説明

電源装置及びアーク加工用電源装置

【課題】異なる電圧値の入力電源に対応可能で、そのいずれの低出力時においても出力安定化を図ることができるアーク加工用電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置11は、切替スイッチS1の切り替えに基づく補助スイッチング回路14の動作の切り替えにて200V系及び400V系の入力電源のいずれも対応可能である。そして、出力要求が大の時には、インバータ回路13及びこれに連動する補助スイッチング回路14のスイッチング素子TR1〜TR8に出力する制御パルス信号のオンパルス幅の調整を行うPWM制御が行われ、出力要求が小になると、インバータ回路13の同組内のスイッチング素子TR1〜TR4に出力する対の制御パルス信号の位相差を調整するPSM制御に切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電源等の入力交流電源を直流電圧に変換しその直流電圧から所定の交流電圧に変換するインバータ回路を有し、異なる電圧値の入力電源に対応可能な電源装置及びアーク加工用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アーク加工機等に用いられる電源装置は、例えば特許文献1に示されるように、商用電源(三相交流電源)を整流回路にて整流し平滑コンデンサにて平滑化した直流電圧に変換する直流変換回路と、複数のスイッチング素子(第1〜第4のスイッチング素子)のブリッジ回路で構成される交流変換用のインバータ回路とを備えている。インバータ回路は、所定の組み合わせのスイッチング素子同士が同期してオンオフ制御され、直流変換回路からの直流電圧を所定の高周波交流電圧に変換している。そして、インバータ回路からの所定の高周波交流電圧がアーク溶接やアーク切断等のアーク加工に適した加工用直流電圧に更に変換される。
【0003】
また、この電源装置には、入力する商用電源の電圧値が200V系の仕様のものと400V系の仕様のものとで内部動作を切り替える切替スイッチが備えられている。
具体的には、直流変換回路とインバータ回路との間に補助スイッチング回路が備えられ、該回路は、直流変換回路とインバータ回路前段の電源線間に接続される補助コンデンサとの間において、第5及び第6のスイッチング素子が各電源線上に配置され、第7及び第8のスイッチング素子が各電源線間に直列接続されている。切替スイッチは、直流変換回路の平滑コンデンサ、この場合、電源線間に直列接続される第1及び第2の平滑コンデンサ間の接続点と、第7及び第8のスイッチング素子間の接続点との間に接続され、相互間を導通・遮断に切り替えるものである。
【0004】
そして、200V系入力時には、切替スイッチが先の両接続点間を遮断状態とし、第1及び第2の平滑コンデンサの両端電圧がインバータ回路に供給される。一方、400V系入力時には、切替スイッチが先の両接続点間を導通状態とし、第5〜第8のスイッチング素子の所定組み毎でオンオフ駆動することで、第1又は第2の平滑コンデンサの各端子間電圧が交互にインバータ回路に供給される。つまり、入力電源がいずれの電圧値であっても、インバータ回路には同等の直流電圧が供給されるようになっている。
【0005】
また、補助スイッチング回路では、第5〜第8のスイッチング素子の所定の素子がインバータ回路の第1〜第4のスイッチング素子のオフに先立ってオフするソフトスイッチング制御が行われている。これにより、各スイッチング素子がゼロ電圧・ゼロ電流でスイッチングされ、スイッチング損失の低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−17656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インバータ回路の制御として、一般的なパルス幅変調制御(PWM制御)を用いた場合、電源装置の出力を極めて小さく調整する際には、インバータ回路及びこれに連動する補助スイッチング回路のスイッチング素子に出力される制御パルス信号のオンパルス幅が極めて幅狭に設定される。すると、スイッチング素子がオンできない事象が生じて、出力不安定、偏磁等の問題が生じる虞があった。そのため、PWM制御を用いつつも、電源装置の出力を安定化することが望まれていた。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、異なる電圧値の入力電源に対応可能で、そのいずれの低出力時においても出力安定化を図ることができる電源装置及びアーク加工用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、整流回路及びその出力側の一対の電源線間に直列接続された第1及び第2の平滑コンデンサを有し、入力交流電源を整流・平滑化した直流電圧に変換する直流変換回路と、第1〜第4のスイッチング素子を用いたブリッジ回路で構成され、その第1〜第4のスイッチング素子が所定組み毎でオンオフ駆動して前記各電源線を介して供給された前記直流電圧を所定の交流電圧に変換するインバータ回路と、前記直流変換回路と前記インバータ回路前段の前記各電源線間に接続される補助コンデンサとの間において、第5及び第6のスイッチング素子が前記各電源線上に配置されるとともに第7及び第8のスイッチング素子が前記各電源線間に直列接続され、更に前記第1及び第2の平滑コンデンサ間の接続点と第7及び第8のスイッチング素子間の接続点とを導通・遮断に切り替える切替手段を備えてなり、第1の電圧値の前記入力交流電源の入力時には切替手段が両接続点間を遮断状態として前記第1及び第2の平滑コンデンサの両端電圧を前記インバータ回路に供給する一方、第1の電圧値の倍の第2の電圧値の前記入力交流電源の入力時には切替手段が両接続点間を導通状態として第5〜第8のスイッチング素子の所定組み毎でオンオフ駆動して前記第1又は第2の平滑コンデンサの各端子間電圧を交互に前記インバータ回路に供給し、更に第5〜第8のスイッチング素子の所定の素子が前記第1〜第4のスイッチング素子のオフに先立ってオフして前記インバータ回路側への電圧供給を停止するソフトスイッチング制御が行われる補助スイッチング回路とを備えた電源装置であって、前記インバータ回路のスイッチング素子に出力する制御パルス信号のオンパルス幅を調整するとともに、これに応じて前記補助スイッチング回路のスイッチング素子に出力する制御パルス信号のオンパルス幅を調整するパルス幅変調制御手段と、前記インバータ回路の同組内のスイッチング素子に出力する対をなす制御パルス信号の相互の位相差を調整、若しくは前記インバータ回路のスイッチング素子と前記補助スイッチング回路のスイッチング素子とで対をなす制御パルス信号の相互の位相差を調整する位相シフト制御手段と、出力要求が大の時には前記パルス幅変調制御手段とし、出力要求が小の時には前記位相シフト制御手段に切り替える制御切替手段とを備えたことをその要旨とする。
