説明

靴用中敷き

【課題】足への負担軽減等を目的とする靴用の中敷は厚みを持たせることにより、緩衝効果を実現するが、そのような中敷を靴の中に入れて使用する場合、当然靴の中は中敷の分だけ窮屈になり、それによりかえって足への悪影響を及ぼすこととなる。特につま先部分は周囲を全て甲革で覆われているため、足指への圧迫は解消する中敷を提供する。
【解決手段】緩衝材0503のつま先側前端縁0504は、その厚みの差異を感じさせない部分として靴に入れた足の第1基節骨0202の骨底から第5基節骨0206の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨0202の中間から第5基節骨0206の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域に対応する位置するように構成されている靴の中敷。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に入れて使用する靴用の中敷および中敷構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ヒトの歩行においては足裏の3アーチ、即ち踵骨から第1中足骨頭部へかけての内側縦アーチと、踵骨から第5中足骨頭部にかけての外側縦アーチ、第1中足骨頭部から第5中足骨頭部にかけての横アーチで体重負荷による着地衝撃圧を吸収する。つまり、踵骨、第1中足骨頭部、第5中足骨頭部の3点が接地点となる。
【0003】
そして従来より、上述したとおりの歩行時の足裏への衝撃負担の軽減や、足の骨格が崩れることによる各症状の予防・緩和等を目的とした種々の靴用の中敷きが提案されている。例えば、着地時の足裏への衝撃を吸収することを目的する緩衝材からなる中敷がある。また足の骨格が崩れることを防止するために、上記足裏の3アーチ(内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチ)をサポートする立体凸形状を有する中敷がある。
【0004】
しかし、これらの中敷を靴の中に入れて使用する場合、当然靴の中は中敷の分だけ窮屈になり、それによりかえって足への悪影響を及ぼすことがある。特につま先部分は周囲を全て甲革で覆われているため、足指への圧迫は避けられない。
【0005】
また、土踏まず部分や、踵部分など、足裏全体ではなく特定の部位のみを対象とする局所的な中敷もあるが、そのような中敷を靴の中の適切な位置に装着することは極めて困難であり、また歩行等によって靴の中で中敷が移動することもある。このような場合も、かえって足への悪影響を及ぼすことになる。
【0006】
更に、中敷の材料としては従来より種々の素材が使用されている。中には、柔らか過ぎるために足への衝撃を吸収できないものや、逆に硬すぎるために足への衝撃をそのまま足に伝えてしまうものなどもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの課題を解決するものとして、本願出願人により、靴内部輪郭に対応した外形状を有し、靴に入れた足に接する層と、特定の部位のみを対象とする局所的な層を重ね合わせた層構造をなす中敷も提案されている(特許文献1)。当該中敷は、靴内部輪郭に対応した外形状を有し、靴に入れた足に接する表面層と、第1乃至第5中足骨頭から踵骨までの足の輪郭に対応した中間層と、土踏まず部から踵部にかけての部分的な下面層の3層構造からなる。つまり、つま先部分は表面層のみからなるため足指への圧迫を低減できる。
【0008】
しかしながら、当該中敷においては、体重による負荷が最も大きい踵骨、第1中足骨頭部、第5中足骨頭部の3点のうち、第1中足骨頭部と第5中足骨頭部に対応する部分は、中間層のつま先側端縁部近くに位置するため、当該つま先側端縁部が形成するテーパー状の一部に含まれ、その厚みは薄く不十分となる。
【0009】
そこで、本発明は靴に装着した際に足への圧迫感を感じさせず、且つ第1中足骨頭部と第5中足骨頭部に対応する部分に十分な厚さを確保する中敷を提案する。
【特許文献1】登録第4002109号
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本願出願人は、靴に入れて使用する靴用の中敷又は中敷構造体を提案する。
【0011】
第一の発明として、靴に入れた足の第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域に対応する領域に前端縁を位置するように用いるための緩衝材を有する靴の中敷を提案する。
【0012】
