説明

電解コンデンサおよびその製造方法

【課題】内金属ケースと外金属ケースとの間の空間が高い気密性を有する電解コンデンサおよび該電解コンデンサの製造方法を提供する。
【解決手段】電解コンデンサ1は、コンデンサ素子2と、コンデンサ素子2を収容した有底筒状の内金属ケース5と、内金属ケース5を覆う有底筒状の外金属ケース6と、内金属ケース5の開口部を封口する封口部材3と、内金属ケース5の開口端近傍および外金属ケース6の開口端近傍に設けられたくびれ部5c、6cとを備えており、内金属ケース5のくびれ部5cと外金属ケース6のくびれ部6cとの間に、弾性部材8が挟み込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重ケース構造を採用した電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電解コンデンサは、電解液を含浸させたコンデンサ素子と、該コンデンサ素子を収容した有底筒状の金属ケースと、該金属ケースの開口部を封口する封口部材とから構成されている。
かかる電解コンデンサは、定格電圧を超える過電圧、逆電圧または過リプル電流が印加されると、コンデンサ素子の発熱により電解液が気化し、密閉状態となっている金属ケース内部の圧力が上昇する。そして、この圧力が高くなり過ぎると、金属ケースが破裂したり、弾け飛んだりするおそれがあるため、金属ケースに圧力弁が設けられ、一定圧力以上になると圧力弁が作動し、金属ケース内部の圧力を外部に逃がす構造となっている。
【0003】
しかしながら、圧力弁が作動すると、気化した電解液(以下、蒸気化電解液という)が圧力弁を通って放出されるため、二重ケース構造を採用した電解コンデンサが従来から検討されている。例えば、図3に示す特許文献1に記載の電解コンデンサ10は、底板11aに圧力弁11bが形成された内金属ケース11と、内金属ケース11を覆う有底筒状の外金属ケース12と、内金属ケース11の底板11aと外金属ケース12の底板12aとの間の空間に配置された吸収部材13とを備えている。
【0004】
この電解コンデンサ10では、内金属ケース11内の圧力がある程度高くなると、蒸気化電解液が圧力弁11bを通って放出され、吸収部材13によって速やかに冷却・吸収される。したがって、電解コンデンサ10によれば、内金属ケース11内および外金属ケース12内の圧力上昇を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−36223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、二重ケース構造を採用した従来の電解コンデンサ10は、気密性を高めるために内金属ケース11および外金属ケース12の開口端近傍に形成された内くびれ部11cおよび外くびれ部12cに関し、以下のような問題があった。
【0007】
すなわち、内金属ケース11を外金属ケース12で覆った後に、内金属ケース11の内くびれ部11cと外金属ケース12の外くびれ部12cを同時に形成すると、加工対象となる金属の肉厚が大きく加工性が悪いために、くびれ部11c、12cの形状にずれが生じ、その結果、吸収部材13で吸収しきれなかった蒸気化電解液が内くびれ部11cと外くびれ部12cの間の隙間を通って外部に漏れ出すおそれがあった。
【0008】
また、内くびれ部11cが形成された内金属ケース11を外くびれ部12cが形成されていない外金属ケース12に収容し、その後に外くびれ部12cを形成する場合、すなわち、内くびれ部11cと外くびれ部12cを別々に形成する場合も、内くびれ部11cおよび外くびれ部12cの加工寸法誤差により金属ケース11、12同士の密着性が低下し、上記した問題が生じるおそれがあった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、内金属ケースと外金属ケースとの間の空間が高い気密性を有する電解コンデンサおよび該電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子を収容した有底筒状の内金属ケースと、内金属ケースを覆う有底筒状の外金属ケースと、内金属ケースの開口部を封口する封口部材と、内金属ケースの開口端近傍および外金属ケースの開口端近傍に設けられたくびれ部とを備えた電解コンデンサであって、内金属ケースのくびれ部と外金属ケースのくびれ部との間に弾性部材を挟み込んだことを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、内金属ケースのくびれ部と外金属ケースのくびれ部との間に弾性部材が挟み込まれているので、いずれか一方または両方のくびれ部の形状にずれが生じた場合においても、弾性部材が変形することによってずれが吸収され、内金属ケースと外金属ケースとの間の空間の気密性を確保することができる。
