露出型柱脚用ベースプレート
【課題】高力ボルトによる接合を併用することなく、鋼板同士の一体化を高めるように溶接接合することを可能にして、面外曲げに対しても、その一体性を維持することができる露出型柱脚用ベースプレートを提供する。
【解決手段】鉄骨柱2に接合される柱側プレート材6と、基礎コンクリートに設置される基礎側プレート材7と、柱側及び基礎側プレート材を貫通して形成されるアンカーボルト挿通孔8と、基礎側プレート材に、鉄骨柱の外形輪郭内方に納まる配置で、柱側プレート材下面との溶接用空間Sを形成するために穴の形態で形成され、その内周縁部w1が当該下面と適宜に溶接接合される第1接合部9と、基礎側プレート材に、アンカーボルト挿通孔を避けて外縁7aから鉄骨柱の外回り位置へ向かって、柱側プレート材下面との溶接用空間Sを形成するために切り欠いた形態で形成され、その縁部w2が当該下面と適宜に溶接接合される第2接合部10とを備えた。
【解決手段】鉄骨柱2に接合される柱側プレート材6と、基礎コンクリートに設置される基礎側プレート材7と、柱側及び基礎側プレート材を貫通して形成されるアンカーボルト挿通孔8と、基礎側プレート材に、鉄骨柱の外形輪郭内方に納まる配置で、柱側プレート材下面との溶接用空間Sを形成するために穴の形態で形成され、その内周縁部w1が当該下面と適宜に溶接接合される第1接合部9と、基礎側プレート材に、アンカーボルト挿通孔を避けて外縁7aから鉄骨柱の外回り位置へ向かって、柱側プレート材下面との溶接用空間Sを形成するために切り欠いた形態で形成され、その縁部w2が当該下面と適宜に溶接接合される第2接合部10とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高力ボルトによる接合を併用することなく、鋼板同士の一体化を高めるように溶接接合することを可能にして、面外曲げに対しても、その一体性を維持することができる露出型柱脚用ベースプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物における露出型の柱脚部接合構造では、一般に鉄骨柱の外径が大きくなるほど、それに対応させて、鋼板製ベースプレートの板厚を厚くする必要がある。しかし、鋼板は、板厚が厚くなるほど、市場に流通している数が少なくなるため、利用しづらいのが実状である。板厚が100mmを超えるような鋼板は、構造材として見当たらない。そこで、外径が大きい鉄骨柱に対しては、市販されている一般的な板厚の鋼板に補強リブを溶接してベースプレートとするようにしているが、溶接品質やコストなどの面で問題がある。
【0003】
この種の問題を解決する一つの方策として、特許文献1の「鉄骨柱脚構造」では、複数の鋼板を上下に重ね合わせ、高力ボルトの締結力によってこれら鋼板の面同士を摩擦接合するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−193559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベースプレートを構成する鋼板同士の接合に高力ボルトを用いた場合、鉄骨柱に生じる曲げモーメントなどに起因して鋼板に作用する面外曲げによって、鋼板間の接触状態が変化してしまうことに伴う接合性能の低下や、高力ボルトの耐力が低下することによる接合性能の低下が懸念される。
【0006】
これらの点を考慮して、ベースプレートに用いる鋼板を、変形が殆ど生じない高剛性仕様にすると、高剛性の鋼板の端縁が基礎コンクリートのへりあき部分を押圧して、割裂破壊を生じさせるおそれがある。これを防ぐためには、へりあき部分を大きく確保するために、鋼板の外形寸法に対し基礎コンクリートの平面外形寸法を大きくする必要があり、このようにすると、建物設計に制約が生じることとなってしまう。
【0007】
ベースプレートを構成する各鋼板にはそれぞれ、高力ボルト専用の挿通孔を設けることになるが、面外曲げが作用する領域にこれら挿通孔を設けると、挿通孔が断面欠損箇所となり、その影響から曲げ耐力が低下してしまう。そのため、鋼板の板厚を厚くして断面欠損分を補う必要から、コストが嵩む問題も生じる。
【0008】
面外曲げが作用する領域に挿通孔を設けないとしても、鉄骨柱の外径が大きくなるほど、高力ボルトの本数、従って挿通孔の数を増加させなければならず、結果的に挿通孔を、面外曲げが作用する領域に設けざるを得ない状況となる。要するに、特許文献1の高力ボルトで鋼板を接合する技術では、必要強度を確保できるように高力ボルトや挿通孔を任意自由に設け得るものではなく、制約のある構造である。
【0009】
他方、ベースプレートを構成する鋼板には、基礎コンクリートに埋設したアンカーボルトを挿通するボルト孔や高力ボルトの挿通孔が形成され、これらボルト孔および挿通孔とアンカーボルトおよび高力ボルトとの間には、必要的にクリアランスがあるため、曲げモーメントがベースプレートに作用すると、鋼板同士の間で横方向の相対的なズレが生じ得る。このズレにより、特に高力ボルトに局部的にせん断力が加わるばかりか、このズレのために、上側の鋼板から下側の鋼板の端縁が外方へ迫り出して基礎コンクリートが押圧されることによって、上述したと同様に、割裂破壊が起こり易くなってしまう。
【0010】
かかる問題を生じる高力ボルトを用いることなく、ズレを生じさせないようにするため、鋼板同士の間に、凹凸嵌合や溶接などの手段を適用することが考えられる。複数の鋼板を上下に重ね合わせたベースプレートでは、鋼板同士が常に一体化した状態を確保しなければならない。
【0011】
しかし、高力ボルトで接合せずに、凹凸嵌合のみによって接合する場合、鋼板の製作が煩雑で手間がかかることはもちろんのこと、凹凸嵌合は、面外曲げに対し、鋼板同士を一体化するという、求められる機能を果たし得ない。
【0012】
他方、溶接接合では、特許文献1を参照すれば、上下に重ねた鋼板の溶接箇所は、せいぜい鋼板の穴縁部と外周縁部に止まり、このような溶接接合構造では、溶接箇所である穴縁部と外周縁部の間では、鋼板の板面同士が単に重なり合っているだけであり、すなわち、ベースプレートに作用する曲げモーメントを、主に上側の鋼板で負担する構造となって、当該上側鋼板が先行して曲げ変形されてしまい、凹凸嵌合と同様、面外曲げに対する鋼板同士の一体化を確保することはできない。