第二の発明として、前記前端縁近傍はテーパー状であり、緩衝材の厚さが薄くなり始めるテーパー開始領域は、少なくとも靴に入れた足の第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域よりもつま先側に対応する領域である第一の発明に記載の靴の中敷を提案する。
【0013】
第三の発明として、靴内底部輪郭に対応した外形状を有する下面層と、靴に入れた足の第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域に対応する下面層の領域に前端縁を位置して下面層と重ねあわされた緩衝材と、からなる靴の中敷を提案する。
【0014】
第四の発明として、前記緩衝材の前端縁近傍はテーパー状であり、緩衝材の厚さが薄くなり始めるテーパー開始領域は、少なくとも靴に入れた足の第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域よりもつま先側に対応する領域である第三の発明に記載の靴の中敷を提案する。
【0015】
第五の発明として、第一の発明から第四の発明のいずれか一に記載の中敷きと、前記中敷きの上層として、靴に入れた足に接する部分が、天然皮革、人工皮革、合成皮革或いは布材、不織布からなる層である表面層と、からなる靴の中敷構造体を提案する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、靴に装着した際に足への圧迫感を感じさせず、且つ体重による負荷が最も大きい第1中足骨頭部と第5中足骨頭部に対応する部分に十分な厚さを保持することにより、足への負担、衝撃吸収の向上を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。なお、実施形態1は主に請求項1などに関する。実施形態2は主に請求項2などに関する。実施形態3は、主に請求項3から5などに関する。
<<実施形態1>>
<実施形態1:概要>
【0018】
実施形態1は、靴に入れた足の第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域に対応する領域に前端縁を位置するように用いるための緩衝材を有する靴の中敷について説明する。
【0019】
「中敷」とは、履物の中に敷く物をいい、履物の製作工程で履物の一部品として取り付け可能なもの又は完成品の履物に追加部品として後で取り付けられるものであって、取り付け、取り外しが可能なものだけでなく、完成品となる履物の一部品であり、履物の製作工程で組み付けられ取り外しができないものを含む。つまり、本発明の中敷は、履物と別個に販売され購入者が履物に取り付ける場合もあれば、履物に取り付けられた状態で販売される場合又は履物と一体として販売される場合もある。
<実施形態1:構成>
【0020】
図1に本実施形態の靴の中敷の平面図の一例を示す。例えば、(a)や、(b)のような靴の中敷である。
【0021】
本実施形態に係る靴の中敷は、緩衝材(0101)を有する。この緩衝材は、靴に入れた足の第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域に対応する領域に前端縁(0102)を位置する。
【0022】
「緩衝材」とは、地面からの足への衝撃に対する緩衝効果を奏するものであればスポンジ素材、ゲル素材、ゴム素材など特に限定されない。例えば、ゲル素材として、後述する実施例1のようにポリウレタンジェルを用いることとしても良い。この場合、透明な靴の中敷とすることができるので、サンダルやミュールのように、歩行時にも中敷が見え易い靴の場合も、靴のファッション性を損なわない。さらに、この素材は、粘着力があるので、靴に入れた際、歩行時に靴の内部で中敷がずれるのを防止できる。また、踵の高いサンダルやミュールを履いた場合も、足が靴の内部でつま先側にずり落ちるのを防止できる。素材によって足や、ソックス、ストッキング素材との摩擦力を上げることができるからである。
【0023】
あるいは、スポンジ素材としてウレタンスポンジを用いることとしても良い。かかる場合、絨毯と同等の感触を実現する。
【0024】
「前端縁」とは、中敷長手方向のつま先側の端縁のことである。つまり、当該緩衝材はつま先部分を有さない。したがって、本実施形態の中敷を靴に装着した際、中敷自身の厚みのために靴内部のつま先の空間が狭くなり、靴を履いた際、足のつま先が圧迫されるのを防ぐことができる。
【0025】
