静止型ミキサー部材及びこれを備える静止型ミキサー
【課題】拡散の性能を維持しつつ滞留の発生を抑制することが可能な静止型ミキサー部材及び静止型ミキサーを提供する。
【解決手段】流体が流動する筒体2の内部に設けられ、流体の流動方向と交差する方向に延び、筒体2内を流動する流体を上流側において分割させ、下流側において合流させることにより該流体の撹拌を行う撹拌部材10を備える静止型ミキサー部材4であって、撹拌部材10の断面形状は、流体の少なくとも下流側に向けて突出した形状である。
【解決手段】流体が流動する筒体2の内部に設けられ、流体の流動方向と交差する方向に延び、筒体2内を流動する流体を上流側において分割させ、下流側において合流させることにより該流体の撹拌を行う撹拌部材10を備える静止型ミキサー部材4であって、撹拌部材10の断面形状は、流体の少なくとも下流側に向けて突出した形状である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管等の筒体内を流動する流体の撹拌を行うための静止型ミキサー部材及びこれを備える静止型ミキサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、配管102内を流動する流体の撹拌を行うための静止型ミキサー100として、図8に示すようなスルーザミキサー部材104を備えたものが知られている(特許文献1)。このスルーザミキサー部材104は、配管102内に設けられ、流体の流動方向と交差する方向に延びる複数の細長い仕切り板110を交互に交差させて組み付けたエレメントであり、この各仕切り板110の上流側において流動する流体を分割させると共に下流側において合流させることにより、流体の撹拌を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−76280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の静止型ミキサー100では、仕切り板110の上流側及び下流側において例えば図9に示すような流体の滞留112、114が生じてしまうという問題がある。このような流体の滞留は、高粘度の流体において特に生じやすく、このような流体の滞留により、例えば、異なる流体を切り替えて使用したい場合に上流側及び下流側の滞留箇所112、114において先に充填されていた流体が残ってしまい、それが不純物となって製品に混入したり、また、長時間滞留が継続することにより流体がゲル化や劣化し、それが異物となって製品に混入したりするおそれがある。また、単一材料の場合であっても、流体が長時間高温に晒されることにより劣化や変色を起こし、それが不純物や異物となって製品に混入するおそれがある。さらに、このような異物は、スルーザミキサー部材104の下流側に設けられるフィルタ(図示せず)を目詰まりさせてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、拡散の性能を維持しつつ滞留の発生を抑制することが可能な静止型ミキサー部材及びこれを備える静止型ミキサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係る静止型ミキサー部材は、流体が流動する筒体の内部に設けられ、前記流体の流動方向と交差する方向に延びる撹拌部材を備える静止型ミキサー部材であって、前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の少なくとも下流側に向けて突出した形状であることを特徴とする。
【0007】
このように、本発明に係る静止型ミキサー部材によれば、流体の撹拌を行う撹拌部材が、流体の少なくとも下流側に向けて突出した断面形状を有することにより、少なくとも撹拌部材の下流側における滞留箇所を軽減することができるため、拡散の性能を維持しつつ少なくとも撹拌部材の下流側における滞留を抑制することができる。また、このように流体の滞留を抑制することにより、製品への不純物及び異物の混入やフィルタの目詰まりを遡及的に防止することができる。
【0008】
本発明に係る静止型ミキサー部材において、前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の少なくとも下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状であることが好ましく、このように撹拌部材の少なくとも下流側の先端部分が尖鋭状に形成されることにより、撹拌部材の下流側における滞留箇所をほぼ無くすことができるため、流体の滞留をより一層抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係る静止型ミキサー部材において、前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の上流側及び下流側に向けてそれぞれ突出した形状であることが好ましく、これにより、撹拌部材の下流側だけでなく、撹拌部材の上流側における滞留をも抑制することができる。