説明

静電誘導型機械電気変換素子

【課題】 エレクトレットを用いた静電誘導型機械電気変換素子において、より優れた出力を備えたものを提供すること。
【解決手段】 静電誘導型機械電気変換素子は、エレクトレットと、第一対向電極と、第二対向電極と、を備えている。第一対向電極は、エレクトレットにおける一対の主面のうち一方と対向するように配置されている。第二対向電極は、エレクトレットにおける一対の主面のうちの他方と対向するように配置されている。第一対向電極及び第二対向電極は、エレクトレットと厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電誘導型機械電気変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、エレクトレット(合成樹脂等の絶縁材料に電荷を注入したもの)を用いたものが知られている(例えば、特開昭58−6118号公報、特開2001−177899号公報、特開2006−180450号公報、特開2007−298297号公報、特開2010−136598号公報、等参照。)。
【発明の概要】
【0003】
従来のこの種の装置においては、出力の点で、まだまだ改善の余地があった。本発明は、かかる課題に対処するためになされたものである。
【0004】
<構成>
(1)本発明の静電誘導型機械電気変換素子は、エレクトレットと、第一対向電極と、第二対向電極と、を備えている。前記エレクトレットは、強誘電体からなる膜状あるいは板状の部材であって、厚さ方向(当該エレクトレットの厚さを規定する方向であって、典型的には主面と直交する方向)に沿って分極されている。前記第一対向電極は、前記エレクトレットにおける一対の前記主面のうち一方と対向するように配置されている。この第一対向電極は、前記エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられている。前記第二対向電極は、前記エレクトレットにおける一対の前記主面のうちの前記一方とは異なる他方と対向するように配置されている。この第二対向電極は、前記エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられている。
【0005】
(2)本発明の静電誘導型機械電気変換素子は、複数の機械電気変換ユニットを備えていてもよい。ここで、一つの前記機械電気変換ユニットは、前記エレクトレットと、前記第一対向電極と、前記第二対向電極と、を、それぞれ一つずつ備えている。そして、複数の前記機械電気変換ユニットは、前記厚さ方向に積層されている。すなわち、この場合、前記静電誘導型機械電気変換素子は、互いに前記厚さ方向に積層された、第一機械電気変換ユニット及び第二機械電気変換ユニットを備えている。なお、複数の前記機械電気変換ユニットが、異なる固有振動数を有していてもよい。
【0006】
(2−1)例えば、前記第一機械電気変換ユニットは、第一エレクトレットと、第一エレクトレット側第一対向電極と、第一エレクトレット側第二対向電極と、を備えている。また、前記第二機械電気変換ユニットは、第二エレクトレットと、第二エレクトレット側第一対向電極と、第二エレクトレット側第二対向電極と、を備えている。そして、前記第一エレクトレット側第一対向電極と、前記第一エレクトレットと、前記第一エレクトレット側第二対向電極と、前記第二エレクトレット側第一対向電極と、前記第二エレクトレットと、前記第二エレクトレット側第二対向電極と、が、この順に前記厚さ方向に沿って配置されている。
【0007】
ここで、前記第一エレクトレット側第一対向電極は、前記エレクトレットとしての前記第一エレクトレットにおける一対の前記主面のうち一方と対向するように配置されている。この第一エレクトレット側第一対向電極は、前記第一エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられている。前記第一エレクトレット側第二対向電極は、前記第一エレクトレットにおける一対の前記主面のうちの前記一方とは異なる他方と対向するように配置されている。この第一エレクトレット側第二対向電極は、前記第一エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられている。
【0008】
同様に、前記第二エレクトレット側第一対向電極は、前記エレクトレットとしての前記第二エレクトレットにおける一対の前記主面のうち一方と対向するように配置されている。この第二エレクトレット側第一対向電極は、前記第二エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられている。前記第二エレクトレット側第二対向電極は、前記第二エレクトレットにおける一対の前記主面のうちの前記一方とは異なる他方と対向するように配置されている。この第二エレクトレット側第二対向電極は、前記第二エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられている。この場合、前記第一エレクトレットと前記第二エレクトレットとは、前記厚さ方向に沿った分極方向が同一であってもよい。
