説明

音声処理装置及びそのプログラム

【課題】 左上側音声データ、右上側音声データに対応するスピーカー出力端子が設けられていない場合にも、これらの音声データを再生すること。
【解決手段】 マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていると判断された場合、左音声データ及び右音声データをディスプレイ装置に送信し、ディスプレイ左スピーカーから左音声データを再生させ、ディスプレイ右スピーカーから右音声データを再生させると共に、天井に取り付けられた左スピーカーから左上側音声データを再生させ、天井に取り付けられた右スピーカーから右上側音声データを再生させる。一方、マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていないと判断された場合、左スピーカーから左音声データを再生させ、右スピーカーから右音声データを再生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左上側音声データ、及び、右上側音声データを含むマルチチャンネル音声データを再生する音声処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HDMI規格に準拠したソース機器であるDVDプレーヤと、リピーター機器であるAVアンプと、シンク機器であるディスプレイ装置とを備える音声再生システムが利用されており、ソース機器から出力されるHDMIデータに映像データ及び音声データを含めることにより、1本のHDMIケーブルによって映像データ及び音声データの両方をリピーター機器又はシンク機器に送信することができる。AVアンプは、DVDプレーヤから受信したHDMIデータを元の映像データ及び音声データに変換し、音声データを増幅してスピーカーに出力すると共に、映像データを再度HDMIデータに変換し、ディスプレイ装置に送信する。ディスプレイ装置は、受信したHDMIデータを元の映像データに変換して表示する。
【0003】
DVDプレーヤからAVアンプに送信されるHDMIデータに含まれている音声データは、マルチチャンネル音声データがエンコードされたものである。例えば、マルチチャンネル音声データは、図12に示すように、左音声データL、右音声データR、中央音声データC、低域音声データSW、サラウンド左音声データLS、サラウンド右音声データRS、サラウンド後方左音声データLSB、サラウンド後方右音声データRSBを含む7.1chのマルチチャンネル音声データが採用されている。また、最近では、Dolby True HD、Dolby Digital
Plus、DTS-HD等のHD(High Definition)関連の音声フォーマットが登場してきており、これらのフォーマットにおいては、例えば、左上側音声データLh、右上側音声データRhがさらに追加されている。
【0004】
しかしながら、コストの問題を考慮し、AVアンプには左上側音声データLh、右上側音声データRh等に対応する増幅処理部やスピーカー出力端子が設けられていないことが多い。あるいは、これらの音声データに対応する増幅処理部及びスピーカー出力端子がAVアンプに設けられている場合であっても、ユーザがこれらの音声データに対応するスピーカーをAVアンプに接続しないことが多い。その結果、DVDディスクにこれらの音声データが含まれている場合であっても、これらの音声データを再生し、スピーカーから音声を再生することができない。
【0005】
下記特許文献1には、以下の技術を記載する。AVアンプにおいて、HDMI受信部は、DVDプレーヤから受信したHDMIデータから、元の映像データと元のマルチチャンネル音声データとを生成し、映像データをHDMI送信部に供給し、音声データを音声処理部に供給する。音声処理部は、マルチチャンネル音声データをデコードし、中央音声データのみをHDMI送信部に供給し、他のチャンネルの音声データをD/A変換し、増幅処理し、スピーカーに出力する。HDMI送信部は、供給された映像データと中央音声データとからHDMIデータを生成し、ディスプレイ装置に送信する。ディスプレイ装置は、受信したHDMIデータから元の映像データと中央音声データとを生成し、映像を表示すると共に、中央音声データを内蔵するスピーカーから再生する。
【0006】
しかし、特許文献1には、左上側音声データLh、右上側音声データRhについては、何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−288247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、左上側音声データLh、右上側音声データRh等に対応する増幅処理部やスピーカー出力端子が設けられていない場合、あるいは、これらの音声データに対応するスピーカーが接続されていない場合にも、これらの音声データをスピーカーから再生することができる音声処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい実施形態による音声処理装置は、ディスプレイ左スピーカー及びディスプレイ右スピーカーを備えるディスプレイ装置と、前方左側であって前記ディスプレイ左スピーカーよりも上方に配置される左スピーカー及び前方右側であって前記ディスプレイ右スピーカーよりも上方に配置される右スピーカーとが接続可能な音声処理装置であって、左音声データ及び右音声データを少なくとも含むマルチチャンネル音声データに、左上側音声データ及び右上側音声データが含まれているかを判断するチャンネル判断手段と、マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていると判断された場合、左音声データ及び右音声データを前記ディスプレイ装置に送信し、前記ディスプレイ左スピーカーから左音声データを再生させ、前記ディスプレイ右スピーカーから右音声データを再生させると共に、前記左スピーカーから左上側音声データを再生させ、前記右スピーカーから右上側音声データを再生させる再生制御手段とを備え、マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていないと判断された場合、前記再生制御手段が、前記左スピーカーから左音声データを再生させ、前記右スピーカーから右音声データを再生させる。
【0010】
左上側音声データ、右上側音声データに対応するスピーカー出力端子が音声処理装置に設けられていない場合、もしくは、これらの音声データに対応するスピーカー出力端子が設けられているがスピーカーが接続されていない場合であっても、ディスプレイ左スピーカー、ディスプレイ右スピーカー、左スピーカー及び右スピーカーを使ってこれらの音声データを再生することができる。しかも、左上側音声データ及び右上側音声データが含まれているか否かによって、左音声データ及び右音声データを、ディスプレイ左スピーカー及びディスプレイ右スピーカーから再生させるか、又は、左スピーカー及び右スピーカーから再生させるかを変更しているので、適切な位置からこれらの音声データを再生することができる。一般的には、ディスプレイ左スピーカー及びディスプレイ右スピーカーは、左スピーカー及び右スピーカーよりも音質が劣るので、左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていない場合には、左音声データ及び右音声データを左スピーカー及び右スピーカーから再生させることにより、音質を向上することができる。
