説明

電解水製造装置

【課題】電解槽及び塩酸供給手段のケーシングからの取り出し及び設置が容易な電解水製造装置を提供する。
【解決手段】ケーシング20と、該ケーシング20内に設置され原料水を電解処理する電解槽4と、電解槽4に原料水を圧送する原料水圧送ポンプ10と、電解槽4から導出された電解処理液を稀釈水により稀釈化する稀釈手段26とを備え、電解水を生成する電解水製造装置1Aにおいて、電解槽4及び原料水圧送ポンプ10を一体的に取り付け可能とされているとともに、電解槽4及び原料水圧送ポンプ10を取り付けた状態でケーシング20内に着脱自在に固定可能なブラケット30を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原料水を電気分解することによって殺菌水等に用いる電解水を製造するための電解水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、塩素イオンを含有する溶液を電気分解して得られる電解水は、低塩素濃度でありながら高い殺菌効果を有し、かつ人に対しても安全性が高い等の有利な性質を持つことが知られており、食品関連分野等において、食品又はこれを加工する機器を殺菌すること等に広く用いられている。
特に近年、食品又は食品を取り扱う物の品質・衛生管理を適確に行うことが強く求められていることから、上記電解水(殺菌水)を製造する電解水製造装置の活用が一層期待されている。
【0003】
この電解水製造装置は、塩酸水等の原料水を電気分解する電解槽、塩酸等の原料水のタンク、給水設備、塩酸水・稀釈水等を圧送するためのポンプ、電解槽等の設置基板、混合器、これら装置の各要素を連結する配管群、電解槽への電力を供給するための電解電源等を備えて構成されており、従来の電解水製造装置として、例えば下記特許文献1、2に示されたものが提案されている。
【0004】
また、電解槽を用いた水処理装置の電解槽を交換する際に、電解槽内の被稀釈水を飛散させずに配管を外す技術が特許文献3に開示されている。
この水処理装置においては、電解槽の水流導入口近傍であって該電解槽よりも下方に排水管を設置するとともに該排水管に排水バルブを設置し、排水管よりも上流側の配管と、電解槽から導出される電解処理液の導出側の管とにそれぞれ水流停止用バルブを設けている。そして、該2つの水流停止用バルブの一方を閉止して水流を遮断した後、排水バルブを開放して前記両水流停止用バルブ間の電解槽内及び流通管内に存在する被稀釈水を殆ど全て排水し、その後電解槽を流通管から取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−169856号公報
【特許文献2】特開2001−62455号公報
【特許文献3】特開平6−99177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1、2に示された電解水製造装置の電解槽、及び塩酸水・稀釈水を圧送する圧送ポンプは、前者は電極の寿命、後者はチューブやダイヤフラムの劣化やモータ等の寿命があり、いずれも消耗部品であるため一定の使用毎に交換を必要とするものであるが、その交換時には、電解槽等に接続された配管を外した際に薬液がこぼれて手等に付着したりすることのないよう電解槽等の内部を薬液から水に置換して行う必要があった。そして、その置換作業には時間が掛かるため、交換の作業効率を改善し得る余地があった。
【0007】
また、電解槽等に薬液を保持させたまま電解槽等を交換可能であれば薬液に置換される水は不要なものであり、電解槽等の交換後、置換された水は他に用途が無く廃棄されるしかないため、水を節約できる余地があった。
【0008】
また、電解槽等の交換において配管を外した際に生じる水垂れを放置すると、電解水製造装置のケーシング内が腐食するおそれがあり、ケーシング内を掃除する手間がかかるため、水垂れを防止することにより交換の作業効率を高められる余地があった。
【0009】
また、ケーシング内に手を入れて電解槽又は圧送ポンプに接続された全ての配管を取り外すようになっていたが、ケーシング内での作業を回避して取り外し作業をより行い易く改善できる余地があった。
【0010】
また、特許文献3に開示された水処理装置によると、電解槽の交換のために、水流停止用バルブを電解槽の上流側の管と下流側の管との双方に設けるとともに、電解槽よりも下方に排水バルブを具備した排水管を別途形成しなければならず、装置全体の構造が複雑となりかつ高価になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するべく、以下の手段を提供している。
