説明

電磁弁

【課題】弁座部材が圧入される弁本体の円筒部の公差を緩和して、円筒部が嵌合される装着穴と円筒部との間のシール性向上を図り、低コスト化を可能にした電磁弁を提供する。
【解決手段】電磁弁1は、装着穴31に嵌合される円筒部11aを有するベース11と、供給通路11cに連通する第1弁座14aを有する第1弁座部材14と、ドレン通路11iに連通する第2弁座15aを有する第2弁座部材15と、第1弁座14aおよび第2弁座15aに選択的に当接されるボール弁16と、弁室11eに連通し円筒部11aの外周部に形成された制御液環状溝17と、装着穴31にシール可能に嵌合する第1および第2シール部18、19と、ボール弁16を第1弁座14aまたは第2弁座15aに押圧させる電磁部20とを備える。第1弁座部材14が圧入される第1圧入穴11dを、制御液環状溝17の軸線方向幅の範囲内で供給通路11cと弁室11eとの間に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の動弁制御装置や自動変速装置等において使用される電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の動弁制御装置や自動変速装置等において使用される電磁弁として、特許文献1および2に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、調圧部(流路制御部)とソレノイド部(電磁部)とを備え、ソレノイド部でプランジャを磁力で駆動することにより調圧部で弁を開閉し、調圧部が取付穴(装着穴)に挿入された状態で使用される電磁弁が開示されている。この特許文献1では、調圧部は、筒型コアの内周に弁座部材としてのベース部材を圧入した構造を有しており、さらにその調圧部には、ベース部材の圧入に伴う筒型コアの外形形状の変化を抑える圧入変形抑制構造が設けられている。具体的な圧入変形抑制構造として、円筒コア内部に空隙部を設けることが例示されている。
【0004】
そして、特許文献2には、弁機構(流路制御部)と該弁機構に接続するソレノイド機構(電磁部)とを備えた三方電磁弁が開示されている。弁機構は、ボール弁部材を収容するボール弁収容部材と、吸入口を形成する弁座部材としての蓋部材とを備えており、該蓋部材は、ボール弁収容部材に圧入されながらかしめられて固定されている。また、ソレノイド機構は、プランジャ部材を収容するプランジャ収容部材と、該プランジャ収容部材内に収容したプランジャ部材を封止する封止部材とを備えており、該封止部材は、プランジャ収容部材に圧入されながらかしめられて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−154883号公報
【特許文献2】特開2005−240852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の電磁弁においては、ベース部材を円筒コアの内周に圧入した際に円筒コアが径方向外方へ膨らむのを防止するために、円筒コア内部に空隙部を設けた圧入変形抑制構造を採用しているため、空隙部を形成する煩雑な加工が必要となり、コスト上昇を招くこととなる。
【0007】
一方、特許文献2の電磁弁においては、蓋部材を、ボール弁収容部材に圧入しながらかしめて固定するようにしていることから、蓋部材を圧入した際にボール弁収容部材が径方向外方へ膨らむため、ボール弁収容部材の外径にその膨らみを考慮した公差が必要になり、しかもその公差の設定は狭い範囲に強いられるため厳しくなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、弁座部材が圧入される弁本体の円筒部の公差を緩和して、円筒部が嵌合される装着穴と円筒部との間のシール性の向上を図るとともに、低コスト化を可能にした電磁弁を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1に係る発明の構成上の特徴は、装着穴に嵌合されるとともに前記装着穴の軸線方向に延在する円筒部が先端に設けられた弁本体と、前記円筒部に設けられた供給通路に連通する第1弁座と、前記円筒部に設けられたドレン通路に連通する第2弁座と、前記第1弁座および前記第2弁座に選択的に当接されるボール弁と、前記第1弁座と前記第2弁座との間に配置された弁室に連通し前記円筒部の外周部に形成された制御液環状溝と、前記制御液環状溝と前記供給通路の開口部との間に形成され、前記装着穴にシール可能に嵌合する第1シール部と、前記制御液環状溝と前記ドレン通路の開口部との間に形成され、前記装着穴にシール可能に嵌合する第2シール部と、前記弁本体に取り付けられ前記ボール弁を前記第1弁座または前記第2弁座に押圧させる電磁部と、を備え、前記第1弁座が第1弁座部材に形成され、前記第1弁座部材が圧入される第1圧入穴が前記軸線方向において前記制御液環状溝の範囲内で前記供給通路と前記弁室との間に形成されていることである。