【0009】
(2−2)例えば、前記静電誘導型機械電気変換素子は、第一エレクトレットと、第二エレクトレットと、第一エレクトレット側対向電極と、第二エレクトレット側対向電極と、中間電極と、を備えている。
【0010】
前記エレクトレットとしての前記第一エレクトレット及び前記第二エレクトレットは、強誘電体からなる膜状あるいは板状の部材であって、厚さ方向に沿って分極されている。前記第二エレクトレットは、前記第一エレクトレットに対して前記厚さ方向に隣接するように配置されている。前記第一エレクトレット側対向電極は、前記第一エレクトレットにおける一対の前記主面のうち一方であって前記第二エレクトレットと対向する側とは反対側の面と対向するように配置されている。この第一エレクトレット側対向電極は、前記第一エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられている。前記第二エレクトレット側対向電極は、前記第二エレクトレットにおける一対の前記主面のうち一方であって前記第一エレクトレットと対向する側とは反対側の面と対向するように配置されている。この第二エレクトレット側対向電極は、前記第二エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられている。前記中間電極は、前記第一エレクトレットと前記第二エレクトレットとの間に配置されている。
【0011】
この場合、前記第一エレクトレットと、前記第一エレクトレット側対向電極と、前記中間電極と、から、前記第一機械電気変換ユニットが構成されている。また、前記第二エレクトレットと、前記第二エレクトレット側対向電極と、前記中間電極と、から、前記第二機械電気変換ユニットが構成されている。すなわち、この場合、前記中間電極は、前記第一機械電気変換ユニットと前記第二機械電気変換ユニットとで共通に用いられるようになっている。なお、この場合、前記第一エレクトレットと前記第二エレクトレットとは、前記厚さ方向に沿った分極方向が反対でであってもよい。
【0012】
<作用・効果>
本発明の前記静電誘導型機械電気変換素子においては、前記エレクトレットの両面側にて機械電気変換が行われる。よって、従来のこの種の装置よりも出力が向上する。
【0013】
また、複数の前記機械電気変換ユニットが積層された構成によれば、出力がさらに向上する。この場合、複数の前記機械電気変換ユニットが異なる固有振動数を有することで、環境振動の周波数変化に広く対応した機械電気変換動作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の静電誘導型機械電気変換素子の一実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示されている静電誘導型機械電気変換素子の一変形例の概略構成を示す断面図である。
【図3】図1に示されている静電誘導型機械電気変換素子の他の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図4】図1に示されている静電誘導型機械電気変換素子の他の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図5】図1に示されている静電誘導型機械電気変換素子の他の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図6】図1に示されている静電誘導型機械電気変換素子の他の変形例の概略構成を示す断面図である。
【図7】図1に示されている静電誘導型機械電気変換素子の他の変形例の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を、実施例及び比較例を用いつつ説明する。なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。
【0016】
よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態や実施例の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態や実施例に対して施され得る各種の変更の例示(変形例:modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、主として末尾にまとめて記載されている。
【0017】
