説明

靴及びその製造方法

【課題】 簡易な構造で且つ靴のデザインや重量などに制約を与えることなく、前足部パートと後足部パートを確実に結合する。
【解決手段】 前足部パート1のソール部Sと後足部パート2のソール部Sを、ソール部Sの底面の少なくとも一部とソール部Sの底面の少なくとも一部に各々密着当接し、両ソール部S,Sの底面に脱着可能に固定される板状連結部材3により連結し、前足部パート1のソール部Sと後足部パート2のソール部Sの各底面にはアウトソール4,5を各々脱着可能に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴及びその製造方法に関するものであり、詳細には、個々の装着者の足に適合した形状を容易に実現することが可能な靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、既成靴はサイズ毎に標準的な型から製造され、この標準的な型の形状は平均的な足の形状に基づいて決められている。また、従来の既成靴では男性用、女性用、子供用を問わず、1つのサイズに対して1つのウィズ(靴幅)の製品のみが製造されるのが通例であり、例外的に1つのサイズに対して複数のウィズを揃えた製品もあるが、このような製品は高額で且つデザインにも限りがある。一方、既成靴を購入して装着する各個人の足の形状は同じサイズであっても千差万別であり、特に足幅は個人によって大きく異なる。したがって、上記のように標準的な型から製造され、しかも1つのサイズにつき1つのウィズしかない既成靴では、装着する各個人の足の形状に必ずしも十分に適合したものとならない。
【0003】
以上のように従来の既成靴は、ウィズ等の点で購入した各個人の足の形状に必ずしも十分に適合したものとはならない。このため気に入ったデザインやカラーの既成靴があり、自ら最適と思うサイズを選択しても、必ずしも足にフィットするとは限らず、結局、サイズ、ウィズ、デザイン、カラー等のいずれかを犠牲にして靴を購入せざるを得ないといったケースもある。
また、一部に見られる複数のウィズを揃えた既成靴においても、左右の足幅が異なるようなケースには対応できず、また、前足部が幅広になれば後足部も同率でグレーディングされ幅広になってしまうため、前足部と後足部の両方が足にフィットする確率はきわめて低いものとなる。
したがって、従来では各個人の足の形状にフィットした靴を入手するにはオーダーメイドに頼らざるを得ず、従来の既成靴において各個人の足の形状の違いに対応することは、コスト・生産性その他諸般の観点から事実上不可能であると考えられていた。
【0004】
以上のような課題を解決するために、特許文献1には、靴本体を土踏まず部を基点として前足部パートと後足部パートに分割した構造とした上で、(i)ウィズの異なる複数の前足部パート及び/又は後足部パートを形成し、これらウィズの異なる複数のパートから任意のパートを選択して前足部パートと後足部パートを結合することにより、1つのサイズでウィズが異なる複数種類の靴を製造する方法、或いは、(ii)サイズ及び/又はウィズの異なる複数の前足部パート及び/又は後足部パートを形成し、これらサイズ及び/又はウィズの異なる複数のパートから任意のパートを選択して前足部パートと後足部パートを結合することにより、左右の靴のサイズ及び/又はウィズが異なる複数種類の靴を製造する方法が提案されている。
【0005】
特許文献1の製造方法で用いられる靴の構造は、前足部アッパーを前足部ソールに接合して形成された前足部パートと、後足部アッパーを後足部ソールに接合して形成された後足部パートとを結合手段により脱着可能に結合したものであり、前足部ソールと後足部ソールとの結合手段(着脱用止め具)として、脱着可能に嵌合される雄型部材と雌型部材を、前足部ソールと後足部ソールに各々設けている。
【特許文献1】特開2002−28001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示される靴は、前足部ソールと後足部ソールとの結合手段が、両ソールの端部に設けられる雄型部材と雌型部材からなる着脱用止め具であるため、次のような問題がある。
(1) 雄型部材と雌型部材とからなる結合手段では、強度を確保するために部材自体を大きくせざるを得ず、靴のデザイン上大きな制約を受ける。また、厚みも大きいため、靴自体に弾力性を持たせることが難しい。
