説明

靴底または当該靴底を底面に有する靴

【課題】耐滑性を有する靴をいつ交換すべきであるかを容易にかつ確実に確認できる靴底または当該靴底を底面に有する靴を提供する。
【解決手段】接地面を有するアウトソール10の上底にクッション性を有するミッドソール20を備えた耐滑性の靴底1であって、アウトソール10の接地面には凹凸形状のグリップ意匠が複数突出しており、アウトソール20の上底とミッドソール20の下底との間に、アウトソール10が所定量u摩耗したことによって露出される合成樹脂製の視認材50が少なくとも一つ積層され、視認材50を積層するアウトソール10の上底にはアウトソール10の上底から見てアウトソール10の下底よりも浅い凹み部分が形成されて、当該凹み部分に視認材50がアウトソール10およびミッドソール20の双方にくい込んだ状態で積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地面を有するアウトソールの上底に当該アウトソールよりも柔らかいクッション性を有するミッドソールを備えた耐滑性の靴底であって、靴底または当該靴底を底面に有する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品加工場の接地面に水や油が飛散して滑りやすくなっている場所や、工事現場や重い機械・部品を扱う製造業、水産業、林業の足への危険を伴う事業場において、足の負傷事故で最も多いのは、現場にて転倒したことによる腕や腰の負傷である。このような事故を防止するために、作業者の足を保護することを目的として開発されたのがJIS T8101規格の安全靴であり、JPSA規格のプロテクティブスニーカーである(この二種類の規格のうちいずれか一方の基準を満たす靴を以下、「靴」と称する)。
【0003】
耐滑性を考慮した従来の靴底及び靴については、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2567956号公報
【0005】
なお、安全靴は、JIS規格にて、「主として着用者のつま先を先しんによって防護し、滑り止めを備える靴」と定義されている。そして、安全靴の甲被の材質としては牛革またはゴムを使用することが定められている。
他方、プロテクティブスニーカーは、安全靴と同様に「足を守る」安全機能を備えている靴であるが、甲被に人工皮革やビニルレザークロスを使用しているので、牛革素材の使用を義務付けている「安全靴」のJIS規格の対象にはならない。その代わりに、革製品では表現できないデザインのものが多く、メッシュ等のムレにくい素材や反射材など、様々な材料を使用して性能を向上させている。また、耐滑性に優れたものや静電機能が付いたものも開発されており、安全面についても考慮されている。
【0006】
また、ここ数年、海外製の先芯を装着したスニーカータイプの靴の輸入増加に伴い、安全性能をうたったスニーカーの中に、あたかも「安全靴のJIS規格品」と誤解を与えるような表示をした製品や、安全性能や耐久性に問題のある製品が多く見受けられるようになった。そこでこれらの商品についてもJIS規格に準じた一定の規格はクリヤーさせるようにしなければならないということから、日本プロテクティブスニーカー協会(JPSA)を設立し、JIS規格に準じた団体規格(JPSA規格)を制定したのである。当該公的試験の結果、JPSA規格を満たした認証品は、JIS規格と同等のつま先の安全性能を日本保安用品協会が認証した製品であり、信頼性の高い製品である。
【0007】
そして、日本安全靴工業会は、安全靴に求める付加的性能として、平成18年に「耐滑性」についての試験方法および規格値を新規に制定する安全靴のJIS規格に改正した。詳しくは、耐滑性のある安全靴というのは、JISに規定された試験方法により試験したとき、靴底の動摩擦係数は0.20以上の性能でなければならない、と制定した。
【0008】
よって、上記JIS規格に準じる規格であるJPSA規格のプロテクティブスニーカーも同様に、JIS規格の付加的性能の改正に伴い、「耐滑性」についての試験方法および規格値を新規に制定された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記二種類の安全基準のうちいずれかで「耐滑性」について基準を制定しても、現場では、同じ靴を長期間にわたって履き続けて作業をしていることにより、靴底が摩耗し耐滑性が落ちて、本来の耐滑性としての機能を損なう。耐滑性が失われた状態の靴を履き続けた結果、スリップして転倒しケガをする虞がある。それにも関わらず、靴底が摩耗していたとしても、靴の交換基準は曖昧で個人の判断によるところが大きかった。また、靴を開発するにしても、どの程度の摩耗の状態が本当に靴としての耐滑性の基準未満の状態であるかどうか、その裏付けや確認するための試験方法といった公的な基準がなかった。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑み提案されたもので、耐滑性を有する靴をいつ交換すべきであるかを容易にかつ確実に確認できる靴底または当該靴底を底面に有する靴を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、接地面を有するアウトソールの上底に当該アウトソールよりも柔らかいクッション性を有するミッドソールを備えた耐滑性の靴底であって、前記アウトソールの接地面には凹凸形状のグリップ意匠が複数突出しており、前記アウトソールの上底と前記ミッドソールの下底との間に、前記アウトソールが所定量摩耗したことによって露出される合成樹脂製の視認材が少なくとも一つ積層され、前記視認材を積層する前記アウトソールの上底には前記アウトソールの上底から見て前記アウトソールの下底よりも浅い凹み部分が形成されて、当該凹み部分に当該視認材が前記アウトソールおよび前記ミッドソールの双方にくい込んだ状態で積層されていることを特徴とする靴底である。