<概略構成>
図1は、本発明の静電誘導型機械電気変換素子の一実施形態の概略構成を示す断面図である。図1を参照すると、本実施形態の静電誘導型機械電気変換素子Dは、発電素子(環境振動で発電する機械電気変換素子)であって、複数の機械電気変換ユニット1,2,及び3と、第一出力部4と、第二出力部5と、ユニット支持部6と、を備えている。複数の機械電気変換ユニット1,2,及び3は、励振方向(図中z軸方向)に積層された状態で、ユニット支持部6によって支持されている。
【0018】
ユニット支持部6は、ダイアフラム6a,6b,6c及び6dと、ダイアフラム支持部6e,6f及び6gと、を備えている。ダイアフラム6a,6b,6c及び6dは、合成樹脂等からなる平板状あるいはフィルム状の部材であって、互いに平行に設けられるとともに、上述の励振方向に配列されている。具体的には、ダイアフラム6a,6b,6c及び6dは、平面視にて矩形状に形成されている。また、ダイアフラム6a,6b,6c及び6dは、この順に図中上方から下方に向かって配列されている。
【0019】
ダイアフラム支持部6eは、上端がダイアフラム6aの外端縁と接合されているとともに、下端がダイアフラム6bの外端縁と接合されている。同様に、ダイアフラム支持部6fは、上端がダイアフラム6bの外端縁と接合されているとともに、下端がダイアフラム6cの外端縁と接合されている。また、ダイアフラム支持部6gは、上端がダイアフラム6cの外端縁と接合されているとともに、下端がダイアフラム6dの外端縁と接合されている。すなわち、ダイアフラム6a,6b,6c及び6dは、外端縁がダイアフラム支持部6e,6f及び6gによって支持されている。
【0020】
機械電気変換ユニット1は、ダイアフラム6aとダイアフラム6bとダイアフラム支持部6eとによって囲まれた空間内に設けられている。具体的には、この機械電気変換ユニット1は、エレクトレット10と、第一対向電極11と、第二対向電極12と、第一対向電極カバー層13と、第二対向電極カバー層14と、エレクトレットカバー層15と、エレクトレットカバー層16と、を備えている。
【0021】
エレクトレット10は、強誘電体からなる膜状あるいは板状の部材であって、厚さ方向(当該エレクトレット10の厚さを規定する方向であって、典型的には図中xy平面と平行な表面である一対の主面としての第一主面MS1及び第二主面MS2と直交する方向:上述の励振方向と平行)に沿って分極されている。具体的には、エレクトレット10は、分極方向の厚さ方向(図中z軸方向)における成分が、図中z軸正方向(ダイアフラム6bからダイアフラム6aに向かう方向)となるように形成されている。
【0022】
第一対向電極11及び第二対向電極12は、エレクトレット10に対して上述の励振方向に沿って相対移動可能に設けられている。具体的には、第一対向電極11は、ダイアフラム6aにおけるエレクトレット10側(第一主面MS1側)の表面上にて、エレクトレット10に対応する位置に設けられている。同様に、第二対向電極12は、ダイアフラム6bにおけるエレクトレット10側(第二主面MS2側)の表面上にて、エレクトレット10に対応する位置に設けられている。
【0023】
第一対向電極11の、エレクトレット10側の表面は、絶縁層である第一対向電極カバー層13によって覆われている。同様に、第二対向電極12の、エレクトレット10側の表面は、絶縁層である第二対向電極カバー層14によって覆われている。また、エレクトレット10における第一主面MS1は、絶縁層であるエレクトレットカバー層15によって覆われている。同様に、エレクトレット10における第二主面MS2は、エレクトレットカバー層16によって覆われている。
【0024】
機械電気変換ユニット2は、ダイアフラム6bとダイアフラム6cとダイアフラム支持部6fとによって囲まれた空間内に設けられている。具体的には、この機械電気変換ユニット2は、エレクトレット20と、第一対向電極21と、第二対向電極22と、第一対向電極カバー層23と、第二対向電極カバー層24と、エレクトレットカバー層25と、エレクトレットカバー層26と、を備えている。
【0025】
エレクトレット20は、強誘電体からなる膜状あるいは板状の部材であって、厚さ方向に沿って分極されている。具体的には、エレクトレット20は、分極方向の厚さ方向における成分が、図中z軸正方向(ダイアフラム6cからダイアフラム6bに向かう方向)となるように形成されている。すなわち、エレクトレット20は、エレクトレット10とほぼ同じ方向に分極されている。
【0026】
第一対向電極21及び第二対向電極22は、エレクトレット20に対して上述の励振方向に沿って相対移動可能に設けられている。具体的には、第一対向電極21は、ダイアフラム6bにおけるエレクトレット20側(第一主面MS1側)の表面上にて、エレクトレット20に対応する位置に設けられている。同様に、第二対向電極22は、ダイアフラム6cにおけるエレクトレット20側(第二主面MS2側)の表面上にて、エレクトレット20に対応する位置に設けられている。
