説明

電線接続部の異常発熱検知装置

【課題】 電線接続部の発熱状態を確実に検知してこれを明確に目視確認させ、また製作コストを削減できる発熱検知装置を提供すること。
【解決手段】 電線接続部のスリーブの周りに巻き留める取付バンド6によりスリーブに密着して良好な熱伝導性を有する枠体2を取り付ける。この枠体2上に、電線接続部の発熱によりその自由端部が変形する形状記憶合金で構成したトリガ片3を固定する。表示片5を電線接続部に伏した待機位置と電線接続部から立ち上がった検知位置との間で変位可能にねじりばね4の起立部4cに固定する。トリガ片3にねじりばね4の起立部4cを係合させると、ねじりばね4が蓄勢された状態で、表示片5が待機位置から検知位置への変位を阻止される。トリガ片3が電線接続部の発熱により変形すると、表示片5が検知位置に立ち上がることにより、発熱状態を目視確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線等の電線の接続部における温度監視を形状記憶合金を用いて行う異常発熱検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄塔への電線の引き留めや電線同士の接続等にはスリーブによる圧縮接続が行われる。この電線接続部は導通性の阻害要因により発熱するので、電線接続部の過熱を防止すべく、電線のスリーブに形状記憶合金を装着し、一定温度に達すると形状記憶合金の変形により異常発熱を監視者に知らせる発熱検知装置が知られている(特許文献1)。この装置は、形状記憶合金から成る熱センサをバンド部材でスリーブに巻き留めて密着させ、異常発熱でスリーブの温度が所定温度に達するとU字状に変形して圧縮スリーブの表面から立ち上がり、電線接続部の異常発熱を地上で目視確認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−183973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の発熱検知装置においては、異常発熱時に立ち上げる熱センサ体全体を形状記憶合金であるニッケル−チタン合金で構成しているので、ジュール熱及び太陽光の輻射熱によって形状記憶合金の変形が開始し、直立に至らない途上位置に立ち上がって、異常過熱か否かの判別できない状態になることがある。また、熱センサ体を目視可能に構成するため、形状記憶合金の使用量が多く製作コストの削減の障害になる。さらに、装置がバンドを巻き留めて装着されるので、装着部位がスリーブに限られ、接続端子などの他の部位に適用し難い等の難点がある。
そこで、本発明は、発熱状態を確実に検知してこれを明確に目視確認させると共に、形状記憶合金の使用を可及的に少なくしてコストを削減し、さらに密着した状態で取り付ける装着部位の自由度を拡大する電線接続部の発熱検知装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、電線接続部の異常発熱により形状記憶合金が変形して目視により発熱状態を確認させる電線接続部の異常発熱検知装置1において、電線接続部に密着して取り付け可能で良好な熱伝導性を有する枠体2を備え、この枠体2に電線接続部の発熱によりその自由端部が変形する形状記憶合金を含むトリガ片3の基端部を固定し、また表示片5を電線接続部に伏した待機位置と電線接続部から立ち上がった検知位置との間で変位可能に枠体2上に支持し、トリガ片3を表示片5に係合させて表示片5の待機位置から検知位置への変位を阻止し、トリガ片3の変形により検知位置への変位を許容することとし、さらに表示片5をばね部材4により待機位置から検知位置に向けて付勢するように構成した。
トリガ片3は、水平方向に変形するように枠体2上に固定し、ばね部材は枠体2上に水平方向に支持されるねじりばね4により構成し、その一端を枠体2に係止し、他端に表示片5を支持させて、表示片5を上方に付勢するものとする。
表示片5は、待機位置においてトリガ片3の下部に配置し、トリガ片3の変形により検知位置へ跳ね上がるようにした。
枠体2を電線接続部に固定するために、電線接続部の圧縮接続用スリーブC1の周りに巻き留める取付バンド6を具備させた。
枠体2を電線接続部に固定するために、電線接続部の接続用ボルトBのねじ軸を貫通させてボルト頭部で締め留めるリング板を具備させた。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、表示片をばね部材で付勢した状態でトリガ片に係合させるため、表示片が外れる位置へのトリガ片の変形により、表示片を検知位置に瞬時に出現させるので、異常過熱の判別が明確になる。また、トリガ片は表示片の変位を阻止する程度の小片で足り、高価な形状記憶合金の使用量を可及的に少なくでき、安価に提供することができる。
取付バンドによりスリーブに装着できる他、リング板により接続用ボルトによる凹凸がある接続端子板へも密着して装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の異常発熱検知装置の斜視図である。
【図2】異常発熱検知装置の平面図である。
【図3】異常発熱検知装置の正面図である。
【図4】他の実施形態の異常発熱検知装置の斜視図である。
【図5】他の実施形態の異常発熱検知装置の平面図である。
【図6】他の実施形態の異常発熱検知装置の正面図である。
【図7】引き留めクランプの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図7において、架空送電線の鉄塔への引留クランプCは略L字状を成し、一端側に電線を引き留めるために電線端部に圧縮接続されたスリーブC1を備え、他端側にジャンパー線Jを接続するためのジャンパソケットSをボルトBにより固定する接続端子板C2を備えている。
【0009】
図1ないし図3に示すように、発熱検知装置1は、スリーブC1の電線挿入側の口元に装着するものである。この発熱検知装置1は、電線接続部である引留クランプCのスリーブC1の異常な発熱状態を目視確認させる。発熱検知装置1は、枠体2と、形状記憶合金からなるトリガ片3と、このトリガ片3に係合するねじりばね4と、このねじりばね4の立ち上がり端部に固定された表示片5と、電線接続部に固定するための取付部材である取付バンド6とを具備する。
