説明

靴の製造方法とその方法によって製造される靴

【課題】甲部と同じ材料、又は、甲部の材料とマッチする材料によってコーティングされた土踏まず部を備える靴を製造する方法を提供すること。
【解決手段】甲部11と、かかと部15と、少なくとも1つのソール部13と土踏まず部14とを備えるソール部材12とを提供する工程と、土踏まず部14の領域においてソール部材12の下面から材料の一部を除去する工程と、土踏まず部14においてソール部材12を側方の縁に沿って固定する工程と、土踏まず部のためのコーティング部材を提供する工程と、土踏まず部14の領域からの材料の除去によって形成されたシート部において、コーティング部材をソール部材12の下面に接着し、甲部11によって最終的にカバーされるソール部材12の上面上に配置される二つのラップ部によってコーティング部材をソール部材12に覆う工程と、甲部11とかかと部15とを取り付けることによって靴の組み付けを完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴、特に女性用の靴に関し、通常かかと部の高さに対応して地面から多少持ち上げられたままとなる、技術用語で「土踏まず部(シャンク:shank)」と呼ばれているソール部とかかと部との間のソール部材の一部分が、靴の甲部を構成又はコーティングするのと同じ材料によって、或いは、前記甲部の材料とマッチするように構成された材料、によってコーティングされている靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、土踏まず部のコーティングは、甲部を、側方から突出する一部分を残してカットし、甲部をソール部材に取り付けた後、この部分を土踏まず部回りに包み込むことによって得ていた。
【0003】
しかしながら、従来技術において使用されているこの解決手段には、土踏まず部の回りを包む突出部を提供するために甲部を適切に成形する必要性と、靴の製造におけるこの工程において作り出される切れ端の量、とによるいくつかの欠点がある。
【0004】
更に、ソール部材(特に、土踏まず部の領域)と甲部との間に感知しうる視覚的コントラストを得ることが困難であることから、美的外観と品質とにおけるそれによって得られる結果は必ずしも満足できるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一般的課題は、甲部と同じ材料、又は、甲部の材料とマッチする材料、によってコーティングされた土踏まず部を備える靴を製造する方法であって、それによって、外観において最適な結果を得ることを可能とし、かつ、材料の大量の無駄となることのない方法を提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、甲部と同じ材料又は、甲部の材料とマッチする材料、によってコーティングされた土踏まず部を備える靴であって、甲部と土踏まず部との間に相当な視覚的コントラストがある靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのような目的を達するための、本発明による靴の製造方法は、甲部と、かかと部と、少なくとも一つのソール部と一つの土踏まず部とを備えるソール部材とを提供する工程と、前記土踏まず部の領域において、前記ソール部材の下面から材料の一部分を除去する工程と、前記土踏まず部の領域において、前記ソール部材をその側方の縁に沿って固定する工程と、前記土踏まず部のためのコーティング部材を提供する工程と、前記土踏まず部の領域からの材料の除去によって形成されたシート部において、前記コーティング部材を前記ソール部材の下面に接着し、前記甲部によって最終的にカバーされる前記ソール部材の上面上に配置される二つのラップ部によって前記コーティング部材を前記ソール部材に覆う工程と、前記甲部をと前記かかと部とを取り付けることによって靴の組み付けを完了する工程とを含む、靴の製造方法である。
【0008】
本発明に拠れば、更に、前記甲部と、前記かかと部と、前記ソール部と被覆された前記土踏まず部とを備える前記ソール部材と、を有する靴であって、前記土踏まず部が前記甲部から物理的に分離された前記コーティング部材によってコーティングされ、前記甲部と前記コーティング部材との間の分離によって、前記土踏まず部において前記甲部の下方の縁に沿った視覚的分離ラインが形成されることを特徴とする靴が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の方法によって製造される靴の斜視図。
【図2】図1の靴の、そのソール部をより詳細に図示しているもう一つの図。
【図3】前記靴の製造に使用されるソール部材の側方図であって、本発明による作業工程を始める前の状態を図示している。
【図4】図3に類似の図であって、土踏まず部における材料の除去後の前記ソール部材を図示している。
【図5】図4のソール部材の、下方からの平面図。
