非ガウス性振動制御装置
【課題】 目標とするスペクトルだけでなく、目標とする非ガウス特性を有する振動を供試体に与えるよう制御することの可能な振動制御装置を提供する。
【解決手段】
制御スペクトル算出手段22は、目標スペクトルと応答スペクトルとを比較し、両者が等しくなるように制御スペクトルを算出する。ガウス性ランダム信号生成手段26は、制御スペクトルの各周波数成分にランダムな位相を与えて逆フーリエ変換を行い、ガウス性ランダム信号を生成する。変換手段28は、ガウス性ランダム信号を変換特性に基づいて変換し、非ガウス性ランダム信号に変換する。ドライブ信号生成手段32は、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を生成する。ドライブ信号は、D/A変換器16によってアナログ信号に変換され、振動試験機2に与えられる。
【解決手段】
制御スペクトル算出手段22は、目標スペクトルと応答スペクトルとを比較し、両者が等しくなるように制御スペクトルを算出する。ガウス性ランダム信号生成手段26は、制御スペクトルの各周波数成分にランダムな位相を与えて逆フーリエ変換を行い、ガウス性ランダム信号を生成する。変換手段28は、ガウス性ランダム信号を変換特性に基づいて変換し、非ガウス性ランダム信号に変換する。ドライブ信号生成手段32は、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を生成する。ドライブ信号は、D/A変換器16によってアナログ信号に変換され、振動試験機2に与えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標とする非ガウス性振動が、供試体に与えられるように振動試験機を制御する振動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸送中や稼働中に被る振動による影響をシミュレートするため、供試体に所望の振動を与える振動試験が行われている。振動試験において、所望の振動となるように振動試験機を制御するのが振動制御装置である。
【0003】
現実に加えられる振動を記録しておき、この振動を供試体に与えることができれば、正確な振動試験を行うことが可能である。しかし、実際の振動波形自体を記録し再現するためには、膨大な記録容量が必要であるため、一般的にはあまり用いられていない。
【0004】
一方で、正弦波による振動を与える試験も行われている。この場合、正弦波を出力するだけであるから制御は容易であるが、現実に加えられる振動との乖離が大きすぎるという問題がある。
【0005】
そこで、現実に加えられる振動の周波数特性(パワースペクトル密度)を算出し、当該目的とするパワースペクトル密度を有する振動を供試体に加えるランダム振動試験が行われている。
【0006】
図20に、特許文献1に開示された従来のランダム振動試験のための振動制御装置を示す。振動試験機2自体も周波数特性を有するので、目標とするスペクトルを有する振動を与えたとしても、そのとおりの振動が供試体4には与えられない。したがって、振動制御装置により、供試体4の振動波形のスペクトル(応答スペクトル)が、目標スペクトルに等しくなるように、フィードバック制御を行っている。
【0007】
振動試験機2に固定された供試体4は、振動試験機2によって振動させられる。供試体4の振動は、加速度センサ6によって検出され、A/D変換器8によってディジタル信号である応答信号とされる。フーリエ変換手段10は、応答信号をフーリエ変換し、応答スペクトルを算出する。
【0008】
制御スペクトル算出手段12は、目標スペクトルと応答スペクトルとを比較し、両者が等しくなるように制御スペクトルを算出する。ドライブ信号生成手段14は、制御スペクトルの各周波数成分にランダムな位相を与えて逆フーリエ変換を行い、ドライブ信号を生成する。
【0009】
D/A変換器16は、生成されたドライブ信号をアナログ信号に変換し、振動試験機2に与える。
【0010】
以上のようにして、目標スペクトルを有する振動を供試体4に与えるよう制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−068718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の振動制御装置では、目標とするスペクトルを有する振動を供試体4に与えることはできるものの、その振動の確率密度分布は、図21の実線に示すようにガウス分布(正規分布)となる。しかし、現実の振動は非ガウス分布となることが多いにもかかわらず、従来の振動制御装置では、非ガウス特性を有する振動を供試体に与えることはできなかった。
【0013】
この発明は、上記の問題を解決して、目標とするスペクトルだけでなく、目標とする非ガウス特性を有する振動を供試体に与えるよう制御することの可能な振動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)(3)(9)この発明に係る振動制御装置は、振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段とを備えている。
【0015】
目標とするスペクトルを有する振動が供試体に与えられるようにフィードバック制御を行い、さらに、生成した非ガウス性ランダム信号と等しい振動を供試体に与えるようにしているので、目標スペクトルを有し目標非ガウス特性を有する振動を与えることができる。
【0016】
(2)(4)(10)この発明に係る振動制御装置は、振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、前記センサからの応答信号の応答非ガウス特性を算出する非ガウス特性算出手段と、応答非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較し、両者が等しくなるような変換特性を算出する変換特性算出手段と、非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段とを備えている。
【0017】
したがって、制御特性をリアルタイムに更新するので、より精度良く非ガウス性ランダム信号と同じ振動を供試体に与えることができる。
【0018】
(5)この発明に係る振動制御装置は、非ガウス性ランダム信号生成手段は、制御スペクトルを時間関数に変換し、ガウス性ランダム信号を得るガウス性ランダム信号生成手段と、前記算出されたガウス性ランダム信号を前記変換特性に基づいて変換し、非ガウス性ランダム信号に変換する変換手段とを備えたことを特徴としている。
【0019】
したがって、変換特性を制御することにより、容易に所望の非ガウス性ランダム信号を得ることができる。
【0020】
(6)この発明に係る振動制御装置は、応答スペクトル生成手段は、供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を、前記変換手段の変換特性に基づいて、ガウス性応答信号に変換する非ガウス−ガウス変換手段と、前記ガウス性応答信号を周波数関数に変換し、ガウス性応答スペクトルを得るガウス性応答スペクトル生成手段とを備えたことを特徴としている。
【0021】
したがって、応答スペクトル算出手段は、ガウス性の応答信号に基づいて応答スペクトルを算出することができ、精度良くフィードバック制御を行うことができる。
【0022】
(7)この発明に係る振動制御装置は、非ガウス性ランダム信号生成手段は、制御スペクトルに基づいて時間関数に変換する際に、制御スペクトルの各成分に順次与える位相差の確率密度分布を前記変換特性として制御することにより、生成される非ガウス性ランダム信号の非ガウス特性を制御することを特徴としている。
【0023】
したがって、制御スペクトルから直接的に非ガウス性ランダム信号を生成するので、不要なスペクトル成分が生じる可能性が少なく、制御スペクトル算出手段によるフィードバック制御の精度が向上する。
【0024】
(8)この発明に係る振動制御装置は、非ガウス性ランダム信号生成手段が、前記位相差の確率密度分布の少なくとも平均または分散を前記変換特性として制御することにより、生成される非ガウス性ランダム信号の非ガウス特性を制御することを特徴としている。
【0025】
したがって、所望の非ガウス性ランダム信号を生成することができる。
【0026】
(9)この発明に係る振動制御装置は、前記振動試験機は、前記供試体に対して複数軸方向からの振動を与える複数の振動発生器を有しており、前記応答スペクトル算出手段、前記制御スペクトル算出手段、前記非ガウス性ランダム信号生成手段が、複数軸のそれぞれの軸のために設けられ、前記制御特性更新手段は、各軸のための応答信号および各軸のためのドライブ信号に基づいて、前記各軸のための応答信号と前記各軸のためのドライブ信号との組み合わせに係る制御特性を演算し、前記ドライブ信号生成手段は、各軸のための非ガウス性ランダム信号と前記組み合わせに係る制御特性に基づいて、各軸のためのドライブ信号を生成する。
【0027】
したがって、多軸方向の振動制御を行うことができる。
【0028】
(10)この発明に係る振動制御装置は、振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標とする任意の確率密度分布にしたがった波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、制御スペクトルを時間関数に変換し、ガウス分布による確率密度分布を有するガウス性ランダム信号を得るガウス性ランダム信号生成手段と、ZMNL関数に基づいて、前記ガウス分布による確率密度分布を有するガウス性ランダム信号を、前記目標とする任意の確率密度分布を有する非ガウス性ランダム信号に変換する非ガウス性ランダム信号生成手段と、前記非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段とを備えている。
【0029】
したがって、目標とする振動の確率密度分布を与えることにより、これに合致する振動を供試体に与えることができる。
【0030】
「応答スペクトル算出手段」は、実施形態においては、ステップS12がこれに対応する。
【0031】
「制御スペクトル算出手段」は、実施形態においては、ステップS13がこれに対応する。
【0032】
「非ガウス性ランダム信号生成手段」は、実施形態においては、ステップS2がこれに対応する。
【0033】
「ガウス性ランダム信号生成手段」は、実施形態においては、ステップS21〜S25がこれに対応する。
【0034】
「変換手段」は、実施形態においては、ステップS26がこれに対応する。
【0035】
「波形制御手段」は、実施形態においては、ステップS3がこれに対応する。
【0036】
「ドライブ信号生成手段」は、実施形態においては、ステップS31〜S33がこれに対応する。
【0037】
「制御特性更新手段」は、実施形態においては、ステップS35、S36がこれに対応する。
【0038】
「非ガウス特性算出手段」は、実施形態においては、ステップS251、S252がこれに対応する。
【0039】
「変換特性算出手段」は、実施形態においては、ステップS253がこれに対応する。
【0040】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む概念である。
【0041】
この発明において「等しくなるように制御する」とは、両者が等しくなるような方向に制御を行うという意味であり、たとえばフィードバック制御がこの概念に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第一の実施形態による振動制御装置の機能ブロック図である。
【図2】振動制御装置のハードウエア構成である。
【図3】制御プログラム44のフローチャートである。
【図4】制御スペクトル生成処理のフローチャートである。
【図5】非ガウス性ランダム信号の生成処理のフローチャートである。