すなわち、本願の請求項1に係る電解水製造装置は、ケーシングと、該ケーシング内に設置され原料水を電解処理する電解槽と、前記電解槽に原料水を圧送する原料水圧送ポンプと、前記電解槽から導出された電解処理液を稀釈水により稀釈化する稀釈手段とを備え、電解水を生成する電解水製造装置において、前記電解槽及び前記原料水圧送ポンプを一体的に取り付け可能とされているとともに、前記電解槽及び前記原料水圧送ポンプを取り付けた状態で前記ケーシング内に着脱自在に固定可能なブラケットを具備することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、前記原料水圧送ポンプと前記原料水を貯留した貯留タンクとの間には第1の配管が接続され、該第1の配管と前記原料水圧送ポンプとの接続部は、前記貯留タンクよりも上方に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、前記電解槽と前記稀釈手段との間には、第2の配管が接続され、 前記第2の配管と前記稀釈手段との接続部は、前記第2の配管と前記電解槽との接続部よりも上方に位置していることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、前記第1および第2の配管は、フレキシブル管により構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、前記第1および第2の配管は、前記原料水圧送ポンプ、前記電解槽、及び前記稀釈手段のそれぞれの接続部に接続された状態で前記ブラケットを前記ケーシング外に取り出し可能な長さを有していることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、前記電解槽に稀釈水を圧送する稀釈水圧送ポンプを備え、前記稀釈水圧送ポンプは、前記ブラケットに取り付け可能とされていることを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、前記稀釈水圧送ポンプは、前記ブラケットに対して角度を可変に取り付け可能とされていることを特徴とする電解水製造装置。
【0018】
請求項8の発明は、前記ケーシングと前記ブラケットとが1箇所で着脱自在に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電解水製造装置によれば、上記した解決手段によって下記の効果を奏する。
すなわち、本願の請求項1に係る電解水製造装置によれば、電解槽と原料水圧送ポンプとをブラケットにより一体的に取り外しケーシング外に移動させた後で、電解槽または原料水圧送ポンプ内の液体の処理を行えることにより、電解槽又は原料水圧送ポンプの交換において電解槽等の内部を水に置換する作業を省くことができ、交換の作業効率を高めることが可能となるという効果を奏する。
【0020】
また、電解槽等の内部を水に置換する作業を省くことができるため、節水することができるという効果を奏する。
【0021】
また、ケーシング外で交換作業をすることが可能となるため、作業を容易かつ安全に行いやすいという効果を奏する。
【0022】
また、電解槽等の交換のために、電解槽及び原料水圧送ポンプを一体的に取り付けるブラケットを用いるのみであるため、電解水製造装置の構造がシンプルとなり製造コストを抑制することができるという効果を奏する。
【0023】
本願の請求項2に係る電解水製造装置によれば、第1の配管と原料水圧送ポンプとの接続部が貯留タンクよりも上方に設けられているため、原料水圧送ポンプから第1の配管を取り外した際に、第1の配管内の原料水が貯留タンクに流動し、ケーシング内でこぼれ難いという効果を奏する。また、本願の請求項3に係る電解水製造装置も同様に、第2の配管内の電解処理液がケーシング内でこぼれ難いという効果を奏する。したがって、ケーシング内を清掃する手間を省いて、原料水圧送ポンプ又は電解槽の交換時の作業効率を高めることができるという効果を奏する。
また、電解槽又は原料水圧送ポンプ内の液体をこぼさないための構造がシンプルであるため電解水製造装置の製造費用が抑えられるという効果を奏する。
【0024】
本願の請求項4に係る電解水製造装置によれば、第1および第2の配管が柔軟に折曲し得るため、配管の接続作業が容易となるという効果を奏する。
【0025】
本願の請求項5に係る電解水製造装置によれば、電解槽及び原料水圧送ポンプをブラケットと一体的にケーシング外に取り出した上で、第1および第2の配管を電解槽、及び原料水圧送ポンプから取り外すことが可能となる。したがって、ケーシング内を原料水又は電解処理液で汚すことなく、かつケーシング内よりも交換処理が行いやすくなるため、作業効率が一層向上するという効果を奏する。
【0026】
