説明

青カビ系ナチュラルチーズとその製造方法

【課題】原料チーズ中の食塩含量を抑えて、塩味を強く感じることなく、チーズ組織が脆くなく、特有の刺激臭を日本人の嗜好に合わせた青カビ系ナチュラルチーズを提供すること。
【解決手段】マグネシウム含量の高いミネラル塩を添加して、チーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gにすることにより、滑らかで口どけの良い青カビ系ナチュラルチーズを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩味の少ない日本人の嗜好に合った青カビ系ナチュラルチーズに関する。
さらに詳しくは、本発明はマグネシウム含量が高いミネラル塩を添加し、チーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gにした滑らかで口どけの良好な青カビ系チーズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルチーズの普及とともに、近年、多様な風味・食感のナチュラルチーズが、日本の国内市場に出まわるようになってきた。その中でも、青カビ系ナチュラルチーズは、認知度も高まり、市場が大きく拡大してきている。世界3大ブルーチーズと賞賛されるロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトンをはじめ、青カビ系のチーズは、それぞれ舌を刺すような刺激のある風味を有しており、熟成とともにこの風味が強まってきて、独特の風味を醸し出している。
このような独特な風味は、主として青カビによる脂肪分解や乳中の酵素によるタンパク質分解に由来しており、特に青カビの菌種や生育の仕方によりチーズ風味が大きく変化する。一般に青カビ系ナチュラルチーズは、チーズ中の食塩含量が4%以上と、通常チーズの食塩含量よりは高濃度となっているが、これには理由があって、これにより青カビ等による過度の熟成を抑制する点から必要な量とされている。
このようなカビ系ナチュラルチーズの製造方法として、白カビ系チーズを酸素欠乏下にて熟成させることにより、通常の有酸素下での熟成で得られるのとは異なった風味のチーズが得られること(特許文献1)、カビ系チーズをシート状に加工し、ロール又は層状にしたカビ熟成チーズ加工品(特許文献2)等が知られている。
【0003】
ところで、青カビ系ナチュラルチーズは、上述するように独特の癖の強い風味を持っており、今までなかなか日本人の嗜好に適さなかった。日本人に好まれない要因としては、ブルーチーズ等の青カビ系ナチュラルチーズが青カビによる熟成作用(脂肪分解やタンパク質分解)によって独特の風味が発現されるためであるが、これは熟成過程での青カビの生育のコントロール条件が大きく影響するので、この条件を厳密に管理することによって独特の風味を生み出すことができる。
避けなければいけないのは青カビの過度の熟成であって、この青カビの過度の熟成を抑制するための手法として必要以上の食塩添加が行われている。一般的にチーズ中の食塩量は、通常、4%以上とせざるを得ず、このため製品チーズにおけるチーズ組織も脆くなるとともに、喫食時に塩味を強く感じ、そのまま食するのに適さないという問題があった。本発明者らは、この青カビの過度の熟成を抑制するため、食塩の代わりに、カリウムを添加する方法について検討を進めたが、カリウムは特有のえぐみを有するため、チーズとの相性が悪く良好な風味を得ることはできなかった。
【特許文献1】特許第3370815号
【特許文献2】特許第2681891号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
青カビ系ナチュラルチーズは、独特の風味を発現させるために上述するようにチーズ中の食塩含量が高くなり、製品のチーズ組織が脆くなり、しかも喫食時に塩味を強く感じる問題があった。熟成とともに塩味は低減されるものの、チーズ風味には依然として塩味が強く残っており、特有の刺激臭と重なって、日本人の嗜好に合わないという問題があった。
本発明では、上記問題点を解決し、日本人の嗜好に合った癖の少ない風味を有し、かつ滑らかで口どけの良い青カビ系ナチュラルチーズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の点を鑑み日本人の嗜好に合った風味を有し、滑らかで口どけの良い青カビ系ナチュラルチーズを得ることを目的として鋭意研究し、マグネシウムに着目し、本発明品に至った。
