説明

靴底用シートおよびこのシートを用いた靴底

【課題】スタッドとしての架橋ゴム層と、ソールとしての熱可塑性エラストマー層とを、効率よく接合するのに有用な靴底形成用シートを提供する。
【解決手段】
シートを、ポリアミド樹脂(a)を含み、10mmol/kg以上のアミノ基濃度およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を有する樹脂成分(A)で構成する。ポリアミド樹脂(a)は、融点165℃以上のポリアミド樹脂を、ポリアミド樹脂(a)全体に対して所定の濃度(例えば、30重量%以上)含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底を形成するのに好適なシート、このシートを用いた靴底(又は靴底用複合成形体)、およびこの靴底を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
靴底用部材としては、グリップ性能や耐摩耗性能の観点から、天然ゴムや合成ゴム等を架橋させた軟質材料が多用されている。靴の構成部位は、アッパー(足を包み込む部位)、ミッドソール(クッション性を発揮する部位)、靴底(地面と接触する部位)に大きく分けられ、靴底は更に、スタッド(靴底から突起しており、地面と強く接触する部位)とソール(靴底のスタッド以外の部位)に分けられる。スタッドにはグリップ性能や耐摩耗性能の観点から一般にゴムが有用であり、ソールにはバネ性能の観点から一般に熱可塑性エラストマーが有用である。
【0003】
従来、スタッドとソールの間の接着に関しては、それらの接着面積が小さく、通常の接着方法では十分な接着強度を得るのが難しいため、スタッドとソールは通常、共にゴムであるか、共に熱可塑性エラストマーである場合が多かった。しかし、共にゴムである場合、ゴムの比重が大きい事から、靴の重量が重くなり、バネ性能を得難いという問題があった。一方、共に熱可塑性エラストマーである場合、人工芝グラウンドや体育館等では摩擦熱により融着したり、濡れた路面等ではスリップし易い等の問題があった。
【0004】
そこで、スタッドとソールが各々異なる素材からなる部材であっても、両部材が十分な接着強度を有するように複合成形すべく、種々の方法が試みられてきた。接着剤を用いない直接接着による複合成形は有効な方法のひとつであり、それにより、スタッドがゴム、ソールが熱可塑性エラストマーである場合でも、両部材が十分な接着強度を有する靴底を得ることが可能となった。
【0005】
例えば、特開平8−294933号公報(特許文献1)には、ポリウレタン(例えば、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン)およびポリアミドベースのポリマー(例えば、ポリエーテルエステルアミドなどのポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマー)の中から選択される熱可塑性樹脂(I)をゴム(II)の上に多色成形する方法において、ゴムの表面をハロゲン化した後、熱可塑性樹脂を圧縮成形または射出成形で多色成形する方法が開示されている。そして、この文献には、この方法により得られる複合材料は、靴底の摩耗を防ぐためのゴムのスタッドまたはゴム製ヒールなどが固定されたポリアミドエラストマーの靴底を有する運動靴の製造に用いられることが記載されている。
【0006】
また、特表平8−51741号公報(特許文献2)には、カルボン酸基を含む加硫したエラストマーがブロックを含む熱可塑性ポリマー(例えば、ポリエーテルエステル、ポリウレタンエーテル、ポリウレタンエステル、ポリウレタンエーテルエステルなど)に直接組み合わされている複合構造物が開示されている。そして、この文献には、この複合構造物は、運動靴の靴底として有用であることが記載されている。
【0007】
しかし、ゴムと熱可塑性エラストマーとの複合成形には、射出成形や圧縮成形等、加熱や加圧を伴う方法が一般に用いられるため、特に熱可塑性エラストマー側の変形による製造不良が問題となる一方で、加熱や加圧の条件を緩和すると、ゴムの加硫時間が延長したり、ゴムと熱可塑性エラストマーとの接着不良が生じたりするという問題が生じるが、これらの文献には、このような問題を解決する方法については何ら記載されていない。しかも、前記特許文献1の方法では、ゴム表面を予めハロゲン化するという前処理工程が必須であり、工程時間を短縮したい場合には問題となる。
【0008】
一方、特開2000−41702号公報(特許文献3)には、合成ゴムのアウトソール意匠部と接合一体化された熱可塑性エラストマーシートとにより構成されたアウトソール部材に、靴底本体成形用の熱可塑性エラストマーを射出成形することにより前記アウトソール部材と靴底本体を同時一体成形して三層構造にした靴底が開示されている。そして、この文献には、このような靴底は、未架橋の合成ゴムの混練りシートを型抜きしたアウトソール意匠用部材を予備成形靴底金型のアウトソール意匠用凹部に配置して加圧加熱した後、該アウトソール意匠用部材が架橋の初期段階で金型を型開きして、アウトソール意匠用凹部の外形形状に略合致した形状を有する熱可塑性エラストマーシートを設置後、再度加圧加熱して前記合成ゴムの意匠部と熱可塑性エラストマーシートを一体成形したアウトソール部材を形成し、該アウトソール部材を本底用射出成形金型の意匠用凹部形状にトリミング後、本底用射出成形金型の意匠用凹部に合致するように配置して型締め後、靴底本体形成用の熱可塑性エラストマーを射出成形するなどにより製造できることが記載されている。
【0009】
しかし、この文献にも、前記のような複合成形における問題を解決する方法については何ら記載がない。また、この文献では、アウトソール意匠部とアウトソール部材との接合一体化に際しては、合成ゴムの架橋工程を中断して金型を開き、熱可塑性エラストマーシートを設置した後に改めて金型を閉じて複合一体化する工程が必要であり、作業効率を求める場合には問題となる。しかも、アウトソール部材に、靴底本体形成用の熱可塑性エラストマーを射出成形する際には、熱融着(溶融一体化)させるため、アウトソール部材用の樹脂および熱可塑性エラストマーとして、実質的に同種の樹脂を使用する必要があり、樹脂材料の組み合わせが制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−294933号公報(特許請求の範囲、段落[0001])
【特許文献2】特表平8−51741号公報(特許請求の範囲、第12頁第2〜5行)
【特許文献3】特開2000−41702号公報(特許請求の範囲、段落[0025]〜[0029])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、スタッドとしての架橋ゴム層と、ソールとしての熱可塑性エラストマー層とを、効率よく接合するのに有用なシート(靴底(形成)用シート)、およびこのシートを用いて得られた靴底用複合成形体(又は靴底)、およびこの靴底用複合成形体の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、高い作業性で、スタッドとソールとを変形させることなく接合するのに有用なシート、およびこのシートを用いて得られた靴底用複合成形体(又は靴底)、およびこの靴底用複合成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、スタッド(部材)としての架橋ゴム層とソール(部材)としての熱可塑性エラストマー層との間に、特定のアミノ基濃度と曲げ弾性率とを有する特定の樹脂成分で形成されたシートを介在させると、意外にも、架橋ゴム層を表面処理(例えば、ハロゲン化処理)しなくても、また、特許文献3のような煩雑な方法を要することなく、シートや熱可塑性エラストマー層に生じる変形の防止又は抑制と、これら両層の接合とを両立させて実現できること、しかも、このようなシートを用いることにより、幅広いゴムと熱可塑エラストマーとの組み合わせで、架橋ゴム層と熱可塑性エラストマー層とを接合できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明のシート(靴底用シート)は、スタッドとしての架橋ゴム層と、ソールとしての熱可塑性エラストマー層との間に、これらの層と直接接触して介在し、靴底用複合成形体を形成するためのシート(又はスタッドとしての架橋ゴム層が直接形成される一方の面と、ソールとしての熱可塑性エラストマー層が直接形成される他方の面とを有し、靴底用複合成形体を形成するためのシート)である。そして、このシートは、ポリアミド樹脂(a)を含む樹脂成分(A)で構成され、前記樹脂成分(A)が、10mmol/kg以上のアミノ基濃度およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を有する。
【0015】
前記ポリアミド樹脂(a)は、ポリアミド(脂肪族ポリアミド、脂環族ポリアミドなど)およびポリアミドエラストマーから選択された少なくとも1種で構成されていてもよい。また、前記ポリアミド樹脂(a)が、比較的高融点(例えば、融点165℃以上)のポリアミド樹脂を含んでいてもよく、このような高融点のポリアミド樹脂の割合は、ポリアミド樹脂(a)全体に対して30重量%以上程度であってもよい。
【0016】
前記樹脂成分(A)(又はポリアミド樹脂(a))は、代表的には、以下の(1)〜(3)のいずれかであってもよい。
【0017】
(1)アミノ基濃度10mmol/kg以上、融点165℃以上、ISO178による曲げ弾性率が300MPa以上であるポリアミド樹脂単独
(2)複数のポリアミドで構成された樹脂組成物であって、融点165℃以上のポリアミドを30重量%以上の割合で含み、全体としてアミノ基濃度10mmol/kg以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を充足するポリアミド樹脂組成物
(3)ポリアミドおよびポリアミドエラストマーで構成された樹脂組成物であって、前記ポリアミド及び/又は前記ポリアミドエラストマーの30重量%以上が融点165℃以上であり、全体としてアミノ基濃度10mmol/kg以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を充足するポリアミド樹脂組成物
特に、前記樹脂成分(A)(又はポリアミド樹脂(a))は、ポリアミド樹脂組成物(3)であってもよく、このようなポリアミド樹脂組成物(3)の中でも、ポリアミドエラストマーのアミノ基濃度が10mmol/kgを有していてもよい。
【0018】
前記シートは、さらに、フィラーを含んでいてもよい。また、前記シートの厚みは、0.1〜0.7mm程度であってもよい。
【0019】
本発明には、前記シートと、このシートの一方の面に直接形成されたスタッドとしての架橋ゴム層と、前記シートの他方の面に直接形成されたソールとしての熱可塑性エラストマー層とで構成された靴底用複合成形体(又は靴底)も含まれる。
【0020】
このような靴底用複合成形体において、架橋ゴム層は、特に、未架橋ゴムと過酸化物とを含む未架橋ゴム組成物の架橋により形成されていてもよい(又は未加硫ゴム組成物が架橋した架橋物であってもよい)。前記未架橋ゴム組成物は、さらに、架橋助剤を含んでいてもよい。
【0021】
また、前記熱可塑性エラストマー層は、例えば、ポリウレタンエラストマーおよびポリアミドエラストマーから選択された少なくとも1種で構成されていてもよく、特にポリウレタンエラストマーで構成されていてもよい。
【0022】
さらに、本発明には、前記シートの一方の面に架橋ゴム層を、他方の面に熱可塑性エラストマー層をそれぞれ直接形成し、靴底用複合成形体を製造する方法も含まれる。このような方法では、代表的には、金型内に配置した前記シートの一方の面に溶融した未架橋ゴム組成物を接触させ、この未架橋ゴム組成物を加温下で架橋させて前記架橋ゴム層を形成することにより、複合成形体を製造してもよい。このような方法では、特に、金型を型開きすることなく架橋ゴム層を形成してもよい。
【0023】
また、前記方法では、シート(又はポリアミド樹脂(a)又は樹脂成分(A))を溶融させることなく架橋させてもよい。代表的には、前記方法において、前記シートが、融点165℃以上のポリアミド樹脂をポリアミド樹脂(a)の30重量%以上含み、この融点165℃以上のポリアミド樹脂の融点よりも低い温度[例えば、150℃以上(例えば、150〜190℃)であって、融点165℃以上のポリアミド樹脂の融点よりも5℃以上低い温度]で架橋させてもよい。本発明では、前記のような特定の樹脂成分で構成されたシートを用いるため、必ずしもシートを溶融させなくても、強固にゴム層(さらには熱可塑性エラストマー層)を接着できるため、成形に起因する変形を効率よく防止又は抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のシート(靴底用シート)は、スタッドとしての架橋ゴム層と、ソールとしての熱可塑性エラストマー層とを、効率よく接合するのに有用である。具体的には、このようなシートを用いることにより、変形させることなく効率よくスタッドおよびソールを接合できる。特に、本発明のシートを用いると、前記特許文献3のような煩雑な方法によらなくても架橋ゴム層との一体成形が可能であり、また、架橋ゴム層を表面処理(例えば、ハロゲン化処理)する必要もないため、高い作業性で、スタッドとソールとを変形させることなく接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は実施例で使用したゴム金型の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[シート]
本発明のシートは、ポリアミド樹脂(ポリアミド樹脂(a)ということがある)を含む樹脂成分(樹脂成分(A)などということがある)で構成されている。そして、このようなシートを構成する樹脂成分は、特定のアミノ基濃度および曲げ弾性率を有し、本発明のシートは、後述するように、特に、靴底用シートとして有用である。
【0027】
ポリアミド樹脂としては、ポリアミド、ポリアミドエラストマーなどが挙げられる。
【0028】
ポリアミドとしては、脂肪族ポリアミド樹脂、脂環族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。ポリアミドは、ホモポリアミド又はコポリアミドであってもよい。
【0029】
脂肪族ポリアミド樹脂のうち、ホモポリアミドとしては、脂肪族ジアミン成分(例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカンジアミンなどのC4−16アルキレンジアミン、好ましくはC6−14アルキレンジアミン、さらに好ましくはC6−12アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(例えば、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−20アルカンジカルボン酸、好ましくはC5−16アルカンジカルボン酸、さらに好ましくはC6−14アルカンジカルボン酸)など]とのホモ又はコポリアミド、ラクタム[ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどの炭素数4〜20(好ましくは炭素数4〜16)程度のラクタムなど]又はアミノカルボン酸(例えば、ω−アミノウンデカン酸などのC4−20アミノカルボン酸、好ましくはC4−16アミノカルボン酸、さらに好ましくはC6−14アミノカルボン酸など)のホモ又はコポリアミド、脂肪族ジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸成分と、ラクタム又はアミノカルボン酸とのコポリアミドなどが含まれる。
【0030】
具体的な脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド613、ポリアミド1010、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド66/11、ポリアミド66/12、ポリアミド6/12/612などが挙げられる。
【0031】
好ましい脂肪族ポリアミドには、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド613、ポリアミド1012、ポリアミド1010、ポリアミド1212などが含まれる。
【0032】
脂環族ポリアミド樹脂としては、少なくとも脂環族ジアミン成分及び脂環族ジカルボン酸成分から選択された少なくとも一種を構成成分とするホモポリアミド又はコポリアミドなどが挙げられ、例えば、ジアミン成分及びジカルボン酸成分のうち、少なくとも一部の成分として脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジカルボン酸を用いることにより得られる脂環族ポリアミドなどが使用できる。特に、ジアミン成分及びジカルボン酸成分として、脂環族ジアミン成分及び/又は脂環族ジカルボン酸成分と共に、前記例示の脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分を併用するのが好ましい。このような脂環族ポリアミド樹脂は、透明性が高く、いわゆる透明ポリアミドとして知られている。
【0033】
脂環族ジアミン成分としては、ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノシクロアルカン(ジアミノC5−10シクロアルカンなど);ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4’−アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロアルキル)アルカン[ビス(アミノC5−8シクロアルキル)C1−3アルカンなど];水添キシリレンジアミンなどが挙げられる。脂環族ジアミン成分は、アルキル基(メチル基、エチル基などのC1−6アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基、さらに好ましくはC1−2アルキル基)などの置換基を有していてもよい。また、脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などのシクロアルカンジカルボン酸(C5−10シクロアルカン−ジカルボン酸など)などが挙げられる。
【0034】
脂環族ポリアミド樹脂のうち、脂肪族ジカルボン酸成分と脂環族ジアミン成分との縮合体(ホモ又はコポリアミド)などが好ましい。代表的な脂環族ポリアミド樹脂(脂環族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とを構成成分とする脂環族ポリアミド樹脂)には、下記式(1)で表される脂環族ポリアミドなどが含まれる。
【0035】
【化1】

