説明

電磁クラッチ

【課題】電磁ソレノイドを用いてラップスプリングを圧着状態と非圧着状態とに切り換えて伝動状態と遮断状態とを作り出す電磁クラッチにおいてラップスプリングによる伝動を行う系の摩耗を抑制する。
【解決手段】駆動プーリ7の中心側の筒状部7Bの外面に圧接するラップスプリング11を備え、シャフト3に連結する駆動部材12の駆動アーム12Aにラップスプリング11の一端側11Aを連結し、シャフト3に相対回転自在で回転軸芯Xに沿って移動自在な作動部材13にラップスプリング11の他端側11Bに連結した。作動部材13の回転を阻止した後に、駆動部材12の回転を阻止することでラップスプリング11の捩り操作して筒状部7Bに対する圧着を解除して遮断状態を作り出す操作機構を備え、この遮断状態でラップスプリング11を設定姿勢に維持する規制手段Rを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁クラッチに関し、詳しくは、駆動プーリとシャフトとが同軸芯で備えられ、回転軸芯を中心とするコイル状のラップスプリングが備えられ、このラップスプリングの巻き径の変更により動力の断続を行う電磁クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された電磁クラッチと類似するものとして特許文献1には、入力ハブと出力ハブとを回転軸芯と同軸芯で回転自在で回転軸芯に沿って隣接する位置関係で配置した構成が示されている。つまり、入力ハブの外周と出力ハブの外周とにラップスプリングを配置し、このラップスプリングの周りに制御カラーを配置し、ラップスプリングの一方の端部を入力ハブに支持し、他方の端部を制御カラーに支持した構成が示されている。
【0003】
この特許文献1では、制御カラーに備えたアーマチュアに磁力を作用させない状態では戻しバネの付勢力によりアーマチュアが所定位置に保持されラップスプリングが入力ハブの外周と出力ハブの外周とから分離したクラッチ切り状態にある。そして、制御カラーに備えたアーマチュアに磁力を作用させることで、磁力の作用により戻しバネの付勢力に抗してアーマチュアを電磁ソレノイドの方向に引き寄せて制御カラーの回転力を出力ハブに伝える状態となる。これによりラップスプリングの巻き径を収縮させる状態に達し、入力ハブの外周と出力ハブの外周とに亘ってラップスプリングを圧着させ入力ハブの回転駆動力を出力ハブに伝えるクラッチ入り状態を作り出すように構成されている。
【0004】
また、特許文献2では、駆動プーリ(文献では入力プーリ)と、シャフト(文献ではポンプ軸)と一体回転する出力ハブとの外周とに亘ってラップスプリングを配置し、このラップスプリングの一方の端部をアーマチュアに支持し、他方の端部を出力ハブに支持し、駆動プーリの内部にアーマチュアに吸引力を作用させる電磁ソレノイドを配置した構成が示されている。
【0005】
この特許文献2では、電磁ソレノイドからアーマチュアに磁力を作用させない状態では、ラップスプリングが入力プーリと出力ハブとの外周から分離したクラッチ切り状態にあり、電磁ソレノイドからアーマチュアに磁力を作用させて吸引することで、ラップスプリングが入力プーリの外周と出力ハブの外周とに亘って密着して駆動プーリからの駆動力をシャフトに伝えるクラッチ入り状態を作り出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11‐201191号公報
【特許文献2】特開2001‐317565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に記載されるように、電磁ソレノイドに対する通電により伝動状態を作り出す電磁クラッチでは、動力を伝える場合には通電を継続する必要があり、例えば、エンジンのウォータポンプのように伝動状態(クラッチ入り状態)が長時間継続する部位に用いられる場合には電力を無駄に消費する不都合に繋がる。特に、通電により伝動状態を維持する電磁クラッチでは確実な伝動を継続して行うためには、温度上昇に伴う磁束の減少にも対応できるように電磁ソレノイドの大型化を招くことになり、コスト上昇に繋がるものであった。更に、故障により通電を行えない場合にはウォータポンプとして機能しないためエンジンのオーバーヒートに繋がるものであった。
【0008】
また、特許文献1に記載される構成では、電磁ソレノイドとアーマチュアとの間に形成された磁気回路中の、出力ハブにつながり回転するロータと、固定された電磁コイルとの間に、エアーギャップが形成されているため、強力な電磁ソレノイドを必要とする。更に、入力ハブと出力ハブとが隣接して配置されているため、電磁ソレノイドに通電しない状態でもラップスプリングの姿勢と、ラップスプリングと出力ハブとの接触状態によっては、入力ハブと出力ハブとが連れ廻りすることも考えられる。
【0009】
これと同様に、特許文献2に記載される構成でも、クラッチ入り状態でも電磁ソレノイドとアーマチュアとの間の磁気回路中には、回転する入力プーリと固定された電磁ソレノイドとの間にエアーギャップが形成されているため、強力な電磁ソレノイドを必要とする。