【0013】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、高力ボルトによる接合を併用することなく、鋼板同士の一体化を高めるように溶接接合することを可能にして、面外曲げに対しても、その一体性を維持することができる露出型柱脚用ベースプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートは、鉄骨柱の下端部と接合されると共に、基礎コンクリートに埋設したアンカーボルトと締結され、該鉄骨柱を該基礎コンクリート上に接合するための露出型柱脚用ベースプレートであって、上記鉄骨柱の下端部にその上面が接合される柱側プレート材と、上記基礎コンクリート上に設置される基礎側プレート材と、これら柱側プレート材および基礎側プレート材を一連に貫通して形成され、上記アンカーボルトが挿通されるアンカーボルト挿通孔と、上記基礎側プレート材に、上記鉄骨柱の外形輪郭内方に納まる配置で、上記柱側プレート材下面との溶接用空間を形成するために穴の形態で形成され、その内周縁部が当該下面と適宜に溶接接合される第1接合部と、上記基礎側プレート材に、上記アンカーボルト挿通孔を避けて外縁から上記鉄骨柱の外回り位置へ向かって、上記柱側プレート材下面との溶接用空間を形成するために切り欠いた形態で形成され、その縁部が当該下面と適宜に溶接接合される第2接合部とを備えたことを特徴とする。
【0015】
前記柱側プレート材と前記基礎側プレート材の外縁が、適宜に溶接接合されることを特徴とする。
【0016】
前記基礎側プレート材は、前記第2接合部が前記第1接合部に達するように形成されて、該基礎側プレート材が分割された形態の複数のプレートピースで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートにあっては、高力ボルトによる接合を併用することなく、鋼板同士の一体化を高めるように溶接接合することができ、面外曲げに対しても、その一体性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートの好適な一実施形態を示す、柱脚部周辺を上方から見た斜視図である。
【図2】図1に示した柱脚部周辺を下方から見た斜視図である。
【図3】図1に示したベースプレートの上面図である。
【図4】図1に示した柱脚部周辺の側面図である。
【図5】図1に示したベースプレートによって防止される柱脚部周辺の変形状態を示す要部側断面図である。
【図6】本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートの変形例を示す、柱脚部周辺を下方から見た斜視図である。
【図7】図6に示した柱脚部周辺を上方から見た斜視図である。
【図8】図6に示したベースプレートの下面図である。
【図9】図8中、A−A線矢視断面図である。
【図10】本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートの他の変形例を示す下面図である。
【図11】本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートのさらに他の変形例を示す要部拡大下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートの好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1から図4に示すように、本実施形態にかかる露出型柱脚用ベースプレート1は概略的には、鉄骨柱2の下端部にベースプレート1が接合され、このベースプレート1が基礎コンクリート3上に設置されると共に、基礎コンクリート3に埋設されてそれらの上端部が当該基礎コンクリート3上に突出する複数本のアンカーボルト4に、ベースプレート1がナット5で締結されることにより、当該ベースプレート1を介して、鉄骨柱2の下端部が基礎コンクリート3上に接合されるようになっている。
【0020】
ベースプレート1は、上下2枚の平板状の鋼板6,7を、それらの表裏面が接するように、互いに重ね合わせて一体的に接合することで構成される。ベースプレート1は、鉄骨柱2の下端部にその上面6aが接合される柱側プレート材6と、基礎コンクリート3上に設置される基礎側プレート材7の2枚の鋼板から構成される。
【0021】
ベースプレート1を構成する柱側プレート材6および基礎側プレート材7には、基礎コンクリート3上に突出する複数本のアンカーボルト4をそれぞれ挿通するためのアンカーボルト挿通孔8が上下方向に一連に貫通形成される。図示例にあっては、アンカーボルト4は、鉄骨柱2の回りを取り囲んで8本配設されていて、アンカーボルト挿通孔8は、これらアンカーボルト4位置に対応させて、8つ形成されている。
【0022】
柱側プレート材6は、図示例にあっては、平面外形輪郭が正方形状で形成されている。柱側プレート材6の平面外形輪郭は、多角形状であっても、円形状であっても良い。柱側プレート材6の上面に、鉄骨柱2の下端部が溶接などにより接合される。
【0023】
基礎側プレート材7には、柱側プレート材6の下面6bと溶接接合するための第1接合部9および第2接合部10が形成される。
【0024】
第1接合部9は、基礎側プレート材7に、穴の形態で形成される。第1接合部9は、基礎側プレート材7と柱側プレート材下面6bとの溶接用空間Sを形成するもので、ベースプレート1を逆さまにして基礎側プレート材7側から見たときに、第1接合部9の内周縁部が柱側プレート材6の下面6bに面する継手部分w1を形成し、この継手部分w1を露出させるようになっている。
【0025】
また、第1接合部9は、ベースプレート1自体として、鉄骨柱2との接合箇所の強度が低下しないように、柱側プレート材6に接合される鉄骨柱2の下端部の外形輪郭内方に納まる配置で形成される。図示例にあっては、鉄骨柱の2下端部が柱側プレート材6の上面6a中央に接合されているので、第1接合部9は、基礎側プレート材7の中央に形成されている。
【0026】
第1接合部9の穴の形態は、円形状であっても、多角形状であっても良い。基礎側プレート材7は、第1接合部9の内周縁部(継手部分w1)が柱側プレート材下面6bと適宜に溶接接合されることで、柱側プレート材6と一体化される。第1接合部9における溶接接合は、内周縁部全周にわたって行っても良いし、適宜な溶接長で間隔を空けるように行っても良い。
【0027】
第2接合部10は、基礎側プレート材7に、その外縁7aから切り欠いた形態で形成される。第2接合部10も、基礎側プレート材7と柱側プレート材下面6bとの溶接用空間Sを形成するもので、ベースプレート1を逆さまにして基礎側プレート材7側から見たときに、第2接合部10の縁部が柱側プレート材6の下面6bに面する継手部分w2を形成し、この継手部分w2を露出させるようになっている。
