説明

電源装置

【課題】回路基板の広い領域に電子部品を配置することができ、電子部品の熱を逃がす放熱板の放熱効率が調整自在なオンボード型の電源装置を提供する。
【解決手段】電子部品が搭載された回路基板24を備える。回路基板24の裏面24a側に立設されたオンボード型の入出力端子26を有する。表面26b側が相手方の放熱用構造物と当接する取付面であり、取付用のネジ孔48が厚み方向に貫通形成された放熱板28を備える。ネジ孔48の一方の開口端を塞ぐ閉鎖部54と、回路基板24の端部に側方から係合可能な係合部56とを有した樹脂構造体30を備える。樹脂構造体30は、ネジ孔48の一方の開口端を閉鎖部54により塞いで、放熱板28の裏面側に固定される。回路基板24の端部に係合部56が係合して回路基板24を放熱板28側に対面させて保持する。放熱板28は、絶縁物を介して放熱対象の電子部品に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユーザ側の装置等に組み込まれる基板に実装されるオンボード型の電源装置に関し、特に、内部の電子部品を放熱するための放熱板を備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電源装置内部の電子部品のうち、発熱の大きい複数の電子部品を一括放熱する一枚の放熱板が設けられたオンボード型の電源装置がある。例えば、図8(a)に示す電源装置10は、図示しない電子部品が搭載された矩形の回路基板12と、回路基板12の裏面12a側に立設され、ユーザ装置の基板ボードの基材である実装用基板のスルーホールに挿入されて接続される入出力端子14と、回路基板12の表面12b側に対面し特定の電子部品の熱を逃がす放熱板16とを備えている。放熱板16は、回路基板12とほぼ同外形の金属板であり、裏面16aが放熱用シール材18を介して放熱対象の電子部品に接触し、回路基板12とほぼ平行に対面した状態で固定されている。電源装置10は、放熱板16の表面16bを空冷して使用することができる。
【0003】
この種の電源装置は、特定の電子部品の温度上昇により出力可能な電力が制限される。従って、放熱板16からの放熱効率を高め、放熱板16の温度を一定以下に抑えることによって、電源装置10からより大きな電力を取り出すことが可能になる。
【0004】
例えば、電源装置10をユーザ側の装置に組み込んだとき、放熱板16をその装置の大きな金属筺体の内面に固定したり、その装置が有する水冷システムを利用した冷却ヘッド面に放熱板16を固定したりすることによって、放熱効率を高めることができる。また、複数のフィンを有したヒートシンクを放熱板16に取り付ける場合もある。そこで、電源装置10の放熱板16は、表面16bが相手方の放熱用構造物の平坦面に密着可能なように平坦に形成され、四隅にネジ止め可能に貫通したネジ孔20が設けられている。
【0005】
また、特許文献1に開示されているスイッチング電源装置は、電子部品が実装された回路基板(プリント基板)と、回路基板の裏面側に立設されたオンボード型の入出力端子と、回路基板の表面側に対面する放熱板と、放熱板のやや内側の四隅に貫通固定され裏面側に突設された固定用ロッドと、各固定用ロッドの先端部が嵌合する圧入孔が形成されたプラスチック製の固定部材とを備えている。放熱板は、回路基板に設けた貫通孔に固定用ロッドが挿通されて水平方向の位置決めがされ、裏面側が絶縁シートを介して回路基板の表面に当接している。そして、固定用ロッドの先端部が固定部材の圧入孔に嵌合することによって、放熱板と固定部材との間に回路基板を挟持し、一体化している。回路基板に実装された電子部品は、放熱板の裏面側の凹部内に収容され、凹部内に充填された放熱用の樹脂を介して凹部の内面に接触している。また、固定用ロッドの内側に、ヒートシンク等を固定するためのネジ孔が設けられている。
【0006】
