説明

【課題】爪先で地面を後方に蹴り出すように歩くことを支援する機能を有する靴を提供する。
【解決手段】アウトソール12、ミッドソール14、中底ボード16およびインソール18が積層され、インソールは中底ボードより靴使用者の足の圧力により変形しやすい靴において、ミッドソールと中底ボードとの積層体20の爪先部に凹部22を形成し、この凹部内に弾性を有する反発体24を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーキングシューズ、ゴルフシューズ、テニスシューズ等の運動用シューズとして好適に使用される靴に関し、さらに詳述すると、運動における足の動きを支援する機能を有する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウォーキングなどの靴を履いて行う運動における足の動きを支援する機能を有する靴が提案されている。例えば、特許文献1には、靴に対するフィッティング機能および歩行支援機能を向上させることが可能な靴として、使用者の足底先端部に対応する位置に、使用者の足底先端部に当接して使用者の足が靴の内部において前方向に移動するのを規制する足底先端部支持体を着脱自在に設けたインソール(中敷き)を装着したものが提案されている(請求項1、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−23290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウォーキングにおいては、足は踵から着地した後、爪先で地面を後方に蹴り出すように歩くことが良いフォームであるとされている。しかし、特許文献1の靴は、靴を履いて行う運動における足の動きを支援する機能として、使用者の足が履物の内部において前方向に移動するのを規制する機能は有するが、爪先で地面を後方に蹴り出すように運動することを支援する機能を有するものではなく、歩行を支援する機能が不十分なものであった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、爪先で地面を後方に蹴り出すように運動することを支援する機能を有し、十分な運動支援機能を有する靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するため、アウトソール、ミッドソール、中底ボードおよびインソールが積層され、前記インソールは前記中底ボードより靴使用者の足の圧力により変形しやすい靴において、前記ミッドソールと前記中底ボードとの積層体の爪先部に凹部が形成され、前記凹部内に弾性を有する反発体が配置されていることを特徴とする靴を提供する。ここで、中底ボードとミッドソールとの積層体の爪先部とは、上記積層体の少なくとも足の指の先がインソールを介して間接的に接触する部分をいう。
【0007】
本発明に係る靴は、ミッドソールと中底ボードとの積層体の爪先部に形成された凹部内に弾性を有する反発体が配置されているので、ウォーキング等の靴を履いて行う運動において、上記反発体の弾性効果、形状効果により、足の爪先で地面を後方に蹴り出す動きを支援することができる。すなわち、本発明に係る靴の反発体は、反発力を有し、かつ、上記積層体の爪先部に形成された凹部内に配置されているので、ウォーキング時等に靴の使用者が上記反発体を爪先で押した場合、爪先で地面を後方に強く蹴り出すことができる。この場合、上記反発体は、インソールよりも靴使用者の足の圧力により変形しにくい中底ボードではなく、中底ボードよりも靴使用者の足の圧力により変形しやすいインソールに覆われているため、ウォーキング時等に靴の使用者が上記反発体をインソールを介して爪先で押した場合、反発体が容易に変形し、前述した作用効果を確実に得ることができる。
【0008】
本発明において、インソールは、中底ボードより硬度が低い樹脂等により形成することが好ましく、これにより前述した作用効果を良好に得ることができる。
【0009】
また、本発明において、反発体は、中底ボードより硬度が低い樹脂等により形成することが好ましく、これにより前述した作用効果を良好に得ることができる。この場合、反発体の硬度は、インソールの硬度より高くてもよく、低くてもよく、インソールの硬度と同じでもよい。
【0010】
本発明において、ミッドソールと中底ボードとの積層体の爪先部に形成する凹部の形状に限定はなく、後述する実施形態に示すような種々の形状とすることができる。
【0011】
本発明に係る靴は、靴を履いて行う運動における足の動きを支援する機能を有するもので、上記運動としては、例えば、ウォーキング、ジョギング、ランニング、ゴルフ、テニス等が挙げられ、本発明に係る靴は、ウォーキングシューズ、ゴルフシューズ、テニスシューズ等に特に好適に使用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る靴は、ウォーキング等の靴を履いて行う運動において、爪先で地面を後方に蹴り出す足の動きを支援することができ、優れた運動支援機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る靴の靴底部を示す平面図である。
【図2】図1の靴底部の図1A−A線に沿った縦断面図である。
【図3】図1の靴底部の図1B−B線に沿った横断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る靴の靴底部を示す平面図である。
【図5】図4の靴底部の図4C−C線に沿った縦断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る靴の靴底部を示す平面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る靴の靴底部を示す横断面である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る靴の靴底部を示す平面図である。