そしてさらに、そのような特徴を有する靴底を底面に有する靴である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、次のような効果を奏することができる。詳しくは、アウトソールの下底(靴底の裏面)において、普段は複数の発泡ポリウレタンからなる突起状のグリップ意匠が突出し、接地面に対してある程度の吸着力を保有し耐滑性をさらに強めているが、靴底のグリップ意匠がなくなったときやアウトソールが摩耗してきたときに本願発明に係る視認材が露出する。アウトソールが摩耗して視認材が露出し始めたとしても、アウトソールはある程度「硬質」であるので、直ぐには摩耗しない。それゆえ視認材が摩耗し始めたとしても視認材の露出面積が除々に広がっていくような感じであり、視認材が露出し始めたら、言い換えれば、視認材が見え始めたら「耐滑性が落ち始めているので警戒してください」という警告メッセージとして着用者に段階的に靴の品質が低下していることを知覚・認識できるように警告する効果を奏することができる。
なお、視認材が完全に露出した場合は過度の摩耗状態であって、当該靴の靴底の動摩擦係数はJIS規格またはJPSA規格が定める耐滑性の規定値0.20未満ということであり、耐滑性能が劣化したということを判断することができる。そのような場合は転倒の危険性があって靴を交換する必要があり、その情報を着用者に知覚させることができる。
以上より、靴の耐滑性について、本実施形態に係る視認材はあくまで「耐滑性に関する目安」であり、アウトソールが摩耗し視認材が露出し始めてきたら耐滑性が落ちてきているということを着用者に警告することができ、靴の交換時期を目視で判断させることが可能となる。このように外観の変化を視覚的な手がかりとして視認材を使用して、靴の交換時期がきたことを着用者に知らせることができる。JIS規格またはJPSA規格に則った耐滑性を有する靴を製品とすることができ、耐滑性能が落ちたときに交換するように第三者として促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る安全靴において、視認材を介在させた要部縦断面図である。
【図2】図1の二点鎖線で囲んだ箇所の部分拡大図であり、視認材がアウトソールおよびミッドソールの両方に所定量くい込んだ状態で積層されていることを示す一部断面図である。
【図3】図2の状態で、アウトソールが所定量摩耗して視認材の一表面が露出している状態を示す一部断面図である。
【図4】人の足の裏で体重が分散して架かる箇所を示した足裏図である。
【図5】本実施形態に係る安全靴を着用者が履いた状態の裏面図である。
【図6】他の実施形態に係る安全靴において、視認材を介在させた裏面図である。
【図7】図6のA−A要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。なお、以下の本実施形態では、JIS規格に則った安全靴100の場合について説明する。
【0015】
<1.本実施形態の一例に係る安全靴の構造について>
<1.1.靴底(ソール)1とアッパー(甲被)2について>
安全靴100の構造は、大別すると靴底1とアッパー2とに分けることができる。
靴底1は、中底30やミッドソール20、着用者の足5(図4参照)を支える土台部分であり、接地面のデコボコによる衝撃や釘やガラスの危害より足5を保護する役割がある。
この実施形態に係る靴底1は、二層底(ダブルソール)として形成され、図1の要部縦断面図に示すような安全靴100に用いられる。なお、図1は、本実施形態に係る安全靴100において、視認材50a、50b、50c(その総称を50とする)を介在させた要部縦断面図である。
本実施形態に係る安全靴100の基本的な靴底1の構造は、接地面を有して滑り止め効果のある靴底形状に成形されたアウトソール(靴底接地部)10の上底10aに、アウトソール10よりも柔軟性と弾力性を備えた柔らかいクッション性を有し中間層となるミッドソール20を備えた二層底構造で構成されている。二層底構造によりミッドソール20の優れた衝撃吸収性が足への負担を軽くし、疲労を軽減する。
なお、安全靴100に使われる素材や靴の種類および構造は、JIS T8101規格に規定された性能に加え、各社独自の基準をクリヤーする耐久性のある材料から構成されている。
また、アッパー2は、靴100の靴底1を除いた上の部分であり、アッパー2の底面にミッドソール20が接合される。アッパー2は、外部の気象の変化や衝撃から足5を保護し、歩行の際に足が踊らないよう絶えず足を密着させる役割がある。なお、本実施形態に係る安全靴100のアッパー2は、牛革素材を使用している。
また、本実施形態の靴底10が設けられた安全靴100は、底面にミッドソール20の上面が接合されて足全体を覆うアッパー2と、このアッパー2の先端部、すなわち足のつま先に対応する領域に嵌合してつま先を保護する先芯40とを有する。また、アッパー2の底面には、足のアーチ部を支えて歩行し易くするスチール製のシャンクが接合されている。
【0016】
<1.2.アウトソール10、ミッドソール20:発泡体の場合>
本実施形態では、アウトソール10および/またはミッドソール20は、ゴム、合成樹脂の発泡体またはそれらの重層組み合わせの構造からなり、本実施形態では、アウトソール10およびミッドソール20ともに合成樹脂の発泡体から成形されている。本実施形態に係る合成樹脂の発泡体は、ポリウレタン樹脂(PU)の発泡体である発泡ポリウレタンであり、当該発泡ポリウレタンとしては、ポリオール成分、イソシアネート成分の混合物を発泡架橋させたものが挙げられる。
【0017】