この場合において、前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の上流側及び下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状であることがさらに好ましく、これにより、撹拌部材の上流側及び下流側における滞留箇所をほぼ無くすことができるため、流体の滞留をより一層抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係る静止型ミキサーは、上記静止型ミキサー部材と、前記静止型ミキサー部材が内部に設けられた筒体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、拡散の性能を維持しつつ滞留の発生を抑制することが可能な静止型ミキサー部材及びこれを備える静止型ミキサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る静止型ミキサーの概略構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係る静止型ミキサーの撹拌部材の形状を示す概略斜視図である。
【図3】図1のA−A´線に沿った概略断面図である。
【図4】図1のB−B´線に沿った概略断面図である。
【図5】本実施形態に係る静止型ミキサーにおける、撹拌部材付近の流体の流動経路を模式的に示した説明図である。
【図6】図6(a)は、本実施形態に係る静止型ミキサーの静止型ミキサー部材における、流体の流動経路(流線)をシミュレーションした結果を示す説明図であり、図6(b)は、従来のスルーザミキサーにおける、流体の流動経路(流線)をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【図7】図7(a)乃至図7(g)は、撹拌部材の形状の他の例を示す概略斜視図である。
【図8】従来の静止型ミキサーの概略構成を示す模式図である。
【図9】従来の静止型ミキサーにおける、仕切り板付近の流体の流動経路を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態に係る静止型ミキサーについて、図面に基づいて説明する。本実施形態に係る静止型ミキサー1は、主に、例えば10ポアズ以上の高粘度の流体を撹拌させ、拡散させる高粘度流体拡散用静止型ミキサーであって、例えば図1に示すように、円筒状に形成された筒体2と、筒体2の内部に設けられた静止型ミキサー部材4とを備えている。
【0014】
筒体2は、例えば配管であり、1又は複数の高粘度流体を筒体2内に流入させる1又は複数の流入口(図示せず)と、筒体2内から拡散された高粘度流体を流出させる流出口(図示せず)と、流入口及び流出口との間において静止型ミキサー部材4を収容する筒状部分とを有している。筒体2の流入口は、高粘度流体の供給源であるタンク(図示せず)や、高粘度流体を下流側に向けて流動させるためのポンプ(図示せず)等、適宜必要な装置と接続されている。筒体2の静止型ミキサー部材4よりも下流側には、高粘度流体内の異物を除去するためのフィルタ(図示せず)等が適宜設けられている。
【0015】
静止型ミキサー部材4は、図2乃至図4に示すように、高粘度流体の流動方向と交差する方向に延びる複数の長尺な角柱状の撹拌部材10を交互に交差させて組み付けることにより構成されている。各撹拌部材10の長手方向(すなわち、高粘度流体の流動方向と交差する方向)に垂直な断面形状は、図2に示すように、高粘度流体の上流側及び下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状であり、本実施形態においては断面ひし形形状に形成されている。これら複数の撹拌部材10は、図3に示すように、高粘度流体の流動方向と直交する方向(すなわち、筒体2の中心軸と直交する方向)の断面(図1のA−A´線に沿った断面)において、隣接する撹拌部材10同士が平行となるように設けられると共に、図4に示すように、高粘度流体の流動方向(すなわち、筒体2の中心軸の方向)の断面(図1のB−B´線に沿った断面)において、隣接する撹拌部材10同士が互いに直交するように、それぞれが筒体2の壁面に対して約45度の角度で傾いた状態で設けられている。また、撹拌部材10は、それぞれ、断面ひし形の一の頂点12が高粘度流体の上流側に位置し、この一の頂点12の対角上に位置する他の頂点14が高粘度流体の下流側に位置するように配置されている。
【0016】
このように構成された静止型ミキサー部材4は、筒体2内を流動する高粘度流体を各撹拌部材10の上流側において分流させると共に下流側において合流させ、高粘度流体の撹拌を行うように機能する。この際、撹拌部材10は、高粘度流体の上流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出し、かつ、高粘度流体の下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状を有しているため、図5に示すように、撹拌部材10の上流側及び下流側のいずれにおいても、高粘度流体の滞留箇所をほぼ無くすことができ、これにより、拡散の性能を維持しつつ撹拌部材10の上流側及び下流側における滞留を抑制することができる。また、このように高粘度流体の滞留を抑制することにより、製品への不純物や異物の混入やフィルタの目詰まりを防止することができる。
