説明

電気電子部品封止用樹脂組成物、電気電子部品封止体およびその製造方法

【課題】自動車のエンジンルーム内に用いられる部品や屋外向け電化製品のような高温かつ高湿度となる過酷な環境負荷に長期間さらされる場合にも使用できる高温環境負荷および高温高湿環境負荷に対する耐久性に優れる電気電子部品封止用樹脂組成物、電気電子部品封止体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】共重合ポリエステルエラストマー(A)から主としてなる電気電子部品封止用樹脂組成物であって、フォスファイト系化合物(B1)、ベンゼン環1個のヒンダードフェノール系化合物(B2)、ベンゼン環3個乃至4個のヒンダードフェノール系化合物(B3)成分、ベンゾフラノン系化合物(B4)成分およびチオエーテル系化合物(B5)成分を含有し、(B1)〜(B5)成分の合計が樹脂組成物全体に対して0.1〜5重量%であることを特徴とする電気電子部品封止用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱老化性に優れる電気電子部品封止用樹脂組成物、電気電子部品封止体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車・電化製品に広汎に使用されている電気電子部品は、その使用目的を達成する為に、外部との電気絶縁性が必須とされ、電気電子部品の形状に確実に追随し未充填部が発生しない封止方法が求められている。加温溶融するだけで粘度が低下し封止できるホットメルト樹脂は、封止後冷却するだけで固化して封止体が形成されるので生産性が高く、加熱して樹脂を溶融除去することで部材のリサイクルが容易に可能となる等の優れた特徴を有し、電気電子部品封止用に適している。
【0003】
電気絶縁性・耐水性が共に高いポリエステルはこの用途に非常に有用な材料と考えられるが、一般に溶融粘度が高く、複雑な形状の部品を封止するには数百MPa以上の高圧での射出成型が必要となり、電気電子部品を破壊してしまう虞があった。これに対し、特許文献1には、特定の組成および物性を有するポリエステル樹脂と酸化防止剤とを含有するモールディング用ポリエステル樹脂組成物が開示されており、電気電子部品を破損しない低圧での封止が可能であることが開示されている。この樹脂組成物により、初期密着性の良好な成型品が得られるようになり、一般電気電子部品へのポリエステル系樹脂組成物の適用が可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3553559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気電子部品封止体には高温環境負荷や高温高湿環境負荷に対する耐久性が求められることが多い。特許文献1に開示されている樹脂組成物もある程度の高温高湿環境に対する耐久性を有するが、自動車のエンジンルーム内に用いられる部品や屋外向け電化製品のような高温かつ高湿度となる過酷な環境負荷に長期間さらされる場合には耐久性が不足する傾向にあった。本発明の課題は上記の問題を解決することであり、高温環境負荷および高温高湿環境負荷に対する耐久性に優れる電気電子部品封止用樹脂組成物、電気電子部品封止体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明者等は鋭意検討し、以下の発明を提案するに至った。即ち本発明は、以下に示す電気電子部品封止用樹脂組成物及びそれを用いた電気電子部品封止体である。
【0007】
<1> 共重合ポリエステルエラストマー(A)から主としてなる電気電子部品封止用樹脂組成物であって、一般式(1)で表される(B1)成分、一般式(2)で表される(B2)成分、一般式(3)で表される(B3)成分、一般式(4)で表される(B4)成分および一般式(5)で表される(B5)成分を含有し、(B1)〜(B5)成分の合計が樹脂組成物全体に対して0.1〜5重量%であることを特徴とする電気電子部品封止用樹脂組成物。
<2> 前記共重合ポリエステルエラストマー(A)が、ポリカーボネート成分、ポリアリキレングリコール成分および/またはポリラクトン成分が合計25〜75重量%共重合されているものであることを特徴とする<1>に記載の電気電子材料封止材用樹脂組成物。
<3> 前記共重合ポリエステルエラストマー(A)が、テレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸が全酸成分に対して50モル%以上共重合されているものであることを特徴とする<1>または<2>に記載の電気電子材料封止材用樹脂組成物。
<4> <1>〜<3>いずれかに記載の樹脂組成物により封止されている電気電子部品封止体。