アウトソール10は耐摩耗性、耐滑性に優れた高密度の発泡ポリウレタン、いわゆる安全靴100の靴底1として充分な強度の見込まれる硬さである硬質ウレタンの発泡体で形成されている。一方、ミッドソール20はアウトソール10と比較してクッション性に優れた低密度の発泡ポリウレタン、つまり、発泡率の高い(空間が多く密度が低い)状態となるような組成で、いわゆる充分な衝撃吸収力を呈するに充分な柔らかさの軟質ウレタンの発泡体で形成されている。
したがって、本実施形態に係る靴底1の二層構造は、硬質発泡ウレタン製のアウトソール10の上底10aに、相対的には柔らかい軟質発泡ウレタン製によるミッドソール20を上張りした構造となっている。
なお、アウトソール10もミッドソール20も、硬軟の相違があるとは言え、共に発泡体であるので、物性状の馴染みが良く、両者の接着は発泡による自己接着により接着している。したがって、不測にもミッドソール20がアウトソール10から引き剥がれてしまうような虞を大幅に低減し得ることができる。
また、PU以外の発泡体としては、例えば、エチレン一酢酸ビニル共重合体樹脂(エチレンビニルアセテート:EVA)、塩化ビニル系樹脂の発泡体により形成されることも可能である。
【0018】
しかしながら、発泡しているとその分摩耗しやすいため、アウトソール10はほとんど発泡していないことが好ましい。安全靴100のアウトソール10として採用される材料は、上記以外にゴム、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマー、EVAがあげられるが、接地面に油が存在して、特に耐滑性が要求される環境で使用されることが多い場合での安全靴100のアウトソール10の材料は、合成ゴム、PUが主流である。
【0019】
<1.3.アウトソール10、ミッドソール20:ゴムの場合>
また、アウトソール10、ミッドソール20の材料がゴムの場合は、加硫または架橋によってゴム状弾性を示す高分子化合物であり、天然ゴムまたは合成ゴムが用いられる。
アウトソール10、ミッドソール20の素材となるゴムは、靴底用としてのゴムであり、合成ゴムであるスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)および特殊合成ゴムとして、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエン・アクリロニトリル・アクリレート系三元共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル・イソプレン系三元共重合体が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、これらのゴムが単体で用いられてもよく、ブレンドして用いられてもよい。この場合のアウトソール10とミッドソール20との接着は、接着剤により接着される。
なお、安全靴100の軽量化およびクッション性を考慮するとミッドソール20は発泡体を使用するのが好ましい。発泡体による優れた衝撃吸収性が足への負担を軽くし、疲労を軽減するためである。
【0020】
<1.4.ミッドソール20の上下方向の厚みsについて>
また、本実施形態におけるミッドソール20の上下方向の厚みsは4〜20mm程度である。ミッドソール20の上下方向の厚みsを充分にとることにより適度のクッション性を有し且つ軽量であるので、本実施形態に係る安全靴100を履いて長時間歩いても疲労感が少ない。なお、このミッドソール20の厚みsの分布範囲の広さから分かるように、本実施形態に係るミッドソール20およびアウトソール10からなる靴底1は、図1に示すように、踵部領域95は爪先部領域60や中途部領域90に比べてヒール状の構造となっている。本実施形態に係る安全靴100は、ヒール12の高さがスタンダードヒールの場合を想定しているが、他の高さのヒールの場合にも本発明は適用することは可能である。ヒール後端部のカットデザインが、ヒール12の着地をスムーズにし、歩行を安定させ、歩行の際の足5を持ち上げる動作を助ける効果を奏している。
【0021】
<1.5.アウトソール10の上下方向の厚みtについて>
また、アウトソール10は、全体的に上下方向の厚みtは3mm程度に形成されている。アウトソール10の下底10bには、耐滑性、耐摩耗性に優れた凹凸形状のグリップ意匠11が複数突出しており、歩行時において、接地面の凹凸の衝撃を緩和し、足の裏の保護をする役割を奏する。特に、アウトソール10の接地面の形状が、多角形または円形の独立したグリップ意匠11であって、それらが集合して靴底1全体のパターンを形成し、グリップ意匠11が陥没しにくく、かつ、倒れにくいような強度を有しているのが望ましい。
【0022】
<1.6.中底30>
また、ミッドソール20の上底に接着される中底30は、合成素材を圧縮成形したファイバー・ボード中底や、高機能化学繊維不織布を使用したノン・ファブリック中底が用いられる。どちらも耐摩耗性、耐屈曲性に際立ち、しかもソフトな足あたり、汗の吸収性、放湿性に優れている素材が好ましい。中底30は靴100のフレームを構成するものであり、歩行時に体重をしっかりと支える支柱であるとともに、中底クッション材を厚くして靴底1のクッション性をさらに向上させることも可能である。
【0023】
<1.7.先芯40>
また、安全靴100のアッパー2における爪先部分には、爪先の安全性を確保することを目的とした強靱な炭素工具鋼の先芯40が備えられている。鋼製先芯には、内装式と外装式とがある。また、軽量で鋼製先芯と同等の性能をもつ樹脂製先芯もある。どちらもJIS規格に適合した性能を有する。
【0024】
<2.本実施形態の特徴である視認材について>