【0036】
(式中、Xは、直接結合、アルキレン基又はアルケニレン基を示し、R及びRは、同一又は異なる置換基を示し、m及びnは0又は1〜4の整数、pおよびqは1以上の整数を示す)
前記式(1)において、基Xで表されるアルキレン基(又はアルキリデン基)としては、メチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロパン−1,3−ジイル、2−プロピリデン、ブチレンなどのC1−6アルキレン基(又はアルキリデン基)、好ましくはC1−4アルキレン基(又はアルキリデン基)、さらに好ましくはC1−3アルキレン基(又はアルキリデン基)が挙げられる。また、基Xで表されるアルケニレン基としては、ビニレン、プロぺニレンなどのC2−6アルケニレン基、好ましくはC2−4アルケニレン基などが挙げられる。
【0037】
置換基R及びRとしては、例えば、アルキル基などの炭化水素基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基などのC1−6アルキル基、好ましくはC1−4アルキル基、さらに好ましくはC1−2アルキル基が挙げられる。
【0038】
及びRの数mおよびnは、0又は1〜4の整数から選択できるが、通常、0又は1〜3の整数、好ましくは0又は1〜2の整数、さらに好ましくは0又は1であってもよい。また、置換基R及びRの置換位置は、通常、アミド基に対して2位、3位、5位、6位から選択でき、好ましくは2位、6位であってもよい。
【0039】
前記式(1)において、pは、例えば、4以上(例えば、4〜30程度)、好ましくは6以上(例えば、6〜20程度)、さらに好ましくは8以上(例えば、8〜15程度)であってもよい。また、前記式(1)において、q(重合度)は、例えば、5以上(例えば、10〜1000程度)、好ましくは10以上(例えば、30〜800程度)、さらに好ましくは50以上(例えば、100〜500程度)であってもよい。
【0040】
芳香族ポリアミド樹脂には、前記脂肪族ポリアミドにおいて、脂肪族ジアミン成分及び脂肪族ジカルボン酸成分のうち少なくとも一方の成分が芳香族成分であるポリアミド、例えば、ジアミン成分が芳香族成分であるポリアミド[MXD−6などの芳香族ジアミン(メタキシリレンジアミンなど)と脂肪族ジカルボン酸との縮合体など]、ジカルボン酸成分が芳香族成分であるポリアミド[脂肪族ジアミン(トリメチルヘキサメチレンジアミンなど)と芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)との縮合体など]などが含まれる。
【0041】
なお、芳香族ポリアミド樹脂は、ジアミン成分及びジカルボン酸成分が芳香族成分であるポリアミド[ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)など]の全芳香族ポリアミド(アラミド)であってもよい。
【0042】
ポリアミド樹脂は、さらに、ダイマー酸をジカルボン酸成分とするポリアミド、分岐鎖構造を導入したポリアミドなどの変性ポリアミドであってもよい。
【0043】
好ましいポリアミドは、脂肪族ポリアミド(特に、ポリアミド12)、脂環族ポリアミドなどが含まれる。
【0044】
ポリアミドは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0045】
なお、ポリアミドのISO178による曲げ弾性率は、ポリアミドエラストマーなどに比べて比較的大きい場合が多く、例えば、300MPa以上(例えば、500MPa以上)、好ましくは600MPa以上(例えば、700〜5000MPa程度)、さらに好ましくは700MPa以上(例えば、800〜3500MPa程度)、特に900MPa以上(例えば、1000〜3000MPa程度)であってもよい。そのため、樹脂成分(A)を、少なくともポリアミドで構成すると、曲げ弾性率を本発明の範囲を充足する範囲に調整しやすい。
【0046】
また、前記のように、ポリアミド樹脂には、ポリアミドエラストマーも含まれる。このようなポリアミドエラストマー(ポリアミドブロック共重合体)としては、ハードセグメント(又はハードブロック)としてのポリアミドとソフトセグメント(又はソフトブロック)とをするポリアミドブロック共重合体、例えば、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体、ポリアミド−ポリエステルブロック共重合体、ポリアミド−ポリカーボネートブロック共重合体などが挙げられる。
【0047】
代表的なポリアミドエラストマーは、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体である。ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体において、ポリエーテル(ポリエーテルブロック)としては、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリC2−6アルキレングリコール、好ましくはポリC2−4アルキレングリコール)などが挙げられる。
【0048】
このようなポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体としては、例えば、反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合により得られるブロック共重合体、例えば、ポリエーテルアミド[例えば、ジアミン末端を有するポリアミドブロックとジカルボキシル末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体、ジカルボキシル末端を有するポリアミドブロックとジアミン末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体など]、ポリエーテルエステルアミド[ジカルボキシル末端を有するポリアミドブロックとジヒドロキシ末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体など]などが挙げられる。なお、市販のポリアミドエラストマーは、通常、アミノ基をほとんど有していない場合が多い。
【0049】
ポリアミドエラストマーは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0050】
ポリアミドエラストマー(ポリアミドブロック共重合体)において、ソフトセグメント(ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリカーボネートブロックなど)の数平均分子量は、例えば、100〜10000程度の範囲から選択でき、好ましくは300〜6000(例えば、300〜5000)、さらに好ましくは500〜4000(例えば、500〜3000)、特に1000〜2000程度であってもよい。
【0051】
また、ポリアミドブロック共重合体において、ポリアミドブロック(ポリアミドセグメント)と、ソフトセグメントブロックとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=95/5〜20/80、好ましくは90/10〜30/70、さらに好ましくは80/20〜40/60、特に75/25〜50/50(例えば、73/27〜55/45)程度であってもよい。
【0052】
なお、ポリアミドエラストマーのショアD硬度は、例えば、40〜80、好ましくは45〜75、さらに好ましくは50〜65程度であってもよい。なお、ショアD硬度は、ASTM D2240などに準拠して測定できる。
【0053】
ポリアミド樹脂の数平均分子量は、例えば、8000〜200000、好ましくは9000〜150000、さらに好ましくは10000〜100000程度であってもよい。
【0054】
ポリアミド樹脂の融点は、例えば、80℃〜300℃、好ましくは90℃〜280℃、さらに好ましくは100℃〜260℃程度であってもよい。特に、本発明では、後述するように、比較的高融点[例えば、融点165℃以上(例えば、165〜280℃、好ましくは170〜260℃、さらに好ましくは175〜250℃程度)、特に融点170℃以上(例えば、175〜260℃)]のポリアミド樹脂(例えば、脂肪族ポリアミドなど)を少なくとも含む樹脂成分を使用するのが好ましい。このような高融点のポリアミド樹脂としては、前記例示の樹脂のうち、ポリアミド(ポリアミド612、ポリアミド12、ポリアミド1012などの脂肪族ポリアミド、脂環族ポリアミドなど)、ソフトセグメントの割合が比較的少ないポリアミドエラストマーなどが挙げられる。高融点のポリアミドは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、ハードセグメントの割合や種類にもよるが、ポリアミドエラストマー(例えば、ポリアミド12などをハードセグメントとするポリアミドエラストマーなど)の融点は、比較的低融点(例えば、融点165℃未満)である場合が多い。
【0055】
このような高融点(例えば、融点165℃以上)のポリアミド樹脂の割合は、ポリアミド樹脂(a)全体に対して、例えば、20重量%以上(例えば、25〜100重量%程度)、好ましくは30重量%以上(例えば、35〜100重量%程度)、さらに好ましくは40重量%以上(例えば、45〜100重量%程度)、通常50重量%以上(例えば、55〜100重量%程度)であってもよく、特に60重量%以上(好ましくは70重量%以上)であってもよい。
【0056】
なお、ポリアミド樹脂(a)が、複数の融点165℃以上のポリアミド樹脂を含む場合、上記割合は、これらの総量である。また、融点165℃以上のポリアミド樹脂と、融点165℃未満のポリアミド樹脂(ポリアミドエラストマーなど)とを組み合わせる場合、これらの割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜20/80(例えば、98/2〜25/75)、好ましくは97/3〜30/70(例えば、95/5〜35/65)、さらに好ましくは93/7〜40/60(例えば、90/10〜45/55)、特に85/15〜50/50(例えば、80/20〜55/45)程度であってもよく、通常95/5〜60/40(例えば、93/7〜65/35、好ましくは90/10〜70/30)程度であってもよい。
【0057】
ポリアミド樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。2種以上のポリアミド樹脂を組み合わせると(例えば、2種以上のポリアミド、1又は2種以上のポリアミドと1又は2種以上のポリアミドエラストマーとの組み合わせなど)、アミノ基濃度や曲げ弾性率(ひいては、ゴム及び/又は熱可塑性エラストマーとの接着性や変形性)を容易にコントロールしやすい。特に、ポリアミドエラストマーは、一般的に曲げ弾性率や融点が低く、接着性を向上させやすい一方で変形を受け易いため、ポリアミドとの組合せにより良好な接着性と変形性を両立させやすい。
【0058】
シートを構成する樹脂成分は、ポリアミド樹脂(a)のみで構成してもよく、ポリアミド樹脂(a)に加えて他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性エラストマー、例えば、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、フッ素系エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。他の樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0059】
他の樹脂を含む場合、他の樹脂の割合は、例えば、ポリアミド樹脂(a)100重量部に対して、100重量部以下(例えば、1〜80重量部程度)、好ましくは70重量部以下(例えば、2〜60重量部程度)、さらに好ましくは50重量部以下(例えば、2〜40重量部程度)、特に30重量部以下(例えば、3〜20重量部程度)であってもよい。
【0060】
本発明のシートでは、樹脂成分(A)として、特定のアミノ基濃度および曲げ弾性率を有する樹脂成分を使用することに特色がある。このような特定の樹脂成分で構成することにより、変形に対する耐性が比較的強いにもかかわらず、ゴム層および熱可塑性エラストマー層のいずれに対しても接着性に優れたシートとすることができる。
【0061】
このような樹脂成分(A)のアミノ基濃度は、10mmol/kg以上(例えば、10〜300mmol/kg程度)であればよく、例えば、15mmol/kg以上(例えば、25〜200mmol/kg程度)、好ましくは30mmol/kg以上(例えば、35〜150mmol/kg程度)、さらに好ましくは40mmol/kg以上(例えば、45〜120mmol/kg程度)、特に50mmol/kg以上(例えば、55〜100mmol/kg程度)、特に好ましくは60mmol/kg以上(例えば、62〜100mmol/kg程度)であってもよく、通常10〜100mmol/kg(例えば、12〜90mmol/kg、好ましくは15〜80mmol/kg、さらに好ましくは20〜70mmol/kg)程度であってもよい。
【0062】
なお、上記アミノ基濃度は、樹脂成分(A)全体に対する濃度であり、例えば、樹脂成分(A)が、複数のポリアミド樹脂で構成されている場合には、これらのポリアミド樹脂組成物全体のアミノ基濃度であり、すべてのポリアミド樹脂が上記アミノ基濃度を有していてもよく、一部のポリアミド樹脂が上記アミノ基濃度を有していてもよい。アミノ基は、通常、ポリアミド樹脂そのものが有しているが、樹脂成分(A)に、アミノ基を有する化合物(ポリアミド樹脂ではない化合物)を含有させてアミノ基濃度を調整することもできる。
【0063】
