説明

電線供給装置

【課題】電線処理機に複数種類の電線を選択的に供給することができ、電線処理機の処理効率の向上を図ることができる電線供給装置を提供する。
【解決手段】電線3を前方に搬送する搬送機構96と、左右方向に移動可能なスライダ37と、スライダ37に着脱自在に支持された複数の電線カセット33と、各電線カセット33に取り付けられた複数の電線保持アーム50と、を備えている。搬送ラインP上にある電線保持アーム50に保持された電線3を搬送機構96によって搬送している間に、搬送ラインP上にある電線保持アーム50が取り付けられた電線カセット33以外の他の電線カセット33が、スライダ37に対して着脱自在となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の電線を選択的に供給可能であって、供給する電線を適宜に交換することのできる電線供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイヤハーネスの製造等において、電線処理機がよく用いられている。電線処理機は、芯線とその芯線を覆う被覆部とを有する電線に所定の処理を施す装置である。電線処理機は、例えば、電線の切断、被覆部の剥ぎ取り、および電線に対する端子の圧着等を自動的に連続して行うように構成されている。
【0003】
電線処理機として、仕様の異なる複数種類の電線を処理できるように構成された電線処理機が知られている。例えば、芯線の直径、被覆部の直径、被覆部の材料、または被覆部の色等が異なる複数種類の電線を処理できる電線処理機が知られている。
【0004】
そのような電線処理機に対しては、複数種類の電線を適宜に供給する必要がある。近年、ワイヤハーネス等の多品種少量生産化が進んでいる。そのため、電線処理機に供給する電線を迅速かつ頻繁に交換しなければならないことが多い。そこで、従来から、供給する電線を適宜に交換可能な電線供給装置が提案されている。
【0005】
特許文献1には、そのような電線供給装置が記載されている。特許文献1に記載された電線供給装置は、電線を案内する複数の電線案内ノズルを備えている。それら複数の電線案内ノズルは上下に配列され、互いに組み付けられることによって電線案内ノズルユニットを構成している。電線案内ノズルユニットは、上下移動可能なノズルベースに取り付けられている。ノズルベースが適宜に上下移動することにより、いずれか一つの電線案内ノズルが選択され、その電線案内ノズル内の電線が電線処理機に供給されることになる。
【0006】
上記特許文献1に記載の電線供給装置によれば、電線案内ノズルユニットは、ノズルベースに対し着脱可能に構成されている。すなわち、各電線案内ノズルを個別に着脱する必要がなく、すべての電線案内ノズルを一括して着脱することができる。電線案内ノズルユニットをノズルベースから取り外し、その電線案内ノズルユニットに含まれる電線案内ノズルを、電線供給装置の外部で交換することができる。このように、電線案内ノズルの組み付けは電線供給装置の外部で行うことができ、いわゆる外段取りが可能である。特許文献1には、外段取りが可能であるため、生産性の向上を図ることができる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−334991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記電線供給装置では、電線案内ノズルユニットの交換の際には、装置の動作を停止しなければならない。言い換えると、電線案内ノズルユニットの交換の際には、電線処理機に対する電線の供給を停止しなければならない。そのため、電線処理機における電線の処理を一時的に停止せざるを得ず、電線処理機の処理効率の向上(言い換えると、ワイヤハーネスの生産性の向上)を十分に図ることができるとは言い難かった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電線処理機に複数種類の電線を選択的に供給することができ、電線処理機の処理効率の向上を図ることができる電線供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電線供給装置は、複数種類の電線を選択的に供給する電線供給装置であって、電線の搬送ラインに沿った位置に配置され、電線を搬送する搬送機構と、前記搬送ラインと直交する方向に移動可能な移動機構と、前記移動機構に着脱自在に支持された複数の電線カセットと、前記各電線カセットに取り付けられ、前記搬送ラインに沿って配置され、または前記搬送ラインと平行な方向に配置され、それぞれ種類の異なる複数の電線を搬送自在に保持する複数の電線保持機構と、を備え、前記搬送ライン上にある電線保持機構に保持された電線を前記搬送機構によって搬送している間に、前記搬送ライン上にある電線保持機構が取り付けられた電線カセット以外の他の電線カセットが、前記移動機構に対して着脱自在となっているものである。
【0011】
上記電線供給装置によれば、搬送ライン上にある電線保持機構に保持された電線を搬送している間に、その電線保持機構が取り付けられた電線カセット以外の他の電線カセットが移動機構に対して着脱自在である。そのため、電線の搬送中に他の電線カセットを交換することができる。すなわち、電線処理機に対する電線の供給を停止せずに、複数の電線保持機構を一括して交換することができる。したがって、電線カセットの交換の際に、電線処理機の処理を一時的に停止する必要がない。よって、電線処理機の処理効率を向上させることができる。
【0012】
前記電線供給装置は、供給する電線の種類および順序に関する情報を記憶している記憶装置と、前記記憶装置に記憶されている情報に基づいて、前記搬送ライン上にある電線保持機構を前記搬送ラインから移動させると共に、他の電線保持機構を前記搬送ライン上に移動させるように、前記移動機構を制御する制御装置とを備えていることが好ましい。
【0013】
上記電線供給装置によれば、記録装置に記憶されている情報に基づいて制御装置が移動機構を制御することにより、搬送ライン上に位置する電線保持機構が適宜に交換される。そのため、電線カセットに取り付けられた複数の電線保持機構に保持された複数種類の電線が、適宜に且つ自動的に選択されて供給される。
