説明

非水電解液及びそれを用いた蓄電デバイス

【課題】広い温度範囲で電気化学特性を向上できる非水電解液及びそれを用いた蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】下記式で表される、エノール構造を有する環状スルホン酸エステル化合物が非水電解液中に含有されている。


【効果】C=C−OR基などの特定の基を有するエノール構造を有しているため、ヒドロキシプロパンスルトンのようにヒドロキシ基の還元分解により過度に分解して負極の抵抗を増加させない。また、電極上で分解した際に環構造が開環することにより重合して耐熱性の高い被膜を形成するだけでなく、さらに、被膜中にC=C−OR基などの置換基が含まれるため、これらの置換基がリチウムイオンの緩やかなトラップサイトとして機能するためリチウムイオン伝導性が著しく向上し、広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い温度範囲での電気化学特性を向上できる非水電解液およびそれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電デバイス、特にリチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の小型電子機器、電気自動車や電力貯蔵用として広く使用されている。これらの電子機器や自動車は、真夏の高温下や極寒の低温下等広い温度範囲で使用される可能性があるため、広い温度範囲でバランス良く電気化学特性を向上させることが求められている。
特に地球温暖化防止のため、CO排出量を削減することが急務となっており、リチウム二次電池やキャパシタなどの蓄電デバイスからなる蓄電装置を搭載した環境対応車の中でも、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)の早期普及が求められている。自動車は移動距離が長いため、熱帯の非常に暑い地域から極寒の地域まで幅広い温度範囲の地域で使用される可能性がある。従って、特にこれらの車載用の蓄電デバイスは、高温から低温まで幅広い温度範囲で使用しても電気化学特性が劣化しないことが要求されている。
尚、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。
【0003】
リチウム二次電池は、主にリチウムを吸蔵及び放出可能な材料を含む正極及び負極、リチウム塩と非水溶媒からなる非水電解液から構成され、非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等のカーボネートが使用されている。
また、負極としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金等)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵及び放出することが可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料を用いたリチウム二次電池が広く実用化されている。
【0004】
例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の高結晶化した炭素材料を負極材料として用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の溶媒が充電時に負極表面で還元分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、サイクル特性の低下を生じることが分かっている。また、非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすくなる。
更に、リチウム金属やその合金、スズ又はケイ素等の金属単体や酸化物を負極材料として用いたリチウム二次電池は、初期の容量は高いもののサイクル中に微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水溶媒の還元分解が加速的に起こり、電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することが知られている。また、これらの負極材料の微粉化や非水溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすくなる。
一方、正極として、例えばLiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePO等を用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の非水溶媒が充電状態で正極材料と非水電解液との界面において、局部的に一部酸化分解することにより発生した分解物やガスが電池の望ましい電気化学的反応を阻害するため、やはり広い温度範囲での電気化学特性の低下を生じることが分かっている。
【0005】
以上のように、正極上や負極上で非水電解液が分解するときの分解物やガスにより、リチウムイオンの移動が阻害されたり、電池が膨れたりすることで電池性能が低下していた。そのような状況にも関わらず、リチウム二次電池が搭載されている電子機器の多機能化はますます進み、電力消費量が増大する流れにある。そのため、リチウム二次電池の高容量化はますます進んでおり、電極の密度を高めたり、電池内の無駄な空間容積を減らす等、電池内の非水電解液の占める体積が小さくなっている。従って、少しの非水電解液の分解で、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすい状況にある。
特許文献1には、ヒドロキシプロパンスルトンを含有する非水電解液が提案されており、放電前および充放電時にヒドロキシプロパンスルトンのヒドロキシ基がリチウム金属に吸着して負極上に緻密な安定な被膜を作るため、サイクル特性が向上することが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−4813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、広い温度範囲での電気化学特性を向上できる非水電解液及びそれを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の非水電解液の性能について詳細に検討した。その結果、前記特許文献の非水電解液では、ヒドロキシプロパンスルトンのヒドロキシ基が還元を受けやすいため充電状態で高温保存を行なうと過度に分解し、自己放電を引き起こしたり、負極の抵抗を増加させてしまうため、高温保存後の低温放電特性などの広い温度範囲での電気化学特性を向上させるという課題に対しては、十分な効果を発揮できないのが実情であった。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、非水電解液中に特定の化合物を1種以上含有することで、広い温度範囲での電気化学特性、特にリチウム電池の電気化学特性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の(1)および(2)を提供するものである。
(1)非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)〜(IV)で表される環状スルホン酸エステル化合物の少なくとも1種を非水電解液中に含有することを特徴とする非水電解液。
【0010】
【化1】

(式中、Lは少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいメチレン基、またはエチレン基を示し、XはR、SiR、P(=O)(OR、S(=O)、C(=O)OR、C(=O)Rを示す。Rは少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基を示す。)
【0011】
(2)正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスにおいて、該非水電解液中に前記一般式(I)〜(IV)で表される環状スルホン酸エステル化合物の少なくとも1種を非水電解液中に含有することを特徴とする蓄電デバイス。
【0012】
(3)一般式(I)〜(IV)で表される化合物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、広い温度範囲での電気化学特性、特に高温保存後の低温放電特性を向上できる非水電解液及びそれを用いたリチウム電池等の蓄電デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔非水電解液〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)〜(IV)で表されるエノール構造を有する環状スルホン酸エステル化合物の少なくとも1種を非水電解液中に含有することを特徴とする。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Lは少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいメチレン基、またはエチレン基を示し、XはR、SiR、P(=O)(OR、S(=O)、C(=O)OR、C(=O)Rを示す。Rは少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基を示す。)
【0017】