アミノ基を有する化合物(アミノ基濃度の高い比較的低分子量のアミノ基含有化合物)としては、モノアミン(炭素数2〜24の脂肪族、脂環族、芳香族モノアミンなど)、ポリアミン[例えば、ジアミン(前記例示の脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミンなど)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミンなど]、ポリアミドオリゴマー(詳細には、分子末端及び/又は分岐鎖などに遊離のアミノ基を有するポリアミドオリゴマー)などが挙げられる。これらのアミノ基を有する化合物は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0064】
アミノ基を有する化合物の割合は、ポリアミド樹脂(詳細には、ベースとなるポリアミド樹脂)100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.02〜20重量部、さらに好ましくは0.03〜15重量部程度であってもよく、通常10重量部以下[例えば、0.05〜8重量部、好ましくは5重量部以下(例えば、0.1〜3重量部)程度]であってもよい。
【0065】
これらのアミノ基を有する化合物のうち、特に、ポリアミドオリゴマーが好ましい。なお、ポリアミドオリゴマーとは、低分子量のポリアミドを意味し、ポリアミドオリゴマーとしては、慣用の方法、例えば、前記例示のポリアミド成分(ジアミン成分、ジカルボン酸成分、ラクタム、アミノカルボン酸など)を用いて、モノマー処方や重縮合条件などを調整することなどにより得られる比較的分子量の低いポリアミドなどが使用できる。
【0066】
ポリアミドオリゴマーの数平均分子量は、例えば、8000未満(例えば、200〜7500)、好ましくは500〜7000、さらに好ましくは1000〜5000程度であり、通常、2000〜6500(例えば、2500〜6000)程度であってもよい。ポリアミドオリゴマーの有するアミノ基は、主鎖の少なくとも一方の末端にあってもよく、主鎖の両末端にあってもよく、また、分岐鎖にあってもよい。
【0067】
ポリアミドオリゴマーのアミノ基濃度は、例えば、100〜4000mmol/kg、好ましくは120〜3000mmol/kg、さらに好ましくは200〜2000mmol/kgであり、通常、150〜1500mmol/kg程度であってもよい。
【0068】
特に、ポリアミドオリゴマーの割合(使用割合)は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。
【0069】
なお、上記のように、樹脂成分(A)はアミノ基を有している。このようなアミノ基のうち、ポリアミド樹脂(さらには、ポリアミドオリゴマー)に含まれるアミノ基は、分子鎖末端、側鎖などのいずれに位置していてもよいが、接着性の観点からは、分子鎖末端に含まれるアミノ基であるのが好ましい。また、前記のように、ポリアミド樹脂自体がアミノ基を有している場合が多いが、中でも、所定の濃度(10mmol/kg以上)でアミノ基を有しているポリアミドエラストマーを用いると、接着性や変形の防止又は抑制の点でより一層有利である。
【0070】
また、樹脂成分(A)のISO178による曲げ弾性率は、300MPa以上(例えば、300〜5000MPa程度)であればよく、好ましくは400MPa以上(例えば、450〜3500MPa程度)、さらに好ましくは500MPa以上(例えば、550〜3000MPa程度)、特に600MPa以上(例えば、600〜2800MPa程度)であってもよく、通常500〜3000MPa(例えば、600〜2500MPa)程度であってもよい。なお、上記曲げ弾性率は、前記アミノ基濃度と同様に、樹脂成分(A)全体に対する濃度であり、例えば、樹脂成分(A)が、複数のポリアミド樹脂で構成されている場合には、これらのポリアミド樹脂を含む樹脂組成物全体の曲げ弾性率である。
【0071】
代表的な樹脂成分(A)(又はポリアミド樹脂(a))には、以下の(1)〜(3)などが含まれる。
【0072】
(1)アミノ基濃度10mmol/kg以上、融点165℃以上、ISO178による曲げ弾性率が300MPa以上であるポリアミド樹脂単独(例えば、ポリアミド単独、ポリアミドエラストマー単独など)
なお、上記ポリアミド樹脂が、ポリアミド単独である場合、ISO178による曲げ弾性率は、前記のように、比較的高い[例えば、600MPa以上(例えば、700〜5000MPa、好ましくは800〜3500MPa、さらに好ましくは1000〜3000MPa)程度である]場合が多い。
【0073】
一方、上記ポリアミド樹脂が、ポリアミドエラストマー単独などである場合、ISO178による曲げ弾性率は、本発明の範囲を充足する範囲で比較的小さい[例えば、600MPa未満(例えば、300〜580MPa程度)、好ましくは550MPa以下(例えば、310〜530MPa程度)、さらに好ましくは500MPa以下(例えば、320〜480MPa程度)、特に450MPa以下(例えば、330〜420MPa)程度]場合がある。このような曲げ弾性率が比較的小さい場合には、非常に高融点の[例えば、融点180℃以上(例えば、180〜280℃、好ましくは185〜250℃、さらに好ましくは190〜220℃程度)、好ましくは融点190℃以上、さらに好ましくは融点200℃以上の]ポリアミド樹脂(特にポリアミドエラストマー)を好適に使用してもよい。
【0074】
(2)複数のポリアミドで構成された樹脂組成物であって、融点165℃以上のポリアミドを30重量%以上の割合で含み、全体としてアミノ基濃度10mmol/kg以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を充足するポリアミド樹脂組成物
なお、上記複数のポリアミドは、すべてのポリアミドが、アミノ基を10mmol/kg以上有していてもよく、アミノ基濃度が10mmol/kg未満のポリアミドを含んでいてもよい。
【0075】
代表的な上記樹脂組成物(2)には、(2a)融点165℃以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上(特に、600MPa以上)のポリアミドを複数含む樹脂組成物であって、全体としてアミノ基濃度が10mmol/kg以上であるポリアミド樹脂組成物などが含まれる。
【0076】
(3)ポリアミド(1又は2以上のポリアミド)およびポリアミドエラストマー(1又は2以上のポリアミドエラストマー)で構成された樹脂組成物であって、前記ポリアミド及び/又は前記ポリアミドエラストマーの30重量%以上が融点165℃以上であり、全体としてアミノ基濃度10mmol/kg以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を充足するポリアミド樹脂組成物
なお、上記ポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド及びポリアミドエラストマーが、すべてアミノ基を10mmol/kg以上有していてもよく、アミノ基濃度が10mmol/kg未満のポリアミドやポリアミドエラストマーを含んでいてもよい。特に、ポリアミドエラストマーとして、アミノ基濃度が10mmol/kg以上を有するポリアミドエラストマーを使用するのが好ましい。
【0077】
代表的な上記樹脂組成物(3)には、以下の樹脂組成物(3a)〜(3d)などが含まれる。
【0078】
(3a)融点165℃以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上(特に、600MPa以上)を有する1又は2以上のポリアミド(a1)と、融点165℃未満およびISO178による曲げ弾性率300MPa未満を有する1又は2以上のポリアミドエラストマー(a2)とで構成されたポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド(a1)を30重量%以上の割合で含み、全体としてアミノ基濃度10mmol/kg以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を充足するポリアミド樹脂組成物
(3b)融点165℃以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上(特に、600MPa以上)を有する1又は2以上のポリアミド(b1)と、融点165℃以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa未満を有する1又は2以上のポリアミドエラストマー(b2)とで構成されたポリアミド樹脂組成物であって、全体としてアミノ基濃度10mmol/kg以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を充足するポリアミド樹脂組成物
(3c)融点165℃以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上(特に、600MPa以上)を有する1又は2以上のポリアミド(c1)と、融点165℃未満およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を有する1又は2以上のポリアミドエラストマー(c2)とで構成されたポリアミド樹脂組成物であって、前記ポリアミド(c1)を30重量%以上の割合で含み、全体としてアミノ基濃度10mmol/kg以上を充足するポリアミド樹脂組成物
(3d)融点165℃以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上(特に、600MPa以上)を有する1又は2以上のポリアミド(d1)と、融点165℃以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を有する1又は2以上のポリアミドエラストマー(d2)とで構成されたポリアミド樹脂組成物であって、全体としてアミノ基濃度10mmol/kg以上を充足するポリアミド樹脂組成物。
【0079】
上記(3)(又は(3a)〜(3d))の中でも、特に、ポリアミドエラストマー(又はポリアミドエラストマー(a2)〜(d2))のアミノ基濃度が10mmol/kg以上であるのが好ましい。
【0080】
本発明のシートは、本発明の効果を害しない範囲で、樹脂成分(A)以外の成分、例えば、フィラー(又は補強剤)、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤など)、着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの中でも、特に、フィラーをシートに添加すると、シート自体の曲げ弾性率をより一層向上させることができる。
【0081】
フィラー(充填剤)としては、繊維状充填剤、非繊維状充填剤(粉粒状又は板状充填剤など)などが挙げられる。繊維状充填剤としては、例えば、有機繊維(天然繊維など)、無機繊維(ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ウォラストナイト、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維など)、金属繊維などが含まれる。
【0082】
また、非繊維状充填剤としては、例えば、鉱物質粒子(タルク、マイカ、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト(又はウォラストナイト)など)、ホウ素含有化合物(窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタンなど)、金属炭酸塩(炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど)、金属珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウムなど)、金属酸化物(酸化マグネシウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、金属炭化物(炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタンなど)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタンなど)、ホワイトカーボン、各種金属箔などが挙げられる。これらの非繊維状充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0083】
なお、繊維状充填剤の平均繊維長は、例えば、0.1〜10mm、好ましくは0.3〜7mm、さらに好ましくは0.5〜5mm程度であってもよい。また、繊維状充填剤の平均繊維径は、例えば、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜30μm、さらに好ましくは1〜10μm程度であってもよい。非繊維状充填剤(粉粒状充填剤)の平均粒径は、例えば、0.1〜10μm)、好ましくは0.3〜5μm、さらに好ましくは0.5〜5μm程度であってもよい。
【0084】
添加剤(非樹脂成分)を使用する場合、添加剤の割合は、樹脂成分(A)100重量部に対して、50重量部以下(例えば、0.01〜40重量部)、好ましくは30重量部以下(例えば、0.1〜25重量部)、さらに好ましくは20重量部以下(例えば、1〜18重量部)であってもよい。
【0085】
特に、フィラーを使用する場合、樹脂成分(A)とフィラーとの割合は、例えば、前者/後者(体積比)=99/1〜70/30(例えば、99/1〜75/25)、好ましくは98/2〜80/20(例えば、97/3〜85/15)、さらに好ましくは96/4〜90/10程度であってもよい。また、樹脂成分(A)とフィラーとの割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜40/60(例えば、98/2〜50/50)、好ましくは97/3〜60/40(例えば、96/4〜70/30)、さらに好ましくは95/5〜75/25程度であってもよく、通常99/1〜80/20(例えば、97/3〜85/15)程度であってもよい。
【0086】