本発明は、マグネシウム含量が高いミネラル塩を添加して、チーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gにすることによって、滑らかで口どけの良い青カビ系ナチュラルチーズに関する。
すなわち、本発明は、「口どけ指標値」が15%以上であることを特徴とする青カビ系ナチュラルチーズに関する。
また、本発明は、原料チーズにマグネシウム含量が高いミネラル塩を添加し、チーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gにすることによって上記青カビ系ナチュラルチーズを製造する方法に関する。
【0006】
上記「口どけ指標値」とは、本発明者らが新たに見出した指標で、10℃にて冷蔵保存したチーズを常温にもどした後、チーズ1.5gを秤量し、容量50mlの遠沈管に入れ、これに30℃の温水40mlを加え、30℃の恒温槽で5分保持した後、室温にて3,000回転で5分間遠心させ、直ちに上澄液を回収し液の固形濃度分析により水溶化チーズの重量と、もとのチーズ重量から以下のように算出した。
チーズ溶解率(%)=(チーズ水溶化量)/(もとのチーズ重量)×100を指標値として表したものである。
本発明では、口溶けの官能評価との相関をとり、口溶け良好となる数値15%を臨界値とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の青カビ系ナチュラルチーズは、マグネシウム含量が高いミネラル塩を添加し、チーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gにすることによって得られる、滑らかで口どけの良い青カビ系ナチュラルチーズであるが、マグネシウムの添加によって、通常よりもチーズ中の食塩含量を低下させることができ、青カビの過度の生育を抑制した風味良好な青カビ系チーズが形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上述するように、青カビ系ナチュラルチーズは、独特の風味を呈するチーズであるが、近年、ナチュラルチーズの普及とともにその認知度は高まりつつある。一方、青カビ系ナチュラルチーズの代表的なロックフォール、スティルトン、ゴルゴンゾーラ等のブルーチーズは癖の強い風味であるため、日本人にはなかなか浸透し難いものである。そのため、ブルーチーズ等の青カビ系ナチュラルチーズは、青カビによる熟成作用(脂肪分解、及びタンパク質分解)により、独特の風味が発現するため、熟成過程での青カビの生育をコントロールすることが極めて重要な条件となっている。
【0009】
このため、青カビの過度の熟成を抑制するための一般的な手法は、高濃度の食塩添加であり、通常、チーズ中の食塩量は4%以上であるが、このようにチーズ中の食塩含量が高いと、喫食時に塩味を強く感じそのまま食するのに適さない。食塩の添加によりチーズ組織も脆くなるので、本発明では、熟成中の青カビの生育をコントロール又は抑制する手法として、マグネシウム含量を増加させることが有効であることがわかり、マグネシウムの添加条件について鋭意検討した。その結果、マグネシウム含量を増加させることにより、青カビによる脂肪分解やタンパク質分解を抑制することが可能となった。
【0010】
本発明は、マグネシウム含量が高いミネラル塩を添加して、チーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gとすることにより、滑らかで口どけの良い青カビ系ナチュラルチーズを得ることができる。
本発明は、チーズ中のマグネシウム含量が高いミネラル塩を添加し、青カビ系ナチュラルチーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gにすることが基本である。
【0011】
ところで、チーズ製造の原料となる牛乳中のマグネシウム含量は、約12mg/100g乳である。パルメザンチーズのようにチーズ製造時、50℃以上の高温で加温しpH低下をほとんどさせないチーズを除き、一般的なチーズ製造では工程中、乳酸菌等によるpH低下にともないマグネシウムが遊離しホエーとともに排出されるため、最終のチーズ中ではマグネシウム含量は20〜30mg/100gとなる。また、加塩工程においても、通常、精製塩が使用されるため、マグネシウム含量が増加することなく、青カビ系ナチュラルチーズ中の最終的なマグネシウム含量は30mg/100g以下である。