【0010】
ラップスプリングを用いた電磁クラッチでは、遮断状態(クラッチ切り状態)でラップスプリングが伝動対象から離間する状態に設定されるものであるが、この状態でもラップスプリングが伝動対象に接触する状態で相対回転し、ラップスプリングと伝動対象とが摩耗することも考えられた。このように摩耗した場合には、伝動状態(クラッチ入り状態)でスリップを招くこともあり改善が望まれる。
【0011】
本発明の目的は、電磁ソレノイドを用いてラップスプリングを圧着状態と非圧着状態とに切り換えて伝動状態と遮断状態とを作り出す電磁クラッチにおいてラップスプリングによる伝動を行う系の摩耗の抑制が可能な電磁クラッチを合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特徴は、駆動力を受けることで回転軸芯を中心にして回転する駆動側回転体と、前記回転軸芯と同軸芯に配置される被駆動側回転体と、前記駆動側回転体に対し、自然状態で圧着状態となるよう巻き回されたラップスプリングと、前記被駆動側回転体に固定されると共に前記ラップスプリングの一端側が連結する駆動部材と、磁性体で形成され、前記ラップスプリングの他端側が連結する状態で前記被駆動側回転体に対して前記回転軸芯を中心にして相対回転可能であり、前記回転軸芯に沿って移動可能な作動部材と、前記作動部材を吸着固定する磁力を発生させるよう静止系に設けられた電磁ソレノイドと、前記電磁ソレノイドに通電して前記作動部材を吸着固定した際に、前記駆動側回転体との摩擦力あるいは動慣性によって前記駆動部材が前記作動部材に対して相対回転し、前記筒状部に対する前記ラップスプリングの圧着状態を解消して前記駆動側回転体から前記被駆動側側回転体への動力伝達を遮断するように構成し、前記作動部材が前記電磁ソレノイドに吸着固定された状態で前記ラップスプリングが押し付け固定されるよう前記駆動部材に設けたスプリング保持部を備えている点にある。
【0013】
この構成によると、電磁ソレノイドに通電しない状態では、ラップスプリングが駆動側回転体に圧着することにより、駆動側回転体の回転力をラップスプリングの一端側に連結する駆動部材から被駆動側回転体に伝える伝動状態(クラッチ入り状態)が作り出される。また、電磁ソレノイドに通電した場合には、ラップスプリングに他端側が連結する作動部材が電磁ソレノイドに吸着され回転が阻止され、この回転の阻止の後に駆動側回転体に対するラップスプリングの圧着が解除された状態で駆動側回転体とともに回転する中間部材が作動部材に吸着固定されるため、ラップスプリングが捩られ駆動側回転体に対する圧着を解消して駆動側回転体から被駆動側回転体への動力伝達が遮断される(クラッチ切り状態となる)。
この動力の遮断状態では、ラップスプリングがスプリング保持部に押し付けられるため、ラップスプリングの一部が駆動側回転体に接触する現象を抑制し、ラップスプリングの特定の部位と駆動側回転体の特定の部位とが大きく摩耗する不都合を解消する。
従って、電磁ソレノイドを用いてラップスプリングを圧着状態と非圧着状態とに切り換えて伝動状態と遮断状態とを作り出す電磁クラッチで、ラップスプリングと駆動側回転体との一部だけが摩耗する不都合を解消する電磁クラッチが構成された。
【0014】
本発明は、前記スプリング保持部が、前記ラップスプリングの前記回転軸芯を中心にした半径方向での変位を規制する第1保持部を備えても良い。
【0015】
これによると、遮断状態でラップスプリングが半径方向へ変位する不都合を第1保持部が解消して駆動側回転体に強く接触する不都合を解消し、偏った摩耗を抑制する。
【0016】
本発明は、前記スプリング保持部が、前記ラップスプリングの前記回転軸芯に沿う方向での変位を規制する第2保持部を備えても良い。
【0017】
これによると、遮断状態でラップスプリングが回転軸芯に沿う方向へ変位する不都合を第2保持部が解消してラップスプリングの姿勢の乱れを抑制し、偏った摩耗を抑制する。
【0018】
本発明は、前記作動部材において前記電磁ソレノイドが吸着する面に主孔部を形成し、前記中間部材において前記作動部材からの磁束が作用する面に副孔部を形成し、この作動部材と中間部材とで拘束手段が構成され、前記拘束手段は、前記電磁ソレノイドへの通電により前記作動部材が前記電磁ソレノイドに吸着され回転が阻止された後に動慣性による前記駆動側回転体の回転を許し、この回転により前記駆動側回転体に対する前記ラップスプリングの圧着が解除される回転位相に達した時点で前記中間部材に作用する吸引力を増大させ、この吸引力により前記中間部材を作動部材に吸着して回転を阻止するように前記主孔部と副孔部との位置関係が設定されても良い。
【0019】
