説明

本発明は、靴(1)、特にスポーツシューズであって、底(2)と、該底に結合された靴上部部分(3)とを有しており、底(2)が収容室(4)を有しており、該収容室に緩衝エレメント(5)が取り外し可能に配置される形式のものに関する。靴のばね特性および緩衝特性を改善するために、本発明によれば、収容室(4)が底(2)を、靴(1)の長手方向軸線(L)に対して横方向でほぼまたは完全に貫通しており、取り外し可能に配置される緩衝エレメント(5)は、プレート状に形成された基体(6)から成っており、該基体は、緩衝部分(8)を配置することができる複数の切欠(7)を有しており、切欠(7)は緩衝エレメント(5)において、緩衝エレメント(5)の高さ(H)全体にわたって鉛直方向(V)で延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴、特にスポーツシューズであって、底と、該底に結合された靴上部部分とを有しており、底が収容室を有しており、該収容室に緩衝エレメントが取り外し可能に配置される形式のものに関する。
【0002】
このような形式の靴はドイツ連邦共和国特許出願公開第10231882号明細書により公知である。ここに記載のスポーツシューズは底を有していて、この底には、ばねエレメントを有した緩衝システムが配置されている。ばねエレメントは線状のスリットばねの形式で形成されている。これは湾曲ワッシャもしくは皿ばねとして形成されていても良い。
【0003】
EP0387505B1号に記載の靴、特にスポーツシューズまたはリハビリテーションシューズは、ハニカム体から成る少なくとも1つの挿入部分を有する靴底を有している。底の踵ウェッジまたはその他の底部分、例えば中間底への挿入部分の挿入は側方から、スリットまたは相応の側方の開口へと押し込むことにより行われる。スリットまたは側方の開口は外部に対して、カバープレートまたはカバーストリップによって閉じることができる。即ち底は、挿入部分のための収容室を有している。挿入部分は交換可能に形成することができる。挿入部分自体は、ガスが充填された複数のハニカムセルから成っているので、良好な底のばね特性および緩衝特性が得られる。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第2904540号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2922136号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3029258号明細書、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3430845号明細書により公知のスポーツシューズはその底に同様に収容室が設けられていて、その収容室に緩衝エレメントを配置することができる。この収容室は、靴長手方向軸線に対して横方向に底を貫通して水平方向に延びる孔であって、この孔には種々異なる硬さのプラスチックピンを差し込むことができ、これにより底のばね特性および緩衝特性に影響を与えることができる。
【0005】
同様の形式の靴がドイツ連邦共和国特許出願公開第3924360号明細書、ドイツ連邦共和国実用新案第8808608号明細書、US2000/0217483号明細書、EP0375306A2号明細書、欧州特許公開第0146846A1号明細書、WO03/045179A2号明細書、WO03/026453A2号明細書、JP09140406号明細書により公知である。
【0006】
このような公知の靴、特にスポーツシューズを起点として、本発明の根底をなす課題は、靴、特にスポーツシューズのばね特性および緩衝特性をさらに改良し、靴に最適に所望のばね特性および緩衝特性をもたせることができるように調節可能にすることである。この場合、特に、靴もしくは靴底の回内運動特性もしくは回外運動特性に所望のように影響を与え、個人の要求もしくは希望に適合することができるのが望ましい。
【0007】
この課題を解決するために本発明の構成では、収容室が底を、靴の長手方向軸線に対して横方向で、ほぼまたは完全に貫通しており、取り外し可能に配置される緩衝エレメントは、プレート状に形成された基体から成っており、該基体は、緩衝部分を配置することができる複数の切欠を有しており、切欠は緩衝エレメントにおいて、緩衝エレメントの高さ全体にわたって鉛直方向で延びているようにした。
【0008】
これにより、靴の長手方向軸線に対して横方向に緩衝エレメントを挿入することができる、緩衝エレメントのための収容室が形成される。
【0009】
