静圧気体軸受及びこの静圧気体軸受を用いた直動案内装置
【課題】自励振動を起こすことなく、安価な静圧気体軸受及びこの静圧気体軸受を用いた直動案内装置を提供することにある。
【解決手段】静圧気体軸受1は、熱可塑性合成樹脂、又はこの熱可塑性合成樹脂にガラス繊維、ガラス粉末、炭素繊維もしくは無機充填材を30〜50質量%含有した補強充填材含有熱可塑性合成樹脂、又はアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている軸受基体2と、軸受基体2に接着剤により接着一体化されている熱可塑性合成樹脂から形成されている合成樹脂製の軸受体3とを具備している。
【解決手段】静圧気体軸受1は、熱可塑性合成樹脂、又はこの熱可塑性合成樹脂にガラス繊維、ガラス粉末、炭素繊維もしくは無機充填材を30〜50質量%含有した補強充填材含有熱可塑性合成樹脂、又はアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている軸受基体2と、軸受基体2に接着剤により接着一体化されている熱可塑性合成樹脂から形成されている合成樹脂製の軸受体3とを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静圧気体軸受及びこの静圧気体軸受を用いた直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密工作機械や半導体露光装置においては、加工工具や基板等の被加工物を高精度で位置決めすることが要求されている。そのため、加工工具や被加工物の載置台の位置決め装置に摩擦のほとんどない静圧気体軸受を装着した直動案内装置が用いられている。このような直動案内装置では、被加工物の載置台としての可動テーブルと、案内部材としてのガイドレールとの間に加圧流体が介在され、この可動テーブルがガイドレールに対して非接触で移動されるように構成されている。
【0003】
この直動案内装置に装着される静圧気体軸受の空気吹出口の絞りの形式としては、多孔質絞り、表面絞り、オリフィス絞り、自成絞り等があり、それぞれ用途に応じて負荷容量及び軸受剛性等を調節しながら使用している。
【0004】
例えば、特許文献1には、被支持体または支持体のいずれか一方に固定され、その軸受部材を介して軸受面に供給される加圧空気により支持体を移動自在に支承するようにした静圧軸受パッドにおいて、軸受部材として、素材粒子の径がほぼ均一で開気孔の均等性が得られる種類のカーボングラファイト系の材料が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、比較的高い剛性を保ちながら、高い減衰性を実現した気体軸受装置として、2つの相対向する実質的に平行な軸受面及び両軸受面間の軸受隙間に、オリフィスを通じて気体を供給する少なくとも1つの気体ダクトを有する気体軸受装置が提案されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、多孔質体からなる母材と、この母材上に接合され、予め所望の空気透過量になるように、貫通孔の径及び分布を調整して作製された多孔板からなる表面絞り層とを備え、表面絞り層を介して気体を噴出させ、その静圧によって被支持部材を支持する静圧気体軸受が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−231020号公報
【特許文献2】特表2006−510856号公報
【特許文献3】特開2001−56027号公報
【特許文献4】特開2008−82449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の静圧気体軸受は、超低摩擦、超高精度及び超高速運動を実現することができるものの、軸受材料として、主に、高強度の金属やセラミックが用いられるとともに、高精度の研削仕上げ等を行う必要があるため、必然的に高価となるという問題がある。
【0009】
しかしながら、超低摩擦、超高精度及び超高速運動までは要求されないが、例えば、液晶スクリーン等の物品を非接触で搬送したり、温度変化を生じさせることなく物品を水平移動させたりする場合には、静圧気体軸受を用いると装置の構成が簡略化されるなどの利点を有する反面、静圧気体軸受自体が高価なため、当該用途には広く活用されていないのが実情である。
【0010】
上記実情に鑑み、種々の分野で活用可能な安価な静圧気体軸受を提供するべく本出願人は先に、上面に自成絞り形状又はオリフィス絞り形状の複数個の空気吹出口を、下面に該複数の空気吹出口と連通する給気溝を有する樹脂製軸受部材と、該樹脂製軸受部材の下面に前記給気溝を覆うように接合され、該給気溝と連通する給気口を有する基体とを備える静圧気体軸受を提案した(特許文献4)。
【0011】
この特許文献4に記載された静圧気体軸受によれば、静圧気体軸受を構成する樹脂製軸受部材を、金型を用いて射出成形によって形成することができ、機械的な加工を不要とすることができるとともに、基体の構造も樹脂製軸受部材と連通する給気口を形成するのみで、樹脂製軸受部材と基体とを接合するだけで静圧気体軸受を組み立てることができ、静圧気体軸受の大量生産が可能となり、安価な静圧気体軸受を提供することができるというものである。
【0012】
しかしながら、特許文献4に記載された静圧気体軸受における空気吹出口は、射出成形で形成されるため、その直径が0.2〜0.4mm程度の比較的大きな直径の自成絞りあるいはオリフィス形状となり、当該空気吹出口からの給気吹出量が多すぎて自励振動を起こす虞があり、やはり実用化するには改良が必要である。
【0013】
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大量生産が可能で安価な静圧気体軸受及びこの静圧気体軸受を用いた直動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の静圧気体軸受は、基部、該基部の一方の面の外周縁に突設されている円筒突出部及び一端では基部の一方の面で開口している一方、他端では基部の外周面で開口する給気通路を備えた軸受基体と、基部の一方の面に対面している一方の面に形成された円環状凹部、他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では円環状凹部の円環状底面で開口した自成絞りとしての複数個の空気吹出孔を有した合成樹脂製の軸受体とを具備しており、該軸受体は、一方の面に隣接する外周面を基部の円筒突出部の内面に嵌合させ、当該嵌合部において接着されて、軸受基体に一体化されており、環状凹溝は、少なくとも0.3mmの幅と、少なくとも0.01mmの深さとを有しており、空気吹出孔は、その一端で少なくとも30μmの直径を有して、円環状凹部と環状凹溝との間で自成絞りを形成していることを特徴とする。
【0015】
本発明の静圧気体軸受によれば、合成樹脂製の軸受体は、一方の面に隣接する外周面を基部の円筒突出部の内面に嵌合させると共に、当該嵌合部において接着剤により接着されて軸受基体に一体化されており、また、合成樹脂製の軸受体が他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では円環状凹部に開口した複数個の空気吹出孔を有しており、環状凹溝が少なくとも0.3mmの幅と、少なくとも0.01mmの深さを有しており、空気吹出孔は、その一端で少なくとも30μmの直径を有して、円環状凹部と環状凹溝との間で自成絞りを形成しており、当該環状凹溝及び複数個の空気吹出孔を機械加工によることなく形成されているため、大量生産が可能で、安価な製作が可能となる。
【0016】
好ましい例では、環状凹溝は、0.3〜1.0mm又は0.3〜0.7mmの幅と、0.01〜0.05mm又は0.01〜0.03mmの深さとを有しており、該空気吹出孔は、その一端で30〜120μmの直径を有している。
【0017】
環状凹溝及び空気吹出孔の夫々は、好ましくは、レーザー加工により形成されている。加工用レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等から選択される。
【0018】
環状凹溝及び空気吹出孔の夫々をレーザー加工により形成すると、切削等の機械加工等に比較して、瞬時にこれらを形成でき、大量生産が可能となるばかりでなく、安価に製作することができる。
【0019】
本発明の静圧気体軸受において、軸受基体の他方の面には、球体受圧凹部が形成されていてもよい。球体受圧凹部は、該他方の面で開口した截頭円錐凹部あるいは凹球部からなり、これらの球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面に直接形成されていてもよい。
【0020】
本発明の静圧気体軸受において、軸受基体の他方の面には、当該他方の面で開口する円柱状凹部が形成されており、該円柱状凹部には、駒が嵌合固定されており、球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面側の該駒の一方の面で開口すると共に当該駒に形成された截頭円錐面を有していてもよい。
【0021】
