説明

電流制御装置及び電流検出装置

【課題】安価且つ単純な回路構成で安定的に動作する電流制御装置及び電流検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電流制御装置50、52は、電流制限部30が電流検出部20、22と負荷12との間に接続されているため、負荷が短絡に近い状態となった場合でも第2のトランジスタ素子Q2のエミッタの電位が著しく低下することはない。よって、電流制御装置50、52は常に安定して動作することができる。また、単純な回路で構成しているため部品点数が少なく、よって低コスト化と省スペース化とを図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流を電圧に変換して検出する電流制御装置及び電流検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、商用電源以外から電力の供給を受けて動作する電子機器が多く商品化されている。これら電子機器に電力を供給する電源は供給電流に制限があるものが存在し、例えばパーソナルコンピュータの分野を中心に広く普及したUSB(Universal Serial Bus)接続では、USB2.0規格もしくはUSB1.1規格における供給電流の上限値は500mAに規定されており、USB3.0規格における供給電流の上限値は900mAに規定されている。
【0003】
従って、このような電源から電力供給を受ける電子機器には、供給電流を検出して定められた上限電流値を超えないよう制御する装置を備えることが好ましい。供給電流を検出する方法の一つとして、供給電流の値を電圧値に変換して行う手法がある。供給電流値を電圧値に変換する回路としては、例えば電源電圧まで入力可能なレール・トウ・レール(Rail to Rail)オペアンプやフルスケールオペアンプ、又は専用の電流検出用ICを用いた回路が挙げられる。
【0004】
しかしながら、比較的高価なレール・トウ・レールオペアンプやフルスケールオペアンプを用いた場合、機器コストが高くなることに加え検出誤差を低減するために入力オフセット電圧を小さくする必要がある。また、比較的安価なレール・トウ・レールオペアンプやフルスケールオペアンプを用いた場合であっても、入力オフセット電圧が1mV〜5mVと大きく検出誤差低減のために調整回路が必要となる。また、専用の電流検出用ICは主に産業用向けのものであり極めて高価であることに加え、出力電圧にオフセット電圧とゲイン誤差が含まれるため検出誤差低減のために何らかの補正処理が必要となる。このように、供給電流値を検出する回路にレール・トウ・レールオペアンプやフルスケールオペアンプ、専用の電流検出用IC等を用いた場合、検出誤差低減のための何らかの措置が必要であったり、それ自体の価格が高かったりして、コストの増大を招くという問題点がある。
【0005】
この問題点に対し、下記[特許文献1]ではカレントミラー回路を用いた比較的部品コストの低い電流検出装置に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−124804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、[特許文献1]に開示されている発明では、図8に示すように供給電流を制御するトランジスタ素子3が電源部2と電流検出装置6との間に接続されている。ここで、電力供給を受ける電子機器が例えばモータ等の場合、その負荷が瞬間的に短絡に近い状態となる。また、モータ以外の機器であっても起動時に負荷が短絡に近い状態となる可能性がある。これに対し[特許文献1]に開示されている発明では、負荷が短絡に近い状態となった場合に電流検出装置6のトランジスタQ2のエミッタの電位が著しく低下し電流検出装置6が正常に動作しない可能性がある。
【0008】