【図6】波形制御処理のフローチャートである。
【図7】目標スペクトル、目標非ガウス特性を示す図である。
【図8】生成された複数フレームのガウス性ランダム信号を示す図である。
【図9】ガウス性ランダム信号に窓関数を乗じ、ずらせながら重ね合わせる処理を説明するための図である。
【図10】ZMNL関数の一例である。
【図11】非ガウス性ランダム信号に基づいて、ドライブ信号を得るための処理を説明するための図である。
【図12】第二の実施形態による振動制御装置の機能ブロック図である。
【図13】制御プログラム44のフローチャートである。
【図14】変換特性の修正処理のフローチャートである。
【図15】標準偏差とクルトシスとの関係を示す図である。
【図16】逆変換手段19を設けた場合の例を示す図である。
【図17】他の実施形態によるランダム信号生成を説明するための図である。
【図18】ZMNL関数を決定する処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】多軸制御を行う場合の例を示す図である。
【図20】従来の振動制御装置を示す図である。
【図21】応答信号の確率密度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
1.第一の実施形態
1.1機能ブロック図
図1に、この発明の第一実施形態による振動制御装置の機能ブロック図を示す。振動試験機2に固定された供試体4は、振動試験機2によって振動させられる。供試体4の振動は、加速度センサ6によって検出され、A/D変換器8によってディジタル信号である応答信号とされる。応答スペクトル算出手段20は、応答信号をフーリエ変換し、応答スペクトルを算出する。
【0044】
制御スペクトル算出手段22は、目標スペクトルと応答スペクトルとを比較し、両者が等しくなるように制御スペクトルを算出する。つまり、フィードバック制御を行う。
【0045】
ガウス性ランダム信号生成手段26は、制御スペクトルの各周波数成分にランダムな位相を与えてフーリエ変換を行い、ガウス性ランダム信号を生成する。変換手段28は、ガウス性ランダム信号を変換特性に基づいて変換し、非ガウス性ランダム信号に変換する。なお、この実施形態では、ガウス性ランダム信号生成手段26と変換手段28によって、非ガウス性ランダム信号生成手段24が構成されている。
【0046】
ドライブ信号生成手段32は、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を生成する。ドライブ信号は、D/A変換器16によってアナログ信号に変換され、振動試験機2に与えられる。
【0047】
制御特性更新手段34は、ドライブ信号と応答信号に基づいて、系の伝達特性を算出し、その逆特性である制御特性を更新する。更新された制御特性は、ドライブ信号生成手段32に与えられる。なお、この実施形態では、制御特性更新手段34とドライブ信号生成手段32によって、波形制御手段30が構成されている。
【0048】
以上の処理を要約すると、次のようになる。応答スペクトル算出手段20と制御スペクトル算出手段22によって、応答スペクトルが目標スペクトルに等しくなるようにフードバック制御が行われ、制御スペクトルが算出される。非ガウス性ランダム信号生成手段24は、この制御スペクトルを有する非ガウス性ランダム信号を生成する。波形制御手段30は、このようにして生成された非ガウス性ランダム信号の波形にしたがって供試体4が振動するように制御する。
【0049】
以上のようにして、供試体4に対し、変換手段28の変換特性を設定することにより目標とする非ガウス特性を有し、かつ、目標スペクトルを有する振動を、供試体4に与えることができる。
【0050】
1.2ハードウエア構成
図2に、図1の振動制御装置をディジタルシグナルプロセッサ(DSP)を用いて実現した場合のハードウエア構成を示す。
【0051】
DSP40には、フラッシュROM42、メモリ46、D/A変換器16、A/D変換器8が接続されている。D/A変換器16は、ディジタルデータとしてのドライブ信号をアナログ信号に変換して、振動試験機2に与える。振動試験機2によって振動させられた供試体4の振動は、加速度センサ6によって検出され、アナログの応答信号として出力される。A/D変換器8は、アナログ信号としての応答信号をディジタルデータに変換する。フラッシュROM42には、制御のための制御プログラム44が記録されている。
【0052】
なお、DSP40には、MPU、タッチパネルディスプレイなど(図示せず)が接続されており、操作者が目標スペクトルを設定したり、目標ガウス特性を設定したりすることができるようになっている。
【0053】
1.3制御処理
図3に、制御プログラム44のフローチャートを示す。ここでは、操作者により、図7に示すように、目標スペクトル、目標とするクルトシス(尖度)とスキューネス(歪度)が設定され、メモリ46に記録されているものとして説明を進める。
【0054】
ここで、クルトシスとは、図21に示す振動波形の確率密度分布において、その分布形状の尖っている度合いを表す尺度である。ガウス性の振動波形においては、クルトシスは3である。非ガウス性振動波形においては、クルトシスはこれより大きくなる(図21の破線参照)。これは、非ガウス性振動波形では、振動波形の平均値に対して、振動波形のピーク値が大きく突出していることを表している。また、スキューネスとは、振動波形の歪み(非対称度)である。ガウス性の振動波形においては、スキューネスは0である。非ガウス性振動波形においては、スキューネスが0からずれることがある。たとえば、図21の波線に示すように、平均値(つまりスキューネス)が0.5となっている。
【0055】
まず、DSP40は、A/D変換器8から応答信号を取得し、制御スペクトルを生成する(ステップS1)。次に、この制御スペクトルの周波数特性を有する非ガウス性ランダム信号を生成する(ステップS2)。続いて、この非ガウス性ランダム信号に基づいて波形制御を行い、供試体4に振動を与える(ステップS3)。このような制御を繰り返し、目標スペクトル、目標非ガウス特性を有する振動を、供試体4に与えている。
【0056】
図4に、制御スペクトル生成(ステップS1)の詳細フローチャートを示す。DSP40は、まず、A/D変換器8から、応答信号を取得する(ステップS11)。
【0057】
次に、DSP40は、取得した応答信号をフーリエ変換(FFT)し、応答信号のパワースペクトル(応答スペクトルという)を算出する(ステップS12)。ディジタルデータとしての応答信号に対しFFTを行うので、応答スペクトルは線スペクトルとなる。続いて、DSP40は、この応答スペクトルを目標とするパワースペクトル(目標スペクトルという)と比較し、両者が合致するように、制御スペクトルを修正する(ステップS13)。なお、この制御スペクトルも線スペクトルとなる。後述のように、このようにして修正された制御スペクトルを有する信号が振動試験機2に与えられるので、フィードバック制御により、応答スペクトルが目標スペクトルに等しく(あるいは近く)なる。
【0058】
図5に、非ガウス性ランダム信号の生成処理(ステップS2)の詳細フローチャートを示す。まず、DSP40は、制御スペクトルの各ライン(線スペクトルの各周波数成分)に、順次、ランダムな位相θを与える(ステップS21)。ここでは、0〜2πの一様乱数をランダム位相θとして与えるようにしている。
【0059】
次に、DSP40は、ランダムな位相θを与えられた制御スペクトルに対し、逆フーリエ変換(逆FFT)を行い、複数フレーム分(たとえば、12フレーム分)のガウス性ランダム信号(時間軸信号)を生成する。ここで、フレームとは、所定の時間長をいう。
【0060】
1つの制御スペクトルに対して、ランダムな位相を順次与えるので、異なる波形のガウス性ランダム信号を複数フレーム分得ることができる。なお、このようにして生成されたドライブ信号は、その確率密度分布がガウス分布にしたがう(図21の実線参照)。DSP40は、生成したガウス性ランダム信号を、メモリ46に記録する(ステップS22)。
【0061】
続いて、このようにして生成したガウス性ランダム信号に窓関数をかけて重ね合わせることにより、所望のフレーム分のガウス性ランダム信号を生成するようにしている。
【0062】
図8に、生成されたnフレーム分のガウス性ランダム信号GD1、GD2、GD3・・・GDnを示す。DSP40は、各ガウス性ランダム信号GD1、GD2、GD3・・・GDnに対し窓関数を乗じる(ステップS24)。図9に、窓関数を乗じた各ガウス性ランダム信号WGD1、WGD2、WGD3・・・WGD4を示す。参考のため、図9において、窓関数を破線にして示している。
【0063】
次に、DSP40は、ガウス性ランダム信号WGD1、WGD2、WGD3・・・WGDnを、図9に示すように、1/4フレームずつずらしながら重ね合わせる(足し合わせる)(ステップS25)。このようにして、連続したガウス性ランダム信号SGDを得ることができる。なお、重ね合わせにより、振幅が元の波形よりも大きくなってしまうので、振幅の調整を行う。
【0064】
なお、制御スペクトルは、ディジタル的に演算された離散値であって線スペクトルとなる。したがって、この制御スペクトルに基づいて得られたガウス性ランダム信号の周波数特性は、線スペクトルになる。しかし、この実施形態では、複数の異なるガウス性ランダム信号に、窓関数をかけて重ね合わせることにより、線スペクトルを連続スペクトルにしている。なお、この実施形態では、窓関数としてハニングウインドウを用いている。
【0065】
生成されたガウス性ランダム信号SGDの振幅の確率密度分布は、図21に示すようにガウス分布を呈する。つまり、クルトシス(突度)が3.0、スキューネス(歪度)が0である。これに対し、目標クルトシスは5.0、目標スキューネスは0.5と設定されている(図7参照)。つまり、最大振幅はより大きく、しかもプラス側に歪んでいるような信号としなければならない。
【0066】
そこで、この実施形態では、図10に示すようなZMNL関数(Zero-memory nonliner sysytem関数)を用いて、所望の非ガウス特性を有する信号に変換するようにしている(ステップS26)。図10において、横軸は与えられた信号であり、縦軸は出力信号である。ガウス性ランダム信号x(t)を、このZMNL関数によって変換すると、非ガウス性ランダム信号y(t)が得られる。
【0067】
ZMNL関数を数式で表すと、数1のとおりである。
【0068】
【数1】
【0069】
xがガウス性信号、yが得られる非ガウス性信号である。各係数の詳細は、数2に示すとおりである。
【0070】
【数2】
【0071】
上式におけるスキューネスS、クルトシスKに目標スキューネス、目標クルトシスの値を代入することにより、変換によって所望の非ガウス性ランダム信号を生成することのできるZMNL関数を得ることができる。
【0072】
なお、上式では、2.8より小さい目標クルトシスを設定することができない。そこで、数3のような関数を用いるようにしてもよい。
【0073】
【数3】
【0074】
係数Cnは、数4に示す誤差変数εを最小にする最適化問題を解くことにより決定することができる。
【0075】
【数4】
【0076】
以上のようにして得られた非ガウス性ランダム信号は、メモリ46に記録される。
【0077】
図6に、非ガウス性ランダム信号に基づく波形制御処理(ステップS3)の詳細を示す。
【0078】
DSP40は、非ガウス性ランダム信号SNGDの1フレーム分を読み出して、窓関数を乗じる(ステップS31)。なお、この実施形態では、窓関数としてハニングウインドウを用いている。
【0079】