【0027】
第一対向電極21の、エレクトレット20側の表面は、絶縁層である第一対向電極カバー層23によって覆われている。同様に、第二対向電極22の、エレクトレット20側の表面は、絶縁層である第二対向電極カバー層24によって覆われている。また、エレクトレット20における第一主面MS1及び第二主面MS2は、それぞれ、絶縁層であるエレクトレットカバー層25及び26によって覆われている。
【0028】
機械電気変換ユニット3は、ダイアフラム6cとダイアフラム6dとダイアフラム支持部6gとによって囲まれた空間内に設けられている。具体的には、この機械電気変換ユニット3は、エレクトレット30と、第一対向電極31と、第二対向電極32と、第一対向電極カバー層33と、第二対向電極カバー層34と、エレクトレットカバー層35と、エレクトレットカバー層36と、を備えている。
【0029】
エレクトレット30は、強誘電体からなる膜状あるいは板状の部材であって、厚さ方向に沿って分極されている。具体的には、エレクトレット30は、分極方向の厚さ方向における成分が、図中z軸正方向(ダイアフラム6dからダイアフラム6cに向かう方向)となるように形成されている。すなわち、エレクトレット30は、エレクトレット10及び20とほぼ同じ方向に分極されている。
【0030】
第一対向電極31及び第二対向電極32は、エレクトレット30に対して上述の励振方向に沿って相対移動可能に設けられている。具体的には、第一対向電極31は、ダイアフラム6cにおけるエレクトレット30側(第一主面MS1側)の表面上にて、エレクトレット30に対応する位置に設けられている。同様に、第二対向電極32は、ダイアフラム6dにおけるエレクトレット30側(第二主面MS2側)の表面上にて、エレクトレット30に対応する位置に設けられている。
【0031】
第一対向電極31の、エレクトレット30側の表面は、絶縁層である第一対向電極カバー層33によって覆われている。同様に、第二対向電極32の、エレクトレット30側の表面は、絶縁層である第二対向電極カバー層34によって覆われている。また、エレクトレット30における第一主面MS1及び第二主面MS2は、それぞれ、絶縁層であるエレクトレットカバー層35及び36によって覆われている。
【0032】
第一出力部4は、第一出力端子41と、第一接地側端子42と、を備えている。第一出力端子41は、複数の第一対向電極11,21及び31と結合(電気的に接続)されている。同様に、第二出力部5は、第二出力端子51と、第二接地側端子52と、を備えている。第二出力端子51は、複数の第二対向電極12,22及び32と結合されている。
【0033】
<作用・効果>
かかる構成を有する本実施形態の静電誘導型機械電気変換素子Dが励振されると、機械電気変換ユニット1においては、エレクトレット10と第一対向電極11との上述の励振方向(当該エレクトレット10の厚さ方向)の相対移動により、第一対向電極11に誘起される電荷の変動が生じる。このようにして、当該相対移動の機械的エネルギーが電気エネルギーに変換される。同様に、エレクトレット10と第一対向電極11との上述の励振方向の相対移動により、第二対向電極12に誘起される電荷の変動が生じる。
【0034】
このように、機械電気変換ユニット1においては、エレクトレット10の両面側にて機械電気変換が行われ、これにより、第一出力部4及び第二出力部5の双方にて出力を得ることができる。よって、本実施形態の構成によれば、従来のこの種の装置よりも出力が向上する。すなわち、本実施形態の構成によれば、従来のこの種の装置に比べて、同一の機械的エネルギーからの電気エネルギーへの変換量が倍増される。
【0035】
さらに、本実施形態の構成においては、複数の機械電気変換ユニット1,2,及び3が、励振方向(図中z軸方向)に積層されている。よって、機械電気変換ユニット2及び3によっても、機械電気変換ユニット1と同様に、エレクトレット20及び30の両面側にて機械電気変換が行われ、これにより、第一出力部4及び第二出力部5の双方にて出力が得られる。そして、複数の機械電気変換ユニット1,2,及び3のそれぞれの出力の合計が、第一出力部4及び第二出力部5の双方にて出力される。したがって、本実施形態の構成によれば、従来のこの種の装置よりも出力がさらにいっそう向上する。
【0036】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態や具体例は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の具現化の一例を単に示したものにすぎないのであって、本発明はもとより上述の実施形態や具体例によって何ら限定されるべきものではない。よって、上述の実施形態や具体例に対して、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0037】