また、[特許文献1]に開示されている発明は電流検出装置6を起動するためのスイッチ手段10を備えている。しかしながら、このスイッチ手段10による起動には1ショットパルス等が必要であること等の理由から、回路構成が複雑となり部品コストの増大やスペースの圧迫を招くという問題点がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、安価且つ単純な回路構成で安定的に動作する電流制御装置及び電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)電源10から負荷12への電源ラインVccに挿入される電流検出抵抗Rs、及び、第1のトランジスタ素子Q1と第2のトランジスタ素子Q2とを有するカレントミラー回路、を備え、前記電流検出抵抗Rsを流れる電流を前記カレントミラー回路によって検出し、前記電流検出抵抗Rsを流れる電流に対応した検出電圧Voutを出力する電流検出部20、22と、
前記検出電圧Voutに応じた制御信号Scを出力する電圧比較部32と、
前記電源ラインVcc上の前記電流検出部20、22と前記負荷12との間に挿入され、前記制御信号Scに応じて前記電源10から前記負荷12へと供給される電流を制限する電流制限部30と、
を有することを特徴とする電流制御装置50、52を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)前記電流制限部30は、電流制限用トランジスタ素子Qaと第1の抵抗素子Raと第2の抵抗素子Rcとを備えており、
前記電流制限用トランジスタ素子Qaのエミッタは前記電流検出部20、22と接続され、前記電流制限用トランジスタ素子Qaのコレクタは前記負荷12と接続され、前記電流制限用トランジスタ素子Qaのベースは前記電圧比較部32と接続され、前記第1の抵抗素子Raの一端は前記電流制限用トランジスタ素子Qaのエミッタと接続され、前記第1の抵抗素子Raの他端は前記電流制限用トランジスタ素子Qaのベースと接続され、前記第2の抵抗素子Rcの一端は前記電流制限用トランジスタ素子Qaのエミッタと接続され、前記第2の抵抗素子Rcの他端は前記電流制限用トランジスタ素子Qaのコレクタと接続されていることを特徴とする上記(1)記載の電流制御装置50、52を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)電源10から負荷12への電源ラインVccに挿入される電流検出抵抗Rs、及び、第1のトランジスタ素子Q1と前記第2のトランジスタ素子Q2とを有する第1のカレントミラー回路、前記第1のトランジスタQaと接続される第3のトランジスタ素子Q3と前記第2のトランジスタQ2と接続される第4のトランジスタ素子Q4とを有する第2のカレントミラー回路、を備えるとともに、前記電流検出抵抗Rsを流れる電流を前記第1のカレントミラー回路及び前記第2のカレントミラー回路によって検出し、前記電流検出抵抗Rsを流れる電流に対応した検出電圧Voutを出力する電流検出部22と、
コンデンサ素子Cと抵抗素子R5とで構成されたCR回路を有するとともに、前記電流検出部22及びグラウンドと接続され、前記電源10から前記負荷12への電流の供給が開始される際に、前記第1のトランジスタ素子Q1及び前記第2のトランジスタ素子Q2のベースに電流を流す起動部34をさらに備えることを特徴とする電流検出装置26を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電流制御装置及び電流検出装置は、安価且つ単純な回路構成で安定的に動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る第1の形態の電流制御装置を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る第1の形態の電流制御装置の一例を示す回路図である。
【図3】本発明に係る第1の形態の電流制御装置の変形例を示す回路図である。
【図4】本発明に係る第1の形態の電流制御装置の変形例を示す回路図である。
【図5】本発明に係る第2の形態の電流制御装置及び電流検出装置を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る第2の形態の電流制御装置及び電流検出装置の一例を示す回路図である。
【図7】本発明に係る第2の形態の電流制御装置及び電流検出装置の変形例を示す回路図である。