本発明の静圧気体軸受において、軸受基体の他方の面には、当該他方の面で開口する円柱状凹部が形成されており、該円柱状凹部には、駒が嵌合固定されており、球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面側の該駒の一方の面で開口すると共に当該駒に形成された凹球面を有していてもよい。
【0022】
軸受基体の他方の面に球体受圧凹部を備えた静圧気体軸受においては、該球体受圧凹部に、例えばボールスタッドの球体が摺接して配されることにより、静圧気体軸受に該球体回りの自動調芯機能が付加されるようになっていてもよい。
【0023】
本発明の静圧気体軸受において、軸受体は、環状凹溝に加えて、その他方の面に形成されていると共に、該環状凹溝の外側に該環状凹溝を囲む大径環状凹溝と、一方の端部が該環状凹溝に開口すると共に他方の端部が大径環状凹溝に開口する複数個の第一の放射状凹溝と、該環状凹溝の内側に形成された小径環状凹溝と、一方の端部が環状凹溝に開口すると共に他方の端部が小径環状凹溝に開口する複数個の第二の放射状凹溝とを具備していてもよく、これら大径環状凹溝、小径環状凹溝並びに第一及び第二の放射状凹溝は、軸受体の他方の面に形成されているとよい。
【0024】
この自動調芯機能が付加された静圧気体軸受は、被加工物の載置台の位置決め装置としての直動案内装置に用いられて好適である。すなわち、本発明の静圧気体軸受を具備した直動案内装置は、上案内面及び両側案内面を有する案内部材の外側に、上案内面に対面する上板及び両側案内面に対面する一対の側板を備えた横断面コの字型の可動テーブルが配されており、該可動テーブルの上板の下面及び側板の夫々の内面には、夫々ボールスタッドが球体を内方に向けて立設されており、該ボールスタッドと案内部材の上案内面及び両側案内面との間には、上記静圧気体軸受が球体受圧凹部を該ボールスタッドの球体に摺接させると共に、軸受体を案内部材の上案内面及び両側案内面に対面させて配されているとよい。
【0025】
上記直動案内装置によれば、軸受体の複数個の空気吹出孔から案内部材の上案内面及び両側案内面に圧縮空気を噴射することにより、軸受体と上案内面及び両側案内面との間に形成される空気潤滑膜によって可動テーブルを上案内面及び両側案内面に対して非接触の状態に保持することができる。そして、軸受体と上案内面及び両側案内面との間の軸受隙間が不均一であると、軸受隙間各部に圧力差が発生するが、その圧力差により、軸受隙間が均一となる方向に静圧気体軸受が自動調芯され、上案内面及び両側案内面に対して平行な状態が保持される。このため、案内部材及び可動テーブルの平行度、直角度等の部品精度を比較的粗い精度とすることができ、前記静圧気体軸受自体の低コストに加えて、安価な直動案内装置を提供することができる。
【0026】
本発明の静圧気体軸受において、軸受体は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性合成樹脂から形成されているのが好ましく、また軸受基体は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性合成樹脂又はこれらの熱可塑性合成樹脂にガラス繊維、ガラス粉末、炭素繊維もしくは無機充填材を30〜50質量%含有した補強充填材含有熱可塑性合成樹脂あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されているのが好ましい。これら合成樹脂製の軸受体及び軸受基体は、合成樹脂素材を機械加工して形成しても、金型を用いて射出成形により形成してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、大量生産が可能で安価な静圧気体軸受及びこの静圧気体軸受を用いた直動案内装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の好ましい例の平面説明図である。
【図2】図2は、図1のII−II線矢視断面説明図である。
【図3】図3は、図1の底面説明図である。
【図4】図4は、図1の軸受体の底面説明図である。
【図5】図5は、図1の要部拡大断面説明図である。
【図6】図6は、軸受基体の平面説明図である。
【図7】図7は、図6のVII−VII線矢視断面説明図である。
【図8】図8は、軸受体の平面説明図である。
【図9】図9は、図8のIX−IX線矢視断面説明図である。
【図10】図10は、図8の底面説明図である。
【図11】図11は、軸受体と軸受基体との組合体の断面説明図である。
【図12】図12は、軸受体の他の実施の形態の平面説明図である。
【図13】図13は、軸受基体の他の実施の形態の底面説明図である。
【図14】図14は、図13のXIV−XIV線矢視断面説明図である。
【図15】図15は、軸受体と軸受基体との組合体の断面説明図である。
【図16】図16は、自動調芯機能を付加した静圧気体軸受の断面説明図である。
【図17】図17は、軸受基体の更に他の実施の形態の底面説明図である。
【図18】図18は、図17のXVIII−XVIII線矢視断面説明図である。
【図19】図19は、軸受体と軸受基体との組合体の断面説明図である。
【図20】図20は、自動調芯機能を付加した静圧気体軸受の断面説明図である。
【図21】図21は、軸受基体の他の実施の形態の底面説明図である。
【図22】図22は、図21のXXII−XXII線矢視断面説明図である。
【図23】図23は、駒の断面説明図である。
【図24】図24は、駒を嵌合固定した軸受基体の断面説明図である。
【図25】図25は、軸受体と軸受基体との組合体の断面説明図である。
【図26】図26は、自動調芯機能を付加した静圧気体軸受の断面説明図である。
【図27】図27は、駒の他の実施の形態の断面説明図である。
【図28】図28は、駒を嵌合固定した軸受基体の断面説明図である。
【図29】図29は、軸受体と軸受基体との組合体の断面説明図である。
【図30】図30は、自動調芯機能を付加した静圧気体軸受の断面説明図である。
【図31】図31は、直動案内装置の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【0030】
図1から図5において、静圧気体軸受1は、好ましくは、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などの熱可塑性合成樹脂、又はこれらの熱可塑性合成樹脂にガラス繊維、ガラス粉末、炭素繊維もしくは無機充填材を30〜50質量%含有した補強充填材含有熱可塑性合成樹脂、あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている軸受基体2と、軸受基体2に接着剤により接着一体化されていると共に好ましくはポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの熱可塑性合成樹脂から形成されている合成樹脂製の軸受体3とを具備している。
【0031】
軸受基体2は、特に、図6及び図7に示すように、基部4と、基部4の一方の平面視円形の面5の外周縁に軸方向Yの上方に向かって一体的に突設されている円筒突出部6と、基部4の他方の平面視円形の面7と、一端8では基部4の平面視円形の面5で開口している円形の開口部9を有する給気穴10と、一端11では給気穴10に連通すると共に他端では基体4の外周面12で開口する給気通路13とを備えている。
【0032】
基部4の外周面12に開口する給気通路13の端部内周面14には、雌ねじ15が形成されており、雌ねじ15には給気プラグ16の雄ねじが螺合して、給気プラグ16は軸受基体2の基部4の外周面12に固定される。
【0033】
軸受体3は、特に、図8から図10に示すように、基部4の一方の平面視円形の面5に対面している一方の平面視円形の面17に形成されている円環状凹部18と、他方の平面視円形の面19で開口した環状凹溝20と、一端21では環状凹溝20に連通していると共に他端22では円環状凹部18の円環状底面24に開口した複数個の空気吹出孔25と、一方の平面視円形の面17に隣接する外周面23とを有している。
【0034】
環状凹溝20は、環状底面26と、互いに対面する円筒側面27とによって規定されており、環状凹溝20は、少なくとも0.3mmの幅Wと、少なくとも0.01mmの深さdとを有しており、空気吹出孔25は、その一端21で、本例では一端21から他端22に亘って少なくとも30μmの直径Dを有して、円環状凹部18と環状凹溝20との間で自成絞りを形成している。
【0035】
円環状凹部18は、空気吹出孔25の他端22が開口する円環状底面24と、円環状底面24の外縁に連接されている外周面28と、円環状底面24の内縁に連接されている内周面29とにより規定されており、外周面28及び内周面29は、夫々円環状底面24から円環状凹部18の開口部30に向けて末広がりに伸びる截頭円錐面31及び32に形成されている。
【0036】
軸受体3は、一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させ、当該嵌合部において接着剤により接着されて軸受基体2に一体化される。
【0037】
