説明

靴紐通し具

【課題】使い勝手がよく、装飾性の高い靴紐通し具を提供する。
【解決手段】靴紐通し具1は紐靴のアイレット31に取り付けられるものであって、アイレット31の径よりも大きい外寸を有するベース部11、及びベース部11から突出して設けられた、アイレットの径よりも小さい外寸を有する突出部12とを有する第1部材10と、アイレットの径よりも大きい外寸を有する頭部21、及び頭部21を貫通するように設けられた靴紐通し孔22とを有する第2部材20と、突出部12及び頭部21のいずれか一方又は両方に設けられた、突出部12と頭部21を係合する係合部とを備える。2個の部品のみから成るため、従来の3個の部品から成る靴紐通し具よりも、靴への取り付けをしやすい。また、無粋な座金を用いる必要がないため、装飾性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紐靴用の緊締具である靴紐通し具に関する。
【背景技術】
【0002】
紐靴には、その両側部から立ち上がる甲部(アッパー)に、靴紐を通す孔(アイレット)がつま先側から足首側に向かって複数、2列に設けられている(以下、単に「靴」と呼んだ場合には「紐靴」を指し、単に「紐」と呼んだ場合には「靴紐」を指すものとする)。通常、紐はそれらのアイレットに直接通すが、紐を通しやすくすることや装飾効果を高めるため等の目的で、アイレットに取り付けるものであって紐を通す孔を有する靴紐通し具が用いられている。
【0003】
特許文献1には、雄ねじと、座金と、雌ねじから成る靴紐通し具が記載されている。雄ねじの一端には円形の台座が設けられている。座金は板状の部材であり、中央に雄ねじを通す第1の孔が設けられると共に、中央からずれた位置に紐を通す第2の孔が設けられている。この靴紐通し具は、靴の内側からアイレットに雄ねじを通し、靴の外側から座金の第1の孔に雄ねじを通し、さらに雄ねじに雌ねじを締め付け、雄ねじの台座と座金でアイレットの周囲の皮革や布等を挟み込むことにより靴に取り付けられる。紐は第2の孔に通したうえで、アイレットに直接通した場合と同様に結ぶことにより、靴を足に固定する。また、この文献では、雌ねじの上部に花やキャラクターの模型、あるいは宝石等を取り付けることにより、装飾効果を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-354504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の靴紐通し具の雄ねじ、雌ねじ及びの座金の大きさは、外径がアイレットよりもやや大きい程度である数mmであり、高さが雄ねじ及び雌ねじでは数mmからせいぜい1cm程度、座金では1mm程度又はそれ以下という、小さなものである。そのため、特許文献1に記載の靴紐通し具は、このように小さい雄ねじ、座金及び雌ねじという3個の部品を組み立てなければ使用することができず、取り付け作業が面倒である。
【0006】
また、第2の孔の周囲の部分は、第2の孔に紐を通すために雌ねじよりも外側にはみ出しており、使用時に人の目に留まりやすい。この部分は、上部に装飾を施すことができる雌ねじとは異なり、金属製の無粋な部材から成るため、靴紐通し具の装飾性を損ねてしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、取り付け作業が容易であって装飾性の高い靴紐通し具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る靴紐通し具は、紐靴に設けられた、靴紐を通すアイレットに取り付けられるものであって、
a-1) 前記アイレットの径よりも大きい外寸を有する扁平なベース部と、
a-2) 前記ベース部から突出するように設けられた、前記アイレットの径よりも小さい外寸を有する突出部と、
を有する第1部材と、
b-1) 前記アイレットの径よりも大きい外寸を有する頭部と、
b-2) 前記頭部を貫通するように設けられた、前記靴紐を通す靴紐通し孔と
を有する第2部材と
c) 前記突出部及び前記頭部のいずれか一方又は両方に設けられた、該突出部と該頭部を係合する係合部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る靴紐通し具は、第1部材の突出部を靴の内側からアイレットに通し、靴の外側から第2部材を第1部材側に近づけ、係合部で突出部と頭部を係合させることにより、靴に取り付ける。ベース部及び頭部の外寸がアイレットの径よりも大きいため、係合後は靴紐通し具がアイレットから抜けることがない。