【図9】図8の靴底部の図8D−D線に沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照して詳しく説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る靴の靴底部を示す平面図、図2は同靴底部の図1A−A線に沿った縦断面図、図3は同靴底部の図1B−B線に沿った横断面図である。
【0016】
本例の靴の靴底部(左足用)10は、下から順に、アウトソール12、ミッドソール14、中底ボード16およびインソール(中敷き)18が積層されたものである。アウトソール12は地面に接するパーツであり、ミッドソール14はアウトソール12に積層されたパーツであり、中底ボード16はミッドソール14に積層されたパーツであり、インソール(中敷き)18は中底ボード16に積層されたパーツである。
【0017】
本例の靴底部10において、アウトソール12はミッドソール14より硬度が高く、中底ボード16はミッドソール14およびインソール18より硬度が高い。そして、インソール18は、中底ボード16より靴使用者の足の圧力により変形しやすい。また、本例の靴底部10は、ミッドソール14と中底ボード16との積層体20の爪先部に、縦断面および横断面がいずれも略楕円形の凹部22が形成され、この凹部22内に弾性を有する反発体24が配置されている。なお、図2において26はアッパーを示す。
【0018】
本例において、アウトソール12の材質としては、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等のゴム類や、ポリウレタン、エチレンビニルアセテート(EVA)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
ミッドソール14の材質としては、例えば、EVA、ポリオレフィン発泡体、ポリウレタン発泡体、熱可塑性ポリウレタン、ゴム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。アウトソール12とミッドソール14は、同一の材質でもよい。
【0020】
中底ボード16の材質としては、例えば、ポリウレタンシート、パルプボード、布地、革、人工皮革等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
インソール18の材質としては、例えば、EVA、ポリオレフィン発泡体、ポリウレタン発泡体、熱可塑性ポリウレタン、ゴム、革、人工皮革等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
反発体24の材質としては、弾性、反発性を有するものであればよく、例えば、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリオレフィン発泡体、ポリウレタン発泡体、熱可塑性ポリウレタン、ゴム、板ばね等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。反発体24を樹脂またはゴムで形成する場合、凹部22内に樹脂またはゴムを充填すればよい。
【0023】
本例において、各層を樹脂またはゴムで形成する場合、アウトソールの硬さはJIS−A硬度で50〜90°、特に65〜80°、ミッドソールの硬さはアスカーC硬度で40〜80°、特に50〜70°、インソールの大部分を占める部位の硬さはアスカーC硬度で20〜70°、特に30〜50°、反発体の硬さはアスカーC硬度で20〜60°、特に20〜40°とすることが好ましい。
【0024】
本例において、アウトソールの最も厚い部分の厚さは1.5〜10mm、特に2〜8mm、ミッドソールの厚さは3〜35mm、特に3〜25mm、中底ボードの厚さは0.5〜5mm、特に1〜3mm、インソールの厚さは2〜15mm、特に3〜10mmとすることが適当である。
【0025】
また、26cmの靴を例とすると、凹部の縦方向長さaは20〜100mm、特に40〜70mm、横方向長さbは60〜100mm、特に60〜80mm、最大深さcは3〜10mm、特に3〜6mm、後方側斜面の傾斜角度dは1〜10°、特に1〜5°とすることが好適である。
【0026】
第1実施形態の靴は、ウォーキング等の靴を履いて行う運動において、反発体24の弾性効果、形状効果により、足の爪先で地面を後方に蹴り出す動きを支援することができる。この場合、本例の凹部22は、まず下方に傾斜した後、その先で上方に傾斜しているので、靴使用者が歩行を停止するときに、凹部の上方に傾斜した部分に足の力が加わりやすく、そのため歩行を停止しやすい。
【0027】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態に係る靴の靴底部を示す平面図、図5は同靴底部の図4C−C線に沿った縦断面図である。横断面図は、第1実施形態とほぼ同様であるため省略する。
【0028】
本例の靴底部30は、第1実施形態の靴底部において、凹部32の縦断面を略三角形とし、この凹部32内に反発体34を配置したものである。本例のような縦断面が略三角形の凹部も、本発明における凹部に含まれる。その他の構成については、第2実施形態と第1実施形態とは同じであるため、図4、図5において図1、図2と同一構成の部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0029】
第2実施形態において、凹部32の縦方向長さeは20〜100mm、特に40〜80mm、最大深さfは3〜10mm、特に3〜6mmとすることが好適である。また、各層の材質および厚さや、凹部の横方向長さ、後方側斜面の傾斜角度は、第1実施形態で述べたのと同様である。
【0030】
第2実施形態の靴は、ウォーキング等の靴を履いて行う運動において、反発体34の弾性効果、形状効果により、足の爪先で地面を後方に蹴り出す動きを支援することができる。
