説明

靴構造及び靴用除湿具

【課題】靴を履いている最中であっても、靴内の蒸れを解消できる靴構造及び靴用除湿具を提供すること。
【解決手段】靴1の内部を除湿する機能を有した靴構造において、靴1の靴本体3に開口4bを設け、開口4bに靴中の水分を吸着する吸湿剤12を収容したケース体11を着脱自在に取り付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴の内部を除湿する機能を有した靴構造及び靴用除湿具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、靴は通気性に極めて乏しいために着用時に湿気が発生して蒸れ易くなり、履き心地が悪くなるとともに悪臭が発生するおそれがある。このため、従来より着用後の靴内に挿入して除湿を行う靴用の除湿具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の除湿具では、例えば、シリカゲル等の除湿剤を、通気性を有する袋体に収容し、この袋体を靴内に挿入することにより除湿を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−194696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際に靴内が蒸れるのは靴を着用した(履いた)ときであるが、従来の除湿具は、脱いだ後の靴内に挿入して使用するものであるため、靴を履いている際に靴内の蒸れを防止することはできない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、靴を履いている最中であっても、靴内の蒸れを解消できる靴構造及び靴用除湿具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、靴の内部を除湿する機能を有した靴構造において、前記靴の靴本体に開口を設け、前記開口に靴中の水分を吸着する吸湿剤を収容したケース体を着脱自在に取り付けたことを特徴とする。
【0006】
この構成において、前記開口が、前記靴本体の爪先部もしくは土踏まず部に設けられていても良い。また、前記ケース体は、前記開口と該ケース体の外側とを連通自在とする弁体を備えていても良い。
【0007】
また、本発明は、靴の内部を除湿する靴用除湿具において、前記靴の靴本体に設けた開口に着脱自在なケース体を備え、前記ケース体内に靴中の水分を吸着する吸湿剤を収容したことを特徴とする。
【0008】
この構成において、前記開口が、前記靴本体の爪先部もしくは土踏まず部に設けられていても良い。また、前記ケース体は、前記開口と該ケース体の外側とを連通自在とする弁体を備えていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、靴の靴本体に開口を設け、この開口に靴中の水分を吸着する吸湿剤を収容したケース体を着脱自在に取り付けたため、靴を履いている最中であっても、靴内の蒸れを解消することができる。更に、ケース体が靴本体の開口に取り付けられるため、靴本体に開口を設けるだけで、既存の靴にもケース体を簡単に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる靴構造を採用した靴を示す外観斜視図である。
【図2】靴と除湿具とを示す分解斜視図である。
【図3】除湿具及び靴の部分断面図である。
【図4】除湿具のキャップが開放された状態を示す除湿具及び靴の部分断面図である。
【図5】第2実施形態にかかる除湿具と靴との分解斜視図である。
【図6】除湿具及び靴の部分断面図である。
【図7】第3実施形態にかかる靴の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態にかかる靴1と除湿具10とを組み合わせた外観斜視図であり、図2は、靴1と除湿具10とを示す分解斜視図である。これら図1及び図2において、符号1は、靴を示し、この靴1はユーザの足裏を支持する靴底部2と、この靴底部2上に配置されてユーザの足の周囲を覆う靴本体3とを備えて構成される。この靴本体3は、足の甲に接する甲部4、内足側の側面に接する内側面部5、外足側の側面に接する外側面部6および足の踵に接する踵部7から構成されている。また、靴本体3内には靴底部2上に敷かれる中敷8が設けられている。また、対をなす左側の靴と右側の靴は左右対称の構造であるから、本実施形態中では一方(図1,図2では左側の靴)のみを示して他方の説明は省略する。
【0012】
