説明

電源装置

【課題】ケースが電子部品に接触することなく、がたつきなく安定に回路基板に固定でき、長期信頼性の高い電源装置を提供する。
【解決手段】電子部品12をあらかじめ搭載した回路基板14と、回路基板14を収納する箱状のケース16を備える。ケース16は、少なくとも一対の互いに対向する側板20,22を備え、各側板20,22にはケース16の天板18から所定間隔離れた位置に各々開口部26を備える。開口部26は少なくとも一方の側板20,22には複数形成されて各開口部26が同一平面上に位置する。各開口部26には側板20,22と一体に係止片30が延出し、回路基板14の互いに対向する端面38,40には、側板20,22の各開口部26と係合する位置に突起42を有する。突起42は、側板20,22の開口部26にケース内側から挿通され、開口部26内で係止片30とそれに対向する内周面とに挟持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回路基板とそれに搭載された電子部品を覆ったケースを備えた小型の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品があらかじめ実装された電源回路基板にシールド用のケースを取り付ける構造としては、例えば図5に示すような構造があった。電源装置50は、回路基板52とケース56とを備えている。回路基板52は、例えばガラスエポキシ材やセラミック材からなる四角形状のプリント配線板であって、電子部品54が搭載され、プリント基板とのインターフェイス用の図示しない入出力端子を備えている。ケース56は、金属板をプレス加工した箱状のケースであって、一つの天板とその両側に直角に位置した側板とを有するいわゆるコの字に形成されている。ケース56の側板端部には、基板受部58a,58bがケース内側に向けて屈設され、その基板受部58a,58bには、後述する切欠き60a,60bと面取り62a,62bが形成されている。
【0003】
回路基板52をケース56に取り付けるときは、回路基板52の一端を切欠き60aに係合させ、その他端を面取り62bに当接し、押し込ませる。これにより、ケース56は、自身が有する弾性と上記押し込み力によってその側板が外側に広がって回路基板12が切欠き60bに収納され、それと同時にケース56の側板に加わる力は解除され、側板はもとの位置に復帰する。このようにして回路基板56の両端が切欠き60a,60bに係止され、取付作業が完了する。
【0004】
また、特許文献1には、シールドケースの側壁に、打ち抜き加工で係止片を形成し、回路基板をケース内側に挿入した後、その係止片を内側に折り曲げて回路基板をケースに固定する方法が開示されている。
【特許文献1】実開平7−7192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の電源装置50の取付構造にあっては、導電性を有する基板受部58が回路基板52の内側に迫り出すため、電子部品54や回路基板52の配線パターンに近接し、所定の絶縁距離を確保できない問題があり、製品外形の小型化を阻害する要因となっていた。また、回路基板52の基材厚みのばらつきを考慮して切欠き60a,60bの幅dを大きめに設定すると、回路基板52が高さ方向にがたつきが生じるため、接着剤で固定する等の別の作業が必要であった。逆に、回路基板52を切欠きに圧入して固定するように切欠きの幅dを小さめに設定すると、回路基板52に想定できない捻れ等の機械的な力が加わり、回路基板内の電子部品やその実装はんだの長期信頼性を低下させるおそれがあった。
【0006】
また、特許文献1に開示された方法にあっては、回路基板の内側に迫り出す導電性の係止片は所定の絶縁距離を確保するための妨げとなるものであった。また、ケース側壁の係止片を折り曲げて回路基板を固定するかしめ構造であるため、そのかしめによる力によって回路基板内の電子部品やの実装はんだに想定できない捻れ等の機械的ストレスを与えるおそれがあった。さらに、係止片をかしめるためのプレス機などの設備が別途必要になる等の問題があった。
【0007】
この発明は上記背景技術の問題点に鑑みて成されたもので、ケースが電子部品に接触することなく、がたつきなく安定に回路基板に固定でき、長期信頼性の高い電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、電子部品をあらかじめ搭載した回路基板と、前記回路基板を収納する箱状のケースを備えた電源装置であって、前記ケースは、少なくとも一対の互いに対向する側板を備え、前記各側板には前記ケースの天板から所定間隔離れた位置に各々開口部が設けられ、この開口部は少なくとも一方の側板には複数形成されて各開口部が同一平面上に位置し、各開口部には前記側板と一体に係止片が延出し、前記回路基板の互いに対向する端面には、前記ケース側板の各開口部と係合する位置に突起が各々形成され、前記回路基板の突起は、前記ケース側板の開口部にケース内側から挿通され、前記開口部内で前記係止片とそれに対向する内周面とに挟持され、前記係止片が有する弾性力によって前記ケースと前記回路基板が互いに位置決めされる電源装置である。
【0009】
前記ケース側板の開口部は、前記回路基板の突起の厚さ方向断面形状よりも僅かに大きく形成され、各開口には、前記ケースの天板側から反対方向に延びた係止片が形成され、前記回路基板に形成された突起の幅は、前記係止片の同方向の幅よりも長いものである。
【0010】
前記係止片により前記突起を前記回路基板面方向に押す力は、前記一対の側板により前記回路基板端面を挟持する力よりも弱いものである。
【0011】
