靴底射出成形方法およびその装置ならびにそれらにより製造された履物
【課題】 格別な構造の射出装置を用いることなく、短時間の工程にて、挿入物の設置および大きさに拘らず円滑な射出物の射出と製品成形容積以上の量の射出物の充填が可能な靴底射出成形方法およびその装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 アッパ4下部あるいはラストモールド3と複数の金型1、2、3を組み合わせて構成される射出空間7内に予め挿入物9を配置した後に前記射出空間7内に射出物8を射出する射出成形方法において、前記射出空間7を脱型時の製品成形容積より大きくまたは小さくして射出した後、脱型までに前記射出空間7を変化させて最終的に製品成形容積を得ることにより、比較的大きな容積の挿入物9を設置しても、該挿入物9に邪魔されることなくその周囲に充分に射出物8が回り込み、高圧を要することなく円滑な射出が可能となる。しかも、脱型時の最終的な製品成形容積を得るまでに射出空間7を変化させて自由な成形制御が可能となる。
【解決手段】 アッパ4下部あるいはラストモールド3と複数の金型1、2、3を組み合わせて構成される射出空間7内に予め挿入物9を配置した後に前記射出空間7内に射出物8を射出する射出成形方法において、前記射出空間7を脱型時の製品成形容積より大きくまたは小さくして射出した後、脱型までに前記射出空間7を変化させて最終的に製品成形容積を得ることにより、比較的大きな容積の挿入物9を設置しても、該挿入物9に邪魔されることなくその周囲に充分に射出物8が回り込み、高圧を要することなく円滑な射出が可能となる。しかも、脱型時の最終的な製品成形容積を得るまでに射出空間7を変化させて自由な成形制御が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッパ下部あるいはラストモールドと複数の金型を組み合わせて構成される射出空間内に予め挿入物を配置した後に前記射出空間内に射出物を射出する射出成形方法およびその装置ならびにそれらにより製造された履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、靴底を成形するには、足型であるラストモールドに装着されたアッパ(胛被)の下部にて、金型を組み合わせて構成される射出空間内に射出物を射出した後、これを硬化させて行っている。路面からの足への衝撃を緩和する特性確保等の観点から、通常、靴底構成物内には該靴底構成物と別素材の挿入物等が介在されることもある。そのような例として、下記特許文献1や2に開示されたような射出成形方法によって製造されるものが提案された。
【特許文献1】実公平7−37522号公報(図4および段落0017ならびに0018参照)
【特許文献2】特開平2−224602号公報(第1図および第2図ならびに第2頁第3欄参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図20により、前記特許文献1に開示された靴底を説明する。胛被101と中底102とが縫着された袋状体が嵌挿されたラストモールド112と、その下に配置されたボトムモールド113と、その周囲のサイドモールド114とにより形成されるキャビティ115内に、ゲート116からポリウレタンや熱可塑性ゴム等の本底材料が射出される。衝撃吸収部材104が予めボトムモールド113上に載置された状態でキャビティ115内に設置される。衝撃吸収部材104の上部材105と下部材106とこれらを上下に結ぶ連接部(図示の紙面を外れた位置にある)との間の空間108の開口方向は、ゲート116による射出方向と一致する。
【0004】
図21により、前記特許文献2に開示された射出成形靴の成形方法を説明する。胛被を嵌装したラストモールド201とサイドモールド202およびボトムモールド203との型組みにより、図21(A)に示すように、ボトムモールド203の外周の空間部208に第1底材が射出充填され、次いで、図21(B)に示すように、ボトムモールド203が下げられ、本底に相当する空間部209が形成される。この空間部209に第2底材が射出され、該第2底材の発泡により空間部209が充填されて、胛被の中底210面に一体成形されてなる射出成形靴を得ることが出来る。
【0005】
しかしながら、このような従来の靴底あるいはその射出成形方法にあって、前記第1従来例のものでは、衝撃吸収部材104のような挿入物を予め射出空間内に設置する場合、定められた容積の射出空間内にあって、目一杯の進行方向への挿入は、挿入物自身が射出時の射出物の流れを阻害することは避けられない。そのため、射出物を射出空間内に円滑に充填するために、ゲート116による射出方向と一致させた空間108を衝撃吸収部材104に開口させる必要があった。このため、衝撃吸収部材104が複雑な構造となった。その上、定められた容積の射出空間内においては挿入物の大きさには限界があり、あまり大きな挿入物の設置は不可能であった。特に、挿入物の厚みが靴底の厚みとほぼ等しい靴底を得るようなことは到底不可能であった。
【0006】
前記第2従来例のものでは、ボトムモールド203の外周の空間部208に第1底材が射出充填され、次いで、ボトムモールド203が下げられて、本底に相当する空間部209が形成され、この空間部209に第2底材が射出され靴底が成形されるので、挿入物こそ設置されないが、第2底材を構成する空間部209への射出物が比較的円滑に射出されることになった。しかしながら、この成形方法では、空間部208への第1底材の射出充填後に、該第1底材の硬化を待たなければならず、作業時間の増大は避けられないものであった。さらに、このような従来のものでは、定められた容積の射出空間内への射出物の充填量には限界があり、射出空間の容積以上の射出物の充填を行おうとすれば、かなりの高圧にて射出物を供給する必要があり、射出装置の肥大化を招いた。
【0007】
そこで本発明は、前記従来の靴底射出成形方法の諸課題を解決して、高射出圧機能を備える格別な構造の射出装置を用いることなく、短時間の工程にて、挿入物の設置に拘らず円滑な射出物の射出と製品成形容積以上の量の射出物の充填が可能な靴底射出成形方法およびその装置ならびにそれらにより製造された履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明は、アッパ下部あるいはラストモールドと複数の金型を組み合わせて構成される射出空間内に予め挿入物を配置した後に前記射出空間内に射出物を射出する射出成形方法において、前記射出空間を脱型時の製品成形容積より大きくまたは小さくして射出した後、脱型までに前記射出空間を変化させて最終的に製品成形容積を得ることを特徴とする。また本発明は、前記射出空間を変化させるために、サイドモールドを拡縮するかサイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを移動させることを特徴とする。また本発明は、前記射出空間内に配置される挿入物を、射出方向からほぼ直線的に配置するとともに最終成形品の靴底の縦横両方あるいは一方の最大で最大幅を占めさせることを特徴とする。また本発明は、前記射出空間内に配置される挿入物に対して、関係式(挿入物の流動温度≦射出物の金型内最高温度、あるいは挿入物の被覆物の流動温度≦射出物の金型内最高温度≦挿入物の流動温度)の成立する挿入物の自己溶融あるいは挿入物を被覆する被覆物の溶融により、挿入物が射出物に接着されることを特徴とする。また本発明は、前記最終成形品の靴底において、靴底全体または踵部における挿入物と射出物との体積関係が、挿入物≧射出物の関係が成立することを特徴とする。また本発明は、前記射出空間を変化させるために、サイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させることを特徴とする。また本発明は、前記射出成形方法に用いられる靴底射出成形装置であって、アッパ下部あるいはラストモールドを上部にて把持し射出物供給管に連通する射出口を備えたサイドモールドと、該サイドモールド内に適合する上下動自在なボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドと、前記サイドモールドを拡縮するアクチュエータと前記ボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする。また本発明は、前記サイドモールドが複数に分割構成されたことを特徴とする。また本発明は、前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された靴底およびその靴底を備えた履物を構成要件とする。また本発明は、前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、射出物の射出方向の始点から終点までの射出物の平均密度に対して、各部の密度にばらつきがあることを特徴とする。また本発明は、前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、JIST8101:1997年の踵部衝撃吸収性測定方法による測定値が29J以上であることを特徴とする靴底およびその靴底を備えた履物を構成要件とするもので、これらを課題解決のための手段とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アッパ下部あるいはラストモールドと複数の金型を組み合わせて構成される射出空間内に予め挿入物を配置した後に前記射出空間内に射出物を射出する射出成形方法において、前記射出空間を脱型時の製品成形容積より大きくまたは小さくして射出した後、脱型までに前記射出空間を変化させて最終的に製品成形容積を得ることにより、射出物の射出時に射出空間を大きくした場合は、比較的大きな容積の挿入物(射出物の容積≦挿入物の容積の関係が成立するような挿入物)を設置しても、該挿入物に邪魔されることなくその周囲に充分に射出物が回り込み、高圧を要することなく円滑な射出が可能となる。しかも、脱型時の最終的な製品成形容積を得るまでに射出空間を変化させて自由な成形制御が可能となる。その上、製品成形容積以上の射出物の量の射出物の充填が可能となる。また、射出物の射出時の射出空間を脱型時よりも小さくした場合は、発泡射出物の発泡度合を適切に促進制御することが可能となる。
【0010】