これによると、作動部材が電磁ソレノイドに吸着された場合に、この作動部材の主孔部から漏れ磁束を中間部材に作用させることが可能となる。また、中間部材には副孔部が形成されているので、この副孔部が形成された部位では磁気抵抗を増大させ吸着力が低下することになり、副孔部が形成されない部位では磁気抵抗が小さいので吸着力を増大させることが可能となる。これにより、電磁ソレノイドに通電し、この電磁ソレノイドに作動部材が吸着した後には、動慣性による駆動部材の回転の初期には作動部材から中間部材に作用する吸引力を抑制しておき、駆動プーリが遮断状態となる回転位相に達した時点で中間部材に作用する吸引力が増大させ、ラップスプリングを駆動側回転体から離間させた状態で中間部材を作動部材に吸着して拘束し、連れ廻りを招くことのない遮断状態を作り出せる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電磁クラッチを有するウォータポンプの断面図である。
【図2】電磁クラッチの構成を示す正面図である。
【図3】電磁クラッチの分解斜視図である。
【図4】伝動状態の電磁クラッチの正面図及び断面図である。
【図5】電磁ソレノイドに作動部材が吸着した状態の電磁クラッチの正面図及び断面図である。
【図6】動慣性により駆動部材が回転する状態の電磁クラッチの正面図及び断面図である。
【図7】作動部材に中間部材が吸着した状態の電磁クラッチの正面図及び断面図である。
【図8】第1別実施形態の電磁クラッチの断面図である。
【図9】第2別実施形態の電磁クラッチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1〜図3には本発明の電磁クラッチCによって動力の伝動及び遮断が可能なウォータポンプが示されている。このウォータポンプは、静止系としてのポンプハウジング1に対しシャフト軸受2により回転軸芯Xを中心に回転自在にシャフト3(被駆動側回転体の一例)を支持し、このシャフト3の内端にインペラ4を備え、このシャフト3とポンプハウジング1との間にシール5を備えている。ポンプハウジング1のボス状部1Aに対しプーリ軸受6により回転軸芯Xを中心にして回転自在に駆動プーリ7を備えている。電磁クラッチCは、駆動プーリ7の回転駆動力をシャフト3に伝える伝動状態(クラッチ入り状態)と、駆動プーリ7の回転駆動力を遮断する遮断状態(クラッチ切り状態)とに切換自在に構成されている。
【0022】
駆動プーリ7は、外周側の円筒状のベルト巻回部7Aと、このベルト巻回部7Aで取り囲まれる空間(内周側)の中心側位置の筒状部7B(駆動側回転体の一例)と、ベルト巻回部7A及び筒状部7Bを連結するようにポンプハウジング側に配置される側壁部7Cとを一体形成した構造を有している。特に、筒状部7Bは、回転軸芯Xに沿う方向での筒長Wbが、ベルト巻回部7Aの回転軸芯Xに沿う方向での周幅Waより短く設定され、ベルト巻回部7Aの内部空間に収容される形態となる。そして、筒状部7Bをプーリ軸受6に外嵌する形態で駆動プーリ7がポンプハウジング1に回転自在に支持されている。
【0023】
この駆動プーリ7は、平ベルトを用いる構成のものであるが、Vベルトを使用するため外周にV状の溝を形成した構成でも良く、タイミングベルトを使用するために外周面にギヤ状の凹凸を有した構成であっても良い。
【0024】
エンジン(図示せず)の出力軸に備えた出力プーリ(図示せず)と、駆動プーリ7とに亘って無端ベルトを巻回するため駆動プーリ7が常時駆動される。電磁クラッチCは、冷却水の水温を検出する温度センサ(図示せず)の検出結果を取得する制御装置(図示せず)によって制御される。この制御装置は、エンジンの始動直後のように冷却水の水温が低い(エンジンの暖機が充分でない)ことを判別した場合には電磁クラッチCを遮断状態に維持して暖機を促進し、エンジンの温度が適度に高まったことを判別した場合には電磁クラッチCを伝動状態に設定してインペラ4の駆動により冷却水を循環させる制御を実行する。
【0025】
〔電磁クラッチ〕
電磁クラッチCは、駆動プーリ7の内部に収容されるコイル状のラップスプリング11と、駆動部材12と、アーマチュアとして機能する作動部材13と、中間部材15と、作動部材13に吸引力を作用させて吸着する電磁ソレノイドSとを備えている。
【0026】
ポンプハウジング1のボス状部1Aに対して鉄材やニッケル合金材等により環状に形成される磁性体製のヨーク17が固設され、このヨーク17には回転軸芯Xと同軸芯でインペラ4と反対側に開放する環状となる凹部が形成されている。この凹部に対しボビン18Aに銅線を巻回したコイル18を挿入して電磁ソレノイドSが構成されている。この電磁ソレノイドSは、コイル18が挿入される凹部の内側と外側とにおいて回転軸芯Xを中心とするリング状の領域の吸着面が形成される。
【0027】
ラップスプリング11は、バネ鋼をスパイラルに成形したコイル状の形状を有すると共に、自然状態(外力が作用しない状態)において駆動プーリ7の筒状部7Bの外周に圧着する巻き径のものが使用されている。この圧着状態でラップスプリング11のコイル状部の軸芯が回転軸芯Xと同軸芯上に配置されることになる。また、ラップスプリング11のうち回転軸芯Xに沿う方向でポンプハウジング側となる一端側11A(一方の端部)を半径方向の外方に折り曲げており、外方の他端側11B(他方の端部)を回転軸芯Xに沿う姿勢で外方に向けて折り曲げている。
