説明

非水系リチウム型蓄電素子用負極材料、及びそれを用いた非水系リチウム型蓄電素子

【課題】低温時での高い入出力特性を発現できる非水系リチウム型蓄電素子用負極材料と、それを用いた非水系リチウム型蓄電素子を提供する。
【解決手段】リチウムイオンを吸蔵放出できる多孔性炭素材料より形成される非水系リチウム型蓄電素子用負極材料であって、該多孔性炭素材料におけるBJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、21≦Vm1/Vm2≦100、かつ0.20<Vm1≦0.65であり、さらに該多孔性炭素材料の一次粒子径が1〜20μmであることを特徴とする前記非水系リチウム型蓄電素子用負極材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系リチウム型蓄電素子用負極材料、及びそれを用いた非水系リチウム型蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保全及び省資源を目指したエネルギーの有効利用の観点から、深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
【0003】
これらの蓄電システムにおいて、第一の要求事項は、用いられる蓄電素子のエネルギー密度が高いことである。この様な要求に対応可能な高エネルギー密度蓄電素子の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
【0004】
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)、又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
【0005】
現在、高出力蓄電素子としては、電極に活性炭を用いた電気二重層キャパシタ(以下、単に「キャパシタ」ともいう。)が開発されており、耐久性(特にサイクル特性及び高温保存特性)が高く、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。これら電気二重層キャパシタは、上記高出力が要求される分野で最適な蓄電素子と考えられてきたが、そのエネルギー密度は、1〜5Wh/L程度に過ぎず、実用化には出力持続時間が足枷となっている。
【0006】
一方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を実現し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力をより一層高めるとともに、高温での安定性をさらに改善し、耐久性を高めるための研究が精力的に進められている。
【0007】
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(すなわち、素子の放電容量の何%を放電した状態であるかを表す値)50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されているが、そのエネルギー密度は、100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。また、その耐久性(特にサイクル特性及び高温保存特性)については電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、実用的な耐久性を持たせるためには放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲でしかリチウムイオン電池を使用できない。そのため実際に使用できる容量はさらに小さくなり、耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
【0008】
上記の様に高出力密度、高エネルギー密度、及び耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められているが、上述した既存の蓄電素子には一長一短がある。そのため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められており、有力な候補としてリチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子の開発が近年盛んである。
【0009】
リチウムイオンキャパシタは、リチウムイオンを含有した電解質を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(すなわち非水系リチウム型蓄電素子)の一種であって、正極においては電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着・脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵・放出によるファラデー反応によって充放電を行う蓄電素子である。
【0010】
上述のように、正極・負極の双方において非ファラデー反応による充放電を行う電気二重層キャパシタにおいては、出力特性に優れるがエネルギー密度が小さい。一方、正極・負極の双方においてファラデー反応による充放電を行う二次電池であるリチウムイオン電池においては、エネルギー密度に優れるが、出力特性に劣る。リチウムイオンキャパシタは、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応による充放電を行うことによって、優れた出力特性と高いエネルギー密度との両立を狙う新たな蓄電素子である。
【0011】
このようなリチウムイオンキャパシタとしては、例えば、正極活物質として通常の活性炭と異なる水素/炭素の原子数比率が0.05〜0.5、BET比表面積が300〜2000m/g、BJH法によるメソ孔容積が0.02〜0.3ml/g、MP法による全細孔容積が0.3〜1.0ml/gの細孔構造を有する炭化水素材料を用い、負極として黒鉛を除く光学的異方性炭素物質を賦活処理した材料を用いる蓄電素子が提案されている(特許文献1参照)。
【0012】
また、正極活物質として活性炭または水素原子/炭素原子の原子数比率が0.05〜0.50であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体を用い、負極材料として水素原子/炭素原子の原子数比率が0以上0.05未満の難黒鉛化性炭素を用いた蓄電素子が提案されている(特許文献2参照)。
【0013】
また、正極活物質として活性炭を用い、負極活物質として易黒鉛化炭素と難黒鉛化炭素とから成る炭素材料を用いた蓄電素子が提案されている(特許文献3参照)。
【0014】
ここで、リチウムイオンキャパシタを用いる用途としては、鉄道又は建機、自動車用蓄電が挙げられる。これらの用途におけるキャパシタの使用は、過酷な環境下において、大電流を短時間で充放電することが求められる。具体的には、低温時での高い入出力特性である。そのためには、キャパシタセルの低抵抗化は必須である。しかしながら、上記記載の先行技術においては、十分な低抵抗化ができていない。
【0015】
そこで、活性炭の表面に炭素質材料を被着させた複合多孔性炭素材料で、直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とする時、0.01≦Vm1≦0.20かつ0.01≦Vm2≦0.40である蓄電素子用負極材料が提案されている(特許文献4参照)。他には、蓄電セルの負極材料として、カーボンブラックを基材とした多孔性粉末も提案されている(特許文献5参照)。これは、負極材料の細孔をチューニングすることで、低抵抗化を試みたものであり、通常環境下では高い出力特性が得られるものの、低温環境下においては、まだ出力特性の改善が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−93778号公報
【特許文献2】特開2007−115721号公報
【特許文献3】特開2008−235169号公報
【特許文献4】特開2003−346801号公報
【特許文献5】特開2008−150270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、低温時での高い入出力特性を発現できる非水系リチウム型蓄電素子用負極材料と、それを用いた非水系リチウム型蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、リチウムイオンキャパシタの負極材料として、メソ孔量がマイクロ孔量に対して非常に多い多孔性炭素材料を用いることで、これまでには発現できなかった低温時での優れた入出力特性を発現できることを見出した。
【0019】
すなわち、本発明は、下記の非水系リチウム型蓄電素子用負極材料と、それを用いた非水系リチウム型蓄電素子を提供する。