【0014】
前記各電線カセットには、持ち手を有するハンドルが設けられ、前記各電線カセットに取り付けられたすべての電線保持機構は、前記電線カセットと一体的に移動可能なように前記電線カセットに取り付けられていてもよい。
【0015】
このことにより、ユーザは、ハンドルの持ち手を持って電線カセットを移動させることにより、複数の電線保持機構を一括して交換することができる。そのため、複数の電線保持機構を迅速に交換することができる。
【0016】
前記電線供給装置は、各電線カセットの電線保持機構に供給される複数種類の電線がそれぞれ巻かれた複数のリールを収容する移動可能な棚を備えていてもよい。
【0017】
このことにより、複数のリールを棚と共に移動させることによって、各電線カセットの電線保持機構に供給される複数種類の電線を一括して移動させることができる。リールに巻かれた電線を電線保持機構に保持させる作業や、電線カセットに取り付けられる電線保持機構を交換する作業等を、他の場所で行うことが可能となる。
【0018】
前記棚は、キャスターを有する台車からなっていてもよい。
【0019】
このことにより、リールを電線カセットと共に移動させる作業が容易となる。
【0020】
前記電線供給装置は、一対の板状部材を有し、前記搬送ライン上の電線保持機構に供給される電線を前記両板状部材の間に導入する一方、それ以外の電線を前記板状部材の外側に位置づけることによって、電線を仕分けるセパレータを備えていてもよい。
【0021】
このことにより、電線が絡み合うことを防止することができる。
【0022】
前記セパレータは、前記搬送ラインに沿った作動位置と、前記搬送ラインから外れた退避位置との間で移動可能に構成されていてもよい。前記電線供給装置は、前記搬送ライン上に位置する電線保持機構から電線を供給するときには、当該電線が前記両板状部材の間に導入されるように前記セパレータを前記作動位置に移動させ、前記移動機構を移動させるときには前記セパレータを前記退避位置に移動させるセパレータ移動機構を備えていてもよい。
【0023】
このことにより、移動機構が移動して電線が交換されるときに、セパレータが移動機構、電線保持機構、または電線等と干渉することが防止される。
【0024】
前記電線供給装置は、電線を矯正する複数のローラを有し、前記搬送ラインに沿った作動位置と、前記搬送ラインから外れた退避位置との間で移動可能に構成された矯正ローラと、前記搬送ライン上に位置する前記電線保持機構から電線を供給するときには、前記矯正ローラを前記作動位置に移動させ、前記移動機構を移動させるときには前記矯正ローラを前記退避位置に移動させる矯正ローラ移動機構とを備えていてもよい。
【0025】
このことにより、電線の巻き癖等を矯正することができる。また、移動機構が移動して電線が交換されるときに、矯正ローラが移動機構、電線保持機構、または電線と干渉することが防止される。
【0026】
前記電線保持機構は、電線を搬送不能に固定するロック状態と、電線を搬送可能にするアンロック状態とに切り替え可能な電線ロック機構を備えていてもよい。前記電線供給装置は、前記搬送ライン上から移動する電線保持機構の電線ロック機構をアンロック状態からロック状態に切り替え、前記搬送ライン上に移動した電線保持機構の電線ロック機構をロック状態からアンロック状態に切り替えるロック状態切り替え装置を備えていてもよい。
【0027】
このことにより、搬送ラインから外れた位置にある電線保持機構から電線が外れてしまうことを防止することができる。そのため、供給される電線の交換を円滑に行うことができる。
【0028】
前記電線供給装置は、前記搬送ラインに沿って配置され、前記搬送ライン上に位置する電線保持機構に保持された電線を、前記電線保持機構に電線を供給する電線供給源側に引き戻す電線引き戻し機構を備えていてもよい。
【0029】
このことにより、搬送ライン上に位置する電線保持機構に保持された電線を引き戻すことができる。電線保持機構が移動機構の移動に伴って搬送ライン上から移動するのに便利な位置まで電線を引き戻すことにより、電線が移動の際に他の部分と干渉することを避けることができ、電線保持機構の移動を円滑化することができる。
【0030】
前記搬送ラインは前方に向かって延び、前記移動機構は左右方向に移動可能に構成され、前記電線カセットは前記移動機構の上に載置され、前記電線保持機構は、それぞれ前後方向に延び、互いに左右方向に並ぶように前記電線カセットに取り付けられていてもよい。
【0031】
このことにより、電線カセットを移動機構の上から持ち上げ、または、移動機構の上に置くことにより、電線カセットを移動機構に対して着脱することができる。電線カセットの着脱を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、電線処理機に複数種類の電線を選択的に供給することができ、電線処理機の処理効率の向上を図ることができる電線供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】電線供給装置および電線処理機の平面図である。
【図2】電線棚の側面図である。
【図3】電線交換装置の平面図である。
【図4】電線交換装置の側面図である。
【図5】カセットカバー等を外した状態の電線交換装置の平面図である。
【図6】電線カセットおよび電線保持アームの平面図である。
【図7】電線カセットおよび電線保持アームの側面図である。
【図8】電線カセットの挿入ブロックに対する電線保持アームの挿入態様を表す模式的な斜視図である。
【図9】電線カセットおよび電線保持アームの正面図である。
【図10】電線保持チャックの一部を破断して示す側面図であり、(a)はロック状態を表し、(b)はアンロック状態を表す。
【図11】電線ストッパの側面図であり、(a)はロック状態を表し、(b)はアンロック状態を表す。
【図12】コンピュータとその制御対象とを表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本実施形態に係る電線供給装置1および電線処理機2の平面図である。電線供給装置1は、複数種類の電線3を電線処理機2に選択的に供給する装置であって、供給する電線3を自動的に交換することのできるものである。以下の説明では、電線3の供給方向を前方とし、前、後、左、右は、電線3の進行方向を向いたときの方向をそれぞれ意味するものとする。図1の左、右、上、下は、それぞれ後、前、左、右となる。符号F、Re、L、Rは、それぞれ前、後、左、右を示すものとする。