【0011】
好ましい実施形態においては、前記ディスプレイ装置が前記音声処理装置に接続されているか否かを判断するディスプレイ接続判断手段をさらに備え、前記ディスプレイ装置が前記音声処理装置に接続されていないと判断された場合、マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれているか否かに関係なく、前記左スピーカーから左音声データを再生させ、前記右スピーカーから右音声データを再生させる。
【0012】
ディスプレイ装置が接続されていない場合には、ディスプレイ左スピーカー及びディスプレイ右スピーカーから、音声データを再生することができない。従って、マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれている場合であっても、左音声データ及び右音声データを左スピーカー及び右スピーカーから再生させることにより、一般的にメインの音声データである左音声データ及び右音声データが再生されないという不具合を防止できる。
【0013】
好ましい実施形態においては、前記ディスプレイ装置が、ボリューム設定コマンドを受信したとき、前記ディスプレイ左スピーカー及び前記ディスプレイ右スピーカーから再生される音声のボリューム値を、ボリューム設定コマンドに含まれているボリューム値に設定するものであり、マルチチャンネル音声データに、左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていると判断された場合、前記音声処理装置に設定されているボリューム値を含むボリューム設定コマンドを前記ディスプレイ装置に送信するボリューム制御手段をさらに備える。
【0014】
この場合、ディスプレイ左スピーカー及びディスプレイ右スピーカーから再生される音声のボリューム値を、左スピーカー及び右スピーカーから再生される音声のボリューム値に一致させることができる。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態による音声処理装置は、ディスプレイ左スピーカー及びディスプレイ右スピーカーを備えるディスプレイ装置と、前方左側であって前記ディスプレイ左スピーカーよりも上方に配置される左スピーカー及び前方右側であって前記ディスプレイ右スピーカーよりも上方に配置される右スピーカーとが接続可能な音声処理装置であって、左音声データ及び右音声データを少なくとも含むマルチチャンネル音声データにおける左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されているか否かを判断する設定判断手段と、
左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成する生成手段と、左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されていると判断された場合、左音声データ及び右音声データを前記ディスプレイ装置に送信し、前記ディスプレイ左スピーカーから左音声データを再生させ、前記ディスプレイ右スピーカーから右音声データを再生させると共に、前記左スピーカーから左上側音声データを再生させ、前記右スピーカーから右上側音声データを再生させる再生制御手段とを備え、
左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されていないと判断された場合、前記再生制御手段が、前記左スピーカーから左音声データを再生させ、前記右スピーカーから右音声データを再生させる。
【0016】
本発明のさらに別の好ましい実施形態による音声処理装置は、前方左側であって第2左スピーカーよりも上方に配置される左スピーカー、前方右側であって第2右スピーカーよりも上方に配置される右スピーカー、前方左側に配置される第2左スピーカー、及び、前方右側に配置される第2右スピーカーが接続可能な音声処理装置であって、左音声データ及び右音声データを少なくとも含むマルチチャンネル音声データに、左上側音声データ及び右上側音声データが含まれているかを判断するチャンネル判断手段と、マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていると判断された場合、前記左スピーカーから左上側音声データを再生させ、前記右スピーカーから右上側音声データを再生させると共に、前記第2左スピーカーから左音声データを再生させ、前記第2右スピーカーから右音声データを再生させ、マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていないと判断された場合、前記左スピーカーから左音声データを再生させ、前記右スピーカーから右音声データを再生させる再生制御手段とを備える。
【0017】
本発明のさらに別の好ましい実施形態による音声処理装置は、前方左側であって第2左スピーカーよりも上方に配置される左スピーカー、前方右側であって第2右スピーカーよりも上方に配置される右スピーカー、前方左側に配置される第2左スピーカー、及び、前方右側に配置される第2右スピーカーが接続可能な音声処理装置であって、左音声データ及び右音声データを少なくとも含むマルチチャンネル音声データにおける左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されているか否かを判断する設定判断手段と、左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成する生成手段と、左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されていると判断された場合、前記左スピーカーから左上側音声データを再生させ、前記右スピーカーから右上側音声データを再生させると共に、前記第2左スピーカーから左音声データを再生させ、前記第2右スピーカーから右音声データを再生させ、左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されていないと判断された場合、前記左スピーカーから左音声データを再生させ、前記右スピーカーから右音声データを再生させる再生制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0018】
左上側音声データ、右上側音声データに対応するスピーカー出力端子が音声処理装置に設けられていない場合、もしくは、これらの音声データに対応するスピーカー出力端子が設けられているがスピーカーが接続されていない場合であっても、ディスプレイ左スピーカー、ディスプレイ右スピーカー、左スピーカー及び右スピーカーを使ってこれらの音声データを再生することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態によるディスク再生装置(ソース機器、DVDプレーヤ)、音声処理装置(リピータ機器、AVアンプ)およびディスプレイ装置(シンク機器、テレビジョン受像機)を備える音声再生システムついて、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0020】