静圧気体軸受1においては、軸受体3の面19での幅Wが少なくとも0.3mmで、深さdが少なくとも0.01mmの環状凹溝20と、一端21では環状凹溝20に開口して他端22では円環状凹部18の円環状底面24に開口する直径Dが少なくとも30μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25とを例えばレーザー加工により瞬時に形成してもよい。
【0038】
以上の静圧気体軸受1では、軸受体3は軸受基体2に接着剤により一体化されているので、その製作が容易で、安価とすることができる。また、空気吹出孔25は、少なくとも30μmの直径と極めて小径であり、空気吹出孔25からの多量の空気噴射に起因する自励振動の発生を抑制することができる。
【0039】
次に図1から図5に示す静圧気体軸受1の製造方法の例を説明すると、まず、図6及び図7に示す補強充填材含有合成樹脂製あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金製の軸受基体2と、図8から図10に示す合成樹脂製の軸受体3であって、環状凹溝20及び空気吹出孔25を有していない軸受体3aを準備し、図11に示すように、軸受体3aの円環状凹部18の開口部30を軸受基体2の給気穴10の開口部9に連通させると共に、軸受体3aの一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して軸受基体2と軸受体3aとを一体化した組立体33を形成する。
【0040】
このように一体化された組立体33における軸受体3aの他方の面19に、レーザー加工機によりレーザー照射し、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝20と、環状凹溝20を規定する環状底面26に、環状底面26から軸受体3aを貫通して円環状凹部18の円環状底面24に開口する直径Dが少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25とを形成し、静圧気体軸受1を作製する。
【0041】
用いる加工用レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー又はエキシマレーザー等から選択されるが、好ましくは、炭酸ガスレーザーを用いる。
【0042】
直径30mmの円弧を中心として幅0.5mm、深さ0.05mmの環状凹溝20は、レーザー出力9.5Wの炭酸ガスレーザーを使用して、スキャンスピード1000mm/s、重ね印字数1回、加工時間2秒でポリフェニレンサルファイド樹脂から形成された軸受体3aの面19に形成、加工することができ、また、環状凹溝20の環状底面26に、環状底面26から軸受体3aを貫通して円環状凹部18の円環状底面24で開口する直径0.06mmの自成絞り形状の空気吹出孔25は、レーザー出力14W、加工時間15秒で円周方向に10等配の位置に10個加工することができた。
【0043】
上記の静圧気体軸受1の軸受体3は、一個の環状凹溝20を具備しているが、環状凹溝20に加えて、軸受体3は、図12に示すように、軸受体3の他方の面19に形成されていると共に、環状凹溝20の外側に環状凹溝20を囲むと共に環状凹溝20と同心の大径環状凹溝34と、一方の端部35が環状凹溝20に開口すると共に他方の端部36が大径環状凹溝34に開口する複数個の放射状凹溝37と、環状凹溝20の内側に形成されていると共に環状凹溝20と同心の小径環状凹溝38と、一方の端部39が環状凹溝20に開口すると共に他方の端部40が小径環状凹溝38に開口する複数個の放射状凹溝41とを具備していてもよい。
【0044】
図12に示す軸受体3を有した静圧気体軸受1では、環状凹溝20に給気された圧縮空気は、放射状溝37及び41を介して大径環状凹溝34及び小径環状凹溝38に供給されるので、供給面積が大きくなり、例えば物品の浮上において、安定した浮上を行うことができる。
【0045】
図13から図16は、静圧気体軸受1の他の実施の形態を示すもので、軸受基体2の他方の平面視円形の面7の中央部には、面7に平面視円形の開口部42を有する球体受圧凹部43が形成されており、球体受圧凹部43は、平面視円形の底面44と、底面44から開口部42にかけて末広がりに伸びる截頭円錐面45とによって規定される截頭円錐凹部46を有している。
【0046】
截頭円錐凹部46を有する球体受圧凹部43を備えた軸受基体2は、静圧気体軸受1と同様に、給気穴10の開口部9を、軸受体3の円環状凹部18の開口部30に連通させると共に、軸受体3の一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して軸受基体2と軸受体3とを一体化した組立体47を形成する。
【0047】
このように一体化された組立体47における軸受体3の他方の面19に、レーザー加工機によりレーザー照射し、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝20と、環状凹溝20を規定する環状底面26に、環状底面26から軸受体3を貫通して円環状凹部18の円環状底面24で開口する直径Dが少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25を形成し、静圧気体軸受1を作製する。
【0048】
このように形成された静圧気体軸受1には、図16に示すように、軸受基体2の球体受圧凹部43の截頭円錐面45にボールスタッド48の球体49が摺接して配されることにより、自動調芯機能が付加される。
【0049】
図17から図20は、静圧気体軸受1の更に他の実施の形態を示すもので、軸受基体2の他方の平面視円形の面7の中央部には、面7に平面視円形の開口部42を有する球体受圧凹部43が形成されており、球体受圧凹部43は、平面視円形の底面44と、底面44から開口部42にかけて広がる凹球面50とによって規定される凹球部51を有している。
【0050】
凹球部51を有する球体受圧凹部43を備えた軸受基体2は、静圧気体軸受1と同様に、給気穴10の開口部9を、軸受体3の円環状凹部18の開口部30に連通させると共に、軸受体3の一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して軸受基体2と軸受体3とを一体化した組立体52を形成する。
【0051】
このように一体化された組立体52における軸受体3の他方の面19に、レーザー加工機によりレーザー照射し、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝20と、環状凹溝20を規定する環状底面26に、環状底面26から軸受体3を貫通して円環状凹部18の円環状底面24で開口する直径Dが少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25を形成し、静圧気体軸受1を作製する。
【0052】
このように形成された静圧気体軸受1には、図20に示すように、軸受基体2の球体受圧凹部43の凹球面50にボールスタッド48の球体49が摺接して配されることにより、自動調芯機能が付加される。
【0053】
図21から図26は、自動調芯機能が付加された静圧気体軸受1の他の実施の形態を示すものである。軸受基体2の他方の平面視円形の面7の中央部には、面7で開口する円形の底面54を有した円柱状凹部55が形成されており、円柱状凹部55には、図23に示すように、円柱体56と、一端57で円柱体56の一方の面58で開口する円孔59と、円孔59の他端60に連接し、他端60から円柱体56の他方の面61に向けて末広がりに伸びると共に他方の面61で開口する截頭円錐面62を有する凹部63を備えた駒64が一方の面58を円柱状凹部55の底面54に向けて、かつ、他方の面61が軸受基体2の他方の面7と面一となって嵌合固定されている。球体受圧凹部43は、斯かる截頭円錐面62を有している。
【0054】
駒64を嵌合固定した軸受基体2は、前記静圧気体軸受1と同様に、給気穴10の開口部9を軸受体3の円環状凹部18の開口部30に連通させると共に、軸受体3の一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して軸受基体2と軸受体3とを一体化した組立体65を形成する。
【0055】
このように一体化された組立体65における軸受体3の他方の面19に、レーザー加工機によりレーザー照射し、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝20と、環状凹溝20を規定する環状底面26に、環状底面26から軸受体3を貫通して円環状凹部18の円環状底面24で開口する直径Dが少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25を形成し、静圧気体軸受1を作製する。
【0056】
このように形成された静圧気体軸受1には、図26に示すように、軸受基体2の円柱状凹部55に嵌合固定された駒64の凹部63の截頭円錐面62にボールスタッド48の球体49が摺接して配されることにより、自動調芯機能が付加される。
【0057】