また、特許文献2に開示されている薄型DC−DCコンバータは、電子部品が実装された回路基板と、回路基板の裏面側に立設されたオンボード型の入出力端子(ピン)と、外向きに突出する複数のフィンを有したヒートシンク(放熱器)と、各構成部材を保持する固定部材とを備えている。ヒートシンクは、放熱用のシール剤等によって回路基板の電子部品が実装されていない表面側に接着固定されている。固定部材は上面が開口した略矩形の箱体であり、底面の端部から下向きに立設された爪部と底面との間でインダクタンス素子を保持し、側面上端部の内側に形成した支持部と側面上端部から上向きに立設された爪部との間に、回路基板及びヒートシンクを挿入して保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−244959号公報
【特許文献2】特開平7−288213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8(a)に示す従来の電源装置の場合、放熱板12を回路基板に対して位置決めする機構がないので、組み立てる際、回路基板12に塗布した放熱用シール材18が硬化するまでの間、何らかの治具等を用いて放熱板12を位置決めして保持しなければならず、手間が掛かる。また、ユーザ装置の筺体等に放熱板16をネジ締めする際、作業者が誤って規格より長いネジを使用すると、金属製のネジ部の先端が回路基板の導電部に近接又は接触し、所定の絶縁が確保できなくなり危険である。また、放熱板16をユーザ装置の筺体等にネジ締めする際、ネジ孔20内のネジ溝が削られ、金属屑が発生して回路基板上に付着することもあり得る。
【0009】
これらの問題を回避するため、例えば、図8(b)に示すように、ネジ孔20の裏面側にも放熱用シール材28を塗布し、回路基板12側の開口端を塞ぐという方法が考えられる。しかし、放熱用シール材28の塗布量が多すぎるとネジ孔20内に深く侵入しネジが入らなくなり、反対に塗布量が少なすぎるとネジ孔20の開口端を確実にふさぐことができなくなるので、放熱用シール材の粘度や塗布量の管理を厳格に行わなければならず現実的ではない。
【0010】
また、特許文献1のスイッチング電源装置の場合、回路基板に固定用ロッドを挿通するために複数の貫通孔が設けなければならず、電源装置内部の電子部品を実装したり配線パターンを設けることが可能なスペースが非常に狭くなるという問題がある。固定用ロッドは、内側にネジ孔が設けられる程に太いので、回路基板の貫通孔の径も大きくなる。また、固定用ロッドが金属であれば、固定用ロッドと電子部品等との間に一定の絶縁距離を確保する必要がある。さらに、このスイッチング電源装置は、放熱板の下端部を回路板の表面に当接させる構造のため、放熱板と電子部品等との間にも一定の絶縁距離を確保しなければならない。従って、電源回路を構成する電子部品の数や形状、配線パターンのレイアウト等について、電源装置を設計する上で非常に大きな制約を受けることになる。
【0011】
特許文献2のDC−DCコンバータの場合、回路基板に直接ヒートシンクが接着固定されているので、ヒートシンクを取り外したり、フィン形状の異なるヒートシンクに交換したり、ユーザ装置の筺体等に固定したりして放熱効率を調整する、ということができないという問題がある。例えば、DC−DCコンバータが環境温度の低い場所で使用されたり、出力電力を小さく抑えて使用されたりする場合、図8(a)の放熱板16のようにフィンのない構造であっても十分に放熱が可能であるが、既に取り付けられているヒートシンクに大きなフィンが付いていると、DC−DCコンバータがユーザ装置内の広い空間を無駄に占有してしまうことになる。反対に、既に取り付けられているヒートシンクの放熱効率では電子部品を十分に放熱することができない場合、フィンの数が多いヒートシンクに交換したり、水冷システムの冷却ヘッド面に熱を逃がしたりする等の方法が使えないので、ヒートシンクの温度が高くなってしまい、DC−DCコンバータから必要な出力電力を取り出すことができなくなる。
【0012】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、回路基板の広い領域に電子部品を配置することができ、電子部品の熱を逃がす放熱板の放熱効率が調整自在なオンボード型の電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、電子部品が搭載された回路基板と、前記回路基板の裏面側に立設され実装用基板に接続される入出力端子と、表面側が相手方の放熱用構造物と当接する取付面であり、前記放熱用構造物に取り付けるためのネジ孔が厚み方向に貫通形成された金属製の放熱板と、前記ネジ孔の一方の開口端を塞ぐ閉鎖部と前記回路基板の端部に側方から係合可能な係合部とを有した樹脂構造体とを備え、前記樹脂構造体は、前記ネジ孔の一方の開口端を前記閉鎖部により塞いで前記放熱板の裏面側に固定されるとともに、前記回路基板の端部に前記係合部が係合して前記回路基板を前記放熱板側に対面させて保持し、前記放熱板は、絶縁物を介して放熱対象の前記電子部品に接触する電源装置である。