【0010】
この発明では、切替手段の切り替えに基づく補助スイッチング回路の動作の切り替えにて第1及び第2の電圧値の入力電源のいずれも対応可能であり、出力要求が大の時には、インバータ回路及びこれに連動する補助スイッチング回路のスイッチング素子に出力する制御パルス信号のオンパルス幅の調整を行うパルス幅変調制御(PWM制御)が行われる。出力要求が小になると、インバータ回路の同組内のスイッチング素子に出力する対をなす制御パルス信号の位相差を調整、若しくはインバータ回路のスイッチング素子と補助スイッチング回路のスイッチング素子とで対をなす制御パルス信号の位相差を調整する位相シフト制御(PSM制御)に切り替わる。つまり、低出力要求時にそのままPWM制御を実施すると、インバータ回路及び補助スイッチング回路の各スイッチング素子がオンできない事象が生じ得る。そのため、低出力要求時にはPSM制御に切り替わり、各制御パルス信号のオンパルス幅を確保した状態での位相調整により低出力化が図られる。これにより、低出力要求時においてもインバータ回路及び補助スイッチング回路の各スイッチング素子を確実にオンさせることが可能となるため、安定した出力が得られるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電源装置において、前記制御切替手段は、前記インバータ回路及び前記補助スイッチング回路の各スイッチング素子が十分にオン可能な所定狭パルス幅より大となる前記オンパルス幅に設定されるような出力要求時には前記パルス幅変調制御手段とし、前記オンパルス幅がその所定狭パルス幅より小となり得る出力要求時には前記オンパルス幅をその所定狭パルス幅に固定した状態での前記制御パルス信号の位相調整を行う前記位相シフト制御手段に切り替えることをその要旨とする。
【0012】
この発明では、インバータ回路及び補助スイッチング回路の各スイッチング素子が十分にオン可能な所定狭パルス幅より大となるオンパルス幅に設定される出力要求期間ではPWM制御が実施され、オンパルス幅がその所定狭パルス幅より小となり得る低出力要求期間ではオンパルス幅をその所定狭パルス幅に固定した状態で各制御パルス信号の位相調整を行うPSM制御が実施される。これにより、PWM制御から切り替わる際の所定狭パルス幅を継承してPSM制御に切り替えられることで、インバータ回路及び補助スイッチング回路の各スイッチング素子が確実にオンされることでの出力安定化とともに、制御が切り替わる際の出力安定化が可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電源装置において、前記位相シフト制御手段は、前記インバータ回路の第1〜第4のスイッチング素子のオフに先立つ前記補助スイッチング回路の第5〜第8のスイッチング素子のオフ動作が維持されるように、各制御パルス信号の位相調整を行うことをその要旨とする。
【0014】
この発明では、PSM制御時に制御パルス信号の位相調整が行われても、インバータ回路のスイッチング素子のオフに先立つ補助スイッチング回路のスイッチング素子のオフ動作が維持される。これにより、PSM制御時においてもインバータ回路への電圧供給が停止された後に該回路のスイッチング素子がオフされるソフトスイッチング動作が維持されるため、PSM制御時においてもスイッチング損失の低減が可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源装置において、前記切替手段は、導通・遮断の切り替えが制御可能に構成されるものであって、前記第2の電圧値の前記入力交流電源の入力に基づいて前記切替手段を導通に切り替え、前記第1の電圧値の前記入力交流電源の入力に基づいて前記切替手段を遮断に切り替えるよう制御する切替制御手段を備えたことをその要旨とする。
【0016】
この発明では、切替制御手段の制御により、第2の電圧値の交流電圧入力に基づいて切替手段が導通に切り替えられ、第1の電圧値の交流電圧入力に基づいて切替手段が遮断に切り替えられる。つまり、切替手段の切り替えが切替制御手段の制御により自動で行われ、人による操作を必要としない。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源装置を用い、加工対象物のアーク加工を行うアーク加工用電圧を生成するように構成されているアーク加工用電源装置である。
【0018】
この発明では、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源装置が用いられて構成されるため、上記各請求項の作用効果が得られるアーク加工用電源装置を提供できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、異なる電圧値の入力電源に対応可能で、そのいずれの低出力時においても出力安定化を図ることができる電源装置及びアーク加工用電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態におけるアーク加工用電源装置を示す回路図である。
【図2】400V系入力におけるPWM動作時(出力大時)の制御パルス信号の波形図である。
【図3】同入力におけるPWM−PSM臨界動作時(出力中〜小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図4】同入力におけるPSM動作時(出力極小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図5】200V系入力におけるPWM動作時(出力大時)の制御パルス信号の波形図である。