本願の請求項6に係る電解水製造装置によれば、稀釈水圧送ポンプがブラケットに取り付け可能とされているため、ブラケットをケーシング外に取り出して稀釈水圧送ポンプの交換作業を行うことができ、交換作業が容易となるという効果を奏する。
【0027】
本願の請求項7に記載の電解水製造装置によれば、稀釈水圧送ポンプをブラケットに取り付ける際に、稀釈水圧送ポンプとブラケットとの角度を適宜選択して取り付けることができるため、例えば稀釈水圧送ポンプの配管が邪魔で作業性が良くない場合には、稀釈水圧送ポンプの角度を変えてブラケットに取り付けることができ、作業性の点で更に有利になるという効果を奏する。
【0028】
本願の請求項8に係る電解水製造装置によれば、ケーシングとブラケットとが1箇所で着脱自在に固定されているので、ブラケットをケーシングから取り出す際には1箇所の固定を解除するだけでよく、またブラケットをケーシング内に装着する際には1箇所だけ固定すればよく、いずれも簡単に行え、作業性がよく、かつ部品コストも節約できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】は、本発明の第1の実施形態である電解水製造装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】は、本発明の第1の実施形態である電解水製造装置の内部を示した斜視図である。
【図3】は、本発明の第1の実施形態である電解水製造装置の内部の一部を示した背面斜視図である。
【図4】は、本発明の第1の実施形態である電解水製造装置のブラケットを示した斜視図である。
【図5】は、本発明の第1の実施形態である電解水製造装置のブラケットをケーシングから取り出した状態を示した斜視図である。
【図6】は、本発明の第1の実施形態である電解水製造装置の変形例を示した斜視図である。
【図7】は、本発明の第2の実施形態である電解水製造装置の構成を模式的に示した図である。
【図8】は、本発明の第2の実施形態である電解水製造装置の内部を示した斜視図である。
【図9】は、本発明の第2の実施形態である電解水製造装置のブラケットを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る電解水製造装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
ここで、電解水の原料となる塩素イオンを含有した原料水は、例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩酸水溶液等のように塩素イオンを含有する水である。
本発明に係る電解水製造装置は、このような原料水を電気分解し、電解酸化の作用により塩素ガスを発生させ、発生した塩素ガスを水に溶解させて、水中に次亜塩素酸を生成させるものである。
【0031】
図1に示すように、電解水製造装置1Aは、原水入口部2から流入した原水(稀釈水)を流す原水ライン3Aと、原料水である塩酸水溶液を電解水製造装置1Aの電解槽4に供給し、電解槽4にて電解処理された電解処理液を導出する処理液生成ライン3Bと、処理液生成ライン3Bにおいて生成された電解処理液を稀釈し、最終的な殺菌水となる電解水にして取出口5に供給する電解水供給ライン3Cとを備えて構成されている。
図2に示すように、これら各ライン3Aから3Cは、貯留タンク9を除いて略矩形のケーシング20に収納されており、該ケーシング20の側面に設けられた開閉扉21を開き、各部品を適宜保守・点検等できるように構成されている。
【0032】
原水ライン3Aは、原水入口部2から流入した原水を流す給水配管6に、ストレーナ(不図示)と、ストレーナの下流側で原水の流れを開閉する開閉弁(電磁弁)7と、電磁弁7の下流側で配管内を流れる原水の圧力を制御する圧力スイッチ8と、原水の逆流を防止する逆止弁(不図示)とを備えている。
【0033】
この給水配管6は、原水入口部2と電解水の取出口5とがケーシング20の側壁22の上下方向中間部に取り付けられて配置されている。
【0034】
処理液生成ライン3Bは、塩酸水溶液を貯留する貯留タンク9と、この貯留タンク9から塩酸水溶液を吸い出し、かつ電解槽4に向けて塩酸水溶液を圧送する原料水圧送ポンプ10と、圧送された塩酸水溶液を電気分解する電解槽4とを有しており、貯留タンク9とポンプ10との間は第1の配管11により連結され、電解槽4と電解水供給ライン3Cとの間は第2の配管12により連結され、更にポンプ10と電解槽4との間は第3の配管13により連結されて構成されている。
【0035】
第1から第3の配管11、12、13は、全てフレキシブル管により構成されている。また、電解槽4には、コネクタ(不図示)が接続され、電解電源から電力が供給さるようになっている。
【0036】
