説明

電池蓋

【課題】 電池蓋のヒンジ部を金属材料とした場合に電池電極とヒンジ部が接触してもショートしないように構成した電池蓋の提供
【解決手段】 蓋本体10上に金属製のヒンジ3と絶縁表面処理済のヒンジ押さえ4を重ね合わせてビス止めし、更に電池切片11−1、11−2を図示のような配置で蓋本体10に取り付ける。これにより、電池電極とヒンジ部2が接触してもショートを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外付けストロボ等の小型電子機器の電池室の蓋部のショート防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の携帯型電子機器の多くは電池室に収容された電池から供給される電源によって動作している。また、それら電子機器にそれらに外付けして用いる外付けストロボ装置等の外付け装置は本体である電子機器から電源供給を受けるものもあるが、本体側の負荷を回避するために同様に電池等の独立した電源を有し、その電源を用いて作動するものが多い。
【0003】
上述した電子機器や外付け装置の電源部は電池を収容する電池室とその蓋部(以下、電池蓋と記す)からなり、電池蓋は開閉機構(ヒンジ部)を介したユーザの開閉動作により電池室の開口部を開閉する。
【0004】
また、電子機器の電池室には電池電極面と電池の装填方向が平行になるように電池が電池室に収容されるもの(例えば、特許文献1参照)と、電池電極面と電池の装填方向が垂直になるように電池が電池室に収容されるもの(例えば、特許文献2参照)がある。
【0005】
上記特許文献2には、電池電極面と電池の装填方向が垂直な電池収容部(電池室)を備え、電池収容室と電池室の開口部を開閉する電池室を閉状態にするときに、開口側の電池電極面と電池蓋の開口側の面に配置された電池切片とが電気接触する構成が示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−313302号公報
【特許文献2】特開2004−192835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池蓋は多くは合成樹脂等の絶縁体で形成され、その開口側に金属製の電池切片が係止されてなるがデジタルカメラ等の小型電子機器に外付けする外付け電子機器(例えば、ストロボ装置)を小型化しようとすると、強度との関連上、電池蓋の開閉機構である電池蓋のヒンジ部を金属部品にて構成することが必要となる。
【0008】
しかしながら、ヒンジ部を金属製にするとヒンジ部と電池電極が接触して電気的なショートが生ずる可能性があるといった課題がある。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、電池蓋のヒンジ部を金属材料とした場合に電池電極とヒンジ部が接触してもショートしないように構成した電池蓋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、電池の電極面と電池の装填方向が垂直になるように電池が電池室に収容される電池室の開口部を開閉する電池蓋であって、電池蓋の内側面において電池室に収容される電池電極に対応付けて設けられた電池切片と、内側面の電池切片以外の金属面に施された電気的絶縁層と、を備えたことを特徴とする電池蓋を提供する。
これにより、電池蓋の内側面の電池切片以外の金属面に絶縁処理を施したので電池蓋の開閉時に電池蓋のスライド等によって生じえる電池電極と電池蓋の内側面に設けられている金属部分との接触によるショートの発生を防止できる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明では、電池の電極面と電池の装填方向が垂直になるように電池が電池室に収容される電池室の開口部を開閉する電池蓋であって、電池蓋の内側面において電池室に収容される電池電極に対応付けて設けられた電池切片と、内側面の電池切片以外の面に取り付けられた電気的絶縁部と、を備えたことを特徴とする電池蓋を提供する。
これにより、電池蓋の内側面の電池切片以外の面に電気的絶縁処理部を取り付けたので電池電極と池蓋の内側面の金属部分との接触によるショートの発生を防止できる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、電気的絶縁部は電気的絶縁処理済の金属製ヒンジ部からなることを特徴とする請求項2に記載の電池蓋を提供する。
これにより、金属製のヒンジ部に絶縁処理を施したので電池電極と金属製のヒンジ部との接触によるショートの発生を防止できる。また、電池蓋にヒンジ部を取り付けたことにより電池室および電池蓋を備えた電子機器の小型化、軽量化に伴い電池蓋がさらに軽量化しても開閉に伴う力学的作用によって生ずる電池蓋や開閉機構の破損や劣化を防止できる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明では、ヒンジ部は、金属製ヒンジと該金属製ヒンジの上に重ね合わされたヒンジ押さえからなり、ヒンジ押さえの表面には電気的絶縁処理が施されていることを特徴とする請求項3に記載の電池蓋を提供する。