特に、切欠内に配置するための個々の緩衝部分が、靴もしくは底が所望のばね特性および緩衝特性及び/又は所望の回内運動特性もしくは回外運動特性を有するように選択されている
即ち本発明によれば、緩衝エレメントをプレート状に形成し、この緩衝エレメントに複数の緩衝部分を設け、その材料特性が、靴底のばね特性および緩衝特性に全体として、また靴長手方向軸線の周りのばね剛性に関しても能動的に影響を与えることができるように選択される。靴長手方向軸線の周りのばね剛性に影響を与えることにより、底の回内運動特性もしくは回外運動特性に所望のように影響を与えることができ、個人の要求に合わせることができる。
【0010】
別の構成では、収容室が底の踵領域に配置されている。
【0011】
この場合、切欠が鉛直方向から見て六角形の形状を有していても良い。さらに、切欠と、相応に緩衝部分とが、鉛直方向に対して垂直方向から見て円錐形状を有していても良い。
【0012】
本発明の有利な構成では、中央の緩衝部分を収容するための中央の切欠が緩衝エレメントに配置されていて、中央の切欠の周りに、別の緩衝部分を収容するための複数の、特に6つの別の切欠が配置されており、この別の切欠は、1つの円軌道に沿って中央の切欠の中心点の周りに配置されている。この場合、有利には、別の切欠が、前記円軌道の全周にわたって等距離に配置されている。
【0013】
鉛直方向での基体の高さが、0.3〜2.0cm、特に0.5〜1.0cmである。
【0014】
有利には、基体及び/又は緩衝部分が、プラスチック、特に熱可塑性合成樹脂、有利にはポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタン、ポリオレフィン、エチレン−ビニル−アセテート、ポリ塩化ビニルまたはこれらのプラスチックのうち少なくとも2つの混合物から成っている。この場合、有利には、プラスチック材料は発泡性である。
【0015】
基体及び/又は緩衝部分の材料が、底の材料よりも高い硬度を有している。この場合、基体及び/又は緩衝部分のプラスチックがショア硬さ25A〜45Aを有している。特に、基体のプラスチックが、緩衝部分のプラスチックよりも低い硬さを有している。
【0016】
調節されたばね特性および緩衝特性の管理を改善するために、基体及び/又は緩衝部分の領域の底の材料が半透明または透明である。
【0017】
組み付けられた位置で緩衝エレメントを固定するために、基体を収容室内に配置された位置において固定する保持部材が設けられている。保持部材がU字形に形成されていて、底を下方から把持する。底及び基体が、保持部材と形状接続的に協働するための切欠を有している。
【0018】
底が、中間底および該中間底に結合された外側底から成っていて、緩衝エレメントが中間底に配置されている。
【0019】
本発明による靴は、基体の切欠内に配置されている、選択的に交換するために設けられた、種々異なる硬さを有する複数の緩衝部分から成るシステムを有していて良い。この場合、有利には、緩衝部分の各硬度に所定の色が対応させられており、この色によって緩衝部分の少なくとも外側表面が着色されている。これにより、靴を個人的な要求に合わせるために、所望の緩衝部分の迅速かつ簡単な選択を行うことができる。
【0020】
本発明による靴、特にスポーツシューズの構成により、靴底のばね特性および緩衝特性および底の回内運動特性もしくは回外運動特性を個人の要求もしくは希望に適合させることができる。このような適合は迅速かつ簡単に行うことができるので、靴を最適に所望の特性に合わせることができる。
【0021】
図1にはスポーツシューズ1が示されている。この靴は底2を有していて、この底2は通常のように靴上部部分3に結合されている。この底2は一体的に図示されているが、通常複数の部分部材、例えば中間底と、その中間底の下面に配置された耐摩耗性の外側底から成っている。
【0022】
底2には、靴1のばね特性および緩衝特性を個々人の要求に合わせて調節することができる緩衝エレメント5が設けられている。緩衝エレメント5はこの場合、収容室4内に取り付けられている。即ち挿入されている。収容室4は、靴1の長手方向軸線Lに沿って所定の距離にわたって延びていて、この方向に対して横方向では底2を貫通して延びている。この実施例では、収容室4は底2を完全に貫通していて、これにより左底側面から右底側面に延びる室が形成される。靴1の長手方向軸線Lに沿った収容室4の延在は、足中央領域と踵領域との間に緩衝エレメント5が位置するように選択されている。
【0023】
緩衝エレメント5はプレート状に形成された基体6から成っていて、この基体は複数の切欠7を有している。これらの切欠7は図2に示したように、基体6もしくは緩衝エレメント5の高さH全体にわたって延びている。切欠7にはそれぞれ緩衝部分8が挿入されている。これらの緩衝部分8は、所望の硬さと剛性を有したプラスチック材料から成っている。