【0009】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記第2弁座が形成された第2弁座部材を備え、前記第2弁座部材が圧入され前記第1圧入穴より小径の第2圧入穴が前記軸線方向において前記制御液環状溝の範囲内で前記ドレン通路と前記弁室との間に形成されていることである。
【0010】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記第1圧入穴と前記弁室との間には、前記第1弁座部材の先端に形成されたテーパ部の先端面が当接する第1段差が形成され、前記第2圧入穴と前記ドレン通路との間には、前記第2弁座部材の先端に形成されたテーパ部の先端面が当接する第2段差が形成されていることである。
【0011】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記電磁部の非通電時には、前記電磁部のプランジャがばね部材のばね力で付勢されることにより前記ボール弁が前記第1弁座に押圧されるノーマルクローズタイプのものであることである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、第1弁座部材が圧入される第1圧入穴は、装着穴の軸線方向に延在する弁本体の円筒部の外周部に設けられた制御液環状溝の範囲内で供給通路と弁室との間に形成されていることから、第1圧入穴に第1弁座部材が圧入されたときに発生する円筒部の径方向外方への膨らみが制御液環状溝に吸収される。そのため、円筒部の制御液環状溝以外の第1および第2シール部の外径が、第1弁座部材の圧入によって大きくなることが回避される。これにより、第1および第2シール部の外径並びに装着穴の内径の公差を、第1弁座部材の圧入による外径の拡大を考慮して厳しく設定する必要がなくなるので、装着穴と第1および第2シール部との間のシール性が向上するとともに、低コスト化が可能となる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、第2弁座部材が圧入される第2圧入穴は、装着穴の軸線方向に延在する弁本体の円筒部の外周部に設けられた制御液環状溝の範囲内でドレン通路と弁室との間に形成されていることから、第2圧入穴に第2弁座部材が圧入されたときに発生する円筒部の径方向外方への膨らみが制御液環状溝に吸収される。そのため、円筒部の制御液環状溝以外の第1および第2シール部の外径が大きくなることが回避される。これにより、第1および第2シール部の外径並びに装着穴の内径の公差を緩和することができるので、シール性を向上して低コスト化が可能となる。また、第2弁座部材が弁本体と別体に形成されるため、第2弁座部材の製作が容易になる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、第1圧入穴と弁室との間には、第1弁座部材の先端に形成されたテーパ部の先端面が当接する第1段差が形成され、第2圧入穴とドレン通路との間には、第2弁座部材の先端に形成されたテーパ部の先端面が当接する第2段差が形成されている。これにより、第1弁座部材のテーパ部と第1段差とにより第1空間部が形成され、第2弁座部材のテーパ部と第2段差とにより第2空間部が形成されるので、第1および第2弁座部材のそれぞれの圧入時に発生した異物を、第1および第2空間部に封じ込めることができる。そのため、異物が弁部に噛み込まれることを回避することができる。また、第1および第2弁座部材の先端にはそれぞれテーパ部が設けられているので、第1または第2圧入穴へのそれらの圧入を容易に行うことができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、電磁弁は、電磁部の非通電時には、電磁部のプランジャがばね部材のばね力で付勢されることによりボール弁が第1弁座に押圧されるノーマルクローズタイプのものであるため、ボール弁のクローズ時において、第1および第2シール部に液圧が作用するが、本発明に係る電磁弁では第1および第2シール部と装着穴との間で十分なシール性を確保することができる。