【0028】
駆動部材12は、シャフト3と一体回転するように回転軸芯Xと同軸芯で形成されたスリーブ部12Sをシャフト3の前端部に嵌合連結している。この駆動部材12の外周部位から回転軸芯Xを平行となる姿勢に屈曲した3つの駆動アーム12Aがポンプハウジング1の方向に延出する形態で形成され、3つの駆動アーム12Aのうちの1つに形成された係合孔部12Bに対してラップスプリング11の一端側11Aを挿通する形態で、この一端側11Aが駆動部材12に連結している。
【0029】
作動部材13は、回転軸芯Xを中心とする円板状で鉄材やニッケル合金材等を用いた磁性体で成るディスク状部13Aを有すると共に、このディスク状部13Aの外周に対して外方に突出する形態で係合凹部を有する3つの係合部13Bが一体的に形成されている。また、この3つの係合部13Bのうちの1つに形成された係合凹部に対してラップスプリング11の他端側11Bを挿通する形態で、この他端側11Bが作動部材に係合連結している。ディスク状部13Aは電磁ソレノイドSの吸着面の外周の半径と一致する半径で形成され、このディスク状部13Aの中心位置には貫通孔部が形成されている。
【0030】
この作動部材13がシャフト3に対して相対回転自在、かつ、回転軸芯Xに沿う方向に移動自在となるように貫通孔部にスリーブ部12Sを挿通する形態で、スリーブ部12Sに遊嵌状態で支持されている。スリーブ部12Sにはコイルバネ16が外嵌され、このコイルバネ16の付勢力によって作動部材13が電磁ソレノイドSのヨーク17から離間する方向に付勢されている。
【0031】
中間部材15は、回転軸芯Xを中心とする円板状で鉄材やニッケル合金材等を用いた磁性体で構成され、シャフト3に対して相対回転自在、かつ、回転軸芯Xに沿う方向に移動自在となるようにスリーブ部12Sに遊嵌支持されている。この中間部材15は、電磁ソレノイドSの吸着面の外周の半径と一致する半径で形成され、作動部材13と駆動部材12とに挟み込まれる位置に配置されている。そして、駆動部材12と一体回転するように板バネ14を介して駆動部材12に連結している。
【0032】
この中間部材15は、外力が作用しない状態で板バネ14の付勢力によって作動部材13から接触する位置に保持され、作動部材13から磁力の吸引力が作用する場合には3つの板バネ14が弾性変形することにより回転軸芯Xに沿って作動部材13の方向に変位可能に構成されている。
【0033】
駆動部材12の3つの駆動アーム12Aは、回転バランスをとるために周方向で等間隔で形成されており、この3つの駆動アーム12Aがラップスプリング11の外側に配置されるため、ラップスプリング11が筒状部7Bの外周から離間した場合に、ラップスプリング11を設定姿勢に維持する規制手段Rが、この駆動アーム12Aに形成されている。つまり、駆動アーム12Aがラップスプリング11の外方(回転軸芯Xから離間する方向)への変位を規制する第1保持部R1(スプリング保持部の一例)として構成されている。また、3つの駆動アーム12Aのうち延出側の端部と、中間部とにはラップスプリング11の方向(回転軸芯に向かう方向)に突出する突出片を形成し、この一対の突出片によりラップスプリング11の回転軸芯Xの方向に沿う変位を規制する第2保持部R2(スプリング保持部の一例)が構成されている。
【0034】
電磁ソレノイドSの吸着面の最外周の外径と、前述した作動部材13の外径と、中間部材15の外径とが一致する寸法に設定されている。作動部材13と中間部材15との外径は、吸着面の外径と寸法的に一致する必要はなく、電磁ソレノイドSの磁束が効率的に作用するサイズであれば多少大径であっても小径であっても良い。
【0035】
この電磁クラッチCは、ラップスプリング11の一端側11Aと他端側11Bとが図4(a)に示す相対姿勢を維持することで、ラップスプリング11を駆動プーリ7の筒状部7Bの外面に圧接させて伝動状態(クラッチ入り状態)となる。また、この伝動状態では、駆動部材12の駆動アーム12Aと作動部材13の係合部13Bとが同図に示す相対姿勢に維持される。これとは逆に、ラップスプリング11の一端側11Aと他端側11Bとが図5(a)に示す相対姿勢から図6(a)に示す相対姿勢に変更することによりラップスプリング11が巻き径を拡大する方向に捩り操作されるため、このラップスプリング11を駆動プーリ7の筒状部7Bから離間させて遮断状態の図6(a)(クラッチ切り状態)となる。この遮断状態では、駆動部材12の駆動アーム12Aと作動部材13の係合部13Bとが同図に示す相対姿勢に維持される。
【0036】
特に、本発明の電磁クラッチCは遮断状態においてラップスプリング11を筒状部7Bの外面から完全に離間させる必要はなく(後述する拘束手段を備える必要はなく)、ラップスプリング11から筒状部7Bの外面に作用する圧接力が低下することで駆動プーリ7とシャフト3との伝動を遮断するように構成されるものであっても良い。この場合、遮断状態においてラップスプリング11は筒状部7Bの外面に軽く接触する状態となる。