【0028】
また、第2接合部10は、ベースプレート1自体として、鉄骨柱2との接合箇所の強度が低下しないように、そしてまたアンカーボルト4との締結箇所の強度が低下しないように、アンカーボルト挿通孔8を避けて基礎側プレート材7の外縁7aから鉄骨柱2の外回り位置へ向かって、鉄骨柱2の下端部に達することのない位置まで形成される。
【0029】
第2接合部10は、ベースプレート1の外回りだけでなく、柱側および基礎側プレート材6,7の表裏面同士が上下に互いに面接触するベースプレート1の内奥へ向かって溶接可能とすることを意図して設けられる。つまり、同じ寸法の柱側および基礎側プレート材6,7を重ね合わせた場合、それらを溶接接合できる箇所が、それらの外周縁部同士だけでなく、基礎側プレート材7の外縁7aから鉄骨柱2の外回り位置に向かって、当該鉄骨柱2の近傍まで確保し得るように設けられる。これにより、柱脚部に作用する曲げモーメントを、主に柱側プレート材6が負担して、先行して面外に曲げ変形されてしまうことを防止できる。
【0030】
当該第2接合部10の切り欠きの形態は、図示例にあっては、おおよそV字状に形成されているが、コ字状やU字状、あるいは円弧状など、上記意図に対応する形態であれば、どのような形態であっても良い。
【0031】
第2接合部10は図示例にあっては、8本のアンカーボルト4間に位置させて、8個形成されているが、その数や配置は、アンカーボルト4間であれば、適宜に設定してよい。基礎側プレート材7と柱側プレート材6は、第2接合部10の縁部(継手部分w2)のうち、少なくともアンカーボルト挿通孔8近傍周辺から鉄骨柱2の外回り位置近傍まで溶接接合されることで一体化される。第2接合部10における溶接接合は、縁部全長にわたって行っても良い。
【0032】
好ましくは、柱側および基礎側プレート材6,7が曲げ変形されることに伴って、柱側プレート材6から基礎側プレート材7の外縁7aが外方へ迫り出すことを規制するために、基礎側プレート材7の外縁7aと、柱側プレート材6とが適宜に溶接接合される(図1および図2中、継手部分w3で示す)。
【0033】
図示例にあっては、柱側プレート材6と基礎側プレート材7の外縁同士が面一となるように、柱側プレート材6の外形寸法に基礎側プレート材7の最外縁寸法を合致させていて、基礎側プレート材7の外縁7aが柱側プレート材6の外周縁部6cに溶接接合される(継手部分w3)。基礎側プレート材7の外縁7aに対する溶接接合も、外縁全長にわたって行っても良いし、部分的に行っても良い。
【0034】
基礎側プレート材7が柱側プレート材6の外側へ迫り出すことによる基礎コンクリート3の割裂破壊を防止するために、柱側プレート材6の外形寸法に対し、基礎側プレート材7の最外縁寸法を一回り小さく設定しても良い。
【0035】
次に、本実施形態にかかる露出型柱脚用ベースプレートの作用を説明する。ベースプレート1は、柱側プレート材6と基礎側プレート材7とを重ね合わせ、穴形態の第1接合部9および切り欠き形態の第2接合部10の溶接用空間Sを利用して、第1接合部9の内周縁部と、第2接合部10の縁部のうち、少なくともアンカーボルト挿通孔8近傍から鉄骨柱2の外回り位置までの範囲とで、柱側プレート材下面6bに基礎側プレート材7を適宜に溶接接合(図中、w1,w2参照)することで、これら柱側プレート材6および基礎側プレート材7が一体的に接合されて作製される。また、基礎側プレート材7の外縁7aを、柱側プレート材6の外周縁部6cに適宜に溶接接合(図中、w3参照)することで、これら柱側プレート材6および基礎側プレート材7は確実に一体化される。
【0036】
このベースプレート1を用いて、鉄骨柱2を基礎コンクリート3上に設置する際には、ベースプレート1の柱側プレート材上面6aに鉄骨柱2の下端部を溶接などにより接合する。鉄骨柱2を接合したベースプレート1を、アンカーボルト4が突出している基礎コンクリート3上に設置する。
【0037】
設置する際には、予め基礎コンクリート3上面に設けたレベルモルタル(まんじゅう)上に、ベースプレート1を、そのアンカーボルト挿通孔8にアンカーボルト4を挿通しつつ建て込み、アンカーボルト4にナット5を締結した後、ベースプレート1の周辺を取り囲むようにして型枠(図示せず)を設け、型枠とベースプレート1の間からグラウト材Gを流し込むようにする(図4参照)。グラウト材Gは、第1接合部9や第2接合部10へも流れ込んでこれらに充填され、これにより鉄骨柱2が基礎コンクリート3上に接合される。
【0038】
このようにして基礎コンクリート3上に設置された鉄骨柱2は、ベースプレート1を介して、基礎コンクリート3上に強固に接合され、ベースプレート1が鉄骨柱2の軸力や曲げ力を確実に基礎コンクリート3に伝達することにより、当該基礎コンクリート3で鉄骨柱2を適切に支持することができる。
【0039】
本実施形態にかかる露出型柱脚用ベースプレートでは、基礎側プレート材7に第1接合部9および第2接合部10を形成したので、例えば同じ大きさ・形状の基礎側プレート材と柱側プレート材をそれらの外周に沿って単に溶接接合する場合に比べて、柱側プレート材6および基礎側プレート材7の表裏面同士が上下に互いに面接触するベースプレート1の内奥に溶接接合箇所(w1,w2)を確保することができ、これら基礎側プレート材7および柱側プレート材6同士を溶接接合して構成されるベースプレート1の一体化を向上することができて、これにより面外曲げなどに対する剛性を高めることができる。
【0040】
穴形態の第1接合部9および切り欠き形態の第2接合部10により、基礎側プレート材7の柱側プレート材下面6bに対する溶接用空間Sを確保することができ、ベースプレート1の溶接による組立作業を容易に行うことができる。
【0041】
ベースプレート1の曲げ剛性や耐力が高い鉄骨柱2の外形輪郭内方に納まる配置で第1接合部9を形成し、この第1接合部9で柱側および基礎側プレート材6,7を溶接接合したので、基礎側プレート材7の曲げ補強効果を増強することができ、第1接合部9の形成によっても、鉄骨柱2との接合箇所におけるベースプレート1の強度を健全に確保することができる。
【0042】
第2接合部10を、基礎側プレート材外縁7aからアンカーボルト挿通孔8を避けて鉄骨柱2の外回り位置へ向かって形成したので、第2接合部10の形成によっても、鉄骨柱2との接合箇所におけるベースプレート1の強度を健全に確保することができると共に、アンカーボルト4との締結箇所についても、ベースプレート1の強度を健全に確保することができる。
【0043】
