説明

電装ユニットおよびその製造方法

【課題】振動が加わった場合や温度が変化した場合に、プリント基板を封止する封止樹脂がケースから剥離することを防止するとともに、実装部品へのダメージを低減することが可能な電装ユニットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による電装ユニットは、底板11と複数の側板12を有し、一方向に開口したケース10と、ケース10の内側底面から凸状に設けられ、底板11を複数の領域に区画する底板リブ13と、底板リブ13を埋設するようにケース10内に充填された封止樹脂20と、表面に実装部品31が実装され、裏面が底板11と対向するようにケース10内に格納され、かつ、底板リブ13の上方における封止樹脂20の内部に埋め込まれたプリント基板30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電装ユニット、特にケース内に格納されたプリント基板を樹脂で埋め込んだ電装ユニット、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン制御を行うECU(Engine Control Unit)などの電装ユニットでは、プリント基板に実装された電子部品等(実装部品)を保護し耐水性・防塵性を向上させるために、ケース内に格納されたプリント基板を樹脂封止している。
【0003】
このようにケース内のプリント基板を樹脂封止する技術として、特許文献1には、樹脂ケース内にプリント基板が配置された点火制御ユニットにおいて、プリント基板の表面側空間と裏面側空間に封止樹脂を供給する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−294702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の電装ユニットにおいてプリント基板はケースにねじ固定されているが、製造コストの観点からは、ねじ固定を廃止することが望ましい。しかし、そうした場合、プリント基板は封止樹脂にのみよってケース内に保持されることになる。このようにプリント基板が封止樹脂のみによって保持された状態において、電装ユニットに振動が加えられると、プリント基板を封止する封止樹脂がケースから剥離してしまうという問題があった。また、温度変化の際にも、封止樹脂が収縮することで封止樹脂がケースから剥離するおそれがある。特に電装ユニットを縦置きに設置して使用する場合には、封止樹脂がケースから剥離することでプリント基板がケースから出てしまうことが考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、振動が加わった場合や温度が変化した場合に、プリント基板を封止する封止樹脂がケースから剥離することを防止するとともに、実装部品へのダメージを低減することが可能な電装ユニットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る電装ユニットは、
底板と複数の側板を有し、一方向に開口した、ケースと、
前記ケースの内側底面から凸状に設けられ、前記底板を複数の領域に区画する、底板リブと、
前記底板リブを埋設するように前記ケース内に充填された、封止樹脂と、
少なくとも一方の主面に実装部品が実装され、前記底板と対向するように前記ケース内に格納され、かつ、前記底板リブの上方における前記封止樹脂の内部に埋め込まれた、プリント基板と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記電装ユニットにおいて、
前記ケースの内側側面から凸状に設けられた側板リブをさらに備え、前記プリント基板は、前記ケースの対向する2つの側板のうちの一方の側板の側板リブと、前記2つの側板のうちの他方の側板の側板リブとの間に配置されていてもよい。
【0009】
また、前記電装ユニットにおいて、
前記プリント基板の端部には切り欠き部が設けられており、前記切り欠き部は、前記側板リブと嵌合し、前記プリント基板の前記ケース内における配置方向を規定していてもよい。
【0010】
また、前記電装ユニットにおいて、
前記側板リブは、前記ケースの内側側面から凸状に設けられるとともに前記底板に接する下部側板リブと、前記ケースの内側側面から凸状に設けられるとともに前記下部側板リブと接続し且つ前記側板からの高さが前記下部側板リブよりも低い上部側板リブとを有し、前記プリント基板は、前記ケースの対向する側板の前記上部側板リブ間に配置されるとともに、前記下部側板リブと前記上部側板リブとの間の段差の上に載置されていてもよい。