(2) 部品点数が多いため靴が重くなり、軽量な製品が得にくい。
(3) 雄型部材と雌型部材で構成すると構造が複雑になり、成型する際のモールドが複雑になって費用が嵩む。
(4) 雄型部材を雌型部材に嵌め込む結合手段は、内部のストッパーなどが破損しやすく、また、破損した場合の修理が煩雑で修理コストもかかる。
【0007】
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、前足部パートと後足部パートを結合することにより製造される靴であって、簡易な構造で且つ靴のデザイン、重量、弾力性などに制約を与えることなく、前足部パートと後足部パートを確実に結合することが可能な靴を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記のような靴を利用して、各個人の足の形状にフィットした靴を容易に製造することができる靴の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の靴及びその製造方法の要旨は、以下のとおりである。
[1] アッパー部Uとソール部Sとを備えた前足部パート1と、
アッパー部Uとソール部Sとを備えた後足部パート2と、
前記前足部パート1のソール部Sの底面の少なくとも一部と前記後足部パート2のソール部Sの底面の少なくとも一部に各々密着当接し、両ソール部S,Sの底面に脱着可能に固定されることで両ソール部S,Sを連結する板状連結部材3と、
前記前足部パート1のソール部Sの底面の少なくとも一部に、直接又は前記板状連結部材3の一部を介在させた状態で脱着可能に固定される前足部アウトソール4と、
前記後足部パート2のソール部Sの底面の少なくとも一部に、直接又は前記板状連結部材3の一部を介在させた状態で脱着可能に固定される後足部アウトソール5とを備え、
前記前足部パート1のソール部Sと前記後足部パート2のソール部Sは、互いに密着当接できる端部e,eを有し、
前記前足部パート1のアッパー部Uの端部と前記後足部パート2のアッパー部Uの端部には、両端部を脱着可能に連結する連結手段6を設けたことを特徴とする靴。
[2] 上記[1]の靴において、さらに、前足部パート1と後足部パート2とが連結された状態でその内側に配置されるインナーソール7を備えたことを特徴とする靴。
【0009】
[3] 上記[1]又は[2]の靴において、互いに密着当接する、前足部パート1のソール部Sの端部eと後足部パート2のソール部Sの端部eは、靴幅方向において非直線状に構成されることを特徴とする靴。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの靴において、板状連結部材3は、前足部パート1のソール部Sと後足部パート2のソール部Sに各々ビス止めで脱着可能に固定されることを特徴とする靴。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかの靴において、前足部パート1のソール部Sは、靴の土踏まず部の領域の少なくとも一部を含んでおり、板状連結部材3の前足側部分は、前記土踏まず部の領域のソール部Sの底面に密着当接した状態でビス止めで脱着可能に固定されるとともに、該土踏まず部の領域以外のソール部Sの底面に前足部アウトソール4が固定され、
板状連結部材3の後足側部分は、後足部パート2のソール部Sの底面の主要部に密着当接し、後足部アウトソール5がその外側に重合した状態に装着され、該重合した後足部アウトソール5と前記板状連結部材3の後足側部分は、一体として後足部パート2のソール部Sの底面にビス止めで脱着可能に固定されることを特徴とする靴。
【0010】
[6] 上記[1]〜[5]のいずれかの靴において、板状連結部材3がシャンク機能を有することを特徴とする靴。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれかの靴において、前足部パート1及び/又は後足部パート2が、ある任意のサイズの靴用に準備されたウィズの異なる複数の前足部パート1及び/又は後足部パート2の中から選択されたパートであることを特徴とする靴。