【0031】
(第3実施形態)
図6は本発明の第3実施形態に係る靴の靴底部を示す平面図である。縦断面図および横断面図は、第1実施形態とほぼ同様であるため省略する。
【0032】
本例の靴底部40は、第1実施形態の靴底部において、凹部42の外側(小指側)が第1実施形態より後方に位置するように凹部42の平面形状を傾斜させ、この凹部42内に反発体44を配置したものである。その他の構成については、第3実施形態と第1実施形態とは同じであるため、図6において図1と同一構成の部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0033】
第3実施形態において、各層の材質および厚さや、凹部の縦方向長さ、後方側斜面の傾斜角度は、第1実施形態で述べたのと同様である。
【0034】
第3実施形態の靴は、ウォーキング等の靴を履いて行う運動において、反発体44の弾性効果、形状効果により、足の爪先で地面を後方に蹴り出す動きを支援することができる。また、凹部42の平面形状を前記のように傾斜させたので、足指の位置により適した場所に反発体があるため、靴使用者の不要な動きを抑制することができ、靴使用者の運動時における安定性が向上する。
【0035】
(第4実施形態)
図7は本発明の第4実施形態に係る靴の靴底部を示す横断面図である。平面図および縦断面図は、第1実施形態とほぼ同様であるため省略する。
【0036】
本例の靴底部50は、第1実施形態の靴底部において、凹部52の内側部分(親指側部分)の深さを最も深くし、この凹部52に反発体54を配置したものである。その他の構成については、第4実施形態と第1実施形態とは同じであるため、図7において図3と同一構成の部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0037】
第4実施形態において、凹部52の最大深さgは3〜10mm、特に3〜8mmとすることが好適である。また、各層の材質および厚さや、凹部の縦方向長さ、横方向長さ、後方側斜面の傾斜角度は、第1実施形態で述べたのと同様である。
【0038】
第4実施形態の靴は、ウォーキング等の靴を履いて行う運動において、反発体54の弾性効果、形状効果により、足の爪先で地面を後方に蹴り出す動きを支援することができる。また、凹部52の内側部分(親指側部分)の深さを最も深くしたので、最も負荷のかかる親指の位置の反発性と衝撃吸収性を向上させることができ、足の負担軽減を図ることができるとともに、反発補助効果を向上させることができる。
【0039】
(第5実施形態)
図8は本発明の第4実施形態に係る靴の靴底部を示す平面図、図9は同靴底部の図8D−D線に沿った横断面図である。縦断面図は、第1実施形態とほぼ同様であるため省略する。
【0040】
本例の靴底部60は、第1実施形態の靴底部において、ミッドソール14と中底ボード16との積層体20の爪先部に、5本の足指に対応する5つの凹部62を形成し、これらの凹部62内にそれぞれ反発体64を配置したものである。その他の構成については、第5実施形態と第1実施形態とは同じであるため、図8、図9において図1、図3と同一構成の部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。なお、凹部62の好ましい数は2〜10個、特に2〜5個である。
【0041】
第5実施形態において、各凹部92の横方向長さhは5〜35mm、特に8〜30mmとすることが好適である。また、各層の材質および厚さや、凹部の縦方向長さ、最大深さ、後方側斜面の傾斜角度は、第1実施形態で述べたのと同様である。
【0042】
第5実施形態の靴は、ウォーキング等の靴を履いて行う運動において、反発体64の弾性効果、形状効果により、足の爪先で地面を後方に蹴り出す動きを支援することができる。また、足指に対応する複数の凹部62を形成し、各凹部62内にそれぞれ反発体64を配置したので、各足指に対応する反発体が他の指に対応する反発体の影響をあまり受けずに独立して動くので、より適切に運動を支援することが可能である。この場合、前述したように運動時には親指に最も力が加わるので、親指に対応する反発体の反発性だけを大きくしてもよい。また、親指に対応する反発体の反発性を弱くし、5本全ての足指で反発体を均等に使うことができるようにしてもよく、いずれの手法を採用するかは、ユーザー等によって適宜決定することができる。
【0043】
なお、本発明に係る靴は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 靴底部
12 アウトソール
14 ミッドソール
16 中底ボード
18 インソール
20 積層体
22 凹部
24 反発体
26 アッパー
30 靴底部
32 凹部
34 反発体
40 靴底部
42 凹部
44 反発体
50 靴底部
52 凹部
54 反発体
60 靴底部
62 凹部
64 反発体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウトソール、ミッドソール、中底ボードおよびインソールが積層され、前記インソールは前記中底ボードより靴使用者の足の圧力により変形しやすい靴において、前記ミッドソールと前記中底ボードとの積層体の爪先部に凹部が形成され、前記凹部内に弾性を有する反発体が配置されていることを特徴とする靴。
【請求項2】
前記反発体は、前記中底ボードより硬度が低い樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−104044(P2011−104044A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261135(P2009−261135)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】