靴底の緩衝装置
【課題】靴底の緩衝装置の構造を工夫することで緩衝性を向上させる。
【解決手段】エラストマーからなる下層2および上層3を備えた靴底の緩衝装置に関する。下層2および上層3は各々、下面20,30および上面21,31を有する。下層2の上面21および上層3の下面30を、断面形状が概ね波形に形成する。波形は、各々、複数の頂部22,32、底部23,33、ならびに、頂部22,32と底部23,33とを連ねる斜面部24,34を有する。波形形状の上面21と下面30とは互いに歯合しており、互いに歯合する2つの面21,30が、これらの面21,30の斜面部24,34同士において互いに接触している。互いに歯合する2つの面24,34は、頂部22,32および底部23,33の少なくともいずれか一方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙4を形成している。
【解決手段】エラストマーからなる下層2および上層3を備えた靴底の緩衝装置に関する。下層2および上層3は各々、下面20,30および上面21,31を有する。下層2の上面21および上層3の下面30を、断面形状が概ね波形に形成する。波形は、各々、複数の頂部22,32、底部23,33、ならびに、頂部22,32と底部23,33とを連ねる斜面部24,34を有する。波形形状の上面21と下面30とは互いに歯合しており、互いに歯合する2つの面21,30が、これらの面21,30の斜面部24,34同士において互いに接触している。互いに歯合する2つの面24,34は、頂部22,32および底部23,33の少なくともいずれか一方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙4を形成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴底の特に緩衝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴底には緩衝性能が要求される。
従来の靴底は、一般に歩行時の足からの衝撃をミッドソールなどのような緩衝装置の圧縮変形によりエネルギーを損失させて吸収している。しかし、圧縮変形だけによるエネルギーの吸収(損失)では、その吸収量が一般に小さいので、十分な緩衝性が得られていない。
一方、エネルギーの損失を大きくさせるために、ミッドソールを厚くすると、靴底の軽量性が損なわれる。
【0003】
下記の特許文献1には、図15(a)に示す緩衝装置が開示されている。
この先行技術において、アウトソール100とアッパー101との間にはミッドソール102が設けてある。前記ミッドソール102は、軟質弾性部材(硬度30°〜50°)103と硬質弾性部材(硬度60°〜80°)104とが接合面105で接合されてなる。前記接合面105は波形に形成されている。
下記の特許文献2には、図15(b)に示す緩衝装置が開示されている。
この先行技術において、ミッドソール102には、波形の断面を持つ緩衝部材106が装着してある。
【特許文献1】U.S.P.4,798,010 号公報
【特許文献2】実開平6-17504 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの先行技術においては、上方からの荷重により、波形の部分に圧縮変形が生じる。しかし、かかる圧縮変形だけでは、十分な緩衝性が得られない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、靴底の緩衝装置の構造を新たに工夫することで緩衝性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明の一つの態様は、まず、緩衝装置がエラストマーからなる下層および上層を備えている。
前記下層および上層は各々、下面および上面を有している。
前記下層の上面および前記上層の下面は、断面形状が概ね波形に形成されている。
前記波形は、各々、複数の頂部、底部、ならびに、前記頂部と底部とを連ねた斜面部を有している。
前記波形形状の前記上面と下面とは互いに歯合している。
前記互いに歯合する2つの面が、これらの面の前記斜面部同士において互いに接触している。
前記互いに歯合する2つの面が前記頂部および底部の少なくとも何れか一方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙が形成されている。
【0007】
一方、本発明の他の態様は、まず、緩衝装置が、下面および上面を有する下層と、前記とは別の下面および上面を有する上層と、前記2つの層の間に介挿された中間層とを備えている。
前記下層の上面および前記上層の下面は、断面形状が概ね波形に形成されている。
前記波形は、各々、複数の頂部、底部、ならびに、前記頂部と底部とを連ねた斜面部を有している。
前記波形形状の前記上面と下面とは前記中間層を間に介して互いに歯合している。
前記互いに歯合する2つの面が前記中間層を介して前記斜面部同士において互いに接触している。
前記互いに歯合する2つの面が前記頂部および底部の少なくとも何れか一方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、波形形状の断面を有する上層と下層の間には、波形の前記頂部および/または底部において、空隙が形成されているので、上方からの荷重が加わると、互いに接触している斜面部において、当該斜面部の組織が斜面に沿ってズレる剪断変形を呈する。したがって、上方からの荷重により、圧縮変形の他に剪断変形も呈するので、緩衝性が著しく向上する。
【0009】
本発明においては、互いに歯合する山と谷を前記上層および下層に格子状に配列するのが好ましい。歩行ないし走行時において、足は外側から内側へ、かつ、後方から前方に向って斜め上方から下方に向かって着地する。このように、着地時の衝撃には方向性があり、着地後の体重移動によって、その方向が変化していくので、波形を格子状に配列することにより、着地時に生じる衝撃を緩和することができる。
【0010】
また、2つの波形の面が頂部および底部の双方において互いに離間していると、上層および下層の組織が斜め下方に移動するので、剪断変形を呈し易くなり、そのため、緩衝性が更に向上する。
【実施例1】
【0011】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施例および図面は図示および説明のためのものである。本発明の範囲は請求の範囲に基づいて定められる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0012】