[8] 上記[1]〜[6]のいずれかの靴において、前足部パート1及び/又は後足部パート2が、準備されたサイズ及び/又はウィズの異なる複数の前足部パート1及び/又は後足部パート2の中から選択されたパートであり、且つ左右の靴にサイズ及び/又はウィズの異なる前足部パート1及び/又は後足部パート2を用いたことを特徴とする靴。
【0011】
[9] 上記[1]〜[6]のいずれかの靴を製造する方法であって、ある任意のサイズの靴を製造するに際し、ウィズの異なる複数の前足部パート1及び/又は後足部パート2を形成し、これらウィズの異なる複数のパートから任意のパートを選択して前足部パート1と後足部パート2を結合することにより、1つのサイズでウィズが異なる複数種類の靴を製造することを特徴とする靴の製造方法。
[10] 上記[1]〜[6]のいずれかの靴を製造する方法であって、サイズ及び/又はウィズの異なる複数の前足部パート1及び/又は後足部パート2を形成し、これらサイズ及び/又はウィズの異なる複数のパートから任意のパートを選択して前足部パート1と後足部パート2を結合することにより、左右の靴のサイズ及び/又はウィズが異なる複数種類の靴を製造することを特徴とする靴の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の靴は、アッパー部とソール部をそれぞれ備えた前足部パート1と後足部パート2とが、両者のソール部に各々密着当接して固定される板状連結部材3により連結される構造であるため、簡易な構造で且つ靴のデザイン、重量、弾力性などに制約を与えることなく、前足部パート1と後足部パート2とが適切に結合される。
また、本発明の靴の製造方法によれば、上記のような本発明の靴を利用して、各個人の足の形状にフィットした靴を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図6は、本発明の靴の一実施形態を示すもので、図1は結合前の構成部材を示す全体斜視図(全体分解図)、図2は結合前の前足部パート1及び前足部アウトソール4等を示す斜視図、図3は結合前の前足部パート1及び板状連結部材3等を示す斜視図、図4は結合前の後足部パート2、板状連結部材3及び後足部アウトソール5等を示す斜視図、図5は前足部パート1及び後足部パート2と両者の結合構造を示す斜視図、図6は前足部パート1と後足部パート2の接合部の形状を示す底面図である。
【0014】
本実施形態の靴は、アッパー部Uとソール部Sとを備えた前足部パート1と、アッパー部Uとソール部Sとを備えた後足部パート2と、これら両パートをそのソール部S,Sを介して脱着可能に連結する板状連結部材3と、前記前足部パート1に脱着可能に固定される前足部アウトソール4と、前記後足部パート2に脱着可能に固定される後足部アウトソール5と、前記前足部パート1のアッパー部Uの端縁部と前記後足部パート2のアッパー部Uの端縁部を脱着可能に連結する連結手段6を備え、さらに、前足部パート1と後足部パート2とが連結された状態でその内側に配置されるインナーソール7を備えている。
【0015】
本実施形態では、前記前足部パート1と後足部パート2は、靴の土踏まず部の領域で接合されるように構成されている。また、前記板状連結部材3は前足部パート1のソール部Sと後足部パート2のソール部Sに各々ビス止めで脱着可能に固定されることで、前足部パート1と後足部パート2を連結する。より具体的には、前記前足部パート1のソール部Sは、靴の土踏まず部の領域の少なくとも一部を含んでおり、板状連結部材3の前足側部分は、前記土踏まず部の領域のソール部Sの底面に密着当接した状態でビス止めで脱着可能に固定されるとともに、その土踏まず部の領域以外のソール部Sの底面には前足部アウトソール4が固定される。さらに、板状連結部材3の後足側部分は、後足部パート2のソール部Sの底面の主要部に密着当接し、後足部アウトソール5がその外側に重合した状態に装着され、この重合した後足部アウトソール5と前記板状連結部材3の後足側部分は、一体として後足部パート2のソール部Sの底面にビス止めで脱着可能に固定される。
なお、前足部パート1と後足部パート2の接合部は、靴の土踏まず部の領域の任意の位置とすることができる。
【0016】
以下、靴の各構成部材とその結合構造について詳細に説明する。