【図8】従来の電流検出装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る電流制御装置及び電流検出装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1に示す本実施の第1の形態に係る電流制御装置50は、電源部10から負荷12への電源ライン間に接続される電流検出部20と、電流検出部20から出力される検出電圧Voutに応じて制御信号Scを出力する電圧比較部32と、電流検出部20と負荷12との間の電源ラインに接続され制御信号Scに応じて負荷12への供給電流を制限する電流制限部30と、を有している。なお、負荷12は例えば、アンプ、スピーカ、ディスクドライブ、またはモータ等である。
【0014】
次に、図2に電流制御装置50の1実施例としての電流制御装置50aの回路図を示す。電流制御装置50aの電流検出部20aは、負荷12への電源ラインに挿入される電流検出抵抗Rsを有している。電流検出抵抗Rsとしては高精度で低抵抗なシャント抵抗を用いることが好ましい。
【0015】
電流検出抵抗Rsの両端にはPNP型の第1のトランジスタ素子Q1と第2のトランジスタ素子Q2のエミッタがそれぞれ接続される。特に、第1のトランジスタ素子Q1のエミッタは抵抗素子R1を介して電流検出抵抗Rsの電源部10側の一端に接続される。また、第2のトランジスタ素子Q2のエミッタは、電流検出抵抗Rsの負荷12側の一端に接続される。第1のトランジスタ素子Q1のコレクタは電圧変換用抵抗素子R2を介してGNDに接続され、この第1のトランジスタ素子Q1のコレクタと、電流を電圧に変換するための電圧変換用抵抗素子R2との間の出力端Aの電位が検出電圧Voutとして電圧比較部32に出力される。また、第2のトランジスタ素子Q2のコレクタは抵抗素子R3を介してGNDに接続され、第1のトランジスタ素子Q1のベースと第2のトランジスタ素子Q2のベースとは互いに接続されるとともに、第1のトランジスタ素子Q1のベース及び第2のトランジスタ素子Q2のベースは、ベース電流の経路として第2のトランジスタ素子Q2のコレクタにも接続される。また、第1のトランジスタ素子Q1と第2のトランジスタ素子Q2とは略同一の特性を有する同種のトランジスタ素子が用いられ、これにより第1のトランジスタ素子Q1と第2のトランジスタ素子Q2とがカレントミラー回路を構成する。
【0016】
なお、本実施の形態においては、電源10から負荷12への供給電流が、電源部10が供給可能な上限の電流値である上限電流Imaxであるか否かを検出することを想定している。よって、電源10から負荷12への供給電流が、上限電流値Imaxの際に最も精度良く電流を検出するために、抵抗素子R3の抵抗値は、検出すべき供給電流(ここでは、検出すべき供給電流を電源部10の上限電流値Imaxとする)が流下する時、抵抗素子R1を流下する電流Isの値と第2のトランジスタ素子Q2のコレクタ電流の値とが等しくなるように設計する。
【0017】
具体的には、電源部10の電源電圧をV、上限電流Imax流下時に抵抗素子R1に流れる電流の値をIs’、上限電流Imax流下時の第2のトランジスタ素子Q2のベース・エミッタ間電圧をVbe’、抵抗素子R3の抵抗値をR3として、上限電流Imax流下時の第2のトランジスタ素子Q2のコレクタ電流がIs’と等しいとした場合、以下の式が成立する。
V=Rs・Imax+Vbe’+R3・Is’
よって、R3は
R3=(V−Rs・Imax−Vbe’)/Is’ となる。
そして、抵抗素子R3が上記の条件を満たす場合、上限電流Imaxが流下する時に、第1のトランジスタ素子Q1のベース・エミッタ間電圧と第2のトランジスタ素子Q2のベース・エミッタ間電圧とが等しくなる。即ち、第1のトランジスタ素子Q1のコレクタ電流と第2のトランジスタ素子Q2のコレクタ電流とが略同等となる。これにより、後述するように上限電流Imax近傍で検出電圧Voutから供給電流Ioutを精度良く検出することが可能となる。
【0018】
電圧比較部32は例えば、コンパレータCOMPで構成される。コンパレータCOMPの非反転入力端子は電流検出部20の出力端Aと接続されており、検出電圧Voutが入力する。また、コンパレータCOMPの反転入力端子は基準電圧源と接続されており、基準電圧Vstdが入力する。そして、コンパレータCOMPの出力端は、検出電圧Voutと基準電圧Vstdとの比較結果に応じた制御信号Scを電流制限部30に出力する。
【0019】