原理的な第1実施例
本発明の基本的な構造および原理を図1〜図3の第1実施例にしたがって説明する。
【0013】
図1(a)において、緩衝装置1は、エラストマーからなる下層2および上層3を備えている。
前記下層2および上層3は各々、下面20,30および上面21,31を有している。前記下層2の上面21および前記上層3の下面30は、断面形状が概ね波形に形成されている。前記波形は、各々、複数の頂部22,32、底部23,33、ならびに、前記頂部と底部とを連ねる斜面部24,34を有している。
【0014】
図1(b)に示すように、前記波形形状の前記上面21と下面30とは互いに歯合している。前記互いに歯合する2つの面21,30が、これらの面の前記斜面部24,34同士において互いに接触している。前記互いに歯合する2つの面21,30は前記頂部22,32および底部23,33の双方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙4が形成されている
【0015】
図1(b)において、今、上方からの荷重が加わると、下層2および上層3を構成するエラストマーは、上下に圧縮されると共に、図2(a)の二点鎖線で示す仮想の直方体5は斜め下方へ移動しよううとすると共に、該直方体5の面50には斜め上方への摩擦力が働く。すなわち、該直方体5には斜め下方への移動力Fと斜め上方への摩擦力Fとが作用して、図2(b)の二点鎖線で示すように、剪断変形を呈する。周知のように、該剪断変形による吸収エネルギーUgは、図2(c)に示す圧縮変形による吸収エネルギーUeに比べはるかに大きい。
【0016】
この点について詳しく説明する。
各エネルギーUg,Ueは下記の式(1),(2) で表される。
Ug=Gγ2 /2 …(1)
Ue=Eε2 /2 …(2)
G:剪断弾性係数
E:縦弾性係数(ヤング率)
γ:剪断ひずみ
ε:縦ひずみ
一方、F=E・ε=Gγであるから、前記式(1),(2) は下記のように表される。
Ug=F・γ/2 …(11)
Ue=F・ε/2 …(12)
前記(11),(12) 式において、前記剪断ひずみγは縦ひずみεに比べはるかに大きいので、剪断変形による吸収エネルギーUgは圧縮変形による吸収エネルギーUeよりもはるかに大きくなる。
【0017】
図3(a),(b)に示すように、前記空隙4は前記頂部22,32または前記底部23,33の少なくともいずれか一方の部分に設ければよい。但し、図1のように、前記頂部22,32および底部23,33の双方に設ける方が剪断変形し易くなるので好ましい。
【0018】
前記上層3と下層2とは互いにSRIS-C硬度(日本ゴム協会標準規格のC型硬度計により測定した値)が2°以上異なる素材(ヤング率の異なる素材)で形成するのが好ましい。たとえば、下層2をSRIS-C硬度で40°以上80°以下、より好ましくは50°〜70°程度に設定し、上層3をSRIS-C硬度で35°以下、より好ましくは10°〜30°程度に設定する。このような硬度を有する素材としては、下層2をEVA(エチレン- 酢酸ビニル共重合体) 、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエンなどの樹脂やゴムの発泡体で形成し、上層3を低硬度エラストマーで形成する。なお、低硬度エラストマーとしては、シリコーンゲルが一般的であるが、ポリエチレンおよびポリスチレンを主成分としたエラストマーで構成してもよい(たとえば、特開平10-215,909号) 。
【0019】
なお、剪断変形によるエネルギーの吸収を大きくするには、斜面部24,34の角度θを30°〜70°程度に設定するのが好ましく、45°前後に設定するのが最も好ましいと推測される。
【0020】
原理的な第2実施例
つぎに、第2実施例について説明する。
図4において、緩衝装置1は、エラストマーからなる下層2,上層3および中間層6を備えている。
下層2は下面20および上面21を有する。上層3は前記とは別の下面30および上面31を有する。中間層6は前記2つの層2,3の間に介挿されている。
前記下層2の上面21および前記上層3の下面30は、断面形状が概ね波形に形成されている。前記波形は、各々、複数の頂部22,32、底部23,33、ならびに、前記頂部と底部とを連ねる斜面部24,34を有している。
前記波形形状の前記上面21と下面30とは前記中間層6を間に介して互いに歯合している。
【0021】
前記互いに歯合する2つの面21,30は、それぞれ、前記斜面部24,34において中間層6に接触している。前記互いに歯合する2つの面21、30が前記頂部22,32および底部23,33の双方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙4が形成されている。
【0022】
なお、空隙4は前記頂部22,32または前記底部23,33の少なくともいずれか一方の部分に設ければよい。
【0023】
本発明においては、前記中間層6の硬度を前記上層3の硬度よりもSRIS-C硬度で2°以上小さな値に設定し、かつ、前記中間層6の硬度を前記下層2の硬度よりもSRIS-C硬度で2°以上小さな値に設定するのが好ましい。たとえば下層2および上層3をSRIS-C硬度で40°以上80°以下、より好ましくは50°〜70°程度に設定し、中間層6をSRIS-C硬度で35°以下、より好ましくは10°〜30°程度に設定する。このような硬度を有する素材(材料)としては、下層2および上層3をEVA(酢酸ビニル共重合体) などの樹脂やゴムの発泡体で形成し、中間層6をシリコーンゲルで形成する。
【0024】
具体的な実施例
つぎに、本発明の具体的な実施例を図5〜図7にしたがって説明する。
図5において、ミッドソール本体2Aは、たとえばEVAのような発泡樹脂からなり、後足部25に装着凹所8を有している。前記装着凹所8には、軟質緩衝体3Aおよびキャップ7が装着される。図6に示すように、前記ミッドソール本体2Aの後足部25は、本緩衝装置1の下層2を形成している。一方、前記軟質緩衝体3Aは、たとえばシリコーンゲルからなり、緩衝装置1の上層3を形成している。
【0025】
図5に示すように、前記下層2の上面21および上層3の下面30は、2つの交差する(たとえば直交する)方向の断面において、波形に形成されている。すなわち、前記下層2の上面21は、格子状に配列された多数の山22aおよび谷23aを有している。また、前記上層3の下面30は、格子状に配列された多数の谷32aおよび山33aを有している。図7に示すように、前記各山22a,33aは谷32a,23a,に嵌まり込む。