シートの厚みは、特に限定されないが、例えば、2mm以下(例えば、0.05〜1.5mm)、好ましくは0.07〜1mm、さらに好ましくは0.1〜0.7mm程度であってもよく、通常0.15〜0.8mm(例えば、0.2〜0.75mm)程度であってもよい。上記のような厚みの小さいシートでは、その強度を保持しつつ、ソールの形状に応じて十分に密着させることができるため、より直接接合の効果を高めることができる。また、樹脂成分の透明性が比較的低いものであってもある程度の光透過性を得ることができる場合が多いため、例えば、ソールの模様や色彩がシート上を透過して視認できるなど、デザイン面でのバリエーションを拡大できる。
【0087】
本発明のシートは、前記樹脂成分(さらには、必要に応じて添加剤を含む組成物)を、慣用の方法でシート成形することにより得ることができる。シートの成形法としては、特に限定されず、例えば、押出成形、射出成形、溶液キャスティング法などを利用できる。
【0088】
このような本発明のシートは、靴底(靴底用複合成形体)を形成するためのシートとして有効である。すなわち、本発明のシートは、スタッド(部材)としての架橋ゴム層と、ソール(部材)としての熱可塑性エラストマー層との間に介在し、これらの層を直接積層するためのシート(又は一方の面にスタッド(部材)としての架橋ゴム層を直接形成するとともに、他方の面にソール(部材)として熱可塑性エラストマー層を直接形成して靴底(靴底用複合成形体)を形成するためのシート)として好適に使用できる。
【0089】
なお、スタッドとして架橋ゴム層とソールとしての熱可塑性エラストマー層とを直接的に接着させようとすると、前記のような架橋ゴム層の表面処理が必要であったり、熱可塑性エラストマー層の変形を防止することが難しい。そして、このような変形を防止するため、ソールに高耐熱性や高剛性の材料を用いると、ソール(靴底)としての要求性能である柔軟性が損なわれる。また、前記特許文献3では、合成ゴムのアウトソール意匠部と、この意匠部と接合一体化された熱可塑性エラストマーシートと、さらに、靴底本体の熱可塑性エラストマーとの3層構造とすることにより、靴底の生産効率をある程度向上できるが、熱可塑性エラストマーシートの変形を抑制又は防止するため、ゴムの架橋初期において金型の型開きが必要であり、また、合成ゴムのアウトソール意匠部と熱可塑性エラストマーシートとの接着不良が生じる場合がある。
【0090】
一方、本発明のシートは、特定の成分で構成され、比較的大きい剛性を有するため、架橋ゴム層を表面処理しなくても、変形させることなく強固に架橋ゴム層に対して接着できる。しかも、このような本発明のシートを架橋ゴム層と熱可塑性エラストマー層との間に介在させることにより、熱可塑性エラストマーで構成されたソールを変形させることなく、シートとソールとを強固に接着でき、ソール(又は靴底)としての柔軟性を損なうこともない。
【0091】
そのため、本発明のシートを用いることにより、溶剤や化学薬品を使用することなく、しかも、ゴムの架橋途中で型開きをしなくても、高い作業性で、スタッドとソールとが強固に接合しているとともに、ソールとしての要求性能を充足した靴底を得ることができる。
【0092】
以下に、本発明のシートを用いた靴底(靴底用複合成形体)について詳述する。
【0093】
[靴底(靴底用複合成形体)]
本発明の靴底(靴底用複合成形体)は、上記のように、前記シートと、このシートの一方の面に直接形成された(直接接合された)(スタッドとしての)架橋ゴム層と、前記シートの他方の面に直接形成された(ソールとしての)熱可塑性エラストマー層とで構成されている。
【0094】
(架橋ゴム層)
架橋ゴム層は、ゴムが架橋した層で形成されており、このような層は、未架橋ゴム(組成物)が架橋して形成されている(すなわち、未架橋ゴム(組成物)が架橋した層である)。
【0095】
ゴム(又は未架橋ゴム)としては、特に限定されず、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、プロピレンオキシドゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EAM)、ポリノルボルネンゴム、これらの変性ゴム(酸変性ゴムなど)などが例示できる。これらのゴムは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0096】
ジエン系ゴムには、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、イソブチレンイソプレンゴム(ブチルゴム)(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系単量体の重合体;例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)(NBR)、ニトリルクロロプレンゴム(NCR)、ニトリルイソプレンゴム(NIR)などのアクリロニトリル−ジエン共重合ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR、例えば、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体、スチレンブロックとブタジエンブロックとで構成されたSBブロック共重合体など)、スチレンクロロプレンゴム(SCR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)などのスチレン−ジエン共重合ゴムなどが含まれる。ジエン系ゴムには、水添ゴム、例えば、水素添加ニトリルゴム(HNBR)なども含まれる。
【0097】
オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDMなど)、ポリオクテニレンゴムなどが例示できる。
【0098】
アクリル系ゴムには、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするゴム、例えば、アクリル酸アルキルエステルと塩素含有架橋性単量体との共重合体ACM、アクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルとの共重合体ANM、アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基及び/又はエポキシ基含有単量体との共重合体、エチレンアクリルゴムなどが例示できる。
【0099】
フッ素ゴムとしては、フッ素含有単量体を用いたゴム、例えば、フッ化ビニリデンとパーフルオロプロペンと必要により四フッ化エチレンとの共重合体FKM、四フッ化エチレンとプロピレンとの共重合体、四フッ化エチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとの共重合体FFKMなどが例示できる。
【0100】
シリコーンゴムとしては、例えば、メチルシリコーンゴム(MQ)、ビニルシリコーンゴム(VMQ)、フェニルシリコーンゴム(PMQ)、フェニルビニルシリコーンゴム(PVMQ)、フッ化シリコーンゴム(FVMQ)などが含まれる。
【0101】
変性ゴムとしては、上記ゴムの酸変性ゴム、例えば、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(X−SBR)、酸変性ニトリルゴム(カルボキシル化ニトリルゴム、X−NBR)、カルボキシル化エチレンプロピレンゴム(X−EPM)などのカルボキシル基又は酸無水物基を有するゴムが含まれる。
【0102】
架橋ゴム層は、通常、未架橋ゴム(又は未加硫ゴム)を含む組成物(未架橋ゴム組成物又は未加硫ゴム組成物)により形成されていてもよい。未架橋ゴム組成物は、少なくとも未架橋ゴムと架橋剤とで構成されていてもよい。
【0103】
架橋剤(加硫剤)としては、例えば、ラジカル発生剤(有機過酸化物、アゾ化合物、硫黄含有有機化合物など)、硫黄系加硫剤(粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄などの塩化硫黄、表面処理硫黄、アルキルフェノール・ジスルフィド、モルホリン・ジスルフィドなど)、オキシム系架橋剤(例えば、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなど)、樹脂系架橋剤(例えば、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、硫化−p−第3ブチルフェノール樹脂、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂など)、脂肪酸塩(ラウリン酸カリウム、ヤシ脂肪酸ソーダなど)、金属塩(酸化亜鉛、過酸化亜鉛など)などが例示できる。架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0104】
有機過酸化物(又はパーオキサイド)としては、例えば、ヒドロパーオキサイド[例えば、アルキルヒドロパーオキサイド(t−ブチルヒドロパーオキサイドなど)、アルカンジヒドロパーオキサイド(例えば、クメンヒドロパーオキサイドなど)など]、ジアルキルパーオキサイド(例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジC1−10アルキルパーオキサイド;ジクミルパーオキサイドなどのジアラルキルパーオキサイド;t−ブチル−クミルパーオキサイドなどのアルキル−アラルキルパーオキサイド)、ジアシルパーオキサイド[例えば、過酸化ジアセチル、ラウロイルパーオキサイドなどのジアルカノイルパーオキサイド(ジC1−18アルカノイルパーオキサイドなど);ベンゾイルパーオキサイド、4−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルトルイルパーオキサイド、トルイルパーオキサイドなどのジアロイルパーオキサイド(ジC7−12アロイルパーオキサイドなど)など]、ジ(アルキルパーオキシ)アルカン[例えば、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどのジ(C1−10アルキルパーオキシ)C1−10アルカン]、ジ(アルキルパーオキシ)シクロアルカン[例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのジ(C1−10アルキルパーオキシ)C5−10シクロアルカン]、ジ(アルキルパーオキシアルキル)アレーン[例えば、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジ(C1−10アルキルパーオキシC1−4アルキル)C6−10アレーン]、ジ(アルキルパーオキシ)アルキン[例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3など]、ジ(アシルパーオキシ)アルカン(例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサンなど)、過酸エステル[例えば、過酸アルキルエステル(例えば、過酢酸t−ブチル、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシデカノエートなどの過アルカン酸アルキルエステル(C1−18過アルカン酸C1−6アルキルエステルなど);t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシ(イソ)フタレートなどの過アレーンカルボン酸アルキルエステル(C1−6アルキルエステルなど)など]、ケトンパーオキサイド、パーオキシカーボネートなどが含まれる。
【0105】
アゾ化合物としては、例えば、アゾニトリル化合物[2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)など]、アゾアミド化合物{2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}など}、アゾアミジン化合物{2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩など}、アゾアルカン化合物[2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)など]などが含まれる。
【0106】
硫黄含有有機化合物としては、チウラム類(テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)など)、ジチオカルバミン酸塩類(ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸などのジC1−4アルキルジチオカルバミン酸と、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、セレン又はテルルとの塩など)、チアゾ−ル類(2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど)などが含まれる。なお、TMTDなどの硫黄含有有機化合物は、硫黄と組み合わせてもよく、硫黄と組み合わせることなく、無硫黄架橋剤として使用してもよい。
【0107】
これらの架橋剤のうち、ラジカル発生剤が好ましく、特に、シート部材との接着性の観点から、有機過酸化物が好ましい。
【0108】
架橋剤の割合は、未架橋ゴム100重量部に対して、例えば、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部、特に1〜8重量部程度であってもよい。
【0109】
また、未架橋ゴム組成物は、架橋助剤(又は加硫活性剤又は加硫助剤)を含んでいてもよい。架橋助剤としては、架橋剤の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、ビニル系単量体(ジビニルベンゼンなど)、アリル系単量体(ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテートなど)、(メタ)アクリル系単量体、マレイミド系化合物、ジ(メタ)アクリル酸金属塩(亜鉛塩、マグネシウム塩等)、アンモニア誘導体、二硫化炭素誘導体などが挙げられる。これらの架橋助剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0110】