上記各部材は、第1の配管11とポンプ10との接続部11aが貯留タンク9よりも上方に位置し、ポンプ10が電解槽4よりも上方に位置し、電解水供給ライン3Cと第2の配管12との接続部12aが電解槽4と第2の配管12との接続部12bよりも上方に位置している。そして、ポンプ10と電解槽4とはブラケット30に一体的に取付けられケーシング20内に着脱自在に設置されている。
【0037】
電解槽4は、塩酸水溶液を電気分解する電解室が筐体14内に形成されたものである。筐体14は、側板15A、15Bと胴体16とを備えており、塩化ビニル樹脂、カーボネイト樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂により形成されている。
【0038】
側板15A、15Bは、所定の厚みを有する外観矩形の板状体であり、側板15Aの下方に塩酸水溶液を導入する導入口25aが形成され、側板15Bの上方に電解処理された電解処理液を取り出す導出口25b(接続部12a)が形成されている。
【0039】
胴体16は、円筒形に形成された部材であり、その内部空間には、それぞれ胴体16の中心軸線と直交する方向に配置された複数の電極が配列され、複数の電極への通電によって電解槽4内の原料水が電気分解されるように形成されている。側板15A、15Bは、胴体16の両端開口部を水密に覆うように配置された上で、該胴体16に固定されている。
【0040】
また、原料水圧送ポンプ10は、チューブとこのチューブを押しつぶすローラーを回転させるローターとを収容しローターの回転によりチューブ内の塩酸水溶液を移送する円板形状のローター室17と、ローターを駆動させる駆動部18とからなっている。ローター室17の下方には、塩酸水溶液を吸い込む導入口17a(接続部11a)と同液を電解槽4に向けて圧送する送出口17bが形成されている。
【0041】
上記の電解槽4及びポンプ10は、前述した位置関係でケーシング20内に設置されるとともに、電解槽4の電極の寿命、並びにポンプ10のチューブやダイヤフラムの劣化またはモータ等の寿命により適宜交換が必要な場合に交換作業を容易にするブラケット30に一体的に取り付けられ、ケーシング20内の設置基板31に該ブラケット30を介して着脱自在に固定された構成とされている。
【0042】
設置基板31は、所定の厚みを有する略矩形の台座であり、ケーシング20の開閉扉21側(以下「ケーシング手前側」という)に寄せて溶接固定されている。
【0043】
図3に示すように、この設置基板31のケーシング手前側(図面の奥行き側)にはボルト50を螺入可能な雌螺子孔39が形成されており、ケーシング20の奥側(図面の手前側)の端縁と側部の端縁には、上方に立ち上がった後に設置基板31の内方に向けて折曲され、ブラケット30の底壁部35を狭持する固定爪部36、36・・が形成されている。
【0044】
ブラケット30は、図4に示すように、金属又は合成樹脂等よりなる板状体を折曲して形成されたものであり、設置基板31の上面に固定されるとともに図2に示す電解槽4を取付け可能な底壁部35と、底壁部35の側部の端縁35aから垂直に立ち上がる側壁部37と、側壁部37を形成する上下方向の側縁から該側壁部37に直交する方向に延出したポンプ取付部38とを備えている。
【0045】
ブラケット30の底壁部35には、設置基板31に形成された雌螺子孔39の位置に合わせてボルト50を挿通可能な貫通孔33が形成されており、この貫通孔33を有する底壁部35を設置基板31に形成された固定爪36、36・・の下に挿入し、かつ貫通孔33と雌螺子孔39にボルト50を螺入することによってブラケット30が設置基板31に着脱自在に取り付けられている。また、底壁部35には、側壁部37が形成された側縁35aに対向する側縁35cに寄せて図2に示す電解槽4を設置させる電解槽固定壁40が形成されている。
【0046】
電解槽固定壁40は、底壁部35から垂直に立ち上がる壁部であり、電解槽4を固定するためのボルトを挿通させる挿通孔41、41を備えている。他方、図3に示すように電解槽4の側板15Bには、挿通孔41、41を通してボルト51、51を螺入可能とする雌螺子孔(不図示)が形成されている。
【0047】
ブラケットの側壁部37は、図2、図4に示すように、その上方においてポンプ取付部38が形成され、ポンプ取付部38に取付けられるポンプ10が貯留タンク9及び電解槽4より上方に位置し得る高さ寸法となるよう形成されている。
【0048】
ポンプ取付部38は、設置基板31のケーシング手前側に位置するように側壁部37の上部側縁からケーシング20の内壁面に沿って延出して形成されており、その内方にはポンプ10を装着させるための開口部42が形成されている。
【0049】
