説明

音声処理装置

【課題】 前方左音声信号FL及び前方右音声信号FRが入力され、FL、FR及び低域音声信号SWを再生することができ、かつ、FL及びFRの音質を向上させる音声処理装置を提供すること。
【解決手段】 前方左音声信号FLは、FL信号ラインからSBL信号ラインを介して、ミックスアンプ9に供給される。前方右音声信号FRは、FR信号ラインからSBR信号ラインを介して、ミックスアンプ9に供給される。ミックスアンプ9は、FLおよびFRを合成して、低域音声信号SWを生成する。ミックスアンプ9は、FL信号ライン及びFR信号ラインに直接接続される必要がないので、FL信号ラインに流れるFL及びFR信号ラインに流れるFRにノイズが混入することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号が入力される音声処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AVアンプは、DVDプレーヤ等から複数チャンネルの音声信号が入力され、これらの音声信号に所定の音声処理を実行し、接続される複数のスピーカーに音声信号を出力するものである。例えば、AVアンプに8つのスピーカー(例えば、前方左スピーカー、前方右スピーカー、中央スピーカー、低域スピーカー、サラウンド左スピーカー、サラウンド右スピーカー、サラウンド後方左スピーカー、サラウンド後方右スピーカー)が接続されている場合に、AVアンプに2chの音声信号(前方左音声信号および前方右音声信号)が入力されると、AVアンプは前方左音声信号および前方右音声信号から、DSPにおいて、これら8つのスピーカーに出力するための7.1ch分の音声信号を生成する。その結果、AVアンプに2chの音声信号が入力された場合でも、8つのスピーカーから音声を再生することができる。
【0003】
AVアンプにはダイレクトモードと呼ばれるモードが設けられている。ダイレクトモードは、2chの音声信号が入力された場合に、上記のDSPによる7.1ch分の音声信号を生成する処理を実行せずに、そのまま2chの音声信号を増幅して前方左スピーカーおよび前方右スピーカーのみに出力するモードである。ダイレクトモードでは、中央スピーカー、低域スピーカー、サラウンド左スピーカー、サラウンド右スピーカー、サラウンド後方左スピーカーおよびサラウンド後方右スピーカーから音声を再生できないが、前方左スピーカーおよび前方右スピーカーから再生される音声の音質を向上することができる。
【0004】
ここで、ユーザがAVアンプに例えば低域スピーカーを接続し、低域スピーカーからの音声の再生を所望する場合に、誤ってダイレクトモードがオン状態に設定されてしまうと、上記の理由により、低域スピーカーから音声が再生されないために、ユーザに違和感を与えるという問題が生じる。また、中央スピーカー、サラウンド左スピーカー、サラウンド右スピーカー、サラウンド後方左スピーカーおよびサラウンド後方右スピーカーについても同様である。
【0005】
特に、AVアンプには低域スピーカー内蔵のAVアンプという製品が存在する。このような製品は低域スピーカーが内蔵されているため、ユーザは低域スピーカーから音声が再生されると理解しているが、上記のようにダイレクトモードがオン状態に設定されると、低域スピーカーから音声が再生されず、上記の問題は特に顕著になる。また、最近では、左スピーカー、右スピーカー、中央スピーカー、低域スピーカー及びAVアンプ内蔵のTVラックが販売されている。このような製品においても、ダイレクトモードがオン状態に設定されると、中央スピーカー及び低域スピーカーから音声が再生されないという問題がある。
【0006】
下記特許文献1には、前方左音声信号および前方右音声信号を合成して他のチャンネルの音声信号を生成する技術が記載されている。しかし、この技術では、合成手段は、前方左音声信号ラインおよび前方右音声信号ラインに直接的に接続されるので、前方左音声信号および前方右音声信号に合成手段のノイズが含まれてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−309499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号が入力され、第1チャンネル音声信号、第2チャンネル音声信号および第3チャンネル音声信号を再生することができ、かつ、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号の音質を向上させる音声処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい実施形態による音声処理装置は、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号が入力される入力手段と、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を合成して第3チャンネル音声信号を生成する合成手段と、前記合成手段によって生成された第3チャンネル音声信号を第3チャンネルスピーカーに出力する出力手段と、第1チャンネル音声信号を、第1チャンネル音声信号ラインから、使用されていない第4チャンネル音声信号ラインを経由して、前記合成手段に供給させ、前記第2チャンネル音声信号を、第2チャンネル音声信号ラインから、使用されていない第5チャンネル音声信号ラインを経由して、前記合成手段に供給させる切換手段とを備える。