【0026】
図6に示すように、前記下層2および上層3の波形形状において、互いに嵌合する部分のピッチP1は等しい。しかし、下層2または上層3における波形のピッチP1,P2が均一である必要はない。なお、ピッチP1,P2は、一般に3mm以上に設定され、好ましくは6mm以上30mm以下に設定される。また、波形形状の振幅A1,A2も一定である必要はない。振幅A1,A2を大きくすれば、緩衝性が高まるし、一方、振幅A1,A2を小さくすれば安定性が高まる。
【0027】
前記キャップ7の下面70も、断面形状が概ね波形に形成されている。このキャップ7の凹凸は、下の軟質緩衝体3Aの波形形状の凹凸に対応している。すなわち、キャップ7の下面70には、多数の凸部73が前記軟質緩衝体3Aと同様に格子状に配列されて、図7に示すように、凸部73が上層3の底部33の位置に対応して配列されている。これにより、上層3の凸部をミッドソール本体2Aとの間で圧縮し易くしている。
キャップ7は、ミッドソール本体2Aと同じ材質で、かつ、ミッドソール本体2Aに略等しい硬度のEVAで形成されており、前記装着凹所8を閉封する。
【0028】
なお、図5に示すように、前記緩衝装置1の平面的な形状や波形を形成する方向は、足が着地してから離地する矢印B方向に設定するのが好ましい。なお、ミッドソール本体2Aの下方には、踏み面を有するアウトソール(図示せず)が設けられている。
【0029】
他の具体的な実施例
図8(a)において、本実施例では、EVAからなるキャップ3Bが上層3を構成する。厚肉のフィルム6Aは中間層6を構成する。前記フィルム6Aはシリコーンゲルからなり、ミッドソール本体2Aとキャップ3Bとの間に挟まれる。下層2を形成するミッドソール本体2Aには、波形の底部23に小さな窪み23aが形成してある。図8(b)のように、キャップ3Bは装着凹所8を閉塞する。
【0030】
なお、その他の構成は原理的な第2実施例および具体的な図5〜図7の実施例と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0031】
前記図8(a)および図8(b)に示す実施例においては、図9に示すように、フィルム6Aを成型してもよい。図9のフィルム6Aについて詳しく説明すると、フィルム6Aは、下層2および上層3の波形に合致した波形形状に成型されていると共に、波の頂部に相当する円形の部分62が切欠されている。これにより、図4のように、波形の頂部22,32および底部23,33の双方に空隙4が形成される。
【0032】
更に他の具体的な実施例
図10において、本実施例では、上層3が上ミッドソール本体で構成され、一方、下層2が前後の下ミッドソール本体2F,2Bで構成されている。中間層6は片状のシリコーンゲルからなる。
図11(a)に示すように、前記後の下ミッドソール本体2Bには多数の山22aおよび谷23aが格子状に配列されている。図10に示すように、前記前の下ミッドソール本体2Fにも同様に多数の山22aおよび谷23aが格子状に配列されている。前記上ミッドソール本体3には、前記山22aおよび谷23aに嵌り込む谷32aおよび山33aが設けてある。
【0033】
図11(a)および図11(b)に示すように、前記中間層6は、ミッドソールの周縁にのみ設けられている。また、波の振幅は、図10の足の外側10の方が図11(b)の足の内側11よりも大きく設定されている。このように設定した理由は、足の外側では緩衝性が重要であり、一方、足の内側では安定性が必要なためである。
【0034】
つぎに、本発明に関するsimulation(コンピュータによる計算)の結果を示すことで、本発明の効果を明瞭にする。
まず、図12(a)〜(c)に示すモデルを想定した。更に、試験例を示すタイプ1については振幅比As/Amを図13の表1のように3種類設定した。なお、ピッチPは12mmで一定とした。
これらのモデルにおける波形は正弦曲線を基調としており、タイプ1についてはEVA側の波形の頂部を円弧状に変化させた。また、各波形の配列は図1(a)に示すように、直線状に互いに平行に設定した。なお、コンピュータによる計算を可能にするために、波形については直線近似を行った。
【0035】
つぎに、これらのモデルに、錘を上方から衝突させた場合に生じる衝撃緩衝性をsimulationにより算出した。その結果を前記表1に示す。表中の緩衝性は、錘とモデルの衝突時において、足に相当する前記錘に発生した衝撃を周波数毎に分解し、人体が不快と感じる低周波成分の減衰を定量化したものである。表中の値が大きい程緩衝性に優れていることが、官能検査との対比によって確認されている。
【0036】
表1から分かるように、本発明の試験例1,2,3は、比較例1よりも緩衝性に優れている。
一方、比較例2は、試験例1,3よりも緩衝性に優れているが、山の圧縮変形が大きくなりすぎるので、繰り返し使用している間に緩衝性が著しく低下する。
【0037】
なお、この表1から分かるように、振幅比As/Amを適度な値に設定するのが好ましい。
しかし、図1(b)のように、上下に空隙4を設けた場合は、振幅比As/Amは1.0 程度に設定する方が緩衝性が高くなると推定される。したがって、本発明は振幅比As/Amを限定するものではない。
【0038】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、図14に示すように、同心円状に波形の頂部22,32(または底部)を配列してもよい。
また、下層をシリコーンゲル(低硬度)で形成して上層を発泡樹脂(高硬度)にしてもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、靴底の特に緩衝装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(a)は本発明の原理的な第1実施例を示す靴底の緩衝装置の分解斜視図、図1(b)は同縦断面図である。
【図2】図2(a)は本発明の原理を説明するための拡大した模式図、図2(b)は剪断変形の様子を示す拡大した模式図、図2(c)は圧縮変形の様子を示す拡大した模式図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、それぞれ、同原理的な実施例の変形例を示す縦断面図である。
【図4】図4は本発明の原理的な第2実施例を示す靴底の緩衝装置の縦断面図である。