基礎側プレート材7の外縁7aと、柱側プレート材6の外周縁部6cとを溶接接合(w3)するようにしたので、ベースプレート1の曲げ補強効果を増強することができると共に、基礎側プレート材7が柱側プレート材6の外側へ迫り出すことを規制することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態にかかる露出型柱脚用ベースプレートにあっては、高力ボルトによる接合を併用することなく、柱側および基礎側プレート材6,7同士の一体化を高める溶接接合を、第1および第2接合部9,10によって確保することができるので、例えば図5に示すように、鉄骨柱2などからの曲げ作用M等で、主に柱側プレート材6が曲げモーメントを負担して、先行して面外に曲げ変形してしまうような事態を防止することができる。
【0045】
図6から図11には、上記実施形態の変形例が示されている。図6から図9に示した第1変形例では、基礎側プレート材7は、第2接合部10が第1接合部9に達するように形成されて、基礎側プレート材7が分割された形態の複数のプレートピース11で構成される。
【0046】
基礎側プレート材7をプレートピース11に分割することで、プレートピース11自体は単純な形態となり、基礎側プレート材7の製作を、切り欠き形態の第2接合部10を複数形成することに比べて、容易化することができる。基礎側プレート材7をプレートピース11で構成することで、様々な外形寸法の鉄骨柱2や柱側ベースプレート6に対して適用でき、基礎側プレート材7の汎用性を高めて、仕様数を減らすことができる。
【0047】
第2接合部10と第1接合部9とを連通させることができるので、ベースプレート1の外周縁から中央に達する溶接接合を確保することができ、面外曲げなどの変形に対し、ベースプレート1の一体性をさらに高めることができる。アンカーボルト挿通孔8は、少なくともプレートピース11に形成することが好ましく、これによりアンカーボルト4の締結箇所の強度を確保することができる。
【0048】
分割した形態のプレートピース11同士の間に、第2接合部10として形成される隙間に関し、鉄骨柱2の接合箇所直下については、鉄骨柱2に対するベースプレート1の接合強度を確保するために、当該隙間を狭めるように設定することが好ましい。
【0049】
本変形例にあっては、プレートピース11の設置位置が柱側プレート材6の外周縁部6cよりもベースプレート1内方に設定されていて、これにより、ベースプレート1が曲げ変形しても、基礎側プレート材7(プレートピース11)が柱側プレート材6の外側へ迫り出すことを抑制することができ、基礎コンクリート3に割裂破壊が生じることを防止することができる。プレートピース11の数および設置位置は、適宜に設定すればよい。
【0050】
図10に示した変形例は、ほぼ四角形状の上記変形例のプレートピース11に対し、鋼材量を減少させる目的で、アンカーボルト挿通孔8を挟んで位置する2つの隅角部(図8参照)を切除した形態として、7角形状に形成したものである。
【0051】
またこの変形例では、プレートピース11回りの溶接接合可能な継手部分に、アンカーボルト挿通孔8回りからベースプレート1の中央に位置する第1接合部9(鉄骨柱2の外形輪郭に納まる箇所)に向く(図中、矢印Dで示す)求心方向継手部分w4を形成することができるので、少なくともこの求心方向継手部分w4で各プレートピース11を柱側プレート材6に溶接接合することにより、アンカーボルト4との連係によって、面外曲げ作用に対し、曲げ補強に有効な一体化したベースプレート1構造を維持して抵抗させることができる。
【0052】
上記求心方向継手部分w4(第2接合部10の縁部であるプレートピース11の端縁)は、アンカーボルト挿通孔8の中心とベースプレート1の中心を結ぶ線分Dに沿って平行に設定することが好ましい。
【0053】
図11に示した変形例は、図10に示したプレートピース11を対象として、ベースプレート1の隅角部位置に、当該隅角部を挟んで2つのアンカーボルト挿通孔8が形成される場合である。
【0054】
このような場合には、求心方向継手部分w4は、2つのアンカーボルト挿通孔8の中心を結んだ線分Lの中点Xとベースプレート1の中心を結ぶ線分E(図10中の線分Dに対応)に沿って平行もしくはほぼ平行に設定することが好ましい。少なくとも、この求心方向継手部w4で溶接接合することで、基礎側プレート材7を構成する各プレートピース11と柱側プレート材6とを効率よく接合することができる。
【0055】
以上の変形例にあっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。なお、柱側プレート材6には、穴形態の第1接合部9の内方に位置する大きさで貫通孔を設けてもよい。無収縮モルタルなどのグラウト材Gをアンカーボルト挿通孔8内に充填する構成として、グラウト材Gにより、基礎側プレート材7の外縁7aが柱側プレート材6の外方へ迫り出すことを防止する作用を補うようにしても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 ベースプレート
2 鉄骨柱
3 基礎コンクリート
4 アンカーボルト
6 柱側プレート材
6a 柱側プレート材上面
6b 柱側プレート材下面
6c 柱側プレート材外周縁部
7 基礎側プレート材
7a 基礎側プレート材外縁
8 アンカーボルト挿通孔
9 第1接合部
10 第2接合部
11 プレートピース
S 溶接用空間
w1 第1接合部の内周縁部(継手部分)
w2 第2接合部の縁部(継手部分)
【技術分野】
【0001】
本発明は、高力ボルトによる接合を併用することなく、鋼板同士の一体化を高めるように溶接接合することを可能にして、面外曲げに対しても、その一体性を維持することができる露出型柱脚用ベースプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物における露出型の柱脚部接合構造では、一般に鉄骨柱の外径が大きくなるほど、それに対応させて、鋼板製ベースプレートの板厚を厚くする必要がある。しかし、鋼板は、板厚が厚くなるほど、市場に流通している数が少なくなるため、利用しづらいのが実状である。板厚が100mmを超えるような鋼板は、構造材として見当たらない。そこで、外径が大きい鉄骨柱に対しては、市販されている一般的な板厚の鋼板に補強リブを溶接してベースプレートとするようにしているが、溶接品質やコストなどの面で問題がある。
【0003】