【0010】
本発明に係る靴紐通し具では、第1部材と第2部材という2個の部品のみを用いているため、3個の部品を用いていた従来の靴紐通し具よりも取り付け作業が容易である。また、座金を用いる必要がないため、装飾性も向上する。
【0011】
係合部には、例えば突出部に形成された雄ねじと頭部に形成された雌ねじから成るものを用いることができる。また、係合部には、突出部及び頭部から形成されるスナップ式の留め具を用いることができる。
【0012】
本発明に係る靴紐通し具においては、前記頭部の一部に、前記アイレットの径よりも小さい外寸を有し前記突出部を挿入可能な筒状部が形成されていてもよい。この場合、突出部が筒状部に挿入され、突出部がアイレットを通過した状態で、突出部と頭部が係合される。
【0013】
本発明に係る靴紐通し具にはさらに、前記頭部の側面に凹部を備えるようにしてもよい。この凹部に紐を掛けることにより、紐を靴紐通し孔に通さなくとも靴を紐で締めることができる。
【0014】
前記ベース部の下面には滑り止め処理が施されていることが望ましい。指の腹でベース部の下面をアイレット側に押しつけ、あるいは第2部材で突出部を介してベース部の下面を靴のタンに押し付けて、突出部と頭部を係合させる際に第1部材が第2部材の動きに応じて不所望に回動、移動することを防ぐことができる。
【0015】
第1部材及び第2部材の材料は特に問わないが、耐久性の点ではステンレス鋼や真鍮などの金属を、コストの点ではプラスチックを、それぞれ好適に用いることができる。また、係合部に前述のスナップ式の留め具を用いる場合には、第1部材及び第2部材の材料にはプラスチックを用いることが望ましい。
【0016】
前記頭部には、宝石あるいはその模造品、金属製の部材に彫刻を施したものなどの装飾具を取り付けることができる。これにより、装飾性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る靴紐通し具は、座金を使用しないため、組み立て作業が容易であるうえに装飾性が高い、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係る靴紐通し具1の正面図(a)及び側面図(b)。
【図2】本実施例の靴紐通し具1を第1部材10と第2部材20に分解した状態の正面図。
【図3】本実施例の靴紐通し具1の上面図(a)及び底面図(b)。
【図4】本実施例の靴紐通し具1を靴に取り付ける方法を説明するための図。
【図5】靴の甲部(a)に設けられたアイレットに本実施例の靴紐通し具1を取り付けた状態(b)を説明するための上面図。
【図6】本実施例の靴紐通し具1の他の使用例を示す図。
【図7】スナップ式の留め具を用いた実施例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る靴紐通し具の実施例を、図1〜図7を用いて説明する。
【実施例】
【0020】
本実施例の靴紐通し具1は、図1及び図2に示すように、第1部材10と第2部材20から成る。第1部材10はベース部11と突出部12を有し、第2部材20は頭部21、靴紐通し孔22と装飾具24を有する。
【0021】
ベース部11は円板状であり、突出部12はその円板の上面中央に設けられている。突出部12の表面に雄ねじが形成されている。頭部21は、本体部211と筒状部212を有する。これら本体部211と筒状部212は、円柱材の一端側を切削して細くすることにより形成され、その一端側(細い方)が筒状部212、他端側(太い方)が本体部211である。靴紐通し孔22は、本体部211の円柱に直交する方向に貫通する孔である。また、本体部211の側面には、周回するように凹部23が設けられている。筒状部212内には雌ねじが形成されており、この雌ねじと突出部12の上記雄ねじが係合部として機能する。これらベース部11、突出部12及び頭部21の材料は、本実施例ではいずれもステンレス鋼である。
【0022】
ベース部11の外径、及び頭部21の外径(本体部211の外径と筒状部212の外径のうち、大きい方である前者が相当)は、靴紐通し具1が取り付けられる靴のアイレット31(図4、図5)の径よりも大きい。一方、突出部12及び筒状部212の外径はアイレット31の径よりも小さい。