次に、本実施形態の特徴である視認材50について以下、図2〜図5に基づいて説明する。図2は、図1の二点鎖線で囲んだ箇所の部分拡大図であり、視認材50がアウトソール10およびミッドソール20の両方に所定量くい込んだ状態で積層されていることを示す一部断面図であり、図3は、図2の状態で、アウトソール10が所定量u1、u2摩耗して視認材50cの一表面50d1、50d2が露出している状態を示す一部断面図である。図4は、人の足5の裏で体重が分散して架かる箇所5a、5b、5cを示した足裏図である。図5は、本実施形態に係る安全靴100を着用者が履いた状態の裏面図である。
【0025】
<2.1.本実施形態に係る視認材50について>
本実施形態に係る視認材50とは、着用者の安全靴100が長期間着用していたことによる摩耗により、安全靴100の耐滑性がJIS規格の規定する靴底1の動摩擦係数未満の状態で滑りやすい状態になっていることを認識させるための部材であり、安全靴100の取り替え時期であることを着用者に目視で認識させることができる識別力を有する部材である。
【0026】
<2.2.視認材50がアウトソール10とミッドソール20との間に積層>
そのため、本実施形態に係る視認材50は、アウトソール10の上底10aとミッドソール20の下底20bとの間に少なくとも一つ積層されている。図1および図2に示すように、視認材50はアウトソール10およびミッドソール20の両方に所定量くい込んだ状態になっており、アウトソール10が上下方向に所定量u1、前後方向に所定量u2摩耗したことによって、それぞれ視認材50の一表面50d1、50d2が露出される構成になっている(なお、以下では、アウトソール10の所定量の摩耗量の総称をu、所定量u摩耗して露出した視認材50の一表面の総称を50dとする)。詳しくは、普段はアウトソール10の下底10bは複数の発泡ポリウレタンからなる突起状のグリップ意匠11で、接地面に対してある程度の吸着力を保有し耐滑性をさらに強めているが、靴底1のグリップ意匠11がなくなったときやアウトソール10が摩耗してきたときに視認材50が露出するように構成されている。
なお、視認材50を積層するアウトソール10の上底にはアウトソール10の上底から見てアウトソール10の下底10bよりも浅い凹み部分が形成されて、当該凹み部分に当該視認材50が積層されるように構成されている。このように視認材50を凹み部分に積層する場合でも、アウトソール10の上下方向の厚さtは均一になるように設定されている。
【0027】
<2.3.視認材50の摩耗度>
視認材50は合成樹脂製で成形され、本実施形態では塩化ビニル系樹脂から成形されている。視認材50の摩耗度、つまり、摩耗のし易さは、ほとんど発泡していない硬質ウレタンの発泡体であるアウトソール10と同等に設定され、かつ、視認材50の色はアウトソール10と異なる色に設定されている。なお、色彩若しくは光沢によってアウトソール10との視覚的な相違が明確となるように、組成の変更、塗料、染料の混合を行うことが望ましい。
視認材50の色は単色でも複数の色が混合した色でもよく、アウトソール10を限界まで摩耗して視認材50が露出していることを識別するのに充分な特徴を有する模様でもよい。蛍光色のように目立つ色や模様や形状であれば、着用者が歩行時に、着用者の履いている安全靴100のアウトソール10が摩耗限界に達して視認材50が露出していることを第三者が認識してその着用者に教えるといったことも可能である。
なお、ここでいう「視認材50の摩耗度がアウトソール10と同等に設定されている」ということは、図3に示すように、アウトソール10が所定量u1、u2摩耗して視認材50cの一表面50d1、50d2が露出し、その段階で着用者が視認材50cが露出していることに気づいていない場合、露出した視認材50cと残りのアウトソール10とが同時に摩耗する素材でないと、柔らかいミッドソール20が摩耗したり、アウトソール10が先に摩耗して視認材50cだけが飛び出た状態になったりして二次災害を引き起こす虞がある。
【0028】
なお、上記実施形態では、視認材50cについて説明したいが、視認材50a、50bも同様に、アウトソール10の下底およびグリップ意匠11が所定量u摩耗して各視認材50a、50bの一表面50dが露出する構成に設けられている。
【0029】
<2.4.「色」について>
また、単に「色」といっても、ここでは色を形容するときに用いる3種の感覚属性である、色相(色合い)、明度(明るさ)、彩度(あざやかさ)といった色の三属性の総称として用いている。なお、白や灰色、黒のグレースケールは、明度で区別され、色相を含まず彩度が0である。このような色を無彩色と呼び、グレースケール以外の色は三属性すべてを持つ有彩色である。しかしながら実際には、白や黒、グレーであってもふつう幾らかの彩度を示すので、いわゆる白や黒、グレーを色の三属性を一つしか持たない色とするのは不適切である。
以上より、色相、明度、彩度のいずれかがアウトソール10と視認材50とが異なるように設定されていることが好ましい。
【0030】
<2.5.視認材50がアウトソール10の摩耗の進行に応じて識別力を有する形態が変化>
また、視認材50は、アウトソール10の摩耗の進行に応じて、識別力を有する視認材50の形状、模様、色の形態が変化するように形成されているように構成することも可能である。つまり、アウトソール10の摩耗に伴いアウトソール10の摩耗領域は大きくなり、次第に視認材50が露出面積も大きくなる。さらに、アウトソール10の摩耗が進行するにつれて段階的に視認材50の露出面積が増大してくると、アウトソール10と同時に視認材50も摩耗し始め、それに伴い識別力を有する視認材50の形状、模様、色の形態も段階的に変化するように構成することも可能である。つまり、視認材50の摩耗の進行具合に伴い、視認材50の形状、模様、色が段階的に変化するように、複数種類の形状、模様、色が積層している構成である。例えば、摩耗の進行に伴い視認材50の色の変化について、段階的に警告色に変化していくように構成することも可能である。これは、摩耗の進行状態を視認材50の形態変化によって着用者に知覚させるものであり、安全靴100の使用限度に達するまでの期間を予め予測させることができるという効果を有しているものである。