次に、前回の処理にて更新された振動試験機2および供試体4の逆伝達関数に基づいて、窓関数を乗じた非ガウス性ランダム信号の1フレームにつき、ドライブ信号WD1を生成する(ステップS32)(図11参照)。振動試験機2に対し、上記の非ガウス性ランダム信号を与えたとしても、供試体4に対し、非ガウス性ランダム信号どおりの振動を与えることはできない。振動試験機2および供試体4に伝達特性が存在するからである。そこで、振動試験機2および供試体4の伝達特性(伝達関数)を計測し、その逆特性を乗じた非ガウス性ランダム信号をドライブ信号として振動試験機2に与えるようにしている。これにより、供試体4は、所望の非ガウス性ランダム信号どおりに振動することになる。
【0080】
与える信号のスペクトルなどにより、伝達関数は一定ではない。そこで、伝達関数に基づいて算出される逆特性をリアルタイムで更新するようにしている。ただし、逆特性を更新すると、更新前と後のドライブ信号が連続しなくなり、不要な周波数成分をもたらしてしまう可能性がある。そこで、これを滑らかに連続させるため、窓関数を乗し、後述のように重ね合わせるようにしている。
【0081】
次に、DSP40は、窓関数のかけられたドライブ信号を、前回生成したドライブ信号から1/2フレームずらせて重ね合わせる(ステップS33)。たとえば、図11に示すように、今回生成したドライブ信号がWD2であれば、前回生成したドライブ信号WD1から1/2フレームずらせて、メモリ46において両者を重ね合わせる(足し合わせる)。
【0082】
これにより、図11に示すように、連続したドライブ信号SDを得ることができる。
【0083】
次に、DSP40は、生成したドライブ信号SDの1フレーム分を読み出して、D/A変換器16に出力する(ステップS34)。したがって、D/A変換器16は、アナログのドライブ信号SDを振動試験機2に与える。これにより、振動試験機2は振動を発生させる。なお、DSP40は、与えたドライブ信号をメモリ46に記録する。
【0084】
次に、DSP40は、A/D変換器8から応答信号を取り込む(ステップS35)。続いて、メモリ46において記録したドライブ信号と、これに対応する応答信号とに基づいて、伝達特性(伝達関数)を算出する。この伝達関数に基づいて、逆伝達関数を算出し、逆伝達関数を更新して記録する(ステップS36)。つまり、次回からのドライブ信号の生成においては、この更新された逆伝達関数を用いる。
【0085】
以上のようにして、非ガウス性ランダム信号と等しい振動を供試体4に与えることができる。
【0086】
2.第二の実施形態
2.1機能ブロック図
図12に、この発明の第二の実施形態による振動制御装置の機能ブロック図を示す。第一の実施形態では、生成した非ガウス性ランダム信号の波形と、応答信号の波形が合致するように、波形制御手段30によって制御を行っている。その結果、目標スペクトルと目標非ガウス特性を有する振動を供試体4に与えることができる。
【0087】
第二の実施形態では、応答信号の非ガウス特性(応答非ガウス特性)が、目標非ガウス特性と合致するように、変換特性をフィードバック制御するようにしている。これにより、目標非ガウス特性をより精度良く実現するようにしている。
【0088】
図12に、第二の実施形態による振動制御装置の機能ブロック図を示す。第一の実施形態による振動制御装置に加えて、非ガウス特性算出手段31、変換特性算出手段33が設けられている。
【0089】
非ガウス特性算出手段31は、応答信号の非ガウス特性(たとえば、クルトシスK、スキューネスS)を算出する。変換特性算出手段33は、応答非ガウス特性と目標非ガウス特性を比較し、両者が等しくなるように変換特性を算出する。変換手段28は、この変換特性に基づいて、ガウス性ランダム信号を非ガウス性ランダム信号に変換する。
【0090】
2.2ハードウエア構成
第二の実施形態による振動制御装置のハードウエア構成は、図2に示すものと同様である。
【0091】
2.3制御処理
図13に、制御プログラム44のフローチャートを示す。まず、DSP40は、A/D変換器8から応答信号を取得し、制御スペクトルを生成する(ステップS1)。次に、この制御スペクトルの周波数特性を有する非ガウス性ランダム信号を生成する(ステップS2)。次に、応答信号の非ガウス特性を算出し、非ガウス性ランダム信号を生成する際の変換特性を修正する(ステップS25)。
【0092】
続いて、非ガウス性ランダム信号に基づいて波形制御を行い、供試体4に振動を与える(ステップS3)。このような制御を繰り返し、目標スペクトル、目標非ガウス特性を有する振動を、供試体4に与えている。
【0093】
ステップS1、S2、S3は、第一の実施形態における制御と同様である。変換特性の修正(ステップS25)の詳細を、図14に示す。
【0094】
DSP40は、1フレーム分の応答信号をA/D変換器8から取得する(ステップS251)。続いて、応答信号の非ガウス特性(たとえば、スキューネスSおよびクルトシスK)を算出する(ステップS252)。スキューネスS、クルトシスKは、数5によって算出することができる。
【0095】
【数5】
【0096】
また、Z3、Z4は、数6によって算出することができる。
【0097】
【数6】
【0098】
数6中に現れた平均値Xおよび標準偏差σは、数7、数8によって算出することができる。
【0099】
【数7】
【0100】
【数8】
【0101】
次に、DSP40は、算出した応答スキューネスSrおよび応答クルトシスKrが、目標スキューネスSoおよび目標クルトシスKo(図7参照)と等しいかどうかを比べ、両者が近づくように、変換特性を変えてフィードバック制御を行う(ステップS253)。具体的には、応答スキューネスSr(クルトシスKr)が小さい場合には、数1、数2のSを大きくするように制御する。逆に、応答スキューネスSr(クルトシスKr)が大きい場合には、数1、数2のSを小さくするように制御する。
【0102】
以上のようにして、リアルタイムに変換特性を制御することにより、より精度良く非ガウス特性を制御することができる。
【0103】
3.その他の実施形態
(1)上記実施形態では、ZMNL関数を用いて、ガウス性ランダム信号から非ガウス性ランダム信号を得るようにしている。ZMNL関数による変換を行うと、周波数特性が変化する。もちろん、この変化分は応答スペクトルに現れるので、制御スペクトル算出手段22は、この変化分も含めてフィードバック制御を行い、目標スペクトルを実現する。
【0104】
しかし、ZMNL関数による変換は非線形変換であるため、フィードバック制御では捕捉しきれない誤差が生じてしまう。たとえば、高周波成分において、目標スペクトルと応答スペクトルが合致しないことが生じうる。
【0105】
そこで、他の実施形態として、ガウス性ランダム信号を生成した後、これを非ガウス性ランダム信号に変換するのではなく、制御スペクトルから直接的に非ガウス性ランダム信号を生成するようにしてもよい。
【0106】
上記実施形態では、制御スペクトルの各ラインに順次ランダムな位相θを与えて、ドライブ信号を生成している。しかし、制御スペクトルの各ラインに与える位相差Δθを、順次ランダムにすることにより、非ガウス性ランダム信号を直接的に生成するようにしてもよい。この場合、位相差Δθの確率密度分布(ここでは正規分布を用いる)の標準偏差を調整することにより、生成される非ガウス性ランダム信号のクルトシスKを制御することができる。
【0107】
参考のため、図15に、標準偏差とクルトシスとの関係を示す。たとえば、クルトシス4.5の非ガウス性ランダム信号を得たい場合には、位相差Δθの確率密度分布の標準偏差を200にすればよいことがわかる。
【0108】
また、位相差Δθの確率密度分布の初期位相をφ0を調整することにより、生成される非ガウス性ランダム信号のスキューネスSを制御することができる。
【0109】
(2)上記実施形態では、目標非ガウス特性として、クルトシスおよびスキューネスを設定している。しかし、その他の特性を制御特性としてもよい。また、図21に示すような確率密度分布の形状そのものを目標非ガウス特性としてもよい。これにより、実測データから求めた確率密度分布に従う振動を再現することが可能となる。この場合、確率密度分布が決まれば、これに対応するZMNL関数を容易に得ることができる。
【0110】
図18に、目標非ガウス特性として確率密度分布の形状を与え、この確率密度分布に従う非ガウス振動を与える場合の、ZMNL関数の決定処理プログラムの処理について説明する。
【0111】
ステップS181において、ZMNL関数の係数(c0,c1,c2,c3)に初期値を与える。なお、ここでは、ZMNL関数を、y=c0+c1x+c2x2+c3x4にて表される関数であるとする。次に、ZMNL関数に適当なベクトル変数xを代入してyを得る(ステップS182)。
【0112】
続いて、確率密度分布を求める(ステップS183)。つまり、ステップS181において決定した係数を持つZMNL関数にてガウス性信号を変換をして得られる非ガウス信号の確率密度分布を算出する。
【0113】
次に、求めた確率密度分布と目標とする確率密度分布とを比較し、その誤差εを算出する(ステップS184)。ここで、誤差εは各振幅における誤差の絶対値を合計したものとして算出する。
【0114】
次に、係数を変化させてステップS181以下を実行する。この時の誤差εが、前回より小さくなったか大きくなったかを判断する。
【0115】
さらに、係数を変化させてステップS181以下を繰り返し実行し、誤差εが所定値以下に収束する点を探し出す。この時の係数により、求めるZMNL関数を決定する。
【0116】
(3)上記実施形態では、複数フレームのガウス性ランダム信号GD1〜GD4に窓関数をかけて重ね合わせることで連続したガウス性ランダム信号SGDを得て、これを非ガウス性ランダム信号SNGDに変換し、さらに、非ガウス性ランダム信号SNGDの1フレームに窓関数をかけて、制御特性をかけて重ね合わせることで、ドライブ信号SDを得ている。
【0117】
しかし、以下のように処理を行ってもよい。複数フレームのガウス性ランダム信号GD1〜GD4に窓関数をかけ、これら複数フレームのガウス性ランダム信号を、非ガウス性ランダム信号に変換して非ガウス性ランダム信号NGD1〜NGD4を得る。この非ガウス性ランダム信号NGD1〜NGD4に、制御特性をかけて重ね合わせることにより、ドライブ信号SDを得るようにしてもよい。この場合、窓関数をかけるのを、重ね合わせの直前に行うようにしてもよい。
【0118】
(4)上記実施形態では、伝達特性として伝達関数を用いているが、インパルス応答を用いるようにしてもよい。
【0119】
(5)上記実施形態では、波形制御手段30において、伝達特性を更新することで非ガウス性ランダム信号と応答信号の波形が等しくなるように制御している。しかし、非ガウス性ランダム信号と応答信号の波形が等しくなるようにフィードバック制御を行うようにしてもよい。
【0120】
(6)上記実施形態では、応答スペクトル算出手段20は、非ガウス性を有する応答信号のスペクトルを算出し、制御スペクトル算出手段22は、この応答スペクトルと目標スペクトルを比較して、制御スペクトルを算出している。
【0121】
ここで、応答スペクトルの算出には、非ガウス性を有する応答信号よりも、ガウス性を有する応答信号の方が好ましい。そこで、図16に示すように、非ガウス性を有する応答信号を、変換手段28において用いた変換特性の逆特性を用いて、ガウス性を有する応答信号に変換し、このガウス性を有する応答信号のスペクトルを算出するようにしてもよい。
【0122】
なお、図16は、第二の実施形態を前提として構築したものであるが、第一の実施形態に対しても適用することができる。
【0123】
(7)上記実施形態では、ドライブ信号生成手段32において用いる制御特性を、動作中に修正するようにしている。しかしながら、ホワイトノイズによる振動を振動試験機2に加え、その応答信号を得ることで、振動試験機2と供試体4の伝達特性を予め計測し、制御特性を算出しておいて、これを修正せずに用いるようにしてもよい。この場合には、制御特性更新手段34は不要であり、また、窓関数を乗じて重ね合わせるという処理も不要となる。
【0124】