この際、マグネシウムを添加するタイミングとして、ナチュラルチーズ製造工程中、原料乳、生成カード、型詰め後カードの3つの状態があるが、原料乳、生成カードへのマグネシウム添加は、品質的には問題がないものの、製造工程中にマグネシウムがホエーとともに流出してしまうため、ロス量(50〜90%)が大きく効率が悪いので、型詰後、加塩工程で食塩とともに添加するのが最も好ましい。
【0012】
本発明では、乳を凝固させ、ホエー排除工程を経て低水分化したチーズカードに対して、通常の添加量より抑えた食塩とともにマグネシウムを添加するが、添加するマグネシウム含量は、最終商品でのマグネシウム含量を40〜300mg/100gとすることにより、青カビ生育による脂肪分解及びタンパク質分解を大幅に抑制することが可能となる。
本発明では、マグネシウム添加により青カビの生育を大幅に抑制でき、チーズ中の食塩濃度を2〜3.5%の範囲まで低下させることが可能となる。マグネシウム含量が高いミネラル塩を添加し、チーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gとすることにより、食塩添加量を2〜3.5%まで低下させることが可能となり、日本人の嗜好に合ったマイルドな風味を有し、滑らかで口溶けの良い組織の青カビ系チーズを得ることが可能となる。
【0013】
対照的にマグネシウムを添加しない40mg/100g未満のチーズは、青カビの生育を抑制するために食塩添加量が多くなり、塩味が強く、脆い組織のチーズとなる。食塩添加量を高めたものは、塩味が強く、そのまま喫食した場合には不適であり、これを改善するためにさらに熟成させて軟らかく、口どけを良くすると、青カビ特有の風味が過度になって風味の点で問題が残る。
これを防ぐために塩味を弱くしようとして、食塩添加量を低下させたとしても、青カビの生育が加速され、日本人にとって苦手なピリピリと舌をさすような刺激味(ピカンテ)が強い風味となり、チーズ中にも青カビが繁殖しすぎて口当たりの悪いものとなる。また、熟成中にチーズ表面に生育する酵母の影響を受けてエステル臭の強いものとなり、好ましくない。
【0014】
一方、マグネシウムを過剰的に添加した場合、例えば、マグネシウム含量が300mg/100gを越えたときには、マグネシウム特有のえぐみのある風味が強くなり、得られた製品の風味への影響は大きく、好ましくない。
上述するように、本発明ではブルーチーズのような青カビ系ナチュラルチーズにおいて、風味、食感ともに嗜好性を高めるためには、マグネシウム含量が高いミネラル塩を添加し、チーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gにすることが必須になる。なお、チーズ中のマグネシウム含量を40〜100mg/100gにするとより好ましい。なお、マグネシウム含量は、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析法により測定することができる。
【0015】
本発明のマグネシウム含量の高いミネラル塩としては、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、にがり等を例示することができるが、マグネシウム含量が高い塩であれば良く、特にこれに限定されるものではない。
【0016】
以下に実施例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
青カビ系チーズの代表的なブルーチーズの製造方法によりチーズを調製した。脂肪分3.6%に調整した原料乳を均質化処理後、プレート型殺菌機により75℃で15秒間殺菌し、30℃まで冷却した。この原料乳100kgに対し乳酸菌スターター(中温菌スターター:CHR.HANSEN社製、Direct Vat Set)を10U(ユニット)添加し、ジャケット付のチーズバット内に静置させた。1時間後に仔牛レンネット(HR:CHR.HANSEN社製)を3g添加し、静置させた。