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート類[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレートなど]、三官能性又は多官能性(メタ)アクリレート類[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。
【0111】
マレイミド系化合物には、例えば、芳香族ビスマレイミド(N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−3−メチル−1,4−フェニレンジマレイミド、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(N,N’−マレイミド)ジフェニルエーテルなど)、脂肪族ビスマレイミド(N,N’−1,2−エチレンビスマレイミド、N,N’−1,3−プロピレンビスマレイミド、N,N’−1,4−テトラメチレンビスマレイミドなど)などが例示できる。
【0112】
アンモニア誘導体としては、アルデヒド−アンモニア類(ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド−アンモニア、塩化エチル−ホルムアルデヒド−アンモニア反応物など)、アルデヒド−アミン類(n−ブチルアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アセトアルデヒド−ブチリデンアニリン反応物など)、グアニジン類(N,N−ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニドなど)などが例示できる。
【0113】
二硫化炭素誘導体としては、チオウレア類(チオカルボアニリド、ジオルトトリルチオウレア、エチレンチオウレア、ジメチルチオウレア、トリメチルチオウレアなど)、ジチオカルバミン酸塩類(ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸などのジC1-4アルキルジチオカルバミン酸と、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、セレン又はテルルとの塩など)、チアゾ−ル類[2−メルカプトベンゾチアゾ−ル(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾ−ルの塩(亜鉛、ナトリウムなどの金属塩、シクロヘキシルアミンなどのアミン塩など)、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど]、スルフェンアミド類(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−1,2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミドなど)、キサントゲン酸塩類(イソプロピルキサントゲン酸、ブチルキサントゲン酸などのアルキルキサントゲン酸と、ナトリウム、亜鉛などとの塩など)などが例示できる。
【0114】
好ましい架橋助剤は、架橋剤の種類に応じて選択でき、有機過酸化物などのラジカル発生剤を架橋剤とする場合、ビニル系単量体、アリル系単量体、(メタ)アクリル系単量体、マレイミド系化合物などが好ましい。
【0115】
架橋助剤(加硫活性剤)の使用量は、使用する加硫活性剤の種類などに応じて選択できるが、通常、ポリアミド樹脂とゴムとの接着を促進可能な量、例えば、ゴム(未架橋ゴム)100重量部に対して、0.1〜15重量部程度、好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部程度であってもよい。また、架橋助剤の割合は、架橋剤1重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜4重量部程度であってもよい。
【0116】
未架橋ゴム組成物は、さらに必要に応じて、種々の添加剤、例えば、フィラー[粉粒状フィラー又は補強剤(マイカ、クレー、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、ホワイトカーボン、フェライトなど)、繊維状フィラー又は補強剤(レーヨン、ナイロン、ビニロン、アラミドなどの有機繊維、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維など)など]、軟化剤(リノール酸、オレイン酸、ひまし油、パーム油などの植物油;パラフィン、プロセスオイル、エキステンダーなどの鉱物油など)、可塑剤(フタル酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル、硫黄含有可塑剤、ポリエステル系高分子可塑剤など)、共架橋剤(酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物など)、老化防止剤(熱老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、粘着付与剤、加工助剤、滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックスなど)、難燃剤、帯電防止剤、着色剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0117】
架橋ゴム層の厚みは、例えば、1〜30mm、好ましくは2〜20mm、さらに好ましくは3〜15mm程度であってもよく、通常2〜20mm程度であってもよい。なお、架橋ゴム層の厚みは、靴の用途に応じて選択してもよく、例えば、ランニングシューズなどでは2〜3.5mm程度、サッカーシューズなどでは10〜20mm程度としてもよい。
【0118】
また、架橋ゴム層とシートとの厚み比は、前者/後者=100/1〜1/1、好ましくは90/1〜2/1、さらに好ましくは80/1〜3/1程度であってもよく、通常75/1〜4/1(例えば、70/1〜5/1)程度であってもよい。
【0119】
架橋ゴム(層)のアクロン摩耗量は、スタッドを形成するという観点から、200mm以下(例えば、0〜150mm)程度の範囲から選択でき、例えば、100mm以下(例えば、0.1〜90mm)、好ましくは80mm以下(例えば、0.5〜75mm)、さらに好ましくは70mm以下(例えば、1〜60mm程度)であってもよく、通常1〜50mm(例えば、2〜40mm)程度であってもよい。なお、アクロン摩耗は、例えば、アクロン磨耗B法により、荷重27N、傾角10度、回転速度75rpmにおいて1000回転あたりの磨耗体積として測定できる。
【0120】
なお、架橋ゴム(層)のショアA硬度は、例えば、30〜80、好ましくは35〜70、さらに好ましくは40〜60程度であってもよい。なお、ショアA硬度は、ASTM D2240などに準拠して測定できる。
【0121】
なお、架橋ゴム層は、靴底(靴底用複合成形体)のスタッド(スタッド部)を形成している。そのため、架橋ゴム層の形状は、所望のスタッドの形状に合わせて選択でき、架橋ゴム層は、シートの一方の面全体又は面の一部に形成してもよい。
【0122】
架橋ゴム層は、シートの一方の面に、接着剤層などを介することなく直接的に接着(接合)している。このような架橋ゴム層とシートとの接着は強固であり、例えば、本発明の靴底用複合成形体では、架橋ゴム層とシートとを、温度23℃および湿度50%の条件下で4日間保持した後に剥離させたとき、界面において少なくとも一部が破壊(凝集破壊)する程度で架橋ゴム層とシートとが接合している。
【0123】
(熱可塑性エラストマー層)
熱可塑性エラストマー層は、熱可塑性エラストマーで構成されている。熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリウレタンエラストマー(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、フッ素系エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0124】
ポリウレタンエラストマーは、通常、ハードセグメント(ハードブロック)としてのポリウレタン(ブロック)と、ソフトセグメント[又はソフトブロック、例えば、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック(脂肪族ポリエステルブロックなど)など]とをするポリウレタンブロック共重合体であってもよい。
【0125】
代表的なポリウレタンエラストマーとしては、ソフトセグメントの種類に応じて、例えば、ポリエステルウレタンエラストマー、ポリエステルエーテルウレタンエラストマー、ポリエーテルウレタンエラストマー、ポリカーボネートウレタンエラストマーなどが含まれる。
【0126】
ポリウレタンエラストマーのうち、ポリエステルウレタンエラストマー、ポリエステルエーテルウレタンエラストマー、ポリエーテルウレタンエラストマーなどが好ましい。
【0127】
なお、ポリウレタンエラストマーにおいて、ソフトセグメント(例えば、ポリエーテルブロックなど)の数平均分子量は、例えば、100〜10000程度の範囲から選択でき、好ましくは300〜6000(例えば、300〜5000)、さらに好ましくは500〜4000(例えば、500〜3000)程度であってもよく、通常1000〜4000程度であってもよい。
【0128】
また、ポリアミドエラストマーとしては、前記シートの項で例示のポリアミドエラストマーなどが挙げられる。熱可塑性エラストマー層を構成するポリアミドエラストマーは、前記のような融点やアミノ基濃度、さらには曲げ弾性率を充足していてもよいが、充足していなくてもよい。
【0129】
好ましい熱可塑性エラストマーには、接着性の点で、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーが含まれ、特に、ポリウレタンエラストマーが好ましい。これらのポリウレタンエラストマー及び/ポリアミドエラストマーは、他の熱可塑性エラストマーと組み合わせてもよい。
【0130】
このようなポリウレタンエラストマー及び/又はポリアミドエラストマーで熱可塑性エラストマーを構成する場合、熱可塑性エラストマー全体に対するポリウレタンエラストマー及び/又はポリアミドエラストマーの割合は、例えば、30重量%以上(例えば、40〜100重量%)、50重量以上(例えば、60〜100重量%)、さらに好ましくは70重量%以上(例えば、80〜100重量%)であってもよい。
【0131】
熱可塑性エラストマーのISO178による曲げ弾性率は、例えば、600MPa未満(例えば、20〜550MPa程度)の範囲から選択でき、好ましくは500MPa未満(例えば、30〜480MPa程度)、さらに好ましくは450MPa以下(例えば、50〜420MPa程度)、特に400MPa以下(例えば、80〜400MPa程度)であってもよく、通常100〜500MPa(例えば、120〜450MPa、好ましくは130〜400MPa)程度であってもよい。
【0132】
また、熱可塑性エラストマーのショアD硬度は、例えば、40〜100、好ましくは45〜90、さらに好ましくは50〜80程度であってもよく、通常50〜70程度であってもよい。なお、ショアD硬度は、ASTM D2240などに準拠して測定できる。
【0133】
熱可塑性エラストマー層は、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性エラストマー以外の成分、例えば、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など)、可塑剤、滑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0134】
熱可塑性エラストマー層の厚みは、例えば、1〜30mm、好ましくは2〜20mm、さらに好ましくは3〜15mm程度であってもよい。
【0135】
また、熱可塑性エラストマー層とシートとの厚み比は、例えば、前者/後者=100/1〜1/1、好ましくは80/1〜1.5/1、さらに好ましくは50/1〜2/1程度であってもよく、通常30/1〜2/1(例えば、20/1〜2.5/1)程度であってもよい。
【0136】
さらに、熱可塑性エラストマー層と架橋ゴム層との厚み比は、前者/後者=10/1〜0.01/1、好ましくは5/1〜0.03/1、さらに好ましくは4/1〜0.05/1程度であってもよく、通常3/1〜0.05/1(例えば、2/1〜0.07/1)。
【0137】
なお、熱可塑性エラストマー層は、靴底(靴底用複合成形体)のソール(ソール部)を形成している。そのため、熱可塑性エラストマー層の形状は、所望のソールの形状に合わせて選択できる。
【0138】
熱可塑性エラストマー層は、シートの他方の面(すなわち、架橋ゴム層が形成された面とは異なる面)に、接着剤層などを介することなく直接的に接着(接合)している。このような熱可塑性エラストマー層とシートとの接着は強固であり、例えば、本発明の靴底用複合成形体では、熱可塑性エラストマー層とシートとを、温度23℃および湿度50%の条件下で4日間保持した後に剥離させたとき、界面において少なくとも一部が破壊(凝集破壊)する程度で熱可塑性エラストマー層とシートとが接合している。
【0139】
(靴底(靴底用複合成形体)の製造方法)
靴底(靴底用複合成形体)は、前記シートの一方の面に架橋ゴム層を、他方の面に熱可塑性エラストマー層をそれぞれ直接形成することにより製造できる。架橋ゴム層および熱可塑性エラストマー層の形成順序は特に限定されないが、通常、シートの一方の面に、架橋ゴム層を形成した後、シートの他方の面に熱可塑性エラストマー層を形成する場合が多い。すなわち、本発明では、通常、シートと、このシートの一方の面に形成された架橋ゴム層との複合体(シート/架橋ゴム層複合体)を得た後、この複合体のシートの他方の面に熱可塑性エラストマー層を形成する。