また、前記射出空間を変化させるために、サイドモールドを拡縮するかサイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを移動させる場合は、サイドモールドおよびはボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドにより形成される射出空間を、サイドモールドにより前後、左右が、ボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドにより上下およびサイドモードの拡縮に追従する等して前後、左右に自在にその容積を調整することが可能となる。さらに、前記射出空間を変化させるために、サイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させる場合は、ボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドの上下という単純な動作によって、確実に射出空間容積の変化を制御することが可能となる上、靴底の幅一杯に挿入物が設置される場合であっても、ボトムモールドの下降あるいはアッパ下部もしくはラストモールドの上昇により上下方向に広げられた比較的大きな射出空間を通じて充分に射出物を充填することができる。そして、最終的な脱型時の製品成形容積を得る際にボトムモールドの上昇により射出物が、および上昇の程度によっては挿入物が効果的に圧縮されるので、射出空間内に緻密に射出物および挿入物が満たされることになる。
【0011】
さらに、前記射出空間内に配置される挿入物を、射出方向からほぼ直線的に配置するとともに最終成形品の靴底の縦横両方あるいは一方の最大で最大幅を占めさせる場合は、最終成形品の靴底に占める挿入物が射出方向に一直線上でかつ縦横両方あるいは一方の最大幅一杯に配置されるものであっても、これらの挿入物に阻害されることなく、射出成形時には射出空間容積の変化を制御することで円滑に射出物を充填することができ、充分に大きな容積比率の挿入物を配置した射出成形物から構成される靴底成形物を得ることができる。さらにまた、前記射出空間内に配置される挿入物に対して、関係式(挿入物の流動温度≦射出物の金型内最高温度、あるいは挿入物の被覆物の流動温度≦射出物の金型内最高温度≦挿入物の流動温度)の成立する挿入物の自己溶融あるいは挿入物を被覆する被覆物の溶融により、挿入物が射出物に接着される場合は、挿入物自体の表面あるいは挿入物を被覆する被覆物を射出物の金型内最高温度より低く設定して、これらを溶融させて接着剤として機能させることで、射出物内での挿入物の確実な固定がなされ、盲動が完全に防止される。
【0012】
また、前記最終成形品の靴底において、靴底全体または踵部における挿入物と射出物との体積関係が、挿入物≧射出物の関係が成立する場合は、靴底全体または踵部における挿入物の体積比率が半分を超えるような大きな容積の挿入物を組み込んでも、射出成形時には射出空間容積の変化を制御することで円滑に射出物を充填できるので、従来のもののように、大きな容積の挿入物に阻害されて円滑な射出物の流れが阻害されて巣等を発生することがない。さらに、前記射出成形方法に用いられる靴底射出成形装置であって、アッパ下部を上部にて把持し射出物供給管に連通する射出口を備えたサイドモールドと、該サイドモールド内に適合する上下動自在なボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドと、前記サイドモールドを拡縮するアクチュエータと前記ボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させるアクチュエータとを備えた装置により、膨張室等を備えたサイドモールドの拡縮あるいはボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドの上下動という簡素な構造の装置のみによって、格別な構造の射出装置を用いることなく、低圧の射出圧にても上述した本発明の独特の靴底の成形方法を実現できる。
【0013】
さらにまた、前記サイドモールドが複数に分割構成された場合は、分割面に射出口を形成することができて、硬化後の射出口内の射出物の排除・清掃が簡便となる他、製品の離型も容易となる。しかも、ボトムモールドを受け入れる際に、複数のサイドモールドにおける分割面の間隙を調整することで、拡縮時の分割サイドモールドの分割面の隙間の増大には、パッキングやグリス等で対応して、サイドモールドの内周面とボトムモールドの外周面との上下摺動面間の精度を適正に微調整することも可能となる上、射出空間の前後、左右の容積調整が容易となる。また、前記靴底射出成形方法あるいは靴底射出成形装置により製造された靴底およびその靴底を備えた靴は、挿入物の靴底に対する容積を格段にアップすることができて、従来の靴には見られないような挿入物の特性が引き出せる。その際の挿入物を予め別途工程で成形しておくことで、射出時の影響を受けることが少なく、靴底特性の設計上の柔軟性が増大する。
【0014】
さらに、前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、射出物の射出方向の始点から終点までの射出物の平均密度に対して、各部分の密度にばらつきがある場合は、従来のもののような射出物の充填圧が高くせざるを得ないことによる平均密度のばらつきがなく、靴底各部の弾性率に差がでないような不都合がなく、比較的低い射出物の充填圧により特に射出部に近い踵部等に低い密度の射出成形部を得ることができる。さらにまた、前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、JIST8101:1997年の踵部衝撃吸収性測定方法による測定値が29J以上である場合は、踵部等の必要部位において特性の大部分を占める挿入物を、好適な衝撃吸収性の測定値を有するものとして、靴底の多くの部分を占有させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1から図4は本発明の靴底射出成形方法およびその装置の1つの実施例を示すもので、図1は射出時の射出成形装置の全体側面一部断面図、図2は製品成形容積を得るためにボトムモールドを上昇させた状態の射出成形装置の全体側面一部断面図、図3は各モールドの分解図、図4はサイドモールドおよびボトムモールドの各平面および側面図、図5および図6は挿入物の挿入例の断面図、図7および図8はその他の挿入物の斜視図、図9は被覆された挿入物の一部截断の斜視図、図10〜図16は従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図、図17は本発明の射出成形方法により成形された靴底例の断面写真図である。本発明の基本的な構成は、図1に示すように、アッパ4の下部と複数の金型1、2を組み合わせて構成される射出空間7内に予め挿入物9A、9Bを配置した後に前記射出空間7内に射出物8を射出する射出成形方法において、前記射出空間7を脱型時の製品成形容積より大きくまたは小さくして射出した後、脱型までに前記射出空間7を変化させて最終的に製品成形容積を得ることを特徴とするものである。
【0016】
各金型(モールド)は、図3のように分解される。足型を構成するラストモールド3に装着されてアッパ(胛被)が設置され、その下部のアッパ周囲にサイドモールド1が設置される。サイドモールド1の内側には射出空間7が形成される空間が形成され、該空間に適合してボトムモールド2が上下動自在に挿入される。ボトムモールド2の上面には靴底の裏表面となるアウトソール10が敷設される。射出空間7内には予め挿入物9A、9Bが置かれ、サイドモールド1の上方のアッパ4の下部には中底30がセットされる。
【0017】
図4(A)にて理解されるように、本実施例のサイドモールド1は、略中央部において2つの部分1A、1Bに分割されて構成されている。この分割面上に、射出物供給管6からの射出空間7内への射出物の供給を行う射出口5が形成される。符号12、13はサイドモールド1の上方への移動を拘束する第1および第2拘束腕を示す。図4(B)は前記分割面でのサイドモールド1の断面図であり、分割面に形成された射出口5が示されている。硬化後の射出口5内の射出物の排除・清掃が簡便となる他、製品の離型も容易となる。また、図4(C)に示すボトムモールド2を受け入れる際に、複数のサイドモールド1A、1Bにおける分割面の間隙を調整することで、拡縮時の分割サイドモールドの分割面の隙間の増大には、パッキングやグリス等で対応して、サイドモールド1A、1Bの内周面とボトムモールド2の外周面との上下摺動面間の精度を適正に微調整することも可能となる。図4(D)はボトムモールド2の断面図である。また、サイドモールドにより射出空間の容積を調整するには、例えば、膨張室を射出空間の外側に設置し、射出空間に面して相対スライドする重合内壁とを備え、前記膨張室内への流体の出し入れによりアクチュエータを構成する等して、該アクチュエータによりサイドモールド内の射出空間を増減すること等が考えられる。
【0018】
図1に戻り、一体型あるいは分割サイドモールド1A、1Bを合体させて構成したサイドモールド1の下面は、台座11の4隅等に植立して設けた第1および第2支持脚14、15に載置されて支持される。サイドモールド1の上面は、台座11の両端部にヒンジ23、24により軸支された第1および第2拘束腕12、13の上端部が係止される。これらにより、サイドモールド1の上下位置は確実に拘束・規制される。サイドモールド1の内側には射出空間7が形成される空間が形成され、該空間に適合してボトムモールド2が上下動自在に挿入される。ボトムモールド2の下面と台座11との間には油圧アクチュエータを構成する第1および第2ジャッキ16、18が配設される。各ジャッキ16、18からはそれぞれ第1および第2ピストン17、19が上下進退自在に延びる。各ジャッキ16、18の上面には第1および第2ストローク計21、22が設置されて、適宜の目盛りが付された各ピストン17、19の進退ストロークを測定することができる。
【0019】
サイドモールド1には、射出物供給管6からの射出物8を供給する射出口5が形成される。サイドモールド1が分割型なら、好適には分割面にそれぞれ形成された断面半月形の通路を合わせて円形断面の射出口5とされる。分割面での射出口の形成により、硬化後の射出口内の射出物の排除・清掃が簡便となる他、製品の離型も容易となる。射出口5は複数個形成されてもよい。その場合には、射出口の位置により、挿入物が挿入された靴底が、成形容積を広くした状態から変化させて挿入物を挿入したのかどうか確認できる。前記射出物供給管6には射出物8の流量を計測できる流量計20が設置され、計測結果のフィードバックにより、射出空間7への射出物8の供給量を制御することができる。