【0012】
なお、上記弾性部材は例えば合成ゴムからなる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る電解コンデンサの製造方法は、コンデンサ素子を作製する素子作製工程と、コンデンサ素子を有底筒状の内金属ケースに収容する素子収容工程と、内金属ケースの開口部を封口部材で封口する封口工程と、内金属ケースの開口端近傍にくびれ部を形成して封口部材を締め付ける第1締付工程と、内金属ケースのくびれ部に弾性部材を配置する弾性部材配置工程と、弾性部材が配置された後の内金属ケースを有底筒状の外金属ケースに収容するケース収容工程と、外金属ケースの開口端近傍にくびれ部を形成して弾性部材を締め付ける第2締付工程とを備えたことを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、内金属ケースのくびれ部に弾性部材を配置した後に外金属ケースのくびれ部を形成するので、いずれか一方または両方のくびれ部の形状にずれが生じた場合においても、弾性部材が変形することによってずれが吸収され、内金属ケースと外金属ケースとの間の空間の気密性を確保することができる。
【0015】
上記製造方法は、第1締付工程とケース収容工程との間に、コンデンサ素子のエージング工程をさらに備えていてもよい。
【0016】
なお、弾性部材は例えば合成ゴムからなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内金属ケースと外金属ケースとの間の空間が高い気密性を有する電解コンデンサおよび該電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電解コンデンサの一実施形態を示す部分断面図である。
【図2】本発明に係る電解コンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【図3】従来の電解コンデンサの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る電解コンデンサおよびその製造方法の好ましい実施形態について説明する。
【0020】
[電解コンデンサの構成]
まず、図1を参照して、本発明に係る電解コンデンサの構成について説明する。
同図に示すように、電解コンデンサ1は、電解液を含浸させたコンデンサ素子2と、コンデンサ素子2を収容した有底筒状の内金属ケース5と、内金属ケース5の開口部を封口する封口部材3と、コンデンサ素子2から陽極および陰極を引き出すための一対のリード4とを備えている。
【0021】
また、圧力機能を持たせるために、電解コンデンサ1は、内金属ケース5を覆う有底筒状の外金属ケース6と、互いに離間した内金属ケース5の底板5aと外金属ケース6の底板6aとの間の空間9に配置された吸収部材7とをさらに備えている。
内金属ケース5の底板5aの中央には、他の部分よりも薄肉化して破れやすくした内圧力弁5bが形成されている。外金属ケース6の底板6aの中央にも、他の部分よりも薄肉化して破れやすくした外圧力弁6bが形成されている。
【0022】
コンデンサ素子2の発熱等により内金属ケース5の内部の圧力が所定圧力を超えると、内圧力弁5bが破れ(開弁し)、内金属ケース5の内部と吸収部材7が配置されている空間9とが繋がる。また、吸収部材7が配置されている空間9の圧力が所定圧力を超えると、外圧力弁6bが破れ(開弁し)、空間9と電解コンデンサ1の外部とが繋がり、電解コンデンサ1の破裂が防止される。
【0023】
なお、コンデンサ素子2の温度が上昇し、内圧力弁5bを通じて蒸気化電解液が放出されたとしても、放出された蒸気化電解液の多くは吸収部材7によって直ちに冷却・吸収される。したがって、外圧力弁6bが開弁するのは、吸収部材7によって吸収しきれない程の大量の蒸気化電解液が内圧力弁5bから勢いよく放出された場合に限られる。
【0024】