【0011】
また、前記電装ユニットにおいて、
前記封止樹脂のJIS−K6253により測定した23℃におけるデュロメータA硬度は、30〜60でもよい。
【0012】
また、前記電装ユニットにおいて、
前記ケースはPBT樹脂からなり、前記封止樹脂は熱硬化性ウレタン樹脂からなるものであってもよい。
【0013】
また、前記電装ユニットにおいて、
前記プリント基板の裏面にはフラックスが塗布され、前記プリント基板と前記封止樹脂との間の接着力が低減されていてもよい。
【0014】
また、前記電装ユニットにおいて、
前記底板リブには、第1の方向に延びる縦リブおよび第2の方向に延びる横リブがあり、複数の前記縦リブと複数の前記横リブが直交していてもよい。
【0015】
また、前記電装ユニットにおいて、
前記縦リブおよび前記横リブは、前記ケースの底板の上方からみて波状に形成されていてもよい。
【0016】
また、前記電装ユニットにおいて、
前記底板リブ間の距離は、前記実装部品の実装密度が高い領域ほど短くなるようにしてもよい。
【0017】
本発明の第1の態様に係る電装ユニットの製造方法は、
実装部品が表面に実装されたプリント基板を、内側底面から凸状に底板リブが設けられたケース内であって前記底板リブよりも高い位置に載置する、載置工程と、
前記底板リブおよび前記プリント基板を埋め込むように溶融した樹脂を注入する、注入工程と、
前記ケース内に注入した樹脂を硬化させる、硬化工程と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の第2の態様に係る電装ユニットの製造方法は、
内側底面から凸状に底板リブが設けられたケース内に、前記底板リブを埋め込むまで溶融した樹脂を注入する、第1の注入工程と、
実装部品が表面に実装されたプリント基板を、前記ケース内であって前記底板リブよりも高い位置に載置する、載置工程と、
前記プリント基板を埋め込むように溶融した樹脂を注入する、第2の注入工程と、
前記ケース内に注入した樹脂を硬化させる、硬化工程と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
また、前記電装ユニットの製造方法において、
前記ケースは、内側側面から凸状に設けられた側板リブをさらに備え、前記プリント基板として、前記側板リブと嵌合する切り欠き部が端部に設けられたものを用い、
前記載置工程において、前記プリント基板が前記ケースの対向する側板の前記側板リブ間に配置され且つ前記プリント基板の前記切り欠き部が前記側板リブと嵌合するように、前記プリント基板を前記ケース内に格納してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様に係る電装ユニットにおいては、ケースに底板リブが設けられていることにより、ケースと封止樹脂との接触面積が増大し、両者の間の接着強度が向上する。その結果、本発明によれば、電装ユニットに振動が加わった場合でも、封止樹脂がケースから剥離することを防止できる。
【0021】
さらに、本発明によれば、封止樹脂が底板リブにより複数のブロックに区切られることで、温度変化時における封止樹脂の膨張または収縮により発生する応力の伝播・拡大を抑制し、ケースおよびプリント基板に加わる応力負荷を低減することができる。その結果、温度変化の際、ケースと封止樹脂との間の接着力を維持し封止樹脂の剥離を抑制するとともに、プリント基板の実装部品へのダメージを低減できる。
【0022】
また、プリント基板をケースにねじ固定する必要がないため、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る電装ユニットの斜視図である。
【図2】一実施形態に係る電装ユニット用のケースの斜視図である。
【図3】図1のA−A線に沿う端面説明図である。
【図4】熱応力シミュレーション結果を示すグラフである。
【図5】リブが20本設けられた電装ユニット用のケースの斜視図である。
【図6】第1の変形例に係る電装ユニットの端面説明図である。
【図7】第2の変形例に係る電装ユニット用のケースの斜視図である。
【図8】第3の変形例に係る電装ユニット用のケースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。
【0025】
(電装ユニット)