図1Aは、本実施形態における、AVアンプ20、ディスプレイ装置30、及び、各スピーカーの配置の一例を説明する図である(DVDプレーヤ10は省略している)。ディスプレイ装置30には、表示部32と、ディスプレイ左スピーカーSLDと、ディスプレイ右スピーカーSRDとが設けられている。AVアンプ20には、HDMIケーブルを介してディスプレイ装置30が接続され、左スピーカーSL、右スピーカーSR、中央スピーカーSC、低域スピーカーSSW、サラウンド左スピーカーSLS、サラウンド右スピーカーSRS、サラウンド後方左スピーカーSLSB、サラウンド後方右スピーカーSRSBが接続されている。
【0021】
本例においては、AVアンプ20は、後述する左上側音声データLh、右上側音声データRhに対応する増幅処理部及びスピーカー出力端子を備えておらず、従って、図1Aでは、これらの音声データに対応するスピーカーが接続及び配置されていない。
【0022】
図1Bは、部屋における一部のスピーカーの配置を示す図である。本例においては、少なくとも、左スピーカーSL、及び、右スピーカーSRは、リスナーの前方左側において、天井に取り付けられている(つまり、天井に埋め込まれ、又は、天井からつり下げられている)。言い換えると、左スピーカーSLは、前方左側であって、ディスプレイ左スピーカーSLDよりも上方に配置され、右スピーカーSRは、前方右側であって、ディスプレイ右スピーカーSRDよりも上方に配置されている。同様に、中央スピーカーSC、サラウンド左スピーカーSLS、及び、サラウンド右スピーカーSRSも、天井に取り付けられている。
【0023】
図2は、DVDプレーヤ10およびAVアンプ20の構成を、図3は、AVアンプ20(図2と同一)およびディスプレイ装置30の構成をそれぞれ示すブロック図である。DVDプレーヤ10、AVアンプ20およびディスプレイ装置30は、例えばHDMI規格に準拠しており、HDMIケーブルを介して相互に接続されている。
【0024】
[DVDプレーヤ10の構成]
DVDプレーヤ10は、再生部11と、解像度変換部12と、HDMI送信部13と、システム制御部14と、操作表示部15と、メモリ16と、コネクタ部17とを有している。
【0025】
再生部11は、DVDディスク(以下、単にディスクという。)に記録されている映像データをディスクから読み出して、解像度変換部12に供給する。また、再生部11は、ディスクに記録されているエンコードされたマルチチャンネル音声データをディスクから読み出して、HDMI送信部13に供給する。再生部11は、図示しない光ピックアップ、サーボ回路、MPEGデコーダ、音声デコーダ等を含む。
【0026】
解像度変換部12は、再生部11から供給された映像データの解像度を判別する。また、解像度変換部12は、判別した映像データの解像度を、システム制御部14からのコマンドにより、ユーザによって設定された解像度に変換する。解像度変換部12によって解像度が変換された映像データは、HDMI送信部13に供給される。
【0027】
HDMI送信部13は、解像度変換部12から供給された映像データ、および、再生部11から供給された音声データを、システム制御部14からのコマンドにより、HDMI規格のデータ(以下、HDMIデータ)に変換する。HDMI送信部13は、HDMIデータをコネクタ部17を介してAVアンプ20に送信する。
【0028】
HDMI送信部13は、HDMIデータを送受信するTMDSライン(通常は複数存在するが簡単のため1本のラインのみを記載している)、および、接続の有無を判断するためのホットプラグを介して、AVアンプ20のHDMI受信部21に接続される。また、HDMI送信部13は、認証情報やEDIDを読み出すためのDDCラインを介してAVアンプ20のHDMI受信部21、PROM25に接続されている。
【0029】
システム制御部14は、内蔵又は接続されたメモリに格納されているDVDプレーヤの動作プログラムに基づいて、再生部11、解像度変換部12、HDMI送信部13、操作表示部15、メモリ16等を制御するものであり、例えば、マイクロコンピュータやCPU等である。システム制御部14は、操作表示部15からの操作入力または各部からの制御信号およびデータに基づいて各種処理を実行する。
【0030】
システム制御部14は、CECラインを介してAVアンプ20のシステム制御部23に接続され、システム制御部23とコマンドおよび/またはデータを送受信する。
【0031】
[AVアンプの構成]
次に、図2又は図3を参照し、AVアンプ20の構成を説明する。AVアンプ20は、HDMI受信部21と、HDMI送信部22と、システム制御部23と、操作表示部24と、メモリ(EDID PROM、以下、PROMとする)25と、音声処理部26と、コネクタ部27、28とを有している。
【0032】
HDMI受信部21は、DVDプレーヤ10から送信されたHDMIデータを受信して、受信したHDMIデータから元の映像データ(HDMI変換前の映像データ)を生成して、HDMI送信部22に供給する。また、HDMI受信部21は、受信したHDMIデータから元のマルチチャンネル音声データを生成して、音声処理部26に供給する。
【0033】
音声処理部26は、HDMI受信部21から供給されたマルチチャンネル音声データをデコードし、音響処理、D/A変換処理、ボリューム調整処理、増幅処理等の各処理を実行し、外部に接続されたスピーカー60(図1A、図1Bの各スピーカーに対応)に各チャンネルの音声信号を供給する。また、必要に応じて、音声処理部26は、あるチャンネルの音声データをHDMI送信部22に供給する。
【0034】
ここで、音声処理部26に供給されるマルチチャンネル音声データについて説明する。Dolby True HD、Dolby Digital
Plus、DTS-HD等のHD(High Definition)関連の音声フォーマットにおいては、図12に示すように、例えば、左音声データL、右音声データR、中央音声データC、低域音声データSW、サラウンド左音声データLS、サラウンド右音声データRS、サラウンド後方左音声データLSB、サラウンド後方右音声データRSB、左上側音声データLh、右上側音声データRh等があり、音声処理部26に供給されるマルチチャンネル音声データには、これらの中から選択された8チャンネル(一般的には、低域音声データSWを0.1chと表現し、7.1チャンネルと呼ばれている)の音声データが含まれている。
【0035】
なお、左上側音声データLhは、左音声データLの上方の位置から再生される音声データである。右上側音声データRhは、右音声データRの上方の位置から再生される音声データである。上記の通り、これらの音声データに対応するスピーカーは、図1A、図1Bにおいては設けられていない。
【0036】
例えば、音声処理部26に供給されるマルチチャンネル音声データには、以下の(1)〜(2)のパターンが考えられる。