前記前足部パート1は、一般にアッパー部Uとソール部Sとが縫合や接着等により接合されるが、ビス止め等の機械的手段により接合してもよい。なお、前足部パート1は、アッパー部Uとソール部Sを後述する後足部パート2と同様に一体に形成してもよい。
上記のように前足部パート1と後足部パート2とは靴の土踏まず部の領域で接合されていることから、前足部パート1のソール部Sは靴の土踏まず部の領域を含んでいる。図2及び図3に示されるように、前足部パート1のソール部Sのうち土踏まず部の領域Aの底面には、板状連結部材3に形成された固定用穴17に嵌め込むための複数の突部8が形成され、この突部8の中央に雌ネジ孔9が形成されている。なお、本実施形態では、雌ネジ部材29をソール部Sに埋め込むことにより上記突部8と雌ネジ孔9が構成されている。また、本実施形態の突部8の形状は板状連結部材3側の固定用穴17にしっかりと噛み合うようにするため十字状に構成されているが、他の任意の形状(好ましくは、非円形状)でよい。
【0017】
また、前足部パート1のソール部Sのうち土踏まず部以外の領域B(土踏まず部よりも足先端側の領域)の底面には、その最先端部を除いてファスナー加工によるファスナー部10(マジックテープ)が設けられている。また、このソール部Sの領域Bには、領域A寄りの靴幅方向両側に前足部アウトソール4をビス止めするための雌ネジ孔11が形成され、さらに、最先端部において前足部アウトソール4をつま先固定用プレート13を介してビス止めするための雌ネジ孔12が形成されている。
【0018】
前記後足部パート2は、本実施形態ではアッパー部Uとソール部Sとが一体に形成されている。なお、後足部パート2は、アッパー部Uとソール部Sを別々に形成し、これらを接着、縫合、ビス止め等の方法で接合してもよい。
前記ソール部Sの底面は全体が凸曲面に構成されている。また、上記のように前足部パート1と後足部パート2とは靴の土踏まず部の領域で接合されていることから、後足部パート2のソール部Sも靴の土踏まず部の領域の一部を含んでいる。図4に示されるように、後足部パート2のソール部Sの底面には、板状連結部材3に形成された固定用穴18に嵌め込むための複数の突部14が形成され、この突部14の中央に雌ネジ孔15が形成されるとともに、この突部14以外のソール部Sの部分にも複数の雌ネジ孔16が形成されている。
【0019】
図6に示されるように、前記前足部パート1のソール部Sと前記後足部パート2のソール部Sは、互いに密着当接できる端部e,eを有している。本実施形態では、これら端部e,eは靴幅方向において曲線状に構成され、端部e,eどうしがズレを生じることなく噛み合って密着当接できるようにしている。なお、端部e,eは曲線状でなくても非直線状に密着当接できればよい。
前記連結手段6として、前記前足部パート1のアッパー部Uと前記後足部パート2のアッパー部Uは、以下のような構成を有している。すなわち、図5に示されるように、前足部パート1のアッパー部Uの靴幅方向両側の各端縁部には上下方向で間隔をおいて複数の雌ネジ部材30が埋め込まれ、一方、後足部パート2のアッパー部Uの靴幅方向両側の各端縁部には、前記各雌ネジ部材30に対応したビス挿通孔31が上下方向で間隔をおいて形成されるとともに、このビス挿通孔31が形成された部分の外面(アッパー部Uの外面)には、固定用ビスの頭部を嵌め込むための凹部32が形成されている。さらに、前足部パート1のアッパー部Uの靴幅方向両側の各端縁部と後足部パート2のアッパー部Uの靴幅方向両側の各縁端部には、互いに係脱可能に結合されるスナップ33,34が設けられている。なお、連結手段6の構成は本実施形態に限定されるものではなく、種々の形態を採ることができる。
【0020】
前記板状連結部材3は、前記前足部パート1のソール部Sの底面の土踏まず部の領域Aと前記後足部パート2のソール部Sの底面の略全体に各々密着当接し、両ソール部S,Sの底面に脱着可能に固定されることで両ソール部S,Sを連結するものである。この板状連結部材3のうち、前記ソール部Sの底面の土踏まず部の領域Aに固定される前足側部分には、前記突部8を嵌め込むための複数の固定用穴17が設けられている。この固定用穴17は突部8の形状に合せて十字状に形成されている。さらに、この固定用穴17が形成された部分の下面(板状連結部材3の下面)には、固定用ビスの頭部を嵌め込むための凹部20が形成されている。また、板状連結部材3の前記ソール部Sの底面の略全体に固定される後足側部分にも、前記突部14を嵌め込むための複数の固定用穴18が設けられ、これとは別に複数のビス挿通孔19も設けられている。