【0014】
前記放熱板は、放熱対象の複数の前記電子部品に接触する裏面側が、当該各電子部品の高さに合わせて凹凸状に形成されていることが好ましい。また、前記絶縁物は、塗布後に硬化した放熱用シール材、又は弾力性のある放熱用シートであってもよい。
【0015】
また、矩形外形の前記回路基板の互いに平行な一対の端縁部に、内向きに切り欠いた一対の係合受部が複数組設けられ、前記一対の係合受部に対向する前記樹脂構造体の所定位置には、一対の爪状の前記係合部が立設され、前記一対の係合部が、対応する前記一対の係合受部に個々に係合して、前記回路基板を保持している。
【0016】
前記樹脂構造体は、前記閉鎖部と前記閉鎖部の端部から立設された一組の前記一対の係合部とが一体に成形されて成り、複数の前記樹脂構造体が個々に前記放熱板に固定され、前記一対の係合部が、対応する前記回路基板の前記一対の係合受部に個々に係合している。
【0017】
また、前記樹脂構造体は、前記閉鎖部と、放熱対象の前記電子部品に対応する領域が開口した平板部と、前記平板部の端部から厚み方向に立設された前記係合部とが一体に成形されて成り、前記平板部が前記放熱板に固定され、前記一対の係合部が対応する前記回路基板の前記一対の係合受部に個々に係合しているものでもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明の電源装置は、放熱板と一体の樹脂構造体に設けた係合部が回路基板の端部に側方から係合し、放熱板が固定される構造なので、回路基板に対する放熱板の位置決めが容易である。しかも、回路基板の内側に位置決め用の大きい貫通孔等を設ける必要がなく、回路基板の広い領域に電子部品を配置することができる。また、矩形外形の回路基板において、回路基板の端部に僅かに内向きに切欠いた係合受部を設けることによって、電源装置の外形を小さくし、かつ放熱板の位置決めの精度を向上させることができる。
【0019】
また、放熱板と電子部品の接触を仲介する絶縁物として放熱用シール材等を用いることによって、当該接触部分がしっかりと熱結合し、良好な熱伝導性を安定的に得ることができる。
【0020】
さらに、放熱板にネジ孔が設けられ、ヒートシンク等の様々な放熱用構造物を容易にネジ固定することができるので、放熱板の放熱効率を自在に調整することができる。このとき、ネジ孔の回路基板側の開口端が樹脂構造体で閉鎖されているので、ネジ先端部と電子部品との絶縁が確実に保たれる。また、ネジ締めするときにネジ孔内のネジ溝が削れて金属屑が発生したとしても、回路基板に付着する心配がなく安全である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態である電源装置を示す平面図(a)、正面図(b)、底面図(c)である。
【図2】この実施形態の電源装置を使用される樹脂構造体を示す斜視図である。
【図3】この実施形態の電源装置の右側面図(a)、A−A断面図(b)である。
【図4】この実施形態の電源装置をユーザ側の装置の筺体に取り付けた様子を示す断面図である。
【図5】この実施形態の電源装置にヒートシンクを取り付けた様子を示す断面図である。
【図6】この発明の樹脂構造体の変形例を示す斜視図である。
【図7】この発明の樹脂構造体の他の変形例を示す部分断面図(a)、筐体に取り付けた状態の部分断面図(b)である。
【図8】従来の電源装置の外観を示す斜視図(a)、ネジ孔の部分を拡大した断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の一実施形態について、図1〜図5に基づいて説明する。この実施形態の電源装置22は、図1に示すように、複数の電子部品が実装された回路基板24と、回路基板24の裏面24a側に立設された複数の入出力端子26と、回路基板24の表面24bとほぼ平行に対面する放熱板28とを備え、放熱板28は、樹脂構造体30を介して回路基板24に位置決めされ固定されている。
