説明

音声伝達装置

【課題】 本発明の課題は、複数の送信部を用いて広域の可聴エリアを確保でき、可聴エリアにある受信部では鮮明な音声再生がなされる音声伝達装置を提供することにある。
【解決手段】 音響機器Tからの音声信号を赤外線信号に変調して送信する送信装置1と、この送信装置1からの赤外線信号を受信し音声信号に復調して音声再生する受信装置2とからなる音声伝達装置であって、送信装置1は、電源ユニット3と変調ユニット4と赤外線発光ユニット5とを備え、赤外線発光ユニット5を変調ユニット4を中心に複数接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ等の音声を離れた位置で聴取する装置に関して、特に伝達媒体を赤外線として音声信号を伝達する音声伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、本出願人は、登録実用新案第3053680号を提案している。この装置は、音響機器の音声信号を赤外線信号にて送信する送信部と、視聴者の近傍でこの赤外線信号を受信して音声再生する受信部とから構成されており、音響機器の音量を上げなくても機器から離れた位置で鮮明な音声を再生することができ、高齢者や補聴器利用者を中心に認知が高まっている。
【0003】
また、このような赤外線信号による音声伝達装置を公共施設や病院等の待合室に採用したものが、特開平8−307999号で提案されている。この装置は、複数の赤外線発光素子を多面体もしくは球面の周面に配設した発光ユニットを、天井や壁面高所に設置して広域の聴取エリアを得られるようにしている。
【0004】
さて、公共施設や病院等の待合室では、人の往来や障害物の存在によって赤外線信号が遮断されやすい環境にあり、待合室全体を聴取エリアにする場合には、発光ユニットを複数箇所に設置する必要がある。このとき、複数の発光ユニットでそれぞれ別々に音声信号を変調した場合、回路の変換誤差等によって各発光ユニットから送信される赤外線信号にずれが生じ、1つの空間の中に位相のずれた複数の音声信号が混在した状態となって、受信部でビートを起こし明瞭な音声再生ができないという問題がある。
【0005】
また、1つの変調ユニットに複数の発光ユニットを接続すれば、ビートの問題は解決できるが、変調ユニットと発光ユニットを繋ぐケーブルが長くなると、ケーブルの引き回しが面倒になるとともに、高周波の減衰が起こってしまう問題があった。
【特許文献1】登録実用新案第3053680号
【特許文献2】特開平8−307999号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複数の発光ユニットを用いて広域の聴取エリアを確保する際、聴取エリアにある受信部で鮮明な音声再生がなされる音声伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、音響機器からの音声信号を赤外線信号に変調して送信する送信手段と、該送信手段からの赤外線信号を受信し音声信号に復調して音声再生する受信手段とからなる音声伝達装置であって、前記送信手段は、電源ユニットと変調ユニットと赤外線発光ユニットとを備え、前記赤外線発光ユニットを変調ユニットを中心に複数接続したものである。
【0008】
前記変調ユニットは、音声信号と電源信号とを混合する機能を備え、前記赤外線発光ユニットは、音声信号と電源信号を分離する機能を備え、変調ユニットと赤外線発光ユニットとを単芯の同軸ケーブルで接続したものである。
【0009】
前記赤外線発光ユニットは、天井や壁面等に設置され、その設置面以外の断面を略円形に形成した透明カバーと、該カバーの内面と所定の間隔を持たせて備えられる発光素子取付体とからなる発光部を備え、該発光部における前記素子取付体の表面に、赤外線信号を発信する赤外線LED素子を、取付体表面に対して直角になるように取り付けることで、設計・組立が容易になり望ましい。また、赤外線LED素子を、素子取付体の断面長径部側を密に、断面短径部側を粗になるように取り付けることで、赤外線信号の送信域を広くすることができて望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の音声伝達装置によれば、広い空間に複数の送信部を設置する場合に、個々の発光ユニットから送信される赤外線信号の位相ずれが生じることなく、受信部でのビートの発生を防止することができる。また、発光ユニットを変調ユニットを中心にして複数接続したので、ケーブルの引き回しが面倒にならず、高周波の減衰も起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