本発明の一実施形態に係る電装ユニットの構成について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電装ユニット1の斜視図を示している。図2は、電装ユニット1に使用されるケース10の斜視図である。図3は、図1のA−A線に沿う端面説明図である。
【0026】
電装ユニット1は、ケース10と、実装部品31が実装され、ケース10内に格納されたプリント基板30と、このプリント基板30を埋設する封止樹脂20と、を備える。
【0027】
ケース10は、図2に示すように、四角形の底板11と、4つの側板12とを有し、一方向に開口している。ケース10の内側には、複数の底板リブ13、側板リブ14、および台座15が凸設されている。なお、ケース10は、例えば樹脂成形により作製され、好ましくは軽量かつ低コストなPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂からなる。
【0028】
底板リブ13は、ケース10の内側底面から凸状に設けられ、底板11を複数の領域に区画する。なお、本発明においては、底板リブ13のように線状のものとして連続的に形成されたリブだけでなく、不連続的に形成された底板リブ(例えば一部に切り欠きが設けられたもの)についても、「底板を複数の領域に区画する」というものとする。
【0029】
また、底板リブ13には、第1の方向に延びる縦リブ13a、および第2の方向に延びる横リブ13bがある。図2に示すように、5本の縦リブ13aと4本の横リブ13bが直交し網目模様を形成しており、この場合、底板11は30個(=6×5)個の領域に区画される。
【0030】
側板リブ14は、図2に示すように、ケース10の内側側面から凸状に設けられている。なお、本実施形態において側板リブ14は側板12の上端まで設けられているが、これに限らない。即ち、ケース10内に格納されたプリント基板30よりも上側まで設けられていればよく、側板12の上端まで設けられていなくてもよい。
【0031】
台座15は、底板11の四隅に4つ設けられている。底板11からの台座15の高さは底板リブ13よりも高く、台座15の上にプリント基板30が載置される。
【0032】
封止樹脂20は、例えば、ケース10の材料であるPBT樹脂との接合力が強い熱硬化性ウレタン樹脂であり、この封止樹脂20は底板リブ13を埋設するようにケース10内に充填されている。なお、封止樹脂20としては比較的柔らかいものが好ましく、具体的には、JIS−K6253により測定した23℃におけるデュロメータA硬度が30〜60の範囲内であることが好ましい。これにより封止樹脂20の内部に埋め込まれたプリント基板30は、封止樹脂20に保持されるとともに振動が印加された際には適度に動くことができるため、電装ユニット1の耐振動性を向上させることができる。
【0033】
プリント基板30は、ケース10の台座15の上に載置されるとともに、ケース10の対向する2つの側板14,14のうちの一方の側板の側板リブと、他方の側板の側板リブとの間に配置されている。即ち、プリント基板30は、側板リブ14により概略位置決めされた状態で格納されている。
【0034】
また、プリント基板30は、図3に示すように、表面に実装部品31が実装され、裏面が底板11と対向するようにケース10内に格納され、かつ底板リブ13の上方における封止樹脂20の内部に埋め込まれている。
【0035】
なお、プリント基板30の端部には切り欠き部(図示せず)が設けられ、この切り欠き部が側板リブ14と嵌合しプリント基板30のケース10内における配置方向を規定するようにしてもよい。
【0036】
上記のように、本実施形態では、ケース10に底板リブ13が設けられていることにより、ケース10と封止樹脂20との接触面積が増大し、両者の間の接着強度が向上する。その結果、本実施形態によれば、電装ユニットに振動が加わった場合でも、封止樹脂20がケース10から剥離することを防止することができる。
【0037】
また、側板リブ14を設けることにより、封止樹脂20とケース10との間の接着力をさらに増大させ、封止樹脂20の剥離をさらに抑制することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、封止樹脂20が底板リブ13により複数のブロックに区切られる。これにより、温度変化時に封止樹脂20が膨張または収縮することにより発生する応力の伝播・拡大が抑制され、封止樹脂20の単位面積あたりの応力が低減する。このため、温度変化の際にケース10およびプリント基板30に加わる応力負荷が低減され、その結果、ケースと封止樹脂との間の接着力を維持し、封止樹脂の剥離を抑制するとともに、実装部品31へのダメージを低減できる。