【0020】
射出空間7内に射出物8を射出して靴底の成形を開始するには、各ジャッキ16、18のピストン17、19を後退させてボトムモールド2を下降させておき、充分に広い射出空間7を確保しておく。このとき、ボトムモールド2の上面には靴底の裏表面となるアウトソール10を敷設するとともに、射出空間7内には、靴底の衝撃吸収特性を決定づける挿入物9A、9Bが適切な位置に置かれる。さらに射出空間7内の上部には中底30が置かれる。この状態において、射出物供給管6から液状の射出物8を射出口5から供給する。射出口5を出た射出物8は上下方向に充分に広い射出空間7内を矢印のように挿入物9A、9Bの上下に回り込んで円滑に流れて行く。したがって、本発明では、従来不可能であった挿入物9の容積が50%を超える(射出物8の容積に対して)ような靴底の成形が容易に行えることとなった。
【0021】
図17は本発明の射出成形方法により成形された靴底例の断面写真図である。靴底において挿入物9(写真の白い部分)の容積がかなりの部分を占めていることが理解される。なお、挿入物の中間位置の上部に形成された溝に射出物を侵入させ、この溝に侵入した射出物によって、挿入物が前後に移動するのを防止するように構成してもよい。このような移動防止構造が、挿入物の厚みが大きい場合でも、本発明によれば容易に成形できる。
【0022】
靴底の衝撃吸収特性および履き心地性能を決定づける挿入物9としては、種々の材質のものが採用され得る。例えば、EVA、ポリウレタン(ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン)、塩化ビニール樹脂、ゴム、木材、TPU、パルプ、金属類、セラミック類、各種プラスチック、オレフィン系樹脂、FRP等の無発泡体およびその(前記)発泡体等である。さらに、織布、不織布、革類、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等でもよい。磁石や鉱石等を配置したものや全体的な挿入物でもよい。射出物に影響を与えないセル状で防御した電子デバイスや食品およびフェ等の避難用具等やエアーバッグ、エアーバッグに物体を挿入したものやセルに水や油で満たしたものでもよい。挿入物に関しては導電性があってもなくてもよい。
【0023】
挿入物の形状としては、図5および図6のそれぞれの1〜10に示すように、サイドモールドとボトムモールドとラストモールドで支配された成形空間に入り成形制御が可能なものなら何でもよい。異なった材質の複数のもの、複数の積層体から構成されるもの、異なった材質のものを連結したもの等である。また、挿入物は完成製品において射出物内に埋没されていても、一部靴底から露出していてもよい。挿入物は完成製品の中底より部分的に露出(図7の1)させたり、はみ出させてもよい。また図7の2、3および4のように、射出物が侵入する空洞や導電材等の異物を挿入することもできる。
【0024】
挿入物9は、図8に示すように、最終成形品の靴底の縦横両方あるいは一方の最大で最大幅を占めさせるように構成されてもよい。本発明では、これらの挿入物が靴底の幅一杯に配置されていても、例えば図8の2のように、挿入物の側面の突起により射出物の流れが阻害されるような配置であっても、射出成形時には射出空間容積の変化を制御することができるので、円滑に射出物を充填することができ、充分に大きな容積比率の挿入物を配置した射出成形物から構成される靴底成形物を得ることができる。このように、前記最終成形品の靴底において、靴底全体または踵部における挿入物と射出物との体積関係が、挿入物≧射出物の関係が成立するような大きな挿入物が配置される場合、すなわち、靴底全体または踵部における挿入物の体積比率が半分を超えるような大きな容積の挿入物を組み込んでも、射出成形時には射出空間容積の変化を制御することで円滑に射出物を充填できるので、従来のもののように、大きな容積の挿入物に阻害されて円滑な射出物の流れが阻害されて巣等を発生することがない。
【0025】
また、図9に示すように、前記射出空間内に配置される挿入物に対して、関係式(挿入物の流動温度≦射出物の金型内最高温度、あるいは挿入物の被覆物の流動温度≦射出物の金型内最高温度≦挿入物の流動温度)の成立する挿入物の自己溶融あるいは挿入物を被覆する被覆物の溶融により、挿入物が射出物に接着される場合は、挿入物自体の表面あるいは挿入物を被覆する被覆物を射出物の金型内最高温度より低く設定して、これらを溶融させて接着剤として機能させることで、射出物内での挿入物の確実な固定が行え、盲動が完全に防止することができる。
【0026】
射出物8としては、EVA、ポリウレタン(ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン)、塩化ビニール樹脂、ゴム、TPU、パルプ、各種エラストマーおよびエラストマー、オレフィン系樹脂等の無発泡体およびその発泡体等である。また、前記射出物をバインダー成分として粒状の混合物を添加させたものを使用してもよい。さらに、靴底は、アウトソール10を設けた2層底(アウトソール10と挿入物9とミッドソールを構成する射出物8)でも、アウトソール10を排した1層底(挿入物9とミッドソールを構成する射出物8)でもよい。多色多層成形でどの位置に挿入物を配置しても多層構成による各層に挿入物を配置したものの層を複数設けてもよい。
【0027】
射出空間7内への射出物の射出が完了すると、図2の矢印に示すように、各ジャッキ16、18のピストン17、19を進行させてボトムモールド2を上昇させる。その上昇制御は、図示省略の制御手段により、ピストン17、19の進行ストロークを計測するストローク計21、22の計測値に基づいてその移動量が決定される。ボトムモールド2が所定の移動量を上昇することにより、あるいはサイドモールド1を縮小させることにより、冷却して硬化しつつある射出物8および挿入物9A、9Bは圧縮されて、所定の製品成形容積にて硬化する。
【0028】
ストローク計21、22による計測値に基づくボトムモールド2の上昇移動量を適宜設定すれば、靴底の圧縮率を調整して靴底の特性を適宜設定することが可能となる。逆に、また、射出物の射出時の射出空間を脱型時よりも小さくした場合、つまり、製品成形容積よりも小さな射出空間にて射出した後、射出物が硬化しつつある状態のとき、ボトムモールド2を下降させて、あるいはサイドモールド1を拡大させて、射出空間を増大させることで、発泡射出物の発泡度合を適切に促進制御することが可能となる。
【0029】
図18は本発明による前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、射出物の射出方向の始点から終点までの射出物の平均密度に対して、各部分の密度に所定値以上のばらつきを生じさせることができることを示した従来のものとの比較実験結果表図である。挿入物がない従来のものNo1、2では、各部では比較的ばらつきがみられるが、挿入物がある従来の方法によるNo6、7、8では、挿入物があるため充分に射出物をいき渡らせるには、巣ができたり、射出物の充填圧を高くせざるを得ず、平均密度のばらつきがないのに対して、挿入物が、踏付部、踏まず部、踵部に挿入された本発明の方法で製造したNo3、4、5のものでは、射出物があるにも拘らず、低い射出物の充填圧でも巣の発生もなく充分に各部に射出物がいき渡り、全体の平均密度0.41〜0.42に対して、0.37〜0.49のばらつきが見られる。つまり、全体の平均密度に対して所定値±10〜20%程度のばらつきが見られた。これにより、発泡性射出物や密度分布のある泡状射出物において、射出物の量も最小で成形可能である。成形空間を変形させずに、射出成形する挿入物のない通常の靴底の密度分布と同様に、各部分で必要な密度にばらつきがある靴および靴底の成形が可能となる。
【0030】
図19は本発明による前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、JIST8101:1997年の踵部衝撃吸収性測定方法による測定値が29J以上であるように構成されることを示す従来のものとの比較実験結果表図である。本発明の方法によれば、靴底の全容積の50%を超える挿入物を挿入することができるので、挿入物の固有の衝撃吸収特性値に全体の衝撃吸収性が支配されること(または、測定部位全体の体積あたりの衝撃吸収性が挿入物の固有の衝撃吸収性に支配されること)になる。踵部衝撃吸収性の測定値結果の要因は、測定系に設置される測定物の衝撃吸収物の量と衝撃吸収性に依存される。本実験においては、アウトソールとしてゴム製7mm、挿入物としてEVA製27mm、発泡層硬度64(アスカ−C硬度計)、中底として不織布1.5mmで、挿入物は最終成形高さの最大で成形した。射出物は、ポリエステルポリウレタンを使用し、従来の比較例としては同様の射出物で行った(挿入物なし)。
【0031】
測定部位において多量の挿入物を挿入された靴底は、アウトソールや中底の衝撃吸収性に支配されず、大多数を占める挿入物の踵部衝撃吸収性に支配される。これについては、踵部衝撃吸収性の測定時における力点とロードセルを結ぶ測定系の間にある物質について考慮すれば分かる。アウトソール、挿入物、中底の3つの配置が縦方向にあるなら、体積関係において、挿入物>>アウトソール+中底であるなら、挿入物の衝撃吸収性特性によって、全体の衝撃吸収性特性は支配される。もしくは、挿入物>アウトソール+中底。本発明は射出経路を妨げるように踵部やその他に挿入物を最大値から適選配置が可能であるので、従来は不可能であった射出成形方法における挿入物の固有の衝撃吸収性に依存する靴の製造が可能となった。
【0032】
前述のように、射出空間7内への射出物8の射出に際して、挿入物9を固定せずに設置した場合には、図1に示すように、ボトムモールド2とアッパ4が装着されたラストモールド3によって挿入物9が固定あるいは挿入されただけの状態となる。この状態で、例えば発泡性の射出物8を射出しても、直接ぶつかる位置から射出を行った後、ボトムモールド等を下降させて成形容積を増大させると、発泡した射出物8に押されて挿入物9は移動する。これは、挿入物9の固定物等がなくても挿入物9を射出物8で挟み込む(浮上させる)時に有効な方法となる。また、射出物8を射出後にボトムモールド2を下げて成形容積を変化させるタイミングによって、挿入物9は射出物で挟まれるように成形されたりするが、射出物8を動力として直接ぶつかる位置から射出を行った後、成形容積を増大させれば、挿入物は前方(爪先)に移動するときに有効な方法となる。
