非反転増幅回路
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、非反転増幅回路に関するものであり、例えばオーディオ信号を増幅するヘッドフォーンアンプとして好適なものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、オーディオ信号増幅回路として、図7に示す非反転増幅回路が知られている。この増幅回路は、2電源形オペアンプにより構成され、このオペアンプには単電源からの電源電圧が供給されるようになっている。この図において、符号OPは前記オペアンプであり、その非反転入力はコンデンサーC1を介してこの増幅回路の入力端子INに接続され、この非反転入力と電源端子Vccとの間には抵抗R1が、また接地間には抵抗R2が接続されている。これらの抵抗R1,R2によりオペアンプOPにバイアス電圧が印加される。前記オペアンプOPの出力はコンデンサーC2を介してこの増幅回路の出力端子OUTに接続され、このオペアンプOPの出力と反転入力との間には抵抗R3が、またこの反転入力と接地間には直列に接続された抵抗R4とコンデンサーC3が接続されている。そして、これらの抵抗R3,R4とコンデンサーC4によりオペアンプOPに負帰還がかれられる。前記入力端子INと接地間、前記出力端子OUTと接地間には夫々抵抗R5,R6が接続されている。
【0003】上記のように構成された非反転増幅回路では、電源を投入すると、前記抵抗R1,R5を介してコンデンサーC1に充電電流が流れる。そして、このコンデンサーC1と抵抗R1との接続点の電圧が前記オペアンプOPの非反転入力に印加される。この印加電圧は図8に示すように、電源投入時から次第に上昇して、抵抗R1とR2との抵抗値が同一の場合には、VCC/2に近づく。ここで、VCCは前記電源端子VCCの電圧である。尚、前記抵抗R1とR2とで分圧されたバイアス電圧は、後述する活性領域内の電圧であることは当然である。
【0004】ところで、前記したオペアンプOPは2電源形オペアンプであり、図9のように接続した場合には、入力電圧が0ボルトの近くではオペアンプが正常に動作しないため、出力電圧がVCCに近い値となる。そして入力電圧を徐々に高くすると、ある点でオペアンプが正常に動作するようになる。これにより前記のある点で出力電圧が急に0ボルトの付近まで下がった後、この出力電圧は入力電圧と同じ電圧になって徐々に高くなる。このように、入力電圧が0ボルト付近で急激に高くなることを、オペアンプの反転現象と称することもある。また、前記のようにオペアンプが正常に動作する入力電圧の領域をオペアンプの正常動作領域または活性領域と称する。この正常動作領域は、オペアンプがオペアンプとして動作する領域、つまり反転入力と非反転入力の差が増幅されて出力される領域であり、また反転現象をおこしている領域は、反転入力と非反転入力との差に関係なく、出力電圧がVCCにはりついてしまう領域である。前記図7のように、オペアンプOPとして2電源形オペアンプを用い、かつ単電源から電源電圧を供給するようにすると、電源投入に伴ってオペアンプOPの出力電圧は、図10のように変化し、前記増幅回路の出力端子OUTでの出力電圧は図11のように変化してクリック電圧となる。このように、電源投入時にクリックを伴う出力電圧を音声に変換するとクリック音を生じ、聞きにくい音となる。
【0005】ちなみに、単電源形オペアンプでは、前記2電源形オペアンプとは異なり、前記のような反転現象がなく、前記図9のように接続した場合には入力電圧と同電圧の出力電圧が得られる。しかし、単電源形オペアンプは、出力の負荷インピーダンスが低い場合に歪が多く、オーディオ信号を増幅するのには不適な場合が多い。このため、従来ではオペアンプOPとして前記のように2電源形オペアンプを用い、信号レベルが小さく、かつ増幅回路の出力インピーダンスが高くてもよい場合には、前記出力端子OUTから得られる信号を、電源投入時のみトランジスタによりミュートしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、2電源形オペアンプを用い、単電源から電源電圧を供給するようにした非反転増幅回路では、電源投入時にクリック電圧を生ずるので、これをトランジスタ等によりミュートしていた。ちなみに、この非反転増幅回路がヘッドフォーンアンプの場合には、ミュート回路としてこのアンプから得られる信号をトランジスターにより接地するようにしても、ヘッドフォーンのインピーダンスに比較して該トランジスターのインピーダンスが充分に低くないため、前記した電源投入時のクリック音を充分に軽減することが困難であった。