【図5】図5は具体的な実施例を示すミッドソールの分解斜視図で、上層を一部破断して示している。
【図6】図6は同分解縦断面図である。
【図7】図7は同縦断面図である。
【図8】図8(a)は他の具体的な実施例を示すミッドソールの分解縦断面図、図8(b)は同縦断面図である。
【図9】図9は前記他の具体的な実施例の変形例を示すミッドソールの分解斜視図で、中間層を一部破断して示している。
【図10】図10は更に他の具体的な実施例を示す斜視図である。
【図11】図11(a)は同じく後足部の分解斜視図、図11(b)は後足部を内側から見た斜視図である。
【図12】図12(a)〜図12(c)はシミュレーションのモデルを示す模式図である。
【図13】図13は同シミュレーションの結果を示す図表である。
【図14】図14は波の配列の変形例を示す一部断面した斜視図である。
【図15】図15(a)はU.S.P.4,798,010 号に開示された靴の側面図、図15(b)は実開平6-17504 号に開示された靴底の緩衝装置の一部断面した側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1:緩衝装置
2:下層
3:上層
4:空隙
20,30:下面
21,31:上面
22,32:頂部
23,33:底部
24,34:斜面部
【技術分野】
【0001】
本発明は靴底の特に緩衝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴底には緩衝性能が要求される。
従来の靴底は、一般に歩行時の足からの衝撃をミッドソールなどのような緩衝装置の圧縮変形によりエネルギーを損失させて吸収している。しかし、圧縮変形だけによるエネルギーの吸収(損失)では、その吸収量が一般に小さいので、十分な緩衝性が得られていない。
一方、エネルギーの損失を大きくさせるために、ミッドソールを厚くすると、靴底の軽量性が損なわれる。
【0003】
下記の特許文献1には、図15(a)に示す緩衝装置が開示されている。
この先行技術において、アウトソール100とアッパー101との間にはミッドソール102が設けてある。前記ミッドソール102は、軟質弾性部材(硬度30°〜50°)103と硬質弾性部材(硬度60°〜80°)104とが接合面105で接合されてなる。前記接合面105は波形に形成されている。
下記の特許文献2には、図15(b)に示す緩衝装置が開示されている。
この先行技術において、ミッドソール102には、波形の断面を持つ緩衝部材106が装着してある。
【特許文献1】U.S.P.4,798,010 号公報
【特許文献2】実開平6-17504 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの先行技術においては、上方からの荷重により、波形の部分に圧縮変形が生じる。しかし、かかる圧縮変形だけでは、十分な緩衝性が得られない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、靴底の緩衝装置の構造を新たに工夫することで緩衝性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明の一つの態様は、まず、緩衝装置がエラストマーからなる下層および上層を備えている。
前記下層および上層は各々、下面および上面を有している。
前記下層の上面および前記上層の下面は、断面形状が概ね波形に形成されている。
前記波形は、各々、複数の頂部、底部、ならびに、前記頂部と底部とを連ねた斜面部を有している。
前記波形形状の前記上面と下面とは互いに歯合している。
前記互いに歯合する2つの面が、これらの面の前記斜面部同士において互いに接触している。
前記互いに歯合する2つの面が前記頂部および底部の少なくとも何れか一方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙が形成されている。
【0007】
一方、本発明の他の態様は、まず、緩衝装置が、下面および上面を有する下層と、前記とは別の下面および上面を有する上層と、前記2つの層の間に介挿された中間層とを備えている。
前記下層の上面および前記上層の下面は、断面形状が概ね波形に形成されている。
前記波形は、各々、複数の頂部、底部、ならびに、前記頂部と底部とを連ねた斜面部を有している。
前記波形形状の前記上面と下面とは前記中間層を間に介して互いに歯合している。
前記互いに歯合する2つの面が前記中間層を介して前記斜面部同士において互いに接触している。
前記互いに歯合する2つの面が前記頂部および底部の少なくとも何れか一方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、波形形状の断面を有する上層と下層の間には、波形の前記頂部および/または底部において、空隙が形成されているので、上方からの荷重が加わると、互いに接触している斜面部において、当該斜面部の組織が斜面に沿ってズレる剪断変形を呈する。したがって、上方からの荷重により、圧縮変形の他に剪断変形も呈するので、緩衝性が著しく向上する。
【0009】
本発明においては、互いに歯合する山と谷を前記上層および下層に格子状に配列するのが好ましい。歩行ないし走行時において、足は外側から内側へ、かつ、後方から前方に向って斜め上方から下方に向かって着地する。このように、着地時の衝撃には方向性があり、着地後の体重移動によって、その方向が変化していくので、波形を格子状に配列することにより、着地時に生じる衝撃を緩和することができる。
【0010】
また、2つの波形の面が頂部および底部の双方において互いに離間していると、上層および下層の組織が斜め下方に移動するので、剪断変形を呈し易くなり、そのため、緩衝性が更に向上する。
【実施例1】
【0011】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施例および図面は図示および説明のためのものである。本発明の範囲は請求の範囲に基づいて定められる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0012】
原理的な第1実施例
本発明の基本的な構造および原理を図1〜図3の第1実施例にしたがって説明する。
【0013】
図1(a)において、緩衝装置1は、エラストマーからなる下層2および上層3を備えている。
前記下層2および上層3は各々、下面20,30および上面21,31を有している。前記下層2の上面21および前記上層3の下面30は、断面形状が概ね波形に形成されている。前記波形は、各々、複数の頂部22,32、底部23,33、ならびに、前記頂部と底部とを連ねる斜面部24,34を有している。