(8)上記実施形態では、1つの制御スペクトルから複数フレームの非ガウス性ランダム信号を生成する際に、フレーム毎に異なった位相を与えるようにしている、すなわち、制御スペクトルの各ラインの強度をP1, P2, P3, P4......Pnとしたとき、以下のようにφ1,φ2,φ3,φ4....φmを与えて、逆フーリエ変換を行っている
1フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
2フレーム目 P1(φn+1)、P2(φn+2)、P3(φn+3)...Pn(φn+n)
3フレーム目 P1(φ2n+1)、P2(φ2n+2)、P3(φ2n+3)...Pn(φ2n+n)
・・・
mフレーム目 P1(φn(m-1)+1)、P2(φn(m-1)+2)、P3(φn(m-1)+3)...Pn(φn(m-1)+n)
上記のように、フレーム毎に異なった位相を与えることにより、窓関数をかけて重ね合わされた波形の、周波数特性は線スペクトルではなく連続スペクトルになる。
【0125】
しかし、複数のフレームに同一の位相を与えて、複数フレームの非ガウス性ランダム信号を生成し、窓関数をかけて重ね合わせることにより、線スペクトルを有する信号を得ることもできる。すなわち、
1フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
2フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
3フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
・・・
mフレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
換言すると、複数フレームについて同一の非ガウス性ランダム信号を生成し、これに窓関数をかけて重ね合わせた場合には、線スペクトルを有する信号を得ることができる。
【0126】
通常は、連続スペクトルを有する波形の方が好ましいが、試験の目的によっては線スペクトルを用いることもできる。
【0127】
(9)上記実施形態では、DSPを用いて制御処理を行っている。しかし、CPUを用いて実行するようにしてもよい。
【0128】
(10)なお、上記実施形態では、異なる位相を与えることにより、1つの制御スペクトルから複数フレームのランダム信号を生成している。
【0129】
しかし、図17に示すように、波形の開始位置をずらせることにより、1つの制御スペクトルから複数フレームのランダム信号を生成してもよい。
【0130】
具体的には、1つの制御スペクトルから、図17Aに示す1フレームのランダム信号W1を生成する。次に、開始位置をT2にずらせて循環的に読み出す。つまり、1フレームの最後まで読み出すと、最初に戻って読み出しを続ける。このようにして、図17Bに示すランダム信号W2を得る。同様にして、読み出しの開始位置をT3、T4・・・というように、ランダムに変えて読み出し、図17C、Dに示すランダム信号W3、W4・・・を得る。
【0131】
(11)上記実施形態では、1方向(X軸方向)の振動を与える場合について説明した。しかし、多軸方向(たとえば、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸)に振動を与える場合についても適用することができる。この場合、それぞれの軸方向に振動を発生させる振動発生器について、それぞれ上記の制御回路を設けるようにすればよい。図19に、X軸とZ軸の2軸方向に振動を与える振動試験機2を制御する振動制御装置の機能ブロック図を示す。A/D変換器8Z、8X、応答スペクトル算出手段20X、20Z、制御スペクトル算出手段22X、22Z、非ガウス性ランダム信号生成手段24X、24Z、非ガウス特性算出手段31X、31Z、変換特性算出手段33X、33Zは、それぞれ、X軸、Z軸に対して設けられている。
【0132】
なお、非ガウス性ランダム信号に基づいてドライブ信号を生成する際に、各軸間のクロストーク(相互干渉)を補正する必要がある。このため、ドライブ信号生成手段32は、X軸用の非ガウス性ランダム信号とZ軸用の非ガウス性ランダム信号を受けて、X軸用ドライブ信号とZ軸用ドライブ信号を生成する際に、マトリクスにした制御特性を用いるようにしている。つまり、X軸用のドライブ信号とX軸用の応答信号に対する制御特性XX、Z軸用のドライブ信号とX軸用の応答信号に対する制御特性ZX、Z軸用のドライブ信号とZ軸用の応答信号に対する制御特性ZZ、Z軸用のドライブ信号とX軸用の応答信号に対する制御特性ZXを用いて、非ガウス性ランダム信号生成手段をドライブ信号に変換している。
【0133】
【数9】
【0134】
【数10】
【0135】
ここで、Hは2×2の伝達関数マトリックスである。Gは制御特性であり、2×2の逆伝達関数相当のマトリックスである。
【0136】
具体的には、X軸用ドライブ信号を生成するために制御特性XX、ZXを用い、Z軸用ドライブ信号を生成するために制御特性ZZ、XZを用いている(特開平10−105252号参照)。
【0137】
【数11】
【0138】
このように、伝達関数をマトリックスとして扱うことにより、容易に非ガウスランダム制御を多軸・多点振動試験に拡張することができる。
【技術分野】
【0001】
この発明は、目標とする非ガウス性振動が、供試体に与えられるように振動試験機を制御する振動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸送中や稼働中に被る振動による影響をシミュレートするため、供試体に所望の振動を与える振動試験が行われている。振動試験において、所望の振動となるように振動試験機を制御するのが振動制御装置である。
【0003】
現実に加えられる振動を記録しておき、この振動を供試体に与えることができれば、正確な振動試験を行うことが可能である。しかし、実際の振動波形自体を記録し再現するためには、膨大な記録容量が必要であるため、一般的にはあまり用いられていない。
【0004】
一方で、正弦波による振動を与える試験も行われている。この場合、正弦波を出力するだけであるから制御は容易であるが、現実に加えられる振動との乖離が大きすぎるという問題がある。
【0005】
そこで、現実に加えられる振動の周波数特性(パワースペクトル密度)を算出し、当該目的とするパワースペクトル密度を有する振動を供試体に加えるランダム振動試験が行われている。
【0006】
図20に、特許文献1に開示された従来のランダム振動試験のための振動制御装置を示す。振動試験機2自体も周波数特性を有するので、目標とするスペクトルを有する振動を与えたとしても、そのとおりの振動が供試体4には与えられない。したがって、振動制御装置により、供試体4の振動波形のスペクトル(応答スペクトル)が、目標スペクトルに等しくなるように、フィードバック制御を行っている。
【0007】
振動試験機2に固定された供試体4は、振動試験機2によって振動させられる。供試体4の振動は、加速度センサ6によって検出され、A/D変換器8によってディジタル信号である応答信号とされる。フーリエ変換手段10は、応答信号をフーリエ変換し、応答スペクトルを算出する。
【0008】
制御スペクトル算出手段12は、目標スペクトルと応答スペクトルとを比較し、両者が等しくなるように制御スペクトルを算出する。ドライブ信号生成手段14は、制御スペクトルの各周波数成分にランダムな位相を与えて逆フーリエ変換を行い、ドライブ信号を生成する。
【0009】
D/A変換器16は、生成されたドライブ信号をアナログ信号に変換し、振動試験機2に与える。
【0010】
以上のようにして、目標スペクトルを有する振動を供試体4に与えるよう制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−068718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1の振動制御装置では、目標とするスペクトルを有する振動を供試体4に与えることはできるものの、その振動の確率密度分布は、図21の実線に示すようにガウス分布(正規分布)となる。しかし、現実の振動は非ガウス分布となることが多いにもかかわらず、従来の振動制御装置では、非ガウス特性を有する振動を供試体に与えることはできなかった。
【0013】
この発明は、上記の問題を解決して、目標とするスペクトルだけでなく、目標とする非ガウス特性を有する振動を供試体に与えるよう制御することの可能な振動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)(3)(9)この発明に係る振動制御装置は、振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段とを備えている。
【0015】
目標とするスペクトルを有する振動が供試体に与えられるようにフィードバック制御を行い、さらに、生成した非ガウス性ランダム信号と等しい振動を供試体に与えるようにしているので、目標スペクトルを有し目標非ガウス特性を有する振動を与えることができる。
【0016】
(2)(4)(10)この発明に係る振動制御装置は、振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、前記センサからの応答信号の応答非ガウス特性を算出する非ガウス特性算出手段と、応答非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較し、両者が等しくなるような変換特性を算出する変換特性算出手段と、非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段とを備えている。
【0017】
したがって、制御特性をリアルタイムに更新するので、より精度良く非ガウス性ランダム信号と同じ振動を供試体に与えることができる。
【0018】
(5)この発明に係る振動制御装置は、非ガウス性ランダム信号生成手段は、制御スペクトルを時間関数に変換し、ガウス性ランダム信号を得るガウス性ランダム信号生成手段と、前記算出されたガウス性ランダム信号を前記変換特性に基づいて変換し、非ガウス性ランダム信号に変換する変換手段とを備えたことを特徴としている。
【0019】
したがって、変換特性を制御することにより、容易に所望の非ガウス性ランダム信号を得ることができる。
【0020】
(6)この発明に係る振動制御装置は、応答スペクトル生成手段は、供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を、前記変換手段の変換特性に基づいて、ガウス性応答信号に変換する非ガウス−ガウス変換手段と、前記ガウス性応答信号を周波数関数に変換し、ガウス性応答スペクトルを得るガウス性応答スペクトル生成手段とを備えたことを特徴としている。
【0021】
したがって、応答スペクトル算出手段は、ガウス性の応答信号に基づいて応答スペクトルを算出することができ、精度良くフィードバック制御を行うことができる。
【0022】
(7)この発明に係る振動制御装置は、非ガウス性ランダム信号生成手段は、制御スペクトルに基づいて時間関数に変換する際に、制御スペクトルの各成分に順次与える位相差の確率密度分布を前記変換特性として制御することにより、生成される非ガウス性ランダム信号の非ガウス特性を制御することを特徴としている。
【0023】
したがって、制御スペクトルから直接的に非ガウス性ランダム信号を生成するので、不要なスペクトル成分が生じる可能性が少なく、制御スペクトル算出手段によるフィードバック制御の精度が向上する。
【0024】
(8)この発明に係る振動制御装置は、非ガウス性ランダム信号生成手段が、前記位相差の確率密度分布の少なくとも平均または分散を前記変換特性として制御することにより、生成される非ガウス性ランダム信号の非ガウス特性を制御することを特徴としている。
【0025】
したがって、所望の非ガウス性ランダム信号を生成することができる。
【0026】