以下、変形例について幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態における各構成要素と同様の構成・機能を有する構成要素については、本変形例においても同一の名称及び同一の符号が付されているものとする。そして、当該構成要素の説明については、上述の実施形態における説明が、矛盾しない範囲で適宜援用され得るものとする。
【0038】
もっとも、変形例とて、下記のものに限定されるものではないことは、いうまでもない。本発明を、上述の実施形態や下記変形例の記載に基づいて限定解釈することは、(特に先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
【0039】
また、上述の実施形態の構成、及び下記の各変形例に記載された構成の全部又は一部が、技術的に矛盾しない範囲において、適宜複合して適用され得ることも、いうまでもない。
【0040】
本発明は、上述の具体的な構成に何ら限定されない。すなわち、上述の具体的な構成に対して、本発明の範囲内において種々の変更が施され得ることは、当然である。例えば、各部材の形状や材質についても、上述の具体例に何ら限定されるものではない。
【0041】
図2に示されているように、第一対向電極カバー層13,23及び33は、省略され得る。あるいは、第二対向電極カバー層14,24及び34は、省略され得る。また、図3に示されているように、エレクトレットカバー層15,25及び35は、省略され得る。あるいは、エレクトレットカバー層16,26及び36は、省略され得る。さらには、第一対向電極カバー層13,23及び33のうちの一部は、省略され得る(第二対向電極カバー層14,24及び34、エレクトレットカバー層15,25及び35、並びにエレクトレットカバー層16,26及び36も、同様である。)。すなわち、静電誘導型機械電気変換素子Dの設置態様に応じて、第一対向電極カバー層13,23及び33と、第二対向電極カバー層14,24及び34と、エレクトレットカバー層15,25及び35と、エレクトレットカバー層16,26及び36と、のうちの、一部あるいは全部が、適宜省略され得る。
【0042】
図4に示されているように、エレクトレット10と第一対向電極11との間、及びエレクトレット10と第二対向電極12との間の空間を埋めるように、ゲル状の絶縁材料からなる絶縁充填層71が設けられていてもよい。かかる絶縁充填層71は、ダイアフラム6aとダイアフラム6bとダイアフラム支持部6eとによって囲まれた空間内に充填され得る。この場合、第一対向電極カバー層13、第二対向電極カバー層14、エレクトレットカバー層15、及びエレクトレットカバー層16は、省略され得る(もっとも、これらのうちの全部あるいは一部が設けられていても、特段差し支えない。)。同様に、機械電気変換ユニット2及び3は、それぞれ、絶縁充填層72及び73を備えていてもよい。
【0043】
図5に示されているように、共振周波数を調整するための部材である共振周波数調整錘81が設けられていてもよい。この共振周波数調整錘81は、例えば、図5に示されているように、ダイアフラム6aにおける第一対向電極11が設けられている面とは反対側の面に設けられていてもよい。
【0044】
上述の各具体例のように、複数の機械電気変換ユニット1,2…が励振方向に積層されている場合、それぞれの固有振動数(共振周波数)が異なることで、環境振動の周波数変化に広く対応した発電動作が可能になる。
【0045】
具体的には、固有振動数は、上述の共振周波数調整錘81によって調整され得る。あるいは、それぞれの固有振動数は、電極(第一対向電極11,21…、第二対向電極12,22…)の材質や厚さによって調整され得る。あるいは、それぞれの固有振動数は、ダイアフラム6a,6b,6c及び6dの材質、形状(厚さ)、等によって調整され得る。例えば、図6に示されているように、ダイアフラム6a,6b,6c及び6dの厚さをそれぞれ異ならせることで、複数の機械電気変換ユニット1,2…のそれぞれの固有振動数を容易に異ならしめることができる。
【0046】
図7は、図1に示されている静電誘導型機械電気変換素子Dの他の変形例の概略構成を示す断面図である。図7を参照すると、本変形例においては、エレクトレット20は、分極方向の厚さ方向における成分が、エレクトレット10及び30と反対方向となるように分極されている。
【0047】