この種の問題を解決する一つの方策として、特許文献1の「鉄骨柱脚構造」では、複数の鋼板を上下に重ね合わせ、高力ボルトの締結力によってこれら鋼板の面同士を摩擦接合するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−193559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベースプレートを構成する鋼板同士の接合に高力ボルトを用いた場合、鉄骨柱に生じる曲げモーメントなどに起因して鋼板に作用する面外曲げによって、鋼板間の接触状態が変化してしまうことに伴う接合性能の低下や、高力ボルトの耐力が低下することによる接合性能の低下が懸念される。
【0006】
これらの点を考慮して、ベースプレートに用いる鋼板を、変形が殆ど生じない高剛性仕様にすると、高剛性の鋼板の端縁が基礎コンクリートのへりあき部分を押圧して、割裂破壊を生じさせるおそれがある。これを防ぐためには、へりあき部分を大きく確保するために、鋼板の外形寸法に対し基礎コンクリートの平面外形寸法を大きくする必要があり、このようにすると、建物設計に制約が生じることとなってしまう。
【0007】
ベースプレートを構成する各鋼板にはそれぞれ、高力ボルト専用の挿通孔を設けることになるが、面外曲げが作用する領域にこれら挿通孔を設けると、挿通孔が断面欠損箇所となり、その影響から曲げ耐力が低下してしまう。そのため、鋼板の板厚を厚くして断面欠損分を補う必要から、コストが嵩む問題も生じる。
【0008】
面外曲げが作用する領域に挿通孔を設けないとしても、鉄骨柱の外径が大きくなるほど、高力ボルトの本数、従って挿通孔の数を増加させなければならず、結果的に挿通孔を、面外曲げが作用する領域に設けざるを得ない状況となる。要するに、特許文献1の高力ボルトで鋼板を接合する技術では、必要強度を確保できるように高力ボルトや挿通孔を任意自由に設け得るものではなく、制約のある構造である。
【0009】
他方、ベースプレートを構成する鋼板には、基礎コンクリートに埋設したアンカーボルトを挿通するボルト孔や高力ボルトの挿通孔が形成され、これらボルト孔および挿通孔とアンカーボルトおよび高力ボルトとの間には、必要的にクリアランスがあるため、曲げモーメントがベースプレートに作用すると、鋼板同士の間で横方向の相対的なズレが生じ得る。このズレにより、特に高力ボルトに局部的にせん断力が加わるばかりか、このズレのために、上側の鋼板から下側の鋼板の端縁が外方へ迫り出して基礎コンクリートが押圧されることによって、上述したと同様に、割裂破壊が起こり易くなってしまう。
【0010】
かかる問題を生じる高力ボルトを用いることなく、ズレを生じさせないようにするため、鋼板同士の間に、凹凸嵌合や溶接などの手段を適用することが考えられる。複数の鋼板を上下に重ね合わせたベースプレートでは、鋼板同士が常に一体化した状態を確保しなければならない。
【0011】
しかし、高力ボルトで接合せずに、凹凸嵌合のみによって接合する場合、鋼板の製作が煩雑で手間がかかることはもちろんのこと、凹凸嵌合は、面外曲げに対し、鋼板同士を一体化するという、求められる機能を果たし得ない。
【0012】
他方、溶接接合では、特許文献1を参照すれば、上下に重ねた鋼板の溶接箇所は、せいぜい鋼板の穴縁部と外周縁部に止まり、このような溶接接合構造では、溶接箇所である穴縁部と外周縁部の間では、鋼板の板面同士が単に重なり合っているだけであり、すなわち、ベースプレートに作用する曲げモーメントを、主に上側の鋼板で負担する構造となって、当該上側鋼板が先行して曲げ変形されてしまい、凹凸嵌合と同様、面外曲げに対する鋼板同士の一体化を確保することはできない。
【0013】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、高力ボルトによる接合を併用することなく、鋼板同士の一体化を高めるように溶接接合することを可能にして、面外曲げに対しても、その一体性を維持することができる露出型柱脚用ベースプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートは、鉄骨柱の下端部と接合されると共に、基礎コンクリートに埋設したアンカーボルトと締結され、該鉄骨柱を該基礎コンクリート上に接合するための露出型柱脚用ベースプレートであって、上記鉄骨柱の下端部にその上面が接合される柱側プレート材と、上記基礎コンクリート上に設置される基礎側プレート材と、これら柱側プレート材および基礎側プレート材を一連に貫通して形成され、上記アンカーボルトが挿通されるアンカーボルト挿通孔と、上記基礎側プレート材に、上記鉄骨柱の外形輪郭内方に納まる配置で、上記柱側プレート材下面との溶接用空間を形成するために穴の形態で形成され、その内周縁部が当該下面と適宜に溶接接合される第1接合部と、上記基礎側プレート材に、上記アンカーボルト挿通孔を避けて外縁から上記鉄骨柱の外回り位置へ向かって、上記柱側プレート材下面との溶接用空間を形成するために切り欠いた形態で形成され、その縁部が当該下面と適宜に溶接接合される第2接合部とを備えたことを特徴とする。
【0015】
前記柱側プレート材と前記基礎側プレート材の外縁が、適宜に溶接接合されることを特徴とする。
【0016】
前記基礎側プレート材は、前記第2接合部が前記第1接合部に達するように形成されて、該基礎側プレート材が分割された形態の複数のプレートピースで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートにあっては、高力ボルトによる接合を併用することなく、鋼板同士の一体化を高めるように溶接接合することができ、面外曲げに対しても、その一体性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートの好適な一実施形態を示す、柱脚部周辺を上方から見た斜視図である。
【図2】図1に示した柱脚部周辺を下方から見た斜視図である。
【図3】図1に示したベースプレートの上面図である。
【図4】図1に示した柱脚部周辺の側面図である。
【図5】図1に示したベースプレートによって防止される柱脚部周辺の変形状態を示す要部側断面図である。
【図6】本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートの変形例を示す、柱脚部周辺を下方から見た斜視図である。
【図7】図6に示した柱脚部周辺を上方から見た斜視図である。
【図8】図6に示したベースプレートの下面図である。
【図9】図8中、A−A線矢視断面図である。