【0007】この発明は、上記のように、2電源形オペアンプを用い、これに単電源からの電源電圧を供給するようにしても、従来のようにミュートすることなく、電源投入時のクリック電圧を充分に軽減することができる非反転増幅回路を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決し、前記目的を達成するためのこの発明の非反転増幅回路は、2電源形オペアンプにより構成され、単電源からの電源電圧が供給されるようにした非反転増幅回路であって、前記単電源の電圧を分圧してバイアス電圧を前記オペアンプの非反転入力に印加する第1の抵抗及び第2の抵抗と、これらの抵抗の接続点とこの非反転増幅回路の入力端子との間に接続されたコンデンサーとを有するものにおいて、前記単電源の電圧を分圧する第3の抵抗及び第4の抵抗と、この分圧点と前記オペアンプの非反転入力との間に接続されたダイオードと、前記分圧点と前記オペアンプの反転入力との間に接続されたコンデンサーとを有し、前記ダイオードは前記分圧点から非反転入力に向かって順方向に接続し、また、前記第1の抵抗と第2の抵抗との抵抗値の比が、前記第3の抵抗と第4の抵抗との抵抗値の比に等しくなるように、前記第1乃至第4の抵抗の抵抗値を選定したことを特徴とするものである。
【0009】
【作用】上記のように構成された非反転増幅回路では、電源投入時において、オペアンプの反転入力には前記第3の抵抗と第4の抵抗により分圧された電圧が前記コンデンサーを介して印加され、かつ非反転入力に前記第3の抵抗と第4の抵抗により分圧された電圧が前記ダイオードを介して印加されるので、この反転入力と非反転入力の電圧は正常動作領域内のものとなる。従って、前記した反転現象によるクリック電圧は充分に軽減される。また、電源投入時には、前記のように第3の抵抗と第4の抵抗により分圧された電圧が前記コンデンサーを介して反転入力に印加される。従って、この反転入力に印加される電圧は、前記非反転入力に印加される電圧よりも、前記ダイオードの順方向の電圧降下分だけ高くなり、このため前記電源投入時のオペアオプの出力電圧は充分に低い電圧となる。ちなみに、電源投入時にこのオペアンプの出力電圧が急激に立ち上がった場合には、この非反転増幅回路の出力端子での出力電圧がクリック電圧となる。
【0010】前記電源投入時から前記コンデンサーには第1の抵抗等を介して充電電流が流れ、これにより徐々に充電される。この充電により、前記第1の抵抗と第2の抵抗との接続点の電圧が上昇して、前記第3の抵抗と第4の抵抗により分圧された電圧から前記ダイオードによる電圧降下分を差し引いた電圧、即ち電源投入時に前記非反転入力に印加されていた電圧を越えると、この非反転入力への印加電圧は前記第1の抵抗と第2の抵抗との接続点の電圧に沿って上昇する。この上昇により、非反転入力と反転入力との電圧の差が徐々に縮まり、この結果オペアンプの出力電圧は徐々に上昇する。上記したように、この非反転増幅回路では、オペアンプでの反転現象を生ぜず、またオペアンプの出力電圧が電源投入時から徐々に上昇するので、この非反転増幅回路の出力端子におけるクリック電圧は充分に軽減される。
【0011】
【実施例】以下に、この発明の一実施例を図1について説明する。図1において、前記図7と同一符号は同様のものを示すので、その詳細な説明は省略する。前記オペアンプOPの非反転入力は、抵抗R7と前記コンデンサーC1とを直列に介してこの増幅回路の前記した入力端子INに接続されている。前記電源端子VCCと接地間には抵抗R8,R9が直列に接続され、この接続点はダイオードD1を介して前記非反転入力へ、またコンデンサーC4を介して反転入力へ接続されている。また、前記抵抗R1とR2との抵抗値の比が、前記抵抗R8とR9との抵抗値の比に等しくなるように、前記抵抗R1〜R4の抵抗値が選定されている。