【図6】同入力におけるPWM−PSM臨界動作時(出力中〜小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図7】同入力におけるPSM動作時(出力極小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図8】別例の400V系入力におけるPSM動作時(出力極小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図9】同別例の200V系入力におけるPSM動作時(出力極小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図10】別例の400V系入力におけるPSM動作時(出力極小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図11】同別例の200V系入力におけるPSM動作時(出力極小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図12】別例の200V系入力におけるPSM動作時(出力極小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図13】別例の400V系入力におけるPSM動作時(出力極小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図14】同別例の200V系入力におけるPSM動作時(出力極小時)の制御パルス信号の波形図である。
【図15】別例の200V系入力におけるPSM動作時(出力極小時)の制御パルス信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態のアーク加工用電源装置11を備えたアーク加工機10を示す。アーク加工機10は、その電源装置11から出力される加工用直流電圧をトーチTHに供給し、そのトーチTHから加工対象物Mに向けてアークを発生させることで、加工対象物Mに対してアーク溶接やアーク切断等のアーク加工を行う装置である。このようなアーク加工機10のアーク加工用電源装置11は、入力された商用電源(三相交流電圧)を直流電圧に変換する直流変換回路12と、その直流電圧を所定の高周波交流電圧に変換するインバータ回路13とを備え、そのインバータ回路13からの高周波交流電圧を変圧器INT及びその二次側回路にて加工用直流電圧に更に変換して出力する。
【0022】
直流変換回路12は、6個のダイオードを用いたブリッジ回路で構成され三相の入力交流電源を全波整流する一次側整流回路DR1と、該整流回路DR1の出力側の電源線L1,L2間に直列に接続され該整流回路DR1の出力電圧を平滑化する第1及び第2の平滑コンデンサC1,C2とを有し、入力交流電源から直流電圧を生成する。この第1及び第2の平滑コンデンサC1,C2は、それぞれ同容量のものが用いられる。また、直流変換回路12には、直流電圧を検出する電圧検出回路IVが電源線L1,L2間に接続されている。電圧検出回路IVは、検出した直流電圧を電圧検出信号Ivとして後述の出力制御回路SCに出力し、電源装置11に入力される交流電源が200V系か400V系かの判定等に用いられる。
【0023】
インバータ回路13は、電源線L1,L2に接続され、4個のIGBTよりなる第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4を用いたブリッジ回路で構成されている。第1及び第3のスイッチング素子TR1,TR3が電源線L1,L2間に直列に接続されるとともに、第2及び第4のスイッチング素子TR2,TR4が電源線L1,L2間に直列に接続され、スイッチング素子TR1のエミッタとスイッチング素子TR3のコレクタとの間が変圧器INTの一次側コイルの一端に、スイッチング素子TR2のエミッタとスイッチング素子TR4のコレクタとの間がその一次側コイルの他端にそれぞれ接続されている。尚、第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4には、それぞれダイオードD1〜D4が逆接続されている。そして、第1及び第4のスイッチング素子TR1,TR4の組みと、第2及び第3のスイッチング素子TR2,TR3の組みとが出力制御回路SCの制御に基づいて交互にオンオフ駆動され、直流変換回路12からの直流電圧を所定の高周波交流電圧に変換して変圧器INTの一次側コイルに供給する。
【0024】
インバータ回路13及び前記直流変換回路12の間には、補助スイッチング回路14及び補助コンデンサC3が備えられている。補助スイッチング回路14は、4個のIGBTよりなる第5〜第8のスイッチング素子TR5〜TR8を備え、第1及び第2の平滑コンデンサC1,C2の後段の電源線L1上に第5のスイッチング素子TR5が、電源線L2上に第6のスイッチング素子TR6がそれぞれ配置されている。第7及び第8のスイッチング素子TR7,TR8は、第5及び第6のスイッチング素子TR5,TR6の後段の電源線L1,L2間に直列に接続されている。尚、第5〜第8のスイッチング素子TR5〜TR8には、それぞれダイオードD5〜D8が逆接続されている。第7及び第8のスイッチング素子TR7,TR8の後段の電源線L1,L2間には、補助コンデンサC3が接続されている。
【0025】
また、第7のスイッチング素子TR7のエミッタと第8のスイッチング素子TR8のコレクタ間の接続点N2と、前記第1及び第2の平滑コンデンサC1,C2間の接続点N1との間には、本実施形態ではリレーよりなる切替スイッチS1が接続されている。そして、切替スイッチS1は、出力制御回路SCの制御に基づき、入力交流電源が200V系と判定された時にはオフされて両接続点N1,N2を遮断し、入力交流電源が400V系と判定された時にはオンされて両接続点N1,N2を導通する。また、第5〜第8のスイッチング素子TR5〜TR8は、出力制御回路SCの制御に基づいてインバータ回路13の第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4のスイッチング損失を低減すべく該スイッチング素子TR1〜TR4と同期させてオンオフ駆動されるとともに、入力交流電源が200V系と400V系とで異なる制御が行われる。
【0026】
