説明

音声伝達装置

【課題】 本発明の課題は、受信機をコンパクトな形態として使用者に装着可能にするとともに、受信機を装着した使用者にとって聞き取りやすい音声出力を可能とした音声伝達装置を提供することにある。
【解決手段】 音響機器Tからの音声信号を赤外線信号に変調して送信する送信機1と、送信機1からの赤外線信号を受信し音声信号に復調して音声再生する受信機2とからなる音声伝達装置であって、受信機2は、送信機1からの赤外線信号を受信する受光部6と、使用者の胸元近傍に装着するための装着部16と、使用者に向けて音声出力するスピーカ10とを備え、受信機2を装着部16により装着した姿勢で、受光部6を前面に配置するとともに、スピーカ10を上面に、且つ使用者側に傾斜させて配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビの音声を離れた位置で聴取する装置に関して、特に赤外線や電波により音声信号を伝達する音声伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、特許文献1が知られている。この装置は、テレビの音声信号を赤外線信号にて送信する送信部と、使用者の近傍でこの赤外線信号を受信して音声再生する受信部とから構成されており、テレビから離れた位置で鮮明な音声を再生することができ、高齢者や難聴者を中心に利用されている。
【0003】
この装置は、テレビの音声出力端子に接続し、テレビ本体からの音声出力を有効にしたまま、受信機を使用者がいる卓上に載置するか、或いは使用者自身が受信機を抱えた状態で使用されている。こうした使用形態の場合、健聴者と難聴者が共存する空間で、テレビからの音声出力と受信機からの音声出力が混在し、健聴者にとっては耳障りな環境となる。また、受信機からの音声を聞き取る使用者にとっても、場所を動いたり、体勢を変えたりして受信機から少しでも離れると、音が聞き取りにくくなるという問題があった。
【特許文献1】登録実用新案第3053680号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、受信機をコンパクトな形態として使用者に装着可能にするとともに、受信機を装着した使用者にとって聞き取りやすい音声出力を可能とした音声伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するために、音響機器からの音声信号を変調して送信する送信機と、該送信機からの信号を受信し音声信号に復調して音声再生する受信機とからなる音声伝達装置であって、前記受信機は、送信機からの信号を受信する受信部と、使用者の胸元近傍に装着するための装着部と、使用者に向けて音声出力するスピーカとを備え、前記装着部により受信機を装着した姿勢で、前記スピーカを上面に、且つ使用者側に傾斜させて配置したものである。
【0006】
受信機の装着部は、本体ケーシング背面に設けられた弾性クリップ体、もしくは本体ケーシングのスピーカを挟んで取り付けられるストラップである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の音声伝達装置によれば、受信機を小型にして使用者の胸元に取り付けられるようにしたので、使用者がテレビを視聴する場所や体勢に自由度ができ、より汎用性の高い装置を提供することができる。また、受信機におけるスピーカの向きを、受信機を取り付けた姿勢から垂直上向き方向に対して使用者側に傾斜させたので、受信機を取り付けるだけで使用者にとって最も聞き取りやすい状態で音声が出力され、周囲の人への影響を抑えながら鮮明な音声を聴取することができる。
【実施例1】
【0008】
以下、本発明の実施例1について図面を基に説明する。図1は実施例1の音声伝達装置をテレビに取り付けて使用する状態を示す説明図である
本発明に係る音声伝達装置は、音声信号を赤外線信号で送信する送信機1と、この送信機1が発信する赤外線信号を受信して音声信号を出力する受信機2とから構成され、送信機1をテレビTのイヤホン端子又はライン端子に接続し、取り込んだ音声信号を赤外線信号に変換して送信し、受信機2でその赤外線信号を受信して音声として再生するものである。
【0009】
図2は同装置のブロック図である。
送信機1は、電源入切及び電流変換を行う電源部3と、テレビの音声信号を変調する変調部4と、変調した音声信号を赤外線発光する赤外線発光部5を備えている。電源部3は、商用交流電源VをDC電源に変換する機能と、テレビTからの音声が入切するのに合わせて電源を入切する機能を備えている。
【0010】
受信機2は、送信機1の発光部5からの赤外線信号を受信する赤外線受光部6と、受光部6で受信した赤外線信号を音声信号に復調する復調部7と、復調された音声信号を増幅する増幅部8と、復調された音声信号の高音域を強調する高音域増幅部9と、増幅した音声信号を再生するスピーカ10とを備えている。増幅部8は、通常の音域周波数帯(300〜4KHz)のレベルを一様に増幅し、高域信号増幅部9は、主に高齢者や難聴者が聞き取りにくいとされる高域周波数帯(2〜4KHz)を他レベルに比べて15dB程度増幅するものであり、音域強調スイッチ11により切り替えられる。
【0011】
図3は受信機2の外観を示す説明図である。
受信機2のケーシング12は、側面視縦長で上部にいくにつれて順次前傾する形状をなし、上面にスピーカ10、前面に受光部6・音域強調スイッチ11・電源スイッチ13、一側面に音量調整つまみ14と出力端子15、背面に使用者の胸ポケット等に取り付けるためのクリップ16、底面に入力端子17をそれぞれ備えている。
【0012】