【0020】
[1] リチウムイオンを吸蔵放出できる多孔性炭素材料より形成される非水系リチウム型蓄電素子用負極材料であって、該多孔性炭素材料におけるBJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、21≦Vm1/Vm2≦100、かつ0.20<Vm1≦0.65であり、さらに該多孔性炭素材料の一次粒子径が1〜20μmであることを特徴とする前記非水系リチウム型蓄電素子用負極材料。
【0021】
[2] 前記多孔性炭素材料は難黒鉛化性炭素材料より形成される、[1]に記載の非水系リチウム型蓄電素子用負極材料。
【0022】
[3] 酸又はアルカリ処理により除去可能な無機微粒子と多孔性炭素材料前駆体とを混合して、混合物を得る混合工程、
該混合物を加熱することで該多孔性炭素材料前駆体を炭化させて、多孔性炭素材料が付着した無機微粒子を形成させる焼成工程、
該多孔性炭素材料が付着した無機微粒子に酸又はアルカリ処理を施して、該無機微粒子を除去する除去工程、及び
該多孔性炭素材料の一次粒子径が1〜20μmを満たすように該多孔性炭素材料を粉砕する粉砕工程
を含む、[1]又は[2]に記載の非水系リチウム型蓄電素子用負極材料の製造方法。
【0023】
[4] 加熱により酸又はアルカリ処理で除去可能な無機微粒子になる無機微粒子前駆体と多孔性炭素材料前駆体とを混合して、前駆体混合物を得る混合工程、
該前駆体混合物を加熱することで該無機微粒子前駆体を無機微粒子にするとともに、該多孔性炭素材料前駆体を炭化させ、多孔性炭素材料と無機微粒子の混合物を形成させる焼成工程、
該多孔性炭素材料と無機微粒子の混合物に酸又はアルカリ処理を施して、該無機微粒子を除去する除去工程、及び
該多孔性炭素材料の一次粒子径が1〜20μmを満たすように該多孔性炭素材料を粉砕する粉砕工程
を含む、[1]又は[2]に記載の非水系リチウム型蓄電素子用負極材料の製造方法。
【0024】
[5] [1]又は[2]に記載の非水系リチウム型蓄電素子用負極材料を負極活物質とする負極活物質層と負極集電体とを含む非水系リチウム型蓄電素子用負極。
【0025】
[6] [5]に記載の非水系リチウム型蓄電素子用負極、正極、及びセパレータから成る電極体、並びにリチウム塩を含む非水系電解液が、外装体に収納されて成る非水系リチウム型蓄電素子。
【0026】
[7] 前記正極に含まれる正極活物質は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、
0.3<V1≦0.8、及び
0.5≦V2≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1500m/g以上3000m/g以下である活性炭である、[6]に記載の非水系リチウム型蓄電素子。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、低温時での高い入出力特性を発現できる非水系リチウム型蓄電素子用負極材料と、それを用いた非水系リチウム型蓄電素子が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[負極材料]
本発明における負極材料は、非水系リチウム型蓄電素子の負極を形成するために使用される。この負極材料は、リチウムイオンを吸蔵放出できる多孔性炭素材料より形成され、該多孔性炭素材料におけるBJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、
21≦Vm1/Vm2≦100、かつ
0.20<Vm1≦0.65であり、
さらに該多孔性炭素材料の一次粒子径が1〜20μmであることを特徴とする。
【0029】
本発明における多孔性炭素材料の細孔構造は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、メソ孔量及びマイクロ孔量により規定でき、21≦Vm1/Vm2≦100、かつ0.20<Vm1≦0.65であることを特徴とする。
【0030】
ここで、マイクロ孔量及びメソ孔量は以下のような方法により求めた値である。試料を500℃で一昼夜真空乾燥を行い、窒素を吸着質とし吸脱着の等温線の測定を行なう。このときの脱着側の等温線を用いて、マイクロ孔量はMP法により、メソ孔量はBJH法により算出した。
【0031】
MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、およびマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、M.Mikhail, Brunauer, Bodorにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor, J.Colloid Interface Sci.,26,45 (1968))。また、BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett, Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(E. P. Barrett, L. G. Joyner及びP. Halenda, J. Amer. Chem. Soc., 73, 373(1951))。
【0032】
上記のような細孔構造を持つ多孔性炭素材料を負極材料に用いると、蓄電素子の入出力特性が高くなり、特に低温における入出力特性が顕著に向上する。その理由は、この理論に拘束されるものではないが、マイクロ孔量に比べメソ孔量が非常に多いため、溶媒和されたリチウムイオンの負極材料内の拡散抵抗が極めて小さくなるため、負極材料へのリチウムイオンの吸蔵・脱離が極めてスムーズになると考えられる。
【0033】
従って、マイクロ孔量Vm2に対するメソ孔量Vm1の割合は、21≦Vm1/Vm2≦100であり、35≦Vm1/Vm2≦85がより好ましく、45≦Vm1/Vm2≦65が更に好ましい。また、メソ孔量Vm1は、0.20<Vm1≦0.65であり、0.30<Vm1≦0.50がより好ましく、0.35<Vm1≦0.40が更に好ましい。21≦Vm1/Vm2であれば、高い入出力特性を発現することができ、Vm1/Vm2≦100であれば、比重をある程度の大きさで維持し体積当たりの特性を維持するか、又は負極活物質層の物理的強度を維持することができる。同様に、0.20<Vm1であれば、高い入出力特性を発現することができ、Vm1≦0.65であれば、比重をある程度の大きさで維持し体積当たりの特性を維持するか、又は負極活物質層の物理的強度を維持することができる。
【0034】
本発明における多孔性炭素材料の一次粒子径は、1μm以上20μm以下であり、2.5μm以上12μm以下がより好ましく、3.5μm以上8μm以下が更に好ましい。1μm以上であれば、粒子内でも高い入出力特性に寄与できるメソ孔を持つことができ、リチウムイオンの負極材料への吸蔵・脱離がよるスムーズとなり、かつ負極材料粒子間の電子伝導が高くなり入出力特性を向上することができる。また負極活物質層の密度を保持し、体積当たりの特性を保持することもできる。更に、サイクル耐久性も向上できる。一方、20μm以下であれば、粒子内部へのリチウムイオンの吸蔵・脱離量は比較的少ないため、高い入出力特性を発現できる。ここで言う一次粒子径とは、一次粒子が凝集していないものについては、粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定した際、全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径を50%径とし、その50%径(Median径)のことを指すものである。一次粒子が凝集し、上記方法では二次粒子凝集体を測定してしまう恐れがある場合は、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により観測し、任意に選んだ100個の粒子径の算術平均値を指すものとする。
【0035】
本発明における多孔性炭素材料は、難黒鉛化性炭素材料より形成されることが好ましい。多孔性炭素材料の炭素部分の材質が難黒鉛化性炭素材料であることで、リチウムイオンが吸蔵・脱離する際の不可逆容量が少なくなり、充放電効率が向上する。また、自己放電及びリーク電流を抑えることもでき、サイクル耐久性に優れた負極材料を提供することが可能となる。
【0036】
次に、本発明の負極材料の好ましい製造方法について記載する。
本発明の負極材料の好ましい製造方法としては、以下の工程:
酸又はアルカリ処理により除去可能な無機微粒子と多孔性炭素材料前駆体とを混合して、混合物を得る混合工程、
該混合物を加熱することで前記多孔性炭素材料前駆体を炭化させて、多孔性炭素材料が付着した無機微粒子を形成させる焼成工程、
該多孔性炭素材料が付着した無機微粒子に酸又はアルカリ処理を施して、該無機微粒子を除去する除去工程、及び