【図10】本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートの他の変形例を示す下面図である。
【図11】本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートのさらに他の変形例を示す要部拡大下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる露出型柱脚用ベースプレートの好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1から図4に示すように、本実施形態にかかる露出型柱脚用ベースプレート1は概略的には、鉄骨柱2の下端部にベースプレート1が接合され、このベースプレート1が基礎コンクリート3上に設置されると共に、基礎コンクリート3に埋設されてそれらの上端部が当該基礎コンクリート3上に突出する複数本のアンカーボルト4に、ベースプレート1がナット5で締結されることにより、当該ベースプレート1を介して、鉄骨柱2の下端部が基礎コンクリート3上に接合されるようになっている。
【0020】
ベースプレート1は、上下2枚の平板状の鋼板6,7を、それらの表裏面が接するように、互いに重ね合わせて一体的に接合することで構成される。ベースプレート1は、鉄骨柱2の下端部にその上面6aが接合される柱側プレート材6と、基礎コンクリート3上に設置される基礎側プレート材7の2枚の鋼板から構成される。
【0021】
ベースプレート1を構成する柱側プレート材6および基礎側プレート材7には、基礎コンクリート3上に突出する複数本のアンカーボルト4をそれぞれ挿通するためのアンカーボルト挿通孔8が上下方向に一連に貫通形成される。図示例にあっては、アンカーボルト4は、鉄骨柱2の回りを取り囲んで8本配設されていて、アンカーボルト挿通孔8は、これらアンカーボルト4位置に対応させて、8つ形成されている。
【0022】
柱側プレート材6は、図示例にあっては、平面外形輪郭が正方形状で形成されている。柱側プレート材6の平面外形輪郭は、多角形状であっても、円形状であっても良い。柱側プレート材6の上面に、鉄骨柱2の下端部が溶接などにより接合される。
【0023】
基礎側プレート材7には、柱側プレート材6の下面6bと溶接接合するための第1接合部9および第2接合部10が形成される。
【0024】
第1接合部9は、基礎側プレート材7に、穴の形態で形成される。第1接合部9は、基礎側プレート材7と柱側プレート材下面6bとの溶接用空間Sを形成するもので、ベースプレート1を逆さまにして基礎側プレート材7側から見たときに、第1接合部9の内周縁部が柱側プレート材6の下面6bに面する継手部分w1を形成し、この継手部分w1を露出させるようになっている。
【0025】
また、第1接合部9は、ベースプレート1自体として、鉄骨柱2との接合箇所の強度が低下しないように、柱側プレート材6に接合される鉄骨柱2の下端部の外形輪郭内方に納まる配置で形成される。図示例にあっては、鉄骨柱の2下端部が柱側プレート材6の上面6a中央に接合されているので、第1接合部9は、基礎側プレート材7の中央に形成されている。
【0026】
第1接合部9の穴の形態は、円形状であっても、多角形状であっても良い。基礎側プレート材7は、第1接合部9の内周縁部(継手部分w1)が柱側プレート材下面6bと適宜に溶接接合されることで、柱側プレート材6と一体化される。第1接合部9における溶接接合は、内周縁部全周にわたって行っても良いし、適宜な溶接長で間隔を空けるように行っても良い。
【0027】
第2接合部10は、基礎側プレート材7に、その外縁7aから切り欠いた形態で形成される。第2接合部10も、基礎側プレート材7と柱側プレート材下面6bとの溶接用空間Sを形成するもので、ベースプレート1を逆さまにして基礎側プレート材7側から見たときに、第2接合部10の縁部が柱側プレート材6の下面6bに面する継手部分w2を形成し、この継手部分w2を露出させるようになっている。
【0028】
また、第2接合部10は、ベースプレート1自体として、鉄骨柱2との接合箇所の強度が低下しないように、そしてまたアンカーボルト4との締結箇所の強度が低下しないように、アンカーボルト挿通孔8を避けて基礎側プレート材7の外縁7aから鉄骨柱2の外回り位置へ向かって、鉄骨柱2の下端部に達することのない位置まで形成される。
【0029】
第2接合部10は、ベースプレート1の外回りだけでなく、柱側および基礎側プレート材6,7の表裏面同士が上下に互いに面接触するベースプレート1の内奥へ向かって溶接可能とすることを意図して設けられる。つまり、同じ寸法の柱側および基礎側プレート材6,7を重ね合わせた場合、それらを溶接接合できる箇所が、それらの外周縁部同士だけでなく、基礎側プレート材7の外縁7aから鉄骨柱2の外回り位置に向かって、当該鉄骨柱2の近傍まで確保し得るように設けられる。これにより、柱脚部に作用する曲げモーメントを、主に柱側プレート材6が負担して、先行して面外に曲げ変形されてしまうことを防止できる。
【0030】
当該第2接合部10の切り欠きの形態は、図示例にあっては、おおよそV字状に形成されているが、コ字状やU字状、あるいは円弧状など、上記意図に対応する形態であれば、どのような形態であっても良い。
【0031】
第2接合部10は図示例にあっては、8本のアンカーボルト4間に位置させて、8個形成されているが、その数や配置は、アンカーボルト4間であれば、適宜に設定してよい。基礎側プレート材7と柱側プレート材6は、第2接合部10の縁部(継手部分w2)のうち、少なくともアンカーボルト挿通孔8近傍周辺から鉄骨柱2の外回り位置近傍まで溶接接合されることで一体化される。第2接合部10における溶接接合は、縁部全長にわたって行っても良い。
【0032】
好ましくは、柱側および基礎側プレート材6,7が曲げ変形されることに伴って、柱側プレート材6から基礎側プレート材7の外縁7aが外方へ迫り出すことを規制するために、基礎側プレート材7の外縁7aと、柱側プレート材6とが適宜に溶接接合される(図1および図2中、継手部分w3で示す)。
【0033】
図示例にあっては、柱側プレート材6と基礎側プレート材7の外縁同士が面一となるように、柱側プレート材6の外形寸法に基礎側プレート材7の最外縁寸法を合致させていて、基礎側プレート材7の外縁7aが柱側プレート材6の外周縁部6cに溶接接合される(継手部分w3)。基礎側プレート材7の外縁7aに対する溶接接合も、外縁全長にわたって行っても良いし、部分的に行っても良い。
【0034】