(1)左音声データL、右音声データR、中央音声データC、低域音声データSW、サラウンド左音声データLS、サラウンド右音声データRS、サラウンド後方左音声データLSB、サラウンド後方右音声データRSBが含まれている場合。
(2)左音声データL、右音声データR、中央音声データC、低域音声データSW、サラウンド左音声データLS、サラウンド右音声データRS、左上側音声データLh、右上側音声データRhが含まれている場合。
【0037】
図4は、音声処理部26の構成を示すブロック図である。音声処理部26は、DSP41と、DAC(デジタル−アナログ変換器)42と、ボリューム調整部43と、増幅処理部44と、変換部45と、切換部46とを有する。本例においては、切換部46はDSP41の内部に設けられているが、DSP41の後段(DSP41とDAC42との間、および、DSP41と変換部45との間)に設けられてもよい。
【0038】
DSP41は、HDMI受信部21から供給されるマルチチャンネル音声データをデコードし、デコードされた各チャンネルの音声データを生成する。DSP41においてデコードされた音声データのうち、中央音声データC、低域音声データSW、サラウンド左音声データLS、サラウンド右音声データRS、サラウンド後方左音声データLSB、サラウンド後方右音声データRSBは、そのままDAC42に供給される。一方、左音声データL、右音声データR、左上側音声データLh、右上側音声データRhは、まず切換部46に供給される。
【0039】
切換部46は、左音声データL、右音声データR、左上側音声データLh、右上側音声データRhについて、DAC42に供給する(つまり、AVアンプ20に接続されたスピーカーから再生する)か、又は、変換部45に供給する(つまり、ディスプレイ装置のスピーカーから再生する)かを、選択する。詳細には、切換部46は、左音声データLと左上側音声データLhとのどちらをDAC42に供給するかを切り換えるスイッチSW1と、右音声データRと右上側音声データRhとのどちらをDAC42に供給するかを切り換えるスイッチSW2と、左音声データLを変換部45に供給するか否かを切り換えるスイッチSW3と、右音声データRを変換部45に供給するか否かを切り換えるスイッチSW4とを含む。
【0040】
DSP41は、マルチチャンネル音声データに左上側音声データLh、右上側音声データRhが含まれていない場合に、他のチャンネルの音声データから左上側音声データLh、右上側音声データRhを生成することができる。例えば、DSP41は、左音声データLとサラウンド左音声データLSとから左上側音声データLhを生成し、右音声データRとサラウンド右音声データRSとから右上側音声データRhを生成する。生成された左上側音声データLh、右上側音声データRhは、スイッチSW1、SW2にそれぞれ供給される。
【0041】
DAC42は、DSP41及び切換部46から供給される各チャンネルの音声データをデジタル−アナログ変換し、各チャンネルのアナログ音声信号をボリューム調整部43に供給する。
【0042】
ボリューム調整部43は、各チャンネルのアナログの音声信号のボリューム値を調整し、増幅処理部44に供給する。ボリューム調整部43は、各チャンネル毎に可変抵抗等のボリューム調整回路が設けられている。増幅処理部44は、ボリューム調整部43から供給された各チャンネルの音声信号を増幅して、各チャンネルのスピーカー出力端子を介して、各チャンネルのスピーカーに出力する。増幅処理部44は、各チャンネル毎に増幅回路が設けられている。
【0043】
変換部45は、切換部46から左音声データL及び右音声データRが供給される。また、変換部45は、DSP41からビットクロックBCLK、マスタークロックMCLK及びLRクロックLRCLKが供給される。変換部45は、各クロックに基づいて、左音声データL及び右音声データRをSPDIF(2チャンネルPCM)の音声データに変換し、HDMI送信部22に供給する。
【0044】
図2又は図3に戻り、HDMI送信部22は、HDMI受信部21から供給された映像データ、並びに、音声処理部26の変換部45から供給された左音声データL及び右音声データRを、HDMIデータに変換する。HDMI送信部22は、変換したHDMIデータをディスプレイ装置30のHDMI受信部31に送信する。
【0045】
HDMI送信部22は、TMDSラインおよびホットプラグを介して、ディスプレイ装置30のHDMI受信部31に接続されている。また、HDMI送信部22は、DDCラインを介してディスプレイ装置30のPROM34及びHDMI受信部31に接続されている。
【0046】
システム制御部23は、内蔵又は接続されたメモリに記憶されているAVアンプの動作プログラムに基づいて、HDMI受信部21、HDMI送信部22、操作表示部24、PROM25、音声処理部26等を制御するものであり、例えば、マイクロコンピュータやCPU等である。システム制御部23は、操作表示部24からの操作入力または各部からの制御信号およびデータに基づいて各種処理を実行する。
【0047】
システム制御部23は、音声処理部26からマルチチャンネル音声データのチャンネル情報を取得し、マルチチャネル音声データに左上側音声データLh及び右上側音声データRhが含まれているか否かを判断する。または、システム制御部23は、マルチチャネル音声データに左上側音声データLh及び右上側音声データRhが含まれていないが、ユーザ操作によって、他のチャンネルの音声データから左上側音声データLh及び右上側音声データRhを生成して出力するように設定されているか否かを判断してもよい。
【0048】
左上側音声データLh及び右上側音声データRhが含まれている場合(又は、左上側音声データLh及び右上側音声データRhを他のチャンネルの音声データから生成する場合)には、システム制御部23は、左音声データL及び右音声データRを変換部45に出力し、左上側音声データLh及び右上側音声データRhをDAC42に出力するように切換部46を制御する。すなわち、スイッチSW1に左上側音声データLhを選択させ、スイッチSW2に右上側音声データRhを選択させ、スイッチSW3に左音声データLを選択させ(オン状態にし)、スイッチSW4に右音声データRを選択させる(オン状態にする)。これにより、図1A、図1Bにおいて、左スピーカーSLから左上側音声データLhが再生され、右スピーカーSRから右上側音声データRhが再生され、ディスプレイ左スピーカーSLDから左音声データLが再生され、ディスプレイ右スピーカーSRDから右音声データRが再生される。
【0049】
一方、左上側音声データLh及び右上側音声データRhが含まれていない場合には、システム制御部23は、左音声データL及び右音声データRをDAC42に出力するように切換部46を制御する。すなわち、スイッチSW1に左音声データLを選択させ、スイッチSW2に右音声データRを選択させ、スイッチSW3に左音声データLを選択させず(オフ状態にし)、スイッチSW4に右音声データRを選択させない(オフ状態にする)。これにより、図1A、図1Bにおいて、左スピーカーSLから左音声データLが再生され、右スピーカーSRから右音声データRが再生され、ディスプレイ左スピーカーSLD及びディスプレイ右スピーカーSRDからは音声が再生されない。
【0050】