【0014】
図1(b)に示すように、前記波形形状の前記上面21と下面30とは互いに歯合している。前記互いに歯合する2つの面21,30が、これらの面の前記斜面部24,34同士において互いに接触している。前記互いに歯合する2つの面21,30は前記頂部22,32および底部23,33の双方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙4が形成されている
【0015】
図1(b)において、今、上方からの荷重が加わると、下層2および上層3を構成するエラストマーは、上下に圧縮されると共に、図2(a)の二点鎖線で示す仮想の直方体5は斜め下方へ移動しよううとすると共に、該直方体5の面50には斜め上方への摩擦力が働く。すなわち、該直方体5には斜め下方への移動力Fと斜め上方への摩擦力Fとが作用して、図2(b)の二点鎖線で示すように、剪断変形を呈する。周知のように、該剪断変形による吸収エネルギーUgは、図2(c)に示す圧縮変形による吸収エネルギーUeに比べはるかに大きい。
【0016】
この点について詳しく説明する。
各エネルギーUg,Ueは下記の式(1),(2) で表される。
Ug=Gγ2 /2 …(1)
Ue=Eε2 /2 …(2)
G:剪断弾性係数
E:縦弾性係数(ヤング率)
γ:剪断ひずみ
ε:縦ひずみ
一方、F=E・ε=Gγであるから、前記式(1),(2) は下記のように表される。
Ug=F・γ/2 …(11)
Ue=F・ε/2 …(12)
前記(11),(12) 式において、前記剪断ひずみγは縦ひずみεに比べはるかに大きいので、剪断変形による吸収エネルギーUgは圧縮変形による吸収エネルギーUeよりもはるかに大きくなる。
【0017】
図3(a),(b)に示すように、前記空隙4は前記頂部22,32または前記底部23,33の少なくともいずれか一方の部分に設ければよい。但し、図1のように、前記頂部22,32および底部23,33の双方に設ける方が剪断変形し易くなるので好ましい。
【0018】
前記上層3と下層2とは互いにSRIS-C硬度(日本ゴム協会標準規格のC型硬度計により測定した値)が2°以上異なる素材(ヤング率の異なる素材)で形成するのが好ましい。たとえば、下層2をSRIS-C硬度で40°以上80°以下、より好ましくは50°〜70°程度に設定し、上層3をSRIS-C硬度で35°以下、より好ましくは10°〜30°程度に設定する。このような硬度を有する素材としては、下層2をEVA(エチレン- 酢酸ビニル共重合体) 、シンジオタクチック1,2-ポリブタジエンなどの樹脂やゴムの発泡体で形成し、上層3を低硬度エラストマーで形成する。なお、低硬度エラストマーとしては、シリコーンゲルが一般的であるが、ポリエチレンおよびポリスチレンを主成分としたエラストマーで構成してもよい(たとえば、特開平10-215,909号) 。
【0019】
なお、剪断変形によるエネルギーの吸収を大きくするには、斜面部24,34の角度θを30°〜70°程度に設定するのが好ましく、45°前後に設定するのが最も好ましいと推測される。
【0020】
原理的な第2実施例
つぎに、第2実施例について説明する。
図4において、緩衝装置1は、エラストマーからなる下層2,上層3および中間層6を備えている。
下層2は下面20および上面21を有する。上層3は前記とは別の下面30および上面31を有する。中間層6は前記2つの層2,3の間に介挿されている。
前記下層2の上面21および前記上層3の下面30は、断面形状が概ね波形に形成されている。前記波形は、各々、複数の頂部22,32、底部23,33、ならびに、前記頂部と底部とを連ねる斜面部24,34を有している。
前記波形形状の前記上面21と下面30とは前記中間層6を間に介して互いに歯合している。
【0021】
前記互いに歯合する2つの面21,30は、それぞれ、前記斜面部24,34において中間層6に接触している。前記互いに歯合する2つの面21、30が前記頂部22,32および底部23,33の双方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙4が形成されている。
【0022】
なお、空隙4は前記頂部22,32または前記底部23,33の少なくともいずれか一方の部分に設ければよい。
【0023】
本発明においては、前記中間層6の硬度を前記上層3の硬度よりもSRIS-C硬度で2°以上小さな値に設定し、かつ、前記中間層6の硬度を前記下層2の硬度よりもSRIS-C硬度で2°以上小さな値に設定するのが好ましい。たとえば下層2および上層3をSRIS-C硬度で40°以上80°以下、より好ましくは50°〜70°程度に設定し、中間層6をSRIS-C硬度で35°以下、より好ましくは10°〜30°程度に設定する。このような硬度を有する素材(材料)としては、下層2および上層3をEVA(酢酸ビニル共重合体) などの樹脂やゴムの発泡体で形成し、中間層6をシリコーンゲルで形成する。
【0024】
具体的な実施例
つぎに、本発明の具体的な実施例を図5〜図7にしたがって説明する。
図5において、ミッドソール本体2Aは、たとえばEVAのような発泡樹脂からなり、後足部25に装着凹所8を有している。前記装着凹所8には、軟質緩衝体3Aおよびキャップ7が装着される。図6に示すように、前記ミッドソール本体2Aの後足部25は、本緩衝装置1の下層2を形成している。一方、前記軟質緩衝体3Aは、たとえばシリコーンゲルからなり、緩衝装置1の上層3を形成している。
【0025】
図5に示すように、前記下層2の上面21および上層3の下面30は、2つの交差する(たとえば直交する)方向の断面において、波形に形成されている。すなわち、前記下層2の上面21は、格子状に配列された多数の山22aおよび谷23aを有している。また、前記上層3の下面30は、格子状に配列された多数の谷32aおよび山33aを有している。図7に示すように、前記各山22a,33aは谷32a,23a,に嵌まり込む。
【0026】
図6に示すように、前記下層2および上層3の波形形状において、互いに嵌合する部分のピッチP1は等しい。しかし、下層2または上層3における波形のピッチP1,P2が均一である必要はない。なお、ピッチP1,P2は、一般に3mm以上に設定され、好ましくは6mm以上30mm以下に設定される。また、波形形状の振幅A1,A2も一定である必要はない。振幅A1,A2を大きくすれば、緩衝性が高まるし、一方、振幅A1,A2を小さくすれば安定性が高まる。