【0017】
図6(a)に、本実施形態に係る静止型ミキサー1における高粘度流体の流動経路(流線6)をシミュレーションした結果を示し、図6(b)に、従来の静止型ミキサー100(図8参照)における高粘度流体の流動経路(流線106)をシミュレーションした結果を示す。これら図6(a)及び図6(b)から明らかであるように、本実施形態に係る静止型ミキサー1の拡散性は、従来の静止型ミキサー100の拡散性と比較して衰えておらず、拡散の性能を維持できていることが明らかである。
【0018】
本実施形態に係る静止型ミキサー1において、撹拌部材10は、断面ひし形の角柱状であるとしたが、これに限定されず、流動する流体の少なくとも下流側に向けて突出した形状を有するものであれば良い。このような形状を有する撹拌部材の例を、図7(a)乃至図7(g)に例示的に示す。
【0019】
図7(a)に記載の撹拌部材20は、断面円形の円柱状に形成されたものであり、図7(b)に記載の撹拌部材22は、断面楕円形の円柱状に形成されたものである。これら図7(a)及び図7(b)の撹拌部材20、22は、本実施形態の撹拌部材10と比較すると上流側及び下流側において多少の滞留が生じるおそれがあるが、従来の仕切り板110のような大きな滞留が生じることを防止することができる。
【0020】
図7(c)に記載の撹拌部材24は、高粘度流体の上流側に向けて突出した半円状部分24aと、高粘度流体の下流側に向けて先端が尖鋭となるように直線的に突出した三角状部分24bとからなる柱状に形成されたものである。図7(d)に記載の撹拌部材26は、高粘度流体の上流側に向けて突出した半円状部分26aと、高粘度流体の下流側に向けてやや内側に窄む曲線を描くように突出し、かつ先端が尖鋭となる三角状部分26bとからなる柱状に形成されたものである。これら図7(c)及び図7(d)の撹拌部材24、26は、本実施形態の撹拌部材10と比較すると上流側において多少の滞留が生じるおそれがあるが、従来の仕切り板110のような大きな滞留が生じることを防止することができる。また、図7(d)の撹拌部材26は、本実施形態の撹拌部材10よりも、下流側における滞留をより効果的に抑制することができる。
【0021】
図7(e)に記載の撹拌部材28は、高粘度流体の下流側に向けて先端が尖鋭となるように直線的に突出した断面三角形の三角柱状に形成されたものである。図7(f)に記載の撹拌部材30は、高粘度流体の下流側に向けてやや内側に窄む曲線を描くように突出し、かつ先端が尖鋭となる断面略三角形の三角柱状に形成されたものである。図7(g)に記載の撹拌部材32は、高粘度流体の下流側に向けて突出した断面半円状の半円柱状に形成されたものである。これら図7(e)、図7(f)及び図7(g)の撹拌部材28、30、32は、上流側において高粘度流体の滞留が生じるおそれがあるが、下流側における高粘度流体の滞留を抑制することができる。特に、図7(f)の撹拌部材30は、本実施形態の撹拌部材10よりも、下流側における滞留をより効果的に抑制することができる。
【0022】
本実施形態に係る静止型ミキサー1において、静止型ミキサー部材4は、高粘度流体の流動方向と交差する方向に延びる長尺な複数の撹拌部材10を交互に交差させて組み付けることにより構成されるとしたが、これに限定されず、少なくとも流体の流動方向と交差する方向に延びる1以上の撹拌部材を備えていれば良く、例えば流体を撹拌可能な所定の配置で短尺な撹拌部材を複数組み合わせることにより構成されるとしても良く、また、1つの撹拌部材を旋回若しくは屈曲させることにより構成されるとしても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 静止型ミキサー、2 筒体、4 静止型ミキサー部材、10 撹拌部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管等の筒体内を流動する流体の撹拌を行うための静止型ミキサー部材及びこれを備える静止型ミキサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、配管102内を流動する流体の撹拌を行うための静止型ミキサー100として、図8に示すようなスルーザミキサー部材104を備えたものが知られている(特許文献1)。このスルーザミキサー部材104は、配管102内に設けられ、流体の流動方向と交差する方向に延びる複数の細長い仕切り板110を交互に交差させて組み付けたエレメントであり、この各仕切り板110の上流側において流動する流体を分割させると共に下流側において合流させることにより、流体の撹拌を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−76280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の静止型ミキサー100では、仕切り板110の上流側及び下流側において例えば図9に示すような流体の滞留112、114が生じてしまうという問題がある。