【0037】
この電磁クラッチCでは、駆動部材12と作動部材13と電磁ソレノイドSとで操作機構が構成され、電磁ソレノイドSに電力を供給した場合には、拘束手段が、駆動部材12の駆動アーム12Aと、作動部材13の係合部13Bとを図7(a)に示す相対姿勢に設定し、電磁ソレノイドSに電力を供給し続けることで遮断状態が維持される。この拘束手段の作動形態を以下に説明する。
【0038】
〔電磁クラッチ:拘束手段〕
作動部材13と中間部材15とによって拘束手段が構成されている。図1、図3、図4(a)に示すように、作動部材13のディスク状部13Aには周方向に沿って複数の主孔部13Hが形成され、中間部材15には周方向に沿って複数の副孔部15Hが形成されている。この主孔部13Hと副孔部15Hとは、電磁クラッチCを遮断状態に操作する際に、駆動部材12の駆動アーム12Aと、作動部材13の係合部13Bとが図7(a)に示す相対姿勢に設定するために機能する。この作動形態を以下に説明する。尚、主孔部13Hと副孔部15Hとを夫々3つ示しているが、これらの数は3つに限るものではなく、任意の数でも良い。
【0039】
電磁ソレノイドSに電力が供給されない非駆動状態にある場合には、図4(b)に示す如く、コイルバネ16の付勢力により、電磁ソレノイドSのヨーク17から作動部材13が離間する位置にあり、夫々の間に間隙が形成される。この状態では、ラップスプリング11は、その付勢力により駆動プーリ7の筒状部7Bの外周面に圧接し、駆動部材12の駆動アーム12Aと、作動部材13の係合部13Bとが図4(a)に示す相対姿勢に維持される。この結果、ラップスプリング11に接続する駆動部材12からシャフト3に回転駆動力が伝えられ、電磁クラッチCは伝動状態に維持される。
【0040】
この伝動状態において、駆動アーム12Aと係合部13Bとの相対角は伝動角θ1を維持し、同図に示す如く、回転軸芯Xに沿う方向視において主孔部13Hの内部に副孔部15Hが位置するように夫々の相対的な位置関係が設定されている。
【0041】
次に、電磁ソレノイドSのコイル18に電力を供給する駆動状態に切り換えた場合には、図5(b)に示すように、コイルバネ16の付勢力に抗して電磁ソレノイドS(ヨーク17の吸着面)に作動部材13のディスク状部13Aが吸着され、これにより作動部材13が拘束される。このように吸着されたタイミングでは、回転軸芯Xに沿う方向視で図5(a)に示す如く、主孔部13Hの内部領域に副孔部15Hが存在する。この位置関係では副孔部15Hが磁気抵抗として作用するため、主孔部13Hから中間部材15に流れる磁束の磁束密度は副孔部15Hにより制限される。
【0042】
この電磁クラッチCでは、電磁ソレノイドSが駆動状態に切り換えられた直後において前述したように磁束密度が制限される状態では、作動部材13から中間部材15に作用する吸引力が、3つの板バネ14から中間部材15に作用する付勢力より小さい値に設定されているため、これにより中間部材15は作動部材13に吸着されない。
【0043】
また、作動部材13の回転が拘束された後にも駆動部材12は動慣性により図5(a)において矢印で示す方向に回転を続け、この回転力によりラップスプリング11を捩り操作して巻き径を拡大させ、図6(a)(b)に示すようにラップスプリング11を駆動プーリ7の筒状部7Bの外周面から離間させる。このように駆動部材12が動慣性により回転し始める際には、回転軸芯Xに沿う方向視で主孔部13Hの内部領域に副孔部15Hが存在する状態が維持され、中間部材15に作用する吸引力は増大せず、図5(b)に示すように中間部材15は作動部材13に吸着されない。
【0044】
この回転により、回転軸芯Xに沿う方向視で図6(a)、図7(a)に示すように、副孔部15Hが主孔部13Hの外部領域(孔が存在しない領域)まで移動し、駆動部材12の駆動アーム12Aと作動部材13の係合部13Bとの相対角が遮断角θ2に達すると、図7(b)に示すように中間部材15が回転軸芯Xに沿って変位し作動部材13に吸着される。つまり。この位置関係では、主孔部13Hの外周位置から中間部材15に亘る領域の磁気抵抗が大きく低下し、中間部材15に流れる磁束の磁束密度が増大し中間部材15に作用する吸引力が、3つの板バネ14から中間部材15を離間方向に作用する付勢力より大きくなるため中間部材15が作動部材13に吸着されるのである。この遮断角θ2に達する際に、作動部材13の係合部13Bに対して駆動アーム12Aの相対角は変化角αだけ変化する。
【0045】
中間部材15が作動部材13に吸着されることにより、駆動部材12の回転も阻止され、ラップスプリング11の付勢力に抗して駆動部材12の駆動アーム12Aと作動部材13の係合部13Bとの相対姿勢が図7(b)に示す関係に維持される。これにより、ラップスプリング11を駆動プーリ7の筒状部7Bの外周から離間させ、完全な遮断状態の保持を現出する。この遮断状態では駆動プーリ7の回転駆動力はインペラ4には伝えられずウォータポンプによる給水も停止する。
【0046】