<5> <1>〜<3>いずれかに記載の樹脂組成物を用いてインサート成型法により電気電子部品を封止する工程を有する電気電子部品封止体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気電子部品封止用樹脂組成物及びそれを用いた電気電子部品封止体は130℃、500時間の高温環境負荷および85℃、85%RH、500時間高温高湿環境負荷に対する耐久性に優れ、優れた長期耐久性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電気電子部品封止用樹脂組成物は、共重合ポリエステルエラストマー(A)から主としてなる電気電子部品封止用樹脂組成物であって、一般式(1)で表される(B1)成分、一般式(2)で表される(B2)成分、一般式(3)で表される(B3)成分、一般式(4)で表される(B4)成分および一般式(5)で表される(B5)成分を含有し、(B1)〜(B5)成分の合計が樹脂組成物全体に対して0.1〜5重量%であることを特徴とする電気電子部品封止用樹脂組成物である。
【0010】
<共重合ポリエステルエラストマー(A)>
本発明に用いる共重合ポリエステルエラストマー(A)は、主としてポリエステルセグメントからなるハードセグメントと、主としてポリカーボネートセグメント、ポリアリキレングリコールセグメントおよび/またはポリラクトンセグメントからなるソフトセグメントとがエステル結合により結合された化学構造からなる。前記ポリエステルセグメントは芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールおよび/または脂環族グリコールとの重縮合により形成しうる構造のポリエステルから主としてなることが好ましい。前記ソフトセグメントは、共重合ポリエステルエラストマー全体に対して20重量%以上80重量%以下含有されることが好ましく、30重量%以上70重量%以下含有されることがより好ましく、40重量%以上60重量%以下含有されることが更に好ましい。
【0011】
本発明に用いる共重合ポリエステルエラストマー(A)のエステル基濃度の上限は8000当量/10gであることが望ましい。好ましい上限は7500当量/10g、より好ましくは7000当量/10gである。また、耐薬品性(ガソリン、エンジンオイル、アルコール、汎用溶剤等)が要求される場合には、下限は1000当量/10gであることが望ましい。より好ましい下限は1500当量/10g、さらに好ましくは2000当量/10gである。ここでエステル基濃度の単位は、樹脂10gあたりの当量数で表し、ポリエステル樹脂の組成及びその共重合比から算出することができる。
【0012】
本発明に用いる共重合ポリエステルエラストマー(A)の数平均分子量の下限は特に限定されないが、3,000以上であることが好ましく、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは7,000以上である。また、数平均分子量の上限は特に限定されないが、好ましくは50,000以下、より好ましくは40,000以下、さらに好ましくは30,000以下である。数平均分子量が低すぎると封止用樹脂組成物の耐加水分解性や高温高湿下での強伸度保持が不足することがあり、数平均分子量が高すぎると樹脂組成物の溶融粘度が高くなり成形圧力が高くなりすぎたり成形困難となったりすることがある。
【0013】
本発明に用いる共重合ポリエステルエラストマー(A)は飽和ポリエステル樹脂であることが好ましく、50当量/10g以下の微量のビニル基を有する不飽和ポリエステル樹脂であることも好ましい。高濃度のビニル基を有する不飽和ポリエステルであれば、溶融時に架橋が起こる等の可能性があり、溶融安定性に劣る場合がある。
【0014】
本発明に用いる共重合ポリエステルエラストマー(A)は、必要に応じて無水トリメリット酸、トリメチロールプロパン等の三官能以上のポリカルボン酸やポリオールを共重合し、分岐を有するポリエステルとしても差し支えない。
【0015】
本発明に用いる共重合ポリエステルエラストマー(A)の熱劣化を出来るだけ生じさせずにモールドするためには、210〜240℃での速やかな溶融が求められる。このため、共重合ポリエステルエラストマー(A)の融点の上限は210℃が望ましい。好ましくは200℃、より好ましくは190℃である。常温での取り扱い性と通常の耐熱性を考慮すると70℃以上、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは140℃以上、最も好ましくは150℃以上である。
【0016】