図27から図30は、自動調芯機能が付加された静圧気体軸受1の更に他の実施の形態を示すものである。図22に示すように軸受基体2の他方の平面視円形の面7の中央部には、面7で開口する円形の底面54を有する円柱状凹部55が形成されており、円柱状凹部55には、図27に示すように、円柱体56と、一端57で円柱体56の一方の面58で開口する円孔59と、円孔59の他端60に連接し、他端60から円柱体56の他方の面61に向けて他方の面61で開口する凹球面66を有する凹部63を備えた駒64が一方の面58を円柱状凹部55の底面54に向けて、かつ、他方の面61が軸受基体2の他方の面7と面一となって嵌合固定されている。球体受圧凹部43は、斯かる凹球面66を有している。
【0058】
駒64を嵌合固定した軸受基体2は、前記静圧気体軸受1と同様に、給気穴10の開口部9を軸受体3の円環状凹部18の開口部30に連通させると共に、軸受体3の一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して軸受基体2と軸受体3とを一体化した組立体67を形成する。
【0059】
このように一体化された組立体67における軸受体3の他方の面19に、レーザー加工機によりレーザー照射し、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝20と、環状凹溝20を規定する環状底面26に、環状底面26から軸受体3を貫通して円環状凹部18の円環状底面24で開口する直径Dが少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25を形成し、静圧気体軸受1を作製する。
【0060】
このように形成された静圧気体軸受1には、図30に示すように、軸受基体2の円柱状凹部55に嵌合固定された駒64の凹部63の凹球面66にボールスタッド48の球体49が摺接して配されることにより、自動調芯機能が付加される。
【0061】
軸受基体2の他方の平面視円形の面7の中央部に形成された円柱状凹部55に嵌合固定された駒64を摺動特性に優れた、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の自己潤滑性を有する熱可塑性合成樹脂、あるいは銅又は銅合金等で形成することにより、駒64の凹部63の截頭円錐面62あるいは凹球面66とボールスタッド48の球体49との摺接を円滑に行わせることができる。
【0062】
図31は、図26に示す静圧気体軸受1を用いた直動案内装置68を示すもので、直動案内装置68は、上案内面69及び両側案内面70及び70を有する案内部材71と、案内部材71の外側に跨って配された上案内面69に対面する上板72及び両側案内面70及び70に対面する一対の側板73及び73を備えた横断面コの字型の可動テーブル74と、可動テーブル74の上板72の下面75及び側板73及び73の夫々の内面76に球体49を内方に向けて立設されたボールスタッド48と、ボールスタッド48と案内部材71の上案内面69及び両側案内面70及び70との間に駒64の截頭円錐面62をボールスタッド48の球体49に摺接させると共に、軸受体3の他方の面19を案内部材71の上案内面69及び両側案内面70及び70に対面させて配された静圧気体軸受1とから形成されている。
【0063】
この直動案内装置68によれば、軸受体3の複数個の空気吹出孔25から案内部材71の上案内面69及び両側案内面70及び70に圧縮空気を噴射することにより、軸受体3の他方の面19と案内部材71の上案内面69及び両側案内面70及び70との間に形成される空気潤滑膜によって可動テーブル74を上案内面69及び両側案内面70及び70に対して非接触の状態で保持することができる。そして、軸受体3と上案内面69及び両側案内面70及び70との間の軸受隙間が不均一であると、軸受隙間各部に圧力差が発生するが、その圧力差により、軸受隙間が均一となる方向に静圧気体軸受1が自動調芯され、上案内面69及び両側案内面70及び70に対して平行な状態が保たれる。このため、案内部材71及び可動テーブル74の平行度、直角度等の部品精度を比較的粗い精度とすることができ、静圧気体軸受1自体の低コストに加えて、直動案内装置68の製作の容易化及びコストの低下を図ることができる。
【0064】
直動案内装置68においては、自動調芯機能が付加された静圧気体軸受1として、図26に示すような静圧気体軸受1を使用したが、これに代えて、図16、図20及び図30に示す静圧気体軸受1を使用してもよい。
【0065】
以上のように、軸受体と軸受基体とは、軸受体の一方の面に隣接する外周面を軸受基体の円筒突出部の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して一体化されているので、軸受体と軸受基体との接合面は強固に密封されており、軸受体の一方の面には、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝と、環状凹溝を規定する環状底面に、環状底面から軸受体を貫通して円環状凹部の環状底面で開口する直径Dが少なくとも30μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔が形成されており、当該環状凹溝及び空気吹出孔を機械加工によることなく形成できるので、安価な静圧気体軸受を提供できるばかりでなく、当該静圧気体軸受を用いた製作の容易化及びコストの低下を図ることができる直動案内装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 静圧基体軸受
2 軸受基体
3 軸受体
4 基部
6 円筒突出部
13 給気通路
18 円環状凹部
20 環状凹溝
23 外周面
25 空気吹出孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、静圧気体軸受及びこの静圧気体軸受を用いた直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密工作機械や半導体露光装置においては、加工工具や基板等の被加工物を高精度で位置決めすることが要求されている。そのため、加工工具や被加工物の載置台の位置決め装置に摩擦のほとんどない静圧気体軸受を装着した直動案内装置が用いられている。このような直動案内装置では、被加工物の載置台としての可動テーブルと、案内部材としてのガイドレールとの間に加圧流体が介在され、この可動テーブルがガイドレールに対して非接触で移動されるように構成されている。
【0003】
この直動案内装置に装着される静圧気体軸受の空気吹出口の絞りの形式としては、多孔質絞り、表面絞り、オリフィス絞り、自成絞り等があり、それぞれ用途に応じて負荷容量及び軸受剛性等を調節しながら使用している。
【0004】
例えば、特許文献1には、被支持体または支持体のいずれか一方に固定され、その軸受部材を介して軸受面に供給される加圧空気により支持体を移動自在に支承するようにした静圧軸受パッドにおいて、軸受部材として、素材粒子の径がほぼ均一で開気孔の均等性が得られる種類のカーボングラファイト系の材料が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、比較的高い剛性を保ちながら、高い減衰性を実現した気体軸受装置として、2つの相対向する実質的に平行な軸受面及び両軸受面間の軸受隙間に、オリフィスを通じて気体を供給する少なくとも1つの気体ダクトを有する気体軸受装置が提案されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、多孔質体からなる母材と、この母材上に接合され、予め所望の空気透過量になるように、貫通孔の径及び分布を調整して作製された多孔板からなる表面絞り層とを備え、表面絞り層を介して気体を噴出させ、その静圧によって被支持部材を支持する静圧気体軸受が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−231020号公報
【特許文献2】特表2006−510856号公報
【特許文献3】特開2001−56027号公報
【特許文献4】特開2008−82449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の静圧気体軸受は、超低摩擦、超高精度及び超高速運動を実現することができるものの、軸受材料として、主に、高強度の金属やセラミックが用いられるとともに、高精度の研削仕上げ等を行う必要があるため、必然的に高価となるという問題がある。
【0009】
しかしながら、超低摩擦、超高精度及び超高速運動までは要求されないが、例えば、液晶スクリーン等の物品を非接触で搬送したり、温度変化を生じさせることなく物品を水平移動させたりする場合には、静圧気体軸受を用いると装置の構成が簡略化されるなどの利点を有する反面、静圧気体軸受自体が高価なため、当該用途には広く活用されていないのが実情である。
【0010】
上記実情に鑑み、種々の分野で活用可能な安価な静圧気体軸受を提供するべく本出願人は先に、上面に自成絞り形状又はオリフィス絞り形状の複数個の空気吹出口を、下面に該複数の空気吹出口と連通する給気溝を有する樹脂製軸受部材と、該樹脂製軸受部材の下面に前記給気溝を覆うように接合され、該給気溝と連通する給気口を有する基体とを備える静圧気体軸受を提案した(特許文献4)。