システム制御部23は、CECラインを介してDVDプレーヤ10のシステム制御部14に接続され、システム制御部14とコマンドおよびデータを送受信する。また、システム制御部23は、CECラインを介してディスプレイ装置30のシステム制御部33に接続され、システム制御部33とコマンドおよびデータを送受信する。
【0051】
システム制御部23は、マルチチャネル音声データに、左上側音声データLh及び右上側音声データRhが含まれている場合に、CECラインを介してディスプレイ装置30に、現在AVアンプ20に設定されているボリューム値を含むボリューム設定コマンドを送信する。ディスプレイ装置30のスピーカーを使用して左音声データL及び右音声データRを再生する際に、AVアンプ20に接続されたスピーカーから再生される音声のボリュームと、ディスプレイ30のスピーカーから再生される音声のボリュームとを一致させるためである。
【0052】
[ディスプレイ装置30の構成]
次に、図3を参照し、ディスプレイ装置30について説明する。ディスプレイ装置30は、HDMI受信部31と、表示部32と、システム制御部33と、メモリ(EDID PROM、以下、PROMとする)34と、操作部35と、音声処理部36と、スピーカー37(図1Aにおける、ディスプレイ左スピーカーSLD及びディスプレイ右スピーカーSRDに対応)と、コネクタ部38とを有する。
【0053】
HDMI受信部31は、AVアンプ20のHDMI送信部22から送信されたHDMIデータを受信して、HDMIデータから元の映像データを生成し、表示部32に供給する。また、HDMI受信部31は、HDMIデータから元の音声データを生成して、音声処理部36に供給する。音声データは、上記の通り、左音声データL及び右音声データRを含むSPDIF(PCM)データである。
【0054】
音声処理部36は、HDMI受信部31から供給された音声データを、D/A変換処理、ボリューム調整処理、増幅処理等の各処理を実行し、スピーカー37に供給する。図5は、音声処理部36の構成を示すブロック図である。音声処理部36は、DAC(デジタル−アナログ変換器)51と、ボリューム調整部52と、増幅処理部53とを含む。
【0055】
DAC51は、HDMI受信部31から供給される音声データをデジタル−アナログ変換し、アナログ音声信号をボリューム調整部52に供給する。ボリューム調整部52は、DAC51からのアナログ音声信号のボリューム値を調整し、増幅処理部53に供給する。ボリューム調整部52のボリューム値は、AVアンプ20のシステム制御部14からのボリューム設定コマンドに含まれているボリューム値にシステム制御部33によって調整される。増幅処理部53は、ボリューム調整部52からの音声信号を増幅し、スピーカーに出力する。すなわち、左音声データLがディスプレイ左スピーカーSLDから再生され、右音声データRがディスプレイ右スピーカーSRDから再生される。
【0056】
表示部32は、HDMI受信部31から映像データが供給され、当該映像データに基づいて映像を表示するものであり、例えば、LCDまたはCRT等である。
【0057】
システム制御部33は、内蔵又は接続されたメモリに格納されたディスプレイ装置の動作プログラムに基づいて、HDMI受信部31、表示部32、PROM34、音声処理部36等を制御するものであり、例えば、マイクロコンピュータやCPU等である。システム制御部33は、操作部35からの操作入力または各部からの制御信号およびデータに基づいて各種処理を実行する。
【0058】
システム制御部33は、AVアンプ20のシステム制御部23からボリューム設定コマンドを受信すると、ボリューム設定コマンドに含まれているボリューム値に基づいて、ボリューム調整部52のボリューム値を制御する。システム制御部33は、ボリューム値の制御が完了すると、CECラインを介して、AVアンプ20のシステム制御部23にボリューム設定完了通知を送信する。AVアンプ20に、左音声データL及び右音声データRを含むHDMIデータの送信開始を促すためである。
【0059】
[音声再生システムの動作]
以下、本発明の動作を図6〜図8のフローチャートを参照し、説明する。図6に示すように、AVアンプ20のシステム制御部23は、DVDプレーヤ10からHDMIデータが入力されたか否か、すなわち、HDMI受信部21がHDMIデータを受信したか否かを監視している(S11)。HDMIデータが入力されると(S11でYES)、システム制御部23は、ボリューム調整部43及び増幅処理部44をミュート状態に制御し(S12)、切換部46の各スイッチの切り換えによるノイズがスピーカーから出力されないようにする。
【0060】
HDMI受信部21は、HDMIデータから元の映像データ及びマルチチャンネル音声データを生成し、映像データをHDMI送信部22に供給し、マルチチャンネル音声データを音声処理部26に供給する。音声処理部26は、マルチチャンネル音声データの一部をデコードし、その情報領域に含まれているチャンネル情報を読み出して、システム制御部23に供給する(S13)。
【0061】
続いて、システム制御部23は、ディスプレイ装置30がAVアンプ20に接続されているか否かを判断する(S14)。例えば、HDMIケーブルを介してディスプレイ装置30が接続されているとき、ディスプレイ装置30から出力されるホットプラグがハイレベルになっているので、ホットプラグのレベルを判別することによって、接続有無を判断できる。ここでは、ディスプレイ装置30が接続されているので(S14でYES)、S15に進む。
【0062】
システム制御部23は、マルチチャンネル音声データに左上側音声データLh及び右上側音声データRhが含まれているか否かを判断する(S15)。上記の(2)のマルチチャンネル音声データの場合には、これらのチャンネルの音声データが含まれている(S15でYES)。従って、システム制御部23は、ディスプレイ装置30のスピーカーで左音声データL及び右音声データRを再生する準備を行うため、CECラインを介して、ディスプレイ装置30のシステム制御部33にボリューム設定コマンドを送信する(S16)。ボリューム設定コマンドには、現在のAVアンプ20のボリューム調整部43に設定されているボリューム値(相対的な値ではなく例えばdB単位等の絶対的な値)が含まれている。
【0063】
図7に示す通り、ディスプレイ装置30のシステム制御部33は、CECラインを介して、AVアンプ20のシステム制御部23からボリューム設定コマンドを受信したか否かを監視している(S31)。ボリューム設定コマンドを受信すると(S31でYES)、システム制御部33は、ボリューム設定コマンドに含まれているボリューム値を読み出して、ボリューム調整部52のボリューム値を当該ボリューム値に設定する(S32)。続いて、システム制御部33は、CECラインを介して、AVアンプ20のシステム制御部23にボリューム設定完了通知を送信する(S33)。その後、ディスプレイ装置30は、AVアンプ20からHDMIデータを受信するまで待機する。
【0064】