電流制御装置50aの電流制限部30は、電流検出部20と負荷12との間に配置されている。具体的には、電流制限部30の電流制限用トランジスタ素子Qaのエミッタは電源ラインの電源部10側(電流検出部20a側)に接続され、電流制限用トランジスタ素子Qaのコレクタは電源ラインの負荷12側に接続されている。また、電流制限部30はバイアス抵抗として動作する抵抗素子Ra(第1の抵抗素子Ra)と抵抗素子Rbとを有している。第1の抵抗素子Raの一端は電流制限用トランジスタ素子Qaのエミッタと接続され、第1の抵抗素子Raの他端は電流制限用トランジスタ素子Qaのベースと接続されている。また、抵抗素子Rbの一端は電流制限用トランジスタ素子Qaのベースと接続され、抵抗素子Rbの他端は電圧比較部32と接続されている。即ち、抵抗素子Rbは電流制限用トランジスタ素子Qaのベースラインに接続される。よって、電流制限用トランジスタ素子Qaのベースは抵抗素子Rbを介して電圧比較部32と接続される。そして、電圧比較部32からの制御信号Scは抵抗素子Rbを介して電流制限用トランジスタ素子Qaのベースに入力する。さらに、電流制限用トランジスタ素子Qaのエミッタ・コレクタ間には、第2の抵抗素子Rcが設置されている。この第2の抵抗素子Rcを設けることで、負荷12への電力供給開始直後等で電流制限用トランジスタ素子Qaが起動前であっても、第2の抵抗素子Rcの経路から負荷12へ電力供給を行うことができる。これにより、負荷12への電力供給の立ち上がりを早くすることができる。
【0020】
また、電流制限部30を電流検出部20よりも負荷12側に配置することで、電流検出抵抗Rsによる電圧低下が大きい場合に生じる、電流検出回路の電源電圧が低下し、回路のダイナミックレンジが狭くなる虞や、負荷短絡に近い大電流が流れた場合に生じる、第2のトランジスタ素子Q2のエミッタ電位が低下し、回路が動作しなくなる虞を回避することができる。
【0021】
次に、電流制御装置50aの動作を説明する。先ず、電源部10が動作し、電力の供給を開始すると、供給電流が流下して電流検出抵抗Rsを介して負荷12に電力が供給される。また、供給電流が流下すると電流検出部20aの第1のトランジスタ素子Q1及び第2のトランジスタ素子Q2にベース電流が流下し、第1のトランジスタ素子Q1及び第2のトランジスタ素子Q2が起動する。ここで、抵抗値Rsの電流検出抵抗Rsに供給電流Ioutが流下したときの電流検出抵抗Rsの電圧降下は
Rs・Iout となる。
また、第1のトランジスタ素子Q1のベース・エミッタ電圧Vbeと及び第2のトランジスタ素子Q2のベース・エミッタ電圧Vbeとが等しいとすると、
Rs・Iout+Vbe=R1・Is+Vbe となる。
よって、
Is=(Rs/R1)・Iout となる。
さらに、第1のトランジスタ素子Q1のベース電流は、エミッタ電流に比べ無視できるほど小さいとし、電圧変換用抵抗素子R2の抵抗値をR2とすると、検出電圧Voutは、
Vout=R2・Is=((Rs・R2)/R1)・Iout となる。
抵抗値Rs、R1、R2は固定値であるから、検出電圧Voutは供給電流Ioutに応じて変化する。よって、検出電圧Voutから供給電流Ioutを検出することができる。例えば、Rs=0.47Ω、R1=470Ω、R2=1kΩ、Vout=0.5Vの場合、供給電流Iout=500mAとなる。また、500mAの供給電流が流下しているときには、電流検出部20aから0.5Vの検出電圧Voutが出力される。
【0022】
尚、電流制御装置50aでは抵抗素子R3を最適化することで、上限電流Imax(検出すべき供給電流)の流下時に第1のトランジスタ素子Q1と第2のトランジスタ素子Q2のベース・エミッタ電圧Vbeを等しくしている。よって、上限電流Imax近傍では第1のトランジスタ素子Q1のコレクタ電流と第2のトランジスタ素子Q2のコレクタ電流とが略同等となる。従って、検出電圧Voutから上限電流値Imaxを精度良く検出することができる。
【0023】
電流検出部20aから出力した検出電圧Voutは、電圧比較部32を構成するコンパレータCOMPの非反転入力端子に入力する。また、コンパレータCOMPの反転入力端子には予め設定された基準電圧Vstdが入力している。ここで、上限電流Imaxが流下するときの検出電圧Voutの値を0.5Vと仮定し、基準電圧Vstdを0.5Vとする。
【0024】