変圧器INTの二次側には、2個のダイオードを用いた全波整流の二次整流回路DR2及び直流リアクトルDCLが備えられる。インバータ回路13で生成された高周波交流電圧は、変圧器INTにて電圧調整がなされ、電圧調整された高周波交流電圧は、二次整流回路DR2及び直流リアクトルDCLにてアーク加工用直流電圧に変換される。直流リアクトルDCL側の出力線L3はトーチTHに接続されるとともに、変圧器INTの二次側コイルの中間点から延びる出力線L4は加工対象物Mと接続され、そのアーク加工用電圧の供給に基づきトーチTHから加工対象物Mに向けてアークが生じるようになっている。
【0027】
また、出力線L4上には、実出力電流値を検出する出力電流検出回路IDが接続されている。出力電流検出回路IDは、検出した出力電流値を出力電流検出信号Idとして比較演算回路ERに出力し、該比較演算回路ERでは、その出力電流検出信号Idと、出力電流設定器IRからの出力電流設定信号Irとが比較される。因みに、出力電流設定器IRでは、アーク加工を行う加工対象物Mに応じた出力電流値となるように人の操作等によりその出力電流値の設定がなされ、その設定に応じた出力電流設定信号Irが比較演算回路ERに出力される。比較演算回路ERは、出力電流検出信号Idと出力電流設定信号Irとを比較した比較演算信号Er、即ち出力電流値と設定値との偏差を比較演算信号Erとして出力制御回路SCに出力し、出力制御回路SCでのフィードバック制御に用いられる。
【0028】
出力制御回路SCは、電圧検出回路IVから電圧検出信号Ivの入力に基づいて、直流変換回路12で生成する直流電圧を検出し、この検出に基づいて入力交流電圧が200V系か400V系かを判定している。出力制御回路SCは、400V系入力と判定した場合には切替スイッチS1をオンに切り替え、200V系入力と判定した場合には切替スイッチS1をオフに切り替えて、各入力に応じた図2〜4及び図5〜7のタイミング波形(制御パルス信号)に従ってインバータ回路13及び補助スイッチング回路14を制御する。因みに、入力交流電源投入前では、切替スイッチS1は400V系入力に対応可能にオン状態とされている。
【0029】
また、出力制御回路SCは、出力電流検出信号Idと出力電流設定信号Irとを比較した比較演算信号Erに基づいて出力電流値と設定値との偏差を算出しているが、その偏差を考慮した出力要求が大〜小の範囲となる大〜小出力要求時には、インバータ回路13のスイッチング制御をパルス幅変調制御(PWM制御)とする。一方、極小出力要求時には、出力制御回路SCは、インバータ回路13のスイッチング制御をPWM制御から位相シフト制御(PSM制御)に切り替える。尚、出力制御回路SCは、補助スイッチング回路14をインバータ回路13と連動動作させるべく、補助スイッチング回路14のスイッチング制御をインバータ回路13の制御態様に合わせて実施する。
【0030】
[400V系入力の場合]
400V系入力の場合では、切替スイッチS1がオン状態に切り替えられ、第1及び第2の平滑コンデンサC1,C2間の接続点N1と第7及び第8のスイッチング素子TR7,TR8間の接続点N2とが導通状態とされる。この場合の制御対象としては、インバータ回路13及び補助スイッチング回路14の第1〜第8のスイッチング素子TR1〜TR8の全部であり、これらは図2〜4のタイミング波形図に示される制御パルス信号にて制御される。
【0031】
<PWM制御>
大〜小出力要求時には、図2及び図3に示すような制御パルス信号を用いたPWM制御が実施される。インバータ回路13においては、第1及び第4のスイッチング素子TR1,TR4の組みと第2及び第3のスイッチング素子TR2,TR3の組みとが交互にオンオフ動作するように、同組それぞれで同時に立ち上がり、同時に立ち下がるオンパルスを有する制御パルス信号が生成される。出力要求が大の場合は、制御パルス信号のオンパルス幅Wmが広くされ、出力要求が小さくなるに連れてオンパルス幅Wmが次第に狭く設定される。つまり、大〜小出力要求に応じて、オンパルス幅Wmが図2の最大幅Wmxから図3の最小幅Wm0の間で調整される。
【0032】
補助スイッチング回路14においては、第5及び第8のスイッチング素子TR5,TR8がインバータ回路13の第1及び第4のスイッチング素子TR1,TR4と同組で、また第6及び第7のスイッチング素子TR6,TR7がインバータ回路13の第2及び第3のスイッチング素子TR2,TR3と同組で動作するような制御パルス信号の生成が行われる。第5及び第8のスイッチング素子TR5,TR8に出力する制御パルス信号は、第1及び第4のスイッチング素子TR1,TR4に出力する制御パルス信号と同時に立ち上がり、立ち下がりは所定時間t1前に立ち下がるオンパルスを有する。第6及び第7のスイッチング素子TR6,TR7についても同様に、その制御パルス信号は第2及び第3のスイッチング素子TR2,TR3に出力する制御パルス信号と同時に立ち上がり、立ち下がりは所定時間t1前に立ち下がるオンパルスを有する。つまり、第5〜第8のスイッチング素子TR5〜TR8は、対応する第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4と同時にオンされるが、スイッチング素子TR1〜TR4のオフに先立って所定時間t1前にオフされる。所定時間t1は、後述の補助コンデンサC3の放電が十分に行われる時間に設定され、十分な放電後にスイッチング素子TR1〜TR4がオフするソフトスイッチング動作を行うようになっている。
【0033】
第5及び第8のスイッチング素子TR5,TR8のオン期間は、第1の平滑コンデンサC1の端子間電圧、即ち400V系の入力交流電圧を直流化した直流電圧の半分の電圧(200V系入力時の直流電圧と同等の電圧)がインバータ回路13に供給される。第5及び第8のスイッチング素子TR5,TR8がオフして暫くは、後段の補助コンデンサC3が放電するまでの端子間電圧がインバータ回路13に供給される。第6及び第7のスイッチング素子TR6,TR7のオン期間も同様に、第2の平滑コンデンサC2の端子間電圧(第1の平滑コンデンサC1と同電圧)がインバータ回路13に供給される。第6及び第7のスイッチング素子TR6,TR7がオフして暫くは、後段の補助コンデンサC3が放電するまでの端子間電圧がインバータ回路13に供給される。そのため、インバータ回路13では、第1及び第4のスイッチング素子TR1,TR4のオン期間中に主として第1の平滑コンデンサC1の端子間電圧が変圧器INTの一次側コイルに印加され、第2及び第3のスイッチング素子TR2,TR3のオン期間中に主として第2の平滑コンデンサC2の端子間電圧が変圧器INTの一次側コイルに逆方向に印加される。
