蒸留装置とを組み合わせたフッ素処理システムの一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0178】
1,101a,101b,201,301,401 電気透析槽
2 陽極
3 陰極
10,210 陽極室
20,220 バッファ室
21,30,31 濃縮室
40,240 脱塩室
50,250 陰極室
70,72,74,270,272,274,276,278,280,287 ポンプ
71,271 極液タンク
73,273 バッファ水タンク
75 濃縮水タンク
230 酸濃縮室
231 アルカリ濃縮室
260 酸供給室
261 複極室
275 酸濃縮水タンク
277 アルカリ濃縮水タンク
279 酸供給水タンク
281 酸原液タンク
282 pHモニタ
284 原水タンク
285 活性炭
286 カートリッジフィルタ
500 フッ素再資源化装置
501 CaF置換装置
502 pH値またはα値調整手段
504,508 凝集沈澱装置
505 純水製造装置
506 CaF晶析装置
507 カルシウム化合物添加量調整手段
550 沈降分離槽
552 汚泥層
554 上澄水
556 仕切板
558 除害装置
560 活性炭吸着層
562 減圧蒸留装置
AF1〜AF4,AF11〜AF16 アニオン交換不織布
AM1,AM2,AM11〜AM13 アニオン交換膜
AS1,AS11,AS12 アニオン交換スペーサ
CF1〜CF6,CF11〜CF16 カチオン交換不織布
CM1〜CM3,CM11〜CM13 カチオン交換膜
CS1〜CS3,CS11〜CS13 カチオン交換スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から対象イオンを除去して該対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の対象イオンを濃縮して該対象イオンの濃度が高められた濃縮水を生成する濃縮室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記濃縮室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項2】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から対象イオンを除去して該対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の対象イオンを濃縮して該対象イオンの濃度が高められた濃縮水を生成する濃縮室と、
前記被処理水中の対象イオンが前記濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記濃縮室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項3】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から対象イオンを除去して該対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の対象イオンを濃縮して該対象イオンの濃度が高められた濃縮水を生成する濃縮室と、
前記被処理水中の対象イオンが前記濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記バッファ室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項4】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から対象イオンを除去して該対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の対象イオンを濃縮して該対象イオンの濃度が高められた濃縮水を生成する濃縮室と、
前記被処理水中の対象イオンが前記濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記バッファ室を経由して前記濃縮室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項5】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを前記第2の濃縮室に供給するイオン供給室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記第1の濃縮室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項6】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記被処理水中の第1の対象イオンが前記第1の濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを前記第2の濃縮室に供給するイオン供給室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記バッファ室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項7】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記被処理水中の第1の対象イオンが前記第1の濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを前記第2の濃縮室に供給するイオン供給室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記第1の濃縮室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項8】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記被処理水中の第1の対象イオンが前記第1の濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを前記第2の濃縮室に供給するイオン供給室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記バッファ室を経由して前記第1の濃縮室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項9】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記第1の濃縮室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項10】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記被処理水中の第1の対象イオンが前記第1の濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記バッファ室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項11】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記被処理水中の第1の対象イオンが前記第1の濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記第1の濃縮室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項12】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記被処理水中の第1の対象イオンが前記第1の濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記陽極室に純水を供給する経路と、
前記陽極室から出た流出水の少なくとも一部を前記バッファ室を経由して前記第1の濃縮室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項13】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から対象イオンを除去して該対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の対象イオンを濃縮して該対象イオンの濃度が高められた濃縮水を生成する濃縮室と、
前記被処理水中の対象イオンが前記濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記バッファ室に純水を供給する経路と、
前記バッファ室から出た流出水の少なくとも一部を前記濃縮室に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項14】
前記陽極室または前記バッファ室から出た流出水の少なくとも一部を前記被処理水または前記処理水に混合する経路をさらに備えたことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の電気透析装置。