なお、吸収部材7としては、シリカゲル、活性炭、グラファイト、モレキュラーシーブ、珪藻土、ベントナイト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カーボン繊維、多孔質ガラス、ガラス繊維、多孔質高分子、濾紙、不織布、ゲル化剤等が挙げられ、上記ゲル化剤としては、セルロース、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩からなるセルロース誘導体、アルギン酸のアルカリ金属塩、ゼラチン、寒天、コンニャク粉、デンプン、砂糖や多糖類、タンパク質のいずれか1種もしくはこれらの2種以上を混合したもの、または、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルエーテル誘導体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンのいずれか1種または2種以上を共重合もしくは混合したものが挙げられる。
【0025】
図1に示すように、内金属ケース5には内くびれ部5cが形成されている。内くびれ部5cは、例えば、円盤状の冶具を内金属ケース5の開口端近傍に押し付けて該開口端近傍を凹ませることにより形成される。
内くびれ部5cの寸法(幅、深さ)は、冶具の形状または押付け力を調整することにより、任意に変更することができる。内くびれ部5cを形成することにより、封口部材3が締め付けられ、内金属ケース5の気密性を高めることができる。
【0026】
外金属ケース6には外くびれ部6cが形成されている。内金属ケース5の内くびれ部5cと同様、外くびれ部6cは、例えば、円盤状の冶具を外金属ケース6の開口端近傍に押し付けて該開口端近傍を凹ませることにより形成される。
図1に示すように、外くびれ部6cは、内くびれ部5cよりも幅が狭く、かつ僅かに浅い。したがって、外くびれ部6cを形成するためには、内くびれ部5cを形成する際に用いられる冶具よりも小型の冶具が必要である。
【0027】
内くびれ部5cと外くびれ部6cの間には、弾性部材8が挟み込まれている。弾性部材8は、外金属ケース6の外くびれ部6cが形成される際に圧縮されて変形する。このため、弾性部材8は、内金属ケース5の外表面および外金属ケース6の内表面の両方に隙間なく密着した状態となっている。
【0028】
弾性部材8としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等の任意の合成ゴムを使用することができる。一方、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリスチレンのような樹脂は、外くびれ部6cを形成する際に変形することなく割れてしまい、空間9の気密性を保つことができなくなる可能性があるので、好ましくない。
【0029】
[電解コンデンサの製造方法]
続いて、図2を参照して、本発明に係る電解コンデンサ1の製造方法について説明する。同図に示すように、電解コンデンサ1は7つの工程(S1〜S7)を経て製造される。
【0030】
まず、素子作製工程S1では、表面に酸化皮膜を形成した陽極箔および陰極箔の間にセパレータを挟んで円筒状に巻回し、その後、この巻回体に電解液を含浸させてコンデンサ素子2を作製する。
【0031】
素子収容工程S2では、前工程S1で作製したコンデンサ素子2を有底筒状の内金属ケース5に収容する。内金属ケース5は例えばアルミニウムからなり、その底板5aの中央には内圧力弁5bが予め形成されている。
【0032】
封口工程S3では、内金属ケース5の開口部に封口部材3を嵌め込み、内金属ケース5を封口する。封口部材3は、想定される温度変化に耐え得る適当なゴム等からなる。なお、封口部材3には、コンデンサ素子2の一対のリード4を外部に引き出すための2つの貫通穴が予め形成されている。
【0033】
第1締付工程S4では、円盤状の冶具を内金属ケース5の開口端近傍に押し付けて該開口端近傍に内くびれ部5cを形成し、封口部材3を締め付ける(圧縮する)。これにより、封口部材3と内金属ケース5が密着し、コンデンサ素子2が収容されている空間の気密性が高められる。これと同時に、本工程では、内金属ケース5の開口端(裾)の折り曲げも行う。
【0034】
弾性部材配置工程S5では、前工程S4で形成した内くびれ部5cに弾性部材8を配置する。
弾性部材8を配置する態様としては、(1)弾性部材8となるペースト状の樹脂を内くびれ部5cに塗布し、乾燥させる、(2)リング状の弾性部材8を内くびれ部5cに嵌め込む、(3)粘着面を有する長尺テープ状の弾性部材8を内くびれ部5cに巻き付ける、(4)チューブ状の弾性部材8を内くびれ部5cおよびその周辺部に被せ、熱収縮させる、等が考えられる。
【0035】
ケース収容工程S6では、前工程S5で弾性部材8が配置された内金属ケース5を有底筒状の外金属ケース6に収容する。外金属ケース6は例えばアルミニウムからなり、その底板6aの中央には外圧力弁6bが予め形成されている。なお、吸収部材7は、内金属ケース5を収容する前に外金属ケース6内に配置しておく必要がある。