【0034】
また、第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4のオフに際して、対応する第5〜第8のスイッチング素子TR5〜TR8が先にオフして直流変換回路12からの直流電圧の供給が絶たれた上に、補助コンデンサC3の放電が十分に行われる所定時間t1後にオフされることから、そのオフ時のスイッチング損失は低減される。また、先にオフする第5〜第8のスイッチング素子TR5〜TR8についても、対応する前段の平滑コンデンサC1,C2と後段の補助コンデンサC3とが同等の端子間電圧となる状態でオフされることから、スイッチング素子TR5〜TR8のオフ時のスイッチング損失も低減される。また、第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4及び第5〜第8のスイッチング素子TR5〜TR8のオン時については、変圧器INTの一次側コイルの漏れインダクタンス等の関係から、これらのオン時のスイッチング損失も低減される。
【0035】
このようなPWM制御では、上記したように、出力要求が大から中、中から小へと変化するのに伴って、インバータ回路13のスイッチング素子TR1〜TR4及び補助スイッチング回路14のスイッチング素子TR5〜TR8に出力する各制御パルス信号のオンパルス幅Wm,Wsは次第に幅狭に設定されていく。そして、オンパルス幅Wmが最小幅Wm0よりも幅狭に設定され得る極小出力要求時には、このPWM制御からPSM制御に移行する。
【0036】
尚、オンパルス幅Wsはオンパルス幅Wmに追従するため、オンパルス幅Wmのみの設定幅を監視すれば足りる。また後述するが、200V系入力時のオンパルス幅Wmはこの400V系入力時と同様に変化するものの、オンパルス幅Wsは大きく変化する。そういう意味でも、オンパルス幅Wmの設定幅を監視することで、200V、400V系入力のいずれであっても、同一のパルス幅判定で制御を切り替えることが可能である。
【0037】
<PSM制御>
極小出力要求時には、図4に示すような制御パルス信号を用いたPSM制御が実施される。このPSM制御では、インバータ回路13及び補助スイッチング回路14の各スイッチング素子TR1〜TR8に出力する制御パルス信号のオンパルス幅Wm,Wsを最小幅Wm0,Ws0に固定した状態で、同組の制御パルス信号の位相調整が行われる。本実施形態では、インバータ回路13の第1のスイッチング素子TR1と第3のスイッチング素子TR3とを基準相とし、第4のスイッチング素子TR4と第2のスイッチング素子TR2とがその基準相に対して遅れ側に位相をシフトする制御相に割り当てられている。補助スイッチング回路14の第5〜第8のスイッチング素子TR5〜TR8についての位相調整は行わない。
【0038】
制御相の第4のスイッチング素子TR4と第2のスイッチング素子TR2の制御パルス信号は、同組の基準相の第1のスイッチング素子TR1と第3のスイッチング素子TR3の制御パルス信号に対して位相差αが設定されるが、この位相差αは、極小出力要求の中でも一層出力要求が小さくなるに連れて、その値が大きくなる。つまり、出力要求が小さくなるに連れて、第1及び第4のスイッチング素子TR1,TR4と第2及び第3のスイッチング素子TR2,TR3との同組の中でオン期間が大きくずらされて、後段の変圧器INTの一次側コイルへの電圧印加時間が一層絞られるようになっている。このようにして、電源装置11の出力が極めて小さくされつつも、各スイッチング素子TR1〜TR8が確実にオンでき、出力安定化、偏磁等の問題の解消が図られている。
【0039】
また、制御相の第4のスイッチング素子TR4と第2のスイッチング素子TR2の制御パルス信号は遅れ側に位相がシフトされることから、スイッチング素子TR4,TR2のオフが補助スイッチング回路14の対応するスイッチング素子TR5〜TR8の後にオフされることが維持されている。これにより、PSM制御により位相が変化するスイッチング素子TR4,TR2のスイッチング損失の低減効果が維持される。
【0040】
更に、このPSM制御では、スイッチング素子TR1〜TR8が十分にオン可能な最小幅Wm0,Ws0でのオンパルス幅Wm,Wsにて位相シフトが行われることから、変圧器INTの一次側での無用な還流電流の発生が低減され、電源装置11の省電力化に寄与できるものとなっている。
【0041】
[200V系入力の場合]
200V系入力の場合では、切替スイッチS1がオフ状態に切り替えられ、第1及び第2の平滑コンデンサC1,C2間の接続点N1と第7及び第8のスイッチング素子TR7,TR8間の接続点N2とが遮断状態とされる。この場合の制御対象としては、インバータ回路13の第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4、及び補助スイッチング回路14の第5及び第6のスイッチング素子TR5,TR6であり、これらは図5〜7のタイミング波形図に示される制御パルス信号にて制御される。尚、200V系入力の場合では、第7及び第8のスイッチング素子TR7,TR8はオフ状態に維持される。
【0042】
<PWM制御>
大〜小出力要求時には、図5及び図6に示すような制御パルス信号を用いたPWM制御が実施される。インバータ回路13の動作については400V系入力時と同様であり、スイッチング素子TR1〜TR4に出力する制御パルス信号は同様である。
【0043】
補助スイッチング回路14においては、第7及び第8のスイッチング素子TR7,TR8はオフ状態に維持される。第5及び第6のスイッチング素子TR5,TR6に出力する制御パルス信号は、対応する第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4の制御パルス信号の立ち下がりより所定時間t1前に立ち下がることの変更はないものの、立ち上がりが変更される。第5のスイッチング素子TR5に出力する制御パルス信号の立ち上がりは、第2及び第3のスイッチング素子TR2,TR3に出力する制御パルス信号の直前のオンパルスの立ち上がりと同時に設定され、第6のスイッチング素子TR6に出力する制御パルス信号の立ち上がりは、第1及び第4のスイッチング素子TR1,TR4に出力する制御パルス信号の直前のオンパルスの立ち上がりと同時に設定される。