【0031】
また、耐滑性能は靴底1を形成する素材やアウトソール10の形状によって異なるものであるので、視認材50を露出させるアウトソールの所定量uは、それぞれの靴底1が有する耐滑性能に応じて適宜設定することができる。そして、視認材50の露出と、摩耗に伴う靴底1の使用限度を一致させておくことで、靴底1の使用限度を使用者に知覚させることができるようになっている。
【0032】
<2.5.視認材50の硬度>
また、視認材50の硬度は、アウトソール10と同等に設定されており、着用者が本実施形態に係る安全靴100を履いたとしても、異物感を感じることがない履き心地となるように靴底1内において形状や配置位置を設定している。視認材50の具体的な形状や配置位置については後述する。
【0033】
なお、アウトソール10より視認材50のほうが硬度が高いと、歩行時に接地面と視認材50との間に常に挟まれるのでアウトソール10を痛めてしまい、アウトソール10の摩耗を促進してしまうことになる。したがって、視認材50とアウトソール10との硬度は、同等になるように設定されているか、少なくともアウトソール10より視認材50のほうが柔らかく設定していることが好ましい。
【0034】
<3.本実施形態に係る視認材の具体的な配置位置について>
<3.1.人の足5の母趾球部5a、小趾球部5b、踵部5c>
次に、着用者が安全靴100を着用したときに、靴底1のどの領域に体重がかかるかについて説明するとともに、当該領域に本実施形態に係る視認材50を配置することについて以下図4および図5に基づいて説明する。
一般的に、人が両足5・5で立ったり、普通に歩いたりするときは、足5の裏を左右均等に使う。少なくとも、両足5・5で立つときには、両足5・5に均等に体重を掛けているはずである。このとき、バランスの良い立ち方、歩き方とは、図4に示すように、人間の足5の裏面の母趾球部5a(足の親指の付け根のふくらみ部分に相当)、小趾球部5b(足の小指の付け根のふくらみ部分に相当)、踵部5cにバランスよく体重がのった状態のことを指す。したがって、歩行時において安全靴100の靴底1に体重がかかる領域はその三箇所が主であり、つまり、当該部位が摩耗し易い箇所である。
【0035】
<3.2.アウトソール10の母趾球部領域70、小趾球部領域80、踵部領域95>
以上から、アウトソール10は、着用者の足5の裏面の母趾球部5a、小趾球部5b、踵部5cの各部位に対応して母趾球部領域70、小趾球部領域80、踵部領域95を有し、視認材50は、母趾球部領域70、小趾球部領域80、踵部領域95の少なくとも一箇所に対応する領域に配置されている(以下、母趾球部領域70の視認材50a、小趾球部領域80の視認材50b、踵部領域95の視認材50cとし、各視認材50a、50b、50cの総称として視認材50とする)。
このような構成にすることで、当該母趾球部領域70、小趾球部領域80、踵部領域95に視認材50を設けることにより、靴底1全体の摩耗に先立って摩耗の進行を着用者に知覚させることができるようになっている。
【0036】
なお、母趾球部領域70、小趾球部領域80、踵部領域95の少なくとも二箇所に対応する領域に配置されている視認材50が、アウトソール10の摩耗の進行に応じて、いずれか一つの領域から次の領域へ段階的に露出する構成にすることも可能である。例えば、視認材50を母趾球部領域70と、踵部領域95の二箇所に配置しておく。そして、その安全靴100を履き長期間着用することにより、人によっては母趾球部領域70よりも踵部領域95のほうが摩耗がし易く、踵部領域95の視認材50cが露出し、それでも履き続けることで、母趾球部領域70の視認材50aまでが露出することになる。ここまで摩耗することになると、耐滑性の機能も含め、もはや安全靴100としての機能は期待できないので直ぐにでも取り替える必要がある。このように靴底1の摩耗箇所は人それぞれであるので、複数箇所に視認材50を配置しておくことで、段階的に視認材50を露出させることができ、安全靴100としてギリギリのところまで使用することができる。
なお、以上三領域のうち、着用者の体重が最もかかる領域が踵部領域95であるため摩耗のし易さも踵部領域95のアウトソール10から摩耗して視認材50cが露出する場合が多いと思われるが、踵部領域95の視認材50cが露出したとしても、踵部領域95は直接接地面に触れる面積はそれほど大きくないので耐滑性に直接影響は少ない。しかしながら、続けて段階的に母趾球部領域70、小趾球部領域80のアウトソール10の視認材50a、50bまでが露出しているということは、アウトソール10のグリップ意匠11がないこととほぼ同義であり、いわば靴底1の下底10bがかなり摩耗した状態であり、かなり危険な状態になっていることを意味する。
【0037】
着用者の足5の母趾球5a、小趾球5b、踵部5cそれぞれが接する領域を意識して所定の硬度と摩耗度を有する視認材50を靴底1の当該各母趾球部領域70、小趾球部領域80、踵部領域95に設けることにより、母趾球部領域70、小趾球部領域80、踵部領域95それぞれに体重を分散させることができ、アウトソール10の剛性は確保され良好な耐滑性を得ることができる。その結果、アウトソール10の摩耗の進行を遅くし、安全靴の耐滑性は、アウトソール10の動摩擦係数を長期間にわたって滑りにくいと体感し得る下限値でありJIS規格で規定されている0.20以上に保ち、安全靴100の靴底1の耐滑性、耐摩耗性を従来に比べて長期間維持し、なおかつ強固に向上させることができる。
【0038】
<4.視認材の形状について>
次に、視認材50の形状、特に踵部領域95における視認材50cの形状について説明する。