この開口部42には、一対の係止切欠部42a、42aが形成されている。そして、これに対して、ポンプ10のローター室17の裏側(ポンプ取付部38に接する側)には、この係止切欠部42aとスナップ式に嵌合する一対の固定爪部(図示せず)が突設されている。後述するように、係止切欠部42aは、ポンプ10の固定爪部と嵌合してポンプ10の角度決定手段となる。
【0050】
ポンプ10をブラケット30に取り付ける場合は、まず駆動部18を開口部42に挿通させるが、この際にローター室17の裏側に形成されている一対の固定用爪(図示せず)が、開口部42に形成されている一対の係止切欠部42a、42aに嵌合するまで挿通させる。係止切欠部42a、42aと、ポンプ10の一対の固定爪部とを嵌合させることにより、ブラケット30に対するポンプ10の角度は常に一定の角度となり、かつポンプ10がブラケット30に対して回動することが防止される。
そして、ローター室17とポンプ取付部38に設けられた不図示のボルト又はクリップ等の留め具とによりポンプ取付部38を挟んでポンプ10を適宜固定する。
【0051】
図2に示すように、電解水供給ライン3Cは、電解槽4から導かれた電解処理液を給水配管6の原水によって稀釈し、電解水を生成する稀釈手段26を構成するものであり、給水配管6の最下流に形成されている。
【0052】
上述したように、給水配管6、電解槽4、ポンプ10、及びこれらを連結する第1の配管11のポンプ10側の部分、第2及び第3の配管12、13はケーシング20内に格納されており、電解槽4及びポンプ10は、ケーシング20の開閉扉21から容易に取り出し可能なように、ブラケット30に一体的かつ着脱自在に取り付けられ、更にブラケット30がボルト50によりケーシング20内の設置基板31に固定されている。
【0053】
次に、電解水製造装置1Aの電解槽4もしくはポンプ10、又はこれら双方を交換する方法について説明する。
まず、電解水製造装置1Aの電源をOFFにし、塩酸水溶液及び原水の流動を止めた上で、図5に示すように、ケーシング20の開閉扉21を開け、設置基板31に固定しているボルト50を取り外してブラケット30を設置基板31のケーシング手前側(矢印P方向)に引き出し可能状態にする。
【0054】
そして、第1の配管11をポンプ10との接続部11aにおいて取り外し、第1の配管11内に溜まっている塩酸水溶液を図2に示す貯留タンク9に流し戻す。
【0055】
次に、第2の配管12を稀釈手段26との接続部12aにおいて取り外し、取り外された第2の配管12の開口部を上方に向けた状態に維持して第2の配管12内に溜まっている電解処理液がこぼれないように保持する。
【0056】
この状態で、ブラケット30を設置基板31の一端側31b(矢印P方向)、すなわちケーシング手前側に引き出し、ブラケット30ごと電解槽4及びポンプ10をケーシング20から取り出して、作業が行い易く、かつ塩酸水溶液等を廃棄可能な場所に持ち運び、第2の配管12内の電解処理液を廃棄した後に、ポンプ10と電解槽4とを連結している第3の配管13をポンプ10の導入口17bから取り外し、該第3の配管13に溜まっている塩酸水溶液を廃棄する。
【0057】
そして、ポンプ10を交換する場合には、ポンプ取付部38に設けられた留め具を外してポンプ10をブラケット30から取り外す。また、電解槽4を交換する場合には、図3に示すボルト51、51を取り外してブラケット30から分離し、適宜交換する。
【0058】
新しいポンプ10又は電解槽4を取付けるにあたっては、上述した取り外し手順を逆順に進める。具体的には、図5に示すように、ケーシング20の外で、ポンプ取付部38の開口部42(図4参照)にポンプ10の駆動部18を挿通させて留め具で固定する。図3に示すように、電解槽4についても、ケーシング20の外でブラケット30の底壁部35に該電解槽4を設置し、側板15Bを電解槽固定壁40に当接させて、ボルト51、51を貫通孔41、41及び側板15Bに形成された雌螺子孔に螺入して堅固に固定する。
【0059】
次に、図5に示すように第3の配管13をポンプ10の送出口17bと電解槽4の導入口25aに接続して、ブラケット30をケーシング20内に設置する。ブラケット30をケーシング20内の設置基板31に設置するには、底壁部35の端部を設置基板31上面とその固定爪36、36との間にスライドさせて配置し、ボルト50を貫通孔33を通して設置基板31の雌螺子孔39に螺入して堅固に固定する。
【0060】
そして、第1の配管11をポンプ10の導入口17aに接続するとともに、電解槽4の導出口25bと稀釈手段26との間に第2の配管12を接続させ、ケーシング20の開閉扉21を閉めることにより、ポンプ10又は電解槽4の交換が完了する。
【0061】