【0035】
電線3は、金属製の芯線と、芯線の周囲を覆う樹脂からなる被覆部とを有している。電線処理機2は、電線3の切断、被覆部の剥ぎ取り、および端子の圧着を行う装置である。電線処理機2は、電線3を保持するフロント側およびリア側のクランプ装置4F,4Rと、電線3の切断および被覆部の剥ぎ取りを行うカッターユニット5と、電線3に端子を圧着するフロント側およびリア側の端子圧着ユニット6F,6Rとを備えている。クランプ装置4F,4Rは、根元部を中心に旋回可能に構成されている。クランプ装置4F,4Rが電線3を保持したまま旋回することにより、電線3の前端部および後端部がカッターユニット5と端子圧着ユニット6F,6Rとの間で移動する。フロント側の端子圧着ユニット6Fは、被覆部が剥ぎ取られた電線3の前端部に端子を圧着し、リア側の端子圧着ユニット6Rは、被覆部が剥ぎ取られた電線3の後端部に端子を圧着する。
【0036】
なお、上述の電線処理機2は一例に過ぎず、本実施形態に係る電線供給装置1は、他の構成を有する電線処理機と組み合わせられてもよいことは勿論である。例えば、本実施形態に係る電線処理機2は、電線3を旋回させることによって電線3の端部を移動させるものであるが、電線処理機2は電線3をスライドさせるものであってもよい。電線処理機2が行う処理は、電線3の切断、被覆部の剥ぎ取り、および端子の圧着のうちの1または2以上の処理であってもよく、電線処理機2はそれらとは別に、またはそれらと共に、他の処理を行うように構成されていてもよい。
【0037】
また、電線供給装置1が電線3を供給する対象は、電線処理機2に限られず、他の装置であってもよい。電線供給装置1が電線3を供給する対象は、特に限定される訳ではない。
【0038】
電線供給装置1は、電線交換装置11と複数の電線棚12とを有している。本実施形態では、2つの電線棚12が設けられている。ただし、電線棚12の個数は2つに限られない。電線棚12は3つ以上設けられていてもよい。電線棚12は移動可能となっている。
【0039】
図2に示すように本実施形態では、電線棚12は、キャスター21が取り付けられた台車22からなっている。台車22には、複数の収容部24が形成されている。各収容部24には、電線3が巻かれたリール23が収容されている。リール23は、電線3を供給する電線供給源である。図1に示すように、本実施形態では、電線棚12には6つのリール23が収容されている。ただし、1つの電線棚12に収容されるリール23の個数は6つに限られない。少なくとも2つのリール23には、互いに異なる種類の電線3が巻かれている。
【0040】
図2に示すように、台車22には、支柱25が形成されている。支柱25の上部には、仕分けローラ26が回転自在に支持されている。仕分けローラ26は、複数のリール23から送り出される複数の電線3を互いに絡み合わないように仕分ける仕分け装置を構成している。
【0041】
また、台車22は、後述する電線カセット33を支持可能なカセット支持部27を備えている。なお、図2は、カセット支持部27に電線カセット33が支持された状態を表している。カセット支持部27の構成は特に限定されないが、本実施形態では、カセット支持部27は、電線カセット33をコンパクトに収容可能なように、電線カセット33を立てた状態で支持するように形成されている。カセット支持部27は、例えば、電線カセット33が立てかけられるように形成されていてもよく、電線カセット33が吊り下げられるように形成されていてもよい。
【0042】
図3は電線交換装置11の平面図、図4は電線交換装置11の側面図である。図3に示すように、電線交換装置11は、電線受け31と、セパレータ32と、左側および右側の電線カセット33と、左側および右側のカセットカバー34L,34Rとを備えている。
【0043】
図4に示すように、電線受け31は、弛んだ電線3を垂れ落ちないように受け止める部材である。電線処理機2に供給される電線3は、張力が与えられるので張った状態となるが、電線処理機2に供給されない電線3は、弛んだ状態となる場合がある。電線受け31は、弛んだ電線3が垂れ下がって他の部材または地面と接触することを防止する役割を果たす。なお、電線受け31には、電線3の高さを揃える電線揃えガイド35が設けられている。
【0044】
セパレータ32は、電線処理機2に供給される電線3と、それ以外の電線3とを分けるためのものである。図3に示すように、セパレータ32は、左右一対の板状部材32a,32bによって構成されている。図中の符号Pは、電線処理機2に供給される電線3が通過するライン、すなわち搬送ラインを表している。セパレータ32は、搬送ラインPに沿った位置に配置されている。平面視において、板状部材32a,32bは、前方に行くほど互いに接近するように搬送ラインPに対して傾斜している。板状部材32a,32bの間隔は、前方に行くほど狭くなっている。板状部材32a,32bの前端には、導入ローラ36が設けられている。電線処理機2に供給される電線3は、板状部材32a,32bの間(以下、セパレータ32の内側という)を通ることによって、板状部材32aの左側または板状部材32bの右側(以下、セパレータ32の外側という)に位置する他の電線3と仕分けられる。セパレータ32の内側の電線3は、導入ローラ36の間を通って前方に案内される。セパレータ32は、セパレータ32を昇降させるセパレータ移動機構32A(図4参照)に連結されている。このセパレータ移動機構32Aにより、セパレータ32は昇降可能となっている。セパレータ移動機構32Aの具体的構成は何ら限定されず、例えば、エアシリンダまたはモータ等の駆動源と、セパレータ32を上下に案内するガイドレール等のガイド部材とを備えたものであってもよい。
【0045】