【0012】上記のように構成された非反転増幅回路の動作について説明する。この非反転増幅回路の電源投入時における非反転入力へ印加される過渡電圧が図2に実線で示されている。破線は従来のものを参考までに示す。電源が投入されると、前記抵抗R8,R9により分圧された電圧(R8とR9との抵抗値が同じ場合にはVCC/2)が、順方向に接続された前記ダイオードD1を介して非反転入力に印加される。この印加電圧は前記した正常動作領域内のものである。この実線の立ち上がりがVCC/2よりも低いのは、前記ダイオードD1の電圧降下によるものである。電源投入時には、前記図7について説明したように、前記コンデンサーC1に充電電流が流れ、これにより抵抗R1とR2との接続点の電圧が徐々に上昇する。この電圧が前記抵抗R8,R9により分圧された電圧からダイオードD1の前記電圧降下分を差し引いた電圧、即ち非反転入力に印加されていた電圧よりも高くなると、この非反転入力に印加される電圧は前記抵抗R1とR2との接続点の電圧の上昇に沿って上昇し、VCC/2に達する。
【0013】前記抵抗R8,R9により分圧された電圧は前記コンデンサーC4を介して反転入力にも印加される。この電圧は前記した正常動作領域内のものであり、電源投入時には前記非反転入力に印加される電圧よりも前記ダイオードD1の電圧降下分だけ高く、従ってオペアンプOPの出力電圧は図3に実線で示すように低くなる。これが0ボルトまで低くならないのは、2電源形オペアンプそれ自身の特性によるものである。その後、前記コンデンサーC1に抵抗R1,R5を介して流れる充電電流及び抵抗R8、ダイオードD1及び抵抗R7,R5を介して流れる充電電流によって前記コンデンサーC1が徐々に充電されることにより、前記非反転入力への印加電圧が前記したように徐々に上昇して前記反転入力の印加電圧に近づく。これに伴って出力電圧も実線のように上昇する。尚、図3において、破線は図7について説明した従来の非反転増幅回路におけるオペアンプOPの出力電圧を示す。
【0014】図4の実線はこの非反転増幅回路の出力端子OUTの電圧を示すものであり、破線で示す従来のもののようなクリック電圧は生じていない。このように、上記実施例では、■オペアンプOPの非反転入力及び反転入力に印加される電圧は、電源投入時に正常動作領域内にあるので、前記反転現象が生じない。
■電源投入時には、非反転入力への印加電圧が反転入力のそれよりもダイオードD1の電圧降下分だけ低いので、これにより、電源投入時にはオペアンプOPの出力が充分に低くなる。
■非反転入力の印加電圧と反転入力の印加電圧の差が、コンデンサーC1の充電に伴って徐々に縮まるので、オペアンプOPの出力が徐々に上昇する。
上記■■■により、この非反転増幅回路ではその出力端子OUTでの電源投入時のクリック電圧が充分に軽減される。
【0015】尚、電源インピーダンスをゼロとした場合の交流信号における等価回路では、オペアンプOPの反転入力は、一方は抵抗R3を介してオペアンプの出力につながり、もう一方は前記コンデンサーC4を介して前記抵抗R8とR9の並列インピーダンスによって接地されている。このため、この回路の等価回路と図7の回路の等価回路は同一であり、よって、通常動作時は同じ作用をする。また、上記実施例では、抵抗R7を用いたが、抵抗R1〜R4の抵抗値の選定によっては不要となる場合も考えられる。更に、抵抗R5は、入力端子INに接続する機器によっては、不要となる場合もあり得る。
【0016】上記実施例では、電源投入時に電源電圧が一気に立ち上がる場合について説明したが、電源電圧の立ち上がりが鈍い場合には、電源投入時の前記抵抗R8,R9で分圧された電圧が低く、入力電圧が正常動作領域には至らないため、前記の反転現象に伴う前記クリック電圧を生ずることがある。図5及び図6は、前記のように電源電圧の立ち上がりが鈍い場合に好適なものであり、オペアンプOPの入力電圧が正常動作領域に至った後にこのオペアンプOPに電源電流が供給されるようにしたものである。尚、図5及び図6において、図1と同一符号は同様のものを示すので、その詳細な説明は省略する。