【0021】
この板状連結部材3は、前足部パート1と後足部パート2とを連結するだけではなく、靴のシャンク機能を有するととともに(すなわち、靴底のシャンク材として機能する)、靴のアーチ形状を保持する剛性部材としての機能を有することが好ましく、このため金属、硬質樹脂などで構成される。具体的には、チタン合金、アルミニウム合金、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの1種以上から構成されることが好ましい。
また、板状連結部材3は、前記前足部パート1のソール部Sの底面(領域A)と前記後足部パート2のソール部Sの底面に各々密着当接できるよう、各ソール部の底面形状に合わせて湾曲した形状に構成されている。そして、この板状連結部材3は、前足部パート1のソール部Sと後足部パートのソール部Sのシャンク相当位置に脱着可能に固定される。
【0022】
前記前足部アウトソール4は、前足部の実質的な靴底を構成するもので、その上面には、前記前足部パート1のソール部Sに設けられたファスナー部10に係合するファスナー部(マジックテープ)が設けられている(図示せず)。図2に示すように、前足部アウトソール4の後端寄りの靴幅方向両側位置には、ソール部Sの前記雌ネジ孔11に対応するビス挿通孔21が貫設され、さらに、このビス挿通孔21が形成された部分の下面(前足部アウトソール4の下面)には、固定用ビスの頭部を嵌め込むための凹部22が形成されている。
【0023】
また、前足部アウトソール4の最先端部には、つま先固定用プレート13を装着する三日月状の段部23が形成され、この段部23に前記ソール部Sの雌ネジ孔12に対応するビス挿通孔24が貫設されている。また、前記つま先固定用プレート13は、前足部アウトソール4の一部を構成するもので、前足部アウトソール4の最先端部は特に剥れを生じやすいことから、その最先端部をソール部Sに強固に接合するために設けられるものである。このつま先固定用プレート13には、前記ソール部Sの雌ネジ孔12に対応する複数のビス挿通孔25が貫設され、このビス挿通孔25が形成された部分の下面(つま先固定用プレート13の下面)には、固定用ビスの頭部を嵌め込むための凹部26が形成されている。
【0024】
前記後足部アウトソール5は、後足部の実質的な靴底を構成するもので、図4に示すように、板状連結部材3のー部を介在させた状態で、後足部パート2のソール部S全体を包み込むようにソール部Sに密着当接して固定されるものである。この後足部アウトソール5には、前記ソール部Sの雌ネジ孔15,16に対応するビス挿通孔27が貫設され、さらに、このビス挿通孔27が形成された部分の下面(後足部アウトソール5の下面)には、固定用ビスの頭部を嵌め込むための凹部28が形成されている。
【0025】
なお、本実施形態の前足部アウトソール4は、前足部パート1のソール部Sの底面に直接脱着可能に固定されるが、この前足部アウトソール4は、ソール部Sの底面に板状連結部材3の一部を介在させた状態で脱着可能に固定されてもよい。一方、本実施形態の後足部アウトソール5は、後足部パート2のソール部Sの底面に板状連結部材3の一部を介在させた状態で脱着可能に固定されるが、この後足部アウトソール5は、ソール部Sの底面に直接脱着可能に固定されてもよい。
【0026】
次に、上述したような各構成部材から靴を製造(組み立て)する手順を説明する。
まず、アッパー部Uとソール部Sとを備えた前足部パート1と、アッパー部Uとソール部Sとを備えた後足部パート2がそれぞれ形成される。
前記前足部パート1のソール部Sの端部eと前記後足部パート2のソール部Sの端部eとを密着当接させ、この状態で板状連結部材3の前足側と後足側の各部分をソール部Sとソール部Sに対して装着する。すなわち、板状連結部材3の前足側部分の固定用穴17にソール部Sの突部8を嵌め込み、板状連結部材3の後足側部分の固定用穴18にソール部Sの突部14を嵌め込む。さらに、このようにして板状連結部材3の後足側部分がセットされた後足部パート2のソール部Sには、板状連結部材3の上から後足部アウトソール5が装着される。