上記のように、本実施形態による電解水製造装置1Aによると、ブラケット30を取り外し可能にするとともに、ポンプ10及び電解槽4をブラケット30ごとケーシング20外に取り出し廃液作業等を行うことが可能となる。したがって、ポンプ10、電解槽4、及び第1から第3の配管11、12、13内を水に置換する工程を省くことができ、ポンプ10及び電解槽4の交換作業の効率が高まるとともに、交換作業に用いられる水を節約することが可能となるという効果が得られる。
【0062】
また、ケーシング20内においてポンプ10及び電解槽4に連結された第1および第2の配管11、12を取り外すに当たっても、液をほとんどこぼさずに作業を進めることが可能となるため、ケーシング20を清掃する手間が省けるという効果が得られる。
【0063】
また更に、ブラケット30のボルト50を取り外すとともに、第1の配管11をポンプ10の導入口17aから取り外し、更に第2の配管12を稀釈手段26の接続部12aから取り外すだけで、ブラケット30のケーシング20からの取り出しが可能であり、ケーシング20内での作業が最小限に抑えられるため、交換作業が容易となるという効果が得られる。また、ポンプ10及び電解槽4をブラケット30に取り付けたまま作業を行いやすい場所に持ち運びできるという効果が得られる。
【0064】
また、ブラケット30の構成、及び該ブラケット30を取り付ける設置基板31の構造がシンプルであるため、電解水製造装置1Aの製造コストを低く抑えられるという効果が得られる。
【0065】
また、ケーシング20とブラケット30とが、ボルト50により1箇所で着脱自在に固定されているので、ブラケット30をケーシング20から取り出す際には1本のボルト50を取り外すだけでよく、またブラケット30をケーシング20に装着する際には1本のボルト50を螺入すればよく、簡便で作業性がよく、部品コストも節約できるという効果が得られる。なお、ボルト50に替えて割りピンや蝶ナット等の固定手段を採用しても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0066】
上記の実施形態においては、ポンプ10及び電解槽4の交換時に、第1および第2の配管11、12を各接続部11a、12aにおいて取り外してからブラケット30をケーシング20外に取り出す構成としたが、図6に示すように、第1および第2の配管11、12の長さ寸法を長めに設定し、第1および第2の配管11、12をポンプ10及び電解槽4に接続させたままでブラケット30をケーシング20外に取り出し可能な構成としてもよい。
【0067】
このような構成とすることで、第1および第2の配管11、12をケーシング20外で取り外すことができ、これらの配管の取り外し時に万一配管内の液がこぼれた場合にもケーシング20内が汚れることを回避することが可能となるという効果が得られる。また、ケーシング20外にシート又はプレート等を用意しておけば、第1および第2の配管11、12の取り外し作業を一層容易に行うことが可能となる。
【0068】
なお、このような構成の場合における第1および第2の配管11、12の長さとしては、例えば、ブラケット30をケーシング20の手前に引き出して、ケーシング20の先端縁とブラケット30の後端縁(矢印P方向からみて矢先に近い側が「先端」その逆側が「後端」。)とが接するようにブラケット30とケーシング20とを並置した場合に、第1および第2の配管11、12が接続状態を維持するために必要な最短の長さよりも長いことが望ましい。
【0069】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態において第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
図7に示すように、第2の実施形態による電解水製造装置1Bは、第1の実施形態による電解水製造装置1Aの構成に加えて、塩酸稀釈ライン3Dを備えている。この塩酸稀釈ライン3Dは、起端が原水ライン3Aから分岐しており、また末端が電解処理液生成ライン3Bにおける電解槽4の上流側に合流している。そして、塩酸稀釈ライン3Dは、稀釈水圧送ポンプ60を備えている。
【0071】
稀釈水圧送ポンプ60は、原水ライン3Aから原水を取り出し、電解する前の塩酸水溶液に原水を混合するものであり、電解槽4に供給される塩酸水溶液の濃度を適宜調節することを可能にしている。
【0072】
図8に示すように、ブラケット62が電解槽4及び原料水圧送ポンプ10に加えて、稀釈水圧送ポンプ60を保持できるように構成された点で、第1の実施形態による電解水製造装置1Aと異なる。
【0073】
