説明

非水電解液用容器、容器入り非水電解液、及び非水電解液の保存方法

【課題】非水電解液の保存時の分解を防止し、高品質を維持できるとともに、非水電解液の取扱いを容易かつ確実にできる軽量な容器を提供する。
【解決手段】(1)アルミニウム又はアルミニウム合金層を含む素材で構成され、非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液を充填する容器であって、樹脂製の蓋と中栓を有し、該容器保存30日後の非水電解液の水分含有量を50ppm以下に保持する、非水電解液用容器、(2)その容器入り非水電解液、及び(3)非水電解液の保存方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液用容器、容器入り非水電解液、及び非水電解液の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気化学素子、特にリチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等電子機器の電源、電気自動車の電源用や電力貯蔵用として広く使用されている。
リチウム二次電池は、主にリチウムを吸蔵及び放出可能な材料を含む正極、負極及びリチウム塩と非水溶媒からなる非水電解液から構成され、非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、ラクトン、エーテル等の有機溶媒が使用されている。
前記非水電解液は、保存時の容器の腐食防止の目的から、従来ステンレス製の容器に保存され使用されていた。しかしながら、ステンレス製容器は質量が大きいため取り扱いにくく、また加工性の問題から軽量小型化が困難であること等の問題もあった。さらに、従来のステンレス製容器は蓋もステンレス製であるため、使用時に液だれすると、容器口頸部のネジ部に固形分が析出して蓋の開閉に大きな力が必要となると同時に、非水電解液の劣化が促進されるという問題もあった。そのため、耐腐食性かつ軽量で取扱い性のよい電解液の容器及び保存方法が求められていた。
【0003】
非水電解液を保存する容器としては、例えば、特許文献1には、耐腐蝕耐久性及びシール機能の向上を目的として、容器筒先端部に形成した薄膜部により胴体部を密封し、該薄膜部を破ることにより胴体部を開封して使用するポリエチレン系樹脂容器が開示されている。しかしながら、この容器では、一度開封した後は容器のシール性が確保できない。
特許文献2には、ゴムキャップで注液口を密封してなる電解液容器が開示されているが、注液口のシール性が不十分である。
特許文献3の実施例には、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含有する非水溶媒にLiPF6が溶解された非水電解液に特定のジシロキサンを含有する二次電池用非水電解液が開示されており、該非水電解液をステンレス容器に密封して30日間保存したことが記載されている。しかしながら、電解液の取扱いは通常グローブボックス等の狭い空間で行うため、質量が重いステンレス製容器は取り扱いにくいという問題があった。
一方、飲料や食用油等を内容液とする缶容器において、密封キャップと係合可能な口頸部を設け、この口頸部にキャップを着脱可能にして再封止を可能にした、いわゆるリシール缶が知られている。このようなリシール缶は、アルミニウム合金板やステンレス鋼板等の金属薄板により成形されているが、一般に化学品を内容液とする場合は容器口頸部のシール機能が十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平5−31814号公報
【特許文献2】実開昭56−51260号公報
【特許文献3】特開2010−92748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ステンレス鋼板の強度と、アルミニウムの腐食性を考慮すると、非水電解液用容器の材質を、ステンレス鋼板からアルミニウムに変更することは全く考慮の対象外と考えられていた。
本発明は、非水電解液の保存時の分解を防止し、高品質を維持するとともに、非水電解液の取扱いを容易かつ確実にできる非水電解液用容器、容器入り非水電解液、及び非水電解液の保存方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記公知の容器、例えば、ステンレス製の容器の場合、容器の重量が重いため、グローブボックス等の狭い空間で取り扱う際に力を必要とし、作業の効率が低下するという問題があった。また、蓋の開閉を繰り返すうちに、蓋と容器本体の間に電解液付着物が蓄積し、蓋の開閉に力を要し、取扱い性が低下するという問題があった。
本発明者らは、従来公知の容器の非水電解液に対する保存性能を詳細に検討した結果、前記公知の容器では、一度開封した後は十分な耐腐食性を確保できず、繰り返し開け閉めを必要とする非水電解液の保存容器としては使用できないことが判明した。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成される非水電解液用容器を非水電解液の保存時の水分含有量を50ppm以下に保持できるように構成することにより、軽量で取扱い性に優れ、かつ非水電解液の品質を維持することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の(1)〜(3)を提供するものである。
(1)アルミニウム又はアルミニウム合金層を含む素材で構成され、非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液を充填する容器であって、樹脂製の蓋と中栓を有し、該容器保存30日後の非水電解液の水分含有量を50ppm以下に保持する、非水電解液用容器。
(2)非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液が容器に充填された非水電解液であって、該容器がアルミニウム又はアルミニウム合金層を含む素材で構成され、該容器の蓋と中栓が樹脂製であり、該容器保存30日後の非水電解液の水分含有量が50ppm以下に保持される、容器入り非水電解液。