テレビ等の音響機器からの音声を光(赤外線)を媒体として伝搬する装置であって、公共施設や病院の待合室のような広い空間をカバーできるように、光による送信装置を天井や壁面高所に複数取り付け、どこでも鮮明な音声信号を受信できるようにする。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例1について図面を基に説明する。図1は実施例1の音声伝達装置のブロック図である。
本発明に係る音声伝達装置は、音声信号を含む赤外線信号を送信する送信装置1と、この送信装置1が発信する赤外線信号を受信して音声信号を出力する受信装置2とから構成されている。すなわち、この音声伝達装置は、音響機器に接続した送信装置1において、音声信号を赤外線信号に変換して送信し、その赤外線信号を受信装置2で受信して音声として再生するものであり、ワイヤレスで音声信号の授受が行われる。
【0013】
送信装置1は、電源入切及び電流変換を行う電源ユニット3と、音響機器の音声信号を変調する変調ユニット4と、変調した音声信号を赤外線発光する赤外線発光ユニット5を備えている。
【0014】
電源ユニット3は、商用交流電源VをDC電源に変換するAC−DC変換部9と、音響機器T(例えば、テレビ)からの音声が入切するのに合わせて電源を入切する切替部10を備えている。変調ユニット4は、音響機器Tからの音声信号に2.3MHzの音声搬送波を加えてFM変調する発信・変調部11と、FM変調された音声信号を増幅する増幅部12と、RF信号とDC電源を混合する混合部13と、複数(ここでは4個)の出力端子14-1〜14-4を備えている。赤外線発光ユニット5は、複数の赤外線LEDを配列した発光部15と、変調ユニット4からの単芯同軸ケーブルを介して送られる信号をRF信号とDC電源とに分離する分離部16と、RF信号をLED駆動信号に増幅する増幅部17と、発光部15を駆動するLED駆動部18を備えている。
【0015】
受信装置2は、送信装置1の発光部15からの赤外線信号を受信する赤外線受光部19と、受光部19で受信した赤外線信号を適宜の音声信号に復元する音声復元部20と、音声復元部20で復元した音声信号を再生するスピーカ21とを備えている。
【0016】
赤外線受光部19は、受信装置2の筐体表面に間隔を持たせて複数個配設される受光素子からなり、この受光素子が配設された面は半透過性のカバーにより覆われている。音声復元部20は、受光部19で受信した赤外線信号を音声信号に復調する復調部22と、復調された音声信号を増幅する増幅部23と、聞き取りやすい高音域を強調する高域信号増幅部24を備えている。スピーカ21は、受信装置2の筐体表面に設けられ、通常は増幅部23からの音声信号を再生し、筐体上に備えた音域強調スイッチ25が入力されると高域信号増幅部24に切り替えられるようになっている。
【0017】
図2は送信装置1の赤外線発光ユニット5における発光部15の構成を示す説明図である。
発光部15は、透明略半球状に形成されたカバー15aと、カバー15aの内側でこのカバーと同心となる半球状に形成された素子取付体15bと、素子取付体15bの表面に複数(ここでは16個)埋設される赤外線LED素子15c...とから構成されている。赤外線LED素子15cは、素子取付体15bに対して垂直になるように、取付体15bの断面長径側に12個、短径側に4個それぞれ等間隔に取り付けられている。この構成により、赤外線LED素子15cからの赤外線信号は広範囲に渡って指向し広域な赤外線信号の受信範囲が確保される。また、各素子の取付位置は、取付体15の曲率により決定されるので、設計・組立が容易となる。
【0018】
図3は受信装置2の外観を示す説明図である。
この受信装置2は、本出願人が登録実用新案第3053680号で提案したものと同じである。すなわち、筐体の一部に円形の収納部26を形成し、収納部26の開口縁に複数の受光素子を内蔵して半透明のカバー27を取り付けている。表面にはスピーカ19と、電源スイッチ28と、音量調整つまみ29と、音域強調スイッチ25とを備えている。
【0019】
このように構成する実施例1の音声伝達装置の使用例を、図4・5を用いて説明する。
まず、送信装置1の電源ユニット3に電源及びテレビの音声端子を接続し、この電源ユニット3と変調ユニット4とをケーブルC1で接続する。次に、変調ユニット4を、聴取エリアAの天部中心に設置して、この変調ユニット4に赤外線発光ユニット5を単芯同軸ケーブルC2を介して接続する。ここで、赤外線発光ユニット5は、最大4個まで接続できるようになっているので、各赤外線ユニット5-1〜5-4を変調ユニット4から放射状に広げた状態にして天井面の各所に取り付ける。こうして、各赤外線発光ユニット5-1〜5-4を中心にした発信エリアS-1〜S-4が形成され、待合室全体が聴取エリアAになる。