この場合、図1等に示されている電極配置に代えて、図7に示されている電極配置が利用可能である。図7に示されている構成においては、エレクトレット10等と平行な薄膜状の電極91,92,93及び94が、図中上方から下方に向けて配列されている。ダイアフラム6aは、フィルム6a’と、電極91と、フィルム6a”と、をこの順に積層(ラミネート)することで形成されている。同様に、ダイアフラム6bは、フィルム6b’と、電極92と、フィルム6b”と、をこの順に積層(ラミネート)することで形成されている。また、ダイアフラム6cは、フィルム6c’と、電極93と、フィルム6c”と、をこの順に積層(ラミネート)することで形成されている。また、ダイアフラム6dは、フィルム6d’と、電極94と、フィルム6d”と、をこの順に積層(ラミネート)することで形成されている。
【0048】
すなわち、この場合、機械電気変換ユニット1は、エレクトレット10と、電極91及び92と、から構成されている。また、機械電気変換ユニット2は、エレクトレット20と、電極92及び93と、から構成されている。同様に、機械電気変換ユニット3は、エレクトレット30と、電極93及び94と、から構成されている。このように、電極92は、機械電気変換ユニット1と機械電気変換ユニット2とで共通に用いられる「中間電極」として機能する。同様に、電極93は、機械電気変換ユニット2と機械電気変換ユニット3とで共通に用いられる「中間電極」として機能する。かかる構成によれば、電極数が低減される。
【0049】
分極方向は、厚さ方向と平行でなくてもよい。すなわち、分極方向とz軸方向とのなす角度α[°]が−45≦α≦+45であればよい。
【0050】
本発明は、一つの機械電気変換ユニット1のみを備えた構成を含むことは、いうまでもない。すなわち、本発明においては、機械電気変換ユニットの積層数や積層の有無について、何ら限定はない。
【0051】
その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。
【0052】
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。さらに、本明細書にて引用した先行出願や各公報の内容(明細書及び図面を含む)は、本明細書の一部を構成するものとして適宜援用され得る。
【符号の説明】
【0053】
D…静電誘導型機械電気変換素子
1…機械電気変換ユニット 10…エレクトレット
11…第一対向電極 12…第二対向電極
13…第一対向電極カバー層 14…第二対向電極カバー層
15…エレクトレットカバー層 16…エレクトレットカバー層
2…機械電気変換ユニット 20…エレクトレット
21…第一対向電極 22…第二対向電極
23…第一対向電極カバー層 24…第二対向電極カバー層
25…エレクトレットカバー層 26…エレクトレットカバー層
3…機械電気変換ユニット 30…エレクトレット
31…第一対向電極 32…第二対向電極
33…第一対向電極カバー層 34…第二対向電極カバー層
35…エレクトレットカバー層 36…エレクトレットカバー層
4…第一出力部 41…第一出力端子 42…第一接地側端子
5…第二出力部 51…第二出力端子 52…第二接地側端子
6…ユニット支持部
6a…ダイアフラム 6a’…フィルム 6a”…フィルム
6b…ダイアフラム 6b’…フィルム 6b”…フィルム
6c…ダイアフラム 6c’…フィルム 6c”…フィルム
6d…ダイアフラム 6d’…フィルム 6d”…フィルム
6e…ダイアフラム支持部 6f…ダイアフラム支持部 6g…ダイアフラム支持部
71…絶縁充填層 72…絶縁充填層 73…絶縁充填層
81…共振周波数調整錘
91…電極 92…電極 93…電極
94…電極
MS1…第一主面 MS2…第二主面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開昭58−6118号公報
【特許文献2】特開2001−177899号公報
【特許文献3】特開2006−180450号公報
【特許文献4】特開2007−298297号公報
【特許文献5】特開2010−136598号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に沿って分極された強誘電体膜からなる、エレクトレットと、
前記エレクトレットにおける一対の主面のうち一方と対向するように配置されていて、前記エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられた、第一対向電極と、
前記エレクトレットにおける一対の前記主面のうちの前記一方とは異なる他方と対向するように配置されていて、前記エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられた、第二対向電極と、
を備えたことを特徴とする、静電誘導型機械電気変換素子。