【0039】
ここで、電装ユニットに対し熱応力シミュレーションを行った結果について、図4を用いて説明する。図4は、周囲温度を25℃から100℃に上昇させたときのプリント基板およびケースに加わる応力の最大値をそれぞれ示している。また、応力の最大値は、3つの場合、即ち、リブが無い場合(従来)、9本のリブを設けた場合(図2に示すケース10の場合)、および20本のリブを設けた場合(図5に示すケース10Aの場合)についてそれぞれ示している。
【0040】
図4に示すように、プリント基板に加わる応力(基板応力)およびケースに加わる応力(ケース応力)ともに、リブが無い場合に比べてリブが有る場合の方が小さい。また、リブの本数が多い方が、応力が低減されることがわかる。これは、リブの数が多いほど、リブで区切られた封止樹脂のブロックの容積が小さくなり、応力集中が回避されるためである。
【0041】
上記のように、本実施形態ではケースの内面にリブを凸設することで、振動印加時および温度変化時に封止樹脂がケースから剥離することを防止できる。このように本実施形態によれば、プリント基板30をケース10にねじ固定する必要がないため、製造コストを削減することができる。その他、リブによりケースの剛性が向上するという効果も得られる。
【0042】
また、本実施形態においてプリント基板30は、底板リブ13の上方における封止樹脂20の内部に埋め込まれた状態にあり、封止樹脂20の内部で適度に動くことが可能である。このため、プリント基板30に加わる応力負荷が分散され、電装ユニットの振動および温度変化に対する耐性をさらに向上させることができる。なお、この作用効果の観点から、プリント基板30の裏面にはフラックスなど封止樹脂20との接着力が弱い材料が塗布されていることが好ましい。これにより、プリント基板30と封止樹脂20との間の接着力が低減され、プリント基板30に対する応力をさらに回避しやすくなる。
【0043】
次に本実施形態の変形例について説明する。以下の変形例によっても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
(第1の変形例)
図6は、本変形例に係るケース10Bを用いた電装ユニットの端面説明図である。図6に示すように、ケース10Bの側板リブ14は、ケース10Bの内側側面から凸状に設けられるとともに底板11に接する下部側板リブ14Bと、ケース10Bの内側側面から凸状に設けられるとともに下部側板リブ14Bと接続し且つ下部側板リブ14Bよりも側板12からの高さが低い上部側板リブ14Aと、を有する。上部側板リブ14Aの高さは前述の側板リブ14の高さと同じであり、下部側板リブ14Bの高さは側板リブ14の高さよりも高い。そして、プリント基板30は、ケース10Bの対向する側板12,12の上部側板リブ14A間に配置されるとともに、下部側板リブ14Bと上部側板リブ14Aとの間の段差Sの上に載置されている。
【0045】
上記のように本変形例では、前述の台座15に代えて側板リブ14に段差Sを設け、この段差Sの上にプリント基板30が載置される。
【0046】
本変形例によれば、側板リブと封止樹脂との接触面積が増えるため、ケースと封止樹脂間の接着強度をさらに向上させることができる。また、ケース側面の剛性を高めることもできる。
【0047】
(第2の変形例)
図7は、本変形例に係るケース10Cの斜視図である。図7に示すように、ケース10Cの縦リブ13aおよび横リブ13bは、ケース10Cの底板11の上方からみて波状に形成されている。
【0048】
本変形例によれば、底板リブの長さが前述の直線状の底板リブよりも長くなるため、ケースと封止樹脂との接着力をさらに向上させることができる。
【0049】
(第3の変形例)
図8は、本変形例に係るケース10Dの斜視図である。図8に示すように、横リブ13bは、プリント基板30の実装密度の高い領域ではリブ間ピッチが小さくなるように不均等に配置されている。即ち、本変形例では、底板リブ13間の距離を、プリント基板30の実装部品の実装密度が高い領域ほど短くしている。図4の熱応力シミュレーションの結果からわかるように、応力負荷の低減効果は、リブ間の間隔(ピッチ)が小さいほど大きくなる傾向にある。よって、本変形例によれば、実装部品が密集している領域のリブ間ピッチを小さくすることで、より効果的に実装部品へのダメージを低減することができる。
【0050】
次に、上記の電装ユニットを製造する方法について説明する。