ここで、第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域を図2及び図3を用いて説明する。図2は、右足を足裏から見た骨格を示すものであり、図3は立位時の右足の内側側面図を示すものである。第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域とは、図2の0201で示す領域であり、第1基節骨(0202)、第2基節骨(0203)、第3基節骨(0204)、第4基節骨(0205)、第5基節骨(0206)において、各基節骨の骨底を結ぶ線と、各基節骨のほぼ中間を結ぶ線に挟まれた領域である。当該領域は足指の付け根とその周辺領域に対応する。これを内側側面から見た図が図3である。図2における第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域(0201)は図3において、地面に対して凹形状となっている部分(0301)とその周辺領域である。
【0026】
従って、健常な足骨格形状であれば、当該第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域は立位時に地面と強く接することがない。これは歩行時においてもほぼ同様である。従って、当該部分に緩衝材の前端縁を設けた場合、緩衝材の境目を足裏に強く感じることはなく、足裏に違和感を覚えることはない。
【0027】
なお、当該緩衝材は、前端縁が上述したとおり靴に入れた足の第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域に対応する領域に位置していればよく、前端縁を除く端縁の位置については特に限定しない。例えば、前端縁を除く全ての端縁が靴内底部輪郭に対応した外形状を有していてもよい。靴内底部輪郭に対応した外形状とは、靴内部の足裏と接する面形状に対応した形状のことである。これにより、靴内底部に本実施形態の中敷を重ねるだけで、靴内部の適切な位置に容易に装着することができる。または中敷長手方向の踵側の端縁が土踏まず領域の踵側の終了領域に位置していてもよい。
【0028】
また、緩衝材は1mmから4mmの厚さが好ましい。この場合の厚さは、靴に入れた足の第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域に対応する部分の厚さである。足への衝撃をソフトにし、筋肉疲労をやわらげ、またタコや魚の目、角質などの症状を抑えることを目的とするものであるから、適度な厚さを必要とする。これ以上の厚さは、靴をきつくし、また、中敷のないつま先部分との厚さの差異が大きくなることによる違和感、不快感などの原因となるからである。より好ましくは2mmである。
<実施形態1:効果>
【0029】
本実施形態によれば、靴に装着しても足のつま先部分がきつくならず、また地面からの衝撃をソフトにし長時間の歩行等でも足への負担をやわらげる。
<<実施形態2>>
<実施形態2:概要>
【0030】
本実施形態は、実施形態1を基本としつつ、さらに、緩衝材の前端縁近傍はテーパー状であり、緩衝材の厚さが薄くなり始めるテーパー開始領域は、少なくとも靴に入れた足の第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域よりもつま先側に対応する領域であることを特徴とする靴の中敷について説明する。
【0031】
「中敷」、「緩衝材」、「前端縁」については、前記実施形態1で述べたところと同様であるので、説明を省略する。
<実施形態2:構成>
【0032】
図4Aに本実施形態の概念図の一例を示す。(a)は本実施形態の靴の中敷の縦断面図、(b)は本実施形態の平面図、(c)は本実施形態の靴の中敷の横断面図である。また、(d)は、縦断面図の前端縁付近を拡大した拡大図である。緩衝材の前端縁(0401)の近傍はテーパー状になっている(0402)。なお、当該テーパー開始領域は、足の第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域よりつま先側に位置する。
図4Bに示すようにテーパー状とは、その徐々に薄くなる形状が必ずしも直線的に薄くなるもの(ア)だけを示すのでなく、曲線状((イ)、(ウ))、階段状(エ)に徐々に薄くなる形状も含まれる。本図に示している例は本件発明においてはすべてテーパー状に含まれるものとする。また、本件発明に言うテーパー状には逆テーパー状のもの((オ)から(ク)のように、ひさし状に上側が出っぱっているもの)なども含むものとする。
【0033】
「テーパー開始領域」とは、テーパー状を開始する領域、つまり緩衝材の厚さが薄くなり始める領域のことである。当該テーパー開始領域よりつま先にかけては、緩衝材は徐々にその厚さが薄くなるため、その緩衝効果が不十分となる。テーパー開始領域及び、第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域について右足の内側側面を示す図5を用いて説明する。
【0034】