図6に戻って、AVアンプ20のシステム制御部23は、CECラインを介して、ディスプレイ装置30のシステム制御部33からボリューム設定完了通知を受信したか否かを監視している(S17)。ボリューム設定完了通知を受信した場合(S17でYES)、システム制御部23は音声処理部26及びHDMI送信部22を制御し、マルチチャンネル音声データのデコードと、HDMIデータのディスプレイ装置30への送信を実行する(S18)。
【0065】
図8を参照して、S18の詳細を説明する。音声処理部26(DSP41)は、各チャンネルの音声データをデコードする(S22)。システム制御部23は、切換部46において、スイッチSW1に左上側音声データLhを選択させ、スイッチSW2に右上側音声データRhを選択させ、スイッチSW3に左音声データLを選択させ、スイッチSW4に右上側音声データRを選択させる。
【0066】
その結果、切換部46は、DSP41によってデコードされた左音声データL及び右音声データRを変換部45に供給する。変換部45は、左音声データL及び右音声データRをSPDIF(PCM)データに変換し、HDMI送信部22に供給する。HDMI送信部22は、映像データと、左音声データL及び右音声データRとからHDMIデータを生成し、ディスプレイ装置30のHDMI受信部31に送信する(S23)。
【0067】
図7に示すとおり、ディスプレイ装置30のHDMI受信部31は、HDMIデータを受信すると、元の映像データと、左音声データL及び右音声データRとを生成し、映像データを表示部32に供給し、左音声データL及び右音声データRを音声処理部36に供給する(S34)。システム制御部33は、ボリューム調整部52及び増幅処理部53を制御して、ミュート状態を解除する(S35)。音声処理部36において、DAC51が音声データをデジタル−アナログ変換し、ボリューム調整部52がアナログ音声信号のボリューム値を調整し、増幅処理部53がアナログ音声信号を増幅し、スピーカーに出力する。その結果、ディスプレイ左スピーカーSLDから左音声データLが再生され、ディスプレイ右スピーカーSRDから右音声データRcが再生される(S36)。
【0068】
図8に示すとおり、切換部46は、DSP41によってデコードされた左上側音声データLh及び右上側音声データRhをDAC42に供給する(S24)。DAC42は、音声データをデジタル−アナログ変換し、ボリューム調整部52は、アナログ音声信号のボリューム値を調整し、増幅処理部53は、アナログ音声信号を増幅し、スピーカーに出力する。その結果、左スピーカーSLから左上側音声データLhが再生され、右スピーカーSRから右上側音声データRhが再生される。なお、同様に、中央音声データCは中央スピーカーCから再生され、サラウンド左音声データLSはサラウンド左スピーカーSLSから再生され、サラウンド右音声データRSはサラウンド右スピーカーSRSから再生される。
【0069】
以上のように、上記(2)の音声データの場合には、ディスプレイ左スピーカーSLDから左音声データLが再生され、ディスプレイ右スピーカーSRDから右音声データRが再生され、左スピーカーSLから左上側音声データLhが再生され、右スピーカーSRから右上側音声データRhが再生される。従って、既存のスピーカー配置を使用して、左上側音声データLh及び右上側音声データRhを適切な位置から再生することができる。
【0070】
なお、S15において、マルチチャンネル音声データに左上側音声データLh、右上側音声データRhが含まれていないが、ユーザ操作によって、他のチャンネルの音声データから左上側音声データLh、右上側音声データRhを生成して出力するように設定されているために、DSP41が他のチャンネルの音声データから左上側音声データLh、右上側音声データRhを生成して切換部46に出力するか否かを判断してもよい。
【0071】
次に、上記(1)の音声データの場合、すなわち、左上側音声データLh及び右上側音声データRhが含まれていない場合には、図6のS15でNOと判断される。この場合、システム制御部23は、通常の方法でマルチチャンネル音声データを再生するように制御する(S21)。詳細には、システム制御部23は、切換部46において、スイッチSW1に左音声データLを選択させ、スイッチSW2に右音声データRを選択させる。また、システム制御部23は、スイッチSW3に左音声データLを選択させず、スイッチSW4に右音声データRを選択させない。
【0072】
切換部46は、DSP41によってデコードされた左音声データL及び右音声データRをDAC42に供給する。DAC42は、音声データをデジタル−アナログ変換し、ボリューム調整部52は、アナログ音声信号のボリュームを調整し、増幅処理部53は、アナログ音声信号を増幅し、スピーカーに出力する。その結果、左スピーカーSLから左音声データLが再生され、右スピーカーSRから右音声データRが再生される。なお、同様に、中央音声データCは中央スピーカーCから再生され、サラウンド左音声データLSはサラウンド左スピーカーSLSから再生され、サラウンド右音声データRSはサラウンド右スピーカーSRSから再生され、サラウンド後方左音声データLSBはサラウンド後方左スピーカーSLSBから再生され、サラウンド後方右音声データRSBはサラウンド後方右スピーカーSRSBから再生される。
【0073】
また、切換部46から変換部45には左音声データL及び右音声データRが供給されず、変換部45からHDMI送信部22に音声データが供給されない。従って、HDMI送信部22は、映像データのみからHDMIデータを生成し、ディスプレイ装置30のHDMI受信部31に送信する。
【0074】
ディスプレイ装置30のHDMI受信部31は、HDMIデータを受信すると、元の映像データを生成し、映像データを表示部32に供給する。一方、ディスプレイ装置30のスピーカーには音声信号が供給されないので、ディスプレイ左スピーカーSLD及びディスプレイ右スピーカーSRDからは音声が再生されない。
【0075】
次に、S14において、ディプレイ装置30がAVアンプ20に接続されていないと判断された場合(S14でNO)にも、S21に進み、上記(1)の音声データの場合と同様の処理が実行される。ディスプレイ装置30が接続されていない場合には、ディスプレイ左スピーカーSLD及びディスプレイ右スピーカーSRDを使用して音声データを再生することができない。ここで、マルチチャンネル音声データに左上側音声データLh及び右上側音声データRhが含まれている場合に、切換部46において、スイッチSW1に左上側音声データLhを選択させ、スイッチSW2に右上側音声データRhを選択させ、スイッチSW3に左音声データLを選択させ、スイッチSW4に右音声データRを選択させた場合、メインの音声データである左音声データL及び右音声データRが再生されないという問題が生じる。しかし、本例では、ディスプレイ装置30が接続されていないと判断された場合に、スイッチSW1に左音声データLを選択させ、スイッチSW2に右音声データRを選択させることにより、左音声データL及び右音声データRを確実に再生することができる。
【0076】
