説明

電池接片の負極側逆入れ防止構造

【課題】 電池蓋をスライドさせたときに電池が逆入れ状態であっても電池の正極端子が負極側接触子の穴に引っかかることなくスムースに乗り越えることのできる電池接片の負極側逆入れ防止構造の提供。
【解決手段】 負極側接触子2の上端を内側に向けて傾斜させる。電池10が逆に電池室に挿入されてから電池蓋5が閉じられると、電池10の正極11は誤導通防止突起5−1に当接するが、それ以上は進まず負極側接触子2の傾斜によって形成される窪み内に位置するがその傾斜面(外周部2−1から内周部2−2に向かってなす傾斜面)に接触しないし、電池蓋5をスライドさせても電池蓋5に接合されている電池接片1の負極側端子部2の内周縁部2−2は電池10の正極端子12に引っかかることなくスムースに正極端子12を乗り越えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池室の逆入れ防止構造に関し、特に、電池接片の負極側逆入れ防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾電池を用いた電子機器の電池室に係わる電池の逆入れ防止構造が種々提案されている。例えば、図4に示すように、電池接片の負極側接触子9に電池の正極端子12の直径よりも大きな直径の穴を設け、電池が逆さに装填された場合には図示のように電池の正極12がその穴を通ることにより負極側接触子9と電池の正極端子12が接触しないようにする方法があるが、この方法ではプレスで金属板を打ち抜いて電池の正極端子の直径よりも大きな直径穴を開けた電池接片を負極側接触子9として用いるために金属片を打ち抜いたときにできるバリ(円A内の符号6で示す部分参照)のために電池端子が傷ついて錆びたりするといった不具合があった。
【0003】
上記不具合を解消するものとして、例えば、特許文献1には図5に示すように負極側接触子9‘の外径を丸形電池10の負極端子12の直径以下にし、誤挿入時の導通を防ぐためにその内径を丸形電池の正極端子の突部12の直径よりも大きくし、バリにより電池の正極端子12が傷ついてさびたりしないように負極側接触子9’の上面を内側に折り曲げるようにした(円Bの符号6‘で示す部分参照)電池ケースの負極接触端子が開示されている。
【特許文献1】特開2000−100403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電池を収容する電池室の蓋(以下、電池蓋)に上記特許文献1に記載の負極側接触子9‘を有する電池接片を取り付けると電池蓋をスライドさせたときに電池の正極端子12が負極側接触子9’の折り曲げた部分に引っかかるといった課題があった。そこで、引っかかるのを回避するために図6に示すように穴8を大きくした場合には、電池接片の負極側接触子7の穴8の周辺部(円C参照)の穴8の直径方向の厚みが少なくなり、電池接片自体の強度に不安が生じるといった課題があった。更に、電池4本を用いる電子機器の場合、プレス品を共通して使用したくても現在のプレス品形状の場合は電池を一列に並べる電池室構造になるといった課題もあった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、電池蓋をスライドさせたときに電池の正極端子が負極側接触子の穴に引っかかることなくスムースに乗り越えることのできる電池接片の負極側逆入れ防止構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、電池切片の負極側接触子の構造であって、円形突起形状に形成された負極側接触子の先端を内側に向かって下に傾斜させた円形状傾斜面と、該円形上傾斜面の下端の周から形成されるボス穴と、を備えたことを特徴とする電池接片の負極側逆入れ防止構造を提供する。
これにより、電池が逆に挿入されても電池正極が電池正極逃げ形状とボス穴により負極側接触子に接触しない。また、電池逆挿入時電池蓋をスライドさせても負極側接触子の円形状傾斜面は電池正極をスムースに乗り越え、引っかかるようなことがない。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では、電池切片は、正極側接触子と負極側接触子を一体形成してなることを特徴とする請求項1に記載の電池接片の負極側逆入れ防止構造を提供する。