このように電磁ソレノイドSを駆動することで、ラップスプリング11を捩り操作してラップスプリング11が筒状部7Bの外周から離間する状態に達した場合には、駆動アーム12Aで構成される第1保持部R1がラップスプリング11の回転軸芯Xから離間する方向への変位、又は、接近する方向への変位を規制する。これと同時に、第2保持部R2がラップスプリング11の回転軸芯Xに沿う方向への変位を規制する。この規制により、ラップスプリング11は、筒状部7Bの外方側の決まった位置に拘束され筒状部7Bに接触して摩耗することや、駆動エネルギーを無駄に消費する不都合が解消される。
【0047】
この後に、電磁ソレノイドSの駆動を停止することにより、中間部材15が板バネ14の付勢力により作動部材13から離間し、この作動部材13はコイルバネ16の付勢力によりヨーク17の吸着面から離間する。そして、ラップスプリング11は自由状態となるため、付勢力によって巻き径が縮小して駆動プーリ7の筒状部7Bの外周に圧接して伝動状態に復帰する。
【0048】
〔実施の形態の作用・効果〕
このように、本発明の電磁クラッチでは、駆動プーリ7の筒状部7Bの外周にラップスプリング11を圧着させて伝動を行う構成であるため、例えば、仕様変更によりベルト巻回部7Aの半径が異なる駆動プーリ7に電磁クラッチCを備える場合にも、駆動プーリ7夫々に同じ外径となる筒状部7Bを形成しておくことにより、電磁クラッチCの構成を変更せずに済む。
【0049】
筒状部7Bが駆動プーリ7の内部空間に収容される寸法に形成されているため電磁クラッチ全体の小型化が実現する。回転軸芯Xと直交する方向視においてシャフト3をボス状部1Aに支持するシャフト軸受2と、ボス状部1Aに対して駆動プーリ7の筒状部7Bを支持するプーリ軸受6とが重なり合う位置に配置されているので、シャフト3の全長を短くし、この支持部位の強度も向上する。
【0050】
また、作動部材13がディスク状に形成されているので、例えば、外周にアームが形成されるものと比較すると、この作動部材13の小型化が可能になるだけではなく、動慣性を小さくして、電磁クラッチを切り操作ために電磁ソレノイドSに電力を供給した場合には、電磁ソレノイドSの吸着面に対して迅速に吸着され、動慣性による回転も抑制することになり、切り状態に達するまでの時間の短縮が実現する。
【0051】
遮断状態では、拘束手段によりラップスプリング11を筒状部7Bから離間する位置において設定姿勢に維持できるため、ラップスプリング11を筒状部7Bから離間させるため伝動を確実に遮断できる。更に、遮断状態では、第1保持部R1と第2保持部R2とによりラップスプリング11が姿勢を乱さず筒状部7Bから離間する位置に拘束されるためラップスプリング11や筒状部7Bを偏摩耗させることがなく摩耗を抑制できる。また、クラッチ遮断状態でのラップスプリング11の駆動プーリ7の筒状部7Bへの接触がなく、クラッチ結合時のラップスプリング11の駆動プーリ7の筒状部7Bへの均一な圧着を実現可能とするため、駆動エネルギーが無駄に消費される不都合が解消される。
【0052】
〔別実施の形態〕
本発明は、上記した実施の形態以外に以下のように構成しても良い(この別実施の形態では実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。また、以下の別実施形態では実施形態と同じ材質のものが使用されている。
【0053】
(第1別実施形態)
図8に示すように、この第1別実施形態のウォータポンプの基本的な構成は前述した実施形態と共通しているが、ラップスプリング11が駆動側回転体としての駆動プーリ7の内周面7Sに圧接することで駆動力を伝える伝動状態を作り出し、ラップスプリング11が内周面7Sから離間することで駆動力を遮断する遮断状態を作り出すように電磁クラッチCが構成された点において実施形態と異なる。
【0054】
ラップスプリング11は、バネ鋼をスパイラルに成形したコイル状の形状を有すると共に、自然状態(外力が作用しない状態)において駆動プーリ7の内周面7Sに圧着する巻き径のものが使用されている。このラップスプリング11のうちポンプハウジング側の一端側11A(一方の端部)を半径方向の内方に折り曲げ、外方の他端側11B(他方の端部)を回転軸芯Xに沿う姿勢で外方に向けて折り曲げている。
【0055】
このラップスプリング11は、駆動部材12の3つの駆動アーム12Aと駆動プーリ7の内周面7Sと間に配置され、3つの駆動アーム12Aのうちの1つに形成された係合孔部12Bに対してラップスプリング11の一端側11Aを挿通する形態で、この一端側11Aが駆動部材12に連結している。また、作動部材13のディスク状部13Aの外周に突出する形態で形成された3つの係合部13Bのうちの1つの係合凹部に対してラップスプリング11の他端側11Bを挿通する形態で、この他端側11Bが作動部材13に連結している。
【0056】