【0027】
前記キャップ7の下面70も、断面形状が概ね波形に形成されている。このキャップ7の凹凸は、下の軟質緩衝体3Aの波形形状の凹凸に対応している。すなわち、キャップ7の下面70には、多数の凸部73が前記軟質緩衝体3Aと同様に格子状に配列されて、図7に示すように、凸部73が上層3の底部33の位置に対応して配列されている。これにより、上層3の凸部をミッドソール本体2Aとの間で圧縮し易くしている。
キャップ7は、ミッドソール本体2Aと同じ材質で、かつ、ミッドソール本体2Aに略等しい硬度のEVAで形成されており、前記装着凹所8を閉封する。
【0028】
なお、図5に示すように、前記緩衝装置1の平面的な形状や波形を形成する方向は、足が着地してから離地する矢印B方向に設定するのが好ましい。なお、ミッドソール本体2Aの下方には、踏み面を有するアウトソール(図示せず)が設けられている。
【0029】
他の具体的な実施例
図8(a)において、本実施例では、EVAからなるキャップ3Bが上層3を構成する。厚肉のフィルム6Aは中間層6を構成する。前記フィルム6Aはシリコーンゲルからなり、ミッドソール本体2Aとキャップ3Bとの間に挟まれる。下層2を形成するミッドソール本体2Aには、波形の底部23に小さな窪み23aが形成してある。図8(b)のように、キャップ3Bは装着凹所8を閉塞する。
【0030】
なお、その他の構成は原理的な第2実施例および具体的な図5〜図7の実施例と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0031】
前記図8(a)および図8(b)に示す実施例においては、図9に示すように、フィルム6Aを成型してもよい。図9のフィルム6Aについて詳しく説明すると、フィルム6Aは、下層2および上層3の波形に合致した波形形状に成型されていると共に、波の頂部に相当する円形の部分62が切欠されている。これにより、図4のように、波形の頂部22,32および底部23,33の双方に空隙4が形成される。
【0032】
更に他の具体的な実施例
図10において、本実施例では、上層3が上ミッドソール本体で構成され、一方、下層2が前後の下ミッドソール本体2F,2Bで構成されている。中間層6は片状のシリコーンゲルからなる。
図11(a)に示すように、前記後の下ミッドソール本体2Bには多数の山22aおよび谷23aが格子状に配列されている。図10に示すように、前記前の下ミッドソール本体2Fにも同様に多数の山22aおよび谷23aが格子状に配列されている。前記上ミッドソール本体3には、前記山22aおよび谷23aに嵌り込む谷32aおよび山33aが設けてある。
【0033】
図11(a)および図11(b)に示すように、前記中間層6は、ミッドソールの周縁にのみ設けられている。また、波の振幅は、図10の足の外側10の方が図11(b)の足の内側11よりも大きく設定されている。このように設定した理由は、足の外側では緩衝性が重要であり、一方、足の内側では安定性が必要なためである。
【0034】
つぎに、本発明に関するsimulation(コンピュータによる計算)の結果を示すことで、本発明の効果を明瞭にする。
まず、図12(a)〜(c)に示すモデルを想定した。更に、試験例を示すタイプ1については振幅比As/Amを図13の表1のように3種類設定した。なお、ピッチPは12mmで一定とした。
これらのモデルにおける波形は正弦曲線を基調としており、タイプ1についてはEVA側の波形の頂部を円弧状に変化させた。また、各波形の配列は図1(a)に示すように、直線状に互いに平行に設定した。なお、コンピュータによる計算を可能にするために、波形については直線近似を行った。
【0035】
つぎに、これらのモデルに、錘を上方から衝突させた場合に生じる衝撃緩衝性をsimulationにより算出した。その結果を前記表1に示す。表中の緩衝性は、錘とモデルの衝突時において、足に相当する前記錘に発生した衝撃を周波数毎に分解し、人体が不快と感じる低周波成分の減衰を定量化したものである。表中の値が大きい程緩衝性に優れていることが、官能検査との対比によって確認されている。
【0036】
表1から分かるように、本発明の試験例1,2,3は、比較例1よりも緩衝性に優れている。
一方、比較例2は、試験例1,3よりも緩衝性に優れているが、山の圧縮変形が大きくなりすぎるので、繰り返し使用している間に緩衝性が著しく低下する。
【0037】
なお、この表1から分かるように、振幅比As/Amを適度な値に設定するのが好ましい。
しかし、図1(b)のように、上下に空隙4を設けた場合は、振幅比As/Amは1.0 程度に設定する方が緩衝性が高くなると推定される。したがって、本発明は振幅比As/Amを限定するものではない。
【0038】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、図14に示すように、同心円状に波形の頂部22,32(または底部)を配列してもよい。
また、下層をシリコーンゲル(低硬度)で形成して上層を発泡樹脂(高硬度)にしてもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、靴底の特に緩衝装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(a)は本発明の原理的な第1実施例を示す靴底の緩衝装置の分解斜視図、図1(b)は同縦断面図である。
【図2】図2(a)は本発明の原理を説明するための拡大した模式図、図2(b)は剪断変形の様子を示す拡大した模式図、図2(c)は圧縮変形の様子を示す拡大した模式図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、それぞれ、同原理的な実施例の変形例を示す縦断面図である。
【図4】図4は本発明の原理的な第2実施例を示す靴底の緩衝装置の縦断面図である。
【図5】図5は具体的な実施例を示すミッドソールの分解斜視図で、上層を一部破断して示している。
【図6】図6は同分解縦断面図である。
【図7】図7は同縦断面図である。
【図8】図8(a)は他の具体的な実施例を示すミッドソールの分解縦断面図、図8(b)は同縦断面図である。
【図9】図9は前記他の具体的な実施例の変形例を示すミッドソールの分解斜視図で、中間層を一部破断して示している。
【図10】図10は更に他の具体的な実施例を示す斜視図である。
【図11】図11(a)は同じく後足部の分解斜視図、図11(b)は後足部を内側から見た斜視図である。