【0024】
図1に示したように、中央の切欠7´が基体6に設けられていて、この切欠7´の周りに等距離で1つの円軌道に沿って6つの別の切欠7´´が配置されている。各切欠7,7´,7´´にはそれぞれ緩衝部分8,8´,8´´が設けられている。
【0025】
緩衝部分8,8´,8´´を備えた基体6は挿入方向E(図1参照)で収容室4に挿入される。緩衝部分8,8´,8´´の材料特性の選択により、底2のばね特性および緩衝特性が規定される。
【0026】
この場合、全ての緩衝部分8,8´,8´´が同様でなければならないわけではないことを述べておく。即ち個々の緩衝部分8,8´,8´´、即ち中央の緩衝部分8´と個々の別の緩衝部分8´´とはそれぞれ個別に「モジュール」から選択することができる。これにより、底2のばね特性および緩衝特性を全体として個人的な要求に適合させるだけではなく、底2の回内運動特性および回外運動特性も調節される。例えば、基体6の一方の側方領域に、他方の側方領域におけるよりも硬い緩衝部分8を挿入するならば、その底の側でより僅かな硬さもしくは弾性を有した有利な伸縮特性が得られる。このことは、底2の回内運動特性および回外運動特性に直接作用する。
【0027】
図1と図2を一緒に見るとわかるように、個々の緩衝部分8,8´,8´´は鉛直方向Vで見ると六角形の(hexagonale)基本形を有しているが、高さ方向の延びでは円錐状に拡大していて、切欠7,7´,7´´の対応する形状は相応に形成されている。
【0028】
緩衝エレメント5が底2に挿入された状態で外れないようにするために、保持部材9が設けられている。保持部材9はU字形に形成されていて、底2を下方から把持している。保持部材9は例えば係止ロック(図示せず)で底2に保持されている。
【0029】
底2および緩衝エレメント5の基体6は、保持部材9と形状接続的に協働する切欠10,11を有している。底2に設けられた切欠10は溝状に、底2の側方領域と、地面に面する領域とに延びている。
【0030】
靴1は、種々異なる硬さ及び/又は弾性を有する相当数の緩衝部分8が属するシステムとして提供することができる。個々の緩衝部分8には硬さに応じて種々異なる着色をすることができる。例えば種々異なるグレー濃度で着色がなされて良い。
【0031】
靴を構成するために、靴を履く人によって、システムから所望の硬さを有する緩衝部分8を適当に選択することができる。緩衝部分8は基体6の切欠7に挿入され、このように準備された緩衝エレメント5が収容室4へと挿入されここで位置固定される。これにより靴1のばね特性および緩衝特性ならびに回内運動特性及び回外運動特性は個人的に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】スポーツシューズと取り出された緩衝エレメントとを示した斜視図である。
【図2】図1のA−B線に沿った断面図である。
【図3】挿入された緩衝エレメントと、これに装着された保持エレメントとを備えたスポーツシューズの後方部分を下方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 靴、 2 底、 3 靴上部部分、 4 収容室、 5 緩衝エレメント、 6 基体、 7 切欠、 7´ 中央の切欠、 7´´ 別の切欠、 8 緩衝部分、 8´ 中央の緩衝部分、 8´´ 別の緩衝部分、 9 保持部材、 10 切欠、 11 切欠、 L 長手方向軸線、 H 緩衝エレメントの高さ、 V 鉛直方向、 E 挿入方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴(1)、特にスポーツシューズであって、底(2)と、該底に結合された靴上部部分(3)とを有しており、底(2)が収容室(4)を有しており、該収容室に緩衝エレメント(5)が取り外し可能に配置される形式のものにおいて、
収容室(4)が底(2)を、靴(1)の長手方向軸線(L)に対して横方向でほぼまたは完全に貫通しており、
取り外し可能に配置される緩衝エレメント(5)は、プレート状に形成された基体(6)から成っており、該基体は、緩衝部分(8)を配置することができる複数の切欠(7)を有しており、
切欠(7)は緩衝エレメント(5)において、緩衝エレメント(5)の高さ(H)全体にわたって鉛直方向(V)で延びていることを特徴とする靴。
【請求項2】
切欠(7)内に配置するための個々の緩衝部分(8)が、靴(1)もしくは底(2)が所望のばね特性および緩衝特性及び/又は所望の回内運動特性もしくは回外運動特性を有するように選択されている、請求項1記載の靴。