【0023】
頭部21の上面には装飾具24が取り付けられている(図3(a)参照)。装飾具24は、宝石を模して、着色された透明プラスチックに模様を付したものである。ベース部11の下面には「−」(マイナス)状の溝13が設けられている(図3(b))。
【0024】
図4及び図5を用いて、本実施例の靴紐通し具1の使用方法を説明する。まず、左右2列にアイレット31が設けられた靴のアッパー32と、アイレット31の下に設けられたタン33(図5)の間に第1部材10を入れ、アッパー32の下側からアイレット31に突出部12を通す(図4(a))。次に、アッパー32の上側から第2部材20を第1部材10側に近づけ、筒状部212を回転させて雌ねじを突出部12の雄ねじと係合させることにより、靴紐通し具1が靴に取り付けられる(図4(b))。その際、ベース部11の下面を指の腹で直接又はタン33を介してアッパー32側に押しながら雌ねじと雄ねじを係合させると、溝13が滑り止めとなるため、雌ねじ側の回動につられて同方向に雄ねじ側が回動することを防ぐことができる。また、溝13にコイン等を差し込んだ状態で雌ねじと雄ねじを係合させても、同様の効果が得られる。靴紐通し具1は、靴に設けられたアイレット31の全てに取り付けてもよいし、一部のみに取り付けてもよい。
【0025】
続いて、各アイレット31に取り付けられた靴紐通し具1の靴紐通し孔22(靴紐通し具1を取り付けていないアイレット31がある場合にはそのアイレット31自体)に靴紐34を通す(図4(c), (d)、図5(b))。各靴紐通し孔22に靴紐34を通す順番は、通常のようにアイレット31に靴紐34を通す場合と同様である。典型的には、つま先側から順に、靴紐34の一端は左右2列に並ぶ靴紐通し具1の靴紐通し孔22に交互に、各列では1個おきに通してゆき、靴紐34の他端は残りの靴紐通し孔22に通してゆく。その後、靴紐34の両端を足首側に引くことで締めたうえで、靴紐34を結ぶ。
【0026】
次に、靴紐通し具1の他の使用例を説明する。この例では、靴紐通し具1を靴に取り付ける方法は上記の例と同様である(図4(a)、(b))。靴紐34は、靴紐通し孔22には通さず、アイレット31の列の外側から、凹部23に掛けてゆく(図6)。靴紐34を各靴紐通し具1の凹部23に掛ける順番は、前述の例で靴紐34を靴紐通し孔22に通す順番と同じでよい。こうして、全ての靴紐通し具1の凹部23に靴紐34を掛けた後、靴紐34の両端を足首側に引くことで締めたうえで、靴紐34を結ぶ。
【0027】
本実施例の靴紐通し具1は、第1部材10と第2部材20の2個の部品のみから成るため、従来の3個の部品から成る靴紐通し具よりも、靴への取り付けをしやすい。また、無粋な座金を用いる必要がないため、装飾性が高い。
【0028】
係合部は雄ねじと雌ねじを組み合わせたものには限られず、例えば図7に示すように、第1部材10Aに設けられた突出部12Aと、第2部材20Aに設けられた筒状部212Aで1組のスナップ式の留め具を構成するようにしてもよい。第1部材10Aのベース部11Aと突出部12Aはいずれも、プラスチックのように可撓性のある材料から成る。突出部12Aは、ベース部11Aから突出するように設けられた円柱12A1と、円柱12A1の径方向に貫き、円柱12A1の上端から下端まで形成された縦溝12A2と、円柱12A1の上端であって縦溝12A2の両端の位置に、径方向に突出するように設けられた凸係合部12A3を有する。筒状部212Aには、内部を長手方向に貫き、円柱12A1の外径とほぼ同じ径を有する貫通孔212A1と、円柱12A1の下端と凸係合部12A3の距離と同じ距離だけ、筒状部212Aの下端から離れた位置に設けられた、凸係合部12A3と係合する凹係合部212A2が設けられている。このように円柱12A1の外径と貫通孔212A1の内径がほぼ等しいため、円柱12A1から径方向に突出する凸係合部12A3の径は貫通孔212A1の内径よりも大きい。
【0029】