【請求項2】
厚さ方向に沿って分極された強誘電体膜からなる、エレクトレットと、
前記エレクトレットにおける一対の主面のうち一方と対向するように配置されていて、前記エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられた、第一対向電極と、
前記エレクトレットにおける一対の前記主面のうちの前記一方とは異なる他方と対向するように配置されていて、前記エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられた、第二対向電極と、
を備えた、複数の機械電気変換ユニットが、前記厚さ方向に積層されたことを特徴とする、静電誘導型機械電気変換素子。
【請求項3】
請求項2に記載の、静電誘導型機械電気変換素子であって、
複数の前記機械電気変換ユニットが、異なる固有振動数を有することを特徴とする、静電誘導型機械電気変換素子。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の、静電誘導型機械電気変換素子であって、
前記厚さ方向に沿って分極された強誘電体膜からなる、第一エレクトレットと、
前記第一エレクトレットにおける一対の前記主面のうち一方と対向するように配置されていて、前記第一エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられた、第一エレクトレット側第一対向電極と、
前記第一エレクトレットにおける一対の前記主面のうちの前記一方とは異なる他方と対向するように配置されていて、前記第一エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられた、第一エレクトレット側第二対向電極と、
を備えた、第一機械電気変換ユニットと、
前記厚さ方向に沿って分極された強誘電体膜からなる、第二エレクトレットと、
前記第二エレクトレットにおける一対の前記主面のうち一方と対向するように配置されていて、前記第二エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられた、第二エレクトレット側第一対向電極と、
前記第二エレクトレットにおける一対の前記主面のうちの前記一方とは異なる他方と対向するように配置されていて、前記第二エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられた、第二エレクトレット側第二対向電極と、
を備えた、第二機械電気変換ユニットと、
を備え、
前記第一エレクトレット側第一対向電極と、前記第一エレクトレットと、前記第一エレクトレット側第二対向電極と、前記第二エレクトレット側第一対向電極と、前記第二エレクトレットと、前記第二エレクトレット側第二対向電極と、が、この順に前記厚さ方向に沿って配置されたことを特徴とする、静電誘導型機械電気変換素子。
【請求項5】
請求項4に記載の、静電誘導型機械電気変換素子であって、
前記第一エレクトレットと前記第二エレクトレットとは、前記厚さ方向に沿った分極方向が同一であることを特徴とする、静電誘導型機械電気変換素子。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載の、静電誘導型機械電気変換素子であって、
前記厚さ方向に沿って分極された強誘電体膜からなる、第一エレクトレットと、
前記厚さ方向に沿って分極された強誘電体膜からなり、前記第一エレクトレットに対して前記厚さ方向に隣接するように配置された、第二エレクトレットと、
前記第一エレクトレットにおける一対の前記主面のうち一方であって前記第二エレクトレットと対向する側とは反対側の面と対向するように配置されていて、前記第一エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられた、第一エレクトレット側対向電極と、
前記第二エレクトレットにおける一対の前記主面のうち一方であって前記第一エレクトレットと対向する側とは反対側の面と対向するように配置されていて、前記第二エレクトレットと前記厚さ方向に沿って相対移動可能に設けられた、第二エレクトレット側対向電極と、
前記第一エレクトレットと前記第二エレクトレットとの間に配置された、中間電極と、
を備えたことを特徴とする、静電誘導型機械電気変換素子。
【請求項7】
請求項6に記載の、静電誘導型機械電気変換素子であって、
前記第一エレクトレットと前記第二エレクトレットとは、前記厚さ方向に沿った分極方向が反対であることを特徴とする、静電誘導型機械電気変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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