図5は、足(0501)、足骨(0502)、本実施形態の緩衝材(0503)の相対的位置関係を示す概念図である。ここで、緩衝材(0503)はつま先側がテーパー状となっており、前端縁(0504)は各指の基節骨(0505)の骨底(0505a)と各指の基節骨のほぼ中間(0505b)に挟まれた領域(0505c)に対応する位置にあって、足指の付け根(0506)付近に対応する。そして、テーパー開始領域(0507)は、各指の中足骨頭(0508)に対応する領域(0509)よりつま先側、つまり、足の踏み付け部(0510)よりつま先側に位置する。つまり、テーパー開始領域(0507)は各指の基節骨(0505)のほぼ中間と各指の中足骨頭(0508)との間に対応する位置にある。
【0035】
そして、テーパー開始領域は少なくとも靴に入れた足の第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域よりもつま先側に対応するとは、図5においてテーパー開始領域(0507)が第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域(0509)よりつま先側に位置し、テーパー開始領域(0507)が第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域(0509)と重なることがないことをいう。これにより、第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域(0509)の緩衝材は十分な厚さを保持しており、緩衝効果が余すところ無く発揮される。
【0036】
なお図2においては、テーパー開始領域は第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域(0207)よりつま先側であるため、0201の間に位置することになる。
【0037】
また、緩衝材のテーパー領域を除く前端縁から土踏まず領域まではほぼ均一な厚さであることが好ましい。テーパー領域を除く前端縁から土踏まず領域までとは、テーパー開始領域から、土踏まず領域のつま先側開始領域までをいう。この部分が立位時、歩行時、走行時ともに最大荷重のかかる部分であり当該部分に厚さの偏りがある場合、かえって足への悪影響を及ぼすことになることもあるからである。
【0038】
また、緩衝材の第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域より踵側の構造については特に限定しないが、土踏まず領域が他の緩衝材の領域より厚く構成されていることが好ましい。土踏まず領域の厚みにより、足裏の3アーチ(内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチ)がサポートされ、外反母趾など、アーチの歪みを原因とする各症状の予防、緩和を可能とするからである。
<実施形態2:効果>
【0039】
本実施形態によれば、立位時、歩行時、走行時ともに最大荷重のかかる第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域に確実に緩衝材の緩衝作用が働くため、地面からの衝撃が吸収される。
<<実施形態3>>
<実施形態3:概要>
【0040】
本実施形態の靴の中敷は、靴内底部輪郭に対応した外形状を有する下面層と、靴に入れた足の第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域に対応する下面層の領域に前端縁を位置して下面層と重ねあわされた緩衝材と、からなることを特徴とする。
【0041】
「中敷」、「緩衝材」、「前端縁」、「テーパー開始領域」については、前記実施形態1又は2で述べたところと同様であるので、説明を省略する。
<実施形態3:構成>
【0042】
図6に本実施形態の下面層(a)と緩衝材(b)の底面図の一例を示す。
【0043】
「下面層」とは、緩衝材の下面、すなわち、靴内底側に位置する層であって、靴内底部輪郭に対応した外形状を有する。靴内底部輪郭に対応した外形状とは、靴内部の足裏と接する面形状に対応した形状のことである。これにより、靴内底部に本実施形態の中敷を重ねるだけで、靴内部の適切な位置に容易に装着することができ、歩行中等に靴内部で中敷の位置が移動するのを防ぐことができる。
【0044】
下面層の材質は特に限定されない。例えば、緩衝効果を奏する素材により構成することとしても良いし、天然皮革、人工皮革、合成皮革或いは布材、不織布により構成することとしても良いし、樹脂、パルプボードにより構成することとしても良い。前述のように、後述する表面層を備えない場合、下面層の一部は、足のつま先側で足に接するため、この場合には、蒸れを防ぐ為に通気性のある素材が好ましい。また、特に緩衝材が透明な材質からなる場合などは、靴を脱いだ際に、下面層が目に付くこととなるため、靴のファッション性を損なわないような材質、模様、色(透明、半透明、金属色なども含む。)がよい。