【0011】
この特許文献4に記載された静圧気体軸受によれば、静圧気体軸受を構成する樹脂製軸受部材を、金型を用いて射出成形によって形成することができ、機械的な加工を不要とすることができるとともに、基体の構造も樹脂製軸受部材と連通する給気口を形成するのみで、樹脂製軸受部材と基体とを接合するだけで静圧気体軸受を組み立てることができ、静圧気体軸受の大量生産が可能となり、安価な静圧気体軸受を提供することができるというものである。
【0012】
しかしながら、特許文献4に記載された静圧気体軸受における空気吹出口は、射出成形で形成されるため、その直径が0.2〜0.4mm程度の比較的大きな直径の自成絞りあるいはオリフィス形状となり、当該空気吹出口からの給気吹出量が多すぎて自励振動を起こす虞があり、やはり実用化するには改良が必要である。
【0013】
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大量生産が可能で安価な静圧気体軸受及びこの静圧気体軸受を用いた直動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の静圧気体軸受は、基部、該基部の一方の面の外周縁に突設されている円筒突出部及び一端では基部の一方の面で開口している一方、他端では基部の外周面で開口する給気通路を備えた軸受基体と、基部の一方の面に対面している一方の面に形成された円環状凹部、他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では円環状凹部の円環状底面で開口した自成絞りとしての複数個の空気吹出孔を有した合成樹脂製の軸受体とを具備しており、該軸受体は、一方の面に隣接する外周面を基部の円筒突出部の内面に嵌合させ、当該嵌合部において接着されて、軸受基体に一体化されており、環状凹溝は、少なくとも0.3mmの幅と、少なくとも0.01mmの深さとを有しており、空気吹出孔は、その一端で少なくとも30μmの直径を有して、円環状凹部と環状凹溝との間で自成絞りを形成していることを特徴とする。
【0015】
本発明の静圧気体軸受によれば、合成樹脂製の軸受体は、一方の面に隣接する外周面を基部の円筒突出部の内面に嵌合させると共に、当該嵌合部において接着剤により接着されて軸受基体に一体化されており、また、合成樹脂製の軸受体が他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では円環状凹部に開口した複数個の空気吹出孔を有しており、環状凹溝が少なくとも0.3mmの幅と、少なくとも0.01mmの深さを有しており、空気吹出孔は、その一端で少なくとも30μmの直径を有して、円環状凹部と環状凹溝との間で自成絞りを形成しており、当該環状凹溝及び複数個の空気吹出孔を機械加工によることなく形成されているため、大量生産が可能で、安価な製作が可能となる。
【0016】
好ましい例では、環状凹溝は、0.3〜1.0mm又は0.3〜0.7mmの幅と、0.01〜0.05mm又は0.01〜0.03mmの深さとを有しており、該空気吹出孔は、その一端で30〜120μmの直径を有している。
【0017】
環状凹溝及び空気吹出孔の夫々は、好ましくは、レーザー加工により形成されている。加工用レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等から選択される。
【0018】
環状凹溝及び空気吹出孔の夫々をレーザー加工により形成すると、切削等の機械加工等に比較して、瞬時にこれらを形成でき、大量生産が可能となるばかりでなく、安価に製作することができる。
【0019】
本発明の静圧気体軸受において、軸受基体の他方の面には、球体受圧凹部が形成されていてもよい。球体受圧凹部は、該他方の面で開口した截頭円錐凹部あるいは凹球部からなり、これらの球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面に直接形成されていてもよい。
【0020】
本発明の静圧気体軸受において、軸受基体の他方の面には、当該他方の面で開口する円柱状凹部が形成されており、該円柱状凹部には、駒が嵌合固定されており、球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面側の該駒の一方の面で開口すると共に当該駒に形成された截頭円錐面を有していてもよい。
【0021】
本発明の静圧気体軸受において、軸受基体の他方の面には、当該他方の面で開口する円柱状凹部が形成されており、該円柱状凹部には、駒が嵌合固定されており、球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面側の該駒の一方の面で開口すると共に当該駒に形成された凹球面を有していてもよい。
【0022】
軸受基体の他方の面に球体受圧凹部を備えた静圧気体軸受においては、該球体受圧凹部に、例えばボールスタッドの球体が摺接して配されることにより、静圧気体軸受に該球体回りの自動調芯機能が付加されるようになっていてもよい。
【0023】
本発明の静圧気体軸受において、軸受体は、環状凹溝に加えて、その他方の面に形成されていると共に、該環状凹溝の外側に該環状凹溝を囲む大径環状凹溝と、一方の端部が該環状凹溝に開口すると共に他方の端部が大径環状凹溝に開口する複数個の第一の放射状凹溝と、該環状凹溝の内側に形成された小径環状凹溝と、一方の端部が環状凹溝に開口すると共に他方の端部が小径環状凹溝に開口する複数個の第二の放射状凹溝とを具備していてもよく、これら大径環状凹溝、小径環状凹溝並びに第一及び第二の放射状凹溝は、軸受体の他方の面に形成されているとよい。
【0024】
この自動調芯機能が付加された静圧気体軸受は、被加工物の載置台の位置決め装置としての直動案内装置に用いられて好適である。すなわち、本発明の静圧気体軸受を具備した直動案内装置は、上案内面及び両側案内面を有する案内部材の外側に、上案内面に対面する上板及び両側案内面に対面する一対の側板を備えた横断面コの字型の可動テーブルが配されており、該可動テーブルの上板の下面及び側板の夫々の内面には、夫々ボールスタッドが球体を内方に向けて立設されており、該ボールスタッドと案内部材の上案内面及び両側案内面との間には、上記静圧気体軸受が球体受圧凹部を該ボールスタッドの球体に摺接させると共に、軸受体を案内部材の上案内面及び両側案内面に対面させて配されているとよい。
【0025】
上記直動案内装置によれば、軸受体の複数個の空気吹出孔から案内部材の上案内面及び両側案内面に圧縮空気を噴射することにより、軸受体と上案内面及び両側案内面との間に形成される空気潤滑膜によって可動テーブルを上案内面及び両側案内面に対して非接触の状態に保持することができる。そして、軸受体と上案内面及び両側案内面との間の軸受隙間が不均一であると、軸受隙間各部に圧力差が発生するが、その圧力差により、軸受隙間が均一となる方向に静圧気体軸受が自動調芯され、上案内面及び両側案内面に対して平行な状態が保持される。このため、案内部材及び可動テーブルの平行度、直角度等の部品精度を比較的粗い精度とすることができ、前記静圧気体軸受自体の低コストに加えて、安価な直動案内装置を提供することができる。
【0026】
本発明の静圧気体軸受において、軸受体は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性合成樹脂から形成されているのが好ましく、また軸受基体は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性合成樹脂又はこれらの熱可塑性合成樹脂にガラス繊維、ガラス粉末、炭素繊維もしくは無機充填材を30〜50質量%含有した補強充填材含有熱可塑性合成樹脂あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されているのが好ましい。これら合成樹脂製の軸受体及び軸受基体は、合成樹脂素材を機械加工して形成しても、金型を用いて射出成形により形成してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、大量生産が可能で安価な静圧気体軸受及びこの静圧気体軸受を用いた直動案内装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の好ましい例の平面説明図である。
【図2】図2は、図1のII−II線矢視断面説明図である。
【図3】図3は、図1の底面説明図である。
【図4】図4は、図1の軸受体の底面説明図である。
【図5】図5は、図1の要部拡大断面説明図である。
【図6】図6は、軸受基体の平面説明図である。
【図7】図7は、図6のVII−VII線矢視断面説明図である。
【図8】図8は、軸受体の平面説明図である。
【図9】図9は、図8のIX−IX線矢視断面説明図である。
【図10】図10は、図8の底面説明図である。
【図11】図11は、軸受体と軸受基体との組合体の断面説明図である。
【図12】図12は、軸受体の他の実施の形態の平面説明図である。
【図13】図13は、軸受基体の他の実施の形態の底面説明図である。
【図14】図14は、図13のXIV−XIV線矢視断面説明図である。