(9)この発明に係る振動制御装置は、前記振動試験機は、前記供試体に対して複数軸方向からの振動を与える複数の振動発生器を有しており、前記応答スペクトル算出手段、前記制御スペクトル算出手段、前記非ガウス性ランダム信号生成手段が、複数軸のそれぞれの軸のために設けられ、前記制御特性更新手段は、各軸のための応答信号および各軸のためのドライブ信号に基づいて、前記各軸のための応答信号と前記各軸のためのドライブ信号との組み合わせに係る制御特性を演算し、前記ドライブ信号生成手段は、各軸のための非ガウス性ランダム信号と前記組み合わせに係る制御特性に基づいて、各軸のためのドライブ信号を生成する。
【0027】
したがって、多軸方向の振動制御を行うことができる。
【0028】
(10)この発明に係る振動制御装置は、振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標とする任意の確率密度分布にしたがった波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、制御スペクトルを時間関数に変換し、ガウス分布による確率密度分布を有するガウス性ランダム信号を得るガウス性ランダム信号生成手段と、ZMNL関数に基づいて、前記ガウス分布による確率密度分布を有するガウス性ランダム信号を、前記目標とする任意の確率密度分布を有する非ガウス性ランダム信号に変換する非ガウス性ランダム信号生成手段と、前記非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段とを備えている。
【0029】
したがって、目標とする振動の確率密度分布を与えることにより、これに合致する振動を供試体に与えることができる。
【0030】
「応答スペクトル算出手段」は、実施形態においては、ステップS12がこれに対応する。
【0031】
「制御スペクトル算出手段」は、実施形態においては、ステップS13がこれに対応する。
【0032】
「非ガウス性ランダム信号生成手段」は、実施形態においては、ステップS2がこれに対応する。
【0033】
「ガウス性ランダム信号生成手段」は、実施形態においては、ステップS21〜S25がこれに対応する。
【0034】
「変換手段」は、実施形態においては、ステップS26がこれに対応する。
【0035】
「波形制御手段」は、実施形態においては、ステップS3がこれに対応する。
【0036】
「ドライブ信号生成手段」は、実施形態においては、ステップS31〜S33がこれに対応する。
【0037】
「制御特性更新手段」は、実施形態においては、ステップS35、S36がこれに対応する。
【0038】
「非ガウス特性算出手段」は、実施形態においては、ステップS251、S252がこれに対応する。
【0039】
「変換特性算出手段」は、実施形態においては、ステップS253がこれに対応する。
【0040】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む概念である。
【0041】
この発明において「等しくなるように制御する」とは、両者が等しくなるような方向に制御を行うという意味であり、たとえばフィードバック制御がこの概念に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第一の実施形態による振動制御装置の機能ブロック図である。
【図2】振動制御装置のハードウエア構成である。
【図3】制御プログラム44のフローチャートである。
【図4】制御スペクトル生成処理のフローチャートである。
【図5】非ガウス性ランダム信号の生成処理のフローチャートである。
【図6】波形制御処理のフローチャートである。
【図7】目標スペクトル、目標非ガウス特性を示す図である。
【図8】生成された複数フレームのガウス性ランダム信号を示す図である。
【図9】ガウス性ランダム信号に窓関数を乗じ、ずらせながら重ね合わせる処理を説明するための図である。
【図10】ZMNL関数の一例である。
【図11】非ガウス性ランダム信号に基づいて、ドライブ信号を得るための処理を説明するための図である。
【図12】第二の実施形態による振動制御装置の機能ブロック図である。
【図13】制御プログラム44のフローチャートである。
【図14】変換特性の修正処理のフローチャートである。
【図15】標準偏差とクルトシスとの関係を示す図である。
【図16】逆変換手段19を設けた場合の例を示す図である。
【図17】他の実施形態によるランダム信号生成を説明するための図である。
【図18】ZMNL関数を決定する処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】多軸制御を行う場合の例を示す図である。
【図20】従来の振動制御装置を示す図である。
【図21】応答信号の確率密度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
1.第一の実施形態
1.1機能ブロック図
図1に、この発明の第一実施形態による振動制御装置の機能ブロック図を示す。振動試験機2に固定された供試体4は、振動試験機2によって振動させられる。供試体4の振動は、加速度センサ6によって検出され、A/D変換器8によってディジタル信号である応答信号とされる。応答スペクトル算出手段20は、応答信号をフーリエ変換し、応答スペクトルを算出する。
【0044】
制御スペクトル算出手段22は、目標スペクトルと応答スペクトルとを比較し、両者が等しくなるように制御スペクトルを算出する。つまり、フィードバック制御を行う。
【0045】
ガウス性ランダム信号生成手段26は、制御スペクトルの各周波数成分にランダムな位相を与えてフーリエ変換を行い、ガウス性ランダム信号を生成する。変換手段28は、ガウス性ランダム信号を変換特性に基づいて変換し、非ガウス性ランダム信号に変換する。なお、この実施形態では、ガウス性ランダム信号生成手段26と変換手段28によって、非ガウス性ランダム信号生成手段24が構成されている。
【0046】
ドライブ信号生成手段32は、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を生成する。ドライブ信号は、D/A変換器16によってアナログ信号に変換され、振動試験機2に与えられる。
【0047】
制御特性更新手段34は、ドライブ信号と応答信号に基づいて、系の伝達特性を算出し、その逆特性である制御特性を更新する。更新された制御特性は、ドライブ信号生成手段32に与えられる。なお、この実施形態では、制御特性更新手段34とドライブ信号生成手段32によって、波形制御手段30が構成されている。
【0048】
以上の処理を要約すると、次のようになる。応答スペクトル算出手段20と制御スペクトル算出手段22によって、応答スペクトルが目標スペクトルに等しくなるようにフードバック制御が行われ、制御スペクトルが算出される。非ガウス性ランダム信号生成手段24は、この制御スペクトルを有する非ガウス性ランダム信号を生成する。波形制御手段30は、このようにして生成された非ガウス性ランダム信号の波形にしたがって供試体4が振動するように制御する。
【0049】
以上のようにして、供試体4に対し、変換手段28の変換特性を設定することにより目標とする非ガウス特性を有し、かつ、目標スペクトルを有する振動を、供試体4に与えることができる。
【0050】
1.2ハードウエア構成
図2に、図1の振動制御装置をディジタルシグナルプロセッサ(DSP)を用いて実現した場合のハードウエア構成を示す。
【0051】
DSP40には、フラッシュROM42、メモリ46、D/A変換器16、A/D変換器8が接続されている。D/A変換器16は、ディジタルデータとしてのドライブ信号をアナログ信号に変換して、振動試験機2に与える。振動試験機2によって振動させられた供試体4の振動は、加速度センサ6によって検出され、アナログの応答信号として出力される。A/D変換器8は、アナログ信号としての応答信号をディジタルデータに変換する。フラッシュROM42には、制御のための制御プログラム44が記録されている。
【0052】
なお、DSP40には、MPU、タッチパネルディスプレイなど(図示せず)が接続されており、操作者が目標スペクトルを設定したり、目標ガウス特性を設定したりすることができるようになっている。
【0053】
1.3制御処理
図3に、制御プログラム44のフローチャートを示す。ここでは、操作者により、図7に示すように、目標スペクトル、目標とするクルトシス(尖度)とスキューネス(歪度)が設定され、メモリ46に記録されているものとして説明を進める。
【0054】
ここで、クルトシスとは、図21に示す振動波形の確率密度分布において、その分布形状の尖っている度合いを表す尺度である。ガウス性の振動波形においては、クルトシスは3である。非ガウス性振動波形においては、クルトシスはこれより大きくなる(図21の破線参照)。これは、非ガウス性振動波形では、振動波形の平均値に対して、振動波形のピーク値が大きく突出していることを表している。また、スキューネスとは、振動波形の歪み(非対称度)である。ガウス性の振動波形においては、スキューネスは0である。非ガウス性振動波形においては、スキューネスが0からずれることがある。たとえば、図21の波線に示すように、平均値(つまりスキューネス)が0.5となっている。
【0055】
まず、DSP40は、A/D変換器8から応答信号を取得し、制御スペクトルを生成する(ステップS1)。次に、この制御スペクトルの周波数特性を有する非ガウス性ランダム信号を生成する(ステップS2)。続いて、この非ガウス性ランダム信号に基づいて波形制御を行い、供試体4に振動を与える(ステップS3)。このような制御を繰り返し、目標スペクトル、目標非ガウス特性を有する振動を、供試体4に与えている。
【0056】
図4に、制御スペクトル生成(ステップS1)の詳細フローチャートを示す。DSP40は、まず、A/D変換器8から、応答信号を取得する(ステップS11)。
【0057】
次に、DSP40は、取得した応答信号をフーリエ変換(FFT)し、応答信号のパワースペクトル(応答スペクトルという)を算出する(ステップS12)。ディジタルデータとしての応答信号に対しFFTを行うので、応答スペクトルは線スペクトルとなる。続いて、DSP40は、この応答スペクトルを目標とするパワースペクトル(目標スペクトルという)と比較し、両者が合致するように、制御スペクトルを修正する(ステップS13)。なお、この制御スペクトルも線スペクトルとなる。後述のように、このようにして修正された制御スペクトルを有する信号が振動試験機2に与えられるので、フィードバック制御により、応答スペクトルが目標スペクトルに等しく(あるいは近く)なる。
【0058】
図5に、非ガウス性ランダム信号の生成処理(ステップS2)の詳細フローチャートを示す。まず、DSP40は、制御スペクトルの各ライン(線スペクトルの各周波数成分)に、順次、ランダムな位相θを与える(ステップS21)。ここでは、0〜2πの一様乱数をランダム位相θとして与えるようにしている。
【0059】
次に、DSP40は、ランダムな位相θを与えられた制御スペクトルに対し、逆フーリエ変換(逆FFT)を行い、複数フレーム分(たとえば、12フレーム分)のガウス性ランダム信号(時間軸信号)を生成する。ここで、フレームとは、所定の時間長をいう。
【0060】
1つの制御スペクトルに対して、ランダムな位相を順次与えるので、異なる波形のガウス性ランダム信号を複数フレーム分得ることができる。なお、このようにして生成されたドライブ信号は、その確率密度分布がガウス分布にしたがう(図21の実線参照)。DSP40は、生成したガウス性ランダム信号を、メモリ46に記録する(ステップS22)。
【0061】
続いて、このようにして生成したガウス性ランダム信号に窓関数をかけて重ね合わせることにより、所望のフレーム分のガウス性ランダム信号を生成するようにしている。
【0062】
図8に、生成されたnフレーム分のガウス性ランダム信号GD1、GD2、GD3・・・GDnを示す。DSP40は、各ガウス性ランダム信号GD1、GD2、GD3・・・GDnに対し窓関数を乗じる(ステップS24)。図9に、窓関数を乗じた各ガウス性ランダム信号WGD1、WGD2、WGD3・・・WGD4を示す。参考のため、図9において、窓関数を破線にして示している。