【0051】
(電装ユニットの製造方法)
(1)まず、実装部品31が表面に実装されたプリント基板30を、内側底面から凸状に底板リブ13が設けられたケース10内の台座15の上に載置する(載置工程)。より具体的には、ケース10の対向する側板12,12の側板リブ14,14間に配置されるように、プリント基板30を台座15の上に載置する。
なお、図6で説明したケース10Bの場合には、側板リブ14の段差Sの上にプリント基板30を載置する。
【0052】
また、プリント基板30として、側板リブ14と嵌合する切り欠き部(図示せず)が端部に設けられたものを用い、載置工程において、プリント基板30の切り欠き部を側板リブ14と嵌合させつつ、プリント基板30を台座15の上に載置するようにしてもよい。これにより、プリント基板30を誤った方向に格納することを防止できる。
【0053】
また、ケース10として、側板リブ14が、内側側面から凸状に設けられるとともに底板11に接する下部側板リブ14Bと、内側側面から凸状に設けられるとともに下部側板リブ14Bと接続し且つ側板12からの高さが下部側板リブ14Bよりも低い上部側板リブ14Aと、を有するものを用い、載置工程において、プリント基板30を、ケース10の対向する側板12,12の上部側板リブ14A,14A間に配置するとともに下部側板リブ14Bと上部側板リブ14Aとの間の段差Sの上に載置するようにしてもよい。
【0054】
(2)次に、図3に示すように、底板リブ13およびプリント基板30を埋め込むように溶融した樹脂を注入する(注入工程)。
ケース10がPBT樹脂製の場合、ケースに注入する樹脂としては、PBT樹脂との接着力が大きい熱硬化性ウレタン樹脂を用いることが好ましい。また、ケースに注入する樹脂として、後述の硬化工程の後に、JIS−K6253により測定した23℃におけるデュロメータA硬度が30〜60となる樹脂を使用することが好ましい。
【0055】
(3)次に、ケース10内に注入した樹脂を硬化させる(硬化工程)。具体的には、熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる。
【0056】
上記工程を経て図1に示す電装ユニット1が作製される。
【0057】
なお、上記製造方法では樹脂を一括して注入したが、第1の注入工程と第2の注入工程の2回に分割して注入してもよい。その場合の製造工程は次の通りである。
(1)まず、内側底面から凸状に底板リブ13が設けられたケース10内に、底板リブ13を埋め込むまで溶融した樹脂を注入する(第1の注入工程)。
(2)次に、実装部品31が表面に実装されたプリント基板30を、ケース10内に設けられた台座15の上に載置する(載置工程)。
(3)次に、図3に示すように、プリント基板30を埋め込むように溶融した樹脂を注入する(第2の注入工程)。本工程で用いる樹脂としては、第1の注入工程で用いた樹脂と同じ樹脂を使用可能である。
(4)次に、ケース10内に注入した樹脂を硬化させる(硬化工程)。具体的には、熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる。
【0058】
このように、樹脂を分割注入する方法によれば、樹脂の注入状況を目視確認できるため、底板リブの高さが高い場合であっても樹脂を確実に底板リブで区画された領域に充填することができ、封止樹脂20内に気泡が混入することを防止できる。
【0059】
以上、本発明に係る電装ユニットおよびその製造方法について説明した。上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 電装ユニット
10,10A,10B,10C,10D ケース
11 底板
12 側板
13 底板リブ
13a 縦リブ
13b 横リブ
14 側板リブ
14A 上部側板リブ
14B 下部側板リブ
15 台座
20 封止樹脂
30 プリント基板
31 実装部品
S 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と複数の側板を有し、一方向に開口した、ケースと、
前記ケースの内側底面から凸状に設けられ、前記底板を複数の領域に区画する、底板リブと、
前記底板リブを埋設するように前記ケース内に充填された、封止樹脂と、
少なくとも一方の主面に実装部品が実装され、前記底板と対向するように前記ケース内に格納され、かつ、前記底板リブの上方における前記封止樹脂の内部に埋め込まれた、プリント基板と、
を備えることを特徴とする電装ユニット。
【請求項2】
