説明

靴底及び靴

【課題】 本発明は、トレーニング効果を高める靴底を提供する。
【解決手段】 靴底200は、底面形状が略半円球状になるように形成されたものである。このような不安定な底面とすることにより、靴底200は、前後左右方向にバランスをとることを着用者に強いることができる。このような靴底200において、底面の地面に接する部分の近傍に錘40を設けることにより、靴底200は、自発的に起き上がり、上面が水平になるように安定することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、甲被の履き口付近に錘部を設けることにより、履き口部の重量を履き口部付近以外の重量よりも大きくして、靴の重心を、その靴の装着者の距腿関節の位置と一致若しくはその近傍、又は距腿関節の鉛直下方若しくはその近傍に位置させた靴が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−101903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、トレーニング効果を高める靴底を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る靴底は、装着者の荷重を不安定な状態で支持する靴底本体と、靴底本体の中央部に配置され、靴底本体を構成する他の部材よりも比重の大きな材料で構成された錘とを有する。
【0006】
好適には、前記靴底本体は、装着者の土踏まずを下方から支持する土踏まず支持部材と、この土踏まず支持部材よりも爪先側に配置され、前記土踏まず支持部材よりも硬度の低い爪先支持部材と、前記土踏まず支持部材よりも踵側に配置され、前記土踏まず支持部材よりも硬度の低い踵支持部材とからなり、前記錘は、前記土踏まず支持部材の内部に配置されている。
【0007】
好適には、前記靴底本体は、接地状態が不安定な底面形状からなり、前記錘は、前記底面形状のうち、下方に最も突出した突出領域の上方に配置されている。
【0008】
また、本発明に係る靴は、装着者の荷重を不安定な状態で支持する靴底本体と、靴底本体の中央部に配置され、靴底本体を構成する他の部材よりも比重の大きな材料で構成された錘とを有する。
【0009】
好適には、前記靴底本体は、接地状態が不安定な底面形状を有し、前記錘の重さ及び配置は、前記底面形状の下方に最も突出した突出領域が非装着状態で略水平に接地するように、設定されてなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、着用者は、トレーニング効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】靴底1の左側面図である。
【図2】靴底1の底面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う、靴底1の正面から見た断面図である。
【図4】靴底1の(A)踵部側へ傾いている時、及び(B)爪先側へ傾いている時の状態を例示する図である。
【図5】変形例1における靴底2から錘40を取り出した状態を例示する図である。
【図6】変形例1における図5のA−A線に沿う、正面から見た断面図である。
【図7】変形例2における(A)半球型、(B)踵部なし型、及び(C)傾斜型の靴底200、300、及び400を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
[背景]
従来より、健康増進又はリハビリなどのため、あえて身体バランスを不安定にするように形成された靴底を備える履物(以下、「不安定履物」という。)が提案されている。着用者は、不安定履物を着用することにより、筋力又はバランス感覚などをトレーニングすることができる。しかし、不安定履物に慣れていない人又は極端に筋力若しくはバランス感覚を衰えさせた人などは、不安定履物を十分に使いこなすことができないばかりか、不安定履物を着用することにより、悪い姿勢を助長されたり、転倒するなど、かえって悪影響を被ってしまう恐れがあった。
そこで、本実施例では、誰でも、安全に無理なく、正しく不安定履物を使いこなせるようにし、不安定履物が本来有するトレーニング効果を高めることができる靴底を提案する。
【0013】
[実施形態]
図1は、靴底1の左側面図である。なお、本図では、左足用の靴底1を表しているが、左足用と右足用とは略左右対称であり、右足用においても、左足用と同様の構成を採用する。