【図12】図12(a)〜図12(c)はシミュレーションのモデルを示す模式図である。
【図13】図13は同シミュレーションの結果を示す図表である。
【図14】図14は波の配列の変形例を示す一部断面した斜視図である。
【図15】図15(a)はU.S.P.4,798,010 号に開示された靴の側面図、図15(b)は実開平6-17504 号に開示された靴底の緩衝装置の一部断面した側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1:緩衝装置
2:下層
3:上層
4:空隙
20,30:下面
21,31:上面
22,32:頂部
23,33:底部
24,34:斜面部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーからなる下層および上層を備えた靴底の緩衝装置であって、
前記下層および上層は各々、下面および上面を有し、
前記下層の上面および前記上層の下面は、断面形状が概ね波形に形成されており、
前記波形は、各々、複数の頂部、底部、ならびに、前記頂部と底部とを連ねた斜面部を有し、
前記波形形状の前記上面と下面とは互いに歯合しており、
前記互いに歯合する2つの面が、これらの面の前記斜面部同士において互いに接触しており、
前記互いに歯合する2つの面が前記頂部および底部の少なくともいずれか一方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙が形成されている靴底の緩衝装置。
【請求項2】
前記上層と下層とは、SRIS-C硬度が互いに2°以上異なる素材で形成されている請求項1に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項3】
前記上層および下層のうちのいずれか一方の層が樹脂およびゴムの少なくともいずれか一方の群から選択された発泡体からなり、
前記上層および下層のうち他方の層がゲル状の材料からなる請求項2に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項4】
前記2つの層のうち一方の層のSRIS-C硬度が40°以上に設定されており、
前記2つの層のうち他方の層のSRIS-C硬度が35°以下に設定されている請求項2に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項5】
前記靴底は装着凹所を有し、該装着凹所の表面が前記下層の上面を構成し、
前記装着凹所には前記上層を構成する部材が装着されている請求項1に記載の靴底の緩衝装置
【請求項6】
前記上層の上に配置され、かつ、前記装着凹所を閉塞するキャップを備えた請求項5に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項7】
前記緩衝装置は前記靴底のミッドソールで形成されている請求項1に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項8】
エラストマーからなる下層および上層を備えた靴底の緩衝装置であって、
下面および上面を有する下層と、
前記とは別の下面および上面を有する上層と、
前記2つの層の間に介挿された中間層とを備え、
前記下層の上面および前記上層の下面は、断面形状が概ね波形に形成されており、
前記波形は、各々、複数の頂部、底部、ならびに、前記頂部と底部とを連ねた斜面部を有し、
前記波形形状の前記上面と下面とは前記中間層を間に介して互いに歯合しており、
前記互いに歯合する2つの面は、それぞれ、前記斜面部において前記中間層に接触しており、
前記互いに歯合する2つの面が前記頂部および底部の少なくともいずれか一方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙が形成されている靴底の緩衝装置。
【請求項9】
前記中間層の硬度が前記上層の硬度よりもSRIS-C硬度で2°以上小さな値となる素材で形成され、かつ、前記中間層の硬度が前記下層の硬度よりもSRIS-C硬度で2°以上小さな値となる素材で形成されている請求項8に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項10】
前記上層および下層が樹脂およびゴムの少なくともいずれか一方の群から選択された発泡体からなり、
前記中間層がゲル状の材料からなる請求項9に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項11】
前記上層および下層のSRIS-C硬度が40°以上に設定されており、
前記中間層のSRIS-C硬度が35°以下に設定されている請求項9に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項12】
前記靴底は装着凹所を有し、該装着凹所の表面が前記下層の上面を構成し、
前記装着凹所には、前記中間層を構成する部材と前記上層を構成する部材とが装着されている請求項8に記載の靴底の緩衝装置
【請求項13】
前記上層が前記中間層の上に配置され、かつ、前記装着凹所を閉塞するキャップを構成する請求項12に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項14】
前記緩衝装置は前記靴底のミッドソールで形成されている請求項8に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項15】
前記上層および下層は、前記断面および前記断面に交差する方向の他の断面において、各々、波形に形成されている請求項1もしくは8に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項16】
前記上層および下層は、それぞれ、格子状に配列された多数の山を有し、
前記上層および下層は、それぞれ、格子状に配列された多数の谷を有し、
前記一方の層の各山が前記他方の層の各谷に嵌まり込んでいる請求項15に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項17】
前記互いに歯合する2つの面が前記頂部および底部の双方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙が形成されている請求項1もしくは8に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項1】