【図6】本発明において前記土踏まず部をコーティングするために使用される、前記甲部と同じ材料からなる部材の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の原理と従来技術に対するその利点とを明らかにするために、以下、添付の図面を参照しつつ、そのような原理が適用された実施例について説明する。
【0011】
図面を参照すると、図1及び図2は、靴10を図示し、これは、甲部11、ソール部材12(これは、一つのソール部13と土踏まず部14とから成る)と、かかと部15とを有する。
【0012】
上述したように、前記土踏まず部14は、ソール部13とかかと部15との間にあって、通常、地面から持ち上げられた状態に維持される凹んだソール部分として定義される。
【0013】
本発明に拠れば、前記靴は、図3の側面図に概略図示されている普通のソール部材12を出発材料として実現される。
【0014】
好ましくは、前記ソール部材は、かかと部が取り付けられることになる領域にまで延出する「バリー型(bally)」として市場において知られているタイプのものとすることができる。
【0015】
そのようなソール部材は、靴製造産業において周知の方法により、適当にカットされ、厚く(thickened)され、圧延(milled)されて供給される。例えば、初期におけるソール部材の厚みは3.4mmにすることができる。
【0016】
本発明に拠れば、原材料として提供されるソール部材を、土踏まず部14の領域において下面から材料を除去することによって加工する。図4において、この材料の除去(好ましくは、約0.5mm)が明確に図示されており、ここでは、土踏まず部14の領域におけるソール部材12の最初の外形が破線によって示され、加工工程後の厚みの薄くなった、約2.9mmの厚みの外形が実線によって示されている。
【0017】
図5の下方平面図において、上述の加工工程の後のソール部材が図示されている。ここで、ソール部13の前方部分は実質的に変化していないのに対して、土踏まず部14の薄肉化部分が一種の「段差」16を介してソール部13につながっている。
【0018】
この段階において、ソール部材12の外形は、その側方の縁に沿って幅の狭いものとなっている。好ましくは、この材料の除去は、約0.5mmであって、好適には、レーザ装置によって行われる。
【0019】
図5は、土踏まず部14の領域におけるソール部材12の最初の外形を破線で示し、この加工工程後の幅狭の外形を実線で示している。
【0020】
図4と図5とは、最終的にかかと部が取り付けられることになるソール部材の端部(図中の右端)まで延出するソール部材12の材料の除去(下面と側方の縁から)を図示している。これは、加工の簡単さにおいては有利であるが、必須ではなく、この材料の除去は、ソール部材のかかと部の部分はそのままにして土踏まず部14の領域のみであってもよい。
【0021】
土踏まず部14においてソール部材の底面と側方の縁とから皮革を除去することによって、土踏まず部をコーティングする部材のためのシート部が形成される。
【0022】
土踏まず部をコーティングするための部材は、図6において概略図示されている全体が矩形の部材17から構成され、これは、靴の両部分(土踏まず部と甲部)に対する美観上の均一性を提供するべく、甲部と同じ材料から成る。
【0023】
その後の加工工程は、土踏まず部14の領域におけるソール部材の底面と、最終的にソール部材自身と密着することになるコーティング部材17の面(図6において参照番号18で示されている)とに接着剤を塗ることから成る。
【0024】
接着剤中の溶剤が蒸発すると、前記コーティング部材17がソール部材に対して、最終的に甲部によりカバーされるソール部材の上面と密着する二つのラップ部19、20によって、ソール部材を包みこむ状態で取り付けられる。
【0025】
その後、甲部とかかと部とを、靴製造技術の当業者に周知の方法で、ソール部材に取り付けることによって靴の組み付けが完了する。
【0026】
本発明の方法によって製造された靴は、その甲部11と土踏まず部14とが同じコーティング材料から成るものとされる。しかしながら、コーティングされた土踏まず部を備えるが、従来技術によって製造された靴と違って、本発明に拠れば、甲部と土踏まず部のコーティングは物理的に分離した二つの部材から成る。この特徴構成により、甲部と土踏まず部とが、図1及び2における参照番号21が示す、甲部(その下面の縁に沿った)と、ソール部材とかかと部との間の境界線を示すラインに沿って視覚的に互いに分離されている。
【0027】
勿論、本発明の原理を適用した実施例に関する上の説明はそのような発明原理の一例として開示されるものであって、従って、ここに請求される本発明の範囲を限定するものではない。
【0028】