前記回路基板の突起の位置は、前記回路基板面の対角線の交点を中心として点対称に設けられ、前記ケース側板の各係止片の位置は、前記ケース天板の対角線の交点を中心として点対称に設けられているものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の電源装置によれば、回路基板を保持するケース部分は回路基板の内側に迫り出す形態ではないため、そのケース部分と回路基板に搭載された電子部品等とのクリアランスが小さくならず、接触しにくい。また、ケースが導電性の金属板であっても、電子部品や回路パターンとの絶縁距離が短くならず、所定の絶縁性が確保することができ、結果、製品外形の小型化が可能である。さらに、回路基板は、係止片が有する弾性の復元力によってケースの所定位置に挟持され、がたつきなく固定されるため、簡単に正確に位置決めされ、接着剤で固定する等の別の作業やその他特別な設備は不要である。また、ケースの位置固定においてプレス機によるカシメ等が無く、回路基板には、ケースの係止片が有する弾性によって、例えばケースの内側及び下方への一定の方向に力が加わる構造であるため、回路基板には想定外の捻れ等の機械的力が加わることがなく、回路基板内の電子部品やその実装はんだの長期信頼性を低下させるおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の電源装置10は、いわゆるプリント基板に電子部品12をあらかじめ搭載した回路基板14と、回路基板14の電子部品12が搭載された表面14aを覆う箱状のケース16が設けられている。
【0014】
ケース16は、金属製のシールドケースであり、薄い金属板を打ち抜いてプレス成形されている。ケース16には、回路基板14とほぼ同じ大きさの天板18が設けられ、回路基板14を覆っている。天板18は一方向に長い四角形であり、天板18の一対の長辺には、それぞれ側板20,22が連続して設けられている。側板20,22は、天板18と連接している幅方向は天板18と同じ長さであり、連設方向の長さは互いに等しく天板18よりも短い。側板20,22は、天板18に対して天板18の長辺でほぼ直角に折り曲げられて断面がコの字形になっている。
【0015】
側板20には、別部材の実装用プリント基板に接続可能な面実装端子24が一体に設けられている。側板20の、端縁部20aに近い部分には、面実装端子24を挟んで両側2箇所に、各々開口部26が設けられている。開口部26は、図3に示すように、端縁部20aに対して平行な方向に長幅の四角形であり、開口部26の、端縁部20aと反対側の上辺部分26aには、上辺部分26aの中心部から開口部26の天板18方向へ連続する幅狭の一対のスリット26cが所定間隔で形成されている。また、開口部26の、端縁部20aに近い辺は、下辺部分26bとなる。
【0016】
開口部26の上辺部分26aに形成された一対のスリット26c間は、その上端部28から開口部26の中心へ向かう舌片状の係止片30として設けられている。係止片30は、四角形状に形成され、上端縁部28と反対側の先端部30aは、開口部26の長幅の四角形の中央付近に達している。係止片30は、側板20から開口部26を打ち抜くときに切り残されて形成されている。
【0017】
側板20の反対側の側板22にも同様に、一対の開口部26が設けられている。開口部26には係止片30が各々設けられている。側板20と側板22では、一対の開口部26が、後述する回路基板14の突起の位置に合わせて、端縁部20a,22aに沿って設けられている。
【0018】
ケース16の天板18の、一対の短辺には、それぞれ側板32,34が連続して設けられている。側板32,34は、天板18に連接している幅方向は天板18と同じ長さであり、連設方向の長さは互いに等しく、側板20,22よりも少し短い。側板32,34は、天板18に対して天板18の短辺でほぼ直角に折り曲げられて断面がコの字形になっている。側板32,34の、天板18と反対側の端縁部32a,34aには、端縁部32a,34aの中心に、矩形の切欠部36が形成されている。
【0019】
ケース16が取り付けられる回路基板14は、図4に示すように、長方形であり、回路基板14の一対の長辺である端面38,40には、突起42がそれぞれ2箇所に設けられている。突起42は、回路基板14の端面38,40を切断する際に切り残されて形成され、端面38,40を下底とする台形状に形成されている。突起42の端面38,40からの突出長さは、ケース16の側板20,22が各々回路基板14の端面38,40に接した状態で、開口部26から先端部が僅かに突出する程度である。さらに、突起42の端面38,40に対して平行な長さは、ケース16の開口部26の内側に僅かなゆとりを有して嵌合可能な長さであり、係止片30を形成するスリット26c間の幅よりも広く形成されている。突起42は、ケース16が回路基板14に取り付けられたときに、ケース16の開口部26に嵌合する。端面38,40には、互いに反対側に位置した一対の突起42の位置が、各端面38,40で互いに非対称な位置に設けられている。
に沿う方向に、各々異なっている。
【0020】
また、回路基板14の厚みは、ケース16の開口部26の内側に嵌合可能なものである。回路基板14の突起42が開口部26に嵌合されたとき、回路基板14の表面14aが、係止片30の先端部30aよりも上に位置するものである。このとき表面14aの裏面14bは、開口部26の下辺部分26bに当接する。また回路基板14の両短辺側には、回路基板14の裏面14bから延出した複数の面実装端子44が各々突出している。
【0021】
次に、この電源装置10の組立方法について説明する。先ず、箱状のケース16の内側に、電子部品12が搭載された回路基板14を、表面14aがケース16の内側となるように入れる。このとき、開口部26と突起42が互いに対向するように回路基板14とケース16の向きを揃えてセットする。この実施形態では、ケース16の側板20側に回路基板14の端面38が、側板22側に端面40が対向するように方向を決定する。次に、側板20,22のいずれか一方の開口部26に、回路基板14の突起42を差し込み、側板20,22を弾性変形させて僅かに外側に広げながら、回路基板14の他方の突起42を開口部26に入れる。突起42が開口部26に嵌合されると、係止片30が突起42により外側に僅かに押されて広がり、弾性的に突起42の表面14a側の角部に当接し、回路基板14は開口部26の下辺部分26bに押し付けられる。これにより、回路基板14はケース16に、がたつき無く係止される。
