説明

靴、特に運動靴

本発明は靴底(1)を有する靴、特に運動靴に関し、靴底(1)は少なくとも1つのばね要素(2)を含み、ばね要素は、水平かつ靴底(1)の長手方向(L)に垂直な向きの軸(Q)の周方向の靴底(1)の曲げ剛性を増大させる。別個の手段を用いずに、つまり、ばね要素を挿入せずに、十分な曲げ剛性とばね特性をそれぞれ有する靴底を備える靴を作製するために、本発明は、靴底が少なくとも1つのばね要素(2)のための少なくとも1つの受入溝(3)を含むよう提案し、ばね要素(2)は、靴底(1)に対して少なくとも伸張部の一部に沿って長手方向(L)に相対的に摺動可能に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底を備える靴、特に運動靴に関し、靴底は少なくとも1つのばね要素からなり、ばね要素は、水平方向であり、かつ、靴底の長手方向に対して垂直である軸の周方向の靴底の曲げ剛性を増大させる。
【背景技術】
【0002】
この種の靴は、たとえば、国際公開第2008/000398(A1)号パンフレットから知られている。靴には、水平横軸の周方向の靴の曲げ剛性を増大させ、これにより、たとえばランニングシューズとして使用するために必要な剛性を靴に付与するばね特性を有する堅いインソールが備えられている。そのような解決法は、通常の靴であって、上記パンフレットにみられるような靴の長手方向に圧縮性がある靴ではない場合には、取り扱いに比較的多くの労力が必要となることから、問題となる可能性がある。固有の堅さのあるインソールは、要求に応じて靴に挿入する必要がある。
【0003】
また、横軸の周方向の曲げ剛性を増大させるために、靴の長手方向に伸張する補強材またはばね要素を靴底に、たとえば接着によって、固定して連結することが知られている。横軸の周方向の曲げモーメントひいてはこの軸の周方向の曲げ変形の開始時に、補強材またはばね要素と靴底との間にかなり大きい張力が生じる可能性があることが問題となる。これにより、補強材またはばね要素が破壊する危険性さえ生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、上記の問題を防止するように、上に示す種類の靴、特に運動靴を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、別個の手段を用いず、つまり、ばね要素を挿入することなく、組み込まれたばね要素によって、長手軸に対する水平横軸の周方向の十分な曲げ剛性とばね特性をそれぞれ有する靴底を備える靴を作製する必要があり、このばね要素は、曲げ変形が大きい場合でも、破壊する危険性がないように配置される。このようにすることで、特にサッカーシューズの場合には、シュート力を増大させることが可能となり、シュート速度に良い影響を確実に与えることができるようになる。しかし、通常のランニング時には、望ましくない高剛性を与えるべきでない。
【0006】
本発明による本目的の解決法は、靴底が少なくとも1つのばね要素のための少なくとも1つの受入溝を含み、受入溝内に、ばね要素が、靴底に対して伸長部の一部に少なくとも沿って長手方向に相対的に摺動可能に配置されることを特徴とする。
【0007】
ばね要素は、少なくとも実質的に長手方向の伸張部に沿って、特に長手方向に測定した長さの少なくとも75%に少なくとも沿って帯状の形状を有するのが好ましい。
【0008】
ばね要素は、長手方向に対して垂直な断面では少なくとも部分的に矩形の形状を有しうる。
【0009】
提案する設計によって靴の着用者に違和感を与えないことを確実にするために、ばね要素の上側と靴底の上側は、実質的に平坦な表面を形成するのが好ましい。
【0010】
ばね要素は、靴底での固定を容易にするために、軸端の一方に、長手方向に対して水平横方向に広がり部を含むことができる。これによって、広がり部は、ばね要素の前端領域に配置されるのが好ましい。ばね要素は、広がり部とともに上面から見てT字形状を有しうる。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、ばね要素は、少なくとも1つのネジ接続によって靴底に連結される。さらに、本発明の特に好適な実施形態では、ネジ接続によって靴底の底部側にクリートを同時に固定することを提案する。
【0012】
ばね要素は、強化用繊維を組み込んだ塑性材料から成るのが好ましい。強化用繊維は、主にガラス繊維または炭素繊維である。