供給電流Ioutが上限電流Imaxに満たず検出電圧Voutが0.5V未満の場合、検出電圧Voutは基準電圧Vstdよりも低くコンパレータCOMPの出力端の電圧は負となる。これにより、電流制限用トランジスタ素子Qaのエミッタ・ベース間の電位差は大きくなってベース電流が高い値で推移する。このベース電流の流下により供給電流Ioutが電流制限用トランジスタ素子Qaを通して負荷12に供給される。尚、検出電圧Voutが基準電圧Vstdよりも低い領域では、負荷12の動作の変動によって供給電流Ioutも変動する。
【0025】
また、供給電流Ioutが上限電流Imaxを超え、検出電圧Voutが0.5V以上となった場合、検出電圧Voutは基準電圧Vstdよりも高くなりコンパレータCOMPの出力端の電圧が正となる。これにより、電流制限用トランジスタ素子Qaのエミッタ・ベース間の電位差が小さくなってベース電流は減少する。このベース電流の減少により、電流制限用トランジスタ素子Qaのコレクタ電流が減少し、結果として供給電流Ioutも減少する。
【0026】
そして、供給電流Ioutが上限電流Imaxを下回ると再度コンパレータCOMPの出力端の電圧は負となり、負荷12の動作に応じ且つ上限電流Imax未満の供給電流Ioutが供給される。この一連の動作により、供給電流Ioutは上限電流値Imax未満に制御される。
【0027】
次に、電流制御装置50aの変形例である電流制御装置50bを図3に示す。電流制御装置50bの電流検出部20bは、第1のトランジスタ素子Q1及び第2のトランジスタ素子Q2のベース電流の経路にベース電流流下用トランジスタ素子Q5を設けたものである。電流制御装置50aでは第1のトランジスタ素子Q1及び第2のトランジスタ素子Q2のベース電流は第2のトランジスタ素子Q2側の抵抗素子R3を介してGNDに流下するが、電流制御装置50bの構成によればベース電流をベース電流流下用トランジスタ素子Q5及び抵抗素子R4を介してGNDに流下することができる。これにより、第1のトランジスタ素子Q1側の回路を流れる電流と第2のトランジスタ素子Q2側の回路を流れる電流との対称性が向上し、さらに高精度に供給電流Ioutの制御を行うことができる。
【0028】
尚、電流制御装置50a、50bは図4の電流制御装置50cに示すように、電流検出部20cが負極側の電流を検出する構成としても良い。尚、図4では電流制御装置50aを負極側に適用した例を示している。
【0029】
次に、本実施の第2の形態に係る電流制御装置52及び電流検出装置26を図5に示す。電流制御装置52は電流制御装置50の構成に加え、電流制御装置52の起動時(電力供給開始時)に電流検出部22を動作させる起動部34を備えている。そして、電流検出部22と起動部34とが本発明に係る電流検出装置26を主に構成する。
【0030】
次に、図6に電流制御装置52の1実施例としての電流制御装置52aの回路図を示す。電流制御装置52aの電流検出部22aは、第1の実施の形態の電流検出部20aの構成に加え、第1のトランジスタ素子Q1のコレクタと電圧変換用抵抗素子R2との間に接続されたNPN型の第3のトランジスタ素子Q3と、第2のトランジスタ素子Q2のコレクタと抵抗素子R3との間に接続されたNPN型の第4のトランジスタ素子Q4と、を有している。そして、第3のトランジスタ素子Q3のエミッタと電圧変換用抵抗素子R2との間の出力端Aの電位が検出電圧Voutとして電圧比較部32に出力する。また、第3のトランジスタ素子Q3のベースと第4のトランジスタ素子Q4のベースとは互いに接続されるとともに、第3のトランジスタ素子Q3のベース及び第4のトランジスタ素子Q4のベースは、ベース電流の経路として第3のトランジスタ素子Q3のコレクタに接続される。第3のトランジスタ素子Q3と第4のトランジスタ素子Q4とは略同一の特性を有する同種のトランジスタ素子が用いられ、これにより第3のトランジスタ素子Q3と第4のトランジスタ素子Q4とは、第2のカレントミラー回路を構成する。尚、電流検出部22aにおいては、電圧変換用抵抗素子R2の抵抗値と抵抗素子R3の抵抗値とは等しい。
【0031】