【0140】
前記シート/架橋ゴム層複合体(シート/架橋ゴム一体成形体)は、シートと前記未架橋ゴム(又は未架橋ゴム組成物)とを接触させて架橋することにより得ることができる。この接触および架橋においては、特に、シート(又はシートを構成する樹脂成分)を溶融させることなく、架橋させてもよい。溶融させることなく(又はほとんど溶融させることなく)架橋させると、複合体(又はシート)の変形を効率よく防止できる。なお、本発明では、前記特定の樹脂成分で構成されたシートを使用するため、単に未架橋ゴムと架橋剤との架橋反応が生じるだけでなく、接触および架橋に伴って、シートと未架橋ゴム(組成物)との界面において、シートを構成するポリアミド樹脂と未架橋ゴム組成物に含まれる架橋剤(さらには架橋助剤)との反応や、ポリアミド樹脂と未架橋ゴムとの反応などが生じているためか、シートの溶融を利用しなくても、シートと架橋ゴム層とが強固に接着した複合体が得られる。
【0141】
シートと未架橋ゴム(組成物)とを接触させて複合体を得る方法としては、特に限定されず、押出成形、射出成形、プレス成形、トランスファー成形など、汎用の成形方法を用いることができる。特に、本発明では、金型内に配置したシートの一方の面に溶融した未架橋ゴム組成物を接触させ(又は注入し)、この未架橋ゴム組成物を架橋させることにより、架橋ゴム層を形成してもよい。例えば、複合体の形状に対応する型(又はキャビティー)にシートを収容し、このシートに対して未架橋ゴム組成物を射出又は押出し、未加硫ゴム組成物を架橋することにより、シートと架橋ゴム層とを接着してもよい。なお、シートと未架橋ゴム組成物とは、加圧下で接触させてもよい。加圧には、熱プレス成形や射出成形などを利用してもよく、減圧雰囲気下で加圧成形してもよい。
【0142】
このような方法では、前記特許文献3のような金型の型開き(脱型)を要することなく、架橋ゴム層を形成できるので、作業効率を大きく向上できる。すなわち、前記特許文献3では、アウトソール部材(スタッド)の変形を防止するため、ゴムの架橋の初期段階で一旦金型を開く必要があるが、本発明では、前記特定の樹脂成分で構成されたシートを用いることにより、このような型開きを要することなくそのまま架橋を完了させても、変形を生じることなくシートに強固に接着した架橋ゴムのスタッドをできる。
【0143】
架橋は、加温下で行ってもよい。架橋温度(又は未架橋ゴム組成物とシートとの接触温度)は、例えば、80〜230℃、好ましくは100〜210℃、さらに好ましくは150〜190℃程度の範囲から選択できる。特に、架橋温度が低い(例えば、140℃未満)と、架橋に要する時間が長くなったり、接着が不十分となる可能性があるため、架橋温度は、作業効率の点からも、140℃以上(例えば、145〜200℃)、好ましくは150℃以上(例えば、150〜190℃)、さらに好ましくは155〜185℃(例えば、160〜180℃)程度であってもよい。なお、上記のように、変形の観点から、シートを構成するポリアミド樹脂の融点よりも低い温度であるのが好ましく、例えば、シートが、融点が165℃以上のポリアミド樹脂を含む(例えば、ポリアミド樹脂全体の30重量%以上含む)場合、架橋温度を、このポリアミド樹脂の融点よりも低い温度[例えば、3℃以上(例えば、3〜100℃)低い温度、好ましくは5℃以上(例えば、5〜50℃)低い温度、さらに好ましくは10℃以上(例えば、10〜30℃)低い温度]としてもよい。特に、一体成形に使用する金型が大きい場合、金型の部分により温度分布が生じるため、ポリアミド樹脂の融点は、成形に用いられる温度よりも上記のように余裕を持って高くすることが好ましい。
【0144】
本発明では、前記のように、特定の曲げ弾性率や比較的高い融点を有するポリアミド樹脂でシートを構成するため、このような温度で架橋させても、シートの変形などを生じることなく、シートと架橋ゴム層とを強固に接合できる。
【0145】
なお、前記のように、架橋は、シート(又はシートを構成するポリアミド樹脂)を溶融させることなく行うのが好ましい。
【0146】
上記のようにして、シート/架橋ゴム層複合体が得られる。
【0147】
シート(又はシート/架橋ゴム層複合体)と、このシートの他方の面に形成された熱可塑性エラストマー層とが直接接着した複合体(又は靴底用複合成形体)は、例えば、シート(又はシート/架橋ゴム層複合体)の他方の面に、熱可塑性エラストマー層を形成してすることにより得ることができる。代表的には、シートと前記熱可塑性エラストマー層とを、加熱下で接触させて製造できる。
【0148】
熱可塑性エラストマー層を形成する方法は、特に限定されず、押出成形、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、レーザーウェルディング、高周波ウェルディングなどの汎用の方法を用いることができる。特に、本発明では、シートの他方の面に溶融した熱可塑性エラストマー(又はその組成物)を接触させる(又は注入する)ことにより、熱可塑性エラストマー層を形成してもよい。
【0149】
接触温度(又は熱可塑性エラストマーの溶融温度又は熱融着温度)は、例えば、120〜280℃、好ましくは150〜260℃、さらに好ましくは180〜250℃程度であってもよい。特に、熱可塑性エラストマーがポリアミドエラストマーであるとき、接触温度は、180〜270℃(例えば、200〜250℃)程度、熱可塑性エラストマーがポリウレタンエラストマーであるとき、180〜240℃(例えば、200〜220℃)程度であってもよい。なお、上記接触温度は、混練機内における温度(例えば、射出成形機のシリンダー温度)であってもよい。
【0150】
なお、シートと熱可塑性エラストマー層との加熱下での接触により、これらの界面においては、シートを構成するポリアミド樹脂と熱可塑性エラストマーとの親和性(相溶)による直接接合や、ポリアミド樹脂に由来するアミノ基の効果による直接接合などが得られるためか、両層が強固に接着する。特に、相溶による直接接合は、熱可塑性エラストマーがポリアミドエラストマーを含む場合により有利に発揮され、また、アミノ基による直接接合の効果は、熱可塑性エラストマーがポリウレタンエラストマーを含む場合により有利に発揮されるようである。
【実施例】
【0151】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0152】
なお、使用した成分を以下に示す。
【0153】
[シート]
ポリアミド樹脂(a):脂環族ポリアミド(ダイセル・エボニック(株)製、「CX7323」、アミノ基濃度23mmol/kg、融点247℃、曲げ弾性率1700MPa)
ポリアミド樹脂(b):ポリアミド613(アミノ基濃度57mmol/kg、融点207℃、曲げ弾性率2500MPa)
ポリアミド樹脂(c):ポリアミドエラストマー(ポリアミド612をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、アミノ基濃度19mmol/kg、融点196℃、曲げ弾性率340MPa)
ポリアミド樹脂(d):ポリアミド1012(アミノ基濃度35mmol/kg、融点185℃、曲げ弾性率1500MPa)
ポリアミド樹脂(e):ポリアミド12(ダイセル・エボニック(株)製、「ZL9500」、アミノ基濃度65mmol/kg、融点178℃、曲げ弾性率1200MPa)
ポリアミド樹脂(f):ポリアミド12(ダイセル・エボニック(株)製、「L7321」、アミノ基濃度5mmol/kg、融点178℃、曲げ弾性率1200MPa)
ポリアミド樹脂(g):ポリアミドエラストマー(ポリアミド12をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、ダイセル・エボニック(株)製、「X4442」、アミノ基濃度5mmol/kg、融点175℃、曲げ弾性率490MPa)
ポリアミド樹脂(h):ポリアミドエラストマー(ポリアミド12をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、ダイセル・エボニック(株)製、「E62−S4」、アミノ基濃度5mmol/kg、融点172℃、曲げ弾性率340MPa)
ポリアミド樹脂(i):ポリアミドエラストマー(ポリアミド12をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、ダイセル・エボニック(株)製、「E62−K1」、アミノ基濃度17mmol/kg、融点164℃、曲げ弾性率240MPa)
ポリアミド樹脂(j):ポリアミドエラストマー(ポリアミド12をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、ダイセル・エボニック(株)製、「E55−S4」、アミノ基濃度5mmol/kg、融点164℃、曲げ弾性率210MPa)
ポリアミド樹脂(k):ポリアミドエラストマー(ポリアミド12をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、ダイセル・エボニック(株)製、「ZE0900」、アミノ基濃度42mmol/kg、融点164℃、曲げ弾性率230MPa)
ポリアミド樹脂(l):ポリアミドエラストマー(ポリアミド12をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、ダイセル・エボニック(株)製、「E55−K1」、アミノ基濃度17mmol/kg、融点160℃、曲げ弾性率170MPa)
ポリアミド樹脂(m):ポリアミドエラストマー(ポリアミド12をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、ダイセル・エボニック(株)製、「E30−S4」、アミノ基濃度30mmol/kg、融点152℃、曲げ弾性率45MPa)
ポリアミド樹脂(n):ポリアミドエラストマー(ポリアミド12をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、ダイセル・エボニック(株)製、「E58−S4」、アミノ基濃度38mmol/kg、融点144℃、曲げ弾性率190MPa)
ポリアミド樹脂(o):ポリアミドエラストマー(ポリアミド12をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、アルケマ(株)製、「PEBAX6333」、アミノ基濃度9mmol/kg、融点169℃、曲げ弾性率290MPa)
ポリアミド樹脂(p):ポリアミドエラストマー(ポリアミド12をハードセグメント、ポリエーテルをソフトセグメントとするブロック共重合体、アルケマ(株)製、「PEBAX5533」、アミノ基濃度9mmol/kg、融点159℃、曲げ弾性率160MPa)。
【0154】
上記ポリアミド樹脂を用いて、以下のポリアミド樹脂(又は組成物)(1)〜(26)からなるシート(厚み0.5mm、10cm角)を得た。
【0155】
ポリアミド樹脂(1):ポリアミド樹脂(a)単独(アミノ基濃度23mmol/kg、曲げ弾性率1700MPa、融点247℃、融点165℃以上(247℃)のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(2):ポリアミド樹脂(b)単独(アミノ基濃度57mmol/kg、曲げ弾性率2500MPa、融点207℃、融点165℃以上(207℃)のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(3):ポリアミド樹脂(c)単独(アミノ基濃度19mmol/kg、曲げ弾性率340MPa、融点196℃、融点165℃以上(196℃)のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(4):ポリアミド樹脂(d)単独(アミノ基濃度35mmol/kg、曲げ弾性率1500MPa、融点185℃、融点165℃以上(185℃)のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(5):ポリアミド樹脂(e)単独(アミノ基濃度65mmol/kg、曲げ弾性率1200MPa、融点178℃、融点165℃以上(178℃)のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(6):ポリアミド樹脂(d)30重量部と、ポリアミド樹脂(e)70重量部との溶融混合物(全体として、アミノ基濃度56mmol/kg、曲げ弾性率1250MPa、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(7):ポリアミド樹脂(e)50重量部と、ポリアミド樹脂(k)50重量部との溶融混合物(全体として、アミノ基濃度53.5mmol/kg、曲げ弾性率600MPa、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=50重量%)
ポリアミド樹脂(8):ポリアミド樹脂(e)70重量部と、ポリアミド樹脂(k)30重量部との溶融混合物(全体として、アミノ基濃度58.1mmol/kg、曲げ弾性率870MPa、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=70重量%)
ポリアミド樹脂(9):ポリアミド樹脂(e)70重量部と、ポリアミド樹脂(j)30重量部との溶融混合物(全体として、アミノ基濃度47mmol/kg、曲げ弾性率850MPa、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=70重量%)
ポリアミド樹脂(10):ポリアミド樹脂(e)60重量部と、ポリアミド樹脂(h)40重量部との溶融混合物(全体として、アミノ基濃度41mmol/kg、曲げ弾性率750MPa、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(11):ポリアミド樹脂(d)10重量部と、ポリアミド樹脂(e)40重量部と、ポリアミド樹脂(j)50重量部との溶融混合物(全体として、アミノ基濃度30.4mmol/kg、曲げ弾性率730MPa、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=50重量%)