(3)容器内で非水電解液を保存する非水電解液の保存方法であって、該容器がアルミニウム又はアルミニウム合金層を含む素材で構成され、該容器の蓋と中栓が樹脂製であり、該容器保存30日後の非水電解液の水分含有量を50ppm以下に保持する、非水電解液の保存方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非水電解液の保存時の分解を防止し、高品質を維持するとともに、非水電解液の取扱いを容易かつ確実にできる軽量な非水電解液用容器、容器入り非水電解液、及び非水電解液の保存方法を提供することができる。
本発明の非水電解液用容器は、特に環状カーボネートを含有する非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液を保存する容器として、2回以上、好ましくは3回以上、更に好ましくは5回以上蓋を開閉して繰り返し使用する場合に、保存時の非水電解液の分解を防止し、高品質を維持できるとともに、軽量で取扱い性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の非水電解液用容器の缶体の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の非水電解液用容器の中栓と蓋の一例を示す概略図である。(a)は内中栓タイプ、(b)は外中栓タイプ、(c)は環状の突起部(中栓)が付設されたタイプの蓋を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の非水電解液用容器は、アルミニウム又はアルミニウム合金層を含む素材で構成され、非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液を充填する容器であって、樹脂製の蓋と中栓を有し、該容器保存30日後の非水電解液の水分含有量を50ppm以下に保持することを特徴とする。
本発明の非水電解液用容器は、容器保存30日後の非水電解液の水分含有量を50ppm以下に保持するため、アルミニウム又はアルミニウム合金層を含む素材で形成され、樹脂製の蓋と中栓で密封するよう構成されている。
【0011】
〔非水電解液用容器〕
本発明の非水電解液用容器(以下、単に「容器」ともいう)の材質は、容器に充填される非水電解液に対する耐腐食性の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金層を含む素材が用いられるが、なかでも純アルミニウム系材料又はアルミニウム−マンガン系合金層を含む素材が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金層を含む素材は、アルミニウム又はアルミニウム合金層単独からなる素材であってもよいし、他の層との積層構造からなる素材であってもよい。
ステンレス容器の場合、電解液を容器から採取する際に液だれし、容器口頸部のネジ部に電解液が付着し、それが乾燥して電解液中に含有されている電解質塩等の溶質が固形物となって析出する。その結果、開蓋する際に大きなトルクが必要となり、工具を用いて開蓋する必要があった。電解液容器の開蓋は、通常グローブボックス等の狭い空間で行うため、試験、研究等の現場における作業性の改善が求められていた。また、容器の蓋と口頸部の間に析出した固形物により隙間が生じて、非水電解液の劣化が促進されるという問題もあった。
これに対して、本願発明のアルミニウム製非水電解液用容器は、容器本体を大幅に軽量化でき、しかも容器全体の強度バランスがよいため、蓋を樹脂製とすることが可能となった。その結果、容器口頸部のネジ部に多少付着物があっても、開蓋時のトルクを上昇させずに、長期間にわたって取扱い性がよく、繰り返し使用が可能となり、非水電解液の劣化も防止することが可能となった。
また、非水電解液の水分管理を厳密に行うことにより、純アルミニウム系材料又はアルミニウム−マンガン系合金層を含む素材からなる容器の耐食性をより向上させることができる。
【0012】
純アルミニウム系材料としては、純度が99%以上のものであれば、耐食性が良好なため好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.7%以上が更に好ましい。純アルミニウム系材料の具体例としては、JIS1000シリーズである、1050(純度99.50%以上)、1060、1070(純度99.70%以上)、1080(純度99.80%以上)、1085(純度99.85%以上)、1100(純度99.00%以上)、1200(純度99.00%以上)、1N00等が好適に挙げられる。
【0013】
また、アルミニウム−マンガン系合金は、耐腐食性があり、かつ純アルミニウム系よりも強度が高められるために、強度を求める材料としてはより好ましい。
アルミニウム(Al)−マンガン(Mn)系合金は、Al−Mn二元合金でもよく、更に、銅、ケイ素、マグネシウム、亜鉛等の少なくとも1種の追加元素Xを含有する三元系以上のAl−Mn−X合金でもよい。いずれの場合も、合金のマンガン含有量は、強度及び耐腐食性の観点から、0.2〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、好ましくは0.8〜3質量%である。
アルミニウム−マンガン系合金の具体例としては、JIS3000シリーズである、3003、3004、3005、3104、3105、3203等が好適に挙げられる。
【0014】
アルミニウムやアルミニウム合金は、容器に成形加工した後、又は更に該容器の表面を研磨した後に、空気中で放置することにより自然酸化被膜を形成させたり、酸化剤により酸化被膜を形成させたり、フッ化被膜を形成させたりすることにより、容器の耐食性を向上させることが好ましい。
アルミニウムやアルミニウム合金の表面を酸化させる酸化剤としては、酸素、オゾン、亜酸化窒素、過酸化窒素から選ばれる少なくとも1種以上を含有するガス、又はそれらのガスと窒素、アルゴン等の不活性ガスとの混合ガスを挙げることができる。
アルミニウムやアルミニウム合金の表面にフッ化被膜を形成させるフッ化剤としては、フッ素、フッ化窒素、三フッ化塩素から選ばれる少なくとも1種以上を含有するガス、又はそれらのガスと窒素、アルゴン等の不活性ガスとの混合ガスを挙げることができる。
アルミニウムやアルミニウム合金を、上記のガス中又はガス気流中に、例えば、100〜600℃の温度下で、0.1〜24時間程度保持することにより、容器表面に酸化被膜又はフッ化被膜を形成させることができる。