【0027】
そして、固定用穴17に嵌め込まれたソール部Sの突部8の雌ネジ孔9に大型の固定用ビス40を螺挿して締め付け、板状連結部材3の前足側部分をソール部Sに固定する。この状態で固定用ビス40の頭部は凹部20内に嵌め込まれる。
一方、板状連結部材3の固定用穴18に嵌め込まれたソール部Sの突部14の雌ネジ孔15に、後足部アウトソール5のビス挿通孔27を通じて固定用ビス41を螺挿して締め付け、また、ソール部Sの雌ネジ孔16にも板状連結部材3のビス挿通孔19及び後足部アウトソール5のビス挿通孔27を通じて固定用ビス41を螺挿して締め付け、板状連結部材3の後足側部分と後足部アウトソール5を一体としてソール部Sに固定する。この状態で固定用ビス41の頭部は後足部アウトソール5の凹部28内に嵌め込まれる。
【0028】
さらに、前足部パート1のソール部Sのファスナー部10に、前足部アウトソール4をそのファスナー部を介して装着するとともに、ソール部Sの雌ネジ孔11に前足部アウトソール4のビス挿通孔21を通じて固定用ビス42を螺挿して締め付け、さらに、前足部アウトソール4の段部23につま先固定用プレート13を装着した後、ソール部Sの最先端部の雌ネジ孔12に、前足部アウトソール4のビス挿通孔24とつま先固定用プレート13のビス挿通孔25を通じて固定用ビス43を螺挿して締め付け、前足部アウトソール4をつま先固定用プレート13とともにソール部Sに固定する。この状態で固定用ビス42,43の頭部は、前足部アウトソール4の凹部22内とつま先固定用プレート13の凹部26内にそれぞれ嵌め込まれる。
【0029】
さらに、連結手段6で前足部パート1のアッパー部Uと後足部パート2のアッパー部Uを連結する。すなわち、前足部パート1のアッパー部Uの靴幅方向両側の各端縁部と後足部パート2のアッパー部Uの靴幅方向両側の各端縁部を重ね合わせ、後足部パート2のアッパー部Uのビス挿通孔31を通じて前足部パート1のアッパー部Uの雌ネジ部材30の雌ネジ孔に固定用ビス44を螺挿して締め付ける。この状態で固定用ビス44の頭部はアッパーUの凹部32内に嵌め込まれる。さらに、両アッパー部U,Uの靴幅方向両側で、各々スナップ33,34を嵌め合わせる。
以上により靴本体の組み立てが完了し、この靴本体にインナーソール7を内設することにより靴が完成する。
【0030】
以上のようにして構成された靴は、前足部パート1と後足部パート2が板状連結部材3によって強固に連結され、また、板状連結部材3がシャンク材として、さらには靴のアーチ形状を保つ剛性部材として機能する。この板状連結部材3は薄い板状の部材であるため、(1)靴のデザインがほとんど制約を受けることがなく、デザインの自由度が高い、(2)厚みが小さいため靴自体に弾力を持たせることが容易である、(3)靴を軽量化できる、(4)構造が単純であり、破損等のおそれもないため、製作や修理の手間やコストが少なくて済む、などの多くの利点がある。また、板状連結部材3をはじめとする主要構成部材どうしをビス止めを主体に接合固定するので、構成部材どうしを強固に接合することができるとともに、必要に応じて自在に分解することもできる。また、実質的な靴底である前足部アウトソール4(及びつま先固定用プレート13)と後足部アウトソール5は、靴の使用によって摩耗した場合、固定用ビスを取り外すことにより容易に交換することができる。
【0031】
なお、本発明の靴の各構成部材の材質は任意であるが、板状連結部材3の好ましい材質についてはさきに述べたとおりである。また、一般に、アッパーU,Uには樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂。以下同様)、ゴム(天然ゴム、合成ゴム。以下同様)、織布、皮革(本革、合成皮革。以下同様)等の1種以上が、ソール部S,Sには樹脂、ゴム、皮革等の1種以上が、前足部アウトソール4及び後足部アウトソール5には樹脂、ゴム、皮革等の1種以上が、それぞれ用いられる。
【0032】