【0010】
第1チャンネル音声信号は、第1チャンネル音声信号ラインから第4チャンネル音声信号ラインを介して、合成手段に供給される。従って、合成手段は、第1チャンネル音声信号ラインに直接接続される必要がないので、第1チャンネル音声信号ラインに流れる第1チャンネル音声信号に合成手段のノイズが含まれることを防止できる。第2チャンネル音声信号は、第2チャンネル音声信号ラインから第5チャンネル音声信号ラインを介して、合成手段に供給される。従って、合成手段は、第2チャンネル音声信号ラインに直接接続される必要がないので、第2チャンネル音声信号ラインに流れる第2チャンネル音声信号に合成手段のノイズが含まれることを防止できる。その結果、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号に合成手段のノイズが含まれることなく、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を合成して第3チャンネル音声信号を生成し、出力することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態による音声処理装置は、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号が入力される入力手段と、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を、デジタル信号処理部において第3チャンネル音声信号の生成処理を実行せずに、第1チャンネルスピーカーおよび第2チャンネルスピーカーにそれぞれ出力するダイレクトモードを、オン状態又はオフ状態に設定するモード設定手段と、ダイレクトモードがオン状態の時に、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を合成して第3チャンネル音声信号を生成する合成手段と、前記合成手段によって生成された第3チャンネル音声信号を第3チャンネルスピーカーに出力する出力手段と、第1チャンネル音声信号を、第1チャンネル音声信号ラインから、ダイレクトモードがオン状態の時に使用されない第4チャンネル音声信号ラインを経由して、前記合成手段に供給させ、前記第2チャンネル音声信号を、第2チャンネル音声信号ラインから、ダイレクトモードがオン状態の時に使用されない第5チャンネル音声信号ラインを経由して、前記合成手段に供給させる切換手段とを備える。
【0012】
第1チャンネル音声信号は、第1チャンネル音声信号ラインから第4チャンネル音声信号ラインを介して、合成手段に供給される。従って、合成手段は、第1チャンネル音声信号ラインに直接接続される必要がないので、第1チャンネル音声信号ラインに流れる第1チャンネル音声信号に合成手段のノイズが含まれることを防止できる。第2チャンネル音声信号は、第2チャンネル音声信号ラインから第5チャンネル音声信号ラインを介して、合成手段に供給される。従って、合成手段は、第2チャンネル音声信号ラインに直接接続される必要がないので、第2チャンネル音声信号ラインに流れる第2チャンネル音声信号に合成手段のノイズが含まれることを防止できる。その結果、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号に合成手段のノイズが含まれることなく、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を合成して第3チャンネル音声信号を生成し、出力することができる。
【0013】
なお、第4チャンネル音声信号ラインおよび第5チャンネル音声信号ラインはダイレクトモードがオン状態の時には使用されないので、第4チャンネル音声信号ラインに流れるべき第4チャンネル音声信号および第5チャンネル音声信号ラインに流れるべき第5チャンネル音声信号に影響を与えることがない。また、第1チャンネル音声信号ラインおよび第2チャンネル音声信号ラインから合成手段に第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を供給する際に経由するための他の信号ラインを別途設ける必要もない。
【0014】
好ましい実施形態においては、前記合成手段が、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を加算し、かつ、反転増幅することにより、第3チャンネル音声信号を生成する反転増幅回路を有し、前記出力手段が、前記反転増幅回路からの第3チャンネル音声信号を反転増幅して出力する増幅回路を有する。