電流検出部22aでは、第3のトランジスタ素子Q3と第4のトランジスタ素子Q4とが第2のカレントミラー回路を構成しているため、供給電流Ioutの値によらず第1のトランジスタ素子Q1のコレクタ電流と第2のトランジスタ素子Q2コレクタ電流、第3のトランジスタ素子Q3のコレクタ電流と第4のトランジスタ素子Q4コレクタ電流とは等しく、また、第1のトランジスタ素子Q1のコレクタ電流と第3のトランジスタ素子Q3コレクタ電流、第2のトランジスタ素子Q2のコレクタ電流と第4のトランジスタ素子Q4コレクタ電流とは等しくなる。よって、供給電流Ioutの全ての範囲において、第1のトランジスタ素子Q1のベース・エミッタ電圧Vbeと第2のトランジスタ素子Q2のベース・エミッタ電圧Vbeとを等しくすることができる。よって、電流制御装置52aは供給電流Ioutの全ての範囲において、検出電圧Voutから供給電流Ioutを検出することができる。
【0032】
また、電流制御装置52aの起動部34は例えば、一端が第1のトランジスタ素子Q1及び第2のトランジスタ素子Q2のベースに接続された抵抗素子R5と、一端が抵抗素子R5の他端に接続されもう一端がGND(グラウンド)に接続された起動用のコンデンサ素子Cとから構成されるCR回路を有している。
【0033】
電流検出部22aでは起動部34が存在しない場合、起動時において第1のトランジスタ素子Q1と第2のトランジスタ素子Q2のベース電流の経路が遮断されており、特にトランジスタ素子Q1〜Q4の素子特性が完全にバランスが取れた状態にあるとベース電流が全く流下せず電流検出部22aが動作しない虞がある。また、バランスが取れていない状態でもベース電流の流下はトランジスタ素子の特性ばらつきに依存するものであり、電流検出部22aの起動をこのような不安定な要素により行うことは好ましいことではない。このため、電流制御装置52及び電流検出装置26には電流検出部22aを確実に起動させる起動部34を備えている。
【0034】
ここで、起動部34の動作を説明する。電源部10が電力の供給を開始すると電源ラインとコンデンサ素子Cとの間に電位差が生じ、第1のトランジスタ素子Q1及び第2のトランジスタ素子Q2のエミッタからベースを通してコンデンサ素子Cへと起動電流が流下する。この起動電流はベース電流として作用し第1のトランジスタ素子Q1及び第2のトランジスタ素子Q2を起動させる。これにより、電流検出部22aが動作するとともに電流検出装置26及び電流制御装置52が動作する。そして、起動電流の流下によりコンデンサ素子Cが充電すると起動電流は停止する。ただし、電流検出部22aは一度起動すればベース電流は流下し続けるため、電流検出装置26及び電流制御装置52は起動電流が停止しても継続的に動作することができる。尚、電源部10の動作が停止するとコンデンサ素子Cに充電された電荷は放電用ダイオードDを介して速やかに放電される。このように、起動部34を備えることにより、電流検出部22aを確実に起動することができる。また、本実施の形態の起動部34は極めて簡素な構成であるため部品点数が少なく省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【0035】
また、電流検出部22は、図7に示す電流検出部22bを用いても良い。電流制御装置52bの電流検出部22bは、ベースが第1のトランジスタ素子Q1及び第2のトランジスタ素子Q2のベースに接続された第5のトランジスタ素子Q6をさらに備えている。そして、第5のトランジスタ素子Q6のエミッタは抵抗素子R1と同じ抵抗値を有する抵抗素子R1’を介して電流検出抵抗Rsの電源部10側に接続され、コレクタには電圧変換用抵抗素子R2が接続される。また、第5のトランジスタ素子Q6のコレクタと電圧変換用抵抗素子R2との間の出力端Aから検出電圧Voutが出力する。第5のトランジスタ素子Q6は第1のトランジスタ素子Q1及び第2のトランジスタ素子Q2と略同一の特性を有する同種のトランジスタ素子が用いられ、第5のトランジスタ素子Q6と第1のトランジスタ素子Q1とが第2のトランジスタ素子Q2と対をなす第1のカレントミラー回路を構成する。尚、第3のトランジスタ素子Q3のエミッタは抵抗素子R3と同じ抵抗値を有する抵抗素子R3’を介してGNDに接続されている。
【0036】
電流制御装置52bでは第5のトランジスタ素子Q6のコレクタ電流と第1のトランジスタ素子Q1のコレクタ電流とが略同等となるため、電流制御装置52aと同様、全ての供給電流Ioutの範囲において検出電圧Voutから供給電流Ioutを検出することができる。
【0037】