電線交換装置11は、2つの電線カセット33を備えている。ただし、電線カセットの個数は2つに限らず、3つ以上であってもよい。図5は、電線カセット33およびカセットカバー34L,34R等を外した状態の電線交換装置11の平面図である。図5に示すように、電線交換装置11は、電線カセット33を左右にスライド自在に支持するスライダ37を備えている。スライダ37は、複数の電線カセット33を支持するように構成されている。本実施形態では、電線カセット33は2つ設けられている。両電線カセット33は、一体となってスライド可能なように、1つのスライダ37上に設けられている。
【0046】
架台38の上には、スライダ37を案内するレール39が設けられている。スライダ37は、レール39と係合している。架台38の左側部分には、モータ40が設けられている。架台38の右側部分には、プーリ43が設けられている。モータ40は、両方向に回転可能なモータである。モータ40の種類は特に限定されないが、例えば、ACサーボモータ等を好適に利用することができる。モータ40の駆動軸にはプーリ44が取り付けられており、両プーリ43,44にはタイミングベルト41が巻き架けられている。モータ40が駆動すると、タイミングベルト41が走行する。スライダ37には、タイミングベルト41の一端部および他端部が固定された固定部42が形成されている。そのため、タイミングベルト41の回転に伴って、スライダ37は左向きまたは右向きに移動する。なお、スライダ37を移動させる移動機構は、タイミングベルト41を備えた機構に限定されない。例えば、ボールねじを備えた機構であってもよい。
【0047】
電線カセット33は、スライダ37に着脱自在に取り付けられている。図6に示すように、電線カセット33は、複数の電線保持アーム50を保持するホルダ51を備えている。1つのホルダ51に取り付けられる電線保持アーム50の本数は何ら限定されないが、本実施形態では、1つのホルダ51に6本の電線保持アーム50が取り付けられるようになっている。図7に示すように、ホルダ51は、略水平板状のホルダ本体52と、ホルダ本体52の下部に設けられた挿入ブロック53と、ホルダ本体52の上部に設けられたハンドル54とを有している。図8に示すように、挿入ブロック53には、前後に延びる挿入溝53aが形成されている。電線保持アーム50は、挿入溝53aにスライド可能に挿入されている。図7に示すように、挿入ブロック53は、前後に2つ設けられている。電線保持アーム50は、挿入ブロック53に挿入されることにより、前後に延びるように配置されている。図6に示すように、電線保持アーム50は、互いに平行に配置されている。
【0048】
図9に示すように、ハンドル54はホルダ本体52から斜め上方に延びている。ハンドル54には、水平に延びる持ち手54aが設けられている。ユーザは、持ち手54aを掴んでハンドル54を持ち上げることにより、電線カセット33をスライダ37から取り外すことができる。逆に、持ち手54aを掴んでハンドル54をスライダ37の上に置くことにより、電線カセット33をスライダ37に取り付けることができる。すなわち、ユーザは、ハンドル54を掴んで電線カセット33を上げ下ろしすることにより、複数本の電線保持アーム50を一括して、スライダ37に対し間接的に着脱することができる。
【0049】
図7に示すように、電線保持アーム50は、前後に延びるアーム本体55を有している。アーム本体55の下面には、電線ガイド56a,56bが固定されている。電線ガイド56a,56bは、前端部および後端部が下方に折り曲げられたような屈曲板からなり、その前端部および後端部には、電線3を挿通させるガイド孔57が形成されている。電線3は、これら複数のガイド孔57を通過することによって、前方に案内される。本実施形態では、アーム本体55には、2つの電線ガイド56a,56bが固定されているが、電線ガイドの個数は特に限定されない。また、各電線ガイド56a,56bに設けられたガイド孔57の個数も何ら限定されない。
【0050】
アーム本体55の上面の前端部には、ばね受け部58が設けられている。ばね受け部58は、アーム本体55の上面から突出する円柱状に形成されている。ただし、ばね受け部58の形状は特に限定される訳ではない。ばね受け部58には、ばね59の前端部が取り付けられている。ばね59の後端部は、電線カセット33のホルダ51の前端部(詳しくは、ホルダ本体52の前端部)に取り付けられている。本実施形態では、ばね59は、前後方向に延びるコイルばねからなっている。ただし、ばね59の種類は特に限定される訳ではない。
【0051】
アーム本体55の前端部には、電線3を移動不能に保持可能な電線保持チャック60が設けられている。図10(a)に示すように、電線保持チャック60は、アーム本体55の前端部に固定されたチャック本体63と、チャック本体63の上部に取り付けられたばね64とを有している。チャック本体63には、電線3が通過する横孔61と、横孔61と交差する縦孔62とが形成されている。縦孔62には、上下にスライドするスライド板65が挿入されている。スライド板65は、ばね64によって押し上げられている。
【0052】
スライド板65の上方には、スライド板65に下向きの力を加えるアクチュエータ66が設けられている。アクチュエータ66の具体的構成は何ら限定されず、例えば、エアシリンダ等を用いることができる。スライド板65には、孔67が形成されている。アクチュエータ66がスライド板65を下向きに押し付けていない状態では、図10(a)に示すように、スライド板65はばね64の付勢力を受けて上方に移動しており、スライド板65の孔67の下縁部65aが電線3を上向きに押し付ける。これにより、電線3の前後方向の移動が規制され、電線3はロックされる。一方、アクチュエータ66がスライド板65を下向きに押すと、図10(b)に示すように、スライド板65はばね64からの押し上げ力に逆らって下方に移動する。すると、スライド板65の孔67とチャック本体63の横孔61との位置が揃い、電線3は前後方向に移動可能となる。これにより、電線3のロックが解除される。
【0053】
このように、電線保持チャック60は、電線3を搬送不能に固定するロック状態(図10(a)参照)と、電線3を搬送可能にするアンロック状態(図10(b)参照)とに切り替えることができる。電線保持チャック60は電線ロック機構の一例であり、アクチュエータ66はロック状態切り替え装置の一例である。当該電線保持アーム50の電線3を電線処理機2に供給するときには、電線保持チャック60はアンロック状態に設定される。他の電線保持アーム50の電線3を電線処理機2に供給するとき、言い換えると、当該電線保持アーム50の電線3を電線処理機2に供給しないとき、あるいは、電線3を電線保持アーム50にセットする作業のとき等には、電線保持チャック60は適宜ロック状態に設定され、電線3を移動不能に固定する。