【0033】
図10〜図16は、従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。これらの図では、全て図面左側が本発明による射出成形方法によるもの、図面右側が従来の射出成形方法によるものである。図10のように、挿入物を射出空間内に配置した上で、踵部側から射出物を射出する。本発明では、ボトムモールドを下降させて大きな射出空間を確保しておく。従来のものではボトムモールドは定位置である。本発明では大きな挿入物の存在に拘らず低い充填圧にても射出物が円滑かつ充分に行き渡る。
【0034】
本発明では射出物の射出後に、図11のように、ボトムモールドを上昇させることで、挿入物の周囲に射出物が充分に行き渡る。図12のように、ボトムモールドを製品位置に到達させた後は、射出物が冷却して硬化しつつ射出物および挿入物は圧縮されて、所定の製品成形容積にて硬化する。従来のものでは、挿入物の周囲に射出物が充分に行き渡らないまま、冷却して硬化する虞れがある。図13は挿入物の両側にて、サイドモールドとの間で射出物が発泡して成形される状態が示されたものである。図14は中央長手方向に溝を有するタイプの挿入物を配置した例で、従来のものでは、中央長手方向の溝を通じて射出物が押し出されてくるのに対して、本発明ではボトムモールドを下降させておくので、充分に大きな射出空間が確保でき、挿入物の下方で、先ず中央長手方向の溝を通じて射出物が押し出されてくる状態が示されている。
【0035】
図15および図16は、中央長手方向に溝を有するタイプの挿入物を配置した例である。図15のように、本発明ではボトムモールドを下降させておくので、充分に大きな射出空間が確保でき、中央長手方向の溝は言うに及ばず、挿入物の表裏からも充分に挿入物の周囲に射出物を行き渡らせることができる。これに対して、従来のものでは、中央長手方向の溝を通じて射出物が押し出されるので、挿入物の両側等で射出物が行き渡らない巣ができる可能性がある。図16に示すように、本発明では、ボトムモールドを製品位置に上昇させることで、表裏を含めて充分に挿入物の周囲に射出物を行き渡らせて、均一かつ高品質の靴底を成形することができる。しかもその際、比較的低い射出物の充填圧により特に射出部に近い踵部等に低い密度の射出成形部を得ることもできる。
【0036】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、アッパの形状、形式およびアッパが装着されるラストモールドの形状、形式ならびにラストモールドへのアッパの装着形態、サイドモールドの形状、形式(対称形の2分割型、非対称形の分割型、一体型等。サイドモールドの拡縮のために分割型とする他、膨張室等とスライドする重合内壁とを備えたサイドモールド等により射出空間を増減する形状等)および射出口の形成形態(射出口の位置、例えば踵側に限定されずに、爪先や側面等、分割面での組合せ等)、ボトムモールドの形状、形式、サイドモールドとボトムモールドとの関連構成、アッパ下部周囲のサイドモールドへの設置形態(アッパ下部周囲を密接にシールして保持する適宜の形態が採用され得る)、挿入物の形状(踵部を厚くしたり、幅方向一杯に設置したり、さらに前方へも延在させたりできる。材質についても、異なった材質の組合せ等)、形式およびその材質(EVA、ポリウレタン、塩化ビニール樹脂、ゴム、TPU、パルプ、各種プラスチック等の無発泡体およびその発泡体等)等は適宜選定できる。
【0037】
また、射出物の形状、形式およびその材質(EVA、ポリウレタン、塩化ビニール樹脂、ゴム、TPU、パルプ、各種プラストマーおよびエラストマー等の無発泡体およびその発泡体等)、射出供給管までの射出装置の形状、形式、射出空間の形状(靴底のパターン等に基づく種々の形状が採用される)、形式、射出空間内への挿入物の設置形態(置くだけ、ボトムモールド上面のあるいはアッパ下面への適宜手段による固定等)、製品成形容積に対する射出空間容積の比率、射出空間の容積変化形態(好適にはボトムモールドの上下動であるが、該ボトムモールドの上下動と組み合わせてサイドモールドの壁面を縮径できる手段やボトムモールドを固定あるいは上下動とラストモールドの上下動やアッパを装着したラストモールドを上下動させる手段を組み合わせてもよい)、アクチュエータの形状、形式(油圧、空気圧、電磁気力、ピストン・シリンダ等から構成される機械的ジャッキ等。数についても、ジャッキ等のアクチュエータを前後一対設けたことで、前後の靴底厚あるいは発泡度合い等を微調整することもできる)等についても適宜選定できる。実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の靴底射出成形方法およびその装置の1つの実施例を示すもので、射出時の射出成形装置の全体側面一部断面図である。
【図2】同、製品成形容積を得るためにボトムモールドを上昇させた状態の射出成形装置の全体側面一部断面図である。
【図3】同、各モールドの分解図である。
【図4】同、サイドモールドおよびボトムモールドの各平面および側面図である。
【図5】同、挿入物の挿入例の断面図である。
【図6】同、挿入物の挿入例の断面図である。
【図7】同、その他の挿入物の断面図あるいは斜視図である。
【図8】同、その他の挿入物の斜視図あるいは平面図である。
【図9】同、被覆された挿入物の一部截断の斜視図である。
【図10】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図11】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図12】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図13】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図14】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図15】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図16】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図17】同、本発明の射出成形方法により成形された靴底例の断面写真図である。
【図18】本発明により製造された履物の靴底の各部分の密度のばらつきを従来のものと比較した実験結果表図である。
【図19】本発明によ製造された履物の靴底の衝撃吸収特性の従来のものと比較した実験結果表図である。
【図20】第1従来例の靴底の成形方法を示す断面図である。
【図21】第2従来例の射出成形靴の成形方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 サイドモールド(金型)
2 ボトムモールド(金型)
3 ラストモールド(足型)
4 アッパ(胛被)
5 射出口
6 射出物供給管
7 射出空間
8 射出物
9 挿入物
10 アウトソール
16 第1ジャッキ
18 第2ジャッキ
30 中底
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッパ下部あるいはラストモールドと複数の金型を組み合わせて構成される射出空間内に予め挿入物を配置した後に前記射出空間内に射出物を射出する射出成形方法およびその装置ならびにそれらにより製造された履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、靴底を成形するには、足型であるラストモールドに装着されたアッパ(胛被)の下部にて、金型を組み合わせて構成される射出空間内に射出物を射出した後、これを硬化させて行っている。路面からの足への衝撃を緩和する特性確保等の観点から、通常、靴底構成物内には該靴底構成物と別素材の挿入物等が介在されることもある。そのような例として、下記特許文献1や2に開示されたような射出成形方法によって製造されるものが提案された。
【特許文献1】実公平7−37522号公報(図4および段落0017ならびに0018参照)
【特許文献2】特開平2−224602号公報(第1図および第2図ならびに第2頁第3欄参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図20により、前記特許文献1に開示された靴底を説明する。胛被101と中底102とが縫着された袋状体が嵌挿されたラストモールド112と、その下に配置されたボトムモールド113と、その周囲のサイドモールド114とにより形成されるキャビティ115内に、ゲート116からポリウレタンや熱可塑性ゴム等の本底材料が射出される。衝撃吸収部材104が予めボトムモールド113上に載置された状態でキャビティ115内に設置される。衝撃吸収部材104の上部材105と下部材106とこれらを上下に結ぶ連接部(図示の紙面を外れた位置にある)との間の空間108の開口方向は、ゲート116による射出方向と一致する。
【0004】
図21により、前記特許文献2に開示された射出成形靴の成形方法を説明する。胛被を嵌装したラストモールド201とサイドモールド202およびボトムモールド203との型組みにより、図21(A)に示すように、ボトムモールド203の外周の空間部208に第1底材が射出充填され、次いで、図21(B)に示すように、ボトムモールド203が下げられ、本底に相当する空間部209が形成される。この空間部209に第2底材が射出され、該第2底材の発泡により空間部209が充填されて、胛被の中底210面に一体成形されてなる射出成形靴を得ることが出来る。
【0005】
しかしながら、このような従来の靴底あるいはその射出成形方法にあって、前記第1従来例のものでは、衝撃吸収部材104のような挿入物を予め射出空間内に設置する場合、定められた容積の射出空間内にあって、目一杯の進行方向への挿入は、挿入物自身が射出時の射出物の流れを阻害することは避けられない。そのため、射出物を射出空間内に円滑に充填するために、ゲート116による射出方向と一致させた空間108を衝撃吸収部材104に開口させる必要があった。このため、衝撃吸収部材104が複雑な構造となった。その上、定められた容積の射出空間内においては挿入物の大きさには限界があり、あまり大きな挿入物の設置は不可能であった。特に、挿入物の厚みが靴底の厚みとほぼ等しい靴底を得るようなことは到底不可能であった。