【0023】
回路基板24は、略長方形の外形を有し、複数の配線パターン層を有する多層基板である。表面24aには、パワートランジスタ32、コンデンサ34等が搭載され、裏面24bには、小型インダクタ36、抵抗38、コンデンサ34等が搭載されている。その他のパワートランス40、パワーインダクタ42及び信号トランス44は、それぞれ回路基板24の図示しない配線パターンで形成されたコイルと、そのコイルの周囲を囲って閉磁路を形成するコアとで構成され、回路基板24の表面24b側に、コア上部40a,42a,44aが各々突出している。これらの電子部品のうち、電源装置22を運転したとき電力損失が大きく発熱しやすい部品は、パワートランジスタ30、パワートランス40及びパワーインダクタ42であり、この3つは、放熱板28に接触して放熱できるように、外形の一部が回路基板24の表面24b側に露出するように配置されている。
【0024】
回路基板24の長辺側の一対の端部の両端2箇所に、それぞれ僅かに内向きに切り欠いた一対の係合受部46−1,46−2が設けられている。一対の係合受部46−1は、後述する樹脂構造体30−1の係合部56と係合し、一対の係合受部46−2は、後述する他方の樹脂構造体30−2の係合部56と係合する部分である。
【0025】
入出力端子26は金属製のピンであり、回路基板24の短辺側の一対の端部からやや内側の位置に、裏面24a側に立設されている。電源装置22をユーザ装置の実装用基板に実装するときは、入出力端子26の先端部を実装用基板のスルーホールに挿入し、フランジ部26aがスルーホールの周縁部に係止された状態ではんだ付けを行って接続固定する。
【0026】
放熱板28は、回路基板24とほぼ同じ外形に加工したアルミ等の金属製の板材である。放熱板28は、裏面28aのパワートランジスタ32と対面する位置に凸部28cが設けられている。表面28bは、後述する放熱用構造物の平坦面が当接して固定される平坦な取付面になっており、四隅に放熱用構造物をネジ固定するためのネジ孔48が厚み方向に貫通形成されている。さらに、放熱板28の短い方の一対の端部からやや内側の位置に、後述する樹脂構造体30−1,30−2の嵌合突起50が各々圧入される嵌合穴52−1,52−2が形成されている。
【0027】
放熱板28を回路基板24に固定する樹脂構造体30−1,30−2は同一の部材であり、図2に示すように、閉鎖部54、嵌合突起50及び一対の係合部56を備えている。閉鎖部54は、略矩形の薄板であり、放熱板28に形成された2つのネジ孔48を塞ぐことが可能な大きさを有している。嵌合突起50は、閉鎖部54のほぼ中央に立設されており、高さは放熱板28の厚みよりも低く、放熱板28の嵌合穴52−1又は52−2に圧入されると強く嵌合して抜け落ちない外径に設定されている。一対の係合部56は、閉鎖部54の両側の端部に、嵌合突起50と反対向きに立設され、爪状の先端部分が回路基板24の一対の係合受部46−1又は46−2に強く係合可能な形状になっている。
【0028】
上記の各部材を組み立てるとき、まず、樹脂構造体30−1を放熱板28に取り付けるため、嵌合突起50を放熱板28の裏面28a側から嵌合穴52−1に深く圧入し、閉鎖部54を裏面28aに当接させ、2つのネジ孔48の開口端を塞ぐ。このとき、係合突起50の先端は放熱板28の表面28b側に突出しない。同様に、樹脂構造体30−2を放熱板28に取り付けるため、嵌合突起50を放熱板28の裏面28a側から嵌合穴52−2に深く圧入し、閉鎖部54を裏面28aに当接させ、残る2つのネジ孔48の開口端を塞ぐ。
【0029】
次に、回路基板24の電子部品のうち、放熱対象のパワートランジスタ30の上部に、絶縁物であって弾力性を有した放熱用シート58を敷き、パワートランス40及びパワーインダクタ42のコア上部40a,42aに絶縁物である放熱用シール材60を塗布する。そして、図1、図3に示すように、樹脂構造体30−1,30−2と一体化した放熱板28を、回路基板24の表面28b側から取り付ける。放熱板28は、樹脂構造体30−1,30−2の一対の係合部56と回路基板24の一対の係合受部46−1,46−2とが各々係合して位置決めされ、その後、放熱用シール材60を硬化させることによって完全に固定され、組み立てが終了する。