靴本体3の甲部4の先端4a(爪先部)には、図2に示すように、開口4bが形成されており、この開口4bに除湿具(靴用除湿具)10が着脱自在に配置されている。この除湿具10は、靴本体3の先端4aの外側に配置される中空のケース体11を備え、このケース体11の内部には、図3に示すように、水分を吸着する吸湿剤12が収容されている。このケース体11内は、上記した開口4bを通じて、靴1内の空間1Aに連通しており、当該靴1内の水分が吸湿剤12に吸着される。
本実施形態では、吸湿剤12として粒状に形成した備長炭等の炭やシリカゲルが用いられている。これら備長炭やシリカゲルは、乾燥させることにより吸湿能力を再生することができるため、再利用を図ることができ有効な吸湿剤である。
【0013】
ケース体11は、図3に示すように、靴本体3の甲部4の形状に合わせて形成された底面部11Aと、この底面部11Aの周縁から椀型に上方に膨出した上面部11Bとを備えて一体に形成されている。この構成では、ケース体11は、靴本体3の外方に露出するため、例えば、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等、ある程度の強度を有する材料で形成するのが望ましい。
また、底面部11Aには、靴本体3に形成された開口4bと略同一の大きさの開口部11A1が形成され、この開口部11A1には、ケース体11内から下方に延びて当該ケース体11内と靴1内の空間1Aとを連通する連通管13が設けられている。この連通管13は、例えば接着や溶着等により底面部11Aに固定されている。
連通管13の下端部は、底面部11Aから靴本体3の甲部4の厚さと同程度の長さに突出して設けられ、この下端部には、ケース体11を靴本体3の開口4bに固定するための固定部材14が取り付けられている。この固定部材14は、外周面に雄ねじが設けられた円筒部14Aと、この円筒部14Aの下端部に取り付けられ、当該円筒部14Aの外周方向に延在する鍔部14Bとを備える。一方、連通管13の下端部の内周面には、上記した円筒部14Aの外周面に形成された雄ねじと螺合する雌ねじが形成されている。このため、固定部材14を連通管13にねじ込むと、ケース体11の底面部11Aと鍔部14Bとの間で、靴本体3の甲部4が挟持されることにより、当該ケース体11が靴本体3に固定される。
この構成では、固定部材14が靴1内の空間1Aに大きく突出しないため、固定部材14とユーザの足との接触を抑えることができ、ユーザが靴の履いている際の不快感を低減できる。また、底面部11Aには、連通管13の周囲にOリング15が設けられ、靴本体3の開口4bから水が浸入することを防止している。
【0014】
連通管13は、ケース体11の上面部11Bの上端と略同じ高さ位置まで延び、ケース体11内を連通管13の内側と外側とに区分けしており、この外側に吸湿剤12が収容されている。連通管13には、連通管13の内側と外側とを繋ぐスリット13Aが周方向に複数形成され、このスリット13Aを通じて靴1内の空気が外側の空間に流入するようになっている。
これにより、靴1内の空間1Aの空気は、靴本体3の開口4b、連通管13及びスリット13Aを通じてケース体11内に流入し、このケース体11内に収容された吸湿剤12によって当該空気中の水分が吸着されるため、靴1内の蒸れが解消される。さらに、この構成では、靴1の靴本体3に開口4bを設け、この開口4bに靴1中の水分を吸着する吸湿剤12を収容したケース体11を着脱自在に取り付けたため、靴1を履いている最中であっても、靴1内の蒸れを解消することができ、ユーザが快適に靴1を着用することができる。更に、ケース体11が靴本体3の開口4bに取り付けられるため、靴本体3に開口4bを設けるだけで、既存の靴にも除湿具10を簡単に取り付けることができる。
【0015】
また、本実施形態の除湿具10は、単に靴1中の空気の水分を吸着するだけでなく、靴1中の空気を外部に放出する換気機能を有する。ケース体11の上面部11Bは、開口が形成され、この開口の周囲から上方に延びる円筒状の壁部11B1が上面部11Bと一体に形成されている。この壁部11B1には、キャップ(弁体)16が取り付けられ、このキャップ16を操作することにより、ケース体11の内外を連通可能に構成されている。
本実施形態では、キャップ16は、略円盤状の把持部16Aと、この把持部16Aの下面から下方に延びる筒部16Bとを備えて一体に形成され、この筒部16Bの一部には通風孔16B1が形成されるとともに、当該筒部16Bの外周面には雄ねじが形成されている。一方、ケース体11の壁部11B1の内周面には、上記雄ねじに螺合する雌ねじが形成され、キャップ16をケース体11にねじ込むことにより取り付けることができる。