そのため、通常時(クローズ状態時)に、第1および第2シール部のシール機能を確実に果たして圧力液体の漏洩を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る電磁弁の全体構成を示す軸方向断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る電磁弁の実施形態について図1および図2を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る電磁弁1の全体構成を示す軸方向断面図である。図2は、図1の要部(ボール弁近傍部)を拡大して示す要部拡大断面図である。本実施形態の電磁弁1は、例えば車両の自動変速機等に装着されて使用されるものであって、図1に示すように、流路制御部10と、流路制御部10と連結して一体に形成された電磁部20とを備えている。
【0018】
流路制御部10は、自動変速機30に設けられた円柱状の装着穴31に先端側(図1の左側、以後同じ)が嵌合されるとともに装着穴31の軸線方向に延在する円筒部11aと、円筒部11aの後端(図1の右側端、以後同じ)から径方向外方に張り出すリング状のフランジ部11bとを有する弁本体としてのベース11を備えている。装着穴31に同軸状に嵌合される円筒部11aの内周側には、先端側から順番に、先端側に開口部を有する制御液の供給通路11cと、リング状の第1弁座部材14が圧入される第1圧入穴11dと、弁室11eと、リング状の第2弁座部材15が圧入される第2圧入穴11fと、電磁部20により作動するシャフト26が嵌挿される円孔11gと、電磁部20のプランジャ25の一部が嵌挿される嵌挿孔11hとが設けられている。
【0019】
弁室11eの直径は、第1圧入穴11dの直径よりも小さくされている。これにより、第1圧入穴11dと弁室11eとの間には、第1段差12が形成されている。この第1段差12には、供給通路11c側から第1圧入穴11dに圧入された第1弁座部材14の圧入方向先端に形成されたテーパ部の先端面が当接している。これにより、図2に示すように、第1弁座部材14のテーパ部と第1段差12とにより第1空間部12aが形成されている。弁室11eの外周側には、円筒部11aを放射方向に貫通し円筒部11aの外周面に開口する複数の制御通路11iが設けられている。
【0020】
第2圧入穴11fの直径は、第1圧入穴11dおよび弁室11eの直径よりも小さくされている。これにより、第2圧入穴11fと円孔11gとの間には、第2段差13が形成されている。この第2段差13には、供給通路11c側から第2圧入穴11fに圧入される第2弁座部材15の圧入方向先端に形成されたテーパ部の先端面が当接している。これにより、図2に示すように、第2弁座部材15のテーパ部と第2段差13とにより第2空間部13aが形成されている。円孔11gの後端側には、円筒部11aを放射方向に貫通し円筒部11aの外周面に開口する複数のドレン通路11jが設けられている。
【0021】
第1圧入穴11dに圧入された第1弁座部材14の後端側面の中央部には、先端側へ凹んだ第1弁座14aが形成されている。この第1弁座14aは、第1弁座部材14の中央貫通孔を介して供給通路11cに連通している。また、第2圧入穴11fに圧入された第2弁座部材15の先端側面の中央部には、後端側へ凹んだ第2弁座15aが形成されている。この第2弁座15aは、第2弁座部材15の中央貫通孔を介して円孔11gおよびドレン通路11jに連通している。
【0022】
第1弁座14aと第2弁座15aとの間に形成された略円柱状の空間部よりなる弁室11eには、ボール弁16が配設されている。このボール弁16は、弁室11eの後端側に配設され電磁部20により作動するシャフト26によって、第1弁座14aと第2弁座15aとに選択的に着座(当接)するようになっている。ボール弁16が第1弁座14aに着座したときには、供給通路11cと制御通路11iの連通が遮断され、供給通路11cから制御通路11iへの制御液の供給が不可能となる。一方、ボール弁16が第2弁座15aに着座したときには、供給通路11cが開放して制御通路11iと連通し、供給通路11cから制御通路11iへの制御液の供給が可能となる。
【0023】