【0044】
これにより、第5及び第6のスイッチング素子TR5,TR6がともにオンする期間に、インバータ回路13に対して、第1及び第2の平滑コンデンサC1,C2の両端電圧、即ち直流変換回路12からの直流電圧が供給される。つまり、この200V系入力、若しくは先の400V系入力のいずれであっても、インバータ回路13には同じ直流電圧が供給されるようになっている。
【0045】
尚、第5及び第6のスイッチング素子TR5,TR6をインバータ回路13のスイッチング素子TR1〜TR4に先立ってオフとするソフトスイッチング制御を行う際、第1及び第2の平滑コンデンサC1,C2間の接続点N1と第7及び第8のスイッチング素子TR7,TR8間の接続点N2とが切替スイッチS1にて遮断状態とされるため、第1及び第2の平滑コンデンサC1,C2間の接続点N1の電圧がダイオードD7,D8を介してインバータ回路13に供給されることが防止され、この200V系入力時においてもソフトスイッチング制御によるスイッチング損失の低減効果が得られるようになっている。
【0046】
そして、200V系入力におけるPWM制御では、出力要求が大から中、中から小へと変化するのに伴って、インバータ回路13のスイッチング素子TR1〜TR4及び補助スイッチング回路14のスイッチング素子TR5〜TR8に出力する各制御パルス信号のオンパルス幅Wm,Wsは次第に幅狭に設定されていく。オンパルス幅Wmが最小幅Wm0よりも幅狭に設定され得る極小出力要求時には、このPWM制御からPSM制御に移行する。
【0047】
尚、この200V系入力時においては、インバータ回路13側のオンパルス幅Wmが最小幅Wm0となっても、補助スイッチング回路14側のオンパルス幅Wsの最小幅Ws0は十分幅広である。
【0048】
<PSM制御>
極小出力要求時には、図7に示すような制御パルス信号を用いたPSM制御が実施される。200V系入力時のPSM制御は、400V系入力時と同様な動作であり、制御相の第4のスイッチング素子TR4と第2のスイッチング素子TR2とが遅れ側に位相シフトされ、後段の変圧器INTの一次側コイルへの電圧印加時間を一層絞るように動作する。尚、上記したが、400V系入力時においてより幅狭に設定される補助スイッチング回路14側のオンパルス幅Wsが、この200V系入力時においては十分幅広に設定されることから、電源装置11の出力が極めて小さくされても、各スイッチング素子TR1〜TR8のオンは確実となっている。
【0049】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)電源装置11は、切替スイッチS1の切り替えに基づく補助スイッチング回路14の動作の切り替えにて200V系(第1の電圧値)及び400V系(第2の電圧値)の入力電源のいずれも対応可能である。出力要求が大の時には、インバータ回路13及びこれに連動する補助スイッチング回路14のスイッチング素子TR1〜TR8に出力する制御パルス信号のオンパルス幅Wm,Wsの調整を行うPWM制御が行われる。出力要求が小になると、インバータ回路13の同組内のスイッチング素子TR1〜TR4に出力する対をなす制御パルス信号の位相差αを調整するPSM制御に切り替わる。つまり、低出力要求時にそのままPWM制御を実施すると、インバータ回路13及び補助スイッチング回路14の各スイッチング素子TR1〜TR8がオンできない事象が生じ得る。そのため、低出力要求時にはPSM制御に切り替わり、各制御パルス信号のオンパルス幅Wm,Wsを確保した状態、本実施形態ではオン可能な最小幅Wm0,Ws0に固定した状態での位相調整により低出力化が図られる。これにより、200V系及び400V系の入力電源のいずれの低出力要求時においてもインバータ回路13及び補助スイッチング回路14の各スイッチング素子TR1〜TR8を確実にオンさせることが可能となるため、安定した出力を得ることができる。
【0050】
(2)オンパルス幅Wm,Wsが最小幅Wm0,Ws0を境にPWM制御からPSM制御に切り替えられ、PSM制御時ではスイッチング素子TR1〜TR8が十分にオン可能なその最小幅Wm0,Ws0に固定した状態で各制御パルス信号の位相調整が行われる。これにより、PWM制御から切り替わる際の最小幅Wm0,Ws0を継承してPSM制御に切り替えられることで、インバータ回路13及び補助スイッチング回路14の各スイッチング素子TR1〜TR8が確実にオンされることでの出力安定化とともに、制御が切り替わる際の出力安定化を図ることができる。
【0051】
(3)PSM制御時に制御パルス信号の位相調整が行われても、インバータ回路13のスイッチング素子TR1〜TR4のオフに先立つ補助スイッチング回路14のスイッチング素子TR5〜TR8のオフ動作が維持される。これにより、PSM制御時においてもインバータ回路13への電圧供給が停止された後に該回路13のスイッチング素子TR1〜TR4がオフされるソフトスイッチング動作が維持されるため、PSM制御時においてもスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0052】
(4)出力制御回路SCの制御により、400V系入力の判定に基づいて切替スイッチS1が導通に切り替えられ、200V系入力の判定に基づいて切替スイッチS1が遮断に切り替えられる。つまり、切替スイッチS1の切り替えが出力制御回路SCの制御により自動で行われるため、人による操作を必要としない。
【0053】
(5)PSM制御時において、スイッチング素子TR1,TR3がオフしてからスイッチング素子TR4,TR2がオフするまでの期間(スイッチング素子TR4,TR2のみがオンする期間)が長くなると、一次側で無用な還流電流が生じ得る。しかしながら本実施形態では、PSM制御時のスイッチング素子TR4,TR2のオンパルス幅Wmが最小幅Wm0に設定されることから、無用な還流電流の発生を防止でき、還流電流発生時の導通損低減による省電力化を図ることができる。また、本実施形態のようなアーク加工用電源装置11では、低出力時に大きな出力電流が生じ得るために先の還流電流が生じる時間が長くなりがちであるが、本実施形態ではその還流電流を効果的に低減可能なため、本実施形態のようなアーク加工用電源装置11に適用する意義は大きい。