これにより、金属製ヒンジと該金属製ヒンジの上に重ね合わされた電気的絶縁処理済みのヒンジ押さえが電気的絶縁処理部として電池蓋の内側面の電池切片以外の面に取り付けたので、電池電極と金属製のヒンジ押さえとの接触によるショートの発生を防止できる。また、ヒンジの上にヒンジ押さえを重ね合わせてからヒンジと共に電池蓋の内側に取り付けたことにより、電池蓋の内側にヒンジを固定し、電池蓋の開閉に伴う力学的作用によりヒンジがずれたり離脱したり、接合部分が緩むようなことを防止すると共に、電池蓋1の開閉時にヒンジの軸部に集中する力学的作用を平均的に分散させることにより、電池蓋の特定部分への力の集中を防止し電池蓋のひび割れや変形を防止することができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明では、また、請求項3に記載の発明では、電気的絶縁部は電気的絶縁処理済の金属製ヒンジからなることを特徴とする請求項2に記載の電池蓋を提供する。
これにより、金属製ヒンジと該金属製ヒンジの上に重ね合わされた電気的絶縁処理済みのヒンジ押さえが電気的絶縁処理部として電池蓋の内側面の電池切片以外の面に取り付けられているので、電池電極と金属製のヒンジ押さえとの接触によるショートの発生を防止できる。
【0015】
また、請求項6に記載の発明では、電気的絶縁処理は固体皮膜膜潤滑剤の塗布または吹き付けによってなされることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の電池蓋を提供する。
これにより、ヒンジ部の表面に固体皮膜からなる電気的な絶縁層が形成される。ヒンジ部の厚みは電池切片の厚み程度になるが、固体皮膜潤滑剤の塗布または吹き付けによりヒンジ部の表面に形成される皮膜(絶縁層)は潤滑性を有しているので、電池蓋のスライド動作による磨耗を抑制することができる。また、このような固体潤滑剤に電池蓋の内側の他の部分の色彩や電子機器の色彩とは異なる着色を施してからヒンジ或いはヒンジ押さえの表面に塗布または吹き付けするとヒンジ或いはヒンジ押さえの表面が着色されるので、電池蓋を開いたとき、ヒンジ部が電池蓋の内側の他の部分や電子機器の外装とは異なる色彩で映え、デザイン的な見栄えを改善することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属製のヒンジ部に絶縁処理を施したので電池電極とヒンジ部の金属部分との接触によるショートの発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は外付けストロボ等の電子機器の電池室とその電池蓋の一実施例を示す図である。図1で、符号1は電池室100の開口側を開閉する電池蓋であり、蓋を閉めた後、図中手前にスライド可能に保持されている。符号6−1、6−2は電池室100の電池収容室、符号7−1、7−2は電池収容室6−1、6−2に設けられた電池切片、符号8は電池蓋1を閉じた場合に電池蓋1の係止爪とかみ合って電池蓋1をロッする係止部、符号9は電池室100と電池蓋1を係合する係合部であり、電池蓋1は係合部9を中心として回動可能に支持されている。また、符号11−1、11−2は電池蓋1の内側(電池室1の開口側)の電池電極に対応する位置に設けられた電池切片である。なお、図示の例では電池切片は2つとしたが2つに限定されず、電池室に収容される数(または組)に応じて設けられる。
【0018】
電池収容室6−1、6−2の奥側に設けられた電池切片7−1、7−2は弾性を有し十分な接触圧を得ることができる。また、電池切片7−1、7−2は2本の電池の電極のそれぞれに対して独立に存在し、図示しないリード線を介して回路に電源を供給可能に構成されている。
【0019】
電池蓋1の内側は非電導性の部材からなる蓋本体10上に金属製のヒンジ部をヒンジ押さえと共にビス止めした構造を有しており、電池蓋1の内側に設けられた電気切片11−1、11−2は電池収容室6−1、6−2に装填される2本の電池の電極と電気的に接続するためのものであり、電気伝導性のよい金属板でできている。
【0020】
図2は本発明に基づく電池蓋の構造の一実施例を示す図であり、図3はその分解図である。図2、図3で符号10は非電導性の材料(例えば、硬質の合成樹脂)からなる蓋本体部であり、図2、図3ではその内側を示す。また、符号2はヒンジ部であり、金属製のヒンジ3とヒンジ3に重ね合わされた金属製のヒンジ押さえ4からなり、蓋本体10にビス止め等によって接合されている。また、電池切片11−1、11−2はヒンジ部2の一部によって図示のように隔てられている。
【0021】
ヒンジ3は薄い金属製の板部31と板部31と一体として形成された軸部32から構成され、ヒンジ3は軸部32を貫通する軸33によって電池室100の係合部9を中心として回動可能に支持される。また、ヒンジ3上の符号34−1、34−2(図3(b))はビス止め用の穴である。
【0022】
符号4は薄い金属製のヒンジ押さえであり、ヒンジ3の上に重ねてからヒンジ3と共に蓋本体10の内側にビス止めすることにより蓋本体10にヒンジ3を固定し、電池蓋1の開閉に伴う力学的作用により蓋本体10からヒンジ3がずれたり離脱したり、ネジ等による接合部分が緩むようなことを防止すると共に、電池蓋1の開閉時に軸部32に集中する力学的作用を板部31に平均的に分散させることにより、電池蓋1の特定部分への力の集中を防止し電池蓋1のひび割れや変形を防止することができる。なお、ヒンジ押さえ4上の符号41−1〜41−4はビス止め用の穴である。