【請求項15】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記被処理水中の第1の対象イオンが前記第1の濃縮室から直接前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記陽極室と前記バッファ室との間に設けられた第1のカチオン交換膜と、
前記陰極室と前記第2の濃縮室との間に設けられた第1のアニオン交換膜と、
前記バッファ室と前記第1の濃縮室との間に設けられた第2のカチオン交換膜と、
前記第1の濃縮室と前記脱塩室との間に設けられた第2のアニオン交換膜と、
前記脱塩室と前記第2の濃縮室との間に設けられた第3のカチオン交換膜と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項16】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記被処理水中の第1の対象イオンが前記第1の濃縮室から前記陽極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを前記第2の濃縮室に供給するイオン供給室と、
前記陽極室と前記バッファ室との間に設けられた第1のカチオン交換膜と、
前記陰極室と前記イオン供給室との間に設けられた第1のアニオン交換膜と、
前記バッファ室と前記第1の濃縮室との間に設けられた第2のカチオン交換膜と、
前記第1の濃縮室と前記脱塩室との間に設けられた第2のアニオン交換膜と、
前記脱塩室と前記第2の濃縮室との間に設けられた第3のカチオン交換膜と、
前記第2の濃縮室と前記イオン供給室との間に設けられた第3のアニオン交換膜と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項17】
陽極を有する陽極室と、
陰極を有する陰極室と、
複数の室からなる複数の室構造と、
電極を有し、前記複数の室構造の間に配置され、イオン交換体が充填された少なくとも1つの複極室と、
前記陽極室と前記室構造との間に設けられた第1のカチオン交換膜と、
前記陰極室と前記室構造との間に設けられた第1のアニオン交換膜と、
前記複極室の前記陽極側に設けられた第2のアニオン交換膜と、
前記複極室の前記陰極側に設けられた第2のカチオン交換膜と、
を備え、前記室構造は、
供給された被処理水から第1の対象イオンと第2の対象イオンとを除去して前記第1の対象イオンおよび前記第2の対象イオンの濃度が低められた処理水を生成する脱塩室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第1の対象イオンを濃縮して該第1の対象イオンの濃度が高められた第1の濃縮水を生成する第1の濃縮室と、
前記被処理水中の第1の対象イオンが前記第1の濃縮室から前記陽極室または前記複極室に直接流入しないように遮断するバッファ室と、
前記脱塩室から移動した前記被処理水中の第2の対象イオンを濃縮して該第2の対象イオンの濃度が高められた第2の濃縮水を生成する第2の濃縮室と、
前記被処理水中の第2の対象イオンと反対の極性を有するイオンを前記第2の濃縮室に供給するイオン供給室と、
前記陽極室および前記複極室に純水を供給する経路と、
前記バッファ室と前記第1の濃縮室との間に設けられた第3のカチオン交換膜と、
前記第1の濃縮室と前記脱塩室との間に設けられた第3のアニオン交換膜と、
前記脱塩室と前記第2の濃縮室との間に設けられた第4のカチオン交換膜と、
前記第2の濃縮室と前記イオン供給室との間に設けられた第4のアニオン交換膜と、
を備えたことを特徴とする電気透析装置。
【請求項18】
前記被処理水はフッ素を含有する排水であることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の電気透析装置。
【請求項19】
前記陽極室および/または前記複極室から出た流出水のフッ素濃度が1mg−F/L以下となるように、前記陽極室および/または前記複極室に供給する純水の水量を調整することを特徴とする請求項18に記載の電気透析装置。
【請求項20】
前記陽極室、前記陰極室、および前記複極室の少なくとも1つにはイオン交換体が充填されていることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の電気透析装置。
【請求項21】
それぞれの室には、前記カチオン交換膜に接するカチオン交換繊維材料または前記アニオン交換膜に接するアニオン交換繊維材料が充填されていることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の電気透析装置。
【請求項22】
前記陽極室、前記陰極室、前記複極室、または前記バッファ室に、純水に代えて電気透析装置の処理水を供給することを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の電気透析装置。
【請求項23】
少なくともアンモニウムイオンとフッ素を含有する排水を電気透析装置により処理することにより、前記排水からアンモニウムイオンおよびフッ素を除去してアンモニウムイオンおよびフッ素の濃度が低められた処理水を生成するとともに、フッ素の濃度を高めた第1の濃縮水とアンモニウムイオンの濃度を高めた第2の濃縮水とを生成することを特徴とする排水処理方法。
【請求項24】
少なくとも金属水酸化物スラッジを形成する金属イオンとフッ素を含有する排水を電気透析装置により処理することにより、前記排水から前記金属イオンおよびフッ素を除去して前記金属イオンおよびフッ素の濃度が低められた処理水を生成するとともに、フッ素の濃度を高めた第1の濃縮水と前記金属イオンの濃度を高めた第2の濃縮水とを生成することを特徴とする排水処理方法。
【請求項25】
少なくとも過酸化水素とフッ素を含む排水を過酸化水素分解処理し、
前記過酸化水素分解処理後の排水を前記電気透析装置に供給することを特徴とする請求項23または24に記載の排水処理方法。
【請求項26】
前記排水のフッ素濃度が1mg/Lを超え10,000mg/L以下であることを特徴とする請求項23から25のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【請求項27】
前記処理水のフッ素濃度が1mg/L未満であることを特徴とする請求項23から26のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【請求項28】
前記第1の濃縮水の少なくとも一部をフッ素再資源化装置に供給して、前記排水中のフッ素をフッ化カルシウム(CaF)として回収することを特徴とする請求項23から27のいずれか一項に記載の排水処理方法。
【請求項29】
少なくともフッ素を含有する排水を処理する、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気透析装置と、
前記電気透析装置から得られるフッ素濃縮水をフッ化カルシウムとして回収するフッ素再資源化装置と、
を備えたことを特徴とするフッ素処理システム。
【請求項30】
少なくともフッ素を含有する排水を処理する、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気透析装置と、
前記電気透析装置で得られたフッ素濃縮水の少なくとも一部を含む水を凝集沈澱処理する凝集沈澱装置と、
を備えたことを特徴とするフッ素処理システム。
【請求項31】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電気透析装置と、
前記電気透析装置から得られる処理水を原水として純水を製造する純水製造装置と、
を備えたことを特徴とする水リサイクルシステム。
【請求項32】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電気透析装置と、
除害装置と、
前記除害装置の排水を前記電気透析装置に供給する経路と、
前記電気透析装置で得られる処理水の一部を前記除害装置に供給する経路と、
を備えたことを特徴とする水リサイクルシステム。
【請求項33】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電気透析装置と、
少なくともフッ素を含有する排水の固液分離を行う固液分離手段と、
前記固液分離手段により固液分離がなされた排水を前記電気透析装置に供給する経路と、
を備えたことを特徴とするフッ素処理システム。
【請求項34】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電気透析装置と、
少なくともフッ素を含有する排水の有機物分離を行う有機物分離手段と、
前記有機物分離手段により有機物分離がなされた排水を前記電気透析装置に供給する経路と、
を備えたことを特徴とするフッ素処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−14827(P2007−14827A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176073(P2005−176073)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】