稀釈水圧送ポンプ60は、稀釈水を給水配管6から吸い込み、電解槽4の導入口25aに接続された第3の配管13内に該稀釈水を送出するものである。この稀釈水圧送ポンプ60は、原料水圧送ポンプ10と略同様の構成をしており、チューブとこのチューブを押しつぶすローラーを回転させるローターとを収容しローターの回転によりチューブ内の稀釈水を移送する円板形状のローター室63と、ローターを駆動させる駆動部64とを備えている。ローター室63の下方には稀釈水を吸い込む導入口63aと稀釈水を第3の配管13に向けて圧送する送出口63bとが形成されている。
【0074】
ポンプ60の導入口63aと給水配管6との間には第4の配管70が接続され、送出口63bと第3の配管13との間には第5の配管71が接続されている。
【0075】
ブラケット62は、図9に示すように、ポンプ取付部65にポンプ10を保持するための開口部42とポンプ60を保持するための開口部66とが形成されているとともに、ポンプ10、60を保持するための不図示のボルト又はクリップ等の留め具を備えている。
【0076】
開口部66には一対の係止切欠部66a、66a並びに一対の係止切欠部66b、66bが形成されている。そして、これに対して、図8に示すポンプ60のローター室63の裏側(ポンプ取付部65に接する側)には、この係止切欠部66a又は係止切欠部66bとスナップ式に嵌合する一対の固定爪部(図示せず)が突設されている。係止切欠部66a又は係止切欠部66bは、ポンプ60の固定爪部と嵌合してポンプ60の角度決定手段となる。
【0077】
ポンプ60をブラケット62に取り付ける場合は、まず駆動部64を開口部66に挿通させるが、この際にローター室63の裏側に形成されている一対の固定爪部(図示せず)が、開口部66に形成されている一対の係止切欠部66a、66aに嵌合するまで挿通させる。これによってブラケット62に対するポンプ60の角度は常に一定の角度となり、かつポンプ60がブラケット62に対して回動することが防止される。
【0078】
そして、ローター室63とポンプ取付部65に設けられた不図示のボルト又はクリップ等の留め具とによりポンプ取付部65を挟んで稀釈水圧送ポンプ60を適宜固定する。
なお、上記の例では、一対の固定爪部(図示せず)を一対の係止切欠部66a、66aに嵌合させたが、これを一対の係止切欠部66b、66bに嵌合させてもよい。
【0079】
この一対の係止切欠部66b、66bは、これら係止切欠部66b、66b同士を結ぶ直線が、係止切欠部66a、66a同士を結ぶ直線と略直交する位置に設けられている。このため、ポンプ60の固定爪部を係止切欠部66b、66bに嵌合させた場合には、係止切欠部66a、66aに嵌合させた場合に比して、ポンプ60は反時計回り方向(設置基板31のケーシング手前側から見て又はローター室63の側から見て反時計回り方向)に90°回転した角度に取り付けられる。
【0080】
この状態では、図8に示す導入口63aと送出口63bは図9に示す矢印X方向に向くことになる。このため、第4の配管70と第5の配管71とを接続したり取り外したりする作業を行う際に電解槽4が邪魔にならないため、作業性をより向上させることができる。
【0081】
また、ブラケット62の側壁部67は、底壁部35の側縁から立ち上がる壁部であり、ポンプ取付部65にポンプ10、60を取り付けた際に、該側壁部67がポンプ10、60の重さで撓むことを防止するための折曲部67aを備えている。
また、ポンプ取付部65の上端にも折曲部65aが形成されており、ポンプ10、60を取り付けた際に該ポンプ取付部65がポンプ10、60の重さで撓むことを防止する。
【0082】
図8に示すように、電解水製造装置1Bの電解槽4、原料水圧送ポンプ10、及び稀釈水圧送ポンプ60を交換するにあたっては、ブラケット62のボルト50を取り外して、該ブラケット62を引き出し可能な状態としておく。
【0083】
第1の配管11を接続部11aにおいて取り外して塩酸水溶液を貯留タンク9に戻し、第2の配管12、及び第4の配管70を、稀釈手段26側の接続部12a及び給水配管6側の接続部においてそれぞれ取り外し、第2及び第4の配管12、70の開口部を上方に向けて保持しておく。
【0084】
この状態で、電解槽4、ポンプ10、60を取り付けたブラケット62をケーシング20の外に取り出して配管内の薬液を廃棄し、更に第3、5の配管13、71を取り外して、交換が必要な部材を新しい部材に交換してブラケット62に固定する。
そして、再び第3、5の配管13、71を接続し、ブラケット62をケーシング20内の設置基板31に設置・固定する。次いで、第1、2、4の配管11、12、70をそれぞれ所定の接続部に接続してケーシング20の開閉扉21を閉じ、部材の交換を完了させる。
【0085】