【0054】
図7に示すように、アーム本体55の後端部には、電線3の搬送を規制する電線ストッパ70が設けられている。電線ストッパ70は、アーム本体55の後端部に取り付けられたストッパ本体71と、ストッパ本体71に回転自在に支持された回転体72とを有している。回転体72は、第1アーム74と第2アーム75と第3アーム78とを有している。第1アーム74と第2アーム75と第3アーム78とは、側面から見て約120度の角度毎に配置されている。ただし、それらの角度は何ら限定される訳ではない。第1アーム74の先端には、ばね73の一端が取り付けられている。ばね73の他端は、アーム本体55の上面に設けられたばね受け部80に取り付けられている。ばね受け部80は円柱状に形成されているが、その形状は特に限定される訳ではない。第1アーム74は、ばね73によって前向きの力を受けている。回転体72は、ばね73によって図中の時計回り方向の力を受けている。
【0055】
ストッパ本体71の下部には、電線3を下方から支持する電線支持部77が形成されている。第2アーム75の先端には、電線3を上方から押さえる電線押さえ76が設けられている。電線3は、電線押さえ76と電線支持部77との間に挟み込まれることにより、電線引き戻し方向のみの移動が規制されるようになっている。第3アーム78の先端には、アーム本体55の後端部と接触することにより、回転体72の過剰な回転を規制する回転規制部79が設けられている。
【0056】
回転規制部79の上方には、回転規制部79に下向きの力を加えるアクチュエータ81が設けられている。アクチュエータ81の具体的構成は何ら限定されず、例えば、エアシリンダ等を用いることができる。アクチュエータが駆動していないときは、図11(a)に示すように、電線押さえ76が電線3を上方から押さえつけ、電線3は電線押さえ76と電線支持部77とに挟み込まれる。その結果、電線3は、前方には移動可能なように軽く保持され、後方には移動できないように強固に保持される状態となる。すなわち、ロック状態となる。逆に、アクチュエータ81が回転規制部79を下向きに押し下げると、回転規制部79はばね73の引張り力に抗して下方に移動する。アクチュエータ81は回転体72を図中の反時計回り方向に回転させ、図11(b)に示すように、電線押さえ76は電線3を押さえつけない位置、例えば電線3から上方に離間した位置に位置付けられる。その結果、電線3は前後方向に移動可能な状態となる。すなわち、アンロック状態となる。
【0057】
このように、電線ストッパ70は、電線3を搬送不能に固定するロック状態と、電線を搬送可能にするアンロック状態とに切り替え可能な電線ロック機構の一例である。アクチュエータ81は、ロック状態切り替え装置の一例である。当該電線保持アーム50の電線3を電線処理機2に供給するときには、電線ストッパ70はアンロック状態に設定される。他の電線保持アーム50の電線3を電線処理機2に供給するときには、電線ストッパ70はロック状態に設定される。
【0058】
図4に示すように、ホルダ51の上方には、アーム挿入ユニット85が配置されている。図3に示すように、アーム挿入ユニット85は搬送ラインP上に配置されており、左右方向に移動不能に構成されている。アーム挿入ユニット85は、複数の電線保持アーム50のうち、選択されたいずれか一つの電線保持アーム50を前方に移動させる。
【0059】
図7に示すように、電線保持アーム50の電線保持チャック60には、上方に突出するレバー86が形成されている。アーム挿入ユニット85には、レバー86を前方に押し出す駆動機構87(図4参照)が設けられている。駆動機構87の具体的構成は何ら限定されない。駆動機構87は、例えば、レバー86に当接するプレートと、そのプレートを前後方向に移動させるモータとを備えていてもよい。また、駆動機構87は、レバー86に当接し且つ前後方向に移動可能なロッドを有するエアシリンダによって構成されていてもよい。駆動機構87は、レバー86を前方に押し出すように構成されていてもよく、前方に引っ張るように構成されていてもよい。
【0060】
電線保持アーム50は、電線3を電線処理機2に供給するときには、駆動機構87から駆動力を受け、前方に移動する(図6の矢印A参照)。この位置は、電線保持アーム50から電線処理機2に向かって電線3が供給されるときの位置である。以下、この位置を電線供給位置という。一方、電線保持アーム50は、電線3を電線処理機2に供給しないときには、後方に戻される。なお、電線保持アーム50はばね59によって後方に引っ張られる。そのため、駆動機構87によるレバー86を前向きに移動させる力が解除されると、電線保持アーム50は自然に待機位置に復帰する。
【0061】
図5に示すように、架台38の両レール39の間には、千鳥状に配置された複数のローラからなる矯正ローラ90が設けられている。矯正ローラ90の後方には、引き戻しローラ91が設けられている。矯正ローラ90および引き戻しローラ91は、搬送ラインPに沿って配置されている。矯正ローラ90は、矯正ローラ90を昇降させる矯正ローラ移動機構90A(図4参照)に連結されている。引き戻しローラ91は、引き戻しローラ91を昇降させる引き戻しローラ移動機構91A(図4参照)に連結されている。矯正ローラ移動機構90Aおよび引き戻しローラ移動機構91Aの具体的構成は何ら限定されず、モータやエアシリンダ等の駆動源を備えた機構等を好適に利用することができる。矯正ローラ90は、電線3を搬送するときには上方に移動し、搬送ラインPに沿った作動位置に位置付けられる。作動位置において、矯正ローラ90は電線3を挟み込む。一方、矯正ローラ90は、スライダ37および電線保持アーム50が左右に移動するときには、それらとの干渉を避けるため、作動位置よりも下方の退避位置に位置付けられる。
【0062】