【0045】
また、下面層の厚みも特に限定されない。例えば、つま先部分の空間に余裕がない靴に装着するものとしては、厚みを抑えることが好ましく、1mm以下が好ましい。
【0046】
緩衝材(b)は、靴に入れた足の第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域に対応する下面層の領域に前端縁(0602)を位置して下面層と重ねあわされている。緩衝材(b)はつま先部分(0601)がないため、後述する表面層を備えない場合、下面層の一部は、靴に入れた足のつま先側で足に接することとなる。
【0047】
緩衝材は1mmから4mmの厚さが好ましい。この場合の厚さは、靴に入れた足の第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域に対応する部分の厚さである。足への衝撃をソフトにし、筋肉疲労をやわらげ、またタコや魚の目、角質などの症状を抑えることを目的とするものであるから、適度な厚さを必要とする。これ以上の厚さは、靴をきつくし、また表面層のないつま先部分との厚さの差異が大きくなることによる違和感、不快感などの原因となるからである。より好ましくは2mmである。
【0048】
さらに、実施形態1、2又は本実施形態における中敷と、さらに表面層と、からなる靴の中敷構造体としても良い。表面層は、中敷の上層となる層である。また、表面層の靴に入れた足に接する部分は、天然皮革、人工皮革、合成皮革あるいは布材、不織布からなる。通気性のある素材が好ましく、蒸れを防ぐことができる。あるいは、靴を脱いだ際に目に付くものであるため、靴のファッション性を損なわないような材質、模様、色(透明、半透明、金属色なども含む。)とすることが好ましい。
<実施形態3:効果>
【0049】
本実施形態の靴の中敷によれば、靴に装着しても足のつま先部分がきつくならず、また地面からの衝撃をソフトにし長時間の歩行等でも足への負担をやわらげることができる。
【実施例1】
【0050】
実施例1として、本発明に係る中敷の一例についての、実験結果を示す。本実施例の中敷は、その材質がポリウレタンジェルであり、前記実施形態2の中敷と同様の構成を有する。
【0051】
図7A及び図7Bは、足圧分布測定装置(F−スキャン;ニッタ株式会社製)を用いて体重45kgの女性の足圧分布を測定した結果を示したものである。図7Aは、実施例1の靴の中敷を使用しない場合の足圧分布図である。(a)は左足を、(b)は右足を示している。また、図7Bは、実施例1の靴の中敷を使用した場合の足圧分布図である。(c)は左足を、(d)は右足を示している。(図7A、図7Bをカラーで示したものを本件出願の物件提出書で提出している。)
【0052】
靴の中敷を使用しない場合は、建物内のPタイルの廊下を靴を履いて歩行した(5歩程度)ときの足圧分布を測定している。また、靴の中敷を使用する場合は、建物内のPタイルの廊下を靴に、本実施例の靴の中敷を敷き、歩行した(5歩程度)ときの足圧分布を測定している。また、足圧分布測定において、足の直ぐ下に、足の裏面と直接接する態様で足圧測定のための厚さ0.15mmのセンサーシートを重ねている。
【0053】
最大足圧値として、図中の、黒い四角で囲んだ部分について測定した。その結果、最大足圧値は、(a)が3.4kg/cmであり、(b)が3.5kg/cmであり、(c)が2.6kg/cmであり、(d)が2.2kg/cmであった。つまり、実施形態2に係る中敷を使用した場合、使用しない場合よりも、左右とも最大足圧値が低かった。
【0054】
また、図8は、前記図7A及び図7Bの場合と同様に足圧測定した結果を、3D表示したものである。この図に示すように、靴の中敷を使用しない場合の左足(a)、右足(b)よりも、靴の中敷を使用した場合の左足(c)、右足(d)の方が、ピークが低くなっており、かつ、接触面積が広くなっている。(図8をカラーで示したものを本件出願の物件提出書で提出している。) また、図9A及び図9Bは、前記図7A及び図7Bの場合と同様に足圧測定した場合の接触面積を示したものである。(a)は、靴の中敷を使用しないの場合の左足、(b)は、靴の中敷を使用しない場合の右足、(c)は、靴の中敷を使用した場合の左足、(d)は靴の中敷を使用した場合の右足の図である。
【0055】