前記ケースの内側側面から凸状に設けられた側板リブをさらに備え、前記プリント基板は、前記ケースの対向する2つの側板のうちの一方の側板の側板リブと、前記2つの側板のうちの他方の側板の側板リブとの間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電装ユニット。
【請求項3】
前記プリント基板の端部には切り欠き部が設けられており、前記切り欠き部は、前記側板リブと嵌合し、前記プリント基板の前記ケース内における配置方向を規定していることを特徴とする請求項2に記載の電装ユニット。
【請求項4】
前記側板リブは、前記ケースの内側側面から凸状に設けられるとともに前記底板に接する下部側板リブと、前記ケースの内側側面から凸状に設けられるとともに前記下部側板リブと接続し且つ前記側板からの高さが前記下部側板リブよりも低い上部側板リブとを有し、前記プリント基板は、前記ケースの対向する側板の前記上部側板リブ間に配置されるとともに、前記下部側板リブと前記上部側板リブとの間の段差の上に載置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の電装ユニット。
【請求項5】
前記封止樹脂のJIS−K6253により測定した23℃におけるデュロメータA硬度は、30〜60であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電装ユニット。
【請求項6】
前記ケースはPBT樹脂からなり、前記封止樹脂は熱硬化性ウレタン樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電装ユニット。
【請求項7】
前記プリント基板の裏面にはフラックスが塗布され、前記プリント基板と前記封止樹脂との間の接着力が低減されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電装ユニット。
【請求項8】
前記底板リブには、第1の方向に延びる縦リブおよび第2の方向に延びる横リブがあり、複数の前記縦リブと複数の前記横リブが直交していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電装ユニット。
【請求項9】
前記縦リブおよび前記横リブは、前記ケースの底板の上方からみて波状に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の電装ユニット。
【請求項10】
前記底板リブ間の距離は、前記実装部品の実装密度が高い領域ほど短いことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の電装ユニット。
【請求項11】
実装部品が表面に実装されたプリント基板を、内側底面から凸状に底板リブが設けられたケース内であって前記底板リブよりも高い位置に載置する、載置工程と、
前記底板リブおよび前記プリント基板を埋め込むように溶融した樹脂を注入する、注入工程と、
前記ケース内に注入した樹脂を硬化させる、硬化工程と、
を備えることを特徴とする電装ユニットの製造方法。
【請求項12】
内側底面から凸状に底板リブが設けられたケース内に、前記底板リブを埋め込むまで溶融した樹脂を注入する、第1の注入工程と、
実装部品が表面に実装されたプリント基板を、前記ケース内であって前記底板リブよりも高い位置に載置する、載置工程と、
前記プリント基板を埋め込むように溶融した樹脂を注入する、第2の注入工程と、
前記ケース内に注入した樹脂を硬化させる、硬化工程と、
を備えることを特徴とする電装ユニットの製造方法。
【請求項13】
前記ケースは、内側側面から凸状に設けられた側板リブをさらに備え、前記プリント基板として、前記側板リブと嵌合する切り欠き部が端部に設けられたものを用い、
前記載置工程において、前記プリント基板が前記ケースの対向する側板の前記側板リブ間に配置され且つ前記プリント基板の前記切り欠き部が前記側板リブと嵌合するように、前記プリント基板を前記ケース内に格納することを特徴とする請求項11または12に記載の電装ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−115270(P2013−115270A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260772(P2011−260772)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】