【図15】図15は、軸受体と軸受基体との組合体の断面説明図である。
【図16】図16は、自動調芯機能を付加した静圧気体軸受の断面説明図である。
【図17】図17は、軸受基体の更に他の実施の形態の底面説明図である。
【図18】図18は、図17のXVIII−XVIII線矢視断面説明図である。
【図19】図19は、軸受体と軸受基体との組合体の断面説明図である。
【図20】図20は、自動調芯機能を付加した静圧気体軸受の断面説明図である。
【図21】図21は、軸受基体の他の実施の形態の底面説明図である。
【図22】図22は、図21のXXII−XXII線矢視断面説明図である。
【図23】図23は、駒の断面説明図である。
【図24】図24は、駒を嵌合固定した軸受基体の断面説明図である。
【図25】図25は、軸受体と軸受基体との組合体の断面説明図である。
【図26】図26は、自動調芯機能を付加した静圧気体軸受の断面説明図である。
【図27】図27は、駒の他の実施の形態の断面説明図である。
【図28】図28は、駒を嵌合固定した軸受基体の断面説明図である。
【図29】図29は、軸受体と軸受基体との組合体の断面説明図である。
【図30】図30は、自動調芯機能を付加した静圧気体軸受の断面説明図である。
【図31】図31は、直動案内装置の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【0030】
図1から図5において、静圧気体軸受1は、好ましくは、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などの熱可塑性合成樹脂、又はこれらの熱可塑性合成樹脂にガラス繊維、ガラス粉末、炭素繊維もしくは無機充填材を30〜50質量%含有した補強充填材含有熱可塑性合成樹脂、あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている軸受基体2と、軸受基体2に接着剤により接着一体化されていると共に好ましくはポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などの熱可塑性合成樹脂から形成されている合成樹脂製の軸受体3とを具備している。
【0031】
軸受基体2は、特に、図6及び図7に示すように、基部4と、基部4の一方の平面視円形の面5の外周縁に軸方向Yの上方に向かって一体的に突設されている円筒突出部6と、基部4の他方の平面視円形の面7と、一端8では基部4の平面視円形の面5で開口している円形の開口部9を有する給気穴10と、一端11では給気穴10に連通すると共に他端では基体4の外周面12で開口する給気通路13とを備えている。
【0032】
基部4の外周面12に開口する給気通路13の端部内周面14には、雌ねじ15が形成されており、雌ねじ15には給気プラグ16の雄ねじが螺合して、給気プラグ16は軸受基体2の基部4の外周面12に固定される。
【0033】
軸受体3は、特に、図8から図10に示すように、基部4の一方の平面視円形の面5に対面している一方の平面視円形の面17に形成されている円環状凹部18と、他方の平面視円形の面19で開口した環状凹溝20と、一端21では環状凹溝20に連通していると共に他端22では円環状凹部18の円環状底面24に開口した複数個の空気吹出孔25と、一方の平面視円形の面17に隣接する外周面23とを有している。
【0034】
環状凹溝20は、環状底面26と、互いに対面する円筒側面27とによって規定されており、環状凹溝20は、少なくとも0.3mmの幅Wと、少なくとも0.01mmの深さdとを有しており、空気吹出孔25は、その一端21で、本例では一端21から他端22に亘って少なくとも30μmの直径Dを有して、円環状凹部18と環状凹溝20との間で自成絞りを形成している。
【0035】
円環状凹部18は、空気吹出孔25の他端22が開口する円環状底面24と、円環状底面24の外縁に連接されている外周面28と、円環状底面24の内縁に連接されている内周面29とにより規定されており、外周面28及び内周面29は、夫々円環状底面24から円環状凹部18の開口部30に向けて末広がりに伸びる截頭円錐面31及び32に形成されている。
【0036】
軸受体3は、一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させ、当該嵌合部において接着剤により接着されて軸受基体2に一体化される。
【0037】
静圧気体軸受1においては、軸受体3の面19での幅Wが少なくとも0.3mmで、深さdが少なくとも0.01mmの環状凹溝20と、一端21では環状凹溝20に開口して他端22では円環状凹部18の円環状底面24に開口する直径Dが少なくとも30μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25とを例えばレーザー加工により瞬時に形成してもよい。
【0038】
以上の静圧気体軸受1では、軸受体3は軸受基体2に接着剤により一体化されているので、その製作が容易で、安価とすることができる。また、空気吹出孔25は、少なくとも30μmの直径と極めて小径であり、空気吹出孔25からの多量の空気噴射に起因する自励振動の発生を抑制することができる。
【0039】
次に図1から図5に示す静圧気体軸受1の製造方法の例を説明すると、まず、図6及び図7に示す補強充填材含有合成樹脂製あるいはアルミニウム又はアルミニウム合金製の軸受基体2と、図8から図10に示す合成樹脂製の軸受体3であって、環状凹溝20及び空気吹出孔25を有していない軸受体3aを準備し、図11に示すように、軸受体3aの円環状凹部18の開口部30を軸受基体2の給気穴10の開口部9に連通させると共に、軸受体3aの一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して軸受基体2と軸受体3aとを一体化した組立体33を形成する。
【0040】
このように一体化された組立体33における軸受体3aの他方の面19に、レーザー加工機によりレーザー照射し、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝20と、環状凹溝20を規定する環状底面26に、環状底面26から軸受体3aを貫通して円環状凹部18の円環状底面24に開口する直径Dが少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25とを形成し、静圧気体軸受1を作製する。
【0041】
用いる加工用レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー又はエキシマレーザー等から選択されるが、好ましくは、炭酸ガスレーザーを用いる。
【0042】
直径30mmの円弧を中心として幅0.5mm、深さ0.05mmの環状凹溝20は、レーザー出力9.5Wの炭酸ガスレーザーを使用して、スキャンスピード1000mm/s、重ね印字数1回、加工時間2秒でポリフェニレンサルファイド樹脂から形成された軸受体3aの面19に形成、加工することができ、また、環状凹溝20の環状底面26に、環状底面26から軸受体3aを貫通して円環状凹部18の円環状底面24で開口する直径0.06mmの自成絞り形状の空気吹出孔25は、レーザー出力14W、加工時間15秒で円周方向に10等配の位置に10個加工することができた。
【0043】
上記の静圧気体軸受1の軸受体3は、一個の環状凹溝20を具備しているが、環状凹溝20に加えて、軸受体3は、図12に示すように、軸受体3の他方の面19に形成されていると共に、環状凹溝20の外側に環状凹溝20を囲むと共に環状凹溝20と同心の大径環状凹溝34と、一方の端部35が環状凹溝20に開口すると共に他方の端部36が大径環状凹溝34に開口する複数個の放射状凹溝37と、環状凹溝20の内側に形成されていると共に環状凹溝20と同心の小径環状凹溝38と、一方の端部39が環状凹溝20に開口すると共に他方の端部40が小径環状凹溝38に開口する複数個の放射状凹溝41とを具備していてもよい。
【0044】
図12に示す軸受体3を有した静圧気体軸受1では、環状凹溝20に給気された圧縮空気は、放射状溝37及び41を介して大径環状凹溝34及び小径環状凹溝38に供給されるので、供給面積が大きくなり、例えば物品の浮上において、安定した浮上を行うことができる。
【0045】
図13から図16は、静圧気体軸受1の他の実施の形態を示すもので、軸受基体2の他方の平面視円形の面7の中央部には、面7に平面視円形の開口部42を有する球体受圧凹部43が形成されており、球体受圧凹部43は、平面視円形の底面44と、底面44から開口部42にかけて末広がりに伸びる截頭円錐面45とによって規定される截頭円錐凹部46を有している。
【0046】
截頭円錐凹部46を有する球体受圧凹部43を備えた軸受基体2は、静圧気体軸受1と同様に、給気穴10の開口部9を、軸受体3の円環状凹部18の開口部30に連通させると共に、軸受体3の一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して軸受基体2と軸受体3とを一体化した組立体47を形成する。
【0047】