このような流体の滞留は、高粘度の流体において特に生じやすく、このような流体の滞留により、例えば、異なる流体を切り替えて使用したい場合に上流側及び下流側の滞留箇所112、114において先に充填されていた流体が残ってしまい、それが不純物となって製品に混入したり、また、長時間滞留が継続することにより流体がゲル化や劣化し、それが異物となって製品に混入したりするおそれがある。また、単一材料の場合であっても、流体が長時間高温に晒されることにより劣化や変色を起こし、それが不純物や異物となって製品に混入するおそれがある。さらに、このような異物は、スルーザミキサー部材104の下流側に設けられるフィルタ(図示せず)を目詰まりさせてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、拡散の性能を維持しつつ滞留の発生を抑制することが可能な静止型ミキサー部材及びこれを備える静止型ミキサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係る静止型ミキサー部材は、流体が流動する筒体の内部に設けられ、前記流体の流動方向と交差する方向に延びる撹拌部材を備える静止型ミキサー部材であって、前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の少なくとも下流側に向けて突出した形状であることを特徴とする。
【0007】
このように、本発明に係る静止型ミキサー部材によれば、流体の撹拌を行う撹拌部材が、流体の少なくとも下流側に向けて突出した断面形状を有することにより、少なくとも撹拌部材の下流側における滞留箇所を軽減することができるため、拡散の性能を維持しつつ少なくとも撹拌部材の下流側における滞留を抑制することができる。また、このように流体の滞留を抑制することにより、製品への不純物及び異物の混入やフィルタの目詰まりを遡及的に防止することができる。
【0008】
本発明に係る静止型ミキサー部材において、前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の少なくとも下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状であることが好ましく、このように撹拌部材の少なくとも下流側の先端部分が尖鋭状に形成されることにより、撹拌部材の下流側における滞留箇所をほぼ無くすことができるため、流体の滞留をより一層抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係る静止型ミキサー部材において、前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の上流側及び下流側に向けてそれぞれ突出した形状であることが好ましく、これにより、撹拌部材の下流側だけでなく、撹拌部材の上流側における滞留をも抑制することができる。この場合において、前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の上流側及び下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状であることがさらに好ましく、これにより、撹拌部材の上流側及び下流側における滞留箇所をほぼ無くすことができるため、流体の滞留をより一層抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係る静止型ミキサーは、上記静止型ミキサー部材と、前記静止型ミキサー部材が内部に設けられた筒体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、拡散の性能を維持しつつ滞留の発生を抑制することが可能な静止型ミキサー部材及びこれを備える静止型ミキサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る静止型ミキサーの概略構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係る静止型ミキサーの撹拌部材の形状を示す概略斜視図である。
【図3】図1のA−A´線に沿った概略断面図である。
【図4】図1のB−B´線に沿った概略断面図である。
【図5】本実施形態に係る静止型ミキサーにおける、撹拌部材付近の流体の流動経路を模式的に示した説明図である。
【図6】図6(a)は、本実施形態に係る静止型ミキサーの静止型ミキサー部材における、流体の流動経路(流線)をシミュレーションした結果を示す説明図であり、図6(b)は、従来のスルーザミキサーにおける、流体の流動経路(流線)をシミュレーションした結果を示す説明図である。
【図7】図7(a)乃至図7(g)は、撹拌部材の形状の他の例を示す概略斜視図である。
【図8】従来の静止型ミキサーの概略構成を示す模式図である。
【図9】従来の静止型ミキサーにおける、仕切り板付近の流体の流動経路を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態に係る静止型ミキサーについて、図面に基づいて説明する。本実施形態に係る静止型ミキサー1は、主に、例えば10ポアズ以上の高粘度の流体を撹拌させ、拡散させる高粘度流体拡散用静止型ミキサーであって、例えば図1に示すように、円筒状に形成された筒体2と、筒体2の内部に設けられた静止型ミキサー部材4とを備えている。