以上が本発明の靴の製造工程の一実施形態であるが、各個人の足の形状に適合した既成靴を製造する場合、ある任意のサイズの靴を製造するに際し、ウィズの異なる複数の前足部パート1又は後足部パート2若しくはそれらの両方を形成(製造)する。そして、これらウィズの異なる複数のパート(前足部パート1又は後足部パート2若しくはそれらの両方)から任意のパートを選択して前足部パート1と後足部パート2を上記のように結合する(当然、板状連結部材3等の他の構成部材も結合する)ものであり、これにより1つのサイズでウィズが異なる複数種類の靴を製造することができる。例えば、ウィズの異なる前足部パート1を5種類、同じくウィズの異なる後足部パート2を3種類形成しておけば、1つのサイズでウィズが異なる計15種類の靴を製造することができる。
【0033】
また、左右の足のサイズや足幅が異なるようなケースに対応する場合、サイズ又はウィズ若しくはそれらの両方が異なる複数の前足部パート1又は後足部パート2若しくはそれらの両方を形成(製造)する。そして、これらサイズ及び/又はウィズの異なる複数のパート(前足部パート1又は後足部パート2若しくはそれらの両方)から任意のパートを選択して、前足部パート1と後足部パート2を上記のように結合する(当然、板状連結部材3等の他の構成部材も結合する)ことにより、左右の靴のサイズ及び/又はウィズが異なる複数種類の靴を製造することができる。
【0034】
このように本発明によれば、ウィズ等が異なる何種類かの前足部パート1及び/又は後足部パート2を形成し、これらを適宜組み合わせて結合することにより、1つのサイズでウィズが異なる複数種類の靴を容易に製造することができ、また左右のサイズやウィズが異なるような靴も容易に製造することができる。
また、前足部パート1と後足部パート2以外の主要構成部材である板状連結部材3、前足部アウトソール4、後足部アウトソール5、インナーソール7などは、サイズやウィズが異なる前足部パート1や後足部パート2に対して共用できる場合には共通のものを使用し、共用できない場合には、必要に応じてサイズ又は/及びウィズが異なる2種類以上のものを準備すればよい。
また、本発明の靴は、いつでも前足部パート1と後足部パート2とに分離することが可能であるため、いずれかのパートが損傷又は損耗したような場合でも当該パートを容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の靴の一実施形態を示すもので、結合前の構成部材を示す全体斜視図
【図2】図1の実施形態において、結合前の前足部パート及び前足部アウトソール等を示す斜視図
【図3】図1の実施形態において、結合前の前足部パート及び板状連結部材等を示す斜視図
【図4】図1の実施形態において、結合前の後足部パート、板状連結部材及び後足部アウトソール等を示す斜視図
【図5】図1の実施形態において、前足部パート及び後足部パートと両者の結合構造を示す斜視図
【図6】図1の実施形態において、前足部パートと後足部パートの接合部の形状を示す底面図
【符号の説明】
【0036】
1 前足部パート
2 後足部パート
3 板状連結部材
4 前足部アウトソール
5 後足部アウトソール
6 連結手段
7 インナーソール
8,14 突部
9,11,12,15,16 雌ネジ孔
10 ファスナー部
13 つま先固定用プレート
17,18 固定用穴
19,21,24,25,27,31 ビス挿通孔
20,22,26,28,32 凹部
23 段部
29,30 雌ネジ部材
33,34 スナップ
40,41,42,43,44 固定用ビス
,U アッパー部
,S ソール部
,e 端部
A,B 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパー部Uとソール部Sとを備えた前足部パート1と、
アッパー部Uとソール部Sとを備えた後足部パート2と、
前記前足部パート1のソール部Sの底面の少なくとも一部と前記後足部パート2のソール部Sの底面の少なくとも一部に各々密着当接し、両ソール部S,Sの底面に脱着可能に固定されることで両ソール部S,Sを連結する板状連結部材3と、
前記前足部パート1のソール部Sの底面の少なくとも一部に、直接又は前記板状連結部材3の一部を介在させた状態で脱着可能に固定される前足部アウトソール4と、
前記後足部パート2のソール部Sの底面の少なくとも一部に、直接又は前記板状連結部材3の一部を介在させた状態で脱着可能に固定される後足部アウトソール5とを備え、