基礎側プレート材7が柱側プレート材6の外側へ迫り出すことによる基礎コンクリート3の割裂破壊を防止するために、柱側プレート材6の外形寸法に対し、基礎側プレート材7の最外縁寸法を一回り小さく設定しても良い。
【0035】
次に、本実施形態にかかる露出型柱脚用ベースプレートの作用を説明する。ベースプレート1は、柱側プレート材6と基礎側プレート材7とを重ね合わせ、穴形態の第1接合部9および切り欠き形態の第2接合部10の溶接用空間Sを利用して、第1接合部9の内周縁部と、第2接合部10の縁部のうち、少なくともアンカーボルト挿通孔8近傍から鉄骨柱2の外回り位置までの範囲とで、柱側プレート材下面6bに基礎側プレート材7を適宜に溶接接合(図中、w1,w2参照)することで、これら柱側プレート材6および基礎側プレート材7が一体的に接合されて作製される。また、基礎側プレート材7の外縁7aを、柱側プレート材6の外周縁部6cに適宜に溶接接合(図中、w3参照)することで、これら柱側プレート材6および基礎側プレート材7は確実に一体化される。
【0036】
このベースプレート1を用いて、鉄骨柱2を基礎コンクリート3上に設置する際には、ベースプレート1の柱側プレート材上面6aに鉄骨柱2の下端部を溶接などにより接合する。鉄骨柱2を接合したベースプレート1を、アンカーボルト4が突出している基礎コンクリート3上に設置する。
【0037】
設置する際には、予め基礎コンクリート3上面に設けたレベルモルタル(まんじゅう)上に、ベースプレート1を、そのアンカーボルト挿通孔8にアンカーボルト4を挿通しつつ建て込み、アンカーボルト4にナット5を締結した後、ベースプレート1の周辺を取り囲むようにして型枠(図示せず)を設け、型枠とベースプレート1の間からグラウト材Gを流し込むようにする(図4参照)。グラウト材Gは、第1接合部9や第2接合部10へも流れ込んでこれらに充填され、これにより鉄骨柱2が基礎コンクリート3上に接合される。
【0038】
このようにして基礎コンクリート3上に設置された鉄骨柱2は、ベースプレート1を介して、基礎コンクリート3上に強固に接合され、ベースプレート1が鉄骨柱2の軸力や曲げ力を確実に基礎コンクリート3に伝達することにより、当該基礎コンクリート3で鉄骨柱2を適切に支持することができる。
【0039】
本実施形態にかかる露出型柱脚用ベースプレートでは、基礎側プレート材7に第1接合部9および第2接合部10を形成したので、例えば同じ大きさ・形状の基礎側プレート材と柱側プレート材をそれらの外周に沿って単に溶接接合する場合に比べて、柱側プレート材6および基礎側プレート材7の表裏面同士が上下に互いに面接触するベースプレート1の内奥に溶接接合箇所(w1,w2)を確保することができ、これら基礎側プレート材7および柱側プレート材6同士を溶接接合して構成されるベースプレート1の一体化を向上することができて、これにより面外曲げなどに対する剛性を高めることができる。
【0040】
穴形態の第1接合部9および切り欠き形態の第2接合部10により、基礎側プレート材7の柱側プレート材下面6bに対する溶接用空間Sを確保することができ、ベースプレート1の溶接による組立作業を容易に行うことができる。
【0041】
ベースプレート1の曲げ剛性や耐力が高い鉄骨柱2の外形輪郭内方に納まる配置で第1接合部9を形成し、この第1接合部9で柱側および基礎側プレート材6,7を溶接接合したので、基礎側プレート材7の曲げ補強効果を増強することができ、第1接合部9の形成によっても、鉄骨柱2との接合箇所におけるベースプレート1の強度を健全に確保することができる。
【0042】
第2接合部10を、基礎側プレート材外縁7aからアンカーボルト挿通孔8を避けて鉄骨柱2の外回り位置へ向かって形成したので、第2接合部10の形成によっても、鉄骨柱2との接合箇所におけるベースプレート1の強度を健全に確保することができると共に、アンカーボルト4との締結箇所についても、ベースプレート1の強度を健全に確保することができる。
【0043】
基礎側プレート材7の外縁7aと、柱側プレート材6の外周縁部6cとを溶接接合(w3)するようにしたので、ベースプレート1の曲げ補強効果を増強することができると共に、基礎側プレート材7が柱側プレート材6の外側へ迫り出すことを規制することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態にかかる露出型柱脚用ベースプレートにあっては、高力ボルトによる接合を併用することなく、柱側および基礎側プレート材6,7同士の一体化を高める溶接接合を、第1および第2接合部9,10によって確保することができるので、例えば図5に示すように、鉄骨柱2などからの曲げ作用M等で、主に柱側プレート材6が曲げモーメントを負担して、先行して面外に曲げ変形してしまうような事態を防止することができる。
【0045】
図6から図11には、上記実施形態の変形例が示されている。図6から図9に示した第1変形例では、基礎側プレート材7は、第2接合部10が第1接合部9に達するように形成されて、基礎側プレート材7が分割された形態の複数のプレートピース11で構成される。
【0046】
基礎側プレート材7をプレートピース11に分割することで、プレートピース11自体は単純な形態となり、基礎側プレート材7の製作を、切り欠き形態の第2接合部10を複数形成することに比べて、容易化することができる。基礎側プレート材7をプレートピース11で構成することで、様々な外形寸法の鉄骨柱2や柱側ベースプレート6に対して適用でき、基礎側プレート材7の汎用性を高めて、仕様数を減らすことができる。
【0047】
第2接合部10と第1接合部9とを連通させることができるので、ベースプレート1の外周縁から中央に達する溶接接合を確保することができ、面外曲げなどの変形に対し、ベースプレート1の一体性をさらに高めることができる。アンカーボルト挿通孔8は、少なくともプレートピース11に形成することが好ましく、これによりアンカーボルト4の締結箇所の強度を確保することができる。
【0048】
分割した形態のプレートピース11同士の間に、第2接合部10として形成される隙間に関し、鉄骨柱2の接合箇所直下については、鉄骨柱2に対するベースプレート1の接合強度を確保するために、当該隙間を狭めるように設定することが好ましい。
【0049】
本変形例にあっては、プレートピース11の設置位置が柱側プレート材6の外周縁部6cよりもベースプレート1内方に設定されていて、これにより、ベースプレート1が曲げ変形しても、基礎側プレート材7(プレートピース11)が柱側プレート材6の外側へ迫り出すことを抑制することができ、基礎コンクリート3に割裂破壊が生じることを防止することができる。プレートピース11の数および設置位置は、適宜に設定すればよい。