【0063】
次に、DSP40は、ガウス性ランダム信号WGD1、WGD2、WGD3・・・WGDnを、図9に示すように、1/4フレームずつずらしながら重ね合わせる(足し合わせる)(ステップS25)。このようにして、連続したガウス性ランダム信号SGDを得ることができる。なお、重ね合わせにより、振幅が元の波形よりも大きくなってしまうので、振幅の調整を行う。
【0064】
なお、制御スペクトルは、ディジタル的に演算された離散値であって線スペクトルとなる。したがって、この制御スペクトルに基づいて得られたガウス性ランダム信号の周波数特性は、線スペクトルになる。しかし、この実施形態では、複数の異なるガウス性ランダム信号に、窓関数をかけて重ね合わせることにより、線スペクトルを連続スペクトルにしている。なお、この実施形態では、窓関数としてハニングウインドウを用いている。
【0065】
生成されたガウス性ランダム信号SGDの振幅の確率密度分布は、図21に示すようにガウス分布を呈する。つまり、クルトシス(突度)が3.0、スキューネス(歪度)が0である。これに対し、目標クルトシスは5.0、目標スキューネスは0.5と設定されている(図7参照)。つまり、最大振幅はより大きく、しかもプラス側に歪んでいるような信号としなければならない。
【0066】
そこで、この実施形態では、図10に示すようなZMNL関数(Zero-memory nonliner sysytem関数)を用いて、所望の非ガウス特性を有する信号に変換するようにしている(ステップS26)。図10において、横軸は与えられた信号であり、縦軸は出力信号である。ガウス性ランダム信号x(t)を、このZMNL関数によって変換すると、非ガウス性ランダム信号y(t)が得られる。
【0067】
ZMNL関数を数式で表すと、数1のとおりである。
【0068】
【数1】
【0069】
xがガウス性信号、yが得られる非ガウス性信号である。各係数の詳細は、数2に示すとおりである。
【0070】
【数2】
【0071】
上式におけるスキューネスS、クルトシスKに目標スキューネス、目標クルトシスの値を代入することにより、変換によって所望の非ガウス性ランダム信号を生成することのできるZMNL関数を得ることができる。
【0072】
なお、上式では、2.8より小さい目標クルトシスを設定することができない。そこで、数3のような関数を用いるようにしてもよい。
【0073】
【数3】
【0074】
係数Cnは、数4に示す誤差変数εを最小にする最適化問題を解くことにより決定することができる。
【0075】
【数4】
【0076】
以上のようにして得られた非ガウス性ランダム信号は、メモリ46に記録される。
【0077】
図6に、非ガウス性ランダム信号に基づく波形制御処理(ステップS3)の詳細を示す。
【0078】
DSP40は、非ガウス性ランダム信号SNGDの1フレーム分を読み出して、窓関数を乗じる(ステップS31)。なお、この実施形態では、窓関数としてハニングウインドウを用いている。
【0079】
次に、前回の処理にて更新された振動試験機2および供試体4の逆伝達関数に基づいて、窓関数を乗じた非ガウス性ランダム信号の1フレームにつき、ドライブ信号WD1を生成する(ステップS32)(図11参照)。振動試験機2に対し、上記の非ガウス性ランダム信号を与えたとしても、供試体4に対し、非ガウス性ランダム信号どおりの振動を与えることはできない。振動試験機2および供試体4に伝達特性が存在するからである。そこで、振動試験機2および供試体4の伝達特性(伝達関数)を計測し、その逆特性を乗じた非ガウス性ランダム信号をドライブ信号として振動試験機2に与えるようにしている。これにより、供試体4は、所望の非ガウス性ランダム信号どおりに振動することになる。
【0080】
与える信号のスペクトルなどにより、伝達関数は一定ではない。そこで、伝達関数に基づいて算出される逆特性をリアルタイムで更新するようにしている。ただし、逆特性を更新すると、更新前と後のドライブ信号が連続しなくなり、不要な周波数成分をもたらしてしまう可能性がある。そこで、これを滑らかに連続させるため、窓関数を乗し、後述のように重ね合わせるようにしている。
【0081】
次に、DSP40は、窓関数のかけられたドライブ信号を、前回生成したドライブ信号から1/2フレームずらせて重ね合わせる(ステップS33)。たとえば、図11に示すように、今回生成したドライブ信号がWD2であれば、前回生成したドライブ信号WD1から1/2フレームずらせて、メモリ46において両者を重ね合わせる(足し合わせる)。
【0082】
これにより、図11に示すように、連続したドライブ信号SDを得ることができる。
【0083】
次に、DSP40は、生成したドライブ信号SDの1フレーム分を読み出して、D/A変換器16に出力する(ステップS34)。したがって、D/A変換器16は、アナログのドライブ信号SDを振動試験機2に与える。これにより、振動試験機2は振動を発生させる。なお、DSP40は、与えたドライブ信号をメモリ46に記録する。
【0084】
次に、DSP40は、A/D変換器8から応答信号を取り込む(ステップS35)。続いて、メモリ46において記録したドライブ信号と、これに対応する応答信号とに基づいて、伝達特性(伝達関数)を算出する。この伝達関数に基づいて、逆伝達関数を算出し、逆伝達関数を更新して記録する(ステップS36)。つまり、次回からのドライブ信号の生成においては、この更新された逆伝達関数を用いる。
【0085】
以上のようにして、非ガウス性ランダム信号と等しい振動を供試体4に与えることができる。
【0086】
2.第二の実施形態
2.1機能ブロック図
図12に、この発明の第二の実施形態による振動制御装置の機能ブロック図を示す。第一の実施形態では、生成した非ガウス性ランダム信号の波形と、応答信号の波形が合致するように、波形制御手段30によって制御を行っている。その結果、目標スペクトルと目標非ガウス特性を有する振動を供試体4に与えることができる。
【0087】
第二の実施形態では、応答信号の非ガウス特性(応答非ガウス特性)が、目標非ガウス特性と合致するように、変換特性をフィードバック制御するようにしている。これにより、目標非ガウス特性をより精度良く実現するようにしている。
【0088】
図12に、第二の実施形態による振動制御装置の機能ブロック図を示す。第一の実施形態による振動制御装置に加えて、非ガウス特性算出手段31、変換特性算出手段33が設けられている。
【0089】
非ガウス特性算出手段31は、応答信号の非ガウス特性(たとえば、クルトシスK、スキューネスS)を算出する。変換特性算出手段33は、応答非ガウス特性と目標非ガウス特性を比較し、両者が等しくなるように変換特性を算出する。変換手段28は、この変換特性に基づいて、ガウス性ランダム信号を非ガウス性ランダム信号に変換する。
【0090】
2.2ハードウエア構成
第二の実施形態による振動制御装置のハードウエア構成は、図2に示すものと同様である。
【0091】
2.3制御処理
図13に、制御プログラム44のフローチャートを示す。まず、DSP40は、A/D変換器8から応答信号を取得し、制御スペクトルを生成する(ステップS1)。次に、この制御スペクトルの周波数特性を有する非ガウス性ランダム信号を生成する(ステップS2)。次に、応答信号の非ガウス特性を算出し、非ガウス性ランダム信号を生成する際の変換特性を修正する(ステップS25)。
【0092】
続いて、非ガウス性ランダム信号に基づいて波形制御を行い、供試体4に振動を与える(ステップS3)。このような制御を繰り返し、目標スペクトル、目標非ガウス特性を有する振動を、供試体4に与えている。
【0093】
ステップS1、S2、S3は、第一の実施形態における制御と同様である。変換特性の修正(ステップS25)の詳細を、図14に示す。
【0094】
DSP40は、1フレーム分の応答信号をA/D変換器8から取得する(ステップS251)。続いて、応答信号の非ガウス特性(たとえば、スキューネスSおよびクルトシスK)を算出する(ステップS252)。スキューネスS、クルトシスKは、数5によって算出することができる。
【0095】
【数5】
【0096】
また、Z3、Z4は、数6によって算出することができる。
【0097】
【数6】
【0098】
数6中に現れた平均値Xおよび標準偏差σは、数7、数8によって算出することができる。
【0099】
【数7】
【0100】
【数8】
【0101】
次に、DSP40は、算出した応答スキューネスSrおよび応答クルトシスKrが、目標スキューネスSoおよび目標クルトシスKo(図7参照)と等しいかどうかを比べ、両者が近づくように、変換特性を変えてフィードバック制御を行う(ステップS253)。具体的には、応答スキューネスSr(クルトシスKr)が小さい場合には、数1、数2のSを大きくするように制御する。逆に、応答スキューネスSr(クルトシスKr)が大きい場合には、数1、数2のSを小さくするように制御する。
【0102】
以上のようにして、リアルタイムに変換特性を制御することにより、より精度良く非ガウス特性を制御することができる。
【0103】
3.その他の実施形態
(1)上記実施形態では、ZMNL関数を用いて、ガウス性ランダム信号から非ガウス性ランダム信号を得るようにしている。ZMNL関数による変換を行うと、周波数特性が変化する。もちろん、この変化分は応答スペクトルに現れるので、制御スペクトル算出手段22は、この変化分も含めてフィードバック制御を行い、目標スペクトルを実現する。
【0104】
しかし、ZMNL関数による変換は非線形変換であるため、フィードバック制御では捕捉しきれない誤差が生じてしまう。たとえば、高周波成分において、目標スペクトルと応答スペクトルが合致しないことが生じうる。
【0105】
そこで、他の実施形態として、ガウス性ランダム信号を生成した後、これを非ガウス性ランダム信号に変換するのではなく、制御スペクトルから直接的に非ガウス性ランダム信号を生成するようにしてもよい。
【0106】
上記実施形態では、制御スペクトルの各ラインに順次ランダムな位相θを与えて、ドライブ信号を生成している。しかし、制御スペクトルの各ラインに与える位相差Δθを、順次ランダムにすることにより、非ガウス性ランダム信号を直接的に生成するようにしてもよい。この場合、位相差Δθの確率密度分布(ここでは正規分布を用いる)の標準偏差を調整することにより、生成される非ガウス性ランダム信号のクルトシスKを制御することができる。
【0107】
参考のため、図15に、標準偏差とクルトシスとの関係を示す。たとえば、クルトシス4.5の非ガウス性ランダム信号を得たい場合には、位相差Δθの確率密度分布の標準偏差を200にすればよいことがわかる。
【0108】
また、位相差Δθの確率密度分布の初期位相をφ0を調整することにより、生成される非ガウス性ランダム信号のスキューネスSを制御することができる。
【0109】
(2)上記実施形態では、目標非ガウス特性として、クルトシスおよびスキューネスを設定している。しかし、その他の特性を制御特性としてもよい。また、図21に示すような確率密度分布の形状そのものを目標非ガウス特性としてもよい。これにより、実測データから求めた確率密度分布に従う振動を再現することが可能となる。この場合、確率密度分布が決まれば、これに対応するZMNL関数を容易に得ることができる。
【0110】
図18に、目標非ガウス特性として確率密度分布の形状を与え、この確率密度分布に従う非ガウス振動を与える場合の、ZMNL関数の決定処理プログラムの処理について説明する。
【0111】
ステップS181において、ZMNL関数の係数(c0,c1,c2,c3)に初期値を与える。なお、ここでは、ZMNL関数を、y=c0+c1x+c2x2+c3x4にて表される関数であるとする。次に、ZMNL関数に適当なベクトル変数xを代入してyを得る(ステップS182)。
【0112】