【0015】
アルミニウム−マンガン系合金以外の他のアルミニウム系合金についても容器内面に耐腐食性の良好な合成樹脂等をフィルム状にコーティングして使用することができる。その合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルやナイロン(NY)等のポリアミド等の熱可塑性樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))等のフッ素樹脂、エチレン−プロピレン・ダイマー(EPDM)、エチレン−プロピレン・テトラマー(EPT)、パーフルオロエラストマー等が挙げられる。厚さが好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μmのものを使用することができる。
【0016】
容器の形状は特に限定されず、ボトル型、筒型、アルミ付紙パック型、アルミパウチ型等の任意の形状とすることができる。
ボトル型の容器は、容器の水平方向の断面形状が、円形、3〜8角形等の多角形等の任意の形状とすることができる。中でも、容器の強度や加工性の観点から、水平方向の断面形状が円形であることが好ましい。また、容器の垂直方向に断面積を連続的に変化させることもできる。例えば、容器の高さ方向の中心付近の断面積を両端近傍よりも小さくすることにより、容器本体(胴体)の一部を細くしたくびれ構造を形成したり、容器表面に凹凸を施して、容器を掴み易くした構造等とすることもできる。
アルミ付紙パック型の容器は、容器の水平方向の断面形状を四角形等とした角柱状の形状とすることができる。アルミ付紙の構造は、非水電解液に接する面側(内側)から、樹脂層1/アルミニウム又はアルミニウム合金層/樹脂層2/紙層/樹脂層3の順に積層された多層構造とすることが好ましい。樹脂層1としては、PE、PP等のポリオレフィン層及び/又はPET等のポリエステル層、樹脂層2及び樹脂層3としては、PE、PP等のポリオレフィン層が挙げられる。また、紙層に使用する紙に特に制限はなく、紙器用板紙として用いられるマニラボール紙、白ボール紙等が挙げられる。
アルミパウチ型の容器は、PP等のポリオレフィン、PET等のポリエステル、NY等のポリアミド等の樹脂層と、アルミニウム層又はアルミニウム合金層とが積層された多層構造とすることが好ましく、スタンディングパウチとすることが好ましい。
これらの中では、ボトル型の容器が取扱い易く好適である
【0017】
図1は、本発明のボトル型容器の本体である缶体の一例を示す概略図である。缶体1は、円盤形状の底部(図示せず)と、下側端部が底部の周囲に接合した円筒状の缶胴2と、缶胴2の上部に設けられたスカート壁4と、スカート壁4の上部に設けられた口頸部5とを備える。口頸部5の外周面にはネジ部6が形成されており、口頸部5の上縁部には注液口3が形成されている。
缶胴2は、例えば、厚さが0.2〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.6mm、より好ましくは0.3〜0.5mmのアルミニウム又はアルミニウム合金の薄板を円筒状に丸めると共に、その重ね合わされた縁部同士を溶接して一体に接合して形成することができる。缶胴2の内面には、必要に応じて、合成樹脂からなる内面被膜を形成することができる。内面被膜の材質は、非水電解液への溶出がない素材であれば特に限定されない。
缶胴2の外形は、その全長に亘って実質的に一定に設定されたストレート形状をなしている。缶胴2の最上部にはスカート壁4を介して口頸部5が形成されており、口頸部5の上縁部が注液口3となっている。注液口3は中栓(図示せず)で封止される。
【0018】
スカート壁4は、缶胴2の中心軸線に沿って、上方に向けて小径となるようなテーパの付けられたスムースな円筒曲面形状をなしている。スカート壁4の傾斜角度、すなわち缶胴2の中心軸線と直交する線に対する角度は、缶体1の機械的強度の観点から、好ましくは20〜50°の範囲、より好ましくは25〜45°の範囲に設定することができる。
口頸部5の外周面には、蓋(図示せず)のネジ部と螺合するための雄ネジが形成されている。なおネジは特に限定されず、口頸部5を巻回する凸部や凹部からなるネジ、又は不連続に形成された突条や凹溝からなるネジであってもよく、またその条数も任意である。また、口頸部5の外周面に雄ネジを形成する替わりに、口頸部5の内周面に、蓋(図示せず)のネジ部と螺合するための雌ネジが形成されていてもよく、この場合、蓋には口頸部5の内周面に形成された雌ネジに螺合する雄ネジが形成される。
【0019】
本発明の非水電解液用容器は、蓋をして内部の非水電解液を密封して保存するが、容器の気密性をより確実に保ち、かつ、容器に充填された非水電解溶液の液漏れをより確実に防止して、非水電解液の品質を長期にわたって高品質に維持すると共に、良好な取扱い性を維持するために、中栓を使用する。
すなわち、容器保存30日後の非水電解液の水分含有量を50ppm以下に保持するため、また好ましくは、後述するように容器保存30日後の非水電解液の酸分をフッ化水素(HF)換算で50ppm以下に保持するため、また、容器保存30日後までの非水電解液の酸分の変化をHF換算で±20ppm以内に保持するため、さらに、非水電解液のAPHAが50以下に保持するため、密封状態を維持できるように、蓋及び中栓の材質、口頸部5の構造を決定することができる。
【0020】
図2は、本発明の非水電解液用容器の蓋と中栓の一例を示す概略図である。(a)は内中栓タイプ、(b)は外中栓タイプ、(c)は環状の突起部(中栓)が付設されたタイプの蓋を示す。
図2に示すように、中栓は、蓋と分離した形態とし、注液口の内側に嵌め込む内中栓7、又は注液口の外側に嵌め込む外中栓8とすることができる。内中栓7よりも外中栓8の方が、非水電解液と中栓が接触する機会が少ないため、より密閉性を保持し易いので好ましい。また、中栓には取り外しを容易にするための取っ手等を取り付けることが好ましい。
中栓が内中栓7の場合、内中栓7を注液口に挿入する際に、注液口の内側と接する内中栓7の側面の先端部分の外径が注液口の内径に比べて小さくなるように傾斜していてもよい。また、該先端部分が切り欠きや曲面となっていてもよく、これにより、内中栓7を注液口に嵌め込み易くなるので好ましい。