【0036】
第2締付工程S7では、第1締付工程S4と同様、円盤状の冶具を外金属ケース6の開口端近傍に押し付けて該開口端近傍に外くびれ部6cを形成し、弾性部材8を締め付ける(圧縮する)。ただし、本工程では、第1締付工程S4よりも小型の冶具を用いる。
外くびれ部6cを形成すると、圧縮された弾性部材8が内くびれ部5cと外くびれ部6cの間の隙間を埋める適当な形状に変形し、空間9の気密性が高められる。これと同時に、本工程では、外金属ケース6の開口端の折り曲げも行う。
【0037】
以上、本発明に係る電解コンデンサおよびその製造方法の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
【0038】
例えば、上記実施形態では、内金属ケース5と外金属ケース6の間の空間9に吸収部材7を配置したが、この空間9および吸収部材7は省略することができる。つまり、本発明は、内金属ケース5と外金属ケース6を備えたあらゆる二重ケース構造の電解コンデンサおよびその製造方法に適用可能である。
【0039】
また、内圧力弁5bを設ける位置は、内金属ケース5の底板5aの中央部に限定されず、底板5aの任意の位置に変更可能である。同様に、外圧力弁6bを設ける位置は、外金属ケース6の底板6aの中央部に限定されず、底板6aの任意の位置に変更可能である。
【0040】
また、上記実施形態では、7つの工程(S1〜S7)を経て電解コンデンサ1を製造したが、各工程の間に適宜検査工程を設けてもよいし、第1締付工程S4とケース収容工程S6の間にコンデンサ素子2のエージング工程をさらに設けてもよい。
内金属ケース5を外金属ケース6に収容する前に、コンデンサ素子2のエージングを行うと、エージングにより生じた内金属ケース5の膨張等の異常が生じたか否かを外観の変化により判断することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 封口部材
4 リード
5 内金属ケース
5a 底板
5b 内圧力弁
5c 内くびれ部
6 外金属ケース
6a 底板
6b 外圧力弁
6c 外くびれ部
7 吸収部材
8 弾性部材
9 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を収容した有底筒状の内金属ケースと、前記内金属ケースを覆う有底筒状の外金属ケースと、前記内金属ケースの開口部を封口する封口部材と、前記内金属ケースの開口端近傍および前記外金属ケースの開口端近傍に設けられたくびれ部とを備えた電解コンデンサであって、
前記内金属ケースのくびれ部と前記外金属ケースのくびれ部との間に弾性部材を挟み込んだことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記弾性部材が合成ゴムからなることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
コンデンサ素子を作製する素子作製工程と、
前記コンデンサ素子を有底筒状の内金属ケースに収容する素子収容工程と、
前記内金属ケースの開口部を封口部材で封口する封口工程と、
前記内金属ケースの開口端近傍にくびれ部を形成して前記封口部材を締め付ける第1締付工程と、
前記内金属ケースのくびれ部に弾性部材を配置する弾性部材配置工程と、
前記弾性部材が配置された後の前記内金属ケースを有底筒状の外金属ケースに収容するケース収容工程と、
前記外金属ケースの開口端近傍にくびれ部を形成して前記弾性部材を締め付ける第2締付工程と、
を備えたことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記第1締付工程と前記ケース収容工程との間に、前記コンデンサ素子のエージング工程をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記弾性部材が合成ゴムであることを特徴とする請求項3または4に記載の電解コンデンサの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−248772(P2012−248772A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121164(P2011−121164)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)