【0054】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4の内で組をなすもの同士、同じ制御パルス信号としたが、同組一方の制御パルス信号を常に最大幅Wmxとしてもよい。図8において400V系入力時のPSM制御時の波形、図9において200V系入力時のPSM制御時の波形を示すように、例えば基準相の第1及び第3のスイッチング素子TR1,TR3の制御パルス信号のオンパルス幅WmをこのPSM制御時及び図示略のPWM制御時においても常に最大幅Wmxに固定する。これに対し、制御相の第4及び第2のスイッチング素子TR4,TR2の制御パルス信号については、PWM制御時にオンパルス幅Wmの変更、PSM制御時に遅れ側(位相差α)への位相シフトを行うようにしてもよい。この場合、スイッチング素子TR1〜TR4のオフに先立つスイッチング素子TR5〜TR8のオフ動作が維持されるため、ソフトスイッチング動作は維持される。尚、位相シフトは進み側であってもよい。また、制御相と基準相のスイッチング素子TR1〜TR4を入れ替えてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、PSM制御時に位相シフトする対象(制御相)をインバータ回路13の第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4の同組一方としたが、補助スイッチング回路14のスイッチング素子TR5〜TR8、例えばスイッチング素子TR5,TR6を位相シフトする対象としてもよい。図10において400V系入力時のPSM制御時の波形、図11において200V系入力時のPSM制御時の波形を示すように、例えばスイッチング素子TR1〜TR4の制御パルス信号を固定とし、スイッチング素子TR5,TR6の制御パルス信号の進み側(位相差α)への位相シフトを行うようにしてもよい。この場合も、スイッチング素子TR1〜TR4のオフに先立つスイッチング素子TR5〜TR8のオフ動作が維持されるため、ソフトスイッチング動作は維持される。尚、図12にて200V系入力時のPSM制御時の波形のみ示すが、スイッチング素子TR5,TR6の制御パルス信号の位相シフトは遅れ側であってもよい。また、400V系入力時にスイッチング素子TR7,TR8を位相シフトさせてもよく、スイッチング素子TR5〜TR8の全てを位相シフトの対象としてもよい。
【0056】
また、PSM制御時に位相シフトする対象(制御相)をインバータ回路13の第1〜第4のスイッチング素子TR1〜TR4の同組一方としていたものを、スイッチング素子TR1〜TR4の全てを位相シフトする対象としてもよい。図13において400V系入力時のPSM制御時の波形、図14において200V系入力時のPSM制御時の波形を示すように、例えばスイッチング素子TR1〜TR4の制御パルス信号の遅れ側(位相差α)への位相シフトを行うようにしてもよい。この場合も、スイッチング素子TR1〜TR4のオフに先立つスイッチング素子TR5〜TR8のオフ動作が維持されるため、ソフトスイッチング動作は維持される。尚、図15にて200V系入力時のPSM制御時の波形のみ示すが、スイッチング素子TR1〜TR4の制御パルス信号の位相シフトは進み側であってもよい。また、400V系入力時にスイッチング素子TR1〜TR4と同期させてスイッチング素子TR7,TR8又はスイッチング素子TR5,TR6のいずれかを位相シフトさせてもよい。
【0057】
更に、インバータ回路13及び補助スイッチング回路14のPWM制御及びPSM制御の態様は上記の様々な態様を組み合わせてもよく、また仕様として制御の態様を予め決定するのみならず、制御中に制御の態様を適宜変更させてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、PWM制御からPSM制御への切り替え判定に用いる所定狭パルス幅を最小幅Wm0,Ws0に設定したが、スイッチング素子TR1〜TR8がオン可能な最小幅Wm0,Ws0よりも若干幅広に設定してもよい。またパルス幅以外で、例えば電源装置11の出力実値や出力設定値に基づいて制御を切り替えるようにしてもよい。
【0059】
・上記実施形態の電源装置11の構成を適宜変更してもよい。例えば、スイッチング素子TR1〜TR8をIGBTにて構成したが、MOSトランジスタ、サイリスタ等、IGBT以外のスイッチング素子を用いてもよい。
【0060】
また、切替スイッチS1をリレーにて構成したが、半導体スイッチ等、リレー以外のスイッチを用いてもよい。またこの場合、本実施形態のように自動で切り替えるスイッチとしたが、手動で切り替えるスイッチでもよい。
【0061】
また、整流回路DR2、直流リアクトルDCLを用いて出力変換回路を構成したが、負荷に応じて適宜変更してもよい。
また、交流電源を入力する仕様であって直流変換回路12を用いたが、直流電源を入力する仕様であれば直流変換回路12を省略、若しくは電圧変換回路等に置き換えてもよい。
【0062】
・上記実施形態の電源装置11はアーク加工用電源装置であったが、その他の電源装置に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0063】
(イ) 第1〜第4のスイッチング素子を用いたブリッジ回路で構成され、その第1〜第4のスイッチング素子が所定組み毎でオンオフ駆動して一対の電源線を介して供給された直流電圧を所定の交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記各電源線間に直列接続された第1及び第2の平滑コンデンサと前記インバータ回路前段の前記各電源線間に接続される補助コンデンサとの間において、第5及び第6のスイッチング素子が前記各電源線上に配置されるとともに第7及び第8のスイッチング素子が前記各電源線間に直列接続され、更に前記第1及び第2の平滑コンデンサ間の接続点と第7及び第8のスイッチング素子間の接続点とを導通・遮断に切り替える切替手段を備えてなり、第1の電圧値の前記入力交流電源の入力時には切替手段が両接続点間を遮断状態として前記第1及び第2の平滑コンデンサの両端電圧を前記インバータ回路に供給する一方、第1の電圧値の倍の第2の電圧値の前記入力交流電源の入力時には切替手段が両接続点間を導通状態として第5〜第8のスイッチング素子の所定組み毎でオンオフ駆動して前記第1又は第2の平滑コンデンサの各端子間電圧を交互に前記インバータ回路に供給し、更に第5〜第8のスイッチング素子の所定の素子が前記第1〜第4のスイッチング素子のオフに先立ってオフして前記インバータ回路側への電圧供給を停止するソフトスイッチング制御が行われる補助スイッチング回路と