また、図2(c)に示すように、中栓は、蓋に付設した環状の突起部の形態とし、閉蓋時に注液口の内壁に接して密封することのできる蓋と一体化した形態とすることもできる。環状の突起部(中栓)が付設された蓋9を設けることにより、容器の密封性が向上し、非水電解液中に含まれる低沸点溶媒の揮発や容器外からの水分の混入をより効果的に防ぐことができる。蓋に設けられる環状の突起部は、注液口の内壁に接する面(外壁)を注液口の内壁に対して傾斜するように設けることが好ましく、その傾斜角θは0.5〜45°が好ましく、1〜30°がより好ましい。
環状の突起部(中栓)が付設された蓋9よりも、中栓と蓋が分離している形態の内中栓7や外中栓8の方が、蓋が非水電解液と接触する機会が少ないため、より密閉性を保持し易いので好ましい。
【0021】
容器の注液口は、容器の胴径よりも小さい外径を有する筒状とすることができる。また、筒状の注液口に切り欠きや凹部を設けて、液垂れしにくい形状とすることもできる。
また、市販の保存瓶(デュラン(登録商標)瓶等)に施されている環状の液垂れ防止部材を設けることにより、電解液注出後に、電解液が容器の口頸部やネジ部に液垂れして伝わることを防止することができる。
【0022】
注液口と中栓の寸法比率は、円形蓋かつ内中栓の場合は、(注液口の内径/中栓の外径)の比、円形蓋かつ外中栓の場合は、(中栓の内径/注液口の外径)の比が、それぞれ0.920〜0.995が好ましい。前記寸法比率の下限は、それぞれ0.940以上がより好ましく、0.960以上が更に好ましく、その上限は、それぞれ0.993以下がより好ましく、0.990以下が更に好ましい。
前記寸法比率が0.920未満だと、容器の口頸部やネジ部に付着、乾燥して析出した固形物により、蓋をしたり、蓋や中栓を取り外すのにかなりの力を要するようになり、著しく作業性が低下するおそれがある。一方、前記寸法比率が0.995を超えると、容器の密閉性が低下するため、非水電解液中に含まれる低沸点溶媒が揮発し易くなったり、容器外から水分が混入し易くなるため、非水電解液の品質を長期に亘って維持することができないおそれがある。
【0023】
蓋及び中栓の材質は、一時的に非水電解液と接触する程度では材質の成分が溶出せず、蓋又は中栓としての密閉性、耐久性を有する素材であれば特に限定されず、樹脂及び金属材料を使用することができる。これらの中では、気密性及び取扱い性の観点から、蓋はポリプロピレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂等の比較的硬質で機械的強度が大きい合成樹脂製であることが好ましい。
中栓は、通常、容器の内容物である非水電解液と殆ど接触しないので、容器の素材の非水電解液への溶出に比べて、中栓の素材が非水電解溶液に溶出することは殆どない。このため、中栓は、密封性、耐久性及び取扱い性の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン樹脂製、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等のフッ素樹脂製等の蓋に用いる合成樹脂よりも機械的強度が小さく比較的軟質である合成樹脂が好ましい。
【0024】
容器の容量は特に限定されないが、取扱い性の観点から、10〜200,000cm3が好ましく、20〜30,000cm3がより好ましく、50〜1,000cm3が更に好ましく、100〜500cm3が特に好ましい。容器の胴径は特に限定されないが、取扱い性の観点から、50〜150mmが好ましく、60〜100mmがより好ましい。
容器中に非水電解液を充填する場合、その充填率は、容器の容量の20〜98%が好ましく、30〜97%がより好ましく、50〜95%が更に好ましい。充填率が20%より少ないと、非水電解液中の低沸点溶媒の揮発しやすく、高沸点溶媒の濃度が高まるため、口頸部やネジ部に固形物が析出しやすくなるため、密閉性が低下するおそれがある。一方、充填率が98%を超えると、蓋が非水電解液と接触しやすくなったり、容器内の内圧が上昇して、密閉性が低下するおそれがある。従って、上記の充填率の範囲が好ましい。また、充填される非水電解液の上面が、注液口より好ましくは1cm以上、より好ましくは2cm以上、更に好ましくは3cm以上低くなるように充填すること好ましい。
【0025】
〔非水溶媒〕
本発明の非水電解液に使用される非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状エステル、ラクトン、エーテル、アミド、ニトリル、リン酸エステル、S=O結合含有化合物、カルボン酸無水物及び芳香族化合物等が挙げられる。
本発明の効果をより効果的に発揮させる観点から、非水溶媒は環状カーボネートを含有することが好ましく、環状カーボネートと鎖状エステルを含有することがより好ましい。
なお、「鎖状エステル」なる用語は、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルを含む概念である。
非水溶媒は1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
(環状カーボネート)
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランス又はシス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(以下、両者を総称して「DFEC」という)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)等が好適に挙げられる。
これらの中でも、EC、PC、及び二重結合又はフッ素原子を含有する環状カーボネートから選ばれる1種以上を含む環状カーボネートが好ましく、EC及び/又はPCと、二重結合又はフッ素原子を含有する環状カーボネートを1種以上を使用すると電池特性が一段と向上するのでより好ましく、EC及び/又はPCと、二重結合を含む環状カーボネートとフッ素原子を含有する環状カーボネートを両方含むことが特に好ましい。二重結合を含有する環状カーボネートとしては、VC、VECが好ましく、フッ素原子を含有する環状カーボネートとしては、FEC、DFECが好ましい。
これらの環状カーボネートの好適な組合せの具体例としては、ECとVC、FECとPC、DFECとPC、ECとFECとPC、ECとFECとVC、ECとVCとVEC等の組合せが挙げられる。