【0020】
こうして、形成される聴取エリアAに、受信装置2を配置すると、赤外線発光ユニット5からの赤外線信号を受信して音声信号として再生させることができる。複数の赤外線発光ユニット5-1〜5-4から送信される赤外線信号は、それぞれ重複した状態で待合室空間に混在することになるが、1つの変調ユニット4によって変調された音声信号を、赤外線発光ユニット5から同時に発信するようにしたので、各発光ユニット5からの赤外線信号に位相差が生じなくなり、受信装置2でビートが発生するという問題が無く、鮮明な音声を再生することができる。
【0021】
また、変調ユニット4を聴取エリアAの中心に設置し、各赤外線発光ユニット5-1〜5-4までをほぼ同一の長さで比較的短い単芯同軸ケーブルC2で接続したので、高周波の減衰が小さくて済み、設置時の引き回しも簡単にできる。
【0022】
本発明は以上のように構成されるものであるが、上記実施例1の構成に限定されず、請求項を逸脱しない範囲で様々な実施態様が考えられる。むろん、発光ユニットの数や、発光素子の数は限定されるものではなく、図2に示した発光ユニットの発光部の構成、図3に示した受光装置の構成も限定されない。例えば、発光部は、半球状ではなく1/4球にして壁などの垂直面に取り付けるようにしてもよい。また、受信装置は個人的に所有した端末(携帯電話や補聴器)としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
公共施設・病院等の待合室に設置される大型画面のテレビの音声を耳元近くで再生するワイヤレスの音声伝達装置に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1のブロック図である。
【図2】送信装置1の発光部15の構成を示す説明図である。
【図3】受信装置2の外観を示す説明図である。
【図4】実施例1の設置例を示す説明図である。
【図5】実施例1の使用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 送信装置
2 受信装置
3 電源ユニット
4 変調ユニット
5 赤外線発光ユニット
19 赤外線受光部
20 音声復元部
21 スピーカ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響機器からの音声信号を赤外線信号に変調して送信する送信手段と、該送信手段からの赤外線信号を受信し音声信号に復調して音声再生する受信手段とからなる音声伝達装置であって、
前記送信手段は、音声信号を赤外線信号に変調する変調ユニットと、赤外線信号を送信する赤外線発光ユニットとを備え、赤外線発光ユニットを前記変調ユニットに対して複数接続するとともに、各赤外線発光ユニットが変調ユニットを中心に配置したことを特徴とする音声伝達装置。
【請求項2】
前記変調ユニットは、音声信号と電源信号とを混合する機能を備え、前記赤外線発光ユニットは、音声信号と電源信号を分離する機能を備え、変調ユニットと赤外線発光ユニットとを単芯の同軸ケーブルで接続したことを特徴とする上記請求項1記載の音声伝達装置。
【請求項3】
前記赤外線発光ユニットは、天井や壁面等に設置され、その設置面以外の断面を略円形に形成した透明カバーと、該カバーの内面と所定の間隔を持たせて備えられる発光素子取付体とからなる発光部とを備え、該発光部における前記素子取付体の表面に、赤外線信号を発信する赤外線LED素子を、取付体表面に対して直角になるように取り付けたことを特徴とする上記請求項1又は2記載の音声伝達装置。
【請求項4】
前記赤外線LED素子を、前記素子取付体の断面長径部側を密に、断面短径部側を粗になるように取り付けたことを特徴とする上記請求項3記載の音声伝達装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−229796(P2006−229796A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43351(P2005−43351)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000103149)エムケー電子株式会社 (6)
【Fターム(参考)】