このように一体化された組立体47における軸受体3の他方の面19に、レーザー加工機によりレーザー照射し、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝20と、環状凹溝20を規定する環状底面26に、環状底面26から軸受体3を貫通して円環状凹部18の円環状底面24で開口する直径Dが少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25を形成し、静圧気体軸受1を作製する。
【0048】
このように形成された静圧気体軸受1には、図16に示すように、軸受基体2の球体受圧凹部43の截頭円錐面45にボールスタッド48の球体49が摺接して配されることにより、自動調芯機能が付加される。
【0049】
図17から図20は、静圧気体軸受1の更に他の実施の形態を示すもので、軸受基体2の他方の平面視円形の面7の中央部には、面7に平面視円形の開口部42を有する球体受圧凹部43が形成されており、球体受圧凹部43は、平面視円形の底面44と、底面44から開口部42にかけて広がる凹球面50とによって規定される凹球部51を有している。
【0050】
凹球部51を有する球体受圧凹部43を備えた軸受基体2は、静圧気体軸受1と同様に、給気穴10の開口部9を、軸受体3の円環状凹部18の開口部30に連通させると共に、軸受体3の一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して軸受基体2と軸受体3とを一体化した組立体52を形成する。
【0051】
このように一体化された組立体52における軸受体3の他方の面19に、レーザー加工機によりレーザー照射し、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝20と、環状凹溝20を規定する環状底面26に、環状底面26から軸受体3を貫通して円環状凹部18の円環状底面24で開口する直径Dが少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25を形成し、静圧気体軸受1を作製する。
【0052】
このように形成された静圧気体軸受1には、図20に示すように、軸受基体2の球体受圧凹部43の凹球面50にボールスタッド48の球体49が摺接して配されることにより、自動調芯機能が付加される。
【0053】
図21から図26は、自動調芯機能が付加された静圧気体軸受1の他の実施の形態を示すものである。軸受基体2の他方の平面視円形の面7の中央部には、面7で開口する円形の底面54を有した円柱状凹部55が形成されており、円柱状凹部55には、図23に示すように、円柱体56と、一端57で円柱体56の一方の面58で開口する円孔59と、円孔59の他端60に連接し、他端60から円柱体56の他方の面61に向けて末広がりに伸びると共に他方の面61で開口する截頭円錐面62を有する凹部63を備えた駒64が一方の面58を円柱状凹部55の底面54に向けて、かつ、他方の面61が軸受基体2の他方の面7と面一となって嵌合固定されている。球体受圧凹部43は、斯かる截頭円錐面62を有している。
【0054】
駒64を嵌合固定した軸受基体2は、前記静圧気体軸受1と同様に、給気穴10の開口部9を軸受体3の円環状凹部18の開口部30に連通させると共に、軸受体3の一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して軸受基体2と軸受体3とを一体化した組立体65を形成する。
【0055】
このように一体化された組立体65における軸受体3の他方の面19に、レーザー加工機によりレーザー照射し、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝20と、環状凹溝20を規定する環状底面26に、環状底面26から軸受体3を貫通して円環状凹部18の円環状底面24で開口する直径Dが少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25を形成し、静圧気体軸受1を作製する。
【0056】
このように形成された静圧気体軸受1には、図26に示すように、軸受基体2の円柱状凹部55に嵌合固定された駒64の凹部63の截頭円錐面62にボールスタッド48の球体49が摺接して配されることにより、自動調芯機能が付加される。
【0057】
図27から図30は、自動調芯機能が付加された静圧気体軸受1の更に他の実施の形態を示すものである。図22に示すように軸受基体2の他方の平面視円形の面7の中央部には、面7で開口する円形の底面54を有する円柱状凹部55が形成されており、円柱状凹部55には、図27に示すように、円柱体56と、一端57で円柱体56の一方の面58で開口する円孔59と、円孔59の他端60に連接し、他端60から円柱体56の他方の面61に向けて他方の面61で開口する凹球面66を有する凹部63を備えた駒64が一方の面58を円柱状凹部55の底面54に向けて、かつ、他方の面61が軸受基体2の他方の面7と面一となって嵌合固定されている。球体受圧凹部43は、斯かる凹球面66を有している。
【0058】
駒64を嵌合固定した軸受基体2は、前記静圧気体軸受1と同様に、給気穴10の開口部9を軸受体3の円環状凹部18の開口部30に連通させると共に、軸受体3の一方の面17に隣接する外周面23を、軸受基体2の円筒突出部6の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して軸受基体2と軸受体3とを一体化した組立体67を形成する。
【0059】
このように一体化された組立体67における軸受体3の他方の面19に、レーザー加工機によりレーザー照射し、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝20と、環状凹溝20を規定する環状底面26に、環状底面26から軸受体3を貫通して円環状凹部18の円環状底面24で開口する直径Dが少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔25を形成し、静圧気体軸受1を作製する。
【0060】
このように形成された静圧気体軸受1には、図30に示すように、軸受基体2の円柱状凹部55に嵌合固定された駒64の凹部63の凹球面66にボールスタッド48の球体49が摺接して配されることにより、自動調芯機能が付加される。
【0061】
軸受基体2の他方の平面視円形の面7の中央部に形成された円柱状凹部55に嵌合固定された駒64を摺動特性に優れた、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の自己潤滑性を有する熱可塑性合成樹脂、あるいは銅又は銅合金等で形成することにより、駒64の凹部63の截頭円錐面62あるいは凹球面66とボールスタッド48の球体49との摺接を円滑に行わせることができる。
【0062】
図31は、図26に示す静圧気体軸受1を用いた直動案内装置68を示すもので、直動案内装置68は、上案内面69及び両側案内面70及び70を有する案内部材71と、案内部材71の外側に跨って配された上案内面69に対面する上板72及び両側案内面70及び70に対面する一対の側板73及び73を備えた横断面コの字型の可動テーブル74と、可動テーブル74の上板72の下面75及び側板73及び73の夫々の内面76に球体49を内方に向けて立設されたボールスタッド48と、ボールスタッド48と案内部材71の上案内面69及び両側案内面70及び70との間に駒64の截頭円錐面62をボールスタッド48の球体49に摺接させると共に、軸受体3の他方の面19を案内部材71の上案内面69及び両側案内面70及び70に対面させて配された静圧気体軸受1とから形成されている。
【0063】
この直動案内装置68によれば、軸受体3の複数個の空気吹出孔25から案内部材71の上案内面69及び両側案内面70及び70に圧縮空気を噴射することにより、軸受体3の他方の面19と案内部材71の上案内面69及び両側案内面70及び70との間に形成される空気潤滑膜によって可動テーブル74を上案内面69及び両側案内面70及び70に対して非接触の状態で保持することができる。そして、軸受体3と上案内面69及び両側案内面70及び70との間の軸受隙間が不均一であると、軸受隙間各部に圧力差が発生するが、その圧力差により、軸受隙間が均一となる方向に静圧気体軸受1が自動調芯され、上案内面69及び両側案内面70及び70に対して平行な状態が保たれる。このため、案内部材71及び可動テーブル74の平行度、直角度等の部品精度を比較的粗い精度とすることができ、静圧気体軸受1自体の低コストに加えて、直動案内装置68の製作の容易化及びコストの低下を図ることができる。
【0064】
直動案内装置68においては、自動調芯機能が付加された静圧気体軸受1として、図26に示すような静圧気体軸受1を使用したが、これに代えて、図16、図20及び図30に示す静圧気体軸受1を使用してもよい。
【0065】