【0006】
前記第2従来例のものでは、ボトムモールド203の外周の空間部208に第1底材が射出充填され、次いで、ボトムモールド203が下げられて、本底に相当する空間部209が形成され、この空間部209に第2底材が射出され靴底が成形されるので、挿入物こそ設置されないが、第2底材を構成する空間部209への射出物が比較的円滑に射出されることになった。しかしながら、この成形方法では、空間部208への第1底材の射出充填後に、該第1底材の硬化を待たなければならず、作業時間の増大は避けられないものであった。さらに、このような従来のものでは、定められた容積の射出空間内への射出物の充填量には限界があり、射出空間の容積以上の射出物の充填を行おうとすれば、かなりの高圧にて射出物を供給する必要があり、射出装置の肥大化を招いた。
【0007】
そこで本発明は、前記従来の靴底射出成形方法の諸課題を解決して、高射出圧機能を備える格別な構造の射出装置を用いることなく、短時間の工程にて、挿入物の設置に拘らず円滑な射出物の射出と製品成形容積以上の量の射出物の充填が可能な靴底射出成形方法およびその装置ならびにそれらにより製造された履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明は、アッパ下部あるいはラストモールドと複数の金型を組み合わせて構成される射出空間内に予め挿入物を配置した後に前記射出空間内に射出物を射出する射出成形方法において、前記射出空間を脱型時の製品成形容積より大きくまたは小さくして射出した後、脱型までに前記射出空間を変化させて最終的に製品成形容積を得ることを特徴とする。また本発明は、前記射出空間を変化させるために、サイドモールドを拡縮するかサイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを移動させることを特徴とする。また本発明は、前記射出空間内に配置される挿入物を、射出方向からほぼ直線的に配置するとともに最終成形品の靴底の縦横両方あるいは一方の最大で最大幅を占めさせることを特徴とする。また本発明は、前記射出空間内に配置される挿入物に対して、関係式(挿入物の流動温度≦射出物の金型内最高温度、あるいは挿入物の被覆物の流動温度≦射出物の金型内最高温度≦挿入物の流動温度)の成立する挿入物の自己溶融あるいは挿入物を被覆する被覆物の溶融により、挿入物が射出物に接着されることを特徴とする。また本発明は、前記最終成形品の靴底において、靴底全体または踵部における挿入物と射出物との体積関係が、挿入物≧射出物の関係が成立することを特徴とする。また本発明は、前記射出空間を変化させるために、サイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させることを特徴とする。また本発明は、前記射出成形方法に用いられる靴底射出成形装置であって、アッパ下部あるいはラストモールドを上部にて把持し射出物供給管に連通する射出口を備えたサイドモールドと、該サイドモールド内に適合する上下動自在なボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドと、前記サイドモールドを拡縮するアクチュエータと前記ボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする。また本発明は、前記サイドモールドが複数に分割構成されたことを特徴とする。また本発明は、前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された靴底およびその靴底を備えた履物を構成要件とする。また本発明は、前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、射出物の射出方向の始点から終点までの射出物の平均密度に対して、各部の密度にばらつきがあることを特徴とする。また本発明は、前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、JIST8101:1997年の踵部衝撃吸収性測定方法による測定値が29J以上であることを特徴とする靴底およびその靴底を備えた履物を構成要件とするもので、これらを課題解決のための手段とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アッパ下部あるいはラストモールドと複数の金型を組み合わせて構成される射出空間内に予め挿入物を配置した後に前記射出空間内に射出物を射出する射出成形方法において、前記射出空間を脱型時の製品成形容積より大きくまたは小さくして射出した後、脱型までに前記射出空間を変化させて最終的に製品成形容積を得ることにより、射出物の射出時に射出空間を大きくした場合は、比較的大きな容積の挿入物(射出物の容積≦挿入物の容積の関係が成立するような挿入物)を設置しても、該挿入物に邪魔されることなくその周囲に充分に射出物が回り込み、高圧を要することなく円滑な射出が可能となる。しかも、脱型時の最終的な製品成形容積を得るまでに射出空間を変化させて自由な成形制御が可能となる。その上、製品成形容積以上の射出物の量の射出物の充填が可能となる。また、射出物の射出時の射出空間を脱型時よりも小さくした場合は、発泡射出物の発泡度合を適切に促進制御することが可能となる。
【0010】
また、前記射出空間を変化させるために、サイドモールドを拡縮するかサイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを移動させる場合は、サイドモールドおよびはボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドにより形成される射出空間を、サイドモールドにより前後、左右が、ボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドにより上下およびサイドモードの拡縮に追従する等して前後、左右に自在にその容積を調整することが可能となる。さらに、前記射出空間を変化させるために、サイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させる場合は、ボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドの上下という単純な動作によって、確実に射出空間容積の変化を制御することが可能となる上、靴底の幅一杯に挿入物が設置される場合であっても、ボトムモールドの下降あるいはアッパ下部もしくはラストモールドの上昇により上下方向に広げられた比較的大きな射出空間を通じて充分に射出物を充填することができる。そして、最終的な脱型時の製品成形容積を得る際にボトムモールドの上昇により射出物が、および上昇の程度によっては挿入物が効果的に圧縮されるので、射出空間内に緻密に射出物および挿入物が満たされることになる。
【0011】
さらに、前記射出空間内に配置される挿入物を、射出方向からほぼ直線的に配置するとともに最終成形品の靴底の縦横両方あるいは一方の最大で最大幅を占めさせる場合は、最終成形品の靴底に占める挿入物が射出方向に一直線上でかつ縦横両方あるいは一方の最大幅一杯に配置されるものであっても、これらの挿入物に阻害されることなく、射出成形時には射出空間容積の変化を制御することで円滑に射出物を充填することができ、充分に大きな容積比率の挿入物を配置した射出成形物から構成される靴底成形物を得ることができる。さらにまた、前記射出空間内に配置される挿入物に対して、関係式(挿入物の流動温度≦射出物の金型内最高温度、あるいは挿入物の被覆物の流動温度≦射出物の金型内最高温度≦挿入物の流動温度)の成立する挿入物の自己溶融あるいは挿入物を被覆する被覆物の溶融により、挿入物が射出物に接着される場合は、挿入物自体の表面あるいは挿入物を被覆する被覆物を射出物の金型内最高温度より低く設定して、これらを溶融させて接着剤として機能させることで、射出物内での挿入物の確実な固定がなされ、盲動が完全に防止される。
【0012】
また、前記最終成形品の靴底において、靴底全体または踵部における挿入物と射出物との体積関係が、挿入物≧射出物の関係が成立する場合は、靴底全体または踵部における挿入物の体積比率が半分を超えるような大きな容積の挿入物を組み込んでも、射出成形時には射出空間容積の変化を制御することで円滑に射出物を充填できるので、従来のもののように、大きな容積の挿入物に阻害されて円滑な射出物の流れが阻害されて巣等を発生することがない。さらに、前記射出成形方法に用いられる靴底射出成形装置であって、アッパ下部を上部にて把持し射出物供給管に連通する射出口を備えたサイドモールドと、該サイドモールド内に適合する上下動自在なボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドと、前記サイドモールドを拡縮するアクチュエータと前記ボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させるアクチュエータとを備えた装置により、膨張室等を備えたサイドモールドの拡縮あるいはボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドの上下動という簡素な構造の装置のみによって、格別な構造の射出装置を用いることなく、低圧の射出圧にても上述した本発明の独特の靴底の成形方法を実現できる。
【0013】
さらにまた、前記サイドモールドが複数に分割構成された場合は、分割面に射出口を形成することができて、硬化後の射出口内の射出物の排除・清掃が簡便となる他、製品の離型も容易となる。しかも、ボトムモールドを受け入れる際に、複数のサイドモールドにおける分割面の間隙を調整することで、拡縮時の分割サイドモールドの分割面の隙間の増大には、パッキングやグリス等で対応して、サイドモールドの内周面とボトムモールドの外周面との上下摺動面間の精度を適正に微調整することも可能となる上、射出空間の前後、左右の容積調整が容易となる。また、前記靴底射出成形方法あるいは靴底射出成形装置により製造された靴底およびその靴底を備えた靴は、挿入物の靴底に対する容積を格段にアップすることができて、従来の靴には見られないような挿入物の特性が引き出せる。その際の挿入物を予め別途工程で成形しておくことで、射出時の影響を受けることが少なく、靴底特性の設計上の柔軟性が増大する。
【0014】