本発明に用いる共重合ポリエステルエラストマー(A)の製造方法としては、公知の方法をとることができるが、例えば、後述するポリカルボン酸成分及びポリオール成分を150〜250℃でエステル化反応させた後、減圧しながら230〜300℃で重縮合反応させることにより、共重合ポリエステルエラストマーを得ることができる。あるいは、後述するポリカルボン酸のジメチルエステル等の誘導体とポリオール成分を用いて150℃〜250℃でエステル交換反応させた後、減圧しながら230℃〜300℃で重縮合反応させることにより、共重合ポリエステルエラストマーを得ることができる。
【0017】
本発明に用いる共重合ポリエステルエラストマー(A)の組成及び組成比を決定する方法としては、例えばポリエステル樹脂を重クロロホルム等の溶媒に溶解して測定するH−NMRや13C−NMR、ポリエステル樹脂のメタノリシス後に測定するガスクロマトグラフィーによる定量(以下、メタノリシス−GC法と略記する場合がある)等が挙げられる。本発明においては、ポリエステル樹脂(A)を溶解でき、なおかつH−NMR測定に適する溶剤がある場合には、H−NMRで組成及び組成比を決定することとする。適当な溶剤がない場合やH−NMR測定だけでは組成比が特定できない場合には、13C−NMRやメタノリシス−GC法を採用または併用することとする。
【0018】
<共重合ポリエステルエラストマー(A)のハードセグメント>
本発明の共重合ポリエステルエラストマーのハードセグメントは、主としてポリエステルセグメントからなるハードセグメントからなることが好ましい。
【0019】
ポリエステルセグメントを構成する酸成分は特に限定されないが、炭素数8〜14の芳香族ジカルボン酸を全酸成分の50モル%以上含むことが共重合ポリエステルエラストマーの耐熱性を向上させるための高融点化設計の点で好ましい。また、炭素数8〜14の芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸および/又はナフタレンジカルボン酸であることがグリコールと高反応性であり、重合性および生産性の点で望ましい。テレフタル酸とナフタレンカルボン酸の合計が、共重合ポリエステルエラストマーの全酸成分の60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが更に好ましく、全酸成分がテレフタル酸および/またはナフタレンカルボン酸で構成されていても差し支えない。
【0020】
ポリエステルセグメントを構成するその他の酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その共重合比率は全酸成分の30モル%未満、好ましくは20モル%未満である。また、ポリエステルセグメントを構成するその他の酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等の三官能以上のポリカルボン酸を用いることも可能である。3官能以上のポリカルボン酸の共重合比率は、樹脂組成物のゲル化防止の観点から10モル%以下とすることが好ましく、5モル%以下とすることがより好ましい。
【0021】
また、ポリエステルセグメントを構成する脂肪族グリコール又は脂環族グリコールは特に限定されないが、炭素数2〜10の脂肪族グリコールおよび/または脂環族グリコールを全グリコール成分の50モル%以上含むことが好ましく、炭素数2〜8のアルキレングリコール類からなることがより好ましい。好ましいグリコール成分の例としては、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールがポリエステルエラストマーの耐熱性を向上させるための高融点化設計の点で最も好ましい。また、グリコール成分の一部として、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスルトール等の三官能以上のポリオールを用いても良く、樹脂組成物のゲル化防止の観点から10モル%以下とすることが好ましく、5モル%以下とすることがより好ましい。
【0022】
ポリエステルセグメントを構成する成分としては、ブチレンテレフタレート単位あるいはブチレンナフタレート単位よりなるものが、ポリエステルエラストマーが高融点となり耐熱性を向上させることができること、また、成形性、コストパフォーマンスの点より、特に好ましい。
【0023】
<共重合ポリエステルエラストマー(A)のソフトセグメント>