エラストマーからなる下層および上層を備えた靴底の緩衝装置であって、
前記下層および上層は各々、下面および上面を有し、
前記下層の上面および前記上層の下面は、断面形状が概ね波形に形成されており、
前記波形は、各々、複数の頂部、底部、ならびに、前記頂部と底部とを連ねた斜面部を有し、
前記波形形状の前記上面と下面とは互いに歯合しており、
前記互いに歯合する2つの面が、これらの面の前記斜面部同士において互いに接触しており、
前記互いに歯合する2つの面が前記頂部および底部の少なくともいずれか一方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙が形成されている靴底の緩衝装置。
【請求項2】
前記上層と下層とは、SRIS-C硬度が互いに2°以上異なる素材で形成されている請求項1に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項3】
前記上層および下層のうちのいずれか一方の層が樹脂およびゴムの少なくともいずれか一方の群から選択された発泡体からなり、
前記上層および下層のうち他方の層がゲル状の材料からなる請求項2に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項4】
前記2つの層のうち一方の層のSRIS-C硬度が40°以上に設定されており、
前記2つの層のうち他方の層のSRIS-C硬度が35°以下に設定されている請求項2に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項5】
前記靴底は装着凹所を有し、該装着凹所の表面が前記下層の上面を構成し、
前記装着凹所には前記上層を構成する部材が装着されている請求項1に記載の靴底の緩衝装置
【請求項6】
前記上層の上に配置され、かつ、前記装着凹所を閉塞するキャップを備えた請求項5に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項7】
前記緩衝装置は前記靴底のミッドソールで形成されている請求項1に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項8】
エラストマーからなる下層および上層を備えた靴底の緩衝装置であって、
下面および上面を有する下層と、
前記とは別の下面および上面を有する上層と、
前記2つの層の間に介挿された中間層とを備え、
前記下層の上面および前記上層の下面は、断面形状が概ね波形に形成されており、
前記波形は、各々、複数の頂部、底部、ならびに、前記頂部と底部とを連ねた斜面部を有し、
前記波形形状の前記上面と下面とは前記中間層を間に介して互いに歯合しており、
前記互いに歯合する2つの面は、それぞれ、前記斜面部において前記中間層に接触しており、
前記互いに歯合する2つの面が前記頂部および底部の少なくともいずれか一方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙が形成されている靴底の緩衝装置。
【請求項9】
前記中間層の硬度が前記上層の硬度よりもSRIS-C硬度で2°以上小さな値となる素材で形成され、かつ、前記中間層の硬度が前記下層の硬度よりもSRIS-C硬度で2°以上小さな値となる素材で形成されている請求項8に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項10】
前記上層および下層が樹脂およびゴムの少なくともいずれか一方の群から選択された発泡体からなり、
前記中間層がゲル状の材料からなる請求項9に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項11】
前記上層および下層のSRIS-C硬度が40°以上に設定されており、
前記中間層のSRIS-C硬度が35°以下に設定されている請求項9に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項12】
前記靴底は装着凹所を有し、該装着凹所の表面が前記下層の上面を構成し、
前記装着凹所には、前記中間層を構成する部材と前記上層を構成する部材とが装着されている請求項8に記載の靴底の緩衝装置
【請求項13】
前記上層が前記中間層の上に配置され、かつ、前記装着凹所を閉塞するキャップを構成する請求項12に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項14】
前記緩衝装置は前記靴底のミッドソールで形成されている請求項8に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項15】
前記上層および下層は、前記断面および前記断面に交差する方向の他の断面において、各々、波形に形成されている請求項1もしくは8に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項16】
前記上層および下層は、それぞれ、格子状に配列された多数の山を有し、
前記上層および下層は、それぞれ、格子状に配列された多数の谷を有し、
前記一方の層の各山が前記他方の層の各谷に嵌まり込んでいる請求項15に記載の靴底の緩衝装置。
【請求項17】
前記互いに歯合する2つの面が前記頂部および底部の双方において互いに離間しており、当該離間している部分に空隙が形成されている請求項1もしくは8に記載の靴底の緩衝装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−98181(P2007−98181A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13481(P2007−13481)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【分割の表示】特願2000−141718(P2000−141718)の分割
【原出願日】平成12年5月15日(2000.5.15)
【出願人】(000000310)株式会社アシックス (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【分割の表示】特願2000−141718(P2000−141718)の分割
【原出願日】平成12年5月15日(2000.5.15)
【出願人】(000000310)株式会社アシックス (57)
【Fターム(参考)】
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