続いて、確率密度分布を求める(ステップS183)。つまり、ステップS181において決定した係数を持つZMNL関数にてガウス性信号を変換をして得られる非ガウス信号の確率密度分布を算出する。
【0113】
次に、求めた確率密度分布と目標とする確率密度分布とを比較し、その誤差εを算出する(ステップS184)。ここで、誤差εは各振幅における誤差の絶対値を合計したものとして算出する。
【0114】
次に、係数を変化させてステップS181以下を実行する。この時の誤差εが、前回より小さくなったか大きくなったかを判断する。
【0115】
さらに、係数を変化させてステップS181以下を繰り返し実行し、誤差εが所定値以下に収束する点を探し出す。この時の係数により、求めるZMNL関数を決定する。
【0116】
(3)上記実施形態では、複数フレームのガウス性ランダム信号GD1〜GD4に窓関数をかけて重ね合わせることで連続したガウス性ランダム信号SGDを得て、これを非ガウス性ランダム信号SNGDに変換し、さらに、非ガウス性ランダム信号SNGDの1フレームに窓関数をかけて、制御特性をかけて重ね合わせることで、ドライブ信号SDを得ている。
【0117】
しかし、以下のように処理を行ってもよい。複数フレームのガウス性ランダム信号GD1〜GD4に窓関数をかけ、これら複数フレームのガウス性ランダム信号を、非ガウス性ランダム信号に変換して非ガウス性ランダム信号NGD1〜NGD4を得る。この非ガウス性ランダム信号NGD1〜NGD4に、制御特性をかけて重ね合わせることにより、ドライブ信号SDを得るようにしてもよい。この場合、窓関数をかけるのを、重ね合わせの直前に行うようにしてもよい。
【0118】
(4)上記実施形態では、伝達特性として伝達関数を用いているが、インパルス応答を用いるようにしてもよい。
【0119】
(5)上記実施形態では、波形制御手段30において、伝達特性を更新することで非ガウス性ランダム信号と応答信号の波形が等しくなるように制御している。しかし、非ガウス性ランダム信号と応答信号の波形が等しくなるようにフィードバック制御を行うようにしてもよい。
【0120】
(6)上記実施形態では、応答スペクトル算出手段20は、非ガウス性を有する応答信号のスペクトルを算出し、制御スペクトル算出手段22は、この応答スペクトルと目標スペクトルを比較して、制御スペクトルを算出している。
【0121】
ここで、応答スペクトルの算出には、非ガウス性を有する応答信号よりも、ガウス性を有する応答信号の方が好ましい。そこで、図16に示すように、非ガウス性を有する応答信号を、変換手段28において用いた変換特性の逆特性を用いて、ガウス性を有する応答信号に変換し、このガウス性を有する応答信号のスペクトルを算出するようにしてもよい。
【0122】
なお、図16は、第二の実施形態を前提として構築したものであるが、第一の実施形態に対しても適用することができる。
【0123】
(7)上記実施形態では、ドライブ信号生成手段32において用いる制御特性を、動作中に修正するようにしている。しかしながら、ホワイトノイズによる振動を振動試験機2に加え、その応答信号を得ることで、振動試験機2と供試体4の伝達特性を予め計測し、制御特性を算出しておいて、これを修正せずに用いるようにしてもよい。この場合には、制御特性更新手段34は不要であり、また、窓関数を乗じて重ね合わせるという処理も不要となる。
【0124】
(8)上記実施形態では、1つの制御スペクトルから複数フレームの非ガウス性ランダム信号を生成する際に、フレーム毎に異なった位相を与えるようにしている、すなわち、制御スペクトルの各ラインの強度をP1, P2, P3, P4......Pnとしたとき、以下のようにφ1,φ2,φ3,φ4....φmを与えて、逆フーリエ変換を行っている
1フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
2フレーム目 P1(φn+1)、P2(φn+2)、P3(φn+3)...Pn(φn+n)
3フレーム目 P1(φ2n+1)、P2(φ2n+2)、P3(φ2n+3)...Pn(φ2n+n)
・・・
mフレーム目 P1(φn(m-1)+1)、P2(φn(m-1)+2)、P3(φn(m-1)+3)...Pn(φn(m-1)+n)
上記のように、フレーム毎に異なった位相を与えることにより、窓関数をかけて重ね合わされた波形の、周波数特性は線スペクトルではなく連続スペクトルになる。
【0125】
しかし、複数のフレームに同一の位相を与えて、複数フレームの非ガウス性ランダム信号を生成し、窓関数をかけて重ね合わせることにより、線スペクトルを有する信号を得ることもできる。すなわち、
1フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
2フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
3フレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
・・・
mフレーム目 P1(φ1)、P2(φ2)、P3(φ3)...Pn(φn)
換言すると、複数フレームについて同一の非ガウス性ランダム信号を生成し、これに窓関数をかけて重ね合わせた場合には、線スペクトルを有する信号を得ることができる。
【0126】
通常は、連続スペクトルを有する波形の方が好ましいが、試験の目的によっては線スペクトルを用いることもできる。
【0127】
(9)上記実施形態では、DSPを用いて制御処理を行っている。しかし、CPUを用いて実行するようにしてもよい。
【0128】
(10)なお、上記実施形態では、異なる位相を与えることにより、1つの制御スペクトルから複数フレームのランダム信号を生成している。
【0129】
しかし、図17に示すように、波形の開始位置をずらせることにより、1つの制御スペクトルから複数フレームのランダム信号を生成してもよい。
【0130】
具体的には、1つの制御スペクトルから、図17Aに示す1フレームのランダム信号W1を生成する。次に、開始位置をT2にずらせて循環的に読み出す。つまり、1フレームの最後まで読み出すと、最初に戻って読み出しを続ける。このようにして、図17Bに示すランダム信号W2を得る。同様にして、読み出しの開始位置をT3、T4・・・というように、ランダムに変えて読み出し、図17C、Dに示すランダム信号W3、W4・・・を得る。
【0131】
(11)上記実施形態では、1方向(X軸方向)の振動を与える場合について説明した。しかし、多軸方向(たとえば、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸)に振動を与える場合についても適用することができる。この場合、それぞれの軸方向に振動を発生させる振動発生器について、それぞれ上記の制御回路を設けるようにすればよい。図19に、X軸とZ軸の2軸方向に振動を与える振動試験機2を制御する振動制御装置の機能ブロック図を示す。A/D変換器8Z、8X、応答スペクトル算出手段20X、20Z、制御スペクトル算出手段22X、22Z、非ガウス性ランダム信号生成手段24X、24Z、非ガウス特性算出手段31X、31Z、変換特性算出手段33X、33Zは、それぞれ、X軸、Z軸に対して設けられている。
【0132】
なお、非ガウス性ランダム信号に基づいてドライブ信号を生成する際に、各軸間のクロストーク(相互干渉)を補正する必要がある。このため、ドライブ信号生成手段32は、X軸用の非ガウス性ランダム信号とZ軸用の非ガウス性ランダム信号を受けて、X軸用ドライブ信号とZ軸用ドライブ信号を生成する際に、マトリクスにした制御特性を用いるようにしている。つまり、X軸用のドライブ信号とX軸用の応答信号に対する制御特性XX、Z軸用のドライブ信号とX軸用の応答信号に対する制御特性ZX、Z軸用のドライブ信号とZ軸用の応答信号に対する制御特性ZZ、Z軸用のドライブ信号とX軸用の応答信号に対する制御特性ZXを用いて、非ガウス性ランダム信号生成手段をドライブ信号に変換している。
【0133】
【数9】
【0134】
【数10】
【0135】
ここで、Hは2×2の伝達関数マトリックスである。Gは制御特性であり、2×2の逆伝達関数相当のマトリックスである。
【0136】
具体的には、X軸用ドライブ信号を生成するために制御特性XX、ZXを用い、Z軸用ドライブ信号を生成するために制御特性ZZ、XZを用いている(特開平10−105252号参照)。
【0137】
【数11】
【0138】
このように、伝達関数をマトリックスとして扱うことにより、容易に非ガウスランダム制御を多軸・多点振動試験に拡張することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段と、
を備えた振動制御装置。
【請求項2】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、
前記センサからの応答信号の応答非ガウス特性を算出する非ガウス特性算出手段と、
応答非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較し、両者が等しくなるような変換特性を算出する変換特性算出手段と、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段と、
を備えた振動制御装置。
【請求項3】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置をコンピュータによって実現するための制御プログラムであって、当該制御プログラムは、コンピュータを、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項4】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置をコンピュータによって実現するための制御プログラムであって、当該制御プログラムは、コンピュータを、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、
前記センサからの応答信号の応答非ガウス特性を算出する非ガウス特性算出手段と、
応答非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較し、両者が等しくなるような変換特性を算出する変換特性算出手段と、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの振動制御装置または制御プログラムにおいて、
前記非ガウス性ランダム信号生成手段は、
制御スペクトルを時間関数に変換し、ガウス性ランダム信号を得るガウス性ランダム信号生成手段と、
前記算出されたガウス性ランダム信号を前記変換特性に基づいて変換し、非ガウス性ランダム信号に変換する変換手段と、
を備えたことを特徴とする振動制御装置または制御プログラム。
【請求項6】
請求項5の振動制御装置または制御プログラムにおいて、
前記応答スペクトル生成手段は、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を、前記変換手段の変換特性に基づいて、ガウス性応答信号に変換する非ガウス−ガウス変換手段と、
前記ガウス性応答信号を周波数関数に変換し、ガウス性応答スペクトルを得るガウス性応答スペクトル生成手段と、
を備えたことを特徴とする振動制御装置または制御プログラム。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかの振動制御装置または制御プログラムにおいて、
前記非ガウス性ランダム信号生成手段は、制御スペクトルに基づいて時間関数に変換する際に、制御スペクトルの各成分に順次与える位相差の確率密度分布を前記変換特性として制御することにより、生成される非ガウス性ランダム信号の非ガウス特性を制御することを特徴とする振動制御装置または制御プログラム。
【請求項8】
請求項7の振動制御装置または制御プログラムにおいて、