本発明の非水電解液が、広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。本願発明の一般式(I)〜(IV)で表される環状スルホン酸エステル化合物は、特定の基、すなわちC=C−OR基、C=C−OSiR基、C=C−OSOR基、C=C−OP(=O)(OR)基、C=C−OC(=O)R基、またはC=C−OC(=O)OR基などのエノール構造を有している。従って、ヒドロキシプロパンスルトンのようにヒドロキシ基の還元分解により過度に分解して負極の抵抗を増加させない。また、電極上で分解した際に環構造が開環することにより重合して耐熱性の高い被膜を形成するだけでなく、さらに、被膜中にC=C−OR基、C=C−OSiR基、C=C−OSOR基、C=C−OP(=O)(OR)基、C=C−OC(=O)OR、またはC=C−OC(=O)R基などの置換基が含まれるため、これらの置換基がリチウムイオンの緩やかなトラップサイトとして機能するため、リチウムイオン伝導性が著しく向上し、広い温度範囲での電気化学特性の改善効果が得られるものと考えられる。
【0018】
(一般式(I)〜(IV)で表されるエノール構造を有する環状スルホン酸エステル化合物)
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、Lは少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいメチレン基、またはエチレン基を示し、XはR、SiR、P(=O)(OR、S(=O)、C(=O)OR、C(=O)Rを示す。Rは少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基を示す。)
【0021】
一般式(I)〜(IV)で表されるエノール構造を有する環状スルホン酸エステル化合物においてRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの直鎖のアルキル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基などの分枝鎖のアルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などのシクロアルキル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基などの水素原子の一部がフッ素原子で置換されたアルキル基、ビニル基、2−プロペン−1−イル基、2−ブテンー1−イル基、3−ブテン−1−イル基、4−ペンテン−1−イル基、5−ヘキセン−1−イル基などの直鎖のアルケニル基、または2−プロペン−2−イル基、3−ブテン−2−イル基、2−メチル−1−プロペン−1−イル基、2−メチル−2−プロペン−1−イル基、3−ペンテン−2−イル基、2−メチル−3−ブテン−2−イル基、3−メチル−2−ブテン−1−イル基などの分枝鎖のアルケニル基、2−プロピン−1−イル基、2−ブチン−1−イル基、3−ブチン−1−イル基、4−ペンチン−1−イル基、5−ヘキシン−1−イル基などの直鎖のアルキニル基、または3−ブチン−2−イル基、3−ペンチン−2−イル基、2−メチル−3−ブチン−2−イル基などの分枝鎖のアルキニル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−tert-ブチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−トリフルオロメチル基、4−トリフルオロメチルフェニル基などのアリール基が好適に挙げられ、
中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−プロペン−1−イル基、2−プロピン−1−イル基、2−ブチン−1−イル基、4−メチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、ビニル基、2−プロペン−1−イル基、2−プロピン−1−イル基、2−ブチン−1−イル基が更に好ましい。
【0022】
前記一般式(I)〜(IV)において、Lで表される少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいメチレン基、またはエチレン基としては、メチレン基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,1−ジイル基、ブタン−2,2−ジイル基、ペンタン−3,3−ジイル基、ペンタン−2,2−ジイル基、ヘキサン−2,2−ジイル基、ヘキサン−3,3−ジイル基、ヘプタン−4,4−ジイル基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、エチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル基、2−メチル−ブタン−2,3−ジイル基、2,3−ジメチル−ブタン−2,3−ジイル基フルオエオエチレン基、1,1−ジフルオロエチレン基、1,2−ジフルオロエチレン基が好適に挙げられ、中でもプロパン−2,2−ジイル基、ブタン−2,2−ジイル基、ペンタン−3,3−ジイル基、ペンタン−2,2−ジイル基、ヘキサン−2,2−ジイル基、ヘキサン−3,3−ジイル基、ヘプタン−4,4−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−2,3−ジイル基、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル基、2−メチル−ブタン−2,3−ジイル基、2,3−ジメチル−ブタン−2,3−ジイル基がより好ましく、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−2,2−ジイル基、ペンタン−3,3−ジイル基、ヘキサン−3,3−ジイル基が更に好ましい。
【0023】
一般式(I)で表されるエノール構造を有する環状スルホン酸エステル化合物の具体例としては以下のものが好適に挙げられる。
4−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5−メチル−4−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5−エチル−5−メチル−4−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジエチル−4−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ブチル−4−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−エトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−プロピルオキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−iso−プロピルオキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリエチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(2−プロペン−1−イル)オキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(2−プロピン−1−イルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−フェニルオキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(4−メチルフェニルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、4−メトキシ−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン 2,2−ジオキシド、6−メチル−4−メトキシ−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン 2,2−ジオキシド、5,6−ジメチル−4−メトキシ−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン 2,2−ジオキシド、6,6−ジメチル−4−メトキシ−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン 2,2−ジオキシド、4−(トリメチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5−メチル−4−(トリメチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリメチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5−エチル−5−メチル−4−(トリメチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジエチル−4−(トリメチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ブチル−4−(トリメチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリエチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリプロピルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリ−iso−プロピルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリブチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリフェニルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリス(4-メチルフェニル)シリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、4−(トリメチルシリルオキシ)−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン 2,2−ジオキシド、6−メチル−4−(トリメチルシリルオキシ)−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン 2,2−ジオキシド、5,6−ジメチル−4−(トリメチルシリルオキシ)−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン 2,2−ジオキシド、6,6−ジメチル−4−(トリメチルシリルオキシ)−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン 2,2−ジオキシド、2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジエチルホスフェート、5−メチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジエチルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジエチルホスフェート、5−エチル−5−メチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジエチルホスフェート、5,5−ジエチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジエチルホスフェート、5,5−ジブチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジエチルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジメチルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジプロピルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジ−iso−プロピルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジブチルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ビス(2−プロペン−1−イル)ホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ビス(2−プロピン−1−イル)ホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジフェニルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ビス(4−フェニル)ホスフェート、2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル ジエチルホスフェート、6−メチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル ジエチルホスフェート、5,6−ジメチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル ジエチルホスフェート、6,6−ジメチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル ジエチルホスフェート、2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル メタンスルホネート、5−メチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル メタンスルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル メタンスルホネート、5−エチル−5−メチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル メタンスルホネート、5,5−ジエチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル メタンスルホネート、5,5−ジブチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル メタンスルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル エタンスルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル プロパン−1−スルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル プロパン−2−スルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ブタン−1−スルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル 4-メチルフェニルスルホネート、2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル メタンスルホネート、6−メチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル メタンスルホネート、5,6−ジメチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル メタンスルホネート、6,6−ジメチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル メタンスルホネート、メチル (2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、メチル (5−メチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、メチル (5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、メチル (5−エチル−5−メチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、メチル (5,5−ジエチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、メチル (5,5−ブチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、エチル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、プロピル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、ブチル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、ビニル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、2−プロペン−1−イル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、2−プロピン−1−イル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、フェニル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、4−フェニル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、メチル(2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル)カーボネート、メチル(6−メチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル)カーボネート、メチル(5,6−ジメチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル)カーボネート、メチル(6,6−ジメチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル)カーボネート、2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル アセテート、5-メチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル アセテート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル アセテート、5−エチル−5−メチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル アセテート、5,5−ジエチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル アセテート、5,5−ブチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル アセテート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル プロピオネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ブチレート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル 3−メチルブタノエート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル アクリレート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル メタクリレート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ベンゾエート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル 4−メチルベンゾエート、2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル アセテート、6−メチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イルアセテート5,6−ジメチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル アセテート6,6−ジメチル−2,2−ジオキシド−5,6−ジヒドロ−1,2−オキサチイン−4−イル アセテートが好適に挙げられる。