ポリアミド樹脂(12):ポリアミド樹脂(c)50重量部と、ポリアミド樹脂(f)50重量部との溶融混合物(全体として、アミノ基濃度12mmol/kg、曲げ弾性率1400MPa、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(13):ポリアミド樹脂(a)50重量部と、ポリアミド樹脂(f)50重量部との溶融混合物(全体として、アミノ基濃度14mmol/kg、曲げ弾性率1500MPa、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(14):ポリアミド樹脂(e)50重量部と、ポリアミド樹脂(p)35重量部と、ガラス繊維15重量部との溶融混合物(樹脂成分全体として、アミノ基濃度42mmol/kg、曲げ弾性率800MPa、融点247℃、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=100重量%、組成物全体として、アミノ基濃度37mmol/kg、曲げ弾性率2100MPa)
ポリアミド樹脂(15):ポリアミド樹脂(f)単独(アミノ基濃度5mmol/kg、曲げ弾性率1200MPa、融点178℃、融点165℃以上(178℃)のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(16):ポリアミド樹脂(g)単独(アミノ基濃度5mmol/kg、曲げ弾性率490MPa、融点175℃、融点165℃以上(175℃)のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(17):ポリアミド樹脂(h)単独(アミノ基濃度5mmol/kg、曲げ弾性率340MPa、融点172℃、融点165℃以上(172℃)のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(18):ポリアミド樹脂(i)単独(アミノ基濃度17mmol/kg、曲げ弾性率240MPa、融点164℃、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=0重量%)
ポリアミド樹脂(19):ポリアミド樹脂(j)単独(アミノ基濃度5mmol/kg、曲げ弾性率210MPa、融点164℃、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合0重量%)
ポリアミド樹脂(20):ポリアミド樹脂(k)単独(アミノ基濃度42mmol/kg、曲げ弾性率230MPa、融点164℃、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=0重量%)
ポリアミド樹脂(21):ポリアミド樹脂(l)単独(アミノ基濃度17mmol/kg、曲げ弾性率170MPa、融点160℃、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=0重量%)
ポリアミド樹脂(22):ポリアミド樹脂(m)単独(アミノ基濃度30mmol/kg、曲げ弾性率45MPa、融点152℃、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合0重量%)
ポリアミド樹脂(23):ポリアミド樹脂(n)単独(アミノ基濃度38mmol/kg、曲げ弾性率190MPa、融点144℃、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=0重量%)
ポリアミド樹脂(24):ポリアミド樹脂(o)単独(アミノ基濃度9mmol/kg、曲げ弾性率290MPa、融点169℃、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=100重量%)
ポリアミド樹脂(25):ポリアミド樹脂(p)単独(アミノ基濃度9mmol/kg、曲げ弾性率160MPa、融点159℃、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合0重量%)
ポリアミド樹脂(26):ポリアミド樹脂(f)40重量部と、ポリアミド樹脂(p)60重量部との溶融混合物(全体として、アミノ基濃度7.4mmol/kg、曲げ弾性率550MPa、融点159℃、融点165℃以上のポリアミド樹脂の割合=40重量%)
なお、ポリアミド樹脂(又は樹脂組成物)のアミノ基濃度、融点および曲げ弾性率は、以下のようにして測定した。
【0156】
(アミノ基濃度)
サンプルとして用いるポリアミド系材料を約0.5gとり、これをフェノール/メタノール混合液40mlに溶解し、溶解を確認した後、更にメタノールを10ml加える。これを試料とし、塩酸水溶液で滴定により測定した。なお、装置としては、平沼産業株式会社製、平沼自動滴定装置 COM−200 を用いた。
【0157】
(融点)
熱分析(DSC)により、10℃/min.の昇温速度で250℃まで融解させた後、10℃/min.で−30℃まで冷却し、さらにこれを10℃/min.の昇温速度で融解させた際の融解のピークトップを融点とした。
【0158】
(曲げ弾性率)
ISO178に準拠して測定した。
【0159】
[未架橋ゴム組成物]
以下の成分を含むゴム組成物(未架橋ゴム組成物)を用い、未架橋のゴムシート(厚み0.5mm、10cm角)を調製した。
【0160】
(ゴム組成物1)
天然ゴム50重量部、ブタジエンゴム(ダウケミカル(株)製、「Buna EM1500」)50重量部、ポリオクテニレン(エボニックGmbH製、「ベステネマー8012」)5重量部、クレイ(Hoffmann Mineral製、「Silitin Z86」)25重量部、カーボンブラック(N335)45重量部、可塑剤(Bayer(株)製、「Vulcanol 88」)10重量部、ステアリン酸1重量部、加硫活性剤(精工化学(株)製、「Hicross M」、化合物名:トリメチロールプロパントリメタクリレート)2重量部、架橋剤(化薬アクゾ(株)製、「Perkadox 14/40」、化合物名:1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン)6重量部
(ゴム組成物2)
スチレンブタジエンゴム(JSR(株)製、「JSR #1502」)50重量部、ブタジエンゴム(ダウケミカル(株)製、「Buna EM1500」)50重量部、ポリオクテニレン(エボニックGmbH製、「ベステネマー8012」)10重量部、クレイ(Hoffmann Mineral製、「Silitin Z86」)25重量部、カーボンブラック(N335)45重量部、可塑剤(Bayer(株)製、「Vulcanol 88」)10重量部、ステアリン酸1重量部、加硫活性剤(精工化学(株)製、「Hicross M」、化合物名:トリメチロールプロパントリメタクリレート)2重量部、架橋剤(化薬アクゾ(株)製、「Perkadox 14/40」、化合物名:1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン)6重量部
(ゴム組成物3)
エチレンプロピレンジエンゴム(DSM(株)製、「DSM 509x100」)97重量部、ポリオクテニレン(エボニックGmbH(株)製、「ベステネマー8012」)3重量部、カーボンブラック(N335)0.3重量部、ホワイトカーボン(日本ミストロン(株)製、「Mistron vapour」)25重量部、可塑剤(PEG4000)1重量部、酸化亜鉛3重量部、ステアリン酸0.5重量部、加硫活性剤(精工化学(株)製、「Hicross M」、化合物名:トリメチロールプロパントリメタクリレート)0.5重量部、架橋剤(化薬アクゾ(株)製、「Perkadox 14/40」、化合物名:1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン)2.5重量部
(ゴム組成物4)
カルボキシル化エチレンプロピレンゴム(「Excelor VA 1803」)100重量部、カーボンブラック(N774)60重量部、可塑剤(ナフテン系オイル)40重量部、酸化亜鉛5重量部、老化防止剤(TMQ)2重量部、加硫活性剤(トリアリルシアヌレート)3重量部、架橋剤(化薬アクゾ(株)製、「Perkadox 14/40」、化合物名:1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン)7.5重量部
(ゴム組成物5)
ニトリルゴム(JSR(株)製、「JSR N240S」)50重量部、カルボキシル化ニトリルゴム(日本ゼオン(株)製、「Nipol 1027J」)50重量部、シリカ(「Vulkasil C」)60重量部、可塑剤(Bayer(株)製、「Vulkanol 88」)10重量部、酸化チタン3重量部、色材(「Opasin blue 690」)2重量部、ステアリン酸1重量部、加硫活性剤(トリアリルイソシアヌレート)1.5重量部、架橋剤(化薬アクゾ(株)製、「Perkadox 14/40」、化合物名:1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン)6重量部
(ゴム組成物6)
水添ニトリルゴム(日本ゼオン(株)製、「Zetpol 3110」)100重量部、カーボンブラック(旭カーボン(株)製、「旭60」、N550)50重量部、可塑剤(Bayer(株)製、「Vulkanol 88」)10重量部、酸化亜鉛2重量部、加硫活性剤(デュポン(株)製、「HVA−2」、化合物名:N,N’−m−フェニレンジマレイミド)4重量部、架橋剤(化薬アクゾ(株)製、「Perkadox 14/40」、化合物名:1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン)7重量部
(ゴム組成物7)
アクリルゴム(デュポン(株)製、「VAMAC−G」)100重量部、カーボンブラック(旭カーボン(株)製、「旭60」、N550)100重量部、可塑剤(「アーミン18D」)0.5重量部、可塑剤(東邦化学(株)製、「フォスファノールRL 210」)2重量部、ステアリン酸2重量部、老化防止剤(大内新興(株)製、「ノクラックCD」)2重量部、加硫活性剤(川口化学(株)製、DPG、化合物名:N,N−ジフェニルグアニジン)4重量部、架橋剤(MDA)1.25重量部
(ゴム組成物8)
フッ素ゴム(ダイキン(株)製、「Dai−EL G902」)100重量部、カーボンブラック(N990)10重量部、架橋剤(アトケム吉冨(株)製、「Luperox 101 XL45」)3重量部、架橋剤(デュポン(株)製、「Diak No.7」、化合物名:トリアリルイソシアヌレート)4重量部。
【0161】
[ソール(熱可塑性エラストマー)]
ポリウレタンエラストマー(TPU1):エステル系ポリウレタンエラストマー、「T470A」、
ポリウレタンエラストマー(TPU2):エステル系ポリウレタンエラストマー、「Desmopan8785」、
ポリアミドエラストマー(PAE1):ポリアミドエラストマー、ダイセル・エボニック(株)製、「E62−S4」、曲げ弾性率340MPa、
ポリアミドエラストマー(PAE2):ポリアミドエラストマー、アルケマ(株)製、「PEBAX6333」、曲げ弾性率290MPa。
【0162】
[試験片の作成およびその評価]
上記材料を用い、以下のようにして、靴底用複合成形体の試験片を得た。
【0163】
金属平板(40cm角)上にアルミホイル(接着防止用シリコーン表面焼付処理済)を載せ、その上に、前記ポリアミド樹脂のシート(10cm角、厚み0.5mm)を載せ、その上に、図1に示す写真のゴム金型(厚み3mm)を載せた。その上に、前記未架橋のゴムシート(9cm角、厚さ2.5mm)を載せ、その上にアルミホイル(接着防止用シリコーン表面焼付処理済)及び金属平板(40cm角)を載せた後、後述の表に示す所定の架橋温度(150℃、160℃又は170℃)に温度調整された熱プレス機内に設置した。400Nの加圧条件下、所定時間(架橋温度が150℃のとき20分間、160℃のとき10分間、170℃のとき7分間)保持した後、加圧条件を解除し、シート部材とスタッド部材の一体成形部材を得た。それを更に樹脂金型(金型温度40℃)に挿入し、その上に熱可塑性エラストマーを厚み2mmで射出成形によりオーバーモールド(シリンダー温度:TPU1およびTPU2では210℃、PAE1およびPAE2では250℃)することにより、靴底用複合成形体の試験片を得た。
【0164】
また、ポリアミド樹脂のシートの厚みを0.5mmから、0.3mmおよび0.7mmに代えて同様の試験片を得た。
【0165】
そして、得られた試験片(10cm角、厚み0.3mm、0.5mm、0.7mmの3種類)において、接着性および変形を以下の基準で評価した。
【0166】
(接着性)
接着性の評価は、得られた試験片につき、温度23℃、湿度50%の条件下で4日間保持した後、ラジオペンチで、シートとスタッド間、又はシートとソール間を剥離することにより行った。得られた結果は以下の通り評価した。
【0167】
A:非常に強固(部材間の界面が剥離せず、試験片が破壊)
B:強固(部材間の界面が一部剥離し、試験片が一部破壊)
C:接着(部材間の界面が剥離)
なお、シートとスタッド間の評価が「C」である場合には、シートとソール間の接着性は、シートとソールのみの複合成形体で評価した。
【0168】
(変形性)
変形性の評価は、得られた試験片につき、端部から10cm角の領域を目視観察することにより行った。
【0169】
+:変形せず
±:一部変形(端部又は接着部の一部につき変形あり)
−:大きく変形(変形した部分の面積が変形しない部分の面積より大きい)
結果を表に示す。なお、表番号と使用したポリアミド樹脂番号とは対応しており、例えば、表1ではポリアミド樹脂(1)を使用し、表10ではポリアミド樹脂(10)を使用した。また、表のスタッドの欄のうち、括弧内はゴム組成物の架橋温度(℃)を示す。
【0170】
【表1】