例えば、図1及び2において、かかと部も甲部と土踏まず部と同じ材料によってコーティングされているが、これは、本発明の目的にとって必須ではない。かかと部のコーティングの有無は、もっぱら、特定の靴のモデルに期待される全体的視覚効果に依存する。
【0029】
本説明において、単純化の目的のために、われわれは、土踏まず部のコーティング部材17が形成される材料を定義するにあたって、「甲部と同じ材料」という表現を使用した。勿論、この表現が、甲部の材料と厳密に同じ材料或いは、単に、甲部の材料とマッチするように構成された材料を意味するものであることは当業者にとって容易に理解されるであろう。例えば、材料の耐性のために、甲部には第1の材料を使用し、土踏まず部のコーティングのためには第2の材料を使用することができ、ここで、いずれの場合においても、これら2種類の材料は互いに適当に組み合わせることが可能である(例えば、色および/又は全体の視覚的外観において)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲部(11)と、かかと部(15)と、少なくとも1つのソール部(13)と土踏まず部(14)とを備えるソール部材(12)とを提供する工程と、
前記土踏まず部(14)の領域において、前記ソール部材(12)の下面から材料の一部分を除去する工程と、
前記土踏まず部(14)の領域において、前記ソール部材(12)をその側方の縁に沿って固定する工程と、
前記土踏まず部のためのコーティング部材(17)を提供する工程と、
前記土踏まず部(14)の領域からの材料の除去によって形成されたシート部において、前記コーティング部材(17)を前記ソール部材(12)の下面に接着し、前記甲部によって最終的にカバーされる前記ソール部材の上面上に配置される二つのラップ部(19、20)によって前記コーティング部材(17)を前記ソール部材に覆う工程と、
前記甲部(11)と前記かかと部(15)とを取り付けることによって靴の組み付けを完了する工程を含む靴の製造方法。
【請求項2】
前記土踏まず部(14)の領域における前記ソール部材の下面からの材料の除去は約0.5mmの厚みである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記土踏まず部(14)の領域における前記ソール部材の側方の縁の材料の除去は、約0.5mmの厚みである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ソール部材(12)は、更に、最終的に前記かかと部が取り付けられる部分を備え、前記ソール部材からの材料の前記除去はこの部分においても行われる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記土踏まず部の前記コーティング部材(17)はほぼ矩形の形状である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記土踏まず部の前記コーティング部材(17)は前記甲部と同じ材料である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
甲部(11)と、かかと部(15)と、ソール部(13)とコーティングされた土踏まず部(14)とを備えるソール部材(12)とを有する靴であって、前記土踏まず部(14)が前記甲部(11)から物理的に分離されたコーティング部材(17)によってコーティングされ、前記甲部(11)と前記コーティング部材(17)との間の分離によって前記土踏まず部において前記甲部の下面の縁に沿った視覚的分離ライン(21)が形成されている靴。
【請求項8】
前記土踏まず部(14)の前記コーティング部材(17)は前記甲部と同じ材料から構成されている請求項7に記載の靴。
【請求項9】
前記土踏まず部(14)の前記コーティング部材(17)は、前記ソール部材(12)の下方面に取り付けられ、かつ、前記甲部(11)によってカバーされる前記ソール部材の上面において、二つのラップ部(19、20)によって前記ソール部材の回りに包まれている請求項7に記載の靴。
【請求項10】
前記土踏まず部(14)の前記コーティング部材(17)は、前記土踏まず部(14)の領域において、前記ソール部材の材料の前記除去によって形成されるシート部に取り付けられている請求項9に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−176236(P2012−176236A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−37182(P2012−37182)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(505154451)
【氏名又は名称原語表記】DOLCE & GABBANA S.R.L.
【住所又は居所原語表記】VIA CARLO GOLDONI, 10, 20129 MILANO, ITALY
【Fターム(参考)】