安全靴100の後端部、つまり、踵部領域95は安全靴100の着用者の体重が最もかかる領域である。言い換えれば、安全靴100の靴底1全体の領域の中で着用者の荷重がかかる領域でもあり、本実施形態に係る視認材50は所定の硬度を有するがゆえに、特に靴底1の踵部領域95において、その視認材50cの形状に注意を払う必要がある。
したがって、踵部領域95における視認材50cの形状は、着用者が安全靴100を履いたときに、着用者の踵部5cに出来るだけ当たらないように(着用者に異物感を感じさせないように)断面視略L字状に形成し、図1ないし図3に示す如く、当該視認材50cのL字部分で着用者の踵部5cを包むような感じの形状であることが好ましい。したがって、略L字状の視認材50cが着用者の踵部5cを支え着用時の安定感を増し安全靴100の履き心地を向上させることができることに加え、靴底1の変形および部分的な摩耗を防止して耐滑性を良好に維持することができる。それに伴い、靴底1の構造において、ミッドソール20の後端部は踵部5cを含む構造に設定する。
また、踵部領域95における視認材50cの上底視の形状は、図5に示すように、アウトソール10の踵部領域95の外周に沿った円弧状であり、当該円弧に沿って少なくとも一つ以上の視認材50cが配置されている。
【0039】
さらに、このような靴底1の踵部領域95全体は、他の領域に比べて上下方向の厚みが厚いため、大部分の容積をしめるミッドソール20のクッション性は勿論問題はなく、他方、それを支えるアウトソール10の上下方向の厚みが薄いように感じ安定感が損なわれるような懸念が生じるが、アウトソール10はある程度の強度を有する硬質ウレタンであり、さらに、当該領域95に同等の硬度と摩耗度を有する視認材50cを一つ以上設けるので、従来に比べて、踵部領域95における安定感はしっかりとしたものとなる。
【0040】
<5.効果>
以上のような構成にすることにより、本発明に係る靴底および当該靴底1を用いた靴(本実施形態では安全靴)100は、以下のような効果を得ることができる。
普段はアウトソール10の下底10bは複数の発泡ポリウレタンからなる突起状のグリップ意匠11で、接地面に対してある程度の吸着力を保有し耐滑性をさらに強めているが、靴底1のグリップ意匠11がなくなったときやアウトソール10が摩耗してきたときに視認材50が露出する。アウトソール10が摩耗して視認材50が露出し始めたとしても、アウトソール10はある程度「硬質」であるので、直ぐには摩耗しきれない。それゆえアウトソール10が摩耗し始めたとしても、視認材50が露出する面積が除々に広がっていくような感じであり、視認材50が露出し始めたら、言い換えれば、視認材50が見え始めたら「耐滑性が落ち始めているので警戒してください」という警告メッセージとして着用者に段階的に安全靴100の品質が低下していることを知覚・認識できるように警告する効果を奏することができる。また、視認材50はアウトソール10と同等の摩耗度かつ硬度であるので直ぐには摩耗しない。直ぐには摩耗しないということはやはり耐滑性はまだあり滑りにくいということである。なおかつ、摩耗するスピードも同等で、安全靴100内に水等の液体が浸透する可能性は少ない。
なお、視認材50が完全に露出した場合は過度の摩耗状態であって、当該安全靴100の靴底1の動摩擦係数はJIS規格が定める耐滑性の規定値0.20未満ということであり、耐滑性能が劣化したということを判断することができる。そのような場合は転倒の危険性があって安全靴100を交換する必要があり、その情報を着用者に知覚させることができる。
以上より、安全靴100の耐滑性について、本実施形態に係る視認材50はあくまで「耐滑性に関する目安」であり、アウトソール10が摩耗し視認材50が露出し始めてきたら耐滑性が落ちてきているということを着用者に警告することができ、安全靴100の交換時期を目視で判断させることが可能となる。このように外観の変化を視覚的な手がかりとして視認材50を使用して、安全靴100の交換時期がきたことを着用者に知らせることができる。JIS規格に則った耐滑性を有する安全靴100を製品とすることができ、耐滑性能が落ちたときに交換するように第三者として促すことができる。
【0041】
また、接地面の形状により、歩行時の前後方向および左右方向への荷重の移動が生じても、母趾球部領域70、小趾球部領域80、踵部領域95の視認材50a、50b、50cが露出していない場合は非常に高い耐滑性能を発揮しており、水やオイルで濡れていてさらに接地面の形状により歩行時の前後方向および左右方向への体重の移動が生じても、耐滑性の高い靴底1が接地面と有効に接触し、高い耐滑性能を発揮することができるようになっている。
【0042】
なお、視認材50は上記効果を奏するための手段として機能すればよいので、安全靴100が摩耗していることを知らせること、かつ、安全靴100の交換時期を把握するための手段として機能しさえすれば、視認材50の厚さや形状は着用者の作業性や仕事内容に合わせて作られるのが好ましい。アウトソール10が摩耗して露出し始めてから完全に露出するまでにはある程度厚みは必要であるからである。つまり、視認材50はアウトソール10およびミッドソール20の両方に所定量くい込んだ状態になっており、アウトソールが所定量u摩耗したことによって視認材50の一表面50dが露出される構成になっている。したがって、当該視認材50は、アウトソール10の摩耗によって露出するスリップサインであり、アウトソール10が完全に磨り減ったとしても抜け落ちずに残存するようになっている。例えば、本実施形態に係る視認材50の上下方向の厚さは3mm程度である。
【0043】