【0024】
一般式(II)で表されるエノール構造を有する環状スルホン酸エステル化合物としては、以下のものが好適に挙げられる。
3−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−3−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、3−(トリメチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−3−(トリメチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−3−イル ジエチルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−3−イル ジエチルホスフェート、2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−3−イル メタンスルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−3−イル メタンスルホネート、メチル (2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−3−イル)カーボネート、メチル (5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−3−イル)カーボネート、2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−3−イル アセテート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−3−イル アセテートが好適に挙げられる。
【0025】
一般式(III)で表されるエノール構造を有する環状スルホン酸エステル化合物としては、以下のものが好適に挙げられる。
4−メトキシ−3H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−メトキシ−3H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、4−(トリメチルシリルオキシ)−3H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリメチルシリルオキシ)−3H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−4−イル ジエチルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−4−イル ジエチルホスフェート、2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−4−イル メタンスルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−4−イル メタンスルホネート、メチル (2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、メチル (5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−4−イル アセテート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−4−イル アセテートが好適に挙げられる。
【0026】
一般式(IV)で表されるエノール構造を有する環状スルホン酸エステル化合物としては、以下のものが好適に挙げられる。
5−メトキシ−3H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−5−メトキシ−3H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5−(トリメチルシリルオキシ)−3H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−5−(トリメチルシリルオキシ)−3H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−5−イル ジエチルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−5−イル ジエチルホスフェート、2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−5−イル メタンスルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−5−イル メタンスルホネート、メチル (2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−5−イル)カーボネート、メチル (5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−5−イル)カーボネート、2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−5−イル アセテート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−3H−1,2−オキサチオール−5−イル アセテートが好適に挙げられる。
【0027】
一般式(I)〜(IV)で表されるエノール構造を有する環状スルホン酸エステル化合物の中でも、一般式(I)(III)がより好ましく、更に一般式(I)で表される化合物が特に好ましい。
これらの中でも、5,5−ジメチル−4−(2−プロペン−1−イル)オキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(2−プロピン−1−イルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−フェニルオキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(4−メチルフェニルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリメチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリエチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリプロピルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリ−iso−プロピルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリブチルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリフェニルシリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−4−(トリス(4-メチルフェニル)シリルオキシ)−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジエチルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジメチルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジプロピルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジ−iso−プロピルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジブチルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ビス(2−プロペン−1−イル)ホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ビス(2−プロピン−1−イル)ホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ジフェニルホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ビス(4−フェニル)ホスフェート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル メタンスルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル エタンスルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル プロパン−1−スルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル プロパン−2−スルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ブタン−1−スルホネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル 4-メチルフェニルスルホネート、メチル (5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、エチル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、プロピル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、ブチル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、ビニル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、2−プロペン−1−イル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、2−プロピン−1−イル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、フェニル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、4−フェニル(5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル)カーボネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル アセテート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル プロピオネート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ブチレート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル 3−メチルブタノエート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ア5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル メタクリレート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル ベンゾエート、5,5−ジメチル−2,2−ジオキシド−5H−1,2−オキサチオール−4−イル 4−メチルベンゾエートが特に好ましい。
上記の化合物の範囲の場合に、広い温度範囲での電気化学特性を大幅に改善できるので好ましい。
【0028】
本発明の非水電解液において、非水電解液中に含有される一般式(I)〜(IV)で表されるエステル化合物の含有量は、非水電解液中に0.001〜10質量%が好ましい。該含有量が10質量%以下であれば、電極上に過度に被膜が形成され低温特性が低下するおそれが少なく、また0.001質量%以上であれば被膜の形成が十分であり、高温充電保存特性の改善効果が高まる。該含有量は、非水電解液中に0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、その上限は、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0029】
本発明の非水電解液において、前記一般式(I)〜(IV)で表される化合物を以下に述べる非水溶媒、電解質塩、更にその他の添加剤を組み合わせることにより、広い温度範囲での電気化学特性が相乗的に向上するという特異な効果を発現する。
【0030】
〔非水溶媒〕
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状エステル、ラクトン、エーテル、アミドが挙げられ、環状カーボネートのみ、又は環状カーボネートと鎖状エステルの両方が含まれることが好ましい。
なお、鎖状エステルなる用語は、鎖状カーボネートおよび鎖状カルボン酸エステルを含む概念として用いる。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランス又はシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等が挙げられる。
これらの中でも、炭素−炭素二重結合又はフッ素原子を有する環状カーボネートのうち少なくとも1種を使用すると高温充電保存後の低温放電特性が一段と向上するので好ましく、炭素−炭素二重結合を含む環状カーボネートとフッ素原子を有する環状カーボネートを両方含むことがより好ましい。炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートとしては、VC、VECが更に好ましく、フッ素原子を有する環状カーボネートとしては、FEC、DFECが更に好ましい。
炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対して、好ましくは0.07体積%以上、より好ましくは0.2体積%以上、更に好ましくは0.7体積%以上、また、上限としては、好ましくは7体積%以下、より好ましくは4体積%以下、更に好ましくは2.5体積%以下含むと、低温でのLiイオン透過性を損なうことなく一段と高温充電保存時の被膜の安定性を増すことができるので好ましい。
フッ素原子を有する環状カーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対して好ましくは0.07体積%以上、より好ましくは4体積%以上、更に好ましくは7体積%以上、また、上限としては、好ましくは35体積%以下、より好ましくは25体積%以下、更に好ましくは15体積%以下含むと、低温でのLiイオン透過性を損なうことなく一段と高温充電保存時の被膜の安定性を増すことができるので好ましい。
また、非水溶媒がエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを含むと電極上に形成される被膜の抵抗が小さくなるので好ましく、エチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートの含有量は、非水溶媒の総体積に対し、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは7体積%以上、また、上限としては、好ましくは45体積%以下、より好ましくは40体積%以下、更に好ましくは30体積%以下である。
【0031】
これらの溶媒は1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用した場合は、広い温度範囲での電気化学特性が更に向上するので好ましく、3種類以上が特に好ましい。これらの環状カーボネートの好適な組合せとしては、ECとPC、ECとVC、PCとVC、VCとFEC、ECとFEC、PCとFEC、FECとDFEC、ECとDFEC、PCとDFEC、VCとDFEC、VECとDFEC、ECとPCとVC、ECとPCとFEC、ECとVCとFEC、ECとVCとVEC、PCとVCとFEC、ECとVCとDFEC、PCとVCとDFEC、ECとPCとVCとFEC、ECとPCとVCとDFEC等が好ましい。前記の組合せのうち、ECとVC、ECとFEC、PCとFEC、ECとPCとVC、ECとPCとFEC、ECとVCとFEC、PCとVCとFEC、ECとPCとVCとFEC等の組合せがより好ましい。
【0032】
鎖状エステルとしては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、メチルイソプロピルカーボネート(MIPC)、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等の対称鎖状カーボネート、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、ピバリン酸プロピル等のピバリン酸エステル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルが好適に挙げられる。
【0033】
鎖状エステルの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総体積に対して、60〜90体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60体積%以上であれば非水電解液の粘度を下げる効果が十分に得られ、90体積%以下であれば非水電解液の電気伝導度が十分に高まり、広い温度範囲での電気化学特性が向上するので上記範囲であることが好ましい。
【0034】
前記鎖状エステルの中でも、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、プロピオン酸メチル、酢酸メチルおよび酢酸エチルから選ばれるメチル基を有する鎖状エステルが好ましく、特にメチル基を有する鎖状カーボネートが好ましい。
また、鎖状カーボネートを用いる場合には、2種以上を用いることが好ましい。さらに対称鎖状カーボネートと非対称鎖状カーボネートの両方が含まれるとより好ましく、対称鎖状カーボネートの含有量が非対称鎖状カーボネートより多く含まれると更に好ましい。
鎖状カーボネート中に対称鎖状カーボネートが占める体積の割合は、51体積%以上が好ましく、55体積%以上がより好ましい。上限としては、95体積%以下がより好ましく、85体積%以下であると更に好ましい。対称鎖状カーボネートにジメチルカーボネートが含まれると特に好ましい。また、非対称鎖状カーボネートはメチル基を有するとより好ましく、メチルエチルカーボネートが特に好ましい。
上記の場合に一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましい。
【0035】
環状カーボネートと鎖状エステルの割合は、広い温度範囲での電気化学特性向上の観点から、環状カーボネート:鎖状エステル(体積比)が10:90〜45:55が好ましく、15:85〜40:60がより好ましく、20:80〜35:65が特に好ましい。
【0036】
その他の非水溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等の鎖状エーテル、ジメチルホルムアミド等のアミド、スルホラン等のスルホン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アンゲリカラクトン等のラクトン等が好適に挙げられる。