さらに、前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、射出物の射出方向の始点から終点までの射出物の平均密度に対して、各部分の密度にばらつきがある場合は、従来のもののような射出物の充填圧が高くせざるを得ないことによる平均密度のばらつきがなく、靴底各部の弾性率に差がでないような不都合がなく、比較的低い射出物の充填圧により特に射出部に近い踵部等に低い密度の射出成形部を得ることができる。さらにまた、前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、JIST8101:1997年の踵部衝撃吸収性測定方法による測定値が29J以上である場合は、踵部等の必要部位において特性の大部分を占める挿入物を、好適な衝撃吸収性の測定値を有するものとして、靴底の多くの部分を占有させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1から図4は本発明の靴底射出成形方法およびその装置の1つの実施例を示すもので、図1は射出時の射出成形装置の全体側面一部断面図、図2は製品成形容積を得るためにボトムモールドを上昇させた状態の射出成形装置の全体側面一部断面図、図3は各モールドの分解図、図4はサイドモールドおよびボトムモールドの各平面および側面図、図5および図6は挿入物の挿入例の断面図、図7および図8はその他の挿入物の斜視図、図9は被覆された挿入物の一部截断の斜視図、図10〜図16は従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図、図17は本発明の射出成形方法により成形された靴底例の断面写真図である。本発明の基本的な構成は、図1に示すように、アッパ4の下部と複数の金型1、2を組み合わせて構成される射出空間7内に予め挿入物9A、9Bを配置した後に前記射出空間7内に射出物8を射出する射出成形方法において、前記射出空間7を脱型時の製品成形容積より大きくまたは小さくして射出した後、脱型までに前記射出空間7を変化させて最終的に製品成形容積を得ることを特徴とするものである。
【0016】
各金型(モールド)は、図3のように分解される。足型を構成するラストモールド3に装着されてアッパ(胛被)が設置され、その下部のアッパ周囲にサイドモールド1が設置される。サイドモールド1の内側には射出空間7が形成される空間が形成され、該空間に適合してボトムモールド2が上下動自在に挿入される。ボトムモールド2の上面には靴底の裏表面となるアウトソール10が敷設される。射出空間7内には予め挿入物9A、9Bが置かれ、サイドモールド1の上方のアッパ4の下部には中底30がセットされる。
【0017】
図4(A)にて理解されるように、本実施例のサイドモールド1は、略中央部において2つの部分1A、1Bに分割されて構成されている。この分割面上に、射出物供給管6からの射出空間7内への射出物の供給を行う射出口5が形成される。符号12、13はサイドモールド1の上方への移動を拘束する第1および第2拘束腕を示す。図4(B)は前記分割面でのサイドモールド1の断面図であり、分割面に形成された射出口5が示されている。硬化後の射出口5内の射出物の排除・清掃が簡便となる他、製品の離型も容易となる。また、図4(C)に示すボトムモールド2を受け入れる際に、複数のサイドモールド1A、1Bにおける分割面の間隙を調整することで、拡縮時の分割サイドモールドの分割面の隙間の増大には、パッキングやグリス等で対応して、サイドモールド1A、1Bの内周面とボトムモールド2の外周面との上下摺動面間の精度を適正に微調整することも可能となる。図4(D)はボトムモールド2の断面図である。また、サイドモールドにより射出空間の容積を調整するには、例えば、膨張室を射出空間の外側に設置し、射出空間に面して相対スライドする重合内壁とを備え、前記膨張室内への流体の出し入れによりアクチュエータを構成する等して、該アクチュエータによりサイドモールド内の射出空間を増減すること等が考えられる。
【0018】
図1に戻り、一体型あるいは分割サイドモールド1A、1Bを合体させて構成したサイドモールド1の下面は、台座11の4隅等に植立して設けた第1および第2支持脚14、15に載置されて支持される。サイドモールド1の上面は、台座11の両端部にヒンジ23、24により軸支された第1および第2拘束腕12、13の上端部が係止される。これらにより、サイドモールド1の上下位置は確実に拘束・規制される。サイドモールド1の内側には射出空間7が形成される空間が形成され、該空間に適合してボトムモールド2が上下動自在に挿入される。ボトムモールド2の下面と台座11との間には油圧アクチュエータを構成する第1および第2ジャッキ16、18が配設される。各ジャッキ16、18からはそれぞれ第1および第2ピストン17、19が上下進退自在に延びる。各ジャッキ16、18の上面には第1および第2ストローク計21、22が設置されて、適宜の目盛りが付された各ピストン17、19の進退ストロークを測定することができる。
【0019】
サイドモールド1には、射出物供給管6からの射出物8を供給する射出口5が形成される。サイドモールド1が分割型なら、好適には分割面にそれぞれ形成された断面半月形の通路を合わせて円形断面の射出口5とされる。分割面での射出口の形成により、硬化後の射出口内の射出物の排除・清掃が簡便となる他、製品の離型も容易となる。射出口5は複数個形成されてもよい。その場合には、射出口の位置により、挿入物が挿入された靴底が、成形容積を広くした状態から変化させて挿入物を挿入したのかどうか確認できる。前記射出物供給管6には射出物8の流量を計測できる流量計20が設置され、計測結果のフィードバックにより、射出空間7への射出物8の供給量を制御することができる。
【0020】
射出空間7内に射出物8を射出して靴底の成形を開始するには、各ジャッキ16、18のピストン17、19を後退させてボトムモールド2を下降させておき、充分に広い射出空間7を確保しておく。このとき、ボトムモールド2の上面には靴底の裏表面となるアウトソール10を敷設するとともに、射出空間7内には、靴底の衝撃吸収特性を決定づける挿入物9A、9Bが適切な位置に置かれる。さらに射出空間7内の上部には中底30が置かれる。この状態において、射出物供給管6から液状の射出物8を射出口5から供給する。射出口5を出た射出物8は上下方向に充分に広い射出空間7内を矢印のように挿入物9A、9Bの上下に回り込んで円滑に流れて行く。したがって、本発明では、従来不可能であった挿入物9の容積が50%を超える(射出物8の容積に対して)ような靴底の成形が容易に行えることとなった。
【0021】
図17は本発明の射出成形方法により成形された靴底例の断面写真図である。靴底において挿入物9(写真の白い部分)の容積がかなりの部分を占めていることが理解される。なお、挿入物の中間位置の上部に形成された溝に射出物を侵入させ、この溝に侵入した射出物によって、挿入物が前後に移動するのを防止するように構成してもよい。このような移動防止構造が、挿入物の厚みが大きい場合でも、本発明によれば容易に成形できる。
【0022】
靴底の衝撃吸収特性および履き心地性能を決定づける挿入物9としては、種々の材質のものが採用され得る。例えば、EVA、ポリウレタン(ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン)、塩化ビニール樹脂、ゴム、木材、TPU、パルプ、金属類、セラミック類、各種プラスチック、オレフィン系樹脂、FRP等の無発泡体およびその(前記)発泡体等である。さらに、織布、不織布、革類、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等でもよい。磁石や鉱石等を配置したものや全体的な挿入物でもよい。射出物に影響を与えないセル状で防御した電子デバイスや食品およびフェ等の避難用具等やエアーバッグ、エアーバッグに物体を挿入したものやセルに水や油で満たしたものでもよい。挿入物に関しては導電性があってもなくてもよい。
【0023】
挿入物の形状としては、図5および図6のそれぞれの1〜10に示すように、サイドモールドとボトムモールドとラストモールドで支配された成形空間に入り成形制御が可能なものなら何でもよい。異なった材質の複数のもの、複数の積層体から構成されるもの、異なった材質のものを連結したもの等である。また、挿入物は完成製品において射出物内に埋没されていても、一部靴底から露出していてもよい。挿入物は完成製品の中底より部分的に露出(図7の1)させたり、はみ出させてもよい。また図7の2、3および4のように、射出物が侵入する空洞や導電材等の異物を挿入することもできる。
【0024】
挿入物9は、図8に示すように、最終成形品の靴底の縦横両方あるいは一方の最大で最大幅を占めさせるように構成されてもよい。本発明では、これらの挿入物が靴底の幅一杯に配置されていても、例えば図8の2のように、挿入物の側面の突起により射出物の流れが阻害されるような配置であっても、射出成形時には射出空間容積の変化を制御することができるので、円滑に射出物を充填することができ、充分に大きな容積比率の挿入物を配置した射出成形物から構成される靴底成形物を得ることができる。このように、前記最終成形品の靴底において、靴底全体または踵部における挿入物と射出物との体積関係が、挿入物≧射出物の関係が成立するような大きな挿入物が配置される場合、すなわち、靴底全体または踵部における挿入物の体積比率が半分を超えるような大きな容積の挿入物を組み込んでも、射出成形時には射出空間容積の変化を制御することで円滑に射出物を充填できるので、従来のもののように、大きな容積の挿入物に阻害されて円滑な射出物の流れが阻害されて巣等を発生することがない。
【0025】
また、図9に示すように、前記射出空間内に配置される挿入物に対して、関係式(挿入物の流動温度≦射出物の金型内最高温度、あるいは挿入物の被覆物の流動温度≦射出物の金型内最高温度≦挿入物の流動温度)の成立する挿入物の自己溶融あるいは挿入物を被覆する被覆物の溶融により、挿入物が射出物に接着される場合は、挿入物自体の表面あるいは挿入物を被覆する被覆物を射出物の金型内最高温度より低く設定して、これらを溶融させて接着剤として機能させることで、射出物内での挿入物の確実な固定が行え、盲動が完全に防止することができる。
【0026】