図1に例示するように、靴底1は、土踏まず支持部10と、爪先支持部20と、踵支持部30とを有する。爪先支持部20及び踵支持部30は、土踏まず支持部10に接合、又は土踏まず支持部10と一体的に形成される。なお、爪先支持部20及び踵支持部30は、土踏まず支持部10よりもアスカーC硬度が低くなるように形成されている。
【0014】
土踏まず支持部10は、主として土踏まず周辺を下側から支持する。土踏まず支持部10の形状は、特に限定するものではなく、土踏まず周辺の下方において地面に接し、爪先支持部20及び踵支持部30を設けるスペースを有していればよい。本実施例では、土踏まず支持部10は、その下面が前端部12から接地部16にかけては下り傾斜を成し、接地部16から後端部14にかけては上り傾斜を成すように形成されている。また、接地部16は、略平坦になるように形成されている。
【0015】
爪先支持部20は、主として爪先周辺を下側から支持する。爪先支持部20の形状は、特に限定するものではなく、着用者の爪先周辺を支持できるように形成されたものであればよい。本実施例では、爪先支持部20は、その下面が前端部22から後端部24にかけて下側に凸な下り傾斜面となるように湾曲して形成されている。また、爪先支持部20の下面は、土踏まず支持部10の接地部16と滑らかに接続するように形成されている。このため、靴底1は、土踏まずから爪先側に体重を移動させる際に生じ得る衝撃を着用者が受けにくい構造となっている。
【0016】
踵支持部30は、主として踵周辺を下側から支持する。踵支持部30の形状は、特に限定するものではなく、着用者の踵周辺を支持できるように形成されたものであればよい。本実施例では、踵支持部30は、その下面が前端部32から後端部34にかけて下側に凸な下り傾斜面となるように湾曲して形成されている。また、踵支持部30の下面は、土踏まず支持部10の接地部16と滑らかに接続するように形成されている。このため、靴底1は、踵側から土踏まずに体重を移動させる際に生じ得る衝撃を着用者が受けにくい構造となっている。
【0017】
土踏まず支持部10、爪先支持部20、及び踵支持部30の素材は、特に限定するものではなく、靴底に使用するものとして適したものであればよい。例えば、土踏まず支持部10、爪先支持部20、及び踵支持部30の素材には、合成ゴム、天然ゴム、又は柔軟樹脂などを用いることができる。ただし、爪先支持部20及び踵支持部30は、土踏まず支持部10よりもアスカーC硬度を低くするため、土踏まず支持部10に用いた素材と配合や種類の異なるものを使用して形成される。或いは、爪先支持部20及び踵支持部30は、空気室を有することで、土踏まず支持部10よりもアスカーC硬度が低くなるように形成されてもよい。
【0018】
以上説明したような靴底1を備える履物は、着用者に「あたかも砂浜を素足で歩いているような感覚」(砂浜歩行感覚)を提供することができる。すなわち、着用者は、靴底1を備える履物を着用して歩行すると、踵から着地する際には、踵支持部30がクッションとなり、あたかも砂に着地したかのような感触得ることができるし、体重を踵側から爪先側に移動する際には、土踏まず支持部10が支点となり、あたかも土踏まずの下側に集まって硬くなった砂を乗り越えているかのような感触を得ることができるし、爪先で地面を蹴る際には、爪先支持部20がクッションとなり、あたかも砂を蹴っているかのような感触を得ることができる。従って、靴底1を備える履物の着用者は、砂浜を素足で歩くのと同様の効果を得ることができ、大腿筋、大臀筋、及び背筋などを鍛えながらも、膝関節及び股関節などの関節にかかる負担を軽減することができる。また、靴底1を備える履物の着用者は、土踏まず支持部10を支点として立つことにより、無意識に身体バランスを保とうとすることで、ミルキングアクション効果を誘発され、血行を良くすることができる。
【0019】
しかしながら、このような靴底1は、土踏まず支持部10を支点にして不安定であるため、着用者が靴底1に慣れていない人又は極端に筋力若しくはバランス感覚を衰えさせた人などである場合には、土踏まず支持部10を支点として立つことができず、図4に例示するように、踵部側又は爪先側に傾いた状態で立つことを誘発してしまう恐れがある。
【0020】
そこで、本実施例では、靴底1は、さらに錘40を有している。