【0022】
ここで、係止片30が弾性変形して外側に湾曲した状態で、回路基板14を面方向に押す力は、側板20,22が外側に弾性変形しない程度の大きさである。即ち、係止片30が突起42を押す力よりも、側板20,22が回路基板14の両端面38,40を挟持する力が大きいように設定されている。
【0023】
電源装置10が組み立てられた後、面実装端子24,44により、所定回路パターンが形成され電子部品が搭載された実装用のプリント基板に装着される。
【0024】
この実施形態のケース取付構造10によれば、ケース16の一部が回路基板14の内側に迫り出す形態ではないため、ケース16と回路基板14に搭載された電子部品12等とのクリアランスが小さくならず、互いに接触しにくい。また、ケース16が導電性の金属板であっても、電子部品12や回路パターンとの絶縁距離が短くならず、所定の絶縁性が確保することができ、結果、製品外形の小型化が可能である。また、回路基板14には、ケース16の係止片30が有する弾性の復元力によって、所定の強さの力がケース16の内側及び下方へ向かって加わる構造であるため、回路基板14はケース16に対して所定の位置に正確に固定される。さらに、位置固定に際してプレス機等によるカシメ動作が無く、回路基板14に機械的力が加わることがなく、回路基板14内の電子部品12やその実装はんだの長期信頼性を低下させるおそれがない。さらに、回路基板14は、係止片30による弾性力によってケース16の所定位置に挟持され、がたつきなく固定されるため、接着剤で固定する等の別の作業やその他特別な設備は不要である。
【0025】
なお、この発明のケース取付構造は、上記実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。開口部や突起の形状や数は自由に変更可能である。また、開口部と突起の位置を、ケースの天板または回路基板の、対角線の交点を基準に点対称に形成すると、ケースと回路基板の向きが逆でも組み立てることができるものとなる。回路基板の突起の形状は、台形以外に長方形や円弧状の突起でもよく、突出した角部や、回路基板の端面との角部に面取りが設けられてもよい。係止片のバネの強さは、係止片の形状や大きさによって変更可能であり、側板がハの字に開かない程度の強さとする。ケースの素材はその目的に合わせて自由に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態の電源装置の斜視図である。
【図2】図1のA面断面図である。
【図3】この実施形態の開口部の正面図(a)と(a)のB−B断面図(b)である。
【図4】この実施形態の回路基板の上面図である。
【図5】従来の技術の電源装置の正面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 電源装置
12 電子部品
14 回路基板
16 ケース
18 天板
20,22,32,34 側板
26 開口部
30 係止片
38,40 端面
42 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品をあらかじめ搭載した回路基板と、前記回路基板を収納する箱状のケースを備えた電源装置において、前記ケースは、少なくとも一対の互いに対向する側板を備え、前記各側板には前記ケースの天板から所定間隔離れた位置に各々開口部が設けられ、この開口部は少なくとも一方の側板には複数形成されて各開口部が同一平面上に位置し、各開口部には前記側板と一体に係止片が延出し、前記回路基板の互いに対向する端面には、前記ケース側板の各開口部と係合する位置に突起が各々形成され、前記回路基板の突起は、前記ケース側板の開口部にケース内側から挿通され、前記開口部内で前記係止片とそれに対向する内周面とに挟持され、前記係止片が有する弾性力によって前記ケースと前記回路基板が互いに位置決めされることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記ケース側板の開口部は、前記回路基板の突起の厚さ方向断面形状よりも僅かに大きく形成され、各開口には、前記ケースの天板側から反対方向に延びた舌片状の係止片が形成され、前記回路基板に形成された突起の幅は、前記係止片の同方向の幅よりも長いことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記舌片により前記突起を前記回路基板面方向に押す力は、前記一対の側板により前記回路基板端面を挟持する力よりも弱いことを特徴とする請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記回路基板の突起の位置は、前記回路基板面の対角線の交点を中心として点対称に設けられ、前記ケース側板の各係止片の位置は、前記ケース天板の対角線の交点を中心として点対称に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電源装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−49160(P2009−49160A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213439(P2007−213439)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】