射出物8としては、EVA、ポリウレタン(ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン)、塩化ビニール樹脂、ゴム、TPU、パルプ、各種エラストマーおよびエラストマー、オレフィン系樹脂等の無発泡体およびその発泡体等である。また、前記射出物をバインダー成分として粒状の混合物を添加させたものを使用してもよい。さらに、靴底は、アウトソール10を設けた2層底(アウトソール10と挿入物9とミッドソールを構成する射出物8)でも、アウトソール10を排した1層底(挿入物9とミッドソールを構成する射出物8)でもよい。多色多層成形でどの位置に挿入物を配置しても多層構成による各層に挿入物を配置したものの層を複数設けてもよい。
【0027】
射出空間7内への射出物の射出が完了すると、図2の矢印に示すように、各ジャッキ16、18のピストン17、19を進行させてボトムモールド2を上昇させる。その上昇制御は、図示省略の制御手段により、ピストン17、19の進行ストロークを計測するストローク計21、22の計測値に基づいてその移動量が決定される。ボトムモールド2が所定の移動量を上昇することにより、あるいはサイドモールド1を縮小させることにより、冷却して硬化しつつある射出物8および挿入物9A、9Bは圧縮されて、所定の製品成形容積にて硬化する。
【0028】
ストローク計21、22による計測値に基づくボトムモールド2の上昇移動量を適宜設定すれば、靴底の圧縮率を調整して靴底の特性を適宜設定することが可能となる。逆に、また、射出物の射出時の射出空間を脱型時よりも小さくした場合、つまり、製品成形容積よりも小さな射出空間にて射出した後、射出物が硬化しつつある状態のとき、ボトムモールド2を下降させて、あるいはサイドモールド1を拡大させて、射出空間を増大させることで、発泡射出物の発泡度合を適切に促進制御することが可能となる。
【0029】
図18は本発明による前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、射出物の射出方向の始点から終点までの射出物の平均密度に対して、各部分の密度に所定値以上のばらつきを生じさせることができることを示した従来のものとの比較実験結果表図である。挿入物がない従来のものNo1、2では、各部では比較的ばらつきがみられるが、挿入物がある従来の方法によるNo6、7、8では、挿入物があるため充分に射出物をいき渡らせるには、巣ができたり、射出物の充填圧を高くせざるを得ず、平均密度のばらつきがないのに対して、挿入物が、踏付部、踏まず部、踵部に挿入された本発明の方法で製造したNo3、4、5のものでは、射出物があるにも拘らず、低い射出物の充填圧でも巣の発生もなく充分に各部に射出物がいき渡り、全体の平均密度0.41〜0.42に対して、0.37〜0.49のばらつきが見られる。つまり、全体の平均密度に対して所定値±10〜20%程度のばらつきが見られた。これにより、発泡性射出物や密度分布のある泡状射出物において、射出物の量も最小で成形可能である。成形空間を変形させずに、射出成形する挿入物のない通常の靴底の密度分布と同様に、各部分で必要な密度にばらつきがある靴および靴底の成形が可能となる。
【0030】
図19は本発明による前記靴底射出成形方法あるいは前記靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、JIST8101:1997年の踵部衝撃吸収性測定方法による測定値が29J以上であるように構成されることを示す従来のものとの比較実験結果表図である。本発明の方法によれば、靴底の全容積の50%を超える挿入物を挿入することができるので、挿入物の固有の衝撃吸収特性値に全体の衝撃吸収性が支配されること(または、測定部位全体の体積あたりの衝撃吸収性が挿入物の固有の衝撃吸収性に支配されること)になる。踵部衝撃吸収性の測定値結果の要因は、測定系に設置される測定物の衝撃吸収物の量と衝撃吸収性に依存される。本実験においては、アウトソールとしてゴム製7mm、挿入物としてEVA製27mm、発泡層硬度64(アスカ−C硬度計)、中底として不織布1.5mmで、挿入物は最終成形高さの最大で成形した。射出物は、ポリエステルポリウレタンを使用し、従来の比較例としては同様の射出物で行った(挿入物なし)。
【0031】
測定部位において多量の挿入物を挿入された靴底は、アウトソールや中底の衝撃吸収性に支配されず、大多数を占める挿入物の踵部衝撃吸収性に支配される。これについては、踵部衝撃吸収性の測定時における力点とロードセルを結ぶ測定系の間にある物質について考慮すれば分かる。アウトソール、挿入物、中底の3つの配置が縦方向にあるなら、体積関係において、挿入物>>アウトソール+中底であるなら、挿入物の衝撃吸収性特性によって、全体の衝撃吸収性特性は支配される。もしくは、挿入物>アウトソール+中底。本発明は射出経路を妨げるように踵部やその他に挿入物を最大値から適選配置が可能であるので、従来は不可能であった射出成形方法における挿入物の固有の衝撃吸収性に依存する靴の製造が可能となった。
【0032】
前述のように、射出空間7内への射出物8の射出に際して、挿入物9を固定せずに設置した場合には、図1に示すように、ボトムモールド2とアッパ4が装着されたラストモールド3によって挿入物9が固定あるいは挿入されただけの状態となる。この状態で、例えば発泡性の射出物8を射出しても、直接ぶつかる位置から射出を行った後、ボトムモールド等を下降させて成形容積を増大させると、発泡した射出物8に押されて挿入物9は移動する。これは、挿入物9の固定物等がなくても挿入物9を射出物8で挟み込む(浮上させる)時に有効な方法となる。また、射出物8を射出後にボトムモールド2を下げて成形容積を変化させるタイミングによって、挿入物9は射出物で挟まれるように成形されたりするが、射出物8を動力として直接ぶつかる位置から射出を行った後、成形容積を増大させれば、挿入物は前方(爪先)に移動するときに有効な方法となる。
【0033】
図10〜図16は、従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。これらの図では、全て図面左側が本発明による射出成形方法によるもの、図面右側が従来の射出成形方法によるものである。図10のように、挿入物を射出空間内に配置した上で、踵部側から射出物を射出する。本発明では、ボトムモールドを下降させて大きな射出空間を確保しておく。従来のものではボトムモールドは定位置である。本発明では大きな挿入物の存在に拘らず低い充填圧にても射出物が円滑かつ充分に行き渡る。
【0034】
本発明では射出物の射出後に、図11のように、ボトムモールドを上昇させることで、挿入物の周囲に射出物が充分に行き渡る。図12のように、ボトムモールドを製品位置に到達させた後は、射出物が冷却して硬化しつつ射出物および挿入物は圧縮されて、所定の製品成形容積にて硬化する。従来のものでは、挿入物の周囲に射出物が充分に行き渡らないまま、冷却して硬化する虞れがある。図13は挿入物の両側にて、サイドモールドとの間で射出物が発泡して成形される状態が示されたものである。図14は中央長手方向に溝を有するタイプの挿入物を配置した例で、従来のものでは、中央長手方向の溝を通じて射出物が押し出されてくるのに対して、本発明ではボトムモールドを下降させておくので、充分に大きな射出空間が確保でき、挿入物の下方で、先ず中央長手方向の溝を通じて射出物が押し出されてくる状態が示されている。
【0035】
図15および図16は、中央長手方向に溝を有するタイプの挿入物を配置した例である。図15のように、本発明ではボトムモールドを下降させておくので、充分に大きな射出空間が確保でき、中央長手方向の溝は言うに及ばず、挿入物の表裏からも充分に挿入物の周囲に射出物を行き渡らせることができる。これに対して、従来のものでは、中央長手方向の溝を通じて射出物が押し出されるので、挿入物の両側等で射出物が行き渡らない巣ができる可能性がある。図16に示すように、本発明では、ボトムモールドを製品位置に上昇させることで、表裏を含めて充分に挿入物の周囲に射出物を行き渡らせて、均一かつ高品質の靴底を成形することができる。しかもその際、比較的低い射出物の充填圧により特に射出部に近い踵部等に低い密度の射出成形部を得ることもできる。
【0036】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、アッパの形状、形式およびアッパが装着されるラストモールドの形状、形式ならびにラストモールドへのアッパの装着形態、サイドモールドの形状、形式(対称形の2分割型、非対称形の分割型、一体型等。サイドモールドの拡縮のために分割型とする他、膨張室等とスライドする重合内壁とを備えたサイドモールド等により射出空間を増減する形状等)および射出口の形成形態(射出口の位置、例えば踵側に限定されずに、爪先や側面等、分割面での組合せ等)、ボトムモールドの形状、形式、サイドモールドとボトムモールドとの関連構成、アッパ下部周囲のサイドモールドへの設置形態(アッパ下部周囲を密接にシールして保持する適宜の形態が採用され得る)、挿入物の形状(踵部を厚くしたり、幅方向一杯に設置したり、さらに前方へも延在させたりできる。材質についても、異なった材質の組合せ等)、形式およびその材質(EVA、ポリウレタン、塩化ビニール樹脂、ゴム、TPU、パルプ、各種プラスチック等の無発泡体およびその発泡体等)等は適宜選定できる。
【0037】
また、射出物の形状、形式およびその材質(EVA、ポリウレタン、塩化ビニール樹脂、ゴム、TPU、パルプ、各種プラストマーおよびエラストマー等の無発泡体およびその発泡体等)、射出供給管までの射出装置の形状、形式、射出空間の形状(靴底のパターン等に基づく種々の形状が採用される)、形式、射出空間内への挿入物の設置形態(置くだけ、ボトムモールド上面のあるいはアッパ下面への適宜手段による固定等)、製品成形容積に対する射出空間容積の比率、射出空間の容積変化形態(好適にはボトムモールドの上下動であるが、該ボトムモールドの上下動と組み合わせてサイドモールドの壁面を縮径できる手段やボトムモールドを固定あるいは上下動とラストモールドの上下動やアッパを装着したラストモールドを上下動させる手段を組み合わせてもよい)、アクチュエータの形状、形式(油圧、空気圧、電磁気力、ピストン・シリンダ等から構成される機械的ジャッキ等。数についても、ジャッキ等のアクチュエータを前後一対設けたことで、前後の靴底厚あるいは発泡度合い等を微調整することもできる)等についても適宜選定できる。実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の靴底射出成形方法およびその装置の1つの実施例を示すもので、射出時の射出成形装置の全体側面一部断面図である。