また、靴底1の摩耗の仕方は、人それぞれに癖があり一様ではない。しかし、概ね上記3領域(母趾球部領域70、小趾球部領域80、踵部領域95)のいずれかが先行して摩耗する場合が多い。したがって、視認材50を上記3領域の全て若しくは一部に配置することにより、大半の着用者に適した告知視認材50付きの靴100を提供することができる。
【0044】
<6.他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0045】
上記実施形態では、主に安全靴100の母趾球部領域70、小趾球部領域80、踵部領域95に視認材視認材50a、50b、50cを設けていたが、安全靴100の摩耗箇所は着用者によって異なり、視認材50の積層箇所はこれら領域に限定されるものではない。人によっては、踵部領域95よりも母趾球部領域70や小趾球部領域80により多くの加重(体重)が架かる場合や、母趾球部領域70や小趾球部領域80よりも踵部領域95のほうにより多くの加重が架かる構造になっている場合もあり、靴底1のどの部分に靴の着用者の体重が最も架かり、アウトソール10が摩耗し易いかは人それぞれである。例えば、安全靴100の摩耗は、着用者の履き型や、着用者が履いて足を擦って歩く人など歩き方は様々である。したがって、本願発明における視認材50は、安全靴100の耐滑性に関してあくまで一つの警告のための手段であり目安の一つである。
なお、本実施形態では、視認材50を2箇所に配置したが、配置場所については摩耗の激しい場所や摩耗すると滑りやすくなる場所に配置しておくことが好ましい。いくつかの配置パターンを用意しておき、着用者が自分に合った安全靴100を選択して購入および使用することも可能である。
【0046】
また、他の実施形態において、上記実施形態にように、母趾球領域70や小趾球領域80に視認材50a、50bを設けている(図5参照)のではなく、両領域70、80の間、つまり、アウトソール10の下底10b(靴底1の裏面)の前方中央領域65から下方に突出し、前後方向に二つ並んでいる楕円形状のグリップ意匠13のうち前方部分の上下方向反対側、つまり、アウトソール10の上底10a領域において、凹み部分13aを形成し、当該凹み部分13aに視認材50eを積層させている。つまり、前方中央領域65の楕円形状のグリップ意匠13内に視認材50eを含んだ構成にすることも可能である。一方、アウトソール10の上底10aの踵部領域95では上面視扇形の凹み部分95aに視認材50cを積層させている。この実施形態に係る安全靴100を実際に着用している場合の視認材50c、50eの作用効果について図6および図7に基づいて説明する。図6は、他の実施形態に係る安全靴100において、視認材50c、50eを介在させた裏面図であり、図7は、図6のA−A要部断面図である。
【0047】
図6および図7において、アウトソール10の下底10bにおいて、グリップ意匠11として複数の三角形状が設けられているが、アウトソール10の下底10bの前方部分55、後方部分92のヒール部分12において、アウトソール10上底10aの凹み部分13a、95aが形成され、そこに少なくとも1つの視認材50c、50eが設けられている。
前方中央領域65は踵部領域95と異なり、当該中央部65のグリップ意匠13よりも当該中央部65両側に位置する母趾球領域70および小趾球領域80のグリップ意匠11、11に体重がかかり摩耗してくるので、当該中央部65のグリップ意匠13が摩耗してきたときは、両側70、80のグリップ意匠11、11は部分的にグリップ意匠11、11が凹凸がなくなるくらい摩耗し、アウトソール10の下底10bが露出するまで摩耗し靴底1がほぼ平坦になって安全靴100の耐滑効果はかなり減少してしまっている。そういったことを防ぎそのようなことになる前に、前方中央領域65のグリップ意匠13内に視認材50eを含み当該グリップ意匠13摩耗により視認材50eが露出するように設けている。
【0048】
以上のように、先ずは踵部領域95の視認材50cが露出するように設定し、かつ、踵部領域95とは違い体重がかかりにくい前方領域の中央部65に視認材50eを設けている。このような構成にすることにより、踵部領域95の視認材50cは体重が最もかかる領域であるので当該踵部領域95の視認材50cは早く露出してくるが、前方中央領域65の楕円形状のグリップ意匠13の凹み部分13aに設けた視認材50eが露出する頃には、靴底1の耐滑性は相当減っていると考えられる。このように、靴底1の耐滑性について二段階に分けて着用者に警告を行うことを目的として、前方中央領域65にグリップ意匠13の凹み部分13aに視認材50eを設けている。
【0049】
なお、踵部領域95と前方中央領域65のそれぞれの凹み部分95a、13aに視認材50e、50cを設けることについて、踵部領域95の視認材50cの露出でまずは注意を促し、前方領域65の視認材50eの露出で警告するといった段階的な視認材50の露出による警告を想定しているが、人によって靴100の履き方は様々で靴底1の減り方も人それぞれではあるが、上記とは逆の露出のパターンでもよく、つまり、先の踵部領域95の視認材50cが露出するのではなく前方領域65の視認材50eが露出し、それから踵部領域95の視認材50cが露出するパターンでもよい。したがって、複数回に分けて(本実施形態では2段階に分けて)靴底1の視認材50を露出させ着用者に各段階毎にそれぞれ複数回警告するという効果を奏することができる。
【0050】
また、靴底1から釘が踏み抜いてくるのを防止するために、図示していないが、靴底1にステンレス製の踏み抜き防止板を積層する構成にすることも可能である。
【0051】
また、上記実施形態では、二層底構造の安全靴について説明したが、一層底構造の安全靴や多層底の安全靴についても本発明に係る視認材を適用することができる。
例えば、一層底の一つの形態としては、成型金型を用いて射出成形、加圧成形によって単体として接地面との接触部を有するアウトソールを形成し、当該アウトソールをアッパーの底面に接着剤を用いて接着することで靴を形成するものがある。