次に、本発明にさらに別の好ましい実施形態を説明する。本例では、図9A、図9B及び図10に示すように、AVアンプ20cには、左音声データL及び右音声データRに対するさらに一組のDAC42c、ボリューム調整部43c、増幅処理部44cおよびスピーカー出力端子が設けられており、第2左スピーカーSL2及び第2右スピーカーSR2が接続可能になっている。第2左スピーカーSL2は、例えばディスプレイ装置30の左側に配置され、第2右スピーカーSR2はディスプレイ装置30の右側に配置されている。言い換えると、左スピーカーSLは、前方左側であって、第2左スピーカーSL2よりも上方に配置され、右スピーカーSRは、前方右側であって、第2右スピーカーSR2よりも上方に配置されている。
【0077】
図10に示すとおり、DSP41c内の切換部46cは、左音声データL(右音声データR)、左上側音声データLh(右上側音声データRh)について、左スピーカーSL(右スピーカーSR)から再生するか、又は、第2左スピーカーSL2(第2右スピーカーSR2)から再生するかを、選択する。詳細には、切換部46cは、左音声データLと左上側音声データLhとのどちらを左スピーカーSLに供給するかを切り換えるスイッチSW1cと、右音声データRと右上側音声データRhとのどちらを右スピーカーSRに供給するかを切り換えるスイッチSW2cと、左音声データLを第2左スピーカーSL2に供給するか否かを切り換えるスイッチSW3cと、右音声データRを第2右スピーカーSR2に供給するか否かを切り換えるスイッチSW4cとを含む。
【0078】
図11は本例におけるAVアンプ20cの動作を示すフローチャートである。
[(2)の音声データの場合]
上記(2)の音声データの場合、すなわち、左上側音声データLh及び右上側音声データRhが含まれている場合には、S42でYESと判断される。システム制御部23は、切換部46cにおいて、スイッチSW1cに左上側音声データLhを選択させ、スイッチSW2cに右上側音声データRhを選択させ、スイッチSW3cに左音声データLを選択させ、スイッチSW4cに右音声データRを選択させる(S43、S44)。
【0079】
その結果、第2左スピーカーSLから左音声データLが再生され、第2右スピーカーSRから右音声データRが再生され、左スピーカーSLから左上側音声データLhが再生され、右スピーカーSRから右上側音声データRhが再生される。従って、左音声データL、右音声データR、左上側音声データLh及び右上側音声データRhを適切な位置から再生することができる。
【0080】
[(1)の音声データの場合]
上記(1)の音声データの場合、すなわち、左上側音声データLh及び右上側音声データRhが含まれていない場合には、S42でNOと判断される。システム制御部23は、切換部46cにおいて、スイッチSW1cに左音声データLを選択させ、スイッチSW2cに右音声データRを選択させ、スイッチSW3cに左音声データLを選択させず、スイッチSW4cに右音声データRを選択させない(S45)。
【0081】
その結果、左スピーカーSLから左音声データLが再生され、右スピーカーSRから右音声データRが再生され、第2左スピーカーSL2から左音声データLが再生されず、第2右スピーカーSR2から右音声データRが再生されない。従って、左音声データL、右音声データRを適切な位置から再生することができる。
【0082】
なお、本例においても、S42において、マルチチャンネル音声データに左上側音声データLh、右上側音声データRhが含まれていないが、ユーザ操作によって、他のチャンネルの音声データから左上側音声データLh、右上側音声データRhを生成して出力するように設定されているために、DSP41cが他のチャンネルの音声データから左上側音声データLh、右上側音声データRhを生成して切換部46cに出力するか否かを判断してもよい。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。左音声データL、右音声データR、左上側音声データLh、右上側音声データRh以外のチャンネルの音声データ(およびスピーカー)は本発明にとって必須ではなく、また、異なるチャンネルの音声データが含まれていてもよい。また、AVアンプ20にDVDプレーヤ10の機能が含まれていてもよく、この場合、HDMI受信部21は不要になる。また、AVアンプ20とディスプレイ装置30との機能を有するテレビジョン受像機にも本発明を適用可能であり、この場合のマルチチャンネル音声データはTV放送の音声データでもよい。また、AVアンプ20が、DVDプレーヤ10に代えて受信機からHDMIデータを受信してもよい。また、ディスプレイ装置に送信される音声データは、HDMIケーブルを介して送信されるのではなく、光デジタルケーブル等で送信されてもよい。この場合、別途他の通信ケーブルを介してボリューム設定コマンドが送信されるとよい。また、AVアンプの上記動作をコンピュータに実行させるためのプログラムおよびこれを記録した記録媒体という形態で提供されてもよい。また、AVアンプの上記動作の一部のみのプログラムを、AVアンプにファームウェアアップデートという形態で提供されてもよい。さらには、AVアンプの上記動作の一部のみのプログラムが格納されたDSP、マイコンなどの電子部品という形態で提供されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、AVアンプ等に好適に採用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1A】AVアンプ20、ディスプレイ装置30およびスピーカーの配置を示す図である。
【図1B】部屋におけるスピーカーの配置を示す図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態によるDVDプレーヤ10およびAVアンプ20の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態によるAVアンプ20およびディスプレイ装置の構成を示すブロック図である。
【図4】音声処理部26を説明するブロック図である。
【図5】音声処理部36を説明するブロック図である。
【図6】AVアンプ20の動作を説明するフローチャートである。
【図7】ディスプレイ装置30の動作を説明するフローチャートである。
【図8】S18の詳細を示すフローチャートである。
【図9A】他の実施形態による、AVアンプ20、およびスピーカーの配置を示す図である。
【図9B】他の実施形態による、部屋におけるスピーカーの配置を示す図である。
【図10】他の実施形態による音声処理部26cを説明するブロック図である。
【図11】他の実施形態によるAVアンプ20cの動作を説明するフローチャートである。
【図12】マルチチャンネル音声データの各音声データの再生位置を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
10 DVDプレーヤ
20 AVアンプ
21 HDMI受信部
22 HDMI送信部
23 システム制御部
26 音声処理部
30 ディスプレイ装置
31 HDMI受信部
33 システム制御部
41 DSP
42 DAC
43 ボリューム調整部
44 増幅処理部
45 変換部
46 切換部
51 DAC
52 ボリューム調整部