【0017】図5の非反転増幅回路では、ツェナーダイオードD2を介して前記オペアンプOPにその電源電流が供給される。従って、オペアンプOPの入力電圧が正常動作領域に至った後にこのオペアンプOPが動作するので、前記したクリック電圧を低減することができる。図6の増幅回路では、トランジスターQ1を介して前記オペアンプOPにその電源電流が供給されるようになっている。R10、R11は電源端子VCCと接地間に直列接続された抵抗であり、その接続点は前記トランジスターQ1のベースに接続されている。この図6のものでは、電源が投入されて電源電圧が上昇し、前記抵抗R10の両端の電圧が所定値になったときに前記トランジスターQ1がオンになる。従って、オペアンプOPの入力電圧が正常動作領域に至った後にこのオペアンプOPが動作するので、前記したクリック電圧を低減することができる。尚、前記図5のように、ツェナーダイオードD2を用いたものでは、このツェナーダイオードD2による電圧降下分だけ出力のダイナミックレンジが狭くなるが、図6のようにトランジスターQ1を用いたものでは、ほとんど影響がない。
【0018】
【発明の効果】上記のように、この発明の非反転増幅回路は、電源投入に伴うオペアンプOPの動作始動時において、前記したクリック電圧の発生を充分に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す回路図である。
【図2】この発明の一実施例における電源投入時にオペアンプの非反転入力に印加される過渡電圧を示す図である。
【図3】この発明の一実施例におけるオペアンプの出力から電源投入時に出力される過渡電圧を示す図である。
【図4】この発明の一実施例である非反転増幅回路から電源投入時に出力される過渡電圧を示す図である。
【図5】この発明の他の実施例を示す回路図である。
【図6】この発明の更なる他の実施例を示す回路図である。
【図7】従来例を示す回路図である。
【図8】従来のものにおける電源投入時にオペアンプの非反転入力に印加される過渡電圧を示す図である。
【図9】単電源からの電源電圧を2電源形オペアンプに供給したときの、このオペアンプの特性を説明するための図である。
【図10】従来のものにおけるオペアンプの出力から電源投入時に出力される過渡電圧を示す図である。
【図11】従来の非反転増幅回路から電源投入時に出力される過渡電圧を示す図である。
【符号の説明】
OP オペアンプ
C1,C2,C3,C4 コンデンサー
IN 入力端子
Vcc 電源端子
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10,R11 抵抗
OUT 出力端子
D1 ダイオード
D2 ツェナーダイオード
Q1 トランジスター
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、非反転増幅回路に関するものであり、例えばオーディオ信号を増幅するヘッドフォーンアンプとして好適なものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、オーディオ信号増幅回路として、図7に示す非反転増幅回路が知られている。この増幅回路は、2電源形オペアンプにより構成され、このオペアンプには単電源からの電源電圧が供給されるようになっている。この図において、符号OPは前記オペアンプであり、その非反転入力はコンデンサーC1を介してこの増幅回路の入力端子INに接続され、この非反転入力と電源端子Vccとの間には抵抗R1が、また接地間には抵抗R2が接続されている。これらの抵抗R1,R2によりオペアンプOPにバイアス電圧が印加される。前記オペアンプOPの出力はコンデンサーC2を介してこの増幅回路の出力端子OUTに接続され、このオペアンプOPの出力と反転入力との間には抵抗R3が、またこの反転入力と接地間には直列に接続された抵抗R4とコンデンサーC3が接続されている。そして、これらの抵抗R3,R4とコンデンサーC4によりオペアンプOPに負帰還がかれられる。前記入力端子INと接地間、前記出力端子OUTと接地間には夫々抵抗R5,R6が接続されている。