【0052】
また、本願発明における視認材50は、アウトソール10の上底10aとミッドソール20の下底20bとの間に少なくとも一つ積層されている。視認材50は上下方向もしくは横方向に複数個積層する構成にすることも可能である。
【0053】
また、上記実施形態のように、ヒール部分12がない、ミッドソール20の上下方向の厚さが靴の長さ方向にわたってほぼ均等な靴にも本願発明を適用することは可能である。
【0054】
また、上記実施形態では、アッパー2に牛革素材を使用しているJIS規格に則った安全靴100について説明したが、アッパーに牛革素材ではなく、人工皮革素材やビニルレザークロス素材を使用しているJPSA規格に則ったプロテクティブスニーカーについても、上記実施形態に係る視認材を使用することができる。なおその場合、上記実施形態の段落で記載した「JIS規格に則った安全靴100」は「JPSA規格に則ったプロテクティブスニーカー100」と書き換えるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、極めて高い耐滑性能を発揮する靴の靴底に利用することができる。
また、導電性のあるラバー、布、糸をつま先かかと部に使用する事により、人体内に帯電した静電気を効率よく靴底から逃がし、スパークの発生を防止することを目的とした静電気帯電防止靴(静電靴)にも靴の性能を持つ静電靴に利用することができる。
なお、安全靴の着用を現場としては、一般機械・工作普通・重作業、建設・土木および解体作業、重量取扱作業、鋳造窯業作業、溶接・溶断作業、油・薬品取扱作業、プロテクティブスニーカーの着用の現場としては、清掃作業、ビルメンテナンス、運輸、食品加工、レジャー、園芸、DIYに利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 靴底
2 アッパー
5 足
5a 母趾球部
5b 小趾球部
5c 踵部
10 アウトソール
10a 上底
10b 下底
t 上下方向の厚み
u 視認材を露出させるアウトソールの所定摩耗量
11 グリップ意匠
12 ヒール
13 グリップ意匠
13a 凹み部分
20 ミッドソール
20b 下底
s 上下方向の厚み
30 中底
40 先芯
50、50a、50b、50c、50e 視認材
50d 一表面
55 前方部分
60 爪先部領域
65 前方中央領域
70 母趾球部領域
80 小趾球部領域
90 中途部領域
92 後方部分
95 踵部領域
95a 凹み部分
100 安全靴、プロテクティブスニーカー(靴)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面を有するアウトソールの上底に当該アウトソールよりも柔らかいクッション性を有するミッドソールを備えた耐滑性の靴底であって、
前記アウトソールの接地面には凹凸形状のグリップ意匠が複数突出しており、
前記アウトソールの上底と前記ミッドソールの下底との間に、前記アウトソールが所定量摩耗したことによって露出される合成樹脂製の視認材が少なくとも一つ積層され、
前記視認材を積層する前記アウトソールの上底には前記アウトソールの上底から見て前記アウトソールの下底よりも浅い凹み部分が形成されて、当該凹み部分に当該視認材が前記アウトソールおよび前記ミッドソールの双方にくい込んだ状態で積層されていることを特徴とする靴底。
【請求項2】
前記アウトソールは、着用者の足の裏面の踵部に対応して踵部領域を有し、
前記アウトソールの上底と前記ミッドソールの下底との間の前記踵部領域に対応する領域に、複数の前記視認材が積層され、
前記踵部領域における前記複数の視認材は、前記アウトソールの踵部外周に沿った円弧状であり、当該円弧に沿って前記複数の視認材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の靴底。
【請求項3】
前記踵部領域における前記複数の視認材のうち少なくとも1つは、着用者の踵部外周を包むような断面視略L字状であることを特徴とする請求項2に記載の靴底。
【請求項4】
前記視認材の摩耗度が前記アウトソールと同等に設定されることを特徴とする請求項1に記載の靴底。
【請求項5】
前記アウトソールの動摩擦係数は、0.20以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の靴底。
【請求項6】
前記アウトソールは、着用者の足の裏面の踵部に対応して踵部領域を有し、
前記アウトソールの上底と前記ミッドソールの下底との間の前記踵部領域に対応する領域に、前記視認材が少なくとも1つ積層され、
前記踵部領域における前記視認材のうち少なくとも1つは、着用者の踵部外周を包むような断面視略L字状であることを特徴とする請求項1に記載の靴底。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかの靴底を底面に有する靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78612(P2013−78612A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281000(P2012−281000)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2010−227970(P2010−227970)の分割
【原出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(395024285)アイトス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】