約30分経過した時点で乳の凝固が起こり、凝固開始から40分後にチーズナイフを使用してチーズカードを10mmの立方体に切断した。切断後、緩やかに撹拌しながらチーズカード中からホエーを流出させた。撹拌を開始してから1時間後にカードとホエーを分離し、カードに対し青カビ(P.roqueforti,胞子数10〜10)を0.05%添加した後、カードを5kg容量のステンレス製のチーズフープに4.5kg充填し、20℃、20時間静置させた。静置後、カードをフープから取り出し、チーズ表面に食塩50gを3日間すり込んだ。食塩添加時にマグネシウム含量が高いミネラル塩として炭酸マグネシウムを添加し、チーズ中のマグネシウム含量を40mg/100g、100mg/100g、300mg/100g、400mg/100gとしたマグネシウム添加品を調製した。
なお、通常品として食塩65gを3日間すり込んだもの(塩分4%相当品)及び、マグネシウム添加品と食塩量が同等となるように食塩50gを3日間すり込んだもの(塩分3%相当品)の2種類を調製した。
加塩終了後、チーズカードの上下面に穿孔処理をおこなった。穿孔処理はチーズ内部に溝をつけ、これを通じて空気(酸素)を通じさせる方法である。長さ15cm、太さ3mmのステンレス製の針棒をチーズの上下面に50ヶ所突き刺し溝をつけた。これによりチーズ内部に青カビが生育するようになる。穿孔処理後、チーズ表面をフィルム包装し、8℃にて60日間熟成を行った。熟成終了後、約100gの楔型にチーズを切り出し容器内に充填包装した。充填包装したチーズはさらに10℃で保存を行った。チーズの評価は充填包装直後、保存2及び4ヵ月後に実施した。
【0018】
充填包装直後、通常品は塩分3%及び4%相当品ともに硬く口どけが悪く、塩味のみが強いチーズであった。
これに対し、マグネシウム添加品(40mg/100g、100mg/100g、300mg/100g)は口どけが良く滑らかで適度な塩味の好ましい風味のチーズであった。マグネシウムを過剰に添加したもの(400mg/100g)は、青カビの生育が大幅に抑制されたが、マグネシウム由来のえぐみの強いチーズとなった。
保存2ヵ月後、通常品(塩分4%相当品)は、軟らかくなったものの口どけが悪く、塩味の強いチーズで好ましくなかった。また、通常品(塩分3%相当品)は、青カビの生育が過剰となり刺激味(ピカンテ)の強いチーズとなり好ましくなかった。
これに対して、マグネシウム添加品(40mg/100g、100mg/100g、300mg/100g)は、さらに口どけが良く滑らかな食感のチーズとなった。また、適度な塩味とブルーチーズ特有の芳香性のある風味のバランスが良好であり、好ましい風味のチーズとなった。マグネシウムを過剰に添加したもの(400mg/100g)は、青カビの生育が大幅に抑制されたが、マグネシウム由来のえぐみの強い風味のチーズとなった。
保存4ヶ月後、通常品(塩分3%相当品)は刺激味(ピカンテ)がさらに過剰に感じられ、好ましくなかった(ピリピリと舌をさすような刺激味)。通常品(塩分4%相当品)は口どけ、軟らかさは良好となり、ブルーチーズ特有の風味となった。しかし、塩味が強く、日本人の嗜好には合わないものとなった。
一方、マグネシウム添加品(40mg/100g、100mg/100g、300mg/100g)は、口どけが良く滑らかな食感のチーズとなった。さらに、ブルーチーズ特有の芳香性のある風味が強まったものの、塩味とのバランスが良好であり、後味のすっきりとした好ましい風味のチーズとなった。マグネシウムを過剰に添加したもの(400mg/100g)は、依然として、マグネシウム由来のえぐみの強い風味のチーズとなった。
【0019】
【表1】

【0020】
なお、上表におけるナチュラルチーズの評価方法は以下のように評価した。
(風味・食感・組織の官能評価)
熟練された5名のパネラーによって、風味(ブルーチーズ特有の香ばしさ、雑味、コク味、ミルク感、エステル臭)、食感(滑らかさ、口どけ、舌ざわり)、及び組織(硬さ、脆さ)について官能評価を行った。
評価は、◎:非常に好ましい、〇:好ましい、△:どちらともいえない、×:好ましくない、とした。
【実施例2】
【0021】