【0030】
組み立てた状態で、放熱板28の裏面28aは、回路基板24の表面24bから最も突出したコア上部40a,42aの上方に近接し、放熱用シール材60を薄く挟んで接触する。また、放熱板28の凸部28cの先端面が低背のパワートランジスタ32の上方に近接し、放熱用シート58を薄く挟んで接触する。従って、放熱対象の電子部品と放熱板28とが密に熱結合し、当該電子部品の発熱を効率よく逃がすことができる。また、放熱板28が回路基板24と所定の距離を空けて固定されているので、放熱しない電子部品(信号トランス44、コンデンサ34等)と放熱板28との間に十分な絶縁距離が確保され、部品配置や配線パターンのレイアウト等を自由に行うことができる。
【0031】
また、回路基板24の係合受部46−1,46−2が、一対の端部から内側に切り込んで設けられているため、図1(c)に示すように、樹脂構造体30−1,30−2の係合部56を、回路基板24の縦横寸法内に収めることも可能である。従って、電源装置22全体の床面積がほとんど大きくならない。また、放熱板28が回路基板24の長手方向にスライドするのを防止し、所定の位置に精度よく位置決めすることができる。
【0032】
次に、電源装置22を使用する各種の装置に電源装置22を組み込み、放熱板28の表面28bに放熱用構造物を取り付ける実装の例を、図4、図5に基づいて説明する。上述したように、電源装置22は、図1、図3の状態でも運転することができるが、放熱板28に所定の放熱用構造物を取り付けることによって、放熱板28からの放熱効率を向上させ、より大きな出力電力を取り出すことができるようになる。
【0033】
例えば、図4は、放熱板28の熱を逃がすための放熱用構造物として、各種装置の金属筺体62を使用した実装状態を示している。電源装置22が搭載された実装用基板64は、図示しない基台等に固定され、その状態で放熱板28の表面28bが金属筺体62の内側面にほぼ当接する。そして、金属筺体62の外側から貫通孔62aを通して放熱板28のネジ孔48内にネジ66を締め付け、金属筺体62と放熱板28を強く密着させる。
【0034】
また、図5は、放熱板28の熱を逃がす放熱用構造物として、ヒートシンク68を使用した実装状態を示している。電源装置22が搭載された実装用基板64は、各種装置の図示しない基台等に固定されて、放熱板28の表面28bに、複数のフィン68aを有するヒートシンク68が平坦な基板部68bを下向きにして載置されている。そして、ヒートシンク68の基板部68bの外側から貫通孔68cを通して放熱板28のネジ孔48内にネジ66を締め付け、基板部68bと放熱板28を強く密着させる。
【0035】
図4、図5に示すように、この実施形態の電源装置22は、放熱板28に様々な放熱用構造物を取り付けることが可能であり、放熱板28の放熱効率を自在に調整することができる。特に、ネジ孔48の回路基板24側の開口端が樹脂構造体30−1,30−2で閉鎖されているので、ネジ66の先端部と電子部品との絶縁が確実に保たれる。また、ネジ締めするときにネジ孔48内のネジ溝が削れて金属屑が発生したとしても、回路基板24に付着する心配がなく安全である。
【0036】
次に、この発明の実施形態の電源装置22を構成する樹脂構造体の変形例について、図6に基づいて説明する。ここで、上記実施形態に係る電源装置22と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。変形例に係る樹脂構造体70は、閉鎖部72−1,72−2、嵌合突起74−1,74−2、開口部76aを有する平板部76、及び一対の係合部78−1,78−2が樹脂により一体に形型されたものである。
【0037】
閉鎖部72−1,72−2は、略矩形の薄板であり、放熱板28に形成された4つのネジ孔48を塞ぐことができる。嵌合突起74−1,74−2は、閉鎖部72−1,72−2の中央部分に各々立設されており、高さは放熱板28の厚みよりも低く、放熱板28の嵌合穴52−1又は52−2に圧入されると強く嵌合して抜け落ちない外径に設定されている。一対の係合部78−1,78−2は、閉鎖部72−1,72−2の両側の端部から74−1,74−2と反対向きに各々立設され、爪状の先端部分が回路基板24の一対の係合受部46−1又は46−2に強く係合可能な形状になっている。平板部76は、閉鎖部72−1,72−2と平面状に連続する薄板であり、回路基板24の上面24b側の放熱熱対象の電子部品に対応する領域に開口部76aが設けられている。平板部76及び閉鎖部72−1,72−2による連続面の大きさは、回路基板24の外形とほぼ同じである。すなわち、樹脂構造体70は、上述した樹脂構造体30−1,30−2を平板部76を介して連結したような構造になっている。