前記前足部パート1のソール部Sと前記後足部パート2のソール部Sは、互いに密着当接できる端部e,eを有し、
前記前足部パート1のアッパー部Uの端部と前記後足部パート2のアッパー部Uの端部には、両端部を脱着可能に連結する連結手段6を設けたことを特徴とする靴。
【請求項2】
さらに、前足部パート1と後足部パート2とが連結された状態でその内側に配置されるインナーソール7を備えたことを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項3】
互いに密着当接する、前足部パート1のソール部Sの端部eと後足部パート2のソール部Sの端部eは、靴幅方向において非直線状に構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の靴。
【請求項4】
板状連結部材3は、前足部パート1のソール部Sと後足部パート2のソール部Sに各々ビス止めで脱着可能に固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の靴。
【請求項5】
前足部パート1のソール部Sは、靴の土踏まず部の領域の少なくとも一部を含んでおり、板状連結部材3の前足側部分は、前記土踏まず部の領域のソール部Sの底面に密着当接した状態でビス止めで脱着可能に固定されるとともに、該土踏まず部の領域以外のソール部Sの底面に前足部アウトソール4が固定され、
板状連結部材3の後足側部分は、後足部パート2のソール部Sの底面の主要部に密着当接し、後足部アウトソール5がその外側に重合した状態に装着され、該重合した後足部アウトソール5と前記板状連結部材3の後足側部分は、一体として後足部パート2のソール部Sの底面にビス止めで脱着可能に固定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の靴。
【請求項6】
板状連結部材3がシャンク機能を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の靴。
【請求項7】
前足部パート1及び/又は後足部パート2が、ある任意のサイズの靴用に準備されたウィズの異なる複数の前足部パート1及び/又は後足部パート2の中から選択されたパートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の靴。
【請求項8】
前足部パート1及び/又は後足部パート2が、準備されたサイズ及び/又はウィズの異なる複数の前足部パート1及び/又は後足部パート2の中から選択されたパートであり、且つ左右の靴にサイズ及び/又はウィズの異なる前足部パート1及び/又は後足部パート2を用いたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の靴。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の靴を製造する方法であって、ある任意のサイズの靴を製造するに際し、ウィズの異なる複数の前足部パート1及び/又は後足部パート2を形成し、これらウィズの異なる複数のパートから任意のパートを選択して前足部パート1と後足部パート2を結合することにより、1つのサイズでウィズが異なる複数種類の靴を製造することを特徴とする靴の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の靴を製造する方法であって、サイズ及び/又はウィズの異なる複数の前足部パート1及び/又は後足部パート2を形成し、これらサイズ及び/又はウィズの異なる複数のパートから任意のパートを選択して前足部パート1と後足部パート2を結合することにより、左右の靴のサイズ及び/又はウィズが異なる複数種類の靴を製造することを特徴とする靴の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−174862(P2006−174862A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368151(P2004−368151)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(500271443)
【Fターム(参考)】