本発明の共重合ポリエステルエラストマーのソフトセグメントは、主としてポリカーボネートセグメント、ポリアリキレングリコールセグメントおよび/またはポリラクトンセグメントからなるソフトセグメントからなることが好ましい。ソフトセグメントの共重合比率は前記共重合ポリエステルエラストマー(A)を構成するグリコール成分全体を100モル%としたとき1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることが更に好ましく、20モル%以上であることが特に好ましい。また、90モル%以下であることが好ましく、55モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることが更に好ましく、45モル%以下であることが特に好ましい。ソフトセグメントの共重合比率が低すぎると、本発明の樹脂組成物の溶融粘度が高くなり低圧で成形できない、または、結晶化速度が速くショートショットが発生する等の問題を生じる傾向にある。また、ソフトセグメントの共重合比率が高すぎると本発明の封止体の耐熱性が不足する等の問題を生じる傾向にある。
【0024】
ソフトセグメントの数平均分子量は特に限定されないが、400以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましい。ソフトセグメントの数平均分子量が低すぎると柔軟性付与が出来ず、封止後の電子基板への応力負荷が大きくなるとの問題を生じる傾向にある。またソフトセグメントの数平均分子量は5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましい。数平均分子量が高すぎると他の共重合成分との相溶性が悪く共重合できないとの問題を生じる傾向にある。
【0025】
ソフトセグメントに用いられるポリカーボネートセグメントとしては、炭素数2〜12の脂肪族ジオール残基をカーボネート基で結合したポリカーボネート構造から主としてなるものであることが好ましい。前記脂肪族ジオール残基としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖アルキレングリコールの残基、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルーオクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐を有する脂肪族グリコールの残基、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、などのオキシアルキレングリコールの残基などを挙げることができる。また、ネオペンチルヒドロキシピバリン酸エステル、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物などの芳香族環を有する脂肪族グリコール、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂肪族グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール等の残基が挙げられる。得られるポリエステルエラストマーの柔軟性や低温特性の面から炭素数4〜12の脂肪族ジオール残基が好ましく、炭素数5〜9の脂肪族ジオール残基が特に好ましい。脂肪族ジオール残基は1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0026】
ソフトセグメントに用いられるポリアリキレングリコールセグメントの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。柔軟性付与、低溶融粘度化の面でポリテトラメチレングリコールが最も好ましい。
【0027】
ソフトセグメントに用いられるポリラクトンセグメントの具体例としては、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリウンデカラクトン、ポリ(1,5−オキセパン−2−オン)等を挙げることができる。
【0028】
<(B1)〜(B5)成分>
本発明の樹脂組成物に用いる(B1)成分は一般式(1)に示されるリン系化合物であり、(B2)成分は一般式(2)に示されるヒンダードフェノール系化合物であり、(B3)は一般式(3)に示されるヒンダードフェノール系化合物であり、(B4)は一般式(4)に示されるベンゾフラノン系化合物であり、(B5)は一般式(5)に示されるチオエーテル系化合物である。(B1)〜(B5)成分の合計は樹脂組成物全体に対して0.1〜5重量%であり、より好ましくは0.2〜3重量%である。(B1)〜(B5)成分の合計添加量が少なすぎる場合には耐加水分解性に対する効果を発揮せず、合計添加量が多すぎる場合には樹脂特性に悪影響を与えることがある。また、(B1)〜(B5)成分の全てを含有していることが重要であり、いずれかの成分が欠けると、130℃、500時間の高温環境負荷および85℃、85%RH、500時間高温高湿環境負荷に対する耐久性を発揮することが困難となる。
【0029】
<(B1)成分>
(B1)成分は一般式(1)に示されるリン系化合物である。
一般式(1);
【化1】