【0050】
図10に示した変形例は、ほぼ四角形状の上記変形例のプレートピース11に対し、鋼材量を減少させる目的で、アンカーボルト挿通孔8を挟んで位置する2つの隅角部(図8参照)を切除した形態として、7角形状に形成したものである。
【0051】
またこの変形例では、プレートピース11回りの溶接接合可能な継手部分に、アンカーボルト挿通孔8回りからベースプレート1の中央に位置する第1接合部9(鉄骨柱2の外形輪郭に納まる箇所)に向く(図中、矢印Dで示す)求心方向継手部分w4を形成することができるので、少なくともこの求心方向継手部分w4で各プレートピース11を柱側プレート材6に溶接接合することにより、アンカーボルト4との連係によって、面外曲げ作用に対し、曲げ補強に有効な一体化したベースプレート1構造を維持して抵抗させることができる。
【0052】
上記求心方向継手部分w4(第2接合部10の縁部であるプレートピース11の端縁)は、アンカーボルト挿通孔8の中心とベースプレート1の中心を結ぶ線分Dに沿って平行に設定することが好ましい。
【0053】
図11に示した変形例は、図10に示したプレートピース11を対象として、ベースプレート1の隅角部位置に、当該隅角部を挟んで2つのアンカーボルト挿通孔8が形成される場合である。
【0054】
このような場合には、求心方向継手部分w4は、2つのアンカーボルト挿通孔8の中心を結んだ線分Lの中点Xとベースプレート1の中心を結ぶ線分E(図10中の線分Dに対応)に沿って平行もしくはほぼ平行に設定することが好ましい。少なくとも、この求心方向継手部w4で溶接接合することで、基礎側プレート材7を構成する各プレートピース11と柱側プレート材6とを効率よく接合することができる。
【0055】
以上の変形例にあっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。なお、柱側プレート材6には、穴形態の第1接合部9の内方に位置する大きさで貫通孔を設けてもよい。無収縮モルタルなどのグラウト材Gをアンカーボルト挿通孔8内に充填する構成として、グラウト材Gにより、基礎側プレート材7の外縁7aが柱側プレート材6の外方へ迫り出すことを防止する作用を補うようにしても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 ベースプレート
2 鉄骨柱
3 基礎コンクリート
4 アンカーボルト
6 柱側プレート材
6a 柱側プレート材上面
6b 柱側プレート材下面
6c 柱側プレート材外周縁部
7 基礎側プレート材
7a 基礎側プレート材外縁
8 アンカーボルト挿通孔
9 第1接合部
10 第2接合部
11 プレートピース
S 溶接用空間
w1 第1接合部の内周縁部(継手部分)
w2 第2接合部の縁部(継手部分)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱の下端部と接合されると共に、基礎コンクリートに埋設したアンカーボルトと締結され、該鉄骨柱を該基礎コンクリート上に接合するための露出型柱脚用ベースプレートであって、
上記鉄骨柱の下端部にその上面が接合される柱側プレート材と、上記基礎コンクリート上に設置される基礎側プレート材と、これら柱側プレート材および基礎側プレート材を一連に貫通して形成され、上記アンカーボルトが挿通されるアンカーボルト挿通孔と、上記基礎側プレート材に、上記鉄骨柱の外形輪郭内方に納まる配置で、上記柱側プレート材下面との溶接用空間を形成するために穴の形態で形成され、その内周縁部が当該下面と適宜に溶接接合される第1接合部と、上記基礎側プレート材に、上記アンカーボルト挿通孔を避けて外縁から上記鉄骨柱の外回り位置へ向かって、上記柱側プレート材下面との溶接用空間を形成するために切り欠いた形態で形成され、その縁部が当該下面と適宜に溶接接合される第2接合部とを備えたことを特徴とする露出型柱脚用ベースプレート。
【請求項2】
前記柱側プレート材と前記基礎側プレート材の外縁が、溶接接合されることを特徴とする請求項1に記載の露出型柱脚用ベースプレート。
【請求項3】
前記基礎側プレート材は、前記第2接合部が前記第1接合部に達するように形成されて、該基礎側プレート材が分割された形態の複数のプレートピースで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の露出型柱脚用ベースプレート。
【請求項1】
鉄骨柱の下端部と接合されると共に、基礎コンクリートに埋設したアンカーボルトと締結され、該鉄骨柱を該基礎コンクリート上に接合するための露出型柱脚用ベースプレートであって、
上記鉄骨柱の下端部にその上面が接合される柱側プレート材と、上記基礎コンクリート上に設置される基礎側プレート材と、これら柱側プレート材および基礎側プレート材を一連に貫通して形成され、上記アンカーボルトが挿通されるアンカーボルト挿通孔と、上記基礎側プレート材に、上記鉄骨柱の外形輪郭内方に納まる配置で、上記柱側プレート材下面との溶接用空間を形成するために穴の形態で形成され、その内周縁部が当該下面と適宜に溶接接合される第1接合部と、上記基礎側プレート材に、上記アンカーボルト挿通孔を避けて外縁から上記鉄骨柱の外回り位置へ向かって、上記柱側プレート材下面との溶接用空間を形成するために切り欠いた形態で形成され、その縁部が当該下面と適宜に溶接接合される第2接合部とを備えたことを特徴とする露出型柱脚用ベースプレート。
【請求項2】
前記柱側プレート材と前記基礎側プレート材の外縁が、溶接接合されることを特徴とする請求項1に記載の露出型柱脚用ベースプレート。
【請求項3】
前記基礎側プレート材は、前記第2接合部が前記第1接合部に達するように形成されて、該基礎側プレート材が分割された形態の複数のプレートピースで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の露出型柱脚用ベースプレート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−7382(P2012−7382A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144169(P2010−144169)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
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