【0003】上記のように構成された非反転増幅回路では、電源を投入すると、前記抵抗R1,R5を介してコンデンサーC1に充電電流が流れる。そして、このコンデンサーC1と抵抗R1との接続点の電圧が前記オペアンプOPの非反転入力に印加される。この印加電圧は図8に示すように、電源投入時から次第に上昇して、抵抗R1とR2との抵抗値が同一の場合には、VCC/2に近づく。ここで、VCCは前記電源端子VCCの電圧である。尚、前記抵抗R1とR2とで分圧されたバイアス電圧は、後述する活性領域内の電圧であることは当然である。
【0004】ところで、前記したオペアンプOPは2電源形オペアンプであり、図9のように接続した場合には、入力電圧が0ボルトの近くではオペアンプが正常に動作しないため、出力電圧がVCCに近い値となる。そして入力電圧を徐々に高くすると、ある点でオペアンプが正常に動作するようになる。これにより前記のある点で出力電圧が急に0ボルトの付近まで下がった後、この出力電圧は入力電圧と同じ電圧になって徐々に高くなる。このように、入力電圧が0ボルト付近で急激に高くなることを、オペアンプの反転現象と称することもある。また、前記のようにオペアンプが正常に動作する入力電圧の領域をオペアンプの正常動作領域または活性領域と称する。この正常動作領域は、オペアンプがオペアンプとして動作する領域、つまり反転入力と非反転入力の差が増幅されて出力される領域であり、また反転現象をおこしている領域は、反転入力と非反転入力との差に関係なく、出力電圧がVCCにはりついてしまう領域である。前記図7のように、オペアンプOPとして2電源形オペアンプを用い、かつ単電源から電源電圧を供給するようにすると、電源投入に伴ってオペアンプOPの出力電圧は、図10のように変化し、前記増幅回路の出力端子OUTでの出力電圧は図11のように変化してクリック電圧となる。このように、電源投入時にクリックを伴う出力電圧を音声に変換するとクリック音を生じ、聞きにくい音となる。
【0005】ちなみに、単電源形オペアンプでは、前記2電源形オペアンプとは異なり、前記のような反転現象がなく、前記図9のように接続した場合には入力電圧と同電圧の出力電圧が得られる。しかし、単電源形オペアンプは、出力の負荷インピーダンスが低い場合に歪が多く、オーディオ信号を増幅するのには不適な場合が多い。このため、従来ではオペアンプOPとして前記のように2電源形オペアンプを用い、信号レベルが小さく、かつ増幅回路の出力インピーダンスが高くてもよい場合には、前記出力端子OUTから得られる信号を、電源投入時のみトランジスタによりミュートしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、2電源形オペアンプを用い、単電源から電源電圧を供給するようにした非反転増幅回路では、電源投入時にクリック電圧を生ずるので、これをトランジスタ等によりミュートしていた。ちなみに、この非反転増幅回路がヘッドフォーンアンプの場合には、ミュート回路としてこのアンプから得られる信号をトランジスターにより接地するようにしても、ヘッドフォーンのインピーダンスに比較して該トランジスターのインピーダンスが充分に低くないため、前記した電源投入時のクリック音を充分に軽減することが困難であった。
【0007】この発明は、上記のように、2電源形オペアンプを用い、これに単電源からの電源電圧を供給するようにしても、従来のようにミュートすることなく、電源投入時のクリック電圧を充分に軽減することができる非反転増幅回路を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決し、前記目的を達成するためのこの発明の非反転増幅回路は、2電源形オペアンプにより構成され、単電源からの電源電圧が供給されるようにした非反転増幅回路であって、前記単電源の電圧を分圧してバイアス電圧を前記オペアンプの非反転入力に印加する第1の抵抗及び第2の抵抗と、これらの抵抗の接続点とこの非反転増幅回路の入力端子との間に接続されたコンデンサーとを有するものにおいて、前記単電源の電圧を分圧する第3の抵抗及び第4の抵抗と、この分圧点と前記オペアンプの非反転入力との間に接続されたダイオードと、前記分圧点と前記オペアンプの反転入力との間に接続されたコンデンサーとを有し、前記ダイオードは前記分圧点から非反転入力に向かって順方向に接続し、また、前記第1の抵抗と第2の抵抗との抵抗値の比が、前記第3の抵抗と第4の抵抗との抵抗値の比に等しくなるように、前記第1乃至第4の抵抗の抵抗値を選定したことを特徴とするものである。