(但し、R,R,R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。)
【0030】
<(B2)成分>
(B2)成分は一般式(2)に示されるヒンダードフェノール系化合物である。
一般式(2);
【化2】

(R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。Rは炭素数5〜10の直鎖または分岐を有するアルキル基である。)
【0031】
(B3)成分は一般式(3)に示されるヒンダードフェノール系化合物である。
一般式(3);
【化3】

(R,R10は炭素数1〜4の直鎖または分岐を有するアルキル基、nは3および/または4、Xはnが3の場合は3価の有機基、nが4の場合は4価の有機基である。)
【0032】
(B4)成分は一般式(4)に示されるベンゾフラノン系化合物である。
一般式(4);
【化4】

(R11,R14、R15はそれぞれ独立に、炭素数1〜3の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。R12,R13はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。R15それぞれ独立に、炭素数1〜3の直鎖または分岐を有するアルキル基である。)
【0033】
(B5)成分は一般式(5)に示されるチオエーテル系化合物である。
一般式(5);
【化5】

(R16は炭素数1〜4の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。R17は炭素数1〜20の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。)
【0034】
<その他の構成成分>
本発明の電気電子部品封止用樹脂組成物には、密着性、柔軟性、耐久性等を改良する目的で(A)成分および(B1)〜(B5)成分以外の成分として、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エポキシ、ポリカーボネート、アクリル、エチレンビニルアセテート、フェノール等の(A)以外の樹脂、イソシアネート化合物、メラミン等の硬化剤、タルクや雲母等の充填材、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料、三酸化アンチモン、臭素化ポリスチレン等を配合しても全く差し支えない。その際の(A)成分は、組成物全体に対して50重量%以上含有することが好ましく、より好ましくは60重量%以上である。ポリエステル樹脂(A)の含有量が50重量%未満であると電気電子部品に対する密着性、密着耐久性、伸度保持性、耐加水分解性、耐水性が低下するおそれがある。
【0035】
<電気電子部品封止用樹脂組成物>
本発明の電気電子部品封止用樹脂組成物は、200℃での溶融粘度が5〜2000dPa・sであることが望ましい。ここで200℃での溶融粘度とは、水分率0.1%以下に乾燥したサンプルを用いて、島津製作所株式会社製フローテスター(型番CFT−500C)にて、200℃に加温安定したポリエステル樹脂を、1.0mmの孔径を有する厚み10mmのダイを98N/cmの圧力で通過させたときの溶融粘度である。電気電子部品封止用樹脂組成物の溶融粘度が高すぎると、成形圧力を高くすることが必要となるため、部品の破壊を生じることがある。2000dPa・s以下、好ましくは100dPa・s以下の溶融粘度を有する電気電子部品封止用樹脂組成物を使用することで、数百N/cm程度の比較的低い射出圧力で電気電子部品封止体が得られると共に、電気電子部品の特性も損ねない。また、電気電子部品封止用樹脂組成物の溶融粘度は、射出成形時に溶融樹脂が与える電気電子基板への応力負荷の面から低いほうが好ましいが、樹脂の接着性や凝集力を考慮すると下限としては5dPa・s以上が望ましく、さらに好ましくは10dPa・s以上、より好ましくは50dPa・s以上、最も好ましくは100dPa・s以上である。
【0036】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、酸化防止剤および/または光安定剤を含有することが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール骨格を含む酸化防止剤、硫黄原子を含む酸化防止剤、リン原子を含む酸化防止剤が好ましい。光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、ヒンダートアミン系光安定剤、ニッケル系光安定剤およびベンゾエート系光安定剤が好ましい。フェノール骨格を含む酸化防止剤としては、ヒンダートフェノール系酸化防止剤が最も好ましく、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル[3−(3,5−ジ−tertブチル4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゼン、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステル、2,5,7,8−テトラメチル−(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[1,1−ジメチル-2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフィエニル)プロピオニルオキシ]エチル ]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5)−ウンデカンを挙げることができる。硫黄原子を含む酸化防止剤としては、3’,3’−チオビスプロピオン酸ジドデシルエステル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオビスプロピオネート)、等が挙げられるが、これらに限ることなく、硫黄原子を含む酸化防止剤であれば、適宜使用できる。 リン原子を含む酸化防止剤としては、トリブチルフォスフェート、トリス(2,4−ジ−ブチルフェニル)フォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル-フェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジフォスフォナイト等が挙げられるが、これらに限ることなく、リン原子を含む酸化防止剤であれば、適宜使用できる。 