円筒部11aの外周面には、制御通路11iを介して弁室11eに連通する制御液環状溝17が設けられている。この制御液環状溝17は、制御通路11iの開口を含む所定の軸線方向幅Wで周方向に1周するように形成されている。制御液環状溝17の軸線方向先端側の端部は、第1弁座部材14が圧入された第1圧入穴11dよりも軸線方向先端側に位置し、制御液環状溝17の軸線方向後端側の端部は、第2弁座部材15が圧入された第2圧入穴11fよりも軸線方向後端側に位置している。即ち、第1弁座部材14が圧入された第1圧入穴11dは、制御液環状溝17の軸線方向幅Wの範囲内で供給通路11cと弁室11fとの間に形成されており、第2弁座部材15が圧入された第2圧入穴11fは、制御液環状溝17の軸線方向幅Wの範囲内でドレン通路11jと弁室11eとの間に形成されている。
【0024】
円筒部11a外周面の制御液環状溝17と供給通路11cの開口部との間には、自動変速機30の装着穴31にシール可能に嵌合する第1シール部18が設けられている。また、円筒部11a外周面の制御液環状溝17とドレン通路11jの開口部との間には、自動変速機30の装着穴31にシール可能に嵌合する第2シール部19が設けられている。第1および第2シール部18、19と装着穴31との間のクリアランスは、電磁弁1の装着穴31への取付け性を考慮すると、0〜100μmの範囲に設定されているのが好ましく、より好ましくは20〜50μmの範囲である。
【0025】
ベース11の後端側に配設された電磁部20は、ケース21、ボビン22、ヨーク23、コイル24、プランジャ25、シャフト26、スプリング27、コア28、コネクタ29等により構成されている。ケース21は、円筒状の本体部21aと、本体部21aの先端側端部から径方向内方へ張り出すリング状のフランジ部21bと、本体部21aに取り付けられたブラケット21cとを有する。ケース21は、先端側の内部にベース11のフランジ部11bを収納した状態で、ベース11と同軸状に配設されている。ボビン22は、樹脂材により略円筒形状に形成され、ケース21の本体部21aの内側に配設されている。
【0026】
ヨーク23は、円筒基部23aと、円筒基部23aの先端側端部から径方向外方に張り出すフランジ部23bとからなり、磁性材料により形成されている。ヨーク23は、フランジ部23bがベース11のフランジ部11bと軸線方向に対向し、円筒基部23aがボビン22の内側に位置する状態で、ボビン22と同軸状に配設されている。また、コイル24は、ボビン22の外周面に巻回されている。
【0027】
プランジャ25は、磁性材料により有底円筒状に形成されている。プランジャ25は、底部側の一部がベース11の嵌挿孔11h内に嵌挿された状態で、ヨーク23の円筒基部23aの内側に軸線方向に往復移動可能に挿通されている。プランジャ25の底部側の端面には、シャフト26の後端側端部が同軸的に圧入固定されており、シャフト26とプランジャ25は一体になって軸線方向に往復移動可能となっている。プランジャ25の円筒部の内部空間には、ばね部材としてのスプリング27が収容されている。
【0028】
コア28は、磁性材料によりフランジ部付き有底円筒状に形成されている。コア28は、ケース21の後端側の開口部に底部側より圧入されて、プランジャ25の後端側に同軸状に配設されている。プランジャ25の後端側の端面とコア28の底部外面とは、磁気ギャップを形成している。結果として、コア28、プランジャ25およびヨーク23により磁気回路を形成している。コア28の底部には、プランジャ25の円筒部の内部空間に収容されたスプリング27の後端側が当接し支持されている。これにより、プランジャ25およびシャフト26は、スプリング27の付勢力により常時先端側へ付勢されており、シャフト26の先端側端部は、弁室11eに配設されたボール弁16に当接し、常時ボール弁16を先端側方向へ付勢している。
【0029】
コネクタ29は、ケース21の後端側の開口部内周、およびコア28の円筒部内周に圧入されて、コア28の後端側に配設されている。このコネクタ29は、コイル24を通電するために設けられており、内部のターミナル端子29aは、コイル24と電気的に接続されている。このコネクタ29は、ターミナル端子29aを図略の電流制御装置等に電気的に接続することにより、コイル24に通電する電流を制御できるようになっている。
【0030】
なお、本実施形態の電磁弁1は、電磁部20の非通電時には、プランジャ25がスプリング27のばね力で付勢されることによりボール弁16が第1弁座14aに押圧されて着座するノーマルクローズタイプのものである。
【0031】