【0016】
キャップ16の把持部16Aの下面には、筒部16Bの周囲にOリング17が設けられ、このキャップ16を閉め込んだ際には、ケース体11とキャップ16との間の気密性が確保される。
一方、キャップ16を開く方向に操作すると、図4に示すように、キャップ16が上方に移動することにより、通風孔16B1がケース体11の壁部11B1の上方に露出する。これによりこの通風孔16B1を通じて、靴本体3の開口4bとケース体11の外側空間とが連通するため、靴1内の空気を、靴本体3の開口4b、連通管13及びキャップ16の通風孔16B1を通じてケース体11の外側に流出させることができ、靴1内の蒸れを早急に解消することができる。
【0017】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態にかかる靴1と除湿具20とを組み合わせた外観斜視図であり、図6は、除湿具20及び靴1の部分断面図である。この実施形態では、靴1の構成は上記したものと略同一であるため、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態にかかる靴構造では、除湿具20が換気機能を備えておらず、この除湿具20を覆うカバー体26を設けた点で上記した実施形態と構成を異にしている。
除湿具20は、中空のケース体21を備え、このケース体21の内部には、図4に示すように、水分を吸着する吸湿剤22と、この吸湿剤22で吸着した水を保持する保水剤24とが混合して収容されている。本実施形態では、吸湿剤22として粒状に形成した塩化カルシウム等の潮解性を有する材料が用いられ、保水剤24としてポリアクリルアミド系等の合成高分子材料が用いられている。吸湿剤22とともに保水剤24を混合することにより、吸収された水分がケース体21内にゲル状体で保持されることにより、この水分が靴1内に逆流することが防止される。なお、本実施形態においても、ケース体21に備長炭やシリカゲル等の吸湿剤を収容しても良い。
【0018】
ケース体21は、図4に示すように、底面部21Aと、この底面部21Aの周縁から椀型に上方に膨出した上面部21Bとを備えて一体に形成されている。このケース体21は、上記した第1実施形態のケース体11と同様、ある程度の強度を有する材料で形成しても良いが、本実施形態では、除湿具20の上にカバー体26が設けられているため、例えば、薄膜状に形成されたポリエチレン等の樹脂材料で形成しても良い。この構成では、ケース体21自体には剛性はないものの、このケース体21をカバー体26で保護することができる。さらに、ケース体21の形状を靴本体3の上面形状や、カバー体26の形状に合わせて自由に変形させることができるため、カバー体26のデザインのバリエーションを広げることができ、除湿機能のみならず流行性にも富んだ靴を提供できる。
【0019】
底面部21Aには、靴本体3に形成された開口4bと略同一の大きさの開口部21A1が形成され、この開口部21A1には、ケース体11内から下方に延びて当該ケース体11内と靴1内の空間1Aとを連通する連通管23が設けられている。この連通管23は、例えば接着や溶着等により底面部21Aに固定され、当該連通管23の上端部には空気等の気体(湿度分を含む)を通過させる一方、水等の液体を遮断する透湿フィルム25が設けられており、この透湿フィルム25によっても保水剤24が保持した水分の逆流が防止されている。
この連通管23の下端部は、底面部21Aから靴本体3の甲部4の厚さと同程度の長さに突出して設けられ、この下端部には、ケース体21を靴本体3の開口4bに固定するための固定部材14が取り付けられている。この固定部材14を連通管23に取り付けて、ケース体21を靴本体3に固定する構成については、第1実施形態と同一であるため同一の符号を付して説明を省略する。
【0020】
カバー体26は、除湿具20のケース体21を覆って保護するとともに、靴1のデザインや形状に変化を与えるものであり、靴本体3に取り付けられている。このカバー体26は、靴本体3と同素材同色で形成することが望ましいが、靴本体3と異なる色で形成してデザイン性を高めても良い。カバー体26は、靴本体3の爪先部の形状に合わせて形成され、上面部26A及び側面部26Bを備える。上面部26Aには、上記したケース体21を収容するために上方に膨出した膨出部26A1が形成されている。側面部26Bの内面には、一対となる留め具(例えば、スナップボタンや面ファスナー)の一方27Aが設けられ、靴本体3には、この一方の留め具27Aに係合する他方の留め具27Bが設けられている。これら留め具は着脱可能なものであれば良い。