【0037】
上記の非水溶媒は通常、適切な物性を達成するために、混合して使用される。その組合せは、例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとラクトンとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートとエーテルとの組合せ、環状カーボネートと鎖状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルとの組み合わせ等が好適に挙げられる。
【0038】
一段と広い温度範囲での電気化学特性を向上させる目的で、非水電解液中にさらにその他の添加剤を加えることが好ましい。
その他の添加剤の具体例としてはリン酸トリメチル、リン酸トリブチル、及びリン酸トリオクチル等アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、及びピメロニトリル等のニトリル、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート等のイソシアネート、1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン等のスルトン化合物、エチレンサルファイト、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオラン−2−オキシド(1,2−シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイトともいう)、5−ビニル−ヘキサヒドロ1,3,2−ベンゾジオキサチオール−2−オキシド等の環状サルファイト化合物、メタンスルホン酸2−プロピニル、メチレンメタンジスルホネート等のスルホン酸エステル化合物、ジビニルスルホン、1,2−ビス(ビニルスルホニル)エタン、ビス(2−ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物等から選ばれるS=O結合含有化合物、無水酢酸、無水プロピオン酸等の鎖状のカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、3−スルホ−プロピオン酸無水物等の環状酸無水物、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシヘプタフルオロシクロテトラホスファゼンなどの環状ホスファゼン化合物、シクロヘキシルベンゼン、フルオロシクロヘキシルベンゼン化合物(1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン、1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン等の分枝アルキル基を有する芳香族化合物や、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ジフェニルエーテル、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、アニソール、2,4−ジフルオロアニソール、ターフェニルの部分水素化物(1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)等の芳香族化合物が好適に挙げられる。
【0039】
〔電解質塩〕
本発明に使用される電解質塩としては、下記のリチウム塩、オニウム塩が好適に挙げられる。
【0040】
(リチウム塩)
リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiPOF、LiBF、LiClO等の無機リチウム塩、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(iso−C7、LiPF(iso−C7)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF(SONLi、(CF(SONLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を有するリチウム塩、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムやジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム等のオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が好適に挙げられ、これらの一種または二種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、LiPF、LiPO、LiPOF、LiBF、LiN(SOCFおよびLiN(SOから選ばれる少なくとも1種が好ましく、LiPF、LiPO、LiBFおよびLiN(SOCFから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。リチウム塩の濃度は、前記の非水溶媒に対して、通常0.3M以上が好ましく、0.7M以上がより好ましく、1.1M以上が更に好ましい。またその上限は、2.5M以下が好ましく、2.0M以下がより好ましく、1.6M以下が更に好ましい。
また、これらのリチウム塩の好適な組み合わせとしては、LiPFを含み、更にLiPO、LiBFおよびLiN(SOCFから選ばれる少なくとも1種のリチウム塩が非水電解液中に含まれている場合が好ましく、LiPF以外のリチウム塩が非水溶媒中に占める割合は、0.001M以上であると、高温での電気化学特性の向上効果発揮されやすく、0.005M以下であると高温での電気化学特性の向上効果が低下する懸念が少ないので好ましい。好ましくは0.01M以上、特に好ましくは0.03M以上、最も好ましくは0.04M以上である。その上限は、好ましくは0.4M以下、特に好ましくは0.2M以下である。
【0041】
(オニウム塩)
また、オニウム塩としては、下記に示すオニウムカチオンとアニオンを組み合わせた各種塩が好適に挙げられる。
オニウムカチオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、ジエチルジメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N,N−ジエチルピロリジニウムカチオン、スピロ−(N,N')−ビピロリジニウムカチオン、N,N'−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、N−エチル−N'−メチルイミダゾリニウムカチオン、N,N'−ジエチルイミダゾリニウムカチオン、N,N'−ジメチルイミダゾリウムカチオン、N−エチル−N'−メチルイミダゾリウムカチオン、N,N'−ジエチルイミダゾリウムカチオン等が好適に挙げられる。
アニオンの具体例としては、PFアニオン、BFアニオン、ClOアニオン、AsFアニオン、CFSOアニオン、N(CFSOアニオン、N(CSOアニオン、等が好適に挙げられる。
これらの電解質塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
〔非水電解液の製造〕
本発明の非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒を混合し、これに前記の電解質塩及び該非水電解液に対して前記一般式(I)〜(IV)で表される化合物を添加することにより得ることができる。
この際、用いる非水溶媒及び非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0043】
本発明の非水電解液は、下記の第1〜第4の蓄電デバイスに使用することができ、非水電解質として、液体状のものだけでなくゲル化されているものも使用し得る。更に本発明の非水電解液は固体高分子電解質用としても使用できる。中でも電解質塩にリチウム塩を使用する第1の蓄電デバイス用(即ち、リチウム電池用)または第4の蓄電デバイス用(即ち、リチウムイオンキャパシタ用)として用いることが好ましく、リチウム電池用として用いることが更に好ましく、リチウム二次電池用として用いることが最も適している。
【0044】
〔第1の蓄電デバイス(リチウム電池)〕
本発明のリチウム電池は、リチウム一次電池及びリチウム二次電池を総称する。また、本明細書において、リチウム二次電池という用語は、いわゆるリチウムイオン二次電池も含む概念として用いる。本発明のリチウム電池は、正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている前記非水電解液からなる。非水電解液以外の正極、負極等の構成部材は特に制限なく使用できる。
例えば、リチウム二次電池用正極活物質としては、コバルト、マンガン、およびニッケルから1種以上を含有するリチウムとの複合金属酸化物が使用される。これらの正極活物質は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiCo1−xNi(0.01<x<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi1/2Mn3/2、LiCo0.98Mg0.02等が挙げられる。また、LiCoOとLiMn、LiCoOとLiNiO、LiMnとLiNiOのように併用してもよい。
【0045】
また、過充電時の安全性やサイクル特性を向上したり、4.3V以上の充電電位での使用を可能にするために、リチウム複合金属酸化物の一部は他元素で置換してもよい。例えば、コバルト、マンガン、ニッケルの一部をSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cu、Bi、Mo、La等の少なくとも1種以上の元素で置換したり、Oの一部をSやFで置換したり、またはこれらの他元素を含有する化合物を被覆することもできる。