該多孔性炭素材料の一次粒子径が1〜20μmを満たすように該多孔性炭素材料を粉砕する粉砕工程
を含む製造方法が好ましい。
【0037】
負極材料の製造方法において、多孔性炭素材料前駆体は、焼成処理をすることで多孔性炭素材料になるものであれば特に制限はない。例えば、多孔性炭素材料が難黒鉛化性炭素材料の場合は、多孔性炭素材料前駆体としては、ナフタレン、アントラセンなどの低分子有機化合物;フェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂類;コールタールピッチ、酸素架橋石油ピッチ、石油又は石炭系ピッチなどのピッチ類などが挙げられる。
【0038】
負極材料の製造方法において、無機微粒子は、混合及び/又は焼成工程後の酸又はアルカリ処理により除去可能であれば特に制限はない。例えば、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、又はコバルト、ニッケル、鉄などの金属が挙げられる。
【0039】
また、無機微粒子の平均粒径は、多孔性炭素材料を製造した際に所望のメソ孔の平均サイズに合わせて選択してよい。本製造工程例においては、無機微粒子を除去した際にできる細孔がメソ孔になるためである。従って、無機微粒子の粒径は、好ましくは2〜50nm、更に好ましくは10〜50nmである。ここで言う平均粒径とは、粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定した際、全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒子径を50%径とし、その50%径(Median径)のことを指すものである。
【0040】
また、焼成工程において、加熱により酸又はアルカリ処理で除去可能な無機微粒子となる無機微粒子前駆体を用いてもよい。その場合には、無機微粒子前駆体と多孔性炭素材料前駆体とを混合して、前駆体混合物を得る混合工程、及び該前駆体混合物を加熱することで該無機微粒子前駆体を無機微粒子にするとともに、該多孔性炭素材料前駆体を炭化させ、多孔性炭素材料と無機微粒子の混合物を形成させる焼成工程の後は、上記記載の製造方法と同様である。
【0041】
無機微粒子前駆体としては、焼成工程において無機微粒子となるものであれば特に制限はない。例えば、シロキサン化合物、蓚酸塩、硝酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
【0042】
本発明の負極材料は細孔を制御したものであり、それは無機微粒子のサイズによって制御しているため、好ましくは、上述した無機微粒子から開始する製造方法の方がより好ましい。
【0043】
混合工程は、無機微粒子又は無機微粒子前駆体と多孔性炭素材料前駆体が均一に混合すれば、その手法には制限はない。例えば、溶媒中で超音波ホモジナイザー分散による湿式混合、粉末又は固体のみでプラネタリミキサを用いた乾式混合などが挙げられる。湿式混合を用いた場合は、混合後の溶媒を除去した後、次の工程に進む必要がある。
【0044】
無機微粒子又は無機微粒子前駆体と多孔性炭素材料前駆体の混合比は、目的の細孔をもつ負極材料ができれば制限はないが、好ましくは、両者の合計に対する多孔性炭素材料前駆体の重量比で10〜90%、更に好ましくは20〜70%である。この重量比は、10%以上であれば、必要なリチウムイオンを吸蔵放出でき、蓄電素子のエネルギー密度を向上することができる。一方で、90%以下であれば、無機微粒子を除去した後にできる細孔において、十分なメソ孔を形成することができ、蓄電素子の高い入出力特性を発現することができる。
【0045】
焼成工程は、既知の方法に従えばよい。例えば、上記多孔性炭素材料前駆体を窒素などの不活性ガス雰囲気下中、500〜1200度程度の温度範囲で炭化することである。
【0046】
酸又はアルカリ処理を施して無機微粒子を除去する除去工程については、無機微粒子が酸又はアルカリ内で溶解又は遊離することで多孔性炭素材料から除去できれば特に制限はない。酸又はアルカリについては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、シュウ酸、フッ化水素酸などの酸、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリが挙げられる。無機微粒子を除去した後は、酸又はアルカリを十分に水洗することで除去し、乾燥させる。
【0047】
最後の工程として、所望の一次粒子径にするために、例えば、ボールミル、ビーズミル等の粉砕機により、多孔性炭素材料を粉砕することで、非水系リチウム型蓄電素子用負極材料を製造することができる。
【0048】
本発明の負極材料を得るための別の製造方法としては、特許文献4に記載された複合多孔性炭素材料の製造方法でも可能であり、例えば、活性炭と炭素材料前駆体とを共存させた状態で、これらを熱処理することにより得ることもできる。
【0049】
上記活性炭に関し、得られる複合多孔性炭素材料が所望の特性を発揮する限り、活性炭を得るための原材料に特に制限はなく、石油系、石炭系、植物系、高分子系等の各種の原材料から得られた市販品を使用することができる。特に、メソ孔量がマイクロ孔量よりも多い活性炭が好ましい。ここで言うメソ孔量及びマイクロ孔量は、先述した多孔性炭素材料におけるこれらと同様の測定方法にて計測されるものである。また、一次粒子径が1μm以上20μm以下の活性炭粉末を用いることが好ましい。該一次粒子径は、より好ましくは、2μm以上10μm以下である。ここで言う一次粒子径は、先述した多孔性炭素材料における測定方法と同様にて測定されるものである。
【0050】
一方、上記炭素材料前駆体とは、熱処理することにより、活性炭に炭素材料を被着させることができる、固体、液体、又は溶剤に溶解可能な有機材料であり、例えば、ピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、フェノール樹脂等の合成樹脂等を挙げることができる。これらの炭素材料前駆体の中でも、安価であるピッチを用いることが製造コスト上好ましい。ピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。例えば、石油系ピッチとしては、原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイル等)、サーマルクラッカーに由来するボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタール等が例示される。
【0051】
上記ピッチを用いる場合、活性炭の表面でピッチの揮発成分又は熱分解成分を熱反応させることによって、該活性炭に炭素材料を被着させることにより得られる。この場合、200〜500℃程度の温度において、ピッチの揮発成分又は熱分解成分の活性炭細孔内への被着が進行し、400℃以上で該被着成分が炭素材料となる反応が進行する。熱処理時のピーク温度は得られる複合多孔性炭素材料の特性、熱反応パターン、熱反応雰囲気等により適宜決定されるものであるが、400℃以上であることが好ましく、より好ましくは450℃〜1000℃であり、さらに好ましくは500〜800℃程度のピーク温度である。また、熱処理時のピーク温度を維持する時間は、30分間〜10時間であればよく、好ましくは1時間〜7時間、より好ましくは2時間〜5時間である。例えば、500〜800℃程度のピーク温度で2時間〜5時間に亘って熱処理する場合、活性炭表面に被着している炭素材料は多環芳香族系炭化水素になっているものと考えられる。
【0052】
上記の複合多孔性炭素材料の製造方法は、例えば、炭素材料前駆体から揮発した炭化水素ガスを含む不活性雰囲気中で活性炭を熱処理し、気相で炭素材料を被着させる方法が挙げられる。また、活性炭と炭素材料前駆体とを予め混合し熱処理する方法、又は溶媒に溶解させた炭素材料前駆体を活性炭に塗布して乾燥させた後に熱処理する方法も可能である。
【0053】
[正極活物質]
正極に含まれる正極活物質としては、活性炭を用いることが好ましい。活性炭の種類及びその原料には特に制限はないが、高容量(すなわち高エネルギー密度)と高出力特性(すなわち高出力密度)とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)としたとき、0.3<V1≦0.8、及び0.5≦V2≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1500m2/g以上3000m2/g以下である活性炭が好ましい。ここで言うメソ孔量及びマイクロ孔量は、上述の多孔性炭素材料でのこれらと同様にて測定されるものである。
【0054】