【0010】
枠体2は良好な熱伝導性を有する金属板材で構成され、矩形の平坦な座板部7と、座板部7の一端側両縁部からそれぞれ垂直に立ち上がった対向する一対のブラケット8,8と、ブラケット8,8間に渡された支持ピン9と、座板部7の一端縁から垂直に立ち上がった後水平方向に屈曲してブラケット8,8間を結合するカバー板10とを具備する。ブラケット8,8の下端部には取付バンド6を挿入するための横長のバンド通し8aが開口する。
【0011】
トリガ片3は、スリーブC1の発熱により設定温度に達したら復帰変形可能な棒状の形状記憶合金からなる。このトリガ片3は、座板部7の他端部の一方の側縁がトリガ片3周りに巻き込んだ固定筒11で固定されている。トリガ片3の自由端部3aは、常時枠体2の側方へ突出しており、座板部7上に水平方向に復帰変形する。
【0012】
ばね部材であるねじりばね4は金属線材で構成され、その中間部に枠体2の支持ピン9に巻かれた弦巻部4aと、一端部に座板部7に押し当たる係止部4bと、他端部にトリガ片3に弾力的に係合するようにクランク上に屈曲して延出する起立部4cとを有する。起立部4cは、これを水平方向に倒した待機位置と座板部7からほぼ垂直に立ち上がった検知位置との間で変位可能である。ねじりばね4を蓄勢しつつ起立部4cを倒しトリガ片3の下方に配置すると、座板部7の一側縁の長手方向に設けられた切欠き7a内に収まり、トリガ片3に係合して、待機位置に保持される。
【0013】
表示片5は金属板材で構成され、起立部4cのトリガ片3との係合状態で板面がほぼ水平方向になるように起立部4cの先端部に固定されている。
【0014】
取付バンド6は、ブラケット8,8のバンド通し8aに通してスリーブC1の口元位置に巻かれ両端部が結束され、枠体2をスリーブC1に密着させる。
【0015】
この発熱検知装置1は、取付バンド6によりスリーブC1に取り付け、ねじりばね4の起立部4cをトリガ片3に係合させた状態で装着する。スリーブC1が発熱により所定の温度に達すると、トリガ片3の自由端3aが枠体2上へ水平方向に変形するので、ねじりばね4のばね力で起立部4cが検知位置に瞬時に跳ね起きて、表示片5を立ち上げる。この表示片5により、スリーブC1の異常発熱を目視確認できる。トリガ片3はねじりばね4の起立部4cの立ち上げを阻止すればよく、小片で足りるから高価な形状記憶合金の使用量を少なく構成できる。
【0016】
他の実施形態を図4ないし図6に示す。なお、同図中先の実施形態と同一の構成部分については同一符号を付して説明を省略する。
接続クランプCの接続端子板C2に装着される発熱検知装置12は、接続クランプCをジャンパソケット接続端子Sに固定するためのボルトBで固定する。発熱検知装置12の枠体2の座板部7には、リング板13が側方へ延出する。リング板13は、座板部を構成する良好な熱伝導性を有する金属板材により連続して形成され、ボルトBのねじ軸を貫通させるボルト孔13aを備え、ボルト頭部で抜け止めして締め付け固定される。
【0017】
この発熱検知装置12は、リング板13により接続端子板C2に取り付け、先と同様にしてねじりばね4の起立部4cをトリガ片3に係合させた状態で装着する。接続端子板C2が発熱により所定の温度に達して、トリガ片3が変形すると、ねじりばね4のばね力で起立部4cが瞬時に跳ね上がり、表示片5を立ち上げる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、架空送電線等の電線の接続部における温度監視を形状記憶合金を用いて目視確認するのに有効な異常発熱検知装置である。
【符号の説明】
【0019】
1 発熱検知装置
2 枠体
3 トリガ片
4 ねじりばね
4c 起立部
5 表示片
6 取付バンド
7 座板部
8 ブラケット
8a バンド通し
9 支持ピン
11 固定筒
12 発熱検知装置
13 リング板
13a ボルト孔
C 引留クランプ
C1 スリーブ
C2 接続端子板
B ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線接続部の異常発熱により形状記憶合金が変形して発熱状態を目視により確認させる電線接続部の異常発熱検知装置において、
前記電線接続部に密着して取り付け可能で良好な熱伝導性を有する枠体と、
基端部が前記枠体に固定され、自由端部が前記電線接続部の発熱により変形する形状記憶合金を含むトリガ片と、
前記電線接続部に伏した待機位置と電線接続部から立ち上がった検知位置との間で変位可能に枠体上に支持され、前記トリガ片に係合して待機位置から検知位置への変位が阻止され、トリガ片の変形により検知位置への変位が許容される表示片と、
この表示片を待機位置から検知位置に向けて付勢するばね部材とを具備することを特徴とする電線接続部の異常発熱検知装置。
【請求項2】
前記トリガ片は、水平方向に変形可能に固定され、
前記ばね部材は、枠体上に水平方向に支持され、一端が枠体に係止され、他端に前記表示片を支持して、表示片を上方に付勢するねじりばねであり、
前記表示片は、待機位置において前記トリガ片の下部に配置され、トリガ片の変形により検知位置へ跳ね上がることを特徴とする請求項1に記載の電線接続部の異常発熱検知装置。
【請求項3】
前記枠体を前記電線接続部に固定するために、電線接続部の圧縮接続用スリーブの周りに巻き留められる取付バンドを具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の電線接続部の異常発熱検知装置。
【請求項4】
前記枠体を前記電線接続部に固定するために、電線接続部の接続用ボルトのねじ軸を貫通させてボルト頭部で締め留められるリング板を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の電線接続部の異常発熱検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−5602(P2013−5602A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134506(P2011−134506)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)