環状カーボネートの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総体積の0〜40体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が40体積%を超えると非水電解液の粘度が上昇する場合があるので上記範囲であることが好ましい。
【0027】
(鎖状エステル)
鎖状エステルとしては、メチルエチルカーボネート(MEC)、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート等の非対称鎖状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等の対称鎖状カーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸ブチル、ピバリン酸ヘキシル、ピバリン酸オクチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸エチルメチル、シュウ酸ジエチル等の鎖状カルボン酸エステルが挙げられる。
特に非対称鎖状カーボネートを含むと保存特性等の電池特性が向上する傾向があるので好ましく、非対称鎖状カーボネートと対称鎖状カーボネートを併用することも好ましい。また、鎖状カーボネートに含まれる非対称鎖状カーボネートの割合が50容量%以上であることが好ましい。非対称鎖状カーボネートとしては、メチル基を有するものが好ましく、MECがより好ましい。
鎖状エステル、特に鎖状カーボネートの含有量は、特に制限されないが、非水溶媒の総体積に対して、60〜100体積%の範囲で用いるのが好ましい。該含有量が60体積%未満であると非水電解液の粘度が上昇する場合があるので上記範囲であることが好ましい。
環状カーボネートと鎖状エステル(鎖状カーボネート)の割合は、保存特性等の電池特性を向上させる観点から、環状カーボネート:鎖状エステル(鎖状カーボネート)(容量比)が10:90〜40:60が好ましく、15:85〜35:65がより好ましく、20:80〜30:70が更に好ましい。
【0028】
(その他の非水溶媒)
ラクトンとしては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、α−アンゲリカラクトン等が挙げられ、エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等の鎖状エーテル等が挙げられ、アミドとしては、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、ニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル等が挙げられ、リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル等が挙げられる。
S=O結合含有化合物としては、1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン等のスルトン化合物、エチレンサルファイト、1,2−シクロヘキサンジオールサイクリックサルファイト、5−ビニル−ヘキサヒドロ−1,3,2−ベンゾジオキサチオール−2−オキシド等の環状サルファイト化合物、1,2−エタンジオール ジメタンスルホネート、1,2−プロパンジオール ジメタンスルホネート、1,3−プロパンジオール ジメタンスルホネート、1,4−ブタンジオール ジメタンスルホネート、1,5−ペンタンジオール ジメタンスルホネート、メタンスルホン酸2−プロピニル等のスルホン酸エステル化合物、ジビニルスルホン、1,2−ビス(ビニルスルホニル)エタン、ビス(2−ビニルスルホニルエチル)エーテル等のビニルスルホン化合物、スルホラン等が挙げられる。
【0029】
カルボン酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸等の鎖状のカルボン酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸等の環状のカルボン酸無水物等が挙げられる。
芳香族化合物としては、シクロヘキシルベンゼン、フルオロシクロヘキシルベンゼン化合物(1−フルオロ−2−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−3−シクロヘキシルベンゼン、1−フルオロ−4−シクロヘキシルベンゼン)、tert−ブチルベンゼン、tert−アミルベンゼン、1−フルオロ−4−tert−ブチルベンゼン等の分枝アルキル基を有する芳香族化合物や、ビフェニル、ターフェニル(o−、m−、p−体)、ジフェニルエーテル、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン(o−、m−、p−体)、アニソール、2,4−ジフルオロアニソール、ターフェニルの部分水素化物(1,2−ジシクロヘキシルベンゼン、2−フェニルビシクロヘキシル、1,2−ジフェニルシクロヘキサン、o−シクロヘキシルビフェニル)等の芳香族化合物が挙げられる。
【0030】
上記の中でも、特に、常温で固体である溶媒が含まれていると、本願発明の効果が一段と発揮されやすいので好ましく、中でもエチレンカーボネート及び/又はビニレンカーボネートが含まれているとより好ましい。
【0031】
〔電解質塩〕
本発明に使用される電解質塩としては、下記のリチウム塩、オニウム塩が好適に挙げられる。
(リチウム塩)
リチウム塩としては、LiPF6、LiPO22、Li2PO3F、LiBF4、LiClO4等の無機リチウム塩、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiCF3SO3、LiC(SO2CF33、LiPF4(CF32、LiPF3(C253、LiPF3(CF33、LiPF3(iso−C373、LiPF5(iso−C37)等の鎖状のフッ化アルキル基を含有するリチウム塩や、(CF22(SO22NLi、(CF23(SO22NLi等の環状のフッ化アルキレン鎖を有するリチウム塩、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムやジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム等のオキサレート錯体をアニオンとするリチウム塩が好適に挙げられ、これらの一種又は二種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、LiPF6、LiPO22、Li2PO3F、LiBF4、LiN(SO2CF32及びLiN(SO2252から選ばれる少なくとも1種が好ましく、LiPF6、LiPO22、LiBF4及びLiN(SO2CF32から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0032】