3つの駆動アーム12Aがラップスプリング11の内方(回転軸芯Xに接近する方向)に配置されるため、この3つの駆動アーム12Aがラップスプリング11の変位を規制する第1保持部R1に兼用されている。また、3つの駆動アーム12Aのうち延出側の端部と、中間部とにはラップスプリング11の方向に突出する突出片を形成し、この一対の突出片によりラップスプリング11の回転軸芯Xの方向に沿う変位を規制する第2保持部R2が構成されている。
【0057】
この第1別実施形態で、電磁ソレノイドSが非駆動状態にある場合には、ラップスプリング11が、その付勢力により駆動プーリ7の内周面7Sに圧接して電磁クラッチCは伝動状態に維持される。この状態において電磁ソレノイドSのコイル18を駆動した場合には、実施形態と同様に電磁ソレノイドSの吸着面に作動部材13が吸着され作動部材13の回転が阻止される。この回転阻止状態での主孔部13Hと副孔部15Hとの相対的な位置関係から駆動部材12と中間部材15とが一体的に回転する。この後に、ラップスプリング11が駆動プーリ7の内周面7Sから離間する状態に達した時点での主孔部13Hと副孔部15Hとの相対的な位置関係において、中間部材15が作動部材13に吸着されることで、中間部材15の回転も阻止され、電磁クラッチCは、遮断状態に拘束されるのである。
【0058】
このように、電磁クラッチCが遮断状態に切り換えられた場合には、ラップスプリング11が駆動プーリ7の内周面7Sから離間して第1保持部R1に接触するため回転軸芯Xから離間または接近する方向への変位が規制されると同時に、第2保持部R2によって回転軸芯Xに沿う方向への変位が規制される。この規制により、ラップスプリング11は、駆動プーリ7の内周面7Sの内方側の決まった位置に拘束され内周面7Sに接触して偏摩耗させることがなく、摩耗を抑制できる。また、クラッチ遮断状態でのラップスプリング11の駆動プーリ7の内周面7Sへの接触がなく、クラッチ結合時のラップスプリング11の駆動プーリ7の内周面7Sへの均一な圧着を実現可能とするため、駆動エネルギーを無駄に消費する不都合が解消される。
【0059】
(第2別実施形態)
図9に示すように、この第2別実施形態のウォータポンプでは、前述した実施形態と比較して駆動部材12の支持形態が異なり、作動部材13と中間部材15との配置も異なるものであるが、第1別実施形態と同様にラップスプリング11が駆動側回転体としての駆動プーリ7の内周面7Sに圧接することで駆動力を伝える伝動状態を作り出し、ラップスプリング11が内周面7Sから離間することで駆動力を遮断する遮断状態を作り出すように電磁クラッチCが構成されている。
【0060】
シャフト3の外端に駆動部材12のボス部12Gを嵌合支持し、このボス部12Gに対しプーリ軸受6を介して回転軸芯Xを中心に回転自在に駆動プーリ7(駆動側回転部材の一例)を支持している。駆動部材12のボス部12Gには3つの駆動アーム12Aが形成され、夫々の駆動アーム12Aの先端部分が駆動プーリ7の内周面7Sの近傍で回転軸芯Xと平行する姿勢に屈曲形成されている。また、ボス部12Gの外周に回転軸芯Xを中心に回転自在、且つ、回転軸芯Xに沿って移動自在にアーマチュアとしての作動部材13を遊嵌支持している。この作動部材13はディスク状部13Aを有すると共に、このディスク状部13Aの外周に対して外方に突出する形態で係合凹部を有する3つの係合部13Bが一体的に形成されている。
【0061】
また、駆動部材12の3つの駆動アーム12Aの外側で、駆動プーリ7の内周面7Sとの間にラップスプリング11が配置される。そして、3つの駆動アーム12Aのうちの1つの駆動アーム12Aの係合孔部12Bにラップスプリング11の一端側11Aを挿通する形態で、この一端側11Aが駆動部材12に連結している。また、作動部材13の3つの係合部13Bの1つにラップスプリング11の他端側11Bを挿通する形態で、この他端側11Bが作動部材に係合連結している。
【0062】
作動部材13と対向する位置にヨーク17に電磁ソレノイドSが配置され、この作動部材13と駆動部材12との間のボス部12Gの外周に、回転軸芯Xを中心に回転自在、且つ、回転軸芯Xに沿って移動自在に中間部材15が遊嵌支持されている。中間部材15は3つの板バネ14により駆動部材12に支持され、これにより駆動部材12と中間部材15とが一体回転し、回転軸芯Xに沿って移動自在となる。駆動部材12のボス部12Gの外周に形成された環状溝にバネ板材で成る付勢プレート24が回転軸芯Xを中心に回転自在に支持され、この付勢プレート24の外周部分と、作動部材13の外周部分とが複数の作動ロッド25により連結されている。
【0063】
3つの駆動アーム12Aがラップスプリング11の内方(回転軸芯Xに接近する方向)に配置されるため、この3つの駆動アーム12Aがラップスプリング11変位を規制する第1保持部R1に兼用されている。また、3つの駆動アーム12Aのうち延出側の端部と、中間部とにはラップスプリング11の方向に突出する突出片を形成し、この一対の突出片によりラップスプリング11の回転軸芯Xの方向に沿う変位を規制する第2保持部R2が構成されている。
【0064】