【0009】
【作用】上記のように構成された非反転増幅回路では、電源投入時において、オペアンプの反転入力には前記第3の抵抗と第4の抵抗により分圧された電圧が前記コンデンサーを介して印加され、かつ非反転入力に前記第3の抵抗と第4の抵抗により分圧された電圧が前記ダイオードを介して印加されるので、この反転入力と非反転入力の電圧は正常動作領域内のものとなる。従って、前記した反転現象によるクリック電圧は充分に軽減される。また、電源投入時には、前記のように第3の抵抗と第4の抵抗により分圧された電圧が前記コンデンサーを介して反転入力に印加される。従って、この反転入力に印加される電圧は、前記非反転入力に印加される電圧よりも、前記ダイオードの順方向の電圧降下分だけ高くなり、このため前記電源投入時のオペアオプの出力電圧は充分に低い電圧となる。ちなみに、電源投入時にこのオペアンプの出力電圧が急激に立ち上がった場合には、この非反転増幅回路の出力端子での出力電圧がクリック電圧となる。
【0010】前記電源投入時から前記コンデンサーには第1の抵抗等を介して充電電流が流れ、これにより徐々に充電される。この充電により、前記第1の抵抗と第2の抵抗との接続点の電圧が上昇して、前記第3の抵抗と第4の抵抗により分圧された電圧から前記ダイオードによる電圧降下分を差し引いた電圧、即ち電源投入時に前記非反転入力に印加されていた電圧を越えると、この非反転入力への印加電圧は前記第1の抵抗と第2の抵抗との接続点の電圧に沿って上昇する。この上昇により、非反転入力と反転入力との電圧の差が徐々に縮まり、この結果オペアンプの出力電圧は徐々に上昇する。上記したように、この非反転増幅回路では、オペアンプでの反転現象を生ぜず、またオペアンプの出力電圧が電源投入時から徐々に上昇するので、この非反転増幅回路の出力端子におけるクリック電圧は充分に軽減される。
【0011】
【実施例】以下に、この発明の一実施例を図1について説明する。図1において、前記図7と同一符号は同様のものを示すので、その詳細な説明は省略する。前記オペアンプOPの非反転入力は、抵抗R7と前記コンデンサーC1とを直列に介してこの増幅回路の前記した入力端子INに接続されている。前記電源端子VCCと接地間には抵抗R8,R9が直列に接続され、この接続点はダイオードD1を介して前記非反転入力へ、またコンデンサーC4を介して反転入力へ接続されている。また、前記抵抗R1とR2との抵抗値の比が、前記抵抗R8とR9との抵抗値の比に等しくなるように、前記抵抗R1〜R4の抵抗値が選定されている。
【0012】上記のように構成された非反転増幅回路の動作について説明する。この非反転増幅回路の電源投入時における非反転入力へ印加される過渡電圧が図2に実線で示されている。破線は従来のものを参考までに示す。電源が投入されると、前記抵抗R8,R9により分圧された電圧(R8とR9との抵抗値が同じ場合にはVCC/2)が、順方向に接続された前記ダイオードD1を介して非反転入力に印加される。この印加電圧は前記した正常動作領域内のものである。この実線の立ち上がりがVCC/2よりも低いのは、前記ダイオードD1の電圧降下によるものである。電源投入時には、前記図7について説明したように、前記コンデンサーC1に充電電流が流れ、これにより抵抗R1とR2との接続点の電圧が徐々に上昇する。この電圧が前記抵抗R8,R9により分圧された電圧からダイオードD1の前記電圧降下分を差し引いた電圧、即ち非反転入力に印加されていた電圧よりも高くなると、この非反転入力に印加される電圧は前記抵抗R1とR2との接続点の電圧の上昇に沿って上昇し、VCC/2に達する。