メソ孔量V1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましく、また、蓄電素子の容量の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。また上記V1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、さらに好ましくは、0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
【0055】
一方、マイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましく、また、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。また上記V2は、より好ましくは、0.6cc/g以上、1.0cc/g以下、さらに好ましくは、0.8cc/g以上、1.0cc/g以下である。
【0056】
また、マイクロ孔量V2に対するメソ孔量V1の比(V1/V2)は、0.3≦V1/V2≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を得ながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという点から、V1/V2が0.3以上であることが好ましく、また、高出力特性を得ながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという点から、V1/V2は0.9以下であることが好ましい。また、より好ましいV1/V2の範囲は、0.4≦V1/V2≦0.7、さらに好ましいV1/V2の範囲は、0.55≦V1/V2≦0.7である。
【0057】
活性炭の平均細孔径は、出力を最大にする点から、17Å以上であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが最も好ましい。また容量を最大にする点から、25Å以下であることが好ましい。本明細書で記載する平均細孔径とは、液体窒素温度における各相対圧力下での窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる重量当たりの全細孔容積をBET比表面積で除して求めたものを指す。
【0058】
活性炭のBET比表面積は、1500m2/g以上3000m2/g以下であることが好ましく、1500m2/g以上2500m2/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1500m2/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、一方、BET比表面積が3000m2/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる傾向がある。
【0059】
上記のような特徴を有する活性炭は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
【0060】
本発明の実施形態では、活性炭の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他合成木材、合成パルプ等、及びそれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
【0061】
これらの原料を上記活性炭とするための炭化及び賦活の方式としては、例えば固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
【0062】
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(好ましくは450〜600℃)程度で30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
【0063】
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。このうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
【0064】
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(好ましくは0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、上記炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、さらに好ましくは6〜10時間)かけて800〜1000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
【0065】
さらに、上記炭化物の賦活処理に先立ち、あらかじめ上記炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活することができる。
【0066】
上記炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量及び昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本発明の実施形態において使用できる、上記の特徴を有する活性炭を製造することができる。
【0067】
活性炭の一次粒子径は、1〜20μmであることが好ましい。ここで言う一次粒子径は、先述した多孔性炭素材料における測定方法と同様に測定されるものである。
【0068】
上記一次粒子径が1μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。また、一次粒子径が小さいことは耐久性が低いという欠点を招来する場合がある。一方で、一次粒子径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。さらに、上記一次粒子径は、好ましくは2〜15μmであり、更に好ましくは3〜10μmである。
【0069】
[蓄電素子]
本発明の実施形態では、蓄電素子は、非水系リチウム型であり、かつ本発明の負極材料を負極活物質として含む負極活物質層が形成されている負極電極体、正極活物質を含む正極活物質層が形成されている正極電極体及びセパレータが積層されている電極積層体と、リチウムイオン含有電解質を含む非水系電解液とを外装体に収納して成る。また、本発明の実施形態では、非水系リチウム型蓄電素子用負極は、本発明の負極材料を負極活物質とする負極活物質層、及び負極集電体を用いて形成される。
【0070】
本発明の実施形態では、蓄電素子は、上述の負極材料及び正極活物質に加えて、集電体、活物質層における活物質以外の成分、電極体、電解液、セパレータ、外装体等を含んでよい。以下、これらの構成要素について説明する。
【0071】
(集電体)
集電体は、通常、蓄電素子において、溶出及び反応等の劣化が起こらない金属箔である。この金属箔としては、特に制限はなく、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。本発明の蓄電素子においては、正極集電体をアルミニウム箔、負極集電体を銅箔とすることが好ましい。
【0072】
また、集電体は貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、貫通孔を有する金属箔でもよい。集電体の厚みは、特に制限はないが、1〜100μmが好ましい。集電体の厚みが1μm以上であると、活物質層を集電体に固着させて成る電極体(本発明における正極及び負極)の形状及び強度を保持できるため好ましい。一方で、集電体の厚みが100μm以下であると、蓄電素子としての重量及び体積が適度になり、そして重量及び体積当たりの性能が高く傾向があるため好ましい。
【0073】
(活物質層における活物質以外の成分)
活物質層には、既知のリチウムイオン電池、キャパシタ等で活物質層に含まれる既知の成分を用いることができる。活物質層には、前述した正極活物質又は負極活物質以外に、既知の成分、例えば、バインダー、導電フィラー、増粘剤等を含ませることができ、その種類には特に制限はない。以下、非水系リチウム型蓄電素子における活物質層の成分の詳細を述べる。
【0074】
活物質層は、必要に応じ導電性フィラー、例えばカーボンブラック等を含むことができる。導電性フィラーの使用量は、活物質100質量部に対して0〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。導電性フィラーは、高出力密度の観点からは用いることが好ましいが、上記使用量が30質量部以下であると、活物質層に占める活物質の量の割合が高くなり、そして体積当たりの出力密度が多くなる傾向があるため好ましい。
【0075】