【0171】
【表2】

【0172】
【表3】

【0173】
【表4】

【0174】
【表5】

【0175】
【表6】

【0176】
【表7】

【0177】
【表8】

【0178】
【表9】

【0179】
【表10】

【0180】
【表11】

【0181】
【表12】

【0182】
【表13】

【0183】
【表14】

【0184】
【表15】

【0185】
【表16】

【0186】
【表17】

【0187】
【表18】

【0188】
【表19】

【0189】
【表20】

【0190】
【表21】

【0191】
【表22】

【0192】
【表23】

【0193】
【表24】

【0194】
【表25】

【0195】
【表26】

【0196】
表の結果から明らかなように、ポリアミド樹脂のアミノ基含量につき、10mmol/kgの前後で接着性に大きな差異を生ずることが認められ、また、ポリアミド樹脂の曲げ弾性率が300MPa以上の場合、変形を防止又は抑制できることがわかった。また、このような接着性や変形の防止は、ポリアミド樹脂中に、融点165℃以上の樹脂が含まれることにより優位に見られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明の靴底用複合成形体は、種々の靴底に使用することができる。特に、耐摩擦性やクッション性などの機能が求められるシューズ[例えば、スポーツ分野において利用されるシューズ(体育館向けシューズ、人工芝向けのシューズなど)]の靴底として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッドとしての架橋ゴム層と、ソールとしての熱可塑性エラストマー層との間に、これらの層と直接接触して介在し、靴底用複合成形体を形成するためのシートであって、ポリアミド樹脂(a)を含む樹脂成分(A)で構成され、前記樹脂成分(A)が、10mmol/kg以上のアミノ基濃度およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を有するシート。
【請求項2】
ポリアミド樹脂(a)が、ポリアミドおよびポリアミドエラストマーから選択された少なくとも1種で構成されている請求項1記載のシート。
【請求項3】
ポリアミド樹脂(a)が、融点165℃以上のポリアミド樹脂を、ポリアミド樹脂(a)全体に対して30重量%以上含む請求項1又は2記載のシート。
【請求項4】
樹脂成分(A)が、以下の(1)〜(3)のいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載のシート。
(1)アミノ基濃度10mmol/kg以上、融点165℃以上、ISO178による曲げ弾性率が300MPa以上であるポリアミド樹脂単独
(2)複数のポリアミドで構成された樹脂組成物であって、融点165℃以上のポリアミドを30重量%以上の割合で含み、全体としてアミノ基濃度10mmol/kg以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を充足するポリアミド樹脂組成物
(3)ポリアミドおよびポリアミドエラストマーで構成された樹脂組成物であって、前記ポリアミド及び/又は前記ポリアミドエラストマーの30重量%以上が融点165℃以上であり、全体としてアミノ基濃度10mmol/kg以上およびISO178による曲げ弾性率300MPa以上を充足するポリアミド樹脂組成物
【請求項5】
樹脂成分(A)が、ポリアミド樹脂組成物(3)であり、ポリアミドエラストマーのアミノ基濃度が10mmol/kgを有する請求項4記載のシート。
【請求項6】
さらに、フィラーを含む請求項1〜5のいずれかに記載のシート。
【請求項7】
厚みが0.1〜0.7mmである請求項1〜6のいずれかに記載のシート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のシートと、このシートの一方の面に直接形成されたスタッドとしての架橋ゴム層と、前記シートの他方の面に直接形成されたソールとしての熱可塑性エラストマー層とで構成された靴底用複合成形体。
【請求項9】
架橋ゴム層が、未架橋ゴムと過酸化物とを含む未架橋ゴム組成物の架橋により形成されている請求項8記載の複合成形体。
【請求項10】
未架橋ゴム組成物が、さらに、架橋助剤を含む請求項9記載の複合成形体。
【請求項11】
熱可塑性エラストマー層が、ポリウレタンエラストマーおよびポリアミドエラストマーから選択された少なくとも1種で構成されている請求項8〜10のいずれかに記載の複合成形体。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載のシートの一方の面に架橋ゴム層を、他方の面に熱可塑性エラストマー層をそれぞれ直接形成し、靴底用複合成形体を製造する方法であって、金型内に配置した前記シートの一方の面に溶融した未架橋ゴム組成物を接触させ、この未架橋ゴム組成物を加温下で架橋させて前記架橋ゴム層を形成する複合成形体の製造方法。
【請求項13】
金型を型開きすることなく架橋ゴム層を形成する請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
シートを溶融させることなく架橋させる請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
シートが、融点165℃以上のポリアミド樹脂をポリアミド樹脂(a)の30重量%以上含み、この融点165℃以上のポリアミド樹脂の融点よりも低い温度で架橋させる請求項12〜14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
150℃以上であって、融点165℃以上のポリアミド樹脂の融点よりも5℃以上低い温度で架橋させる請求項15記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−110105(P2011−110105A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266503(P2009−266503)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000108982)ダイセル・エボニック株式会社 (31)
【Fターム(参考)】