【請求項3】
収容室(4)が底(2)の踵領域に配置されている、請求項1又は2記載の靴。
【請求項4】
切欠(7)が鉛直方向(V)から見て六角形の形状を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の靴。
【請求項5】
切欠(7)と、相応に緩衝部分(8)とが、鉛直方向(V)に対して垂直方向から見て円錐形状を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の靴。
【請求項6】
中央の緩衝部分(8´)を収容するための中央の切欠(7´)が緩衝エレメント(5)に配置されていて、中央の切欠(7´)の周りに、別の緩衝部分(8´´)を収容するための複数の、特に6つの別の切欠(7´´)が配置されており、この別の切欠(7´´)は、1つの円軌道に沿って中央の切欠(7´)の中心点の周りに配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の靴。
【請求項7】
別の切欠(7´´)が、前記円軌道の全周にわたって等距離に配置されている、請求項6記載の靴。
【請求項8】
鉛直方向(V)での基体(6)の高さ(H)が、0.3〜2.0cm、特に0.5〜1.0cmである、請求項1から7までのいずれか1項記載の靴。
【請求項9】
基体(6)及び/又は緩衝部分(8)が、プラスチック、特に熱可塑性合成樹脂、有利にはポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタン、ポリオレフィン、エチレン−ビニル−アセテート、ポリ塩化ビニルまたはこれらのプラスチックのうち少なくとも2つの混合物から成っている、請求項1から8までのいずれか1項記載の靴。
【請求項10】
基体(6)及び/又は緩衝部分(8)のプラスチック材料が発泡性である、請求項9記載の靴。
【請求項11】
基体(6)及び/又は緩衝部分(8)の材料が、底(2)の材料よりも高い硬度を有している、請求項9又は10記載の靴。
【請求項12】
基体(6)及び/又は緩衝部分(8)のプラスチックがショア硬さ25A〜45Aを有している、請求項11記載の靴。
【請求項13】
基体(6)のプラスチックが、緩衝部分(8)のプラスチックよりも低い硬さを有している、請求項12記載の靴。
【請求項14】
基体(6)及び/又は緩衝部分(8)の領域の底(2)の材料が半透明または透明である、請求項9から13までのいずれか1項記載の靴。
【請求項15】
基体(6)を収容室(4)内に配置された位置において固定する保持部材(9)が設けられている、請求項1から14までのいずれか1項記載の靴。
【請求項16】
保持部材(9)がU字形に形成されていて、底(2)を下方から把持する、請求項15記載の靴。
【請求項17】
底(2)及び基体(6)が、保持部材(9)と形状接続的に協働するための切欠(10,11)を有している、請求項16記載の靴。
【請求項18】
底(2)が、中間底および該中間底に結合された外側底から成っていて、緩衝エレメント(5)が中間底に配置されている、請求項1から17までのいずれか1項記載の靴。
【請求項19】
基体(6)の切欠(7)内に配置されている、選択的に交換するために設けられた、種々異なる硬さを有する複数の緩衝部分(8)から成るシステムを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の靴。
【請求項20】
緩衝部分(8)の各硬度に所定の色が対応させられており、この色によって緩衝部分(8)の少なくとも外側表面が着色されている、請求項19記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−533332(P2007−533332A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517963(P2006−517963)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002586
【国際公開番号】WO2005/060781
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(398049829)プーマ アクチエンゲゼルシャフト ルードルフ ダスレル シュポルト (18)
【氏名又は名称原語表記】Puma Aktiengesellschaft Rudolf Dassler Sport
【住所又は居所原語表記】Wuerzburger Strasse 13, D−91074 Herzogenaurach, BRD
【Fターム(参考)】