【0013】
本発明の好適な適用は、サッカーシューズである。
【0014】
この場合、提案する靴の利点が特に顕著となり、すなわち、(長手軸に対して水平横軸の周方向に屈曲することによって)靴底が変形する場合、(カタパルトと同じように)エネルギーをばね要素に蓄積し、シュート時に発することができる。したがって、シュート力を増大させることができ、このため、シュート速度に良い影響を確実に与えることができる。
【0015】
しかし、一方では、ばね要素は、提案する設計によって、既知の解決法のようにさらに補強を加えないということが便益である。
【0016】
これは、靴底の受入溝内のばね要素が、長手方向の実質的な伸張部に沿って、靴底に対して摺動可能であることから、水平横軸の周方向に靴底が屈曲する時に、ばね要素の破壊に対して臨界となりうる張力が、ばね要素に発生しないことによる。
【0017】
むしろ、靴底の溝の底面に対してばね要素が相対的に摺動移動することによって、ばね要素が横軸の周方向の曲げモーメントに対して同じ抵抗力を常にもたらすように、釣合い運動が生じる。このため、ばね要素を含む靴底の抵抗モーメントは、実質的に一定となり、簡単な方法で、横軸の周方向の曲げ挙動に関して靴の設計が可能となる。
【0018】
図面には、本発明の一実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】運動靴の靴底を示す斜視図である。
【図2】靴の長手方向に垂直な断面(図1の断面A−B)を示す図である。
【図3】長手方向に沿って靴底の一部の断面(図1による断面C−D)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面には、公知の方法によって図示していない靴の甲部と連結される運動靴の靴底1を示す。靴底は、着用者の足に対応する形状、つまり貝殻の形状を有する。通常の材料から作製される靴底1は、靴および靴底1それぞれの長手方向Lに対して水平横方向、つまり、軸Qの周方向に作用する曲げモーメントの影響下にある場合、靴底1の剛軟度を増大させるばね要素2を備える。そのような曲げモーメントを伴う靴底1の衝撃は、靴が歩行中に地面に接触し、地面上で巻き上がる時に発生することが多い。
【0021】
これにより、ばね要素2は、全体の伸張部に沿って靴底に固定して連結されず、靴底1の受入溝3内に配置される。図2に示すように、受入溝3は、ばね要素2とまさに同じく、長手方向Lに垂直な断面において実質的に矩形の形状を有する。これにより、図2に示すように、ばね要素2は受入溝3よりも幅が僅かに細い。
【0022】
ばね要素2は、受入溝3内に自由に配置される以外に、靴底の足指領域の靴底1に固定して連結され、受入溝3の側面9によって案内される。たとえば、靴が地面上で巻き上がる時に軸Qの周方向の屈曲が生じる場合、靴底1およびばね要素2は、幾何学関係によって一様に変形せず、僅かに差が生じる。この差は、ばね要素2が受入溝3内で長手方向Lに摺動するという事実によって解消される。したがって、受入溝3は、ばね要素2に対応しているが、後端部領域では伸張部が僅かに長い。自由空間10を参照されたい。
【0023】
ばね要素2は、(靴の大きさに応じて)長さが15〜28cmであり、矩形の形状を有する層状部分を有し、その断面部の長さが10〜23cmとなりうるのが好ましい。矩形の断面を有するこの部分は、幅が10〜20mmであるのが好ましく、高さが1〜4mmであるのが好ましい。
【0024】
さらに図に示すように、ばね要素2の上側4と靴底1の上側5は平坦であり、これにより、靴の着用者にとって受入溝3内に位置するばね要素2が妨げにはならない。
【0025】
ばね要素2は、上に示すように、靴底1の足指領域に固定される。したがって、ばね要素2は、足指領域に広がり部6を有し、これにより、上面から見て概してT字形状を有するように、広がり部6の領域のばね要素2に2つの穴が配置され、この穴にネジスリーブ11を上側から挿入することができる(図3参照)。ネジスリーブ11は、上部領域に円盤状の広がり部12を有し、ばね要素2に鋏み込み、これにより、ばねと堅固に組み立てるアーバ(図示せず)を備えることができる。下方では、ネジ軸13が、ネジ山を備える円盤状の広がり部12に隣接している。靴底1は、ネジ軸13が靴底の底面部まで伸張できるように、この位置に穴を有する。クリート8は、底面からネジ止めされ、すなわち、ネジ軸13にネジ止め可能なネジ山部分14を備える。