【図2】同、製品成形容積を得るためにボトムモールドを上昇させた状態の射出成形装置の全体側面一部断面図である。
【図3】同、各モールドの分解図である。
【図4】同、サイドモールドおよびボトムモールドの各平面および側面図である。
【図5】同、挿入物の挿入例の断面図である。
【図6】同、挿入物の挿入例の断面図である。
【図7】同、その他の挿入物の断面図あるいは斜視図である。
【図8】同、その他の挿入物の斜視図あるいは平面図である。
【図9】同、被覆された挿入物の一部截断の斜視図である。
【図10】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図11】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図12】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図13】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図14】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図15】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図16】従来のものと比較した本発明の射出成形例を示す平面および断面図である。
【図17】同、本発明の射出成形方法により成形された靴底例の断面写真図である。
【図18】本発明により製造された履物の靴底の各部分の密度のばらつきを従来のものと比較した実験結果表図である。
【図19】本発明によ製造された履物の靴底の衝撃吸収特性の従来のものと比較した実験結果表図である。
【図20】第1従来例の靴底の成形方法を示す断面図である。
【図21】第2従来例の射出成形靴の成形方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 サイドモールド(金型)
2 ボトムモールド(金型)
3 ラストモールド(足型)
4 アッパ(胛被)
5 射出口
6 射出物供給管
7 射出空間
8 射出物
9 挿入物
10 アウトソール
16 第1ジャッキ
18 第2ジャッキ
30 中底
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパ下部あるいはラストモールドと複数の金型を組み合わせて構成される射出空間内に予め挿入物を配置した後に前記射出空間内に射出物を射出する射出成形方法において、前記射出空間を脱型時の製品成形容積より大きくまたは小さくして射出した後、脱型までに前記射出空間を変化させて最終的に製品成形容積を得ることを特徴とする靴底射出成形方法。
【請求項2】
前記射出空間を変化させるために、サイドモールドを拡縮するかサイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを移動させることを特徴とする請求項1に記載の靴底射出成形方法。
【請求項3】
前記射出空間内に配置される挿入物を、射出方向からほぼ直線的に配置するとともに最終成形品の靴底の縦横両方あるいは一方の最大で最大幅を占めさせることを特徴とする請求項1または2に記載の靴底射出成形方法。
【請求項4】
前記射出空間内に配置される挿入物に対して、関係式(挿入物の流動温度≦射出物の金型内最高温度、あるいは挿入物の被覆物の流動温度≦射出物の金型内最高温度≦挿入物の流動温度)の成立する挿入物の自己溶融あるいは挿入物を被覆する被覆物の溶融により、挿入物が射出物に接着されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の靴底射出成形方法。
【請求項5】
前記最終成形品の靴底において、靴底全体または踵部における挿入物と射出物との体積関係が、挿入物≧射出物の関係が成立することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の靴底射出成形方法。
【請求項6】
前記射出空間を変化させるために、サイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させることを特徴とする請求項2に記載の靴底射出成形方法。
【請求項7】
前記射出成形方法に用いられる靴底射出成形装置であって、アッパ下部あるいはラストモールドを上部にて把持し射出物供給管に連通する射出口を備えたサイドモールドと、該サイドモールド内に適合する上下動自在なボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドと、前記サイドモールドを拡縮するアクチュエータと前記ボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする靴底射出成形装置。
【請求項8】
前記サイドモールドが複数に分割構成されたことを特徴とする請求項7に記載の靴底射出成形装置。
【請求項9】
前記請求項1から6のいずれかに記載された靴底射出成形方法あるいは前記請求項7または8に記載された靴底射出成形装置により製造された靴底およびその靴底を備えた履物。
【請求項10】
前記請求項1から6のいずれかに記載された靴底射出成形方法あるいは前記請求項7または8に記載された靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、射出物の射出方向の始点から終点までの射出物の平均密度に対して、各部の密度にばらつきがあることを特徴とする靴底およびその靴底を備えた履物。
【請求項11】
前記請求項1から6のいずれかに記載された靴底射出成形方法あるいは前記請求項7または8に記載された靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、JIST8101:1997年の踵部衝撃吸収性測定方法による測定値が29J以上であることを特徴とする靴底およびその靴底を備えた履物。
【請求項1】
アッパ下部あるいはラストモールドと複数の金型を組み合わせて構成される射出空間内に予め挿入物を配置した後に前記射出空間内に射出物を射出する射出成形方法において、前記射出空間を脱型時の製品成形容積より大きくまたは小さくして射出した後、脱型までに前記射出空間を変化させて最終的に製品成形容積を得ることを特徴とする靴底射出成形方法。
【請求項2】
前記射出空間を変化させるために、サイドモールドを拡縮するかサイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを移動させることを特徴とする請求項1に記載の靴底射出成形方法。
【請求項3】
前記射出空間内に配置される挿入物を、射出方向からほぼ直線的に配置するとともに最終成形品の靴底の縦横両方あるいは一方の最大で最大幅を占めさせることを特徴とする請求項1または2に記載の靴底射出成形方法。
【請求項4】
前記射出空間内に配置される挿入物に対して、関係式(挿入物の流動温度≦射出物の金型内最高温度、あるいは挿入物の被覆物の流動温度≦射出物の金型内最高温度≦挿入物の流動温度)の成立する挿入物の自己溶融あるいは挿入物を被覆する被覆物の溶融により、挿入物が射出物に接着されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の靴底射出成形方法。
【請求項5】
前記最終成形品の靴底において、靴底全体または踵部における挿入物と射出物との体積関係が、挿入物≧射出物の関係が成立することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の靴底射出成形方法。
【請求項6】
前記射出空間を変化させるために、サイドモールド内に適合するボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させることを特徴とする請求項2に記載の靴底射出成形方法。
【請求項7】
前記射出成形方法に用いられる靴底射出成形装置であって、アッパ下部あるいはラストモールドを上部にて把持し射出物供給管に連通する射出口を備えたサイドモールドと、該サイドモールド内に適合する上下動自在なボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドと、前記サイドモールドを拡縮するアクチュエータと前記ボトムモールドあるいはアッパ下部もしくはラストモールドを上下動させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする靴底射出成形装置。
【請求項8】
前記サイドモールドが複数に分割構成されたことを特徴とする請求項7に記載の靴底射出成形装置。
【請求項9】
前記請求項1から6のいずれかに記載された靴底射出成形方法あるいは前記請求項7または8に記載された靴底射出成形装置により製造された靴底およびその靴底を備えた履物。
【請求項10】
前記請求項1から6のいずれかに記載された靴底射出成形方法あるいは前記請求項7または8に記載された靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、射出物の射出方向の始点から終点までの射出物の平均密度に対して、各部の密度にばらつきがあることを特徴とする靴底およびその靴底を備えた履物。
【請求項11】
前記請求項1から6のいずれかに記載された靴底射出成形方法あるいは前記請求項7または8に記載された靴底射出成形装置により製造された履物の靴底が、JIST8101:1997年の踵部衝撃吸収性測定方法による測定値が29J以上であることを特徴とする靴底およびその靴底を備えた履物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−230944(P2006−230944A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53872(P2005−53872)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(390002222)株式会社シモン (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(390002222)株式会社シモン (7)
【Fターム(参考)】
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