【0038】
各部材の組み立て方法は上記とほぼ同様であり、樹脂構造体70を放熱板28に取り付けるとき、嵌合突起74−1,74−2を放熱板28の裏面28a側から嵌合穴52−1,52−2に深く圧入し、閉鎖部72−1,72−2を裏面28aに当接させ、4つのネジ孔48の開口端を塞ぐ。樹脂構造体70は1つのパーツになっているので、放熱板28に取り付ける際のハンドリングや位置決めが容易で作業がし易い。この状態で、裏面28aの所定領域が開口部76aから露出している。
【0039】
次に、回路基板24の電子部品のうち、放熱対象のパワートランジスタ30の上部に、絶縁物であって弾力性を有した放熱用シート58を敷き、パワートランス40及びパワーインダクタ42のコア上部40a,42aに、絶縁物である放熱用シール材60を塗布する。そして、図1、図3と同様に、樹脂構造体70が一体に固定された放熱板28を、回路基板24の表面28b側から取り付ける。放熱板28は、樹脂構造体70の一対の係合部78−1,78−2と回路基板24の一対の係合受部46−1,46−2とが各々係合して位置決めされ、その後、放熱用シール材60を硬化させることによって完全に固定され、組み立てが終了する。
【0040】
組み立てた状態で、放熱板28の裏面28aの一部、すなわち樹脂構造体70の開口部76aから露出している部分は、回路基板24の表面24bから最も突出したコア上部40a,42aの上方に近接し、放熱用シール材60を薄く挟んで接触する。また、放熱板28の凸部28cも開口部76aから露出し、その先端面が低背のパワートランジスタ32の上方に近接し、放熱用シート58を薄く挟んで接触する。
【0041】
この樹脂構造体70によれば、放熱対象の電子部品と放熱板28とが密に熱結合し、当該電子部品の発熱を効率よく逃がすことができる。また、放熱板28と放熱しない電子部品(信号トランス44、コンデンサ34等)との間に絶縁物である平板部76が存在する構造になるので絶縁性をさらに向上させることができる。
【0042】
次に、この発明の樹脂構造体の他の変形例について、図7に基づいて説明する。ここで、上記実施形態に係る電源装置22と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。変形例に係る樹脂構造体80も樹脂により一体形型されたもので、放熱板28の取付用のネジ孔48に対応する樹脂構造体80の外側面に、ネジ66の先端部が位置する凹部82が形成されている。
【0043】
凹部82は、ネジ66のネジ山が十分に形成されていない先端部が、放熱板28の雌ネジと螺合しない外側に位置して、ネジ66の雄ネジ部分が放熱板28の厚み分しかない雌ネジ48全体に確実に螺合し、ネジの取付強度を高いものとすることができる。
【0044】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではない。放熱対象の電子部品と放熱板の裏面側との間に介在させる絶縁物は、半導体の封止樹脂やトランス類のコア固定用の絶縁テープ等、電子部品自体を構成する絶縁材を含む。従って、必要に応じて上記実施形態の電源装置で使用している放熱用シール材や放熱用シートを省略することができる。また、放熱用シール材と放熱用シートのいずれを使用するかは自由であり、例えば、放熱用シール材を使用すれば、回路基板に対する放熱板の固定強度を向上させることができ、放熱用シートのみを使用すれば、放熱用シール材を硬化させるための工程を省略することができる等、それぞれに利点がある。
【0045】