これらの中では、LiCoO、LiMn、LiNiOのような満充電状態における正極の充電電位がLi基準で4.3V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物が好ましく、LiCo1−x(但し、MはSn、Mg、Fe、Ti、Al、Zr、Cr、V、Ga、Zn、Cuから選ばれる少なくとも1種類以上の元素、0.001≦x≦0.05)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi1/2Mn3/2、LiMnOとLiMO(Mは、Co、Ni、Mn、Feなどの遷移金属)との固溶体のような4.4V以上で使用可能なリチウム複合金属酸化物がより好ましい。高充電電圧で動作するリチウム複合金属酸化物を使用すると、充電時における電解液との反応により特に広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすいが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができる。
特にMnを含む正極の場合に正極からのMnイオンの溶出に伴い電池の抵抗が増加しやすい傾向にあるため、広い温度範囲での電気化学特性が低下しやすい傾向にあるが、本発明に係るリチウム二次電池ではこれらの電気化学特性の低下を抑制することができるので好ましい。
【0046】
更に、正極活物質として、リチウム含有オリビン型リン酸塩を用いることもできる。特に鉄、コバルト、ニッケルおよびマンガンから選ばれる少なくとも1種以上含むリチウム含有オリビン型リン酸塩が好ましい。その具体例としては、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO等が挙げられる。
これらのリチウム含有オリビン型リン酸塩の一部は他元素で置換してもよく、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの一部をCo、Mn、Ni、Mg、Al、B、Ti、V、Nb、Cu、Zn、Mo、Ca、Sr、W及びZr等から選ばれる1種以上の元素で置換したり、またはこれらの他元素を含有する化合物や炭素材料で被覆することもできる。これらの中では、LiFePOまたはLiMnPOが好ましい。
また、リチウム含有オリビン型リン酸塩は、例えば前記の正極活物質と混合して用いることもできる。
【0047】
また、リチウム一次電池用正極としては、CuO、CuO、AgO、AgCrO、CuS、CuSO、TiO、TiS、SiO、SnO、V、V12、VO、Nb、Bi、BiPb,Sb、CrO、Cr、MoO、WO、SeO、MnO、Mn、Fe、FeO、Fe、Ni、NiO、CoO、CoOなどの、一種もしくは二種以上の金属元素の酸化物あるいはカルコゲン化合物、SO、SOClなどの硫黄化合物、一般式(CFnで表されるフッ化炭素(フッ化黒鉛)などが挙げられる。中でも、MnO、V、フッ化黒鉛などが好ましい。
【0048】
正極の導電剤は、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。また、グラファイトとカーボンブラックを適宜混合して用いてもよい。導電剤の正極合剤への添加量は、1〜10質量%が好ましく、特に2〜5質量%が好ましい。
【0049】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電剤、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウム箔やステンレス製のラス板等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
正極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.5g/cm以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは2g/cm以上であり、より好ましくは、3g/cm以上であり、更に好ましくは、3.6g/cm以上である。なお、上限としては、4g/cm以下が好ましい。
【0050】
リチウム二次電池用負極活物質としては、リチウム金属やリチウム合金、及びリチウムを吸蔵及び放出することが可能な炭素材料〔易黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛など〕、スズ(単体)、スズ化合物、ケイ素(単体)、ケイ素化合物、LiTi12などのチタン酸リチウム化合物等を1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、リチウムイオンの吸蔵及び放出能力において、人造黒鉛や天然黒鉛等の高結晶性の炭素材料を使用することが更に好ましく、格子面(002)の面間隔(d002)が0.340nm(ナノメータ)以下、特に0.335〜0.337nmである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが特に好ましい。
複数の扁平状の黒鉛質微粒子が互いに非平行に集合或いは結合した塊状構造を有する人造黒鉛粒子や、例えば鱗片状天然黒鉛粒子に圧縮力、摩擦力、剪断力等の機械的作用を繰り返し与え、球形化処理を施した黒鉛粒子を用いることにより、負極の集電体を除く部分の密度を1.5g/cm以上の密度に加圧成形したときの負極シートのX線回折測定から得られる黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比I(110)/I(004)が0.01以上となると一段と広い温度範囲での電気化学特性が向上するので好ましく、0.05以上となることがより好ましく、0.1以上となることが更に好ましい。また、過度に処理し過ぎて結晶性が低下し電池の放電容量が低下する場合があるので、上限は0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
また、高結晶性の炭素材料(コア材)はコア材よりも低結晶性の炭素材料によって被膜されていると、広い温度範囲での電気化学特性が一段と良好となるので好ましい。被覆の炭素材料の結晶性は、TEMにより確認することが出来る。
高結晶性の炭素材料を使用すると、充電時において非水電解液と反応し、界面抵抗の増加によって低温もしくは高温における電気化学特性を低下させる傾向があるが、本発明に係るリチウム二次電池では広い温度範囲での電気化学特性が良好となる。
【0051】
また、負極活物質としてのリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物としては、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Mg、Sr、Ba等の金属元素を少なくとも1種含有する化合物が挙げられる。これらの金属化合物は単体、合金、酸化物、窒化物、硫化物、硼化物、リチウムとの合金等、何れの形態で用いてもよいが、単体、合金、酸化物、リチウムとの合金の何れかが高容量化できるので好ましい。中でも、Si、Ge及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものが好ましく、Si及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素を含むものが電池を高容量化できるので特に好ましい。
【0052】
負極は、上記の正極の作製と同様な導電剤、結着剤、高沸点溶剤を用いて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製することができる。
負極の集電体を除く部分の密度は、通常は1.1g/cm以上であり、電池の容量をさらに高めるため、好ましくは1.5g/cm以上であり、特に好ましくは1.7g/cm以上である。なお、上限としては、2g/cm以下が好ましい。
【0053】
また、リチウム一次電池用の負極活物質としては、リチウム金属又はリチウム合金が挙げられる。
【0054】
リチウム電池の構造には特に限定はなく、単層または複層のセパレータを有するコイン型電池、円筒型電池、角型電池、ラミネート電池等を適用できる。
電池用セパレータとしては、特に制限はされないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンの単層または積層の微多孔性フィルム、織布、不織布等を使用できる。
【0055】
本発明におけるリチウム二次電池は、充電終止電圧が4.2V以上、特に4.3V以上の場合にも広い温度範囲での電気化学特性に優れ、更に、4.4V以上においても特性は良好である。放電終止電圧は、通常2.8V以上、更には2.5V以上とすることが出来るが、本願発明におけるリチウム二次電池は、2.0V以上とすることが出来る。電流値については特に限定されないが、通常0.1〜30Cの範囲で使用される。また、本発明におけるリチウム電池は、−40〜100℃、好ましくは−10〜80℃で充放電することができる。
【0056】
本発明においては、リチウム電池の内圧上昇の対策として、電池蓋に安全弁を設けたり、電池缶やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も採用することができる。また、過充電防止の安全対策として、電池の内圧を感知して電流を遮断する電流遮断機構を電池蓋に設けることができる。
【0057】
〔第2の蓄電デバイス(電気二重層キャパシタ)〕
電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。本発明の一例は、電気二重層キャパシタである。この蓄電デバイスに用いられる最も典型的な電極活物質は、活性炭である。二重層容量は概ね表面積に比例して増加する。
【0058】
〔第3の蓄電デバイス〕