青カビと白カビが混在するチーズとしてカマン&ブルーチーズの製造方法によりチーズを調製した。脂肪分3.6%に調整した原料乳を均質化処理後、プレート型殺菌機により75℃で15秒間殺菌し、30℃まで冷却した。この原料乳100kgに対し乳酸菌スターター(中温菌スターター:CHR.HANSEN社製、Direct Vat Set)を10U(ユニット)添加し、ジャケット付のチーズバット内に静置させた。1時間後に仔牛レンネット(HR:CHR.HANSEN社製)を3g添加し、さらに静置させた。約30分経過した時点で乳の凝固が起こり、凝固開始から40分後にチーズナイフを使用して、チーズカードを10mmの立方体に切断した。切断後、緩やかに撹拌しながらチーズカード中からホエーを流出させた。撹拌を開始してから1時間後にカードとホエーを分離し、カードに対し青カビ(P.roqueforti,胞子数10〜10)を0.05%、食塩(精製塩)をカードに対し3%添加した。マグネシウム添加品は、食塩と同時にマグネシウム含量が高いミネラル塩として塩化マグネシウムを添加し、チーズ中のマグネシウム含量が40mg/100g、100mg/100g、300mg/100g、400mg/100gとなるように添加した。なお、通常品として食塩を4%となるように添加したもの(塩分4%相当品)及び、マグネシウム添加品と食塩量が同等となるように食塩を3%添加したもの(塩分3%相当品)の2種類を調製した。
さらに、カードを300g容量のステンレス製のチーズフープに約200g充填し、20℃、20時間静置させた。静置後、カードをフープから取り出し、チーズ表面に白カビの懸濁溶液(P.caseicolum胞子数10〜10)を塗布し、15℃にて4日間予備発酵させた。
チーズ表面に白カビが生育し始めた時点で、チーズカードの上下面に穿孔処理をおこなった。穿孔処理はチーズ内部に溝をつけ、これを通じて空気(酸素)を通じさせる方法である。長さ15cm、太さ3mmのステンレス製の針棒をチーズの上下面に7ヶ所突き刺し溝をつけた。これによりチーズ内部に青カビが生育するようになる。穿孔処理後、通気性を有する状態でフィルム包装し、10℃にて熟成を行った。チーズ評価はフィルム包装20日後、及び60日後に実施した。
【0022】
フィルム包装20日後、通常品は、通常品は塩分3%及び4%相当品ともに硬く口どけが悪く、塩味のみが強いチーズであった。
これに対し、マグネシウム添加品(40mg/100g、100mg/100g、300mg/100g)は口どけが良く、滑らかで適度な塩味の好ましい風味のチーズであった。マグネシウムを過剰に添加したもの(400mg/100g)は、青カビの生育が大幅に抑制されたが、マグネシウム由来のえぐみの強い風味のチーズとなった。
フィルム包装60日後、通常品(塩分3%相当品)は熟成が過度に進行し、刺激味の強い風味となり(ピリピリと舌をさすような刺激味)、食するのに適さなかった。通常品(塩分4%相当品)は軟らかくなったものの口どけが悪く、塩味が強くブルーチーズ特有の風味が過度となり、好ましくなかった。一方、マグネシウム添加品(40mg/100g、100mg/100g、300mg/100g)はさらに口どけが良く、滑らかな食感のチーズとなった。また、適度な塩味とブルー特有の芳香性のある風味のバランスが良好であり好ましい風味のチーズとなった。マグネシウムを過剰に添加したもの(400mg/100g)は、青カビの生育が大幅に抑制されたが、マグネシウム由来のえぐみの強い風味のチーズとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーズ中のマグネシウム含量が40〜300mg/100gである青カビ系ナチュラルチーズ。
【請求項2】
マグネシウム含量が高いミネラル塩を添加して、チーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gにすることを特徴とする、滑らかで口どけの良い青カビ系ナチュラルチーズ。
【請求項3】
以下に示す口どけ指標値が15%以上であることを特徴とする、請求項1又は2記載の青カビ系ナチュラルチーズ。
口どけ指標値:チーズ1.5gを秤量し、容量50mlの遠沈管に入れ、これに30℃の温水40mlを加え、3,000回転で5分間遠心させた後、水溶化チーズの重量を測定する。すなわち、チーズ溶解率(%)=(チーズ水溶化量)/(もとのチーズ重量)×100(%)を「口どけ指標値」とした。
【請求項4】
原料チーズにマグネシウム含量が高いミネラル塩を添加し、チーズ中のマグネシウム含量を40〜300mg/100gにすることによって請求項1乃至3のいずれかに記載の青カビ系ナチュラルチーズを製造する方法。

【公開番号】特開2009−112222(P2009−112222A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287280(P2007−287280)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【Fターム(参考)】