これにより、電池室の構造に拘わらず共通の電池切片として用いることができる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明では、負極側接触子の上端の外径は丸型電池の負極端子の直径より小さく、ボス穴の外径は丸型電池の正極の凸部の直径より小さいことを特徴とする請求項1に記載の電池接片の負極側逆入れ防止構造を提供する。
これにより、ボス穴を小さくしても電池正極が負極側接触子と接触しないようにできることから負極側接触子のボス穴の周辺部の厚みをとれるので、プレス形成等により負極側接触子と正極側接触子を一体形成しても電池接片自体の強度を十分に保つことができる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明では、円形状傾斜面の傾斜は下に向かって略30度であることを特徴とする請求項1に記載の電池接片の負極側逆入れ防止構造を提供する。
これにより、電池逆挿入時に電池蓋を最もスムースにスライドさせることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池切片の負極側接触子の電池逆挿入時の電池正極逃げ形状を内側に向かう円形傾斜面としたことにより、プレス形成等により負極側接触子と正極側接触子を一体形成しても電池接片自体の強度を十分に保つことができ電池室の構造に拘わらず共通の電池切片を用いることができる。また、電池逆挿入時の電池蓋スライドもスムースに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明に基づく負極側逆入れ防止構造を設けた電池接片の一実施例を示す図であり、図1(a)は負極側接触子2および正極側接触子3を設けた電池接片1の正面図、図1(b)は同電池接片1の側断面図、図1(c)はその負極側接触子2の拡大図である。
電池接片1は金属片からなり、例えば単三乾電池のような丸型電池10の負極端子11(図2参照)と接触するように構成され、逆に電池10が挿入された場合は接触しないように構成された負極側接触子2と、電池の正極端子と接触するように構成された正極側接触子3が形成されている。
【0012】
負極側接触子2は電池10の負極端子11の直径より少し小さな直径をなした円形の突起をなし、円形状突起の先端部分は内側に向けて傾斜した傾斜面状をなし、傾斜面に先端がなす円周は電池10の正極端子の直径より少し小さい直径のボス穴4を構成している。このボス穴4には電池装填時に誤って電池10の正極端子12側を負極側接触子2側に向けて装填した場合に電池10の正極12を下方に逃がしても負極側接触子2と接触しないように電池蓋(若しくは電池室)に形成または取り付けられた非伝導性の誤導通防止突起を突出させることができる。
【0013】
上述したように負極側接触子2の先端(外周縁部(凸部の稜部分)2−1から内周縁部2−2(ボス穴4の周縁部)までの間)は図1(b)に示すように内側に向かって低く傾斜するように構成されており、正面からの外観では外周縁部2−1から内周縁部2−2にかけて円形の傾斜面をなしている。また、負極側接触子2の外周縁部2−2の直径は電子機器で使用する丸形電池の正極の直径より大きくなるように負極側接触子2は形成されている。なお、外周縁部2−1から内周縁部2−2の傾斜は図1(c)に示すように30度前後内側に傾けることが望ましい。
【0014】
このように負極側接触子2の先端の形状、つまり、負極側接触子2の電池正極の逃げ形状を円形傾斜面としたことにより、電池を正極端子12が負極側接触子2側に向くように誤って逆に入れた場合に、電池蓋5(図11、図12参照)をスライドさせても電池蓋5に接合されている電池接片1の負極側端子部2の内周縁部2−2は電池10の正極端子12に引っかかることなくスムースに正極端子12を乗り越えることができる。また、傾斜面を設けたことにより、穴4を小さくしても電池10の正極12が負極側接触子2と接触しないようにできることから負極側接触子2の穴4の周辺部の厚みをとれるので、プレス形成しても電池接片自体の強度を十分に保つことができ、プレス形成等により正極側接触端子と一体形成することが可能になった。また、正極側接触端子と負極側端子を一体形成した電池切片は電池室の構造に拘わらず共通の電池接片として使用できる。
【0015】
図2は電池が正しく挿入された場合の電池の負極と電池接片の負極側接触子の状態を示す図であり、電池接片1は合成樹脂等の非伝導性素材からなる電池蓋5に接着等の公知の接合方法によって接合されている。また、電池蓋5は電池を電源とする電子機器に設けられた電池室(図示せず)の開閉蓋であり、電池の装填若しくは取り出し時にスライド機構(図示せず)により開閉される。なお、図示の例では、説明上、電池接片1の負極側のみを示したが、電池接片1には図1に示したように電池の正極と接触するように形成された正極側接触子3が負極側接触子2と所定の距離をおいて形成されている。