この第2別実施形態で、電磁ソレノイドSが非駆動状態にある場合には、ラップスプリング11が、その付勢力により駆動プーリ7の内周面7Sに圧接して電磁クラッチCは伝動状態に維持される。この状態において電磁ソレノイドSのコイル18を駆動した場合には、実施形態と同様に電磁ソレノイドSの吸着面に作動部材13が吸着され作動部材13の回転が阻止される。この回転阻止状態での主孔部13Hと副孔部15Hとの相対的な位置関係から駆動部材12と中間部材15とが一体的に回転する。この後に、ラップスプリング11が駆動プーリ7の内周面7Sから離間する状態に達した時点での主孔部13Hと副孔部15Hとの相対的な位置関係において、中間部材15が作動部材13に吸着されることで、中間部材15の回転も阻止され、電磁クラッチCは、遮断状態に拘束されるのである。
【0065】
このように、電磁クラッチCが遮断状態に切り換えられた場合には、ラップスプリング11が駆動プーリ7の内周面7Sから離間して第1保持部R1に接触するため回転軸芯Xから離間または接近する方向への変位が規制されると同時に、第2保持部R2によって回転軸芯Xに沿う方向への変位が規制される。この規制により、ラップスプリング11は、駆動プーリ7の内周面7Sの内方側の決まった位置に拘束され内周面7Sに接触して偏摩耗させることがなく、摩耗を抑制できる。また、クラッチ遮断状態でのラップスプリング11の駆動プーリ7の内周面7Sへの接触がなく、クラッチ結合時のラップスプリング11の駆動プーリ7の内周面7Sへの均一な圧着を実現可能とするため、駆動エネルギーを無駄に消費する不都合が解消される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ウオータポンプ以外にラジエータファンや過給器等の伝動系にも利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
3 非駆動側回転体(シャフト)
7B 駆動側回転体(筒状部)
11 ラップスプリング
12 駆動部材
11A 一端側
11B 他端側
13 作動部材
13H 主孔部
15 中間部材
15H 副孔部
R 規制手段
R1 第1保持部
R2 第2保持部
S 電磁ソレノイド
X 回転軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を受けることで回転軸芯を中心にして回転する駆動側回転体と、
前記回転軸芯と同軸芯に配置される被駆動側回転体と、
前記駆動側回転体に対し、自然状態で圧着状態となるよう巻き回されたラップスプリングと、
前記被駆動側回転体に固定されると共に前記ラップスプリングの一端側が連結する駆動部材と、
磁性体で形成され、前記ラップスプリングの他端側が連結する状態で前記被駆動側回転体に対して前記回転軸芯を中心にして相対回転可能であり、前記回転軸芯に沿って移動可能な作動部材と、
前記作動部材を吸着固定する磁力を発生させるよう静止系に設けられた電磁ソレノイドと、
前記電磁ソレノイドに通電して前記作動部材を吸着固定した際に、前記駆動側回転体との摩擦力あるいは動慣性によって前記駆動部材が前記作動部材に対して相対回転し、前記筒状部に対する前記ラップスプリングの圧着状態を解消して前記駆動側回転体から前記被駆動側側回転体への動力伝達を遮断するように構成し、
前記作動部材が前記電磁ソレノイドに吸着固定された状態で前記ラップスプリングが押し付け固定されるよう前記駆動部材に設けたスプリング保持部を備えている電磁クラッチ。
【請求項2】
前記スプリング保持部が、前記ラップスプリングの前記回転軸芯を中心にした半径方向での変位を規制する第1保持部を備えている請求項1記載の電磁クラッチ。
【請求項3】
前記スプリング保持部が、前記ラップスプリングの前記回転軸芯に沿う方向での変位を規制する第2保持部を備えている請求項1又は2記載の電磁クラッチ。
【請求項4】
前記作動部材において前記電磁ソレノイドが吸着する面に主孔部を形成し、前記中間部材において前記作動部材からの磁束が作用する面に副孔部を形成し、この作動部材と中間部材とで拘束手段が構成され、
前記拘束手段は、前記電磁ソレノイドへの通電により前記作動部材が前記電磁ソレノイドに吸着され回転が阻止された後に動慣性による前記駆動側回転体の回転を許し、この回転により前記駆動側回転体に対する前記ラップスプリングの圧着が解除される回転位相に達した時点で前記中間部材に作用する吸引力を増大させ、この吸引力により前記中間部材を作動部材に吸着して回転を阻止するように前記主孔部と副孔部との位置関係が設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁クラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−100888(P2013−100888A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245824(P2011−245824)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)