次に、上記のように構成された本実施形態の電磁弁1の作動について説明する。本実施形態の電磁弁1は、図1に示すように、ベース11の円筒部11aが自動変速機30に設けられた装着穴31に嵌合されて、ブラケット21cを図略のボルトで固定することによって取り付けられる。これにより、電磁弁1の供給通路11cが自動変速機30側の供給ポート32と連通し、電磁弁1の制御通路11iが自動変速機30側の制御ポート33と連通する。
【0032】
図1に示すように、電磁部20のコイル24が非通電時の状態では、スプリング27のばね力でボール弁16が第1弁座14aに押圧されて着座することにより、供給通路11cと制御通路11iとの連通が遮断されている一方、制御通路11iとドレン通路11jとは連通しているので、制御通路11iの制御液圧力はドレン通路11jのドレン圧となっている。この状態で、コイル24に通電させると、コア28、プランジャ25およびヨーク23により形成された前述の磁気回路に磁束が発生し、プランジャ25は、コア28の円筒部に向かって軸線方向に吸引され、スプリング27の付勢力に抗して後端側に移動する。
【0033】
その結果、ボール弁16は、供給通路11cからの制御液圧力に押されて、第1弁座14aから離間して第2弁座15aに着座(当接)するので、供給通路11cと制御通路11iとが連通する一方、制御通路11iとドレン通路11jとの連通が遮断され、制御通路11iの制御液圧力は供給通路11cの供給圧となっている。したがって、コイル24に通電する電流値をON/OFFすることにより、制御通路11iの制御液圧力をON/OFF制御することができる。これにより、制御対象の制御に使用される制御液の圧力・流量等を制御することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態の電磁弁1によれば、第1弁座部材14が圧入される第1圧入穴11dは、ベース11の円筒部11aの外周部に設けられた制御液環状溝17の軸線方向幅Wの範囲内で供給通路11cと弁室11eとの間に形成されている。これにより、第1圧入穴11dに第1弁座部材14が圧入されたときに発生する円筒部11aの径方向外方への膨らみが制御液環状溝17に吸収される。そのため、円筒部11aの制御液環状溝17以外の第1および第2シール部18、19の外径が、第1弁座部材14の圧入によって大きくなることが回避される。これにより、第1および第2シール部18、19の外径並びに装着穴の内径の公差を、第1弁座部材14の圧入による外径の拡大を考慮して厳しく設定する必要がなくなるので、装着穴31と第1および第2シール部18、19との間のシール性が向上するとともに、低コスト化が可能となる。
【0035】
また、第2弁座部材15が圧入される第2圧入穴11fは、ベース11の円筒部11aの外周部に設けられた制御液環状溝17の軸線方向幅Wの範囲内でドレン通路11jと弁室11eとの間に形成されていることから、第2圧入穴11fに第2弁座部材15が圧入されたときに発生する円筒部11aの径方向外方への膨らみが制御液環状溝17に吸収される。そのため、円筒部11aの制御液環状溝17以外の第1および第2シール部18、19の外径が大きくなることが回避される。これにより、第1および第2シール部18、19の外径並びに装着穴31の内径の公差を緩和することができるので、シール性を向上して低コスト化が可能となる。また、第2弁座部材15がベース11と別体に形成されるため、第2弁座部材15の製作が容易になる。
【0036】
また、第1圧入穴11dと弁室11eとの間には、第1弁座部材14の先端に形成されたテーパ部の先端面が当接する第1段差12が形成され、第2圧入穴11fとドレン通路11jとの間には、第2弁座部材15の先端に形成されたテーパ部の先端面が当接する第2段差13が形成されている。これにより、第1弁座部材14のテーパ部と第1段差12とにより第1空間部12aが形成され、第2弁座部材15のテーパ部と第2段差13とにより第2空間部13aが形成されるので、第1および第2弁座部材14、15のそれぞれの圧入時に発生した異物を、第1および第2空間部12a、13aに封じ込めることができる。そのため、異物が弁部に噛み込まれることを回避することができる。また、第1および第2弁座部材14、15の先端にはそれぞれテーパ部が設けられているので、第1または第2圧入穴11d、11fへのそれらの圧入を容易に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態の電磁弁1は、ノーマルクローズタイプのものであるため、ボール弁16のクローズ時において、第1および第2シール部18、19に液圧が作用するが、本実施形態の電磁弁1では第1および第2シール部18、19と装着穴31との間で十分なシール性を確保することができる。そのため、通常時(クローズ状態時)に、第1および第2シール部18、19のシール機能を確実に果たして圧力液体の漏洩を防止することができる。