また、放熱板の各部の形態も変更することができる。例えば、ネジ孔を設ける場所や数は、放熱板自体の形状や相手方の放熱用構造物の大きさなどに応じて適宜設定することができる。放熱板の表面は、相手方の放熱用構造物の接触面に密接可能な形状であればよく、平坦面に限定されるものではない。放熱板の裏面は、放熱対象の電子部品の高さに合わせて凹状又は凸状に形成することが放熱の面で好ましいが、単なる平坦面にして放熱板の製作コストを下げることもできる。その場合、放熱板と電子部品との間に隙間が生じる可能性があるので、放熱用シール材や放熱用シート等を介して熱結合が確保される構造にするとよい。さらに、放熱板の裏面に絶縁性の被膜を塗布したり、絶縁シートを貼り付けたり固定したりし、回路面との絶縁性をより確実にしてもよい。
【0046】
また、樹脂構造体の各部の形態も変更することができ、係合部は、回路基板の端部(又は端部に設けた係合受部)に側方から係合可能で、回路基板に搭載する電子部品の配置に与える影響が小さいものであればよい。従って、放熱板の大きさや相手方のヒートシンク等の大きさに合わせ、例えば、爪状の係合部の数を増減したり、係合部を幅広に設け回路基板の端部の広い範囲で係合するようにすることができる。さらに、樹脂構造体をインサート成型によって放熱板と一体に設けるようにすれば、放熱板に樹脂構造体を取り付ける作業を省略できるので、樹脂構造体の各部を小さなパーツに分割したり、各部をより高機能で複雑な形状にすることも可能になる。
【符号の説明】
【0047】
10,22 電源装置
24 回路基板
24a 裏面
24b 表面
26 入出力端子
28 放熱板
28a 裏面
28b 表面
28c 凸部
30,30−1,30−2,70 樹脂構造体
46−1,46−2 一対の係合受部
48 ネジ孔
54,72−1,72−2 閉鎖部
56,78−1,78−2 係合部
58 放熱用シート
60 放熱用シール材
76 平板部
76a 開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が搭載された回路基板と、前記回路基板の裏面側に立設され実装用基板に接続される入出力端子と、表面側が相手方の放熱用構造物と当接する取付面であり、前記放熱用構造物に取り付けるためのネジ孔が厚み方向に貫通形成された金属製の放熱板と、前記ネジ孔の一方の開口端を塞ぐ閉鎖部と前記回路基板の端部に側方から係合可能な係合部とを有した樹脂構造体とを備え、
前記樹脂構造体は、前記ネジ孔の一方の開口端を前記閉鎖部により塞いで前記放熱板の裏面側に固定されるとともに、前記回路基板の端部に前記係合部が係合して前記回路基板を前記放熱板側に対面させて保持し、
前記放熱板は、絶縁物を介して放熱対象の前記電子部品に接触することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記放熱板は、放熱対象の複数の前記電子部品に接触する裏面側が、当該各電子部品の高さに合わせて凹凸状に形成されている請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記絶縁物は、塗布後に硬化した放熱用シール材、又は弾力性のある放熱用シートである1又は2記載の電源装置。
【請求項4】
矩形外形の前記回路基板の互いに平行な一対の端縁部に、内向きに切り欠いた一対の係合受部が複数組設けられ、前記一対の係合受部に対向する前記樹脂構造体の所定位置には、一対の爪状の前記係合部が立設され、前記一対の係合部が、対応する前記一対の係合受部に個々に係合して、前記回路基板を保持している請求項1記載の電源装置。
【請求項5】
前記樹脂構造体は、前記閉鎖部と前記閉鎖部の端部から立設された一組の前記一対の係合部とが一体に成形されて成り、複数の前記樹脂構造体が個々に前記放熱板に固定され、前記一対の係合部が、対応する前記回路基板の前記一対の係合受部に個々に係合している請求項4記載の電源装置。
【請求項6】
前記樹脂構造体は、前記閉鎖部と、放熱対象の前記電子部品に対応する領域が開口した平板部と、前記平板部の端部から厚み方向に立設された前記係合部とが一体に成形されて成り、前記平板部が前記放熱板に固定され、前記一対の係合部が対応する前記回路基板の前記一対の係合受部に個々に係合している請求項4記載の電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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