以上のように、軸受体と軸受基体とは、軸受体の一方の面に隣接する外周面を軸受基体の円筒突出部の内面に嵌合させたのち、当該嵌合部を接着剤により接着して一体化されているので、軸受体と軸受基体との接合面は強固に密封されており、軸受体の一方の面には、幅Wが0.3〜1.0mm、深さdが0.01〜0.05mmの環状凹溝と、環状凹溝を規定する環状底面に、環状底面から軸受体を貫通して円環状凹部の環状底面で開口する直径Dが少なくとも30μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔が形成されており、当該環状凹溝及び空気吹出孔を機械加工によることなく形成できるので、安価な静圧気体軸受を提供できるばかりでなく、当該静圧気体軸受を用いた製作の容易化及びコストの低下を図ることができる直動案内装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 静圧基体軸受
2 軸受基体
3 軸受体
4 基部
6 円筒突出部
13 給気通路
18 円環状凹部
20 環状凹溝
23 外周面
25 空気吹出孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部、該基部の一方の面の外周縁に突設されている円筒突出部及び一端では基部の一方の面で開口している一方、他端では基部の外周面で開口する給気通路を備えた軸受基体と、基部の一方の面に対面している一方の面に形成された円環状凹部、他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では円環状凹部の円環状底面で開口した自成絞りとしての複数個の空気吹出孔を有した合成樹脂製の軸受体とを具備しており、該軸受体は、一方の面に隣接する外周面を基部の円筒突出部の内面に嵌合させ、当該嵌合部において接着されて、軸受基体に一体化されており、環状凹溝は、少なくとも0.3mmの幅と、少なくとも0.01mmの深さとを有しており、空気吹出孔は、その一端で少なくとも30μmの直径を有して、円環状凹部と環状凹溝との間で自成絞りを形成していることを特徴とする静圧気体軸受。
【請求項2】
環状凹溝は、0.3〜1.0mm又は0.3〜0.7mmの幅と、0.01〜0.05mm又は0.01〜0.03mmの深さとを有しており、該空気吹出孔は、その一端で30〜120μmの直径を有している請求項1に記載の静圧気体軸受。
【請求項3】
環状凹溝及び空気吹出孔の夫々は、レーザー加工により形成されている請求項1又は2に記載の静圧気体軸受。
【請求項4】
軸受基体の他方の面には、球体受圧凹部が形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の静圧気体軸受。
【請求項5】
球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面で開口する截頭円錐凹部を有している請求項4に記載の静圧気体軸受。
【請求項6】
球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面で開口する凹球部を有している請求項4に記載の静圧気体軸受。
【請求項7】
軸受基体の他方の面には、当該他方の面で開口する円柱状凹部が形成されており、該円柱状凹部には、駒が嵌合固定されており、球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面側の該駒の一方の面で開口すると共に当該駒に形成された截頭円錐面を有している請求項4に記載の静圧気体軸受。
【請求項8】
軸受基体の他方の面には、当該他方の面で開口する円柱状凹部が形成されており、該円柱状凹部には、駒が嵌合固定されており、球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面側の該駒の一方の面で開口すると共に当該駒に形成された凹球面を有している請求項4に記載の静圧気体軸受。
【請求項9】
軸受体は、環状凹溝に加えて、その他方の面に形成されていると共に、該環状凹溝の外側に該環状凹溝を囲む大径環状凹溝と、一方の端部が該環状凹溝に開口すると共に他方の端部が大径環状凹溝に開口する複数個の第一の放射状凹溝と、該環状凹溝の内側に形成された小径環状凹溝と、一方の端部が環状凹溝に開口すると共に他方の端部が小径環状凹溝に開口する複数個の第二の放射状凹溝とを具備している請求項1から8のいずれか一項に記載の静圧気体軸受。
【請求項10】
上案内面及び両側案内面を有する案内部材の外側に、上案内面に対面する上板及び両側案内面に対面する一対の側板を備えた横断面コの字型の可動テーブルが配されており、該可動テーブルの上板の下面及び側板の夫々の内面には、夫々ボールスタッドが球体を内方に向けて立設されており、該ボールスタッドと案内部材の上案内面及び両側案内面との間には、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の静圧気体軸受が球体受圧凹部を該ボールスタッドの球体に摺接させると共に、軸受体を案内部材の上案内面及び両側案内面に対面させて配されていることを特徴とする直動案内装置。
【請求項1】
基部、該基部の一方の面の外周縁に突設されている円筒突出部及び一端では基部の一方の面で開口している一方、他端では基部の外周面で開口する給気通路を備えた軸受基体と、基部の一方の面に対面している一方の面に形成された円環状凹部、他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では円環状凹部の円環状底面で開口した自成絞りとしての複数個の空気吹出孔を有した合成樹脂製の軸受体とを具備しており、該軸受体は、一方の面に隣接する外周面を基部の円筒突出部の内面に嵌合させ、当該嵌合部において接着されて、軸受基体に一体化されており、環状凹溝は、少なくとも0.3mmの幅と、少なくとも0.01mmの深さとを有しており、空気吹出孔は、その一端で少なくとも30μmの直径を有して、円環状凹部と環状凹溝との間で自成絞りを形成していることを特徴とする静圧気体軸受。
【請求項2】
環状凹溝は、0.3〜1.0mm又は0.3〜0.7mmの幅と、0.01〜0.05mm又は0.01〜0.03mmの深さとを有しており、該空気吹出孔は、その一端で30〜120μmの直径を有している請求項1に記載の静圧気体軸受。
【請求項3】
環状凹溝及び空気吹出孔の夫々は、レーザー加工により形成されている請求項1又は2に記載の静圧気体軸受。
【請求項4】
軸受基体の他方の面には、球体受圧凹部が形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の静圧気体軸受。
【請求項5】
球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面で開口する截頭円錐凹部を有している請求項4に記載の静圧気体軸受。
【請求項6】
球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面で開口する凹球部を有している請求項4に記載の静圧気体軸受。
【請求項7】
軸受基体の他方の面には、当該他方の面で開口する円柱状凹部が形成されており、該円柱状凹部には、駒が嵌合固定されており、球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面側の該駒の一方の面で開口すると共に当該駒に形成された截頭円錐面を有している請求項4に記載の静圧気体軸受。
【請求項8】
軸受基体の他方の面には、当該他方の面で開口する円柱状凹部が形成されており、該円柱状凹部には、駒が嵌合固定されており、球体受圧凹部は、軸受基体の他方の面側の該駒の一方の面で開口すると共に当該駒に形成された凹球面を有している請求項4に記載の静圧気体軸受。
【請求項9】
軸受体は、環状凹溝に加えて、その他方の面に形成されていると共に、該環状凹溝の外側に該環状凹溝を囲む大径環状凹溝と、一方の端部が該環状凹溝に開口すると共に他方の端部が大径環状凹溝に開口する複数個の第一の放射状凹溝と、該環状凹溝の内側に形成された小径環状凹溝と、一方の端部が環状凹溝に開口すると共に他方の端部が小径環状凹溝に開口する複数個の第二の放射状凹溝とを具備している請求項1から8のいずれか一項に記載の静圧気体軸受。
【請求項10】
上案内面及び両側案内面を有する案内部材の外側に、上案内面に対面する上板及び両側案内面に対面する一対の側板を備えた横断面コの字型の可動テーブルが配されており、該可動テーブルの上板の下面及び側板の夫々の内面には、夫々ボールスタッドが球体を内方に向けて立設されており、該ボールスタッドと案内部材の上案内面及び両側案内面との間には、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の静圧気体軸受が球体受圧凹部を該ボールスタッドの球体に摺接させると共に、軸受体を案内部材の上案内面及び両側案内面に対面させて配されていることを特徴とする直動案内装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2013−108557(P2013−108557A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253340(P2011−253340)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
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