【0038】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、ノーマルクローズタイプの電磁弁の例を説明したが、電磁部の非通電時に、ボール弁16が第1弁座14aから離間して供給通路11cと制御通路11iとを連通するように構成されるノーマルオープンタイプの電磁弁にも本発明を適用することができる。
【0040】
また、上記実施形態では、単独に形成された第2弁座部材15に第2弁座15aが設けられているが、円筒部11aの一部を利用して第2弁座15aを円筒部11aに直接設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…電磁弁、 10…流路制御部、 11…ベース(弁本体)、 11a…円筒部、 11b…フランジ部、 11c…供給通路、 11d…第1圧入穴、 11e…弁室、 11f…第2圧入穴、 11g…円孔、 11h…嵌挿孔、 11i…制御通路、 11j…ドレン通路、 12…第1段差、 12a…第1空間部、 13…第2段差、 13a…第2空間部、 14…第1弁座部材、 14a…第1弁座、 15…第2弁座部材、 15a…第2弁座、 16…ボール弁、 17…制御液環状溝、 18…第1シール部、 19…第2シール部、 20…電磁部、 21…ケース、 22…ボビン、 23…ヨーク、 24…コイル、 25…プランジャ、 26…シャフト、 27…スプリング(ばね部材)、 28…コア、 29…コネクタ、 30…自動変速機、 31…装着穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着穴に嵌合されるとともに前記装着穴の軸線方向に延在する円筒部が先端に設けられた弁本体と、
前記円筒部に設けられた供給通路に連通する第1弁座と、
前記円筒部に設けられたドレン通路に連通する第2弁座と、
前記第1弁座および前記第2弁座に選択的に当接されるボール弁と、
前記第1弁座と前記第2弁座との間に配置された弁室に連通し前記円筒部の外周部に形成された制御液環状溝と、
前記制御液環状溝と前記供給通路の開口部との間に形成され、前記装着穴にシール可能に嵌合する第1シール部と、
前記制御液環状溝と前記ドレン通路の開口部との間に形成され、前記装着穴にシール可能に嵌合する第2シール部と、
前記弁本体に取り付けられ前記ボール弁を前記第1弁座または前記第2弁座に押圧させる電磁部と、を備え、
前記第1弁座が第1弁座部材に形成され、
前記第1弁座部材が圧入される第1圧入穴が前記軸線方向において前記制御液環状溝の範囲内で前記供給通路と前記弁室との間に形成されている電磁弁。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2弁座が形成された第2弁座部材を備え、
前記第2弁座部材が圧入され前記第1圧入穴より小径の第2圧入穴が前記軸線方向において前記制御液環状溝の範囲内で前記ドレン通路と前記弁室との間に形成されている電磁弁。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1圧入穴と前記弁室との間には、前記第1弁座部材の先端に形成されたテーパ部の先端面が当接する第1段差が形成され、
前記第2圧入穴と前記ドレン通路との間には、前記第2弁座部材の先端に形成されたテーパ部の先端面が当接する第2段差が形成されている電磁弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記電磁部の非通電時には、前記電磁部のプランジャがばね部材のばね力で付勢されることにより前記ボール弁が前記第1弁座に押圧されるノーマルクローズタイプのものである電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−108573(P2013−108573A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254652(P2011−254652)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】