【0023】
ヒンジ押さえ4の表面には固体皮膜潤滑剤の塗布または吹き付けによる絶縁層45が形成されている(図2および図3(d)の斜線部参照)。固体皮膜潤滑剤としてはオイルやグリス等の潤滑減摩性とコーティング皮膜の保護耐食性を兼備した密着性のもので、塗布または吹き付けにより簡単に表面処理を行えるものを用いることが望ましい。このような固体皮膜潤滑剤としてドライループ(商標名)が知られている。
【0024】
ヒンジ押さえ4の表面に上述したような固体皮膜潤滑剤を塗布または吹き付けすることにより固体皮膜潤滑剤によって形成された固体皮膜は電気的な絶縁層をなす。また、このような固体潤滑剤に電池蓋1の内側の他の部分の色彩や電子機器の色彩とは異なる着色を施してからヒンジ押さえ4の表面に塗布または吹き付けすると、電池蓋1を開いたとき、ヒンジ部2が電池蓋1の内側の他の部分や電子機器の外装とは異なる色彩で映えるのでデザイン的な見栄えを改善することもできる。
【0025】
また、ヒンジ押さえ4の表面45は、蓋本体10の他の部分よりやや高め(電気切片11−1,11−2の高さ程度)になるが、固体皮膜潤滑剤の塗布または吹き付けによりヒンジ押さえ4の表面に形成される皮膜(絶縁層)は潤滑性を有しているので、電池蓋1のスライド動作による磨耗を抑制することができる。
【0026】
図3に示した分解図の蓋本体10(図3(a))上にヒンジ3(図3(b))と絶縁表面処理済のヒンジ押さえ4(図3(c))を重ね合わせてビス止めし、更に電池切片11−1、11−2を図2に示すような配置で蓋本体10に取り付けることにより、本発明の電池蓋1(図1参照)を構成することができる。なお、電池切片11−1とヒンジ部2の境界となる間隙部分、および電池切片11−2ヒンジ部2の境界となる間隙部分にも固体皮膜潤滑剤による絶縁処理を施しておくことが望ましい。
【0027】
このように構成することにより、電池蓋1の内側に設けられた電池切片11−1、11−2はヒンジ部2(つまり、ヒンジ押さえ4)の固体皮膜潤滑剤による絶縁層で隔てられるので、金属製のヒンジ部2(つまり、ヒンジ押さえ4)と電池電極が接触して電気的にショートすることを防止できる。
【0028】
なお、上記実施例ではヒンジ3を蓋本体10に取り付けるためにヒンジ押さえ4を用いたが、ヒンジ押さえ4を用いることなく蓋本体10に板部31が絶縁表面処理済のヒンジ3を接合するようにしてもよい。
【0029】
以上、本発明の実施例について説明したが本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】外付けストロボ等の電子機器の電池室とその電池蓋の一実施例を示す図である。
【図2】本発明に基づく電池蓋の構造の一実施例を示す図である。
【図3】図2に示した電池蓋の分解図である。
【符号の説明】
【0031】
1 電池蓋
2 ヒンジ部
3 ヒンジ
4 ヒンジ押さえ
11−1、11−2 電池切片
31 板部
32 軸部
33 軸
45 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の電極面と電池の装填方向が垂直になるように電池が電池室に収容される電池室の開口部を開閉する電池蓋であって、
前記電池蓋の内側面において前記電池室に収容される電池の電極に対応付けて設けられた電池切片と、前記内側面の電池切片以外の金属面に施された電気的絶縁層と、を備えたことを特徴とする電池蓋。
【請求項2】
電池の電極面と電池の装填方向が垂直になるように電池が電池室に収容される電池室の開口部を開閉する電池蓋であって、
前記電池蓋の内側面において前記電池室に収容される電池の電極に対応付けて設けられた電池切片と、前記内側面の電池切片以外の面に取り付けられた電気的絶縁部と、を備えたことを特徴とする電池蓋。
【請求項3】
前記電気的絶縁部は電気的絶縁処理済の金属製ヒンジ部からなることを特徴とする請求項2に記載の電池蓋。
【請求項4】
前記ヒンジ部は、金属製ヒンジ部と該金属製ヒンジ部の上に重ね合わされたヒンジ押さえからなり、前記ヒンジ押さえの表面には電気的絶縁処理が施されていることを特徴とする請求項3に記載の電池蓋。
【請求項5】
前記電気的絶縁部は電気的絶縁処理済の金属製ヒンジからなることを特徴とする請求項2に記載の電池蓋。
【請求項6】
前記電気的絶縁処理は固体皮膜膜潤滑剤の塗布または吹き付けによってなされることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の電池蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−294162(P2007−294162A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118626(P2006−118626)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(300093467)トーカドエナジー株式会社 (21)
【Fターム(参考)】