53 増幅処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ左スピーカー及びディスプレイ右スピーカーを備えるディスプレイ装置と、前方左側であって前記ディスプレイ左スピーカーよりも上方に配置される左スピーカー及び前方右側であって前記ディスプレイ右スピーカーよりも上方に配置される右スピーカーとが接続可能な音声処理装置であって、
左音声データ及び右音声データを少なくとも含むマルチチャンネル音声データに、左上側音声データ及び右上側音声データが含まれているかを判断するチャンネル判断手段と、
マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていると判断された場合、左音声データ及び右音声データを前記ディスプレイ装置に送信し、前記ディスプレイ左スピーカーから左音声データを再生させ、前記ディスプレイ右スピーカーから右音声データを再生させると共に、前記左スピーカーから左上側音声データを再生させ、前記右スピーカーから右上側音声データを再生させる再生制御手段とを備え、
マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていないと判断された場合、前記再生制御手段が、前記左スピーカーから左音声データを再生させ、前記右スピーカーから右音声データを再生させる、音声処理装置。
【請求項2】
前記ディスプレイ装置が前記音声処理装置に接続されているか否かを判断するディスプレイ接続判断手段をさらに備え、
前記ディスプレイ装置が前記音声処理装置に接続されていないと判断された場合、マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれているか否かに関係なく、前記左スピーカーから左音声データを再生させ、前記右スピーカーから右音声データを再生させる、請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項3】
前記ディスプレイ装置が、ボリューム設定コマンドを受信したとき、前記ディスプレイ左スピーカー及び前記ディスプレイ右スピーカーから再生される音声のボリューム値を、ボリューム設定コマンドに含まれているボリューム値に設定するものであり、
マルチチャンネル音声データに、左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていると判断された場合、前記音声処理装置に設定されているボリューム値を含むボリューム設定コマンドを前記ディスプレイ装置に送信するボリューム制御手段をさらに備える、請求項1または2に記載の音声処理装置。
【請求項4】
ディスプレイ左スピーカー及びディスプレイ右スピーカーを備えるディスプレイ装置と、前方左側であって前記ディスプレイ左スピーカーよりも上方に配置される左スピーカー及び前方右側であって前記ディスプレイ右スピーカーよりも上方に配置される右スピーカーとが接続可能な音声処理装置であって、
左音声データ及び右音声データを少なくとも含むマルチチャンネル音声データにおける左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されているか否かを判断する設定判断手段と、
左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成する生成手段と、
左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されていると判断された場合、左音声データ及び右音声データを前記ディスプレイ装置に送信し、前記ディスプレイ左スピーカーから左音声データを再生させ、前記ディスプレイ右スピーカーから右音声データを再生させると共に、前記左スピーカーから左上側音声データを再生させ、前記右スピーカーから右上側音声データを再生させる再生制御手段とを備え、
左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されていないと判断された場合、前記再生制御手段が、前記左スピーカーから左音声データを再生させ、前記右スピーカーから右音声データを再生させる、音声処理装置。
【請求項5】
前方左側であって第2左スピーカーよりも上方に配置される左スピーカー、前方右側であって第2右スピーカーよりも上方に配置される右スピーカー、前方左側に配置される第2左スピーカー、及び、前方右側に配置される第2右スピーカーが接続可能な音声処理装置であって、
左音声データ及び右音声データを少なくとも含むマルチチャンネル音声データに、左上側音声データ及び右上側音声データが含まれているかを判断するチャンネル判断手段と、
マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていると判断された場合、前記左スピーカーから左上側音声データを再生させ、前記右スピーカーから右上側音声データを再生させると共に、前記第2左スピーカーから左音声データを再生させ、前記第2右スピーカーから右音声データを再生させ、マルチチャンネル音声データに左上側音声データ及び右上側音声データが含まれていないと判断された場合、前記左スピーカーから左音声データを再生させ、前記右スピーカーから右音声データを再生させる再生制御手段とを備える、音声処理装置。
【請求項6】
前方左側であって第2左スピーカーよりも上方に配置される左スピーカー、前方右側であって第2右スピーカーよりも上方に配置される右スピーカー、前方左側に配置される第2左スピーカー、及び、前方右側に配置される第2右スピーカーが接続可能な音声処理装置であって、
左音声データ及び右音声データを少なくとも含むマルチチャンネル音声データにおける左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されているか否かを判断する設定判断手段と、
左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成する生成手段と、
左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されていると判断された場合、前記左スピーカーから左上側音声データを再生させ、前記右スピーカーから右上側音声データを再生させると共に、前記第2左スピーカーから左音声データを再生させ、前記第2右スピーカーから右音声データを再生させ、左上側音声データ及び右上側音声データ以外のチャンネルの音声データから左上側音声データ及び右上側音声データを生成するように設定されていないと判断された場合、前記左スピーカーから左音声データを再生させ、前記右スピーカーから右音声データを再生させる再生制御手段とを備える、音声処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の音声処理装置における各手段をコンピュータに実行させる、音声処理プログラム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−278846(P2010−278846A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130194(P2009−130194)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】