を備えた電源装置であって、
前記インバータ回路のスイッチング素子に出力する制御パルス信号のオンパルス幅を調整するとともに、これに応じて前記補助スイッチング回路のスイッチング素子に出力する制御パルス信号のオンパルス幅を調整するパルス幅変調制御手段と、
前記インバータ回路の同組内のスイッチング素子に出力する対をなす制御パルス信号の相互の位相差を調整、若しくは前記インバータ回路のスイッチング素子と前記補助スイッチング回路のスイッチング素子とで対をなす制御パルス信号の相互の位相差を調整する位相シフト制御手段と、
出力要求が大の時には前記パルス幅変調制御手段とし、出力要求が小の時には前記位相シフト制御手段に切り替える制御切替手段と
を備えたことを特徴とする電源装置。
【0064】
このように構成すれば、請求項1の発明と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0065】
11 アーク加工用電源装置(電源装置)
12 直流変換回路
13 インバータ回路
14 補助スイッチング回路
C1,C2 第1,第2の平滑コンデンサ
C3 補助コンデンサ
DR1 一次側整流回路(整流回路)
L1,L2 電源線
M 加工対象物
N1,N2 接続点
S1 切替スイッチ(切替手段)
SC 出力制御回路(パルス幅変調制御手段、位相シフト制御手段、制御切替手段、切替制御手段)
TR1〜TR4 第1〜第4のスイッチング素子(インバータ回路)
TR5〜TR8 第5〜第8のスイッチング素子(補助スイッチング回路)
Wm,Ws オンパルス幅
Wm0,Ws0 最小幅(所定狭パルス幅)
α 位相差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流回路及びその出力側の一対の電源線間に直列接続された第1及び第2の平滑コンデンサを有し、入力交流電源を整流・平滑化した直流電圧に変換する直流変換回路と、
第1〜第4のスイッチング素子を用いたブリッジ回路で構成され、その第1〜第4のスイッチング素子が所定組み毎でオンオフ駆動して前記各電源線を介して供給された前記直流電圧を所定の交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記直流変換回路と前記インバータ回路前段の前記各電源線間に接続される補助コンデンサとの間において、第5及び第6のスイッチング素子が前記各電源線上に配置されるとともに第7及び第8のスイッチング素子が前記各電源線間に直列接続され、更に前記第1及び第2の平滑コンデンサ間の接続点と第7及び第8のスイッチング素子間の接続点とを導通・遮断に切り替える切替手段を備えてなり、第1の電圧値の前記入力交流電源の入力時には切替手段が両接続点間を遮断状態として前記第1及び第2の平滑コンデンサの両端電圧を前記インバータ回路に供給する一方、第1の電圧値の倍の第2の電圧値の前記入力交流電源の入力時には切替手段が両接続点間を導通状態として第5〜第8のスイッチング素子の所定組み毎でオンオフ駆動して前記第1又は第2の平滑コンデンサの各端子間電圧を交互に前記インバータ回路に供給し、更に第5〜第8のスイッチング素子の所定の素子が前記第1〜第4のスイッチング素子のオフに先立ってオフして前記インバータ回路側への電圧供給を停止するソフトスイッチング制御が行われる補助スイッチング回路と
を備えた電源装置であって、
前記インバータ回路のスイッチング素子に出力する制御パルス信号のオンパルス幅を調整するとともに、これに応じて前記補助スイッチング回路のスイッチング素子に出力する制御パルス信号のオンパルス幅を調整するパルス幅変調制御手段と、
前記インバータ回路の同組内のスイッチング素子に出力する対をなす制御パルス信号の相互の位相差を調整、若しくは前記インバータ回路のスイッチング素子と前記補助スイッチング回路のスイッチング素子とで対をなす制御パルス信号の相互の位相差を調整する位相シフト制御手段と、
出力要求が大の時には前記パルス幅変調制御手段とし、出力要求が小の時には前記位相シフト制御手段に切り替える制御切替手段と
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記制御切替手段は、前記インバータ回路及び前記補助スイッチング回路の各スイッチング素子が十分にオン可能な所定狭パルス幅より大となる前記オンパルス幅に設定されるような出力要求時には前記パルス幅変調制御手段とし、前記オンパルス幅がその所定狭パルス幅より小となり得る出力要求時には前記オンパルス幅をその所定狭パルス幅に固定した状態での前記制御パルス信号の位相調整を行う前記位相シフト制御手段に切り替えることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置において、
前記位相シフト制御手段は、前記インバータ回路の第1〜第4のスイッチング素子のオフに先立つ前記補助スイッチング回路の第5〜第8のスイッチング素子のオフ動作が維持されるように、各制御パルス信号の位相調整を行うことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源装置において、
前記切替手段は、導通・遮断の切り替えが制御可能に構成されるものであって、
前記第2の電圧値の前記入力交流電源の入力に基づいて前記切替手段を導通に切り替え、前記第1の電圧値の前記入力交流電源の入力に基づいて前記切替手段を遮断に切り替えるよう制御する切替制御手段を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源装置を用い、加工対象物のアーク加工を行うアーク加工用電圧を生成するように構成されていることを特徴とするアーク加工用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−110857(P2013−110857A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254099(P2011−254099)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】