上記の活物質、更に必要に応じて使用する導電性フィラーを、活物質層として集電体上に固着させるために、バインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、スチレンブタジエン共重合体、セルロース誘導体等を用いることができる。バインダーの使用量は、活物質100質量部に対して3〜20質量部の範囲が好ましく、5〜15質量部の範囲がより好ましい。バインダーの上記使用量が20質量部以下であるとき、活物質の表面をバインダーが覆わないので、イオンの出入りが速くなり、高出力密度が得られ易い傾向があるため好ましい。一方で、バインダーの上記使用量が3質量部以上であるとき、活物質層を集電体上に固着し易くなる傾向があるため好ましい。
【0076】
尚、本発明における電極体は、活物質層を集電体の上面(片面)のみに形成したもの、又は上下面(両面)に形成したものでもよい。
【0077】
(電極体)
電極体は、活物質層を集電体に固着させて成る。電極体において、活物質層の厚みは、通常、30〜200μm程度が好ましい。活物質層の厚みが30μm以上であると、蓄電素子全体に対する活物質量の割合が多くなり、エネルギー密度も多くなる傾向があるため好ましい。一方で、活物質層の厚みが200μm以下であると、電極内部の抵抗が小さくなり、出力密度が上がる傾向があるため好ましい。
【0078】
電極体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の電極製造技術により製造することが可能であり、例えば、活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤によりスラリー状にし、活物質層を集電体上に塗布して乾燥し、必要に応じてプレスすることにより得られる。また、溶剤を使用せずに、活物質を含む各種材料を乾式で混合し、活物質をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて集電体に貼り付けることも可能である。
【0079】
(電解液)
本発明の蓄電素子に用いられる非水系電解液は、有機溶媒とリチウム塩とから成る。有機溶媒としては、炭酸エチレン(EC)及び炭酸プロピレン(PC)に代表される環状炭酸エステル、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)及び炭酸エチルメチル(MEC)に代表される鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(γBL)等のラクトン類、並びにこれらの混合溶媒を用いることができる。混合溶媒としては、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートから成る群から選ばれる1種以上の環状カーボネートと、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート及びジエチルカーボネートから成る群から選ばれる1種以上の非環状カーボネートとの混合物が、高い誘電率及び低い粘度を両立した非水系電解液を得ることができるために好ましい。
【0080】
本発明の一態様において、これらの有機溶媒に溶解する電解質はリチウム塩である。好ましいリチウム塩を例示すれば、LiBF、LiPF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiN(SOCF)(SOH)及びこれらの混合塩を挙げることができる。
【0081】
非水系電解液中の電解質濃度は、0.5〜2.0mol/Lの範囲が好ましい。0.5mol/L未満では陰イオンが不足して蓄電素子の容量が低くなる傾向がある。また、2.0mol/Lを超えると未溶解のリチウム塩が該電解液中に析出したり、該電解液の粘度が高くなりすぎたりすることによって、逆に伝導度が低下して出力特性が低下する傾向がある。
【0082】
(セパレータ)
成型された正極電極体及び負極電極体は、セパレータを介して積層又は捲廻積層され、金属缶又はラミネートフィルムから形成された外装体内に挿入される。セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。
【0083】
セパレータの厚みは10μm以上50μm以下が好ましい。10μm以上の厚みでは、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。一方で、50μm以下の厚みでは、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
【0084】
(外装体)
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルムなどを使用できる。この金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。また、このラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内層樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内層樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、ヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変成ポリオレフィン等が好適に使用できる。
【0085】
(リチウムイオンのプリドープ法)
なお本発明において、負極電極体には、あらかじめリチウムイオンをプリドープしておくことができる。プリドープする方法としては、既知の方法、例えば、負極活物質層にリチウム金属箔を積層した状態で負極電極体を組み立て、これを非水系電解液に入れる方法を使用することができる。リチウムイオンをプリドープしておくことにより、蓄電素子の容量及び作動電圧を制御することが可能である。
【実施例】
【0086】
以下に、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
[正極電極体の作製]
破砕されたヤシ殻炭化物を、小型炭化炉において窒素中、500℃で3時間炭化処理した。処理後の該炭化物を賦活炉内へ入れ、1kg/hの水蒸気を予熱炉で加温した状態で該賦活炉内へ投入し、900℃まで8時間かけて昇温した後に取り出し、窒素雰囲気下で冷却して活性炭を得た。得られた活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りした。その後、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行い、活性炭1を得た。島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて一次粒子径を測定した結果、4.2μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)で、細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積は2360m2/g、メソ孔量(V1)は0.52cc/g、マイクロ孔量(V2)は0.88cc/gであった。
【0087】
活性炭1を80.8質量部、ケッチェンブラック6.2質量部及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を10質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を3.0質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、乾燥し、プレスして、活物質層の厚さが55μmの正極電極体を得た。
【0088】
[負極電極体の作製]
フェノール樹脂硬化体とSiO微粒子(平均粒子径25nm)とを重量比で35:65で準備し、メノウ乳鉢中で十分に均一になるように混合した後、窒素雰囲気下1000℃で4時間熱処理を行うことで、フェノール樹脂を炭化させた。得られた材料を、フッ化水素酸で洗浄することでSiO微粒子を除去し乾燥した後、ボールミル粉砕機で約8時間粉砕することにより、負極材料となる多孔性炭素材料1を得た。得られた多孔性炭素材料1を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径(D50)が4.1μm、メソ孔量(Vm1)が0.358cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.009cc/g、Vm1/Vm2=39.8であった。
【0089】
上記多孔性炭素材料1を83.4質量部、アセチレンブラックを8.3質量部及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.3質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ15μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥し、プレスして、活物質層の厚さが60μmの負極電極体を得た。この電極体に、多孔性炭素材料1の単位重量あたり600mAh/gに相当するリチウムイオンを、リチウム金属箔を用いて電気化学的にドーピングした。