【0013】前記抵抗R8,R9により分圧された電圧は前記コンデンサーC4を介して反転入力にも印加される。この電圧は前記した正常動作領域内のものであり、電源投入時には前記非反転入力に印加される電圧よりも前記ダイオードD1の電圧降下分だけ高く、従ってオペアンプOPの出力電圧は図3に実線で示すように低くなる。これが0ボルトまで低くならないのは、2電源形オペアンプそれ自身の特性によるものである。その後、前記コンデンサーC1に抵抗R1,R5を介して流れる充電電流及び抵抗R8、ダイオードD1及び抵抗R7,R5を介して流れる充電電流によって前記コンデンサーC1が徐々に充電されることにより、前記非反転入力への印加電圧が前記したように徐々に上昇して前記反転入力の印加電圧に近づく。これに伴って出力電圧も実線のように上昇する。尚、図3において、破線は図7について説明した従来の非反転増幅回路におけるオペアンプOPの出力電圧を示す。
【0014】図4の実線はこの非反転増幅回路の出力端子OUTの電圧を示すものであり、破線で示す従来のもののようなクリック電圧は生じていない。このように、上記実施例では、
上記
【0015】尚、電源インピーダンスをゼロとした場合の交流信号における等価回路では、オペアンプOPの反転入力は、一方は抵抗R3を介してオペアンプの出力につながり、もう一方は前記コンデンサーC4を介して前記抵抗R8とR9の並列インピーダンスによって接地されている。このため、この回路の等価回路と図7の回路の等価回路は同一であり、よって、通常動作時は同じ作用をする。また、上記実施例では、抵抗R7を用いたが、抵抗R1〜R4の抵抗値の選定によっては不要となる場合も考えられる。更に、抵抗R5は、入力端子INに接続する機器によっては、不要となる場合もあり得る。
【0016】上記実施例では、電源投入時に電源電圧が一気に立ち上がる場合について説明したが、電源電圧の立ち上がりが鈍い場合には、電源投入時の前記抵抗R8,R9で分圧された電圧が低く、入力電圧が正常動作領域には至らないため、前記の反転現象に伴う前記クリック電圧を生ずることがある。図5及び図6は、前記のように電源電圧の立ち上がりが鈍い場合に好適なものであり、オペアンプOPの入力電圧が正常動作領域に至った後にこのオペアンプOPに電源電流が供給されるようにしたものである。尚、図5及び図6において、図1と同一符号は同様のものを示すので、その詳細な説明は省略する。
【0017】図5の非反転増幅回路では、ツェナーダイオードD2を介して前記オペアンプOPにその電源電流が供給される。従って、オペアンプOPの入力電圧が正常動作領域に至った後にこのオペアンプOPが動作するので、前記したクリック電圧を低減することができる。図6の増幅回路では、トランジスターQ1を介して前記オペアンプOPにその電源電流が供給されるようになっている。R10、R11は電源端子VCCと接地間に直列接続された抵抗であり、その接続点は前記トランジスターQ1のベースに接続されている。この図6のものでは、電源が投入されて電源電圧が上昇し、前記抵抗R10の両端の電圧が所定値になったときに前記トランジスターQ1がオンになる。従って、オペアンプOPの入力電圧が正常動作領域に至った後にこのオペアンプOPが動作するので、前記したクリック電圧を低減することができる。尚、前記図5のように、ツェナーダイオードD2を用いたものでは、このツェナーダイオードD2による電圧降下分だけ出力のダイナミックレンジが狭くなるが、図6のようにトランジスターQ1を用いたものでは、ほとんど影響がない。
【0018】
【発明の効果】上記のように、この発明の非反転増幅回路は、電源投入に伴うオペアンプOPの動作始動時において、前記したクリック電圧の発生を充分に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す回路図である。
【図2】この発明の一実施例における電源投入時にオペアンプの非反転入力に印加される過渡電圧を示す図である。
【図3】この発明の一実施例におけるオペアンプの出力から電源投入時に出力される過渡電圧を示す図である。
【図4】この発明の一実施例である非反転増幅回路から電源投入時に出力される過渡電圧を示す図である。
【図5】この発明の他の実施例を示す回路図である。
【図6】この発明の更なる他の実施例を示す回路図である。
【図7】従来例を示す回路図である。
【図8】従来のものにおける電源投入時にオペアンプの非反転入力に印加される過渡電圧を示す図である。