矯正ローラ90の前方には、電線3の搬送量を検出する測長ローラ97と、電線3を前方に送り出す搬送機構96とが設けられている。測長ローラ97は、エンコーダローラ92と、エンコーダローラ92と対向するガイドローラ93とを有している。ここでは、エンコーダローラ92は左側、ガイドローラ93は右側に配置されているが、それらの配置は逆であってもよい。エンコーダローラ92には、その回転位置を検出する検出器が内蔵されている。エンコーダローラ92の回転位置に基づいて、電線3の搬送量が検出される。搬送機構96は、複数のローラ94と、それらローラ94に巻き掛けられたベルト95とを備えている。ローラ94およびベルト95は、左右にそれぞれ1組ずつ設けられている。電線3は、左右のベルト95に挟まれている。ローラ94の回転に伴ってベルト95が走行すると、電線3は前方に搬送される。なお、搬送機構96の構成は何ら限定されず、他の構成を利用することも勿論可能である。例えば、搬送機構96は、電線3を挟み込む左右一対のローラによって構成されていてもよい。
【0063】
セパレータ32の左右の導入ローラ36の間と、引き戻しローラ91の間と、矯正ローラ90の間と、エンコーダローラ92とガイドローラ93との間と、左右のベルト95の間とを結ぶ前後方向に延びる線は、電線処理機2に供給される電線3が通る線、すなわち搬送ラインPとなる。導入ローラ36と、引き戻しローラ91と、矯正ローラ90と、測長ローラ97と、搬送機構96とは、搬送ラインPに沿って前後に並んでいる。
【0064】
図3に示すように、カセットカバー34L,34Rは、架台38に鉛直軸周りに回転可能に取り付けられている。カセットカバー34L,34Rは、主に架台38上の電線カセット33を覆うように構成されている。本実施形態では、左側のカセットカバー34Lは架台38の略左半分を覆い、右側のカセットカバー34Rは架台38の略右半分を覆うように構成されている。そのため、左側の電線カセット33を交換する際に、右側の電線カセット33の一部または全部を右側のカセットカバー34Rで覆った状態に保つことができる。同様に、右側の電線カセット33を交換する際に、左側の電線カセット33の一部または全部を左側のカセットカバー34Lで覆った状態に保つことができる。ただし、カセットカバーの個数は2つに限らず、1つであってもよい。また、カセットカバーの個数は3つ以上であってもよい。
【0065】
図12に示すように、電線供給装置1は、少なくともCPU101と、メモリ102等の記憶装置と、インターフェース部103とを有するコンピュータ100を備えている。コンピュータ100は、電線供給装置1用に製造された専用のコンピュータであってもよく、パーソナルコンピュータ等の汎用的なコンピュータであってもよい。コンピュータ100は、電線処理機2のコンピュータ(図示せず)と別個に設けられていてもよく、電線処理機2のコンピュータと兼用されていてもよい。
【0066】
メモリ102には、電線処理機2で処理される電線3の種類および処理の順序に関するデータが記憶されている。CPU101は、インターフェース部103を介して、モータ40、セパレータ移動機構32A、矯正ローラ移動機構90A、引き戻しローラ移動機構91A、駆動機構87、搬送機構96、測長ローラ97、引き戻しローラ91、およびアクチュエータ81等と接続されており、それらの制御を行う。CPU101は、メモリ102に記憶されているデータに基づいて、搬送ラインP上に位置する電線保持アーム50を適宜に入れ替え、所定の種類の電線3を所定の順序で電線処理機2に供給する。
【0067】
上述の通り、電線供給装置1は、複数の電線保持アーム50のうち、搬送ラインP上に位置する電線保持アーム50を適宜入れ替えることによって、電線処理機2に供給する電線3を交換する。次に、電線供給装置1の動作を説明する。以下の説明では、交換前の電線3、交換後の電線3をそれぞれ第1の電線3、第2の電線3と称し、電線処理機2に供給される電線3は、第1の電線3から第2の電線3に交換されるものとする。第1の電線3、第2の電線3を保持する電線保持アーム50を、それぞれ第1の電線保持アーム50、第2の電線保持アーム50と称する。以下の各処理は、コンピュータ100によって自動的に実行される。
【0068】
まず、コンピュータ100は、交換作業の安全性を高めるため、カセットカバー34L,34Rをロックする。これにより、ユーザが誤ってカセットカバー34L,34Rを開こうとしても、カセットカバー34L,34Rを開くことができなくなり、移動中の電線カセット33が外部に露出されてしまうことを防止することができる。
【0069】
次に、第1の電線3の前端部がカッターユニット5によって切断される。いわゆる、電線先端部の揃え切りが行われる。これは、第1の電線3を引き戻す作業を円滑化するために行われる処理である。この処理により、引き戻される前の第1の電線3の前端部は、常に所定の位置に位置付けられることになる。ただし、この処理は必ずしも必要ではなく、適宜省略することも可能である。次に、退避位置にあった引き戻しローラ91を作動位置に上昇させ、引き戻しローラ91で電線3を挟み込む。すなわち、電線3を狭持するように引き戻りローラ91を閉じる。次に、第1の電線3を挟んでいた矯正ローラ90を開き、矯正ローラ90による電線3の保持状態を解除する。次に、搬送機構96、ガイドローラ93および引き戻しローラ91を逆転させ、電線3の前端部が所定位置に至るまで電線3を後方に引き戻す。電線3を引き戻した後、引き戻しローラ91は開き、下方に退避する。
【0070】
次に、第1の電線3を保持するように、第1の電線保持アーム50の電線保持チャック60および電線ストッパ70を作動させる。これにより、第1の電線3は第1の電線保持アーム50に固定され、第1の電線3は第1の電線保持アーム50と一体的に移動可能となる。
【0071】
次に、矯正ローラ90を下方に退避させる。測長ローラ97を開き、測長ローラ97による電線3の保持状態を解除する。その後、第1の電線保持アーム50を待機位置にまで後退させる。次に、セパレータ32および導入ローラ36を下降させ、退避位置に移動させる。
【0072】
次に、スライダ37を左方または右方に移動させ、第1の電線保持アーム50を搬送ラインP上から外れた位置に移動させると共に、第2の電線保持アーム50を搬送ラインP上に移動させる。
【0073】