【0016】
図2で、電池10が正しく電池室に挿入されてから電池蓋5が閉じられると、電池10の負極11が電池切片1の負極側接触子2の外周部2−1に当接し、正極が正極側接触子3に接触している電池との間が導通する。
符号5−1は電池蓋5に形成されている誤導通防止突起である。誤導通防止突起5−1は、直径がボス穴4の直径より小さく、高さは負極側接触子2の外周部2−1より低いが電池10の正極12の上面が負極側接触子2の内側に傾斜している部分に接触しないだけの高さで、且つ円形の台状に形成されており、電池切片1の負極側接触子2のボス穴4の略中心になるように配置されている。負極側接触子2側の構造をこのように構成することにより、電池10が電池室に正しく挿入された後、電池蓋5を閉めると、電池蓋5の閉鎖による電池蓋の壁部からの圧力若しくは電池の重みにより負極側接触子2の凸部は弾性により内側にやや沈み込むが誤導通防止突起5−1で沈み込みが制限される。
【0017】
図3は電池が逆に挿入された場合の電池の正極と電池接片の負極側接触子の状態を示す図であり、電池10が逆に電池室に挿入されてから電池蓋5が閉じられると、電池10の正極12は誤導通防止突起5−1に当接するが、それ以上は進まず負極側接触子2の傾斜によって形成される窪み内に位置するがその傾斜面(外周部2−1〜内周部2−2のなす傾斜面)に接触しない。従って正極側接触子3に接触している電池との導通は生じない。
また、負極側接触子2に内側に向かう傾斜面を形成したことにより、電池を正極端子12が負極側接触子2側に向くように誤って逆に入れてしまってから電池蓋5をスライドさせても電池蓋5に接合されている電池接片1の負極側端子部2の内周縁部2−2は電池10の正極端子12に引っかかることなくスムースに正極端子12を乗り越えることができる。
【0018】
以上、本発明の実施例について説明したが本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に基づく負極側逆入れ防止構造を設けた電池接片の一実施例を示す図である。
【図2】電池が正しく挿入された場合の電池の負極と電池接片の負極側接触子の状態を示す図である。
【図3】電池が逆に挿入された場合の電池の正極と電池接片の負極側接触子の状態を示す図である。
【図4】負極側逆入れ防止構造の従来例を示す図である。
【図5】負極側逆入れ防止構造の従来例を示す図である。
【図6】負極側接触子の電池正極の逃し穴を大きくした場合の不具合の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 電池接片
2、9、9‘ 負極側接触子
2−1 負極側接触子の外周縁部
2−2 負極側接触子の内周縁部
4 ボス穴
5 電池蓋
5−1 誤導通防止突起
8 電池正極の逃がし穴
10 電池
11 電池の負極
12 電池の正極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池切片の負極側接触子の構造であって、円形突起形状に形成された負極側接触子の先端を内側に向かって下に傾斜させた円形状傾斜面と、該円形上傾斜面の下端の周から形成されるボス穴とを備えたことを特徴とする電池接片の負極側逆入れ防止構造。
【請求項2】
前記電池切片は、正極側接触子と前記負極側接触子を一体形成してなることを特徴とする請求項1に記載の電池接片の負極側逆入れ防止構造。
【請求項3】
前記負極側接触子の上端の外径は丸型電池の負極端子の直径より小さく、前記ボス穴の外径は前記丸型電池の正極の凸部の直径より小さいことを特徴とする請求項1に記載の電池接片の負極側逆入れ防止構造。
【請求項4】
前記円形状傾斜面の傾斜は下に向かって略30度であることを特徴とする請求項1に記載の電池接片の負極側逆入れ防止構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−305359(P2007−305359A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131041(P2006−131041)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(300093467)トーカドエナジー株式会社 (21)
【Fターム(参考)】