(オニウム塩)
オニウム塩としては、下記に示すオニウムカチオンとアニオンを組み合わせた各種塩が好適に挙げられる。
オニウムカチオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、ジエチルジメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチルピロリジニウムカチオン、N,N−ジエチルピロリジニウムカチオン、スピロ−(N,N')−ビピロリジニウムカチオン、N,N'−ジメチルイミダゾリニウムカチオン、N−エチル−N'−メチルイミダゾリニウムカチオン、N,N'−ジエチルイミダゾリニウムカチオン、N,N'−ジメチルイミダゾリウムカチオン、N−エチル−N'−メチルイミダゾリウムカチオン、N,N'−ジエチルイミダゾリウムカチオン等が好適に挙げられる。
アニオンの具体例としては、PF6アニオン、BF4アニオン、ClO4アニオン、AsF6アニオン、CF3SO3アニオン、N(CF3SO22アニオン、N(C25SO22アニオン等が好適に挙げられる。
これらの電解質塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
上記の中でも、特に、常温で固体である電解質塩が含まれていると、本願発明の効果が一段と発揮されやすいので好ましく、中でもLiPF6、LiPO22及びLiBF4から選ばれる少なくとも1種が含まれている場合には、電解質塩が水分と反応し、容器の口頸部に沈着物が付着しやすい傾向にあるため、より好ましい。
【0034】
電解質塩が非水電解液中に溶解されて使用される場合の濃度の下限は、0.3M以上が好ましく、0.5M以上がより好ましく、0.8M以上が更に好ましい。また、その上限は、電解質塩の種類及び非水溶媒の組合せにより異なるが、非水溶媒に対し電解質塩の濃度が飽和に達するまで使用することができる。その上限は4M以下が好ましく、3M以下がより好ましく、2M以下が更に好ましい。
【0035】
〔非水電解液〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液が容器に充填された非水電解液であって、該容器がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、該容器の蓋と中栓が樹脂製であり、該容器保存30日後の非水電解液の水分含有量が50ppm以下に保持される、容器入り非水電解液である。
この非水電解液は、例えば、前記の非水溶媒に、前記の電解質塩を0.3M以上、4M以下で溶解させることにより得ることができる。
この際、用いられる非水溶媒及び非水電解液に加える化合物は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0036】
(非水電解液の水分)
本発明においては、容器保存時の非水電解液の水分含有量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、より好ましくは25ppm以下、更に好ましくは15ppm以下に保持されるように、予め調整される。
容器保存30日後の非水電解液の水分含有量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下、更に好ましくは25ppm以下、特に好ましくは15ppm以下に保持されるように、予め調整される。
また、容器保存60日後の非水電解液の水分含有量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下、より好ましくは25ppm以下、更に好ましくは15ppm以下に保持されるように、予め調整される。
更に、容器保存180日後の非水電解液の水分含有量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下、更に好ましくは25ppm以下、特に好ましくは15ppm以下に保持される。
なお、非水電解液の水分はカールフィシャー水分測定装置で測定できる。
【0037】
非水電解液の容器保存時から保存30日後までの非水電解液の水分含有量の変化は、±15ppmであり、好ましくは±10ppmであり、より好ましくは±5ppmに保持される。
また、非水電解液の容器保存時から保存60日後までの非水電解液の水分含有量の変化は、好ましくは±20ppm、より好ましくは±15ppm、更に好ましくは±10ppmに保持される。
更に、非水電解液の容器保存時から保存180日後までの非水電解液の水分含有量の変化は、好ましくは±30ppm、より好ましくは±20ppm、更に好ましくは±10ppmに保持される。
【0038】
(非水電解液の酸分)
容器保存時の非水電解液の酸分は、フッ化水素(HF)換算で好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下、特に好ましくは25ppm以下である。
容器保存時から保存30日後の非水電解液の酸分は、HF換算で好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下、特に好ましくは25ppm以下である。
また、容器保存60日後の非水電解液の酸分は、HF換算で好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下、特に好ましくは25ppm以下である。
更に、容器保存180日後の非水電解液の酸分は、HF換算で好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下、特に好ましくは25ppm以下である。
非水電解液の容器保存時から保存30日後までの非水電解液の酸分の変化は、好ましくは±20ppm、より好ましくは±15ppm、更に好ましくは±10ppm、特に好ましくは±5ppmである。