【0014】
筒体2は、例えば配管であり、1又は複数の高粘度流体を筒体2内に流入させる1又は複数の流入口(図示せず)と、筒体2内から拡散された高粘度流体を流出させる流出口(図示せず)と、流入口及び流出口との間において静止型ミキサー部材4を収容する筒状部分とを有している。筒体2の流入口は、高粘度流体の供給源であるタンク(図示せず)や、高粘度流体を下流側に向けて流動させるためのポンプ(図示せず)等、適宜必要な装置と接続されている。筒体2の静止型ミキサー部材4よりも下流側には、高粘度流体内の異物を除去するためのフィルタ(図示せず)等が適宜設けられている。
【0015】
静止型ミキサー部材4は、図2乃至図4に示すように、高粘度流体の流動方向と交差する方向に延びる複数の長尺な角柱状の撹拌部材10を交互に交差させて組み付けることにより構成されている。各撹拌部材10の長手方向(すなわち、高粘度流体の流動方向と交差する方向)に垂直な断面形状は、図2に示すように、高粘度流体の上流側及び下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状であり、本実施形態においては断面ひし形形状に形成されている。これら複数の撹拌部材10は、図3に示すように、高粘度流体の流動方向と直交する方向(すなわち、筒体2の中心軸と直交する方向)の断面(図1のA−A´線に沿った断面)において、隣接する撹拌部材10同士が平行となるように設けられると共に、図4に示すように、高粘度流体の流動方向(すなわち、筒体2の中心軸の方向)の断面(図1のB−B´線に沿った断面)において、隣接する撹拌部材10同士が互いに直交するように、それぞれが筒体2の壁面に対して約45度の角度で傾いた状態で設けられている。また、撹拌部材10は、それぞれ、断面ひし形の一の頂点12が高粘度流体の上流側に位置し、この一の頂点12の対角上に位置する他の頂点14が高粘度流体の下流側に位置するように配置されている。
【0016】
このように構成された静止型ミキサー部材4は、筒体2内を流動する高粘度流体を各撹拌部材10の上流側において分流させると共に下流側において合流させ、高粘度流体の撹拌を行うように機能する。この際、撹拌部材10は、高粘度流体の上流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出し、かつ、高粘度流体の下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状を有しているため、図5に示すように、撹拌部材10の上流側及び下流側のいずれにおいても、高粘度流体の滞留箇所をほぼ無くすことができ、これにより、拡散の性能を維持しつつ撹拌部材10の上流側及び下流側における滞留を抑制することができる。また、このように高粘度流体の滞留を抑制することにより、製品への不純物や異物の混入やフィルタの目詰まりを防止することができる。
【0017】
図6(a)に、本実施形態に係る静止型ミキサー1における高粘度流体の流動経路(流線6)をシミュレーションした結果を示し、図6(b)に、従来の静止型ミキサー100(図8参照)における高粘度流体の流動経路(流線106)をシミュレーションした結果を示す。これら図6(a)及び図6(b)から明らかであるように、本実施形態に係る静止型ミキサー1の拡散性は、従来の静止型ミキサー100の拡散性と比較して衰えておらず、拡散の性能を維持できていることが明らかである。
【0018】
本実施形態に係る静止型ミキサー1において、撹拌部材10は、断面ひし形の角柱状であるとしたが、これに限定されず、流動する流体の少なくとも下流側に向けて突出した形状を有するものであれば良い。このような形状を有する撹拌部材の例を、図7(a)乃至図7(g)に例示的に示す。
【0019】
図7(a)に記載の撹拌部材20は、断面円形の円柱状に形成されたものであり、図7(b)に記載の撹拌部材22は、断面楕円形の円柱状に形成されたものである。これら図7(a)及び図7(b)の撹拌部材20、22は、本実施形態の撹拌部材10と比較すると上流側及び下流側において多少の滞留が生じるおそれがあるが、従来の仕切り板110のような大きな滞留が生じることを防止することができる。
【0020】
図7(c)に記載の撹拌部材24は、高粘度流体の上流側に向けて突出した半円状部分24aと、高粘度流体の下流側に向けて先端が尖鋭となるように直線的に突出した三角状部分24bとからなる柱状に形成されたものである。図7(d)に記載の撹拌部材26は、高粘度流体の上流側に向けて突出した半円状部分26aと、高粘度流体の下流側に向けてやや内側に窄む曲線を描くように突出し、かつ先端が尖鋭となる三角状部分26bとからなる柱状に形成されたものである。これら図7(c)及び図7(d)の撹拌部材24、26は、本実施形態の撹拌部材10と比較すると上流側において多少の滞留が生じるおそれがあるが、従来の仕切り板110のような大きな滞留が生じることを防止することができる。また、図7(d)の撹拌部材26は、本実施形態の撹拌部材10よりも、下流側における滞留をより効果的に抑制することができる。
【0021】