錘40は、図1から図3までに例示するように、土踏まず支持部10の内部に設けられている。さらに、錘40は、土踏まず支持部10の接地部16近傍に設けられていることが好ましい。靴底1において、錘40が設けられる土踏まず支持部10の接地部16は、図2に例示するように、YからZまでの範囲に設けられればよい。前端部12から後端部14までの全長Xに対する、後端部14からの長さYの比率が50〜65%になり、後端部14からの長さZの比率が35〜45%になればよい。また、錘40の重心は、全長Xに対する、後端部14からの長さの比率が42〜47%になるところに、設けられるとよい。
このように設けられた錘40は、土踏まず支持部10の接地部16又は接地部16の近傍に靴底1の重心を移動させ、さらに荷重を鉛直下方に加える。これにより、錘40は、図4(A)に例示するように、靴底1が踵部側に傾いているときは、靴底1を前方に倒すように作用し、図4(B)に例示するように、靴底1が爪先側に傾いているときは、靴底1を後方に倒すように作用する。従って、靴底1は、起き上がりこぼしの要領で、土踏まず支持部10の接地部16を支点にして、土踏まず支持部10の接地部16が地面に対して水平に接するように、自発的に安定することができる。着用者は、この靴底1が自発的に安定する力を利用することで、土踏まず支持部10の接地部16を支点にして容易に歩行又は立つことができるようになる。また、着用者は、靴底1を備える履物を正しく使いこなせるようになることで、靴底1を備える履物が本来有するトレーニング効果(筋力の鍛練、関節への負担軽減、血行促進など)を高めることができる。
なお、靴底1が自発的に安定する力の強弱は、錘40の重さを変更することにより実現され、着用者の筋力又はバランス感覚などに応じて調節されることが好ましい。通常、錘40の重さは、50〜200gに設定される。また、錘40の素材は、特に限定するものではなく、土踏まず支持部10等を形成する素材よりも比重の重いものであればよい。例えば、錘40の素材は、金属、又は高比重樹脂などである。なかでも、鉛は、錘40を形成する素材として好適である。また、錘40の形状及び大きさは、特に限定するものではなく、土踏まず支持部10の内部に収まるものであればよい。例えば、錘40の形状は、略円柱型であってもよい。略円柱型の錘40を靴底1の長軸方向に対して垂直(すなわち、円柱の軸が装着者の左右方向に向いた状態)に設ける。これにより、装着者の歩行時における体重移動が、円柱型の錘40が回転軸方向に転がる動作と一致するため、足の踵部から爪先部への重心移動がスムーズになる。
【0021】
[変形例1]
図5は、変形例1における靴底2から錘40を取り出した状態を例示する図である。
図5に例示するように、靴底2は、土踏まず支持部10の接地部16に対する上面に、錘40を収容する錘穴160を有している。靴底2は、錘穴160に錘40を収容され、蓋150により錘穴160を閉じられることにより、靴底1と同様に、土踏まず支持部10の内部に錘40を有する状態となる。また、甲被などを有する履物である場合には、さらに蓋150の上にインソール170を被せるようにしてもよい。なお、靴底2の底面の構造は、靴底1と同様であり、土踏まず支持部10と、爪先支持部20と、踵支持部30とを有している。
【0022】
図6は、変形例1における図5のA−A線に沿う、正面から見た断面図である。
図6に例示するように、靴底2は、土踏まず支持部10の内部に錘40を有し、蓋150により錘40を収容する錘穴160を閉じられている。
【0023】
以上のような構造を有することにより、靴底2は、着用者の筋力又はバランス感覚などに応じて錘40を任意重さに取り換えることが容易になる。また、靴底2は、錘穴160に収容される錘40の重さを徐々に軽くしてくことにより、着用者の筋力又はバランス感覚などのトレーニングの進展に合わせ、徐々に不安定さを増していくことができる。これにより、着用者は、徐々に不安定さによる負荷を高めながら、筋力又はバランス感覚などをトレーニングしていくことができる。
【0024】
[変形例2]
上記実施例における靴底1の形状は、土踏まず支持部10の接地部16を支点にして、不安定になるものであったが、靴底の形状は、これに限定されるものではなく、あえて身体バランスを不安定にするように形成されたものであればよい。以下、図7を用いて、このような靴底の例について説明する。
図7は、変形例2における(A)半球型、(B)踵部なし型、及び(C)傾斜型の靴底200、300、及び400を例示する図である。