なお、非水電解液の酸分の測定は、0.01N−NaOH水溶液を滴定溶液、ブロモチモールブルー(BTB)液を指示薬とし、例えば、平沼産業株式会社製の自動滴定装置(商品名:TS−980)を用いて測定し、測定値をHF換算した値を酸分とすることができる。
【0039】
(非水電解液のAPHA)
容器保存時の非水電解液のAPHAは、好ましくは150以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
非水電解液の容器保存時から保存30日後の非水電解液のハーゼン単位色数(APHA)は好ましくは150以下、より好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
また、容器保存60日後の非水電解液のAPHAは、好ましくは150以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
更に、容器保存180日後の非水電解液のAPHAは、好ましくは150以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
なお、APHAの測定は、JIS K−6901に準拠して、試料に最も近似した濃度の標準液を求め、その標準液番号をAPHA値とした。
【0040】
〔非水電解液の保存方法〕
本発明の非水電解液の保存方法は、容器内で非水電解液を保存する非水電解液の保存方法であって、該容器がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、該容器の蓋と中栓が樹脂製であり、該容器保存30日後の非水電解液の水分含有量を50ppm以下に保持することを特徴とする。
非水電解液の保存時の温度は、腐蝕抑制の観点から、0℃〜60℃が好ましく、10℃〜50℃がより好ましく、20℃〜45℃が更に好ましい。
その他の詳細は前記のとおりである。
【0041】
〔非水電解液の用途〕
本発明の非水電解液は、リチウム電池(リチウム一次電池及びリチウム二次電池)、電気二重層キャパシタ(電解液と電極界面の電気二重層容量を利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子)、電極のドープ/脱ドープ反応を利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子、リチウムイオンキャパシタ(負極であるグラファイト等の炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーションを利用してエネルギーを貯蔵する電気化学素子)等の電気化学素子用の非水電解液として使用することができる。更に本発明の非水電解液は固体高分子電解質用としても使用できる。
これらの中でも第1の電気化学素子用(即ち、リチウム電池用)として用いることが好ましく、リチウム二次電池用として用いることが最も適している。
【実施例】
【0042】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
調製例1(非水電解液の調製)
エチレンカーボネート(EC):メチルエチルカーボネート(MEC)(容量比)=3:7の非水溶媒を調製し、これに電解質塩としてLiPF6を1Mの濃度になるように溶解し、非水電解液を調製した。
【0043】
実施例1
調製例1で得られた非水電解液を純度99.5%のアルミニウム(JIS1050)製の1000cm3容器(蓋はポリプロピレン樹脂製、中栓は低密度ポリエチレン製、注液口の内径28.0mm、内中栓の外径29.0mm)に保存し、25℃にて180日間保存し、前記の方法で、保存前から経時的に非水電解液の水分及び酸分を測定した。結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、保存温度を40℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0044】
実施例3
調整例1で得られた非水電解液にさらに1,3−プロパンスルトンを非水電解液中に2質量%を添加して、非水電解液を調製した以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0045】
比較例1及び2
実施例1において、保存容器をそれぞれステンレス(和田ステンレス工業株式会社製、1000cm3)製、及びポリプロピレン(PP)製(アズワン株式会社製、1000cm3)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
上記実施例1及び2の条件で保存した非水電解液は、容器材料の溶出を伴うことなく、良好な品質を保ち、保存した非水電解液を用いたリチウム二次電池の性能も何ら電気化学特性を損なうことはなかった。また、容器の軽量化がはかれたことで、容器の取扱い性も格段に向上した。それに対して、比較例1は、容器質量が本願発明容器の6.5倍であり、取り扱いが実施例1及び2の容器に比べて劣っている。
また、比較例2の条件で保存した非水電解液では、容器の材質が電解液中に溶出し、分光光度計(UV2400PC、株式会社島津製作所製)で電解液のUVを測定した結果、芳香族系の添加剤成分に由来するUVピークを検出した。その溶出量は経過日数とともに増加し、保存した非水電解液を用いたリチウム二次電池の電気化学性能にも影響が見られた。
【0048】
実施例4〜9及び比較例3
(1)操作1
非水溶媒成分として、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、1,2−ジメトキシエタン(DME)を用意し、電解質塩としてLiPF6、LiBF4を用意して、表2に示す組成の非水電解液を調製した。
純度99.5%のアルミニウム(JIS1050)製容器(内容積1000cm3、注液口の内径28.0mm)、又はステンレス(和田ステンレス工業株式会社製、1000cm3)製容器を露点が−60℃以下に管理されたグローブボックス中に入れ、その中に各種組成の非水電解液900mL又は400mLを注ぎポリエチレン(PE)製の中栓(外径29.0mm又は28.3mmの内中栓、又は内径31.0mmの外中栓、但し、ステンレス製容器には中栓は使用しなかった)とポリプロピレン製(PP)の蓋又はステンレス製の蓋を用いてしっかり封入した。その後直ちに蓋及び中栓を開け、容器内の非水電解液をピペットで採取して、非水電解液中のHF濃度、H2O濃度、APHAを測定した。結果を表2に示す。