前記非ガウス性ランダム信号生成手段は、前記位相差の確率密度分布の少なくとも平均または分散を前記変換特性として制御することにより、生成される非ガウス性ランダム信号の非ガウス特性を制御することを特徴とする振動制御装置または制御プログラム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの振動制御装置であって、
前記振動試験機は、前記供試体に対して複数軸方向からの振動を与える複数の振動発生器を有しており、
前記応答スペクトル算出手段、前記制御スペクトル算出手段、前記非ガウス性ランダム信号生成手段が、複数軸のそれぞれの軸のために設けられ、
前記制御特性更新手段は、各軸のための応答信号および各軸のためのドライブ信号に基づいて、前記各軸のための応答信号と前記各軸のためのドライブ信号との組み合わせに係る制御特性を演算し、
前記ドライブ信号生成手段は、各軸のための非ガウス性ランダム信号と前記組み合わせに係る制御特性に基づいて、各軸のためのドライブ信号を生成する。
【請求項10】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御方法であって、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得て、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出し、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得て、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得て、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する振動制御方法。
【請求項11】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御方法であって、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得て、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出し、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得て、
前記センサからの応答信号の応答非ガウス特性を算出し、
応答非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較し、両者が等しくなるような変換特性を算出し、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得て、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する振動制御方法。
【請求項12】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標とする任意の確率密度分布にしたがった波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、
制御スペクトルを時間関数に変換し、ガウス分布による確率密度分布を有するガウス性ランダム信号を得るガウス性ランダム信号生成手段と、
ZMNL関数に基づいて、前記ガウス分布による確率密度分布を有するガウス性ランダム信号を、前記目標とする任意の確率密度分布を有する非ガウス性ランダム信号に変換する非ガウス性ランダム信号生成手段と、
前記非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、
を備えた振動制御装置。
【請求項1】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段と、
を備えた振動制御装置。
【請求項2】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、
前記センサからの応答信号の応答非ガウス特性を算出する非ガウス特性算出手段と、
応答非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較し、両者が等しくなるような変換特性を算出する変換特性算出手段と、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段と、
を備えた振動制御装置。
【請求項3】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置をコンピュータによって実現するための制御プログラムであって、当該制御プログラムは、コンピュータを、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項4】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置をコンピュータによって実現するための制御プログラムであって、当該制御プログラムは、コンピュータを、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得る非ガウス性ランダム信号生成手段と、
前記センサからの応答信号の応答非ガウス特性を算出する非ガウス特性算出手段と、
応答非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較し、両者が等しくなるような変換特性を算出する変換特性算出手段と、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する制御特性更新手段として機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの振動制御装置または制御プログラムにおいて、
前記非ガウス性ランダム信号生成手段は、
制御スペクトルを時間関数に変換し、ガウス性ランダム信号を得るガウス性ランダム信号生成手段と、
前記算出されたガウス性ランダム信号を前記変換特性に基づいて変換し、非ガウス性ランダム信号に変換する変換手段と、
を備えたことを特徴とする振動制御装置または制御プログラム。
【請求項6】
請求項5の振動制御装置または制御プログラムにおいて、
前記応答スペクトル生成手段は、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を、前記変換手段の変換特性に基づいて、ガウス性応答信号に変換する非ガウス−ガウス変換手段と、
前記ガウス性応答信号を周波数関数に変換し、ガウス性応答スペクトルを得るガウス性応答スペクトル生成手段と、
を備えたことを特徴とする振動制御装置または制御プログラム。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかの振動制御装置または制御プログラムにおいて、
前記非ガウス性ランダム信号生成手段は、制御スペクトルに基づいて時間関数に変換する際に、制御スペクトルの各成分に順次与える位相差の確率密度分布を前記変換特性として制御することにより、生成される非ガウス性ランダム信号の非ガウス特性を制御することを特徴とする振動制御装置または制御プログラム。
【請求項8】
請求項7の振動制御装置または制御プログラムにおいて、
前記非ガウス性ランダム信号生成手段は、前記位相差の確率密度分布の少なくとも平均または分散を前記変換特性として制御することにより、生成される非ガウス性ランダム信号の非ガウス特性を制御することを特徴とする振動制御装置または制御プログラム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの振動制御装置であって、
前記振動試験機は、前記供試体に対して複数軸方向からの振動を与える複数の振動発生器を有しており、
前記応答スペクトル算出手段、前記制御スペクトル算出手段、前記非ガウス性ランダム信号生成手段が、複数軸のそれぞれの軸のために設けられ、
前記制御特性更新手段は、各軸のための応答信号および各軸のためのドライブ信号に基づいて、前記各軸のための応答信号と前記各軸のためのドライブ信号との組み合わせに係る制御特性を演算し、
前記ドライブ信号生成手段は、各軸のための非ガウス性ランダム信号と前記組み合わせに係る制御特性に基づいて、各軸のためのドライブ信号を生成する。
【請求項10】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御方法であって、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得て、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出し、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得て、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得て、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する振動制御方法。
【請求項11】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標非ガウス特性を有する波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御方法であって、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得て、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出し、
変換特性に基づいて制御スペクトルを時間関数に変換し、非ガウス性ランダム信号を得て、
前記センサからの応答信号の応答非ガウス特性を算出し、
応答非ガウス特性と目標非ガウス特性とを比較し、両者が等しくなるような変換特性を算出し、
非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得て、
ドライブ信号と前記センサからの応答信号とに基づいて、前記伝達特性を算出して、前記制御特性を更新する振動制御方法。
【請求項12】
振動試験機に載置された供試体が、目標スペクトルおよび目標とする任意の確率密度分布にしたがった波形にて振動するように、振動試験機に与えるドライブ信号を制御する振動制御装置であって、
供試体の振動を検出するセンサからの応答信号を周波数関数に変換し、応答スペクトルを得る応答スペクトル算出手段と、
応答スペクトルと目標スペクトルとを比較し、両者が等しくなるような制御スペクトルを算出する制御スペクトル算出手段と、
制御スペクトルを時間関数に変換し、ガウス分布による確率密度分布を有するガウス性ランダム信号を得るガウス性ランダム信号生成手段と、
ZMNL関数に基づいて、前記ガウス分布による確率密度分布を有するガウス性ランダム信号を、前記目標とする任意の確率密度分布を有する非ガウス性ランダム信号に変換する非ガウス性ランダム信号生成手段と、
前記非ガウス性ランダム信号と応答信号とが等しくなるように、振動試験機および供試体を含む系の伝達特性の逆特性を制御特性として、非ガウス性ランダム信号を変形してドライブ信号を得るドライブ信号生成手段と、
を備えた振動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−96845(P2013−96845A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240038(P2011−240038)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000100676)IMV株式会社 (17)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000100676)IMV株式会社 (17)
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