ベンゾトリアゾール系光安定剤としては、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2’ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル) フェノール,2−[2−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジル)]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられるが、これらに限ることなく、ベンゾトリアゾール系光安定剤であれば、適宜使用できる。 ベンゾフェノン系光安定剤としては、2−ヒドロキシ−4−(オクチルオキシ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ-ベンゾフェノン−5−サルフォニックアシッド、2−ヒドロキシ−4−n―ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられるが、これらに限ることなく、ベンゾフェノン系光安定剤であれば、適宜使用できる。ヒンダートアミン系光安定剤とは、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル} {(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン〈2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert―ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−[1H,3H,5H)トリオン等が挙げられるが、これらに限ることなく、ベヒンダートアミン系光安定剤であれば、適宜使用できる。ニッケル系光安定剤とは、[2,2’−チオ-ビス(4−tert−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケル−(II)、ニッケルジブチルジチオカルバメート、[2’,2’−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)]n−ブチルアミン−ニッケル等が挙げられるが、これらに限ることなく、ニッケル系光安定剤であれば、適宜使用できる。ベンゾエート系光安定剤とは、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5’−ジ−tert−ブチル‐4’‐ヒドロキシベンゾエート等が挙げられるが、これらに限ることなく、ベンゾエート系光安定剤であれば、適宜使用できる。
【0037】
<電気電子部品封止用樹脂組成物の製造方法>
本発明の電気電子部品封止用樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、典型的には(A)成分および(B1)〜(B5)成分を溶融混練することによって製造することができる。各成分は一度に混合してもよいし、一部の成分を分割して混合してもよい。溶融混練操作は例えばPCM−30(株式会社池貝製)、TEX−α(株式会社日本製鋼所)等の二軸押出機、またはラボプラストミルなどの一軸押出機、または射出成型前のドライブレンドによって行うことができ、(B1)〜(B5)成分の分散の面から特に二軸押出機による溶融混練操作が特に好ましい。
【0038】
<電気電子部品封止体および電気電子部品封止体の製造方法>
本発明の電気電子部品封止体は、本発明の電気電子部品封止用樹脂組成物を用いてインサート成型法により電気電子部品を封止することにより製造することができる。ここで、本発明の電気電子部品封止用樹脂組成物は、樹脂組成物を構成する全成分が別途あらかじめ加熱混練されたものであっても、構成成分の一部または全部が金型注入直前に混合され加熱混練されたものであってもよい。
【0039】
金型注入の際の樹脂組成物温度および樹脂組成物圧力は特に限定されないが、樹脂組成物温度130℃以上260℃以下かつ樹脂組成物圧力0.1MPa以上10MPa以下とすると電気電子部品へのダメージが少なくなり、好ましい。樹脂の注入には、たとえばスクリュータイプのホットメルト成型加工用アプリケーターを用いることができる。ホットメルト成型加工用アプリケーターの型式は特に限定されないが、例えば独国Nordson社製ST2、井元製作所製竪型押し出し成型機等が挙げられる。
【実施例】
【0040】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例、比較例を挙げるが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。尚、実施例、比較例に記載された各測定値は次の方法によって測定したものである。
【0041】
<ポリエステル組成>
ポリエステルの組成及び組成比は、共鳴周波数400MHzのH−NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)にて行った。測定装置はVARIAN社製NMR装置400−MRを用い、溶媒には重クロロホルムを用いた。
【0042】
<融点、ガラス転移温度の測定>
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量分析計「DSC220型」にて、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、一度250℃で5分ホールドした後、液体窒素で急冷して、その後−150℃から250℃まで、20℃/minの昇温速度で測定した。得られた曲線の変曲点をガラス転移温度、吸熱ピークを融点とした。
【0043】
<溶融粘度の測定方法>
試料を水分率0.1%以下に乾燥し、島津製作所株式会社製フローテスター(型番CFT−500C)にて、200℃に加温安定し、1.0mmの孔径を有する厚み10mmのダイを98N/cmの圧力で通過させたときの溶融粘度を測定した。
【0044】
<引張伸度の測定方法>
試験片を23℃、50%RHで2時間以上保管した後、オートグラフ(株式会社島津製作所社製AG−IS)を用いて引張伸度を測定した。測定条件は、23℃、50%RH、チャック間距離20mm、引張速度500mm/minとした。
【0045】
<試験片の作成および初期引張伸度の測定>
竪型射出成形機(日精樹脂株式会社製TH40E)を用いて射出成形法により平板を作成した。射出成形条件は、成形樹脂温度220℃、成型圧力25MPa、冷却時間25秒、射出速度20mm/秒とした。得られた平板をダンベル打ちぬき機(株式会社ダンベル社製)で打ち抜いて3号ダンベルを作成し、試験片とした。左記試験片を室温下で保管したものの引張伸度を初期引張伸度とした。
【0046】
<高温環境負荷試験>
前記試験片を、130℃に設定したギヤオーブン(東洋精機株式会社製)に静置した後、500時間経過後に取り出し、引張伸度を測定し、引張伸度(1)とした。下記式に従い、500時間経過後の引張伸度保持率(%)を算出した。
【数1】