【0026】
これにより、ネジクリート8が靴底の底面に固定され、同時に、ばね要素2は、上記の平衡機能に影響を及ぼさないように、簡単な方法かつ少ない部品を用いて、つまり、靴底の足指領域でのみ靴底1と固定される。
【0027】
クリートを備えない場合は、靴底1にばね要素2を固定する機能のみを有する別個のネジによって、ばね要素2は靴底1と固定することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 靴底
2 ばね要素
3 受入溝
4 ばね要素の上側
5 靴底の上側
6 広がり部
7 ネジ接続
8 クリート
9 側面
10 自由空間
11 ネジスリーブ
12 広がり部
13 ネジ軸
14 ネジ山部分
L 長手方向
Q 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底(1)を有する靴、特に運動靴であって、
前記靴底(1)は、少なくとも1つのばね要素(2)を含み、前記ばね要素は、水平かつ前記靴底(1)の長手方向(L)に垂直な向きの軸(Q)の周方向の前記靴底(1)の曲げ剛性を増大させ、
前記靴底は、前記少なくとも1つのばね要素(2)のための少なくとも1つの受入溝(3)を含み、前記ばね要素(2)は、前記靴底(1)に対して少なくとも伸張部の一部に沿って前記長手方向(L)に相対的に摺動可能に配置されることを特徴とする靴。
【請求項2】
前記ばね要素(2)は、少なくとも前記長手方向(L)に測定した長さの少なくとも75%に沿って帯状の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記ばね要素(2)は、前記長手方向(L)に対して垂直な断面では少なくとも部分的に矩形の形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の靴。
【請求項4】
前記ばね要素(2)の上側(4)と前記靴底(1)の上側(5)は、実質的に平坦な表面を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項5】
前記ばね要素(2)は、軸端の一方で、前記長手方向(L)に対して水平横方向に広がり部(6)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の靴。
【請求項6】
前記広がり部(6)は、前記ばね要素(2)の前端領域に配置されることを特徴とする請求項5に記載の靴。
【請求項7】
前記ばね要素(2)は、前記広がり部(6)とともに、上面から見てT字形状を有することを特徴とする請求項5または6に記載の靴。
【請求項8】
前記ばね要素(2)は、少なくとも1つのネジ接続(7)によって前記靴底(1)に連結されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の靴。
【請求項9】
前記ネジ接続(7)によって、同時に、前記靴底(1)の底面でクリート(8)が固定されることを特徴とする請求項8に記載の靴。
【請求項10】
前記ばね要素(2)は、強化用繊維を組み込んだ塑性材料から成ることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の靴。
【請求項11】
前記強化用繊維は、ガラス繊維または炭素繊維であることを特徴とする請求項10に記載の靴。
【請求項12】
サッカーシューズであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−524556(P2012−524556A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506363(P2012−506363)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002123
【国際公開番号】WO2010/121709
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(398049829)プーマ ソシエタス ヨーロピア (18)
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
【住所又は居所原語表記】PUMA Way 1, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】