【0090】
[電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)の体積比率が80:20となる混合溶媒液に、1mol/lの濃度でLiPF6を溶解して得た溶液を電解液として使用した。
【0091】
[蓄電素子の組立と性能]
得られた負極電極体と正極電極体との間に、セルロース製不織布セパレータ(厚み30μm)を積層して、ラミネートフィルムから形成された外装体内に挿入し、上記電解液を注入して該外装体を密閉し、非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
【0092】
作製した蓄電素子を25℃の環境下で特性評価を行った。1.5Cの電流量で4.0Vまで充電し、その後4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を2時間行った。続いて、1.5Cの電流量で2.0Vまで放電した。次に、−30℃の環境下で特性評価を行った。上記と同様な充電を行い、500Cの電流量で2.0Vまで放電した。25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、12.9%であった。
【0093】
<実施例2>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0094】
[負極電極体の作製]
フェノール樹脂硬化体とSiO微粒子(平均粒子径25nm)とを重量比で35:65で準備し、メノウ乳鉢中で十分に均一になるように混合した後、窒素雰囲気下1000℃で4時間熱処理を行うことで、フェノール樹脂を炭化させた。得られた材料を、フッ化水素酸で洗浄することでSiO微粒子を除去し乾燥した後、ボールミル粉砕機で約4時間粉砕することにより、負極材料となる多孔性炭素材料2を得た。得られた多孔性炭素材料2を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が14.8μm、メソ孔量(Vm1)が0.291cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.011cc/g、Vm1/Vm2=26.5であった。
【0095】
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0096】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0097】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、8.9%であった。
【0098】
<実施例3>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0099】
[負極電極体の作製]
石炭系ピッチとSiO微粒子(平均粒子径25nm)とを重量比で35:65で準備し、プラネタリミキサで十分に均一になるように混合した後、空気雰囲気下250℃で約2時間酸化処理を行った後、真空下1100℃で2時間熱処理を行うことで、石炭系ピッチを炭化させた。得られた材料を、フッ化水素酸で洗浄することでSiO微粒子を除去し乾燥した後、ボールミル粉砕機で約8時間粉砕することにより、負極材料となる多孔性炭素材料3を得た。得られた多孔性炭素材料3を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が3.9μm、メソ孔量(Vm1)が0.408cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.008cc/g、Vm1/Vm2=51.0であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0100】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0101】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、13.5%であった。
【0102】
<実施例4>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0103】
[負極電極体の作製]
石炭系ピッチとSiO微粒子(平均粒子径が25nm)とを重量比で35:65で準備し、プラネタリミキサで十分に均一になるように混合した後、空気雰囲気下250℃で約2時間酸化処理を行った後、真空下1100℃で2時間熱処理を行うことで、石炭系ピッチを炭化させた。得られた材料を、フッ化水素酸で洗浄することでSiO微粒子を除去し乾燥した後、ボールミル粉砕機で約4時間粉砕することにより、負極材料となる多孔性炭素材料4を得た。得られた多孔性炭素材料4を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が15.1μm、メソ孔量(Vm1)が0.366cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.009cc/g、Vm1/Vm2=40.7であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0104】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0105】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、10.8%であった。
【0106】
<実施例5>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0107】
[負極電極体の作製]
フェノール樹脂硬化体とMgO微粒子(平均粒子径が25nm)とを重量比で35:65で準備し、メノウ乳鉢中で十分に均一になるように十分に混合した後、窒素雰囲気下1000℃で4時間熱処理を行うことで、フェノール樹脂を炭化させた。得られた材料を、フッ化水素酸で洗浄することでMgO微粒子を除去し乾燥した後、ボールミル粉砕機で約8時間粉砕することにより、負極材料となる多孔性炭素材料5を得た。得られた多孔性炭素材料5を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が4.1μm、メソ孔量(Vm1)が0.298cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.009cc/g、Vm1/Vm2=33.1であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0108】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0109】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、10.9%であった。
【0110】
<実施例6>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0111】
[負極電極体の作製]
フェノール樹脂硬化体とMgO微粒子(平均粒子径が25nm)とを重量比で35:65で準備し、メノウ乳鉢中で十分に均一になるように混合した後、窒素雰囲気下1000℃で4時間熱処理を行うことで、フェノール樹脂を炭化させた。得られた材料を、フッ化水素酸で洗浄することでMgO微粒子を除去し乾燥した後、ボールミル粉砕機で約4時間粉砕することにより、負極材料となる多孔性炭素材料6を得た。得られた多孔性炭素材料6を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が14.7μm、メソ孔量(Vm1)が0.391cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.012cc/g、Vm1/Vm2=32.6であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0112】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0113】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、9.8%であった。
【0114】
<実施例7>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0115】
[負極電極体の作製]