受光部6は、複数の受光素子からなり、この受光素子が配設された面は半透過性のカバーにより覆われており、送信機1からの赤外線信号を受光しやすくしている。スピーカ10は、水平に対して背面側が低くなるように傾斜させたケーシング12上面に取り付けられており、受信機2を装着した使用者が音声出力を受けやすいようになっている。クリップ16は、受信機2の装着状態に関係なく、スピーカ10が使用者の耳に指向するよう、本体ケーシング12に対して回転自在に設けられている。これにより、音声の散乱が軽減し、使用者に対してより鮮明な音声信号を提供することができる。尚、スピーカ10の上面には多孔ドーム状をなすカバー18が着脱自在に取り付けられ、掃除や交換が可能になっている。
【0013】
実施例1は以上のように構成されるものであり、送信機1をテレビTの音声出力端子及び電源に接続して、邪魔にならない場所(例えばテレビ上面)に設置し、受信機2を使用者の胸元に取り付けた状態で使用される。従来の装置に比べ、受信機2を小型にして胸元に取り付けられるようにしたことで、使用者がテレビを視聴する場所や体勢に自由度が増し、より汎用性の高い装置となる。また、受信機におけるスピーカの向きを、水平に対して使用者側に傾斜させたことで、受信機を取り付けるだけで使用者にとって最も聞き取りやすい状態で音声が出力され、周囲の人への影響を抑えながら鮮明な音声を聴取することができる。
【0014】
尚、卓上スタンドを付属して、従来装置のように卓上に設置して複数の使用者で音声を聴取することも可能である。また、入力端子17に集音マイクを接続して、周囲の会話を取り込んで聞き取りやすくしたり、外部機器(ステレオやラジオ等)を接続して、音楽や番組を楽しんだりするといった使い方も可能である。
【実施例2】
【0015】
続いて、実施例2の構成について説明する。図4は実施例2の受信機の外観を示しており、内部構造やその他周辺機器は実施例1と同じである。
この受信機2のケーシング20は、上面に首掛けストラップ21が着脱される構成になっている。すなわち、ケーシング20上面のスピーカ10を挟んだ左右に雌型コネクタ22,22を備え、両端に雄型コネクタ23,23を備えたストラップ21を接続して使用される。使用者は、このストラップ21によって受信機2を首からぶら下げ、スピーカ10からの音声出力を聴取するのである。
【0016】
また、高度難聴者に対して、更に耳元で音声を出力できるように、ストラップ21に小型スピーカ24,24を取り付け可能にしている。この場合、小型スピーカ24,24のケーブル25をイヤホン端子15に接続した状態で、クリップ26,26等の取付手段によりストラップ21の希望位置に取り付けるようにする。尚、ストラップ21内の適宜位置に小型スピーカを内蔵しても良い。この場合、ケーシングのスピーカから出力するのか、ストラップのスピーカから出力するのかを選択するスイッチを設け、使用者や使用状況に応じて切り替えるようにする。
【0017】
実施例2は以上のように構成されるものであり、ストラップによって受信機を首からぶら下げることができる。この場合、場所の移動や体勢の切り替えの度に受信機を近くに移動させる煩わしさが解消され、常に耳元付近でテレビ音声を聴取することが可能になる。また、ストラップに小型スピーカを取り付けるようにすれば、高度な難聴者であっても十分に音声を聞き取ることができ、利用範囲を広めることができる。
【0018】
尚、これら実施例1及び2は、音声信号を赤外線信号に変調して送受信するものについて説明したが、電波信号にFM変調して送受信するものでも良い。また、テレビのイヤホン端子又はライン端子に接続するのではなく、スピーカ面にマイクを貼付して音声信号をピックアップするようにしても良く、送受信の形態や音声信号の抽出方法には特に限定がない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の使用例を示す説明図である。
【図2】実施例1のブロック図である。
【図3】実施例1の受信機2を示す説明図である。
【図4】実施例2の受信機2を示す説明図である。
【図5】実施例2の受信機2の応用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 送信機
2 受信機
5 発光部
6 受光部
10 スピーカ
16 クリップ
21 ストラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響機器からの音声信号を変調して送信する送信機と、該送信機からの信号を受信し音声信号に復調して音声再生する受信機とからなる音声伝達装置であって、
前記受信機は、送信機からの信号を受信する受信部と、使用者の胸元近傍に装着するための装着部と、使用者に向けて音声出力するスピーカとを備え、
前記装着部により受信機を装着した姿勢で、前記スピーカを上面に、且つ使用者側に傾斜させて配置したことを特徴とする音声伝達装置。
【請求項2】
前記装着部は、受信機の本体ケーシング背面に設けられ、使用者の胸元に受信機を挟着するクリップ体であることを特徴とする上記請求項1記載の音声伝達装置。
【請求項3】
前記装着部は、受信機の本体ケーシングにスピーカを挟んで取り付けられ、使用者の首に掛けて受信機を装着するストラップであることを特徴とする上記請求項1記載の音声伝達装置。
【請求項4】
前記スピーカよりも使用者の耳元に接近した位置で音声出力する第2スピーカを備えたことを特徴とする上記請求項1記載の音声伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−118409(P2009−118409A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292126(P2007−292126)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000103149)エムケー電子株式会社 (6)
【Fターム(参考)】