このように、第2の実施形態による電解水製造装置1Bによれば、電解槽4へ塩酸水溶液を送出する第3の配管13に第5の配管71及び稀釈水圧送ポンプ60が接続され、配管の接続関係が複雑となっている場合であっても、貯留タンク9及び給水配管6に接続された最小限の配管のみを取り外して、ブラケット62によって電解槽4、ポンプ10、60を一体的にケーシング20外に容易に持ち運び、交換作業を行うことができる。
【0086】
そして、電解槽4、ポンプ10、60をブラケット62により一体的にケーシング20の外に持ち運ぶことができるため、これら各部材を連結する配管の取り外し、及び廃液処理が容易となるとともに、ケーシング20内を薬液等によりほとんど汚さないで済むため、作業効率が高まるという効果が得られる。
【0087】
そのほか、第1の実施形態における電解水製造装置1Aで得られる効果と同様に、ブラケット62の構成がシンプルであるため、電解水製造装置1Bの製造コストを抑えることが可能となるという効果が得られる。
【0088】
また、一対の係止切欠部66a、66a、一対の係止切欠部66b、66bのように角度決定手段を複数備えることにより、稀釈水圧送ポンプ60がブラケット62に対して角度を可変に取り付け可能となるため、稀釈水圧送ポンプ60に接続するべき配管のレイアウトの自由度が増し、接続・取り外しの作業が向上する。
【符号の説明】
【0089】
1A、1B 電解水製造装置
4 電解槽
9 貯留タンク
10 原料水圧送ポンプ
11 第1の配管
11a 接続部
12 第2の配管
12a 接続部
20 ケーシング
26 稀釈手段
30 ブラケット
50 ボルト
60 稀釈水圧送ポンプ
62 ブラケット
66a 係止切欠部
66b 係止切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシング内に設置され原料水を電解処理する電解槽と、前記電解槽に原料水を圧送する原料水圧送ポンプと、前記電解槽から導出された電解処理液を稀釈水により稀釈化する稀釈手段とを備え、電解水を生成する電解水製造装置において、
前記電解槽及び前記原料水圧送ポンプを一体的に取り付け可能とされているとともに、
前記電解槽及び前記原料水圧送ポンプを取り付けた状態で前記ケーシング内に着脱自在に固定可能なブラケットを具備することを特徴とする電解水製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電解水製造装置において、
前記原料水圧送ポンプと前記原料水を貯留した貯留タンクとの間には第1の配管が接続され、
該第1の配管と前記原料水圧送ポンプとの接続部は、前記貯留タンクよりも上方に位置するように形成されていることを特徴とする電解水製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電解水製造装置において、
前記電解槽と前記稀釈手段との間には、第2の配管が接続され、
前記第2の配管と前記稀釈手段との接続部は、前記第2の配管と前記電解槽との接続部よりも上方に位置していることを特徴とする電解水製造装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電解水製造装置において、
前記第1および第2の配管は、フレキシブル管により構成されていることを特徴とする電解水製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電解水製造装置において、
前記第1および第2の配管は、前記原料水圧送ポンプ、前記電解槽、及び前記稀釈手段のそれぞれの接続部に接続された状態で前記ブラケットを前記ケーシング外に取り出し可能な長さを有していることを特徴とする電解水製造装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電解水製造装置において、
前記電解槽に稀釈水を圧送する稀釈水圧送ポンプを備え、
前記稀釈水圧送ポンプは、前記ブラケットに取り付け可能とされていることを特徴とする電解水製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電解水製造装置において、
前記稀釈水圧送ポンプは、前記ブラケットに対して角度を可変に取り付け可能とされていることを特徴とする電解水製造装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電解水製造装置において、
前記ケーシングと前記ブラケットとが1箇所で着脱自在に固定されていることを特徴とする電解水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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