図7(e)に記載の撹拌部材28は、高粘度流体の下流側に向けて先端が尖鋭となるように直線的に突出した断面三角形の三角柱状に形成されたものである。図7(f)に記載の撹拌部材30は、高粘度流体の下流側に向けてやや内側に窄む曲線を描くように突出し、かつ先端が尖鋭となる断面略三角形の三角柱状に形成されたものである。図7(g)に記載の撹拌部材32は、高粘度流体の下流側に向けて突出した断面半円状の半円柱状に形成されたものである。これら図7(e)、図7(f)及び図7(g)の撹拌部材28、30、32は、上流側において高粘度流体の滞留が生じるおそれがあるが、下流側における高粘度流体の滞留を抑制することができる。特に、図7(f)の撹拌部材30は、本実施形態の撹拌部材10よりも、下流側における滞留をより効果的に抑制することができる。
【0022】
本実施形態に係る静止型ミキサー1において、静止型ミキサー部材4は、高粘度流体の流動方向と交差する方向に延びる長尺な複数の撹拌部材10を交互に交差させて組み付けることにより構成されるとしたが、これに限定されず、少なくとも流体の流動方向と交差する方向に延びる1以上の撹拌部材を備えていれば良く、例えば流体を撹拌可能な所定の配置で短尺な撹拌部材を複数組み合わせることにより構成されるとしても良く、また、1つの撹拌部材を旋回若しくは屈曲させることにより構成されるとしても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 静止型ミキサー、2 筒体、4 静止型ミキサー部材、10 撹拌部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流動する筒体の内部に設けられ、前記流体の流動方向と交差する方向に延びる撹拌部材を備える静止型ミキサー部材であって、
前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の少なくとも下流側に向けて突出した形状である
ことを特徴とする静止型ミキサー部材。
【請求項2】
前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の少なくとも下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の静止型ミキサー部材。
【請求項3】
前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の上流側及び下流側に向けてそれぞれ突出した形状である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の静止型ミキサー部材。
【請求項4】
前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の上流側及び下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状である
ことを特徴とする請求項3に記載の静止型ミキサー部材。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の静止型ミキサー部材と、
前記静止型ミキサー部材が内部に設けられた筒体とを備える
ことを特徴とする静止型ミキサー。
【請求項1】
流体が流動する筒体の内部に設けられ、前記流体の流動方向と交差する方向に延びる撹拌部材を備える静止型ミキサー部材であって、
前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の少なくとも下流側に向けて突出した形状である
ことを特徴とする静止型ミキサー部材。
【請求項2】
前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の少なくとも下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の静止型ミキサー部材。
【請求項3】
前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の上流側及び下流側に向けてそれぞれ突出した形状である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の静止型ミキサー部材。
【請求項4】
前記撹拌部材の前記交差する方向に垂直な断面形状は、前記流体の上流側及び下流側に向けて先端が尖鋭となるように先細り状に突出した形状である
ことを特徴とする請求項3に記載の静止型ミキサー部材。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか1項に記載の静止型ミキサー部材と、
前記静止型ミキサー部材が内部に設けられた筒体とを備える
ことを特徴とする静止型ミキサー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−94745(P2013−94745A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241100(P2011−241100)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
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