接触面積値は歩行している(5歩程度)場合に足圧値の変化を測定し、1歩ごとに足圧値がピークになった時点で、0.1kg/cm以上の圧力が計測されている部分の面積を集計し、さらに、この面積を平均化して算出したものである。具体的には、図9A及び図9Bにおいて、黒色で塗りつぶされている部分の面積である。この面積は、最大足圧がかかる場合の、足裏と靴の中敷が接触している面積を示すものである。その結果、(a)が120.26cmであり、(b)が128.77cmであり、(c)が127.32cmであり、(d)が130.06cmであった。つまり、実施形態2に係る中敷を使用した場合、使用しない場合よりも、左右とも接触面積値が大きかった。
【0056】
以上のように、実施形態2の靴の中敷を使用した場合、足裏のより広い面積に圧力が分散され、最大足圧値が低くなるので、足裏への負担軽減や衝撃吸収、特定部分のタコや魚の目、角質、痛みなどの症状を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施形態1の靴の中敷の右足平面図(右足を足表側から見た平面図)
【図2】足骨格図(右足を足裏から見た底面図)
【図3】立位時の右足内側側面図
【図4A】実施形態2の靴の中敷の概念図
【図4B】テーパー状を説明する図
【図5】実施形態2の靴の中敷の足との相対的位置関係を示す概念図
【図6】実施形態3の靴の中敷の緩衝材と下面層の概念図
【図7A】実施例1の靴の中敷を使用しない場合の足圧分布図
【図7B】実施例1の靴の中敷を使用した場合の足圧分布図
【図8】実施例1の靴の中敷を使用した場合と使用しない場合との足圧分布図を3D表示したもの
【図9A】実施例1の靴の中敷を使用しない場合の接触面積図
【図9B】実施例1の靴の中敷を使用した場合の接触面積図
【符号の説明】
【0058】
緩衝材 0101、0503
前端縁 0102、0401、0504、0602
第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域 0201
第1基節骨 0202
第2基節骨 0203
第3基節骨 0204
第4基節骨 0205
第5基節骨 0206
地面に対して凹形状となっている部分 0301
テーパー状 0402
足 0501
足骨 0502
各指の基節骨 0505
各指の基節骨の骨底 0505a
各指の基節骨のほぼ中間 0505b
各指の基節骨の骨底と各指の基節骨のほぼ中間とに挟まれた領域 0505c
足指の付け根 0506
テーパー開始領域 0507
各指の中足骨頭 0508
各指の中足骨頭に対応する領域 0509
足の踏み付け部 0510
第1中足骨頭から第5中足骨頭まで各中足骨頭をわたる領域 0207
つま先部分 0601

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴に入れた足の第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域に対応する領域に前端縁を位置するように用いるための緩衝材を有する靴の中敷。
【請求項2】
前記前端縁近傍はテーパー状であり、緩衝材の厚さが薄くなり始めるテーパー開始領域は、少なくとも靴に入れた足の第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域よりもつま先側に対応する領域である請求項1に記載の靴の中敷。
【請求項3】
靴内底部輪郭に対応した外形状を有する下面層と、
靴に入れた足の第1基節骨の骨底から第5基節骨の骨底まで各基節骨の骨底を結ぶ線と、第1基節骨の中間から第5基節骨の中間まで各基節骨の中間を結ぶ線とに挟まれた領域に対応する領域に前端縁を位置して下面層と重ねあわされた緩衝材と、からなる靴の中敷。
【請求項4】
前記緩衝材の前端縁近傍はテーパー状であり、緩衝材の厚さが薄くなり始めるテーパー開始領域は、少なくとも靴に入れた足の第1中足骨頭から第5中足骨頭まで、各中足骨頭をわたる領域よりもつま先側に対応する領域である請求項3に記載の靴の中敷。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の中敷の上層として、靴に入れた足に接する部分が、天然皮革、人工皮革、合成皮革或いは布材、不織布からなる層である表面層を有する靴の中敷構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2011−229643(P2011−229643A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101800(P2010−101800)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(591025901)株式会社村井 (18)
【Fターム(参考)】