【0021】
この実施形態では、靴本体3の開口4bに靴1中の水分を吸着する吸湿剤22及び保水剤24を収容したケース体21を着脱自在に取り付けるとともに、このケース体21を覆うカバー体を靴本体に取り付けているため、靴1を履いている最中の靴1内の蒸れを解消できることに加え、カバー体26の形状を変更することにより、靴のデザインのバリエーションを広げることができる。この実施形態では、ケース体21内に吸湿剤22及び保水剤24を混合して収容した構成について説明したが、ケース体内を上下に区分けする仕切り板(不図示)を設けるとともに、この仕切りに吸湿剤及び保水剤よりも小径の孔を多数形成し、上段側に吸湿剤を収容し、下段側に保水剤を収容する構成としても良い。
【0022】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、これに限るものではない。例えば、上記した実施形態では、靴本体3の甲部4の先端4a(爪先部)に除湿具10、20を設ける構成としていたが、図7に示すように、靴本体3の内側面部5の土踏まず部5aに相当する部分に開口5bを形成し、この開口5bに除湿具10または除湿具20を配置する構成としても良い。この図7では、は左側の靴を示している。
また、この図7では、記載を省略しているが、靴本体の爪先部及び土踏まず部にそれぞれ開口を設け、この開口にそれぞれ除湿具10、20を設ける構成としても良い。特に、靴本体の爪先部及び土踏まず部に除湿具10を設けた場合には、この除湿具10のキャップ16を開放することにより、各通風孔を通じて靴1内に空気の流れを形成することができ、靴1内の蒸れを早急に解消することができる。
また、上記した実施形態では、ケース体11、21を固定部材14で靴本体3に固定する構成について説明しているが、靴本体3に開口を設けるだけでケース体11、21を当該靴本体3に固定できるのであれば他の方法を用いても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 靴
1A 空間
3 靴本体
4a 先端(爪先部)
4b 開口
5 内側面部
5a 土踏まず部
5b 開口
10、20 除湿具
11、21 ケース体
11A、21A 底面部
11B、21B 上面部
12、22 吸湿剤
13、23 連通管
14 固定部材
14A 円筒部
14B 鍔部
16 キャップ(弁体)
16A 把持部
16B 筒部
16B1 通風孔
24 保水剤
26 カバー体
26A 上面部
26A1 膨出部
26B 側面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の内部を除湿する機能を有した靴構造において、
前記靴の靴本体に開口を設け、前記開口に靴中の水分を吸着する吸湿剤を収容したケース体を着脱自在に取り付けたことを特徴とする靴構造。
【請求項2】
前記開口が、前記靴本体の爪先部もしくは土踏まず部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の靴構造。
【請求項3】
前記ケース体は、前記開口と該ケース体の外側とを連通自在とする弁体を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の靴構造。
【請求項4】
靴の内部を除湿する靴用除湿具において、
前記靴の靴本体に設けた開口に着脱自在なケース体を備え、前記ケース体内に靴中の水分を吸着する吸湿剤を収容したことを特徴とする靴用除湿具。
【請求項5】
前記開口が、前記靴本体の爪先部もしくは土踏まず部に設けられることを特徴とする請求項4に記載の靴用除湿具。
【請求項6】
前記ケース体は、前記開口と該ケース体の外側とを連通自在とする弁体を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の靴用除湿具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−160949(P2011−160949A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26291(P2010−26291)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(592038292)
【Fターム(参考)】