第1部材10Aへの第2部材20Aの固定は以下のように行う。突出部12Aを貫通孔212A1に挿入しようとすると、凸係合部12A3は、貫通孔212A1の内壁に当接し、縦溝12A2側に押される。この時、円柱12A1が可撓性を有することから、凸係合部12A3が縦溝12A2側(円柱12A1の径方向)に移動するため、凸係合部12A3を貫通孔212A1内に挿入することができる。そして、突出部12Aをさらに押し込むことで凸係合部12A3が凹係合部212A2まで達すると、凸係合部12A3が元に位置に戻ろうとして円柱12A1の径方向の外側に移動することにより、凸係合部12A3と凹係合部212A2が係合する。こうして、第1部材10Aに第2部材20Aが固定される。一方、ベース部11Aを変形させることで、凸係合部12A3を縦溝12A2側に移動させた状態で突出部12Aを貫通孔212A1から引き抜くことにより、第2部材20Aを第1部材10Aから取り外すことができる。
【0030】
本発明は上記実施例には限定されない。例えば、ベース部11、突出部12及び頭部21の材料は、上述のステンレス鋼やプラスチックの他に、真鍮など、他の材料などを用いることができる。また、頭部21に筒状部212を設けることは必須ではなく、例えば本体部211のみを設けたうえで、その下面側に直接孔を空けて雌ねじを形成してもよい。ベース部11の下面にマイナス状の溝13を設けることも必須ではなく、他の形状の溝を設けてもよいし、溝が無くてもよい。また、溝13と同様の滑り止めの目的でベース部11の下面に凹凸を多数設けてもよい。
【0031】
装飾具24は図3(a)の模様のものには限られず、また、装飾具24を設けなくてもよい。装飾具24の材質も上記のものには限られず、不透明なプラスチックや各種の金属などを用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…靴紐通し具
10、10A…第1部材
11、11A…ベース部
12…突出部
12A…突出部
12A1…円柱
12A2…縦溝
12A3…凸係合部
13…溝
20、20A…第2部材
21…頭部
211…本体部
212、212A…筒状部
212A1…貫通孔
212A2…凹係合部
22…靴紐通し孔
23…凹部
24…装飾具
31…アイレット
32…アッパー
33…タン
34…靴紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐靴に設けられた、靴紐を通すアイレットに取り付けられる靴紐通し具であって、
a-1) 前記アイレットの径よりも大きい外寸を有する扁平なベース部と、
a-2) 前記ベース部から突出するように設けられた、前記アイレットの径よりも小さい外寸を有する突出部と、
を有する第1部材と、
b-1) 前記アイレットの径よりも大きい外寸を有する頭部と、
b-2) 前記頭部を貫通するように設けられた、前記靴紐を通す靴紐通し孔と
を有する第2部材と
c) 前記突出部及び前記頭部のいずれか一方又は両方に設けられた、該突出部と該頭部を係合する係合部と
を備えることを特徴とする靴紐通し具。
【請求項2】
前記係合部が、前記突出部に形成された雄ねじと、前記頭部に形成された雌ねじから成ることを特徴とする請求項1に記載の靴紐通し具。
【請求項3】
前記係合部が、前記突出部及び前記頭部に設けられたスナップ式の留め具であることを特徴とする請求項1に記載の靴紐通し具。
【請求項4】
前記頭部の一部に、前記アイレットの径よりも小さい外寸を有し前記突出部を挿入可能な筒状部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の靴紐通し具。
【請求項5】
前記頭部の側面に凹部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の靴紐通し具。
【請求項6】
前記ベース部の下面に滑り止め処理が施されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の靴紐通し具。
【請求項7】
前記頭部に装飾部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の靴紐通し具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−254271(P2012−254271A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145129(P2011−145129)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(507048961)株式会社ミヤタ物産 (1)
【Fターム(参考)】