石炭系ピッチとMgO微粒子(平均粒子径が25nm)とを重量比で35:65で準備し、プラネタリミキサで十分に均一になるように混合した後、空気雰囲気下250℃で約2時間酸化処理を行った後、真空下1100℃で2時間熱処理を行うことで、石炭系ピッチを炭化させた。得られた材料を、フッ化水素酸で洗浄することでMgO微粒子を除去し乾燥した後、ボールミル粉砕機で約8時間粉砕することにより、負極材料となる多孔性炭素材料7を得た。得られた多孔性炭素材料7を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が3.9μm、メソ孔量(Vm1)が0.328cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.009cc/g、Vm1/Vm2=36.4であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0116】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0117】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、12.1%であった。
【0118】
<実施例8>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0119】
[負極電極体の作製]
石炭系ピッチとMgO微粒子(平均粒子径が25nm)とを重量比で35:65で準備し、プラネタリミキサで十分に均一になるように混合した後、空気雰囲気下250℃で約2時間酸化処理を行った後、真空下1100℃で2時間熱処理を行うことで、石炭系ピッチを炭化させた。得られた材料を、フッ化水素酸で洗浄することでMgO微粒子を除去し乾燥した後、ボールミル粉砕機で約4時間粉砕することにより、負極材料となる多孔性炭素材料8を得た。得られた多孔性炭素材料8を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が15.2μm、メソ孔量(Vm1)が0.420cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.008cc/g、Vm1/Vm2=52.5であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0120】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0121】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、11.2%であった。
【0122】
<実施例9>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0123】
[負極電極体の作製]
SiO微粒子の平均粒子径を40nmに変えること以外は実施例1と同様に作製することで、多孔性炭素材料9を得た。得られた多孔性炭素材料9を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が4.3μm、メソ孔量(Vm1)が0.602cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.007cc/g、Vm1/Vm2=86.0であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0124】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0125】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、10.2%であった。
【0126】
<実施例10>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0127】
[負極電極体の作製]
MgO微粒子の平均粒子径を40nmに変えること以外は実施例5と同様に作製することで、多孔性炭素材料10を得た。得られた多孔性炭素材料10を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が4.1μm、メソ孔量(Vm1)が0.498cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.008cc/g、Vm1/Vm2=62.3であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0128】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0129】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、10.9%であった。
【0130】
<実施例11>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0131】
[負極電極体の作製]
市販のアルカリ賦活活性炭について、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)で、窒素を吸着質として細孔分布を測定した。比表面積はBET1点法により求めた。また、上述したように、脱着側の等温線を用いて、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法によりそれぞれ求めた。その結果、BET比表面積が2200m2/g、メソ孔量が0.773cc/g、マイクロ孔量が0.716cc/gであった。このアルカリ賦活活性炭150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)300gを入れたステンレス製バットの上に置き、電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行った。熱処理は窒素雰囲気下で、600℃まで12時間で昇温し、同温度で6時間保持することによって行い、続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、炉から取り出し、負極材料となる(複合)多孔性炭素材料11を得た。得られた(複合)多孔性炭素材料11を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が7.1μm、メソ孔量(Vm1)が0.476cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.018cc/g、Vm1/Vm2=26.4であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0132】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0133】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、10.4%であった。
【0134】
<実施例12>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0135】
[負極電極体の作製]
フェノール樹脂硬化体とシュウ酸マグネシウムを重量比で35:65で準備し、メノウ乳鉢中で十分に均一になるように混合した。次いで、窒素雰囲気下1000℃で4時間熱処理を行うことで、フェノール樹脂を炭化させるとともに、蓚酸マグネシウムから酸化マグネシウムを生成させた。得られた材料を、フッ化水素酸で洗浄することでMgO微粒子を除去し乾燥した後、ボールミル粉砕機で約8時間粉砕することにより、負極材料となる多孔性炭素材料12を得た。
得られた多孔性炭素材料12を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が5.2μm、メソ孔量(Vm1)が0.422cc/g、 マイクロ孔量(Vm2)が0.010cc/g、Vm1/Vm2=42.2であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0136】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0137】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、13.0%であった。
【0138】
<比較例1>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0139】
[負極電極体の作製]