【図9】単電源からの電源電圧を2電源形オペアンプに供給したときの、このオペアンプの特性を説明するための図である。
【図10】従来のものにおけるオペアンプの出力から電源投入時に出力される過渡電圧を示す図である。
【図11】従来の非反転増幅回路から電源投入時に出力される過渡電圧を示す図である。
【符号の説明】
OP オペアンプ
C1,C2,C3,C4 コンデンサー
IN 入力端子
Vcc 電源端子
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10,R11 抵抗
OUT 出力端子
D1 ダイオード
D2 ツェナーダイオード
Q1 トランジスター
【特許請求の範囲】
【請求項1】 2電源形オペアンプにより構成され、単電源からの電源電圧が供給されるようにした非反転増幅回路であって、前記単電源の電圧を分圧してバイアス電圧を前記オペアンプの非反転入力に印加する第1の抵抗及び第2の抵抗と、これらの抵抗の接続点とこの非反転増幅回路の入力端子との間に接続されたコンデンサーとを有するものにおいて、前記単電源の電圧を分圧する第3の抵抗及び第4の抵抗と、この分圧点と前記オペアンプの非反転入力との間に接続されたダイオードと、前記分圧点と前記オペアンプの反転入力との間に接続されたコンデンサーとを有し、前記ダイオードは前記分圧点から非反転入力に向かって順方向に接続し、また、前記第1の抵抗と第2の抵抗との抵抗値の比が、前記第3の抵抗と第4の抵抗との抵抗値の比に等しくなるように、前記第1乃至第4の抵抗の抵抗値を選定したことを特徴とする非反転増幅回路。
【請求項1】 2電源形オペアンプにより構成され、単電源からの電源電圧が供給されるようにした非反転増幅回路であって、前記単電源の電圧を分圧してバイアス電圧を前記オペアンプの非反転入力に印加する第1の抵抗及び第2の抵抗と、これらの抵抗の接続点とこの非反転増幅回路の入力端子との間に接続されたコンデンサーとを有するものにおいて、前記単電源の電圧を分圧する第3の抵抗及び第4の抵抗と、この分圧点と前記オペアンプの非反転入力との間に接続されたダイオードと、前記分圧点と前記オペアンプの反転入力との間に接続されたコンデンサーとを有し、前記ダイオードは前記分圧点から非反転入力に向かって順方向に接続し、また、前記第1の抵抗と第2の抵抗との抵抗値の比が、前記第3の抵抗と第4の抵抗との抵抗値の比に等しくなるように、前記第1乃至第4の抵抗の抵抗値を選定したことを特徴とする非反転増幅回路。
【図1】
【図2】
【図8】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図8】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【特許番号】特許第3038426号(P3038426)
【登録日】平成12年3月3日(2000.3.3)
【発行日】平成12年5月8日(2000.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−176053
【出願日】平成6年7月5日(1994.7.5)
【公開番号】特開平8−23236
【公開日】平成8年1月23日(1996.1.23)
【審査請求日】平成9年6月19日(1997.6.19)
【出願人】(000000022)赤井電機株式会社 (4)
【参考文献】
【文献】実開 昭54−109443(JP,U)
【文献】特公 昭45−39203(JP,B1)
【登録日】平成12年3月3日(2000.3.3)
【発行日】平成12年5月8日(2000.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成6年7月5日(1994.7.5)
【公開番号】特開平8−23236
【公開日】平成8年1月23日(1996.1.23)
【審査請求日】平成9年6月19日(1997.6.19)
【出願人】(000000022)赤井電機株式会社 (4)
【参考文献】
【文献】実開 昭54−109443(JP,U)
【文献】特公 昭45−39203(JP,B1)
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