【0049】
(2)操作2〔電解液がこぼれた場合を想定〕
非水電解液を約1mL採取して、電解液を上記のアルミニウム製容器又はステンレス製容器のネジ部外周部付近に付着させ、その後布にて拭き取り、中栓(但し、ステンレス製容器には中栓を使用しなかった)と蓋でしっかりと封入した後、該アルミニウム製容器又はステンレス製容器をグローブボックスから取り出し、60℃、湿度40%の恒温恒湿槽に1週間保管した。その後、該アルミニウム製容器又はステンレス製容器を再びグローブボックス中に入れ、直ちに蓋及び中栓(但し、ステンレス製容器には中栓を使用しなかった)を開け、容器内の非水電解液を採取して、非水電解液中のHF濃度、H2O濃度、APHAを測定した。この際、非水電解液1mLをねじ部に付着させ拭き取る操作を行った。
【0050】
その後、前記操作2を更に2回繰り返した。結果を表2に示す。
表2において、蓋の開閉性レベルは次の基準で評価した。
レベル1:無理なく手で開閉できる。
レベル2:力が要るが手で開閉できる。
レベル3:手で開閉することが困難となり、工具を用いて開閉した。
比較例3の容器のネジ部の外周に付着した固形物の分析を行ったところ、固形物はLiPF6又はLiBF4由来と考えられる分解物、エチレンカーボネート及びビニレンカーボネートの混合物であった。
【0051】
【表2】

【0052】
表2から、本願発明の実施例4〜9のアルミニウム製容器に保管された非水電解液は、比較例3のステンレス製容器に保管された非水電解液に比べ、非水電解液中の水分や酸分の上昇が低く、着色も少ないことが分かる。
LiPF6等のリチウム塩やエチレンカーボネート等の常温で固体となる成分を含む電解液は、容器の口頸部に固着物が増え、密閉性が低下するため、リチウム塩が容器内に侵入した水と反応して酸分(HF)を生成したり、着色したりする。また、該固着物により、蓋の開閉が困難になりやすい。しかしながら、本発明のアルミニウム製容器を使用すると、電解液中の水分やHF濃度の上昇はなく、着色もしにくく、更には、蓋や中栓の開閉に支障が出ることがなく、取扱い性が良好であった。
また、実施例4の容器本体の形状をボトル型からアルミ付紙パック型やアルミパウチ型の容器に変更し、実施例4と同じポリプロピレン製の蓋とポリエチレン製の内中栓を使用した場合もほぼ同様な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の非水電解液用容器、非水電解液の保存方法によれば、簡便に非水電解液を高品質に維持することができるため、非水電解液の保存、利用に極めて有用である。
【符号の説明】
【0054】
1:缶体(ボトル型) 2:缶胴 3:注液口 4:スカート壁
5:口頸部 6:ネジ部
7:内中栓 8:外中栓 9:環状の突起部(中栓)が付設された蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度が99%以上のアルミニウム又はアルミニウム−マンガン系合金層を含む素材で容器本体が構成され、環状カーボネートを含有する非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液を充填する容器であって、樹脂製の蓋と該容器の注液口に嵌め込むポリエチレン樹脂製の中栓を有し、該容器保存30日後の非水電解液の水分含有量を50ppm以下に保持する、非水電解液用容器。
【請求項2】
蓋がポリプロピレン樹脂製である、請求項1に記載の非水電解液容器。
【請求項3】
(注液口の内径/中栓の外径)の比、又は(中栓の内径/注液口の外径)の比が0.920〜0.995である、請求項1又は2に記載の非水電解液容器。
【請求項4】
環状カーボネートを含有する非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液が容器に充填された非水電解液であって、該容器本体が純度が99%以上のアルミニウム又はアルミニウム−マンガン系合金層を含む素材で構成され、該容器の蓋が樹脂製で、該容器の注液口に嵌め込む中栓がポリエチレン樹脂製であり、該容器保存30日後の非水電解液の水分含有量が50ppm以下に保持される、容器入り非水電解液。
【請求項5】
容器保存30日後の非水電解液の酸分が、フッ化水素(HF)換算で100ppm以下である、請求項4に記載の容器入り非水電解液。
【請求項6】
容器保存30日後までの非水電解液の酸分の変化が、HF換算で±20ppm以内である、請求項4又は5に記載の容器入り非水電解液。
【請求項7】
非水電解液のAPHAが150以下である、請求項4〜6のいずれかに記載の容器入り非水電解液。
【請求項8】
非水溶媒が環状カーボネートと鎖状エステルを含有する、請求項4〜7のいずれかに記載の容器入り非水電解液。
【請求項9】
電解質塩がLiPF6、LiPO22、Li2PO3F、LiBF4、LiN(SO2CF32及びLiN(SO2252から選ばれる少なくとも1種である、請求項4〜8のいずれかに記載の容器入り非水電解液。
【請求項10】
非水溶媒がエチレンカーボネートを含有し、電解質塩がLiPF6である、請求項4〜9のいずれかに記載の容器入り非水電解液。
【請求項11】
環状カーボネートを含有する非水溶媒に電解質塩が溶解されてなる非水電解液を容器内で保存する非水電解液の保存方法であって、該容器本体が純度が99%以上のアルミニウム又はアルミニウム−マンガン系合金層を含む素材で構成され、該容器の蓋が樹脂製で、該容器の注液口に嵌め込む中栓がポリエチレン樹脂製であり、該容器保存30日後の非水電解液の水分含有量を50ppm以下に保持する、非水電解液の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−77567(P2013−77567A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−245143(P2012−245143)
【出願日】平成24年11月7日(2012.11.7)
【分割の表示】特願2012−538129(P2012−538129)の分割
【原出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】