市販のヤシ殻活性炭について、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)で、窒素を吸着質として細孔分布を測定した。比表面積はBET1点法により求めた。また、上述したように、脱着側の等温線を用いて、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法によりそれぞれ求めた。その結果、BET比表面積が1,780m2/g、メソ孔量が0.198cc/g、マイクロ孔量が0.695cc/gであった。
【0140】
このヤシ殻活性炭150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行った。熱処理は窒素雰囲気下で、600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持することによって行い、続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、炉から取り出し、負極材料となる複合多孔性材料を得た。得られた複合多孔性材料を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が2.9μm、メソ孔量(Vm1)が0.180cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.084cc/g、Vm1/Vm2=2.1であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0141】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0142】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、0.5%であった。
【0143】
<比較例2>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0144】
[負極電極体の作製]
石炭系ピッチを空気雰囲気下250℃で約2時間酸化処理を行った後、真空下1100℃で1時間熱処理を行った。得られた材料を、ボールミル粉砕機で約4時間粉砕することにより、負極材料となる難黒鉛化性炭素材料を得た。得られた難黒鉛化性炭素材料を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が15μm、メソ孔量(Vm1)が0.008cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.001cc/g、Vm1/Vm2=6.7であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0145】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0146】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、−30℃の500Cでの放電はできなかった。
【0147】
<比較例3>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0148】
[負極電極体の作製]
SiO微粒子の添加量を3分の1に変えること以外は実施例1と同様に作製することで、多孔性炭素材料13を得た。得られた多孔性炭素材料13を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が4.0μm、メソ孔量(Vm1)が0.260cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.026cc/g、Vm1/Vm2=10.0であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0149】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0150】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、4.9%であった。
【0151】
<比較例4>
[正極電極体の作製]
実施例1と同様に作製した。
【0152】
[負極電極体の作製]
ボールミル粉砕機での粉砕時間を1時間に変えること以外は実施例1と同様に作製することで、多孔性炭素材料14を得た。得られた多孔性炭素材料14を上記活性炭1と同様に測定したところ、一次粒子径が31μm、メソ孔量(Vm1)が0.218cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.007cc/g、Vm1/Vm2=31.0であった。
以降、実施例1と同様な手順にて負極電極体を作製した。
【0153】
[電解液の調製]
実施例1と同様に作製した。
【0154】
[蓄電素子の組立と性能]
実施例1と同様に非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。
作製した蓄電素子を実施例1と同様に評価した結果、25℃の1.5Cでの放電容量に対する、−30℃の500Cでの放電容量の比率は、5.1%であった。
【0155】
【表1】

【0156】
以上より、本発明に係る蓄電素子は、低温時での高い入出力特性を発現できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の負極材料を用いた非水系リチウム型蓄電素子は、例えば、自動車において、内燃機関又は燃料電池、モーター、及び蓄電素子を組み合わせたハイブリット駆動システムの分野、更には瞬間電力ピークのアシスト用途等で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを吸蔵放出できる多孔性炭素材料より形成される非水系リチウム型蓄電素子用負極材料であって、該多孔性炭素材料におけるBJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をVm1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をVm2(cc/g)とするとき、
21≦Vm1/Vm2≦100、かつ
0.20<Vm1≦0.65であり、
さらに該多孔性炭素材料の一次粒子径が1〜20μmであることを特徴とする前記非水系リチウム型蓄電素子用負極材料。
【請求項2】
前記多孔性炭素材料は難黒鉛化性炭素材料より形成される、請求項1に記載の非水系リチウム型蓄電素子用負極材料。
【請求項3】
酸又はアルカリ処理により除去可能な無機微粒子と多孔性炭素材料前駆体とを混合して、混合物を得る混合工程、
該混合物を加熱することで該多孔性炭素材料前駆体を炭化させて、多孔性炭素材料が付着した無機微粒子を形成させる焼成工程、
該多孔性炭素材料が付着した無機微粒子に酸又はアルカリ処理を施して、該無機微粒子を除去する除去工程、及び
該多孔性炭素材料の一次粒子径が1〜20μmを満たすように該多孔性炭素材料を粉砕する粉砕工程
を含む、請求項1又は2に記載の非水系リチウム型蓄電素子用負極材料の製造方法。
【請求項4】
加熱により酸又はアルカリ処理で除去可能な無機微粒子になる無機微粒子前駆体と多孔性炭素材料前駆体とを混合して、前駆体混合物を得る混合工程、
該前駆体混合物を加熱することで該無機微粒子前駆体を無機微粒子にするとともに、該多孔性炭素材料前駆体を炭化させ、多孔性炭素材料と無機微粒子の混合物を形成させる焼成工程、
該多孔性炭素材料と無機微粒子の混合物に酸又はアルカリ処理を施して、該無機微粒子を除去する除去工程、及び
該多孔性炭素材料の一次粒子径が1〜20μmを満たすように該多孔性炭素材料を粉砕する粉砕工程
を含む、請求項1又は2に記載の非水系リチウム型蓄電素子用負極材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の非水系リチウム型蓄電素子用負極材料を負極活物質とする負極活物質層と負極集電体とを含む非水系リチウム型蓄電素子用負極。
【請求項6】
請求項5に記載の非水系リチウム型蓄電素子用負極、正極、及びセパレータから成る電極体、並びにリチウム塩を含む非水系電解液が、外装体に収納されて成る非水系リチウム型蓄電素子。
【請求項7】
前記正極に含まれる正極活物質は、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV2(cc/g)とするとき、
0.3<V1≦0.8、及び
0.5≦V2≦1.0を満たし、かつBET法により測定される比表面積が1500m/g以上3000m/g以下である活性炭である、請求項6に記載の非水系リチウム型蓄電素子。

【公開番号】特開2013−80780(P2013−80780A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219281(P2011−219281)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】