評価基準
◎:添加剤を含まないポリエステル樹脂(A)の引張伸度保持率に対して10ポイント以上向上
○:添加剤を含まないポリエステル樹脂(A)の引張伸度保持率に対して10ポイント未満向上
×:添加剤を含まないポリエステル樹脂(A)の引張伸度保持率以下
【0047】
<高温高湿環境負荷試験>
前記試験片を、85℃、85%RHに設定した高温恒湿器(ヤマト科学株式会社製IG400)内に静置し、500時間経過後に取り出し、引張伸度を測定し、引張伸度(2)とした。下記式に従い、500時間経過後の引張伸度保持率(%)を算出した。
【数2】

評価基準
◎:添加剤を含まないポリエステル樹脂(A)の引張伸度保持率に対して5ポイント以上向上
○:添加剤を含まないポリエステル樹脂(A)の引張伸度保持率に対して5ポイント未満向上
×:添加剤を含まないポリエステル樹脂(A)の引張伸度保持率以下
【0048】
<ポリエステルの製造例>
撹拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内にテレフタル酸166重量部、1,4−ブタンジオール180重量部、テトラブチルチタネート0.25重量部を加え、170〜220℃で2時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール「PTMG1000」(三菱化学社製)を300重量部とヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1330」(チバガイギー社製)を0.5重量部投入し、255℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしてゆき、60分かけて255℃で665Paとした。そしてさらに133Pa以下で30分間重縮合反応を行い、ポリエステルAを得た。このポリエステルAの溶融粘度、融点およびガラス転移温度を表1に示した。また、ポリエステルB,CをポリエステルAと同様な方法により合成した。それぞれの組成及び物性値を表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
表中の略号は以下の通りである。
TPA:テレフタル酸、NDC:ナフタレンジカルボン酸、BD:1,4−ブタンジオール、PTMG1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1000)、PTMG2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量2000)
【0051】
<電気電子部品封止用樹脂組成物の製造例>
実施例1〜10、比較例1〜5
ポリエステルA、一般式(1)で表される化合物1、一般式(2)で表される化合物2、一般式(3)で表される化合物3、一般式(4)で表される化合物4および一般式(5)で表される化合物5を表1に記載の比率で均一に混合した後、二軸押し出し機を用いてダイ温度180℃において溶融混練し、組成物1を得た。樹脂組成物2〜15は、組成物1と同様な方法で、但し表2〜4に記載のとおり配合を変更して製造した。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
実施例1
組成物1を用いて平板を作製し、<高温環境負荷試験>、<高温高湿環境負荷試験>を実施した。<高温環境負荷試験>において、添加剤を含まないポリエステルAのみからなる試験片の引張伸度保持率との差が+31%であった。また、<高温高湿環境負荷試験>において、添加剤を含まないポリエステルAのみからなる試験片の引張伸度保持率との差が+5%であった。耐熱老化性を向上させつつ、耐加水分解性を向上させる良好な結果が得られた。評価結果は表2に示した。
【0056】
実施例2〜10
組成物2〜10を用いて、実施例1と同様の試験を実施した。評価結果を表2〜3に示した。
【0057】
比較例1
組成物11を用い、実施例1と同様の試験を実施した。評価結果を表4に示した。<高温環境負荷試験>において、添加剤を含まないポリエステルAのみからなる試験片の引張伸度保持率との差は+30%となり良好であった。しかしながら、<高温高湿環境負荷試験>においては添加剤を含まないポリエステルAのみからなる試験片の引張伸度保持率との差が−22%となり不良であった。
【0058】
比較例2〜5
組成物11〜15を用い、実施例1と同様の試験を実施した。評価結果は表4に示した。
【0059】