次に、第2の電線保持アーム50を前方に移動させ、待機位置から電線供給位置に移動させる。そして、セパレータ32および導入ローラ36を上昇させ、作動位置に位置付ける。これにより、第2の電線3と他の電線3とが隔離される。次に、測長ローラ97を閉じ、測長ローラ97で第2の電線3を挟み込む。その後、第2の電線保持アーム50の電線保持チャック60および電線ストッパ70を解除する。これにより、第2の電線3は第2の電線保持アーム50に対して前後移動可能となる。
【0074】
次に、矯正ローラ90を上昇させ、矯正ローラ90を閉じる。これにより、第2の電線3は矯正ローラ90によって挟み込まれる。その後、カセットカバー34L,34Rのロックが解除される。これにより、カセットカバー34L,34Rは、開放可能な状態となる。
【0075】
以上のようにして、電線処理機2に供給される電線3を、第1の電線保持アーム50に保持された第1の電線3から、第2の電線保持アーム50に保持された第2の電線3に交換することができる。なお、第1および第2の電線保持アーム50の位置は何ら限定されない。第1および第2の電線保持アーム50は、いずれか一方が左側の電線カセット33に設けられ、他方が右側の電線カセット33に設けられていてもよい。第1および第2の電線保持アーム50は、その両方が左側の電線カセット33に設けられていてもよく、その両方が右側の電線カセット33に設けられていてもよい。
【0076】
ところで、電線カセット33はスライダ37に対し着脱自在である。スライダ37に搭載される電線カセット33を交換することにより、複数の電線保持アーム50を一括して取り替えることができる。すなわち、電線交換装置11により自動的に交換される対象となる複数種類の電線3を、一括して取り替えることができる。次に、電線カセット33の交換作業について説明する。
【0077】
前述した通り、電線カセット33は複数の電線保持アーム50を備えており、ユーザはホルダ51のハンドル54を掴み、上方に持ち上げることによって、電線カセット33をスライダ37から容易に取り外すことができる。ユーザは、取り外した電線カセット33を電線棚12のカセット支持部27(図2参照)に支持させることができる。これにより、電線カセット33をリール23と共に電線棚12に収容することができる。電線棚12は移動可能に構成されており、特に本実施形態では、キャスター21が設けられた台車22によって構成されている。そのため、電線棚12は容易に移動可能である。ユーザは、電線棚12を他の場所に移動させ、代わりに、他の電線カセット33およびリール23が収容された他の電線棚12を電線交換装置11の後方に移動させることができる。次に、ユーザは、上記他の電線カセット33をカセット支持部27から取り外し、スライダ37に取り付ける。これにより、複数の電線保持アーム50を一括して交換することができる。言い換えると、電線交換装置11における交換対象となる複数種類の電線3を、一回の作業で一括して交換することができる。
【0078】
以上のように、電線供給装置1によれば、種類の異なる電線3を保持する複数の電線保持アーム50を備え、搬送ラインP上に位置する電線保持アーム50を適宜に交換することにより、電線処理機2に対して複数種類の電線3を選択的に供給することができる。電線供給装置1によれば、搬送ラインP上にある電線保持アーム50に保持された電線3を搬送している間に、その電線保持アーム50が取り付けられた電線カセット33以外の他の電線カセット33をスライダ37に着脱することができる。そのため、電線処理機2に電線3を供給している間に、電線カセット33を交換することが可能である。したがって、電線処理機2の処理を停止することなく、電線カセット33の交換が可能となる。よって、電線処理機2の処理効率の向上を図ることができる。
【0079】
電線供給装置1によれば、電線カセット33には、持ち手54aを有するハンドル54が設けられ、電線保持アーム50は一体的に移動可能なように電線カセット33に取り付けられている。そのため、ユーザは、ハンドル54の持ち手54aを持って電線カセット33を移動させることにより、複数の電線保持アーム50を一括して容易に交換することができる。したがって、複数の電線保持アーム50を迅速に交換することが可能となる。
【0080】
電線供給装置1は移動可能な電線棚12を備え、その電線棚12には、各電線カセット33の電線保持アーム50に供給される複数種類の電線3がそれぞれ巻かれた複数のリール23が収容されている。それらリール23を電線棚12と共に移動させることによって、各電線カセット33の電線保持アーム50に供給される複数種類の電線3を一括して移動させることができる。リール23に巻かれた電線3を電線保持アーム50に保持させる作業等を、電線交換装置11の設置場所とは別の場所で行うことが可能となる。
【0081】
本実施形態では、電線棚12は、キャスター21を有する台車22からなっている。そのため、リール23を電線カセット33と共に移動させる作業が容易となる。
【0082】
電線供給装置1は、電線3を仕分けるセパレータ32を備えている。そのため、電線3が絡み合うことを防止することができる。また、セパレータ32は、作動位置と退避位置との間を移動可能に構成されている。そのため、スライダ37が移動して電線3が交換されるときに、セパレータ32と電線3等とが干渉することを防止することができる。
【0083】
電線供給装置1は、電線3を矯正する矯正ローラ90を備えている。そのため、電線3の巻き癖等を矯正することができる。また、矯正ローラ90は、作動位置と待避位置との間を移動可能に構成されている。そのため、スライダ37が移動して電線3が交換されるときに、矯正ローラ90と電線3等とが干渉することを防止することができる。
【0084】
電線供給装置1は、電線3を電線保持アーム50にロックすることのできる電線保持チャック60および電線ストッパ70を備えている。そのため、搬送ラインPから外れた位置にある電線保持アーム50から、電線3が抜けてしまうことを防止することができる。すなわち、電線3を供給していない電線保持アーム50、言い換えると、交換に備えて待機している電線保持アーム50から、電線3が脱落してしまうことを防止することができる。
【0085】