図7(A)に例示するように、靴底200は、底面が略半円球状になるように形成されたものである。このような底面とすることにより、靴底200は、前後左右方向にバランスをとることを着用者に強いることができる。このような靴底200において、底面の地面に接する部分の近傍に錘40を設けることにより、靴底200は、自発的に起き上がり、上面が地面に対して水平になるように安定することができるようになる。
【0025】
図7(B)に例示するように、靴底300は、踵部分の肉厚が爪先部分及び土踏まず部分と比べて薄くなるように形成されたものである。このような底面とすることにより、靴底300は、爪先立ちすることを着用者に強いることができる。このような靴底300において、底面の地面に接する部分の近傍に錘40を設けることにより、靴底200は、非装着時において、自発的に起き上がり、上面が地面に対して水平になるように安定することができるようになる。このように、非装着時において、靴底の上面が水平(すなわち、靴底の底面のうち、最突出領域が略水平に接地する状態)となることによって、装着者に、靴のバランスがとれた状態を見せることができ、装着時のバランス状態をイメージさせることができる。また、販売展示にも資する。
【0026】
図7(C)に例示するように、靴底400は、その上面が爪先部分から踵部分にかけて下り傾斜になるように形成されたものである。このような上面とすることにより、靴底400は、アキレス腱及び腓腹筋を伸長させ、歩行時又は直立時に正しい姿勢を保たせることを着用者に強いることができる。このような靴底400において、底面の爪先部分の近傍に錘40を設けることにより、靴底400は、後方への傾きに対して、底面が地面に接するように安定することができるようになる。
【0027】
以上説明したように、本変形例における靴底200、300、及び400を備えた履物を着用した場合においても、着用者は、安全に無理なく、筋力又はバランス感覚などをトレーニングしていくことができ、トレーニング効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 靴底
2 靴底(変形例1)
10 土踏まず支持部
12 前端部
14 後端部
16 接地部
18 爪先側傾斜下面
19 踵側傾斜下面
20 爪先支持部
22 前端部
24 後端部
30 踵支持部
32 前端部
34 後端部
40 錘
150 蓋
160 錘穴
170 インソール
200 半球型 靴底
300 踵なし型 靴底
400 傾斜型 靴底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の荷重を不安定な状態で支持する靴底本体と、
前記靴底本体の中央部に配置され、前記靴底本体を構成する他の部材よりも比重の大きな材料で構成された錘と
を有する靴底。
【請求項2】
前記靴底本体は、装着者の土踏まずを下方から支持する土踏まず支持部材と、この土踏まず支持部材よりも爪先側に配置され、前記土踏まず支持部材よりも硬度の低い爪先支持部材と、前記土踏まず支持部材よりも踵側に配置され、前記土踏まず支持部材よりも硬度の低い踵支持部材とからなり、
前記錘は、前記土踏まず支持部材の内部に配置されている
請求項1に記載の靴底。
【請求項3】
前記靴底本体は、接地状態が不安定な底面形状を有し、
前記錘は、前記底面形状のうち、下方に最も突出した領域の上方に配置されている
請求項1に記載の靴底。
【請求項4】
装着者の荷重を不安定な状態で支持する靴底本体と、
前記靴底本体の中央部に配置され、前記靴底本体を構成する他の部材よりも比重の大きな材料で構成された錘と
を有する靴。
【請求項5】
前記靴底本体は、接地状態が不安定な底面形状を有し、
前記錘の重さ及び配置は、前記底面形状の下方に最も突出した突出領域が非装着状態で略水平に接地するように、設定されてなる
請求項4に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−87717(P2011−87717A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242809(P2009−242809)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(304053669)有限会社 のさか (6)
【Fターム(参考)】