電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。この蓄電デバイスに用いられる電極活物質として、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化銅等の金属酸化物や、ポリアセン、ポリチオフェン誘導体等のπ共役高分子が挙げられる。これらの電極活物質を用いたキャパシタは、電極のドープ/脱ドープ反応にともなうエネルギー貯蔵が可能である。
【0059】
〔第4の蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ)〕
負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する蓄電デバイスである。リチウムイオンキャパシタ(LIC)と呼ばれる。正極は、例えば活性炭電極と電解液との間の電気ニ重層を利用したものや、π共役高分子電極のドープ/脱ドープ反応を利用したもの等が挙げられる。電解液には少なくともLiPF6などのリチウム塩が含まれる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明で用いるエノール構造を有する環状スルホン酸エステル化合物の合成例を示すが、これらの合成例に限定されるものではない。
【0061】
合成例1〔4−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシドの合成(合成化合物1、実施例10で用いた化合物)〕
【0062】
【化4】

【0063】
5,5−ジメチル−1,2−オキサチオラン−4−オン 2,2−ジオキシド5.60g(34.0mmol)をアセトニトリル100mLに溶解し、炭酸カリウム7.04g(51mmol)を加え、室温で15分間撹拌した。この溶液にジメチル硫酸4.72g(37.4mmol)を加え、40℃で4時間撹拌した。反応終了後、沈殿物をろ過、ろ液を濃縮、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/4溶出)で精製し、白色固体である4−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシド 3.65g(収率58%)を得た。
得られた4−メトキシ−5H−1,2−オキサチオール 2,2−ジオキシドについて、H−NMRおよび融点の測定を行った。結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,CDCl):δ= 5.71( s, 1H ), 3.86( s, 3H ), 1.62( s, 6H )
融点 測定予定℃(分解)
【0064】
以下、本発明の化合物を用いた電解液の実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜17、比較例1〜2
〔リチウムイオン二次電池の作製〕
LiCoO;94質量%、アセチレンブラック(導電剤);3質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);3質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、正極シートを作製した。正極の集電体を除く部分の密度は3.6g/cmであった。また、人造黒鉛(d002=0.335nm、負極活物質)95質量%を、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上の片面に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き負極シートを作製した。負極の集電体を除く部分の密度は1.5g/cmであった。また、この電極シートを用いてX線回折測定した結果、黒鉛結晶の(110)面のピーク強度I(110)と(004)面のピーク強度I(004)の比〔I(110)/I(004)〕は0.1であった。そして、正極シート、微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータ、負極シートの順に積層し、表1に記載の組成の非水電解液を加えて、2032型コイン電池を作製した。
【0065】
〔高温充電保存後の低温特性の評価〕
<初期の放電容量>
上記の方法で作製したコイン電池を用いて、25℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で、終止電圧4.2Vまで3時間充電し、0℃に恒温槽の温度を下げ、1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電して、初期の0℃の放電容量を求めた。
【0066】
<高温充電保存試験>
次に、このコイン電池を85℃の恒温槽中、1Cの定電流及び定電圧で終止電圧4.2Vまで3時間充電し、4.2Vに保持した状態で3日間保存を行った。その後、25℃の恒温槽に入れ、一旦1Cの定電流下終止電圧2.75Vまで放電した。
【0067】
<高温充電保存後の放電容量>
更にその後、初期の放電容量の測定と同様にして、高温充電保存後の0℃の放電容量を求めた。
<高温充電保存後の低温特性>
高続充電後の低温特性を下記の0℃放電容量の維持率より求めた。
高続充電後の0℃放電容量維持率(%)=(高温充電保存後の0℃の放電容量/初期の0℃の放電容量)×100
電池特性を表1及び表2に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
実施例18、および比較例3
実施例3、および比較例1で用いた負極活物質に変えて、ケイ素(単体)(負極活物質)を用いて、負極シートを作製した。ケイ素(単体);80質量%、アセチレンブラック(導電剤);15質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを銅箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、負極シートを作製したことの他は、実施例3、および比較例1と同様にコイン電池を作製し、電池評価を行った。結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
実施例19、および比較例4
実施例3、および比較例1で用いた正極活物質に変えて、非晶質炭素で被覆されたLiFePO(正極活物質)を用いて、正極シートを作製した。非晶質炭素で被覆されたLiFePO;90質量%、アセチレンブラック(導電剤);5質量%を混合し、予めポリフッ化ビニリデン(結着剤);5質量%を1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて混合し、正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストをアルミニウム箔(集電体)上に塗布し、乾燥、加圧処理して所定の大きさに打ち抜き、正極シートを作製したこと、電池評価の際の充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.0Vとしたことの他は、実施例3、および比較例1と同様にコイン電池を作製し、電池評価を行った。結果を表4に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
上記実施例1〜17のリチウム二次電池は何れも、本願発明の非水電解液において化合物を添加しない場合の比較例1、特許文献1に記載されているヒドロキシプロパンスルトンを添加した非水電解液である比較例2のリチウム二次電池に比べ、広い温度範囲での電気化学特性が顕著に向上している。以上より、本発明の効果は、非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、本願発明の特定の化合物を含有させた場合に特有の効果であることが判明した。
また、実施例18と比較例3の対比、実施例19と比較例4の対比から、負極にケイ素(単体)Siを用いた場合や、正極にリチウム含有オリビン型リン酸鉄塩(LiFePO)を用いた場合にも同様な効果がみられる。従って、本発明の効果は、特定の正極や負極に依存した効果でないことは明らかである。
【0075】
更に、本発明の非水電解液は、リチウム一次電池の広い温度範囲での放電特性を改善する効果も有する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の非水電解液を用いたリチウム二次電池は、広い温度範囲での電気化学特性に優れたリチウム二次電池等の蓄電デバイスとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液において、下記一般式(I)〜(IV)で表される化合物の少なくとも1種が非水電解液中に含有されていることを特徴とする非水電解液。
【化1】


(式中、Lは少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいメチレン基、またはエチレン基を示し、XはR、SiR、P(=O)(OR、S(=O)、C(=O)OR、C(=O)Rを示す。Rは少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基を示す。)
【請求項2】
前記一般式(I)〜(IV)で表される化合物の含有量が非水電解液中に0.001〜10質量%である請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
正極、負極及び非水溶媒に電解質塩が溶解されている非水電解液を備えた蓄電デバイスにおいて、該非水電解液中に前記一般式(I)〜(IV)で表される化合物の少なくとも1種を非水電解液中に含有することを特徴とする蓄電デバイス。

【公開番号】特開2013−89390(P2013−89390A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227412(P2011−227412)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】