電線供給装置1は、引き戻しローラ91を備えている。そのため、電線3の交換に際して、搬送ラインP上にある電線保持アーム50に保持された電線3を、その後の電線保持アーム50の移動に便利な位置まで引き戻すことができる。したがって、スライダ37の移動に伴って移動する電線保持アーム50から、電線3が過剰に突出すること等を防止することができる。電線3の交換時に電線3が他の部品等と干渉することを避けることができ、電線3の交換を円滑に行うことができる。
【0086】
本実施形態では、搬送ラインPは前方に向かって延び、スライダ37は左右方向に移動可能に構成され、電線保持アーム50は、それぞれ前後方向に延び、互いに左右方向に並ぶように配置されていた。このような配置により、電線カセット33をスライダ37の上から持ち上げ、または、スライダ37の上に置くことにより、電線カセット33をスライダ37に対して容易に着脱することができる。
【0087】
ただし、スライダ37は必ずしも左右方向に移動可能に構成されていなくてもよい。例えば、スライダ37は上下方向に移動可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 電線供給装置
2 電線処理機
3 電線
11 電線交換装置
12 電線棚
33 電線カセット
37 スライダ(移動機構)
50 電線保持アーム(電線保持機構)
96 搬送機構
101 CPU(制御装置)
102 メモリ(記憶装置)
P 電線の搬送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の電線を選択的に供給する電線供給装置であって、
電線の搬送ラインに沿った位置に配置され、電線を搬送する搬送機構と、
前記搬送ラインと直交する方向に移動可能な移動機構と、
前記移動機構に着脱自在に支持された複数の電線カセットと、
前記各電線カセットに取り付けられ、前記搬送ラインに沿って配置され、または前記搬送ラインと平行な方向に配置され、それぞれ種類の異なる複数の電線を搬送自在に保持する複数の電線保持機構と、を備え、
前記搬送ライン上にある電線保持機構に保持された電線を前記搬送機構によって搬送している間に、前記搬送ライン上にある電線保持機構が取り付けられた電線カセット以外の他の電線カセットが、前記移動機構に対して着脱自在となっている、電線供給装置。
【請求項2】
供給する電線の種類および順序に関する情報を記憶している記憶装置と、
前記記憶装置に記憶されている情報に基づいて、前記搬送ライン上にある電線保持機構を前記搬送ラインから移動させると共に、他の電線保持機構を前記搬送ライン上に移動させるように、前記移動機構を制御する制御装置とを備えている、請求項1に記載の電線供給装置。
【請求項3】
前記各電線カセットには、持ち手を有するハンドルが設けられ、
前記各電線カセットに取り付けられたすべての電線保持機構は、前記電線カセットと一体的に移動可能なように前記電線カセットに取り付けられている、請求項1または2に記載の電線供給装置。
【請求項4】
各電線カセットの電線保持機構に供給される複数種類の電線がそれぞれ巻かれた複数のリールを収容する移動可能な棚を備えている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の電線供給装置。
【請求項5】
前記棚は、キャスターを有する台車からなっている、請求項4に記載の電線供給装置。
【請求項6】
一対の板状部材を有し、前記搬送ライン上の電線保持機構に供給される電線を前記両板状部材の間に導入する一方、それ以外の電線を前記板状部材の外側に位置づけることによって、電線を仕分けるセパレータを備えている、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電線供給装置。
【請求項7】
前記セパレータは、前記搬送ラインに沿った作動位置と、前記搬送ラインから外れた退避位置との間で移動可能に構成され、
前記搬送ライン上に位置する電線保持機構から電線を供給するときには、当該電線が前記両板状部材の間に導入されるように前記セパレータを前記作動位置に移動させ、前記移動機構を移動させるときには前記セパレータを前記退避位置に移動させるセパレータ移動機構を備えている、請求項6に記載の電線供給装置。
【請求項8】
電線を矯正する複数のローラを有し、前記搬送ラインに沿った作動位置と、前記搬送ラインから外れた退避位置との間で移動可能に構成された矯正ローラと、
前記搬送ライン上に位置する前記電線保持機構から電線を供給するときには、前記矯正ローラを前記作動位置に移動させ、前記移動機構を移動させるときには前記矯正ローラを前記退避位置に移動させる矯正ローラ移動機構とを備えている、請求項1〜7のいずれか一つに記載の電線供給装置。
【請求項9】
前記電線保持機構は、電線を搬送不能に固定するロック状態と、電線を搬送可能にするアンロック状態とに切り替え可能な電線ロック機構を備え、
前記搬送ライン上から移動する電線保持機構の電線ロック機構をアンロック状態からロック状態に切り替え、前記搬送ライン上に移動した電線保持機構の電線ロック機構をロック状態からアンロック状態に切り替えるロック状態切り替え装置を備えている、請求項1〜8のいずれか一つに記載の電線供給装置。
【請求項10】
前記搬送ラインに沿って配置され、前記搬送ライン上に位置する電線保持機構に保持された電線を、前記電線保持機構に電線を供給する電線供給源側に引き戻す電線引き戻し機構を備えている、請求項1〜9のいずれか一つに記載の電線供給装置。
【請求項11】
前記搬送ラインは前方に向かって延び、
前記移動機構は左右方向に移動可能に構成され、
前記電線カセットは前記移動機構の上に載置され、
前記電線保持機構は、それぞれ前後方向に延び、互いに左右方向に並ぶように前記電線カセットに取り付けられている、請求項1〜10のいずれか一つに記載の電線供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−56762(P2013−56762A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197333(P2011−197333)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】