実施例1〜10は特許請求の範囲を満たし、<高温環境負荷試験>、<高温高湿環境負荷試験>の結果全てが良好となった。これに対し、比較例1は(B1)成分が含まれておらず、<高温環境負荷試験>結果が不良である。比較例2は(B3)成分が含まれておらず、<高温環境負荷試験>、<高温高湿下環境試験>の両方が不良である。比較例3は(B4)成分が含まれておらず、<高温環境負荷試験>、が不良である。比較例4は(B2)成分が含まれておらず、<高温高湿下環境試験>が不良である。比較例5は(B5)成分が含まれておらず、<高温環境負荷試験>が不良である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の電気電子部品封止用樹脂組成物およびこれを用いてなる電気電子部品封止体は、高温環境負荷や高温高湿環境負荷に対する耐久性に優れるので、自動車、通信、コンピュータ、家電用途各種のコネクター、ハーネスやあるいは電子部品、プリント基板を有するスイッチ、センサー等の電気電子部品などが高温乾燥環境負荷および/または高温高湿度環境負荷に長期間さらされる場合の耐久性を同時に向上させることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合ポリエステルエラストマー(A)から主としてなる電気電子部品封止用樹脂組成物であって、一般式(1)で表される(B1)成分、一般式(2)で表される(B2)成分、一般式(3)で表される(B3)成分、一般式(4)で表される(B4)成分および一般式(5)で表される(B5)成分を含有し、(B1)〜(B5)成分の合計が樹脂組成物全体に対して0.1〜5重量%であることを特徴とする電気電子部品封止用樹脂組成物。
一般式(1);
【化1】

(但し、R,R,R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。)
一般式(2);
【化2】

(R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。Rは炭素数5〜10の直鎖または分岐を有するアルキル基である。)
一般式(3);
【化3】

(R,R10は炭素数1〜4の直鎖または分岐を有するアルキル基、nは3および/または4、Xはnが3の場合は3価の有機基、nが4の場合は4価の有機基である。)
一般式(4);
【化4】

(R11,R14、R15はそれぞれ独立に、炭素数1〜3の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。R12,R13はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。R15それぞれ独立に、炭素数1〜3の直鎖または分岐を有するアルキル基である。)
一般式(5);
【化5】

(R16は炭素数1〜4の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。R17は炭素数1〜20の直鎖または分岐を有するアルキル基、または水素である。)
【請求項2】
前記共重合ポリエステルエラストマー(A)が、ポリカーボネート成分、ポリアリキレングリコール成分および/またはポリラクトン成分が合計25〜75重量%共重合されているものであることを特徴とする請求項1に記載の電気電子材料封止材用樹脂組成物。
【請求項3】
前記共重合ポリエステルエラストマー(A)が、テレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸が全酸成分に対して50モル%以上共重合されているものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電気電子材料封止材用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物により封止されている電気電子部品封止体。
【請求項5】
請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物を用いてインサート成型法により電気電子部品を封止する工程を有する電気電子部品封止体の製造方法。

【公開番号】特開2013−112774(P2013−112774A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261789(P2011−261789)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】