尚、電流制御装置52bに前述の電流検出部20bと同様、ベース電流流下用トランジスタ素子Q5を設ければ、第1、第2のカレントミラー回路の対称性が向上しさらに高精度に供給電流Ioutの制御を行うことができる。
【0038】
以上のように、本実施の形態に係る電流制御装置50、52は、電流制限部30が電流検出部20、22と負荷12との間に接続されているため、負荷が短絡に近い状態となった場合でも第2のトランジスタ素子Q2のエミッタの電位が著しく低下することはない。よって、電流制御装置50、52は常に安定して動作することができる。また、起動部34を極めて単純な回路で構成しているため部品点数が少なく、よって低コスト化と省スペース化とを図ることができる。
【0039】
尚、上記の電流制御装置50、52は一例であるから、各部の構成、動作等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 電源
12 負荷
20、20a〜20c 電流検出部
22、22a、22b 電流検出部
26 電流検出装置
30 電流制限部
32 電圧比較部
34 起動部
50、50a〜50c 電流制御装置
52、52a、52b 電流制御装置
Rs 電流検出抵抗
Ra 第1の抵抗素子
Rc 第2の抵抗素子
Q1 第1のトランジスタ素子
Q2 第2のトランジスタ素子
Q3 第3のトランジスタ素子
Q4 第4のトランジスタ素子
Qa 電流制限用トランジスタ素子
C コンデンサ素子
R5 抵抗素子
Vcc 電源ライン
Vout 検出電圧
Sc 制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から負荷への電源ラインに挿入される電流検出抵抗、及び、第1のトランジスタ素子と第2のトランジスタ素子とを有するカレントミラー回路、を備え、前記電流検出抵抗を流れる電流を前記カレントミラー回路によって検出し、前記電流検出抵抗を流れる電流に対応した検出電圧を出力する電流検出部と、
前記検出電圧に応じた制御信号を出力する電圧比較部と、
前記電源ライン上の前記電流検出部と前記負荷との間に挿入され、前記制御信号に応じて前記電源から前記負荷へと供給される電流を制限する電流制限部と、
を有することを特徴とする電流制御装置。
【請求項2】
前記電流制限部は、電流制限用トランジスタ素子と第1の抵抗素子と第2の抵抗素子とを備えており、
前記電流制限用トランジスタ素子のエミッタは前記電流検出部と接続され、前記電流制限用トランジスタ素子のコレクタは前記負荷と接続され、前記電流制限用トランジスタ素子のベースは前記電圧比較部と接続され、前記第1の抵抗素子の一端は前記電流制限用トランジスタ素子のエミッタと接続され、前記第1の抵抗素子の他端は前記電流制限用トランジスタ素子のベースと接続され、前記第2の抵抗素子の一端は前記電流制限用トランジスタ素子のエミッタと接続され、前記第2の抵抗素子の他端は前記電流制限用トランジスタ素子のコレクタと接続されていることを特徴とする請求項1記載の電流制御装置。
【請求項3】
電源から負荷への電源ラインに挿入される電流検出抵抗、及び、第1のトランジスタ素子と前記第2のトランジスタ素子とを有する第1のカレントミラー回路、前記第1のトランジスタと接続される第3のトランジスタ素子と前記第2のトランジスタと接続される第4のトランジスタ素子とを有する第2のカレントミラー回路、を備えるとともに、前記電流検出抵抗を流れる電流を前記第1のカレントミラー回路及び前記第2のカレントミラー回路によって検出し、前記電流検出抵抗を流れる電流に対応した検出電圧を出力する電流検出部と、
コンデンサ素子と抵抗素子とで構成されたCR回路を有するとともに、前記電流検出部及びグラウンドと接続され、前記電源から前記負荷への電流の供給が開始される際に、前記第1のトランジスタ素子及び前記第2のトランジスタ素子のベースに電流を流す起動部をさらに備えることを特徴とする電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−174787(P2011−174787A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38387(P2010−38387)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】