【0015】
反転増幅回路によって第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を合成するので、第1チャンネル音声信号ラインおよび第2チャンネル音声信号ラインから見て反転増幅回路の入力端子が接地電位と見なすことができる。従って、第1チャンネル音声信号ラインおよび第2チャンネル音声信号ラインを、反転増幅回路から分断することができるので、第1チャンネル音声信号ラインに流れる第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号ラインに流れる第2チャンネル音声信号に合成手段のノイズが含まれることをさらに良好に防止できる。同時に、第1チャンネル音声信号と第2チャンネル音声信号とが混ざることを防止できる。また、反転増幅回路から出力される第3チャンネル音声信号は後段の増幅回路でさらに反転増幅されるので、出力される第3チャンネル音声信号と、入力される第1チャンネル音声信号および第2音声信号との極性を一致させることができる。
【0016】
好ましい実施形態においては、前記増幅回路が、ダイレクトモードがオフ状態の時には、前記合成手段からの信号ラインとは異なる第3チャンネル音声信号ラインから供給される第3チャンネル音声信号を非反転増幅して出力するものであり、ダイレクトモードがオフ状態の時に前記第3チャンネル音声信号ラインからの第3チャンネル音声信号を非反転増幅する際の前記増幅回路の第1増幅率と、ダイレクトモードがオン状態の時に前記合成手段からの第3チャンネル音声信号を反転増幅する際の前記増幅回路の第2増幅率とを切り換える増幅率切換手段をさらに備える。
【0017】
増幅回路が、ダイレクトモードがオフ状態の時に第3チャンネル音声信号ラインからの第3チャンネル音声信号を増幅する非反転増幅回路を兼用しているので、別途、ダイレクトモードがオフ状態の時に第3チャンネル音声信号ラインからの第3チャンネル音声信号を増幅する増幅回路を設ける必要がない。さらに、増幅回路の増幅率が増幅率切換手段によって切り換えられるので、ダイレクトモードがオフ状態の時に第3チャンネル音声信号ラインからの第3チャンネル音声信号を増幅する際も、ダイレクトモードがオン状態の時に合成手段からの第3チャンネル音声信号を反転増幅する際も、適切な増幅率で増幅することができる。
【0018】
好ましい実施形態においては、前記増幅率切換手段が、ダイレクトモードがオフ状態の時に、前記合成手段からの音声信号が前記増幅回路に供給されないように、前記合成手段からの音声信号にミュート処理を実行する。
【0019】
ダイレクトモードがオフ状態の時に合成手段からの音声信号が増幅回路に供給されることを防止する。また、増幅率切換手段がミュート処理の機能を有するで、回路構成を簡易化できる。
【0020】
好ましい実施形態においては、前記増幅回路が、前記第3チャンネル音声信号ラインから第3チャンネル音声信号が供給される非反転入力端子と、前記合成手段から第3チャンネル音声信号が供給される反転入力端子とを含むオペアンプと、前記反転入力端子と接地電位との間に接続された第1抵抗と、前記反転入力端子と前記オペアンプの出力端子との間に接続された第2抵抗とを含み、前記増幅率切換手段が、前記反転入力端子と前記合成手段の出力との間に設けられた第3抵抗および第4抵抗と、一端が前記第3抵抗と前記第4抵抗との間に接続され他端が接地電位に接続されたトランジスタとを含み、ダイレクトモードがオフ状態の時には前記トランジスタがオン状態とされ、ダイレクトモードがオン状態の時には前記トランジスタがオフ状態とされる。
【0021】
ダイレクトモードがオフ状態にときにトランジスタがオン状態にされるので、合成手段からの音声信号は接地電位に流れ込み、ミュート状態になると共に、増幅回路の増幅率が、第3チャンネル音声信号ラインからの第3チャンネル音声信号を非反転増幅する際の増幅率に設定される。ダイレクトモードがオン状態のときにトランジスタがオフ状態にされるので、ミュート状態が解除され、合成手段からの第3チャンネル音声信号が増幅回路の反転入力端子に入力され、増幅回路の増幅率が、合成手段からの第3チャンネル音声信号を反転増幅する際の増幅率に設定される。
【0022】
好ましい実施形態においては、前記第1増幅率が、前記第2増幅率の2倍になるように、前記第1〜第4抵抗の抵抗値が設定されている。
【0023】
合成手段によって第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号が加算されて第3チャンネル音声信号が生成されるので、合成手段からの第3チャンネル音声信号は、第3チャンネル音声信号ラインからの第3チャンネル音声信号に対して信号レベルが2倍になっている。従って、第1増幅率を第2増幅率の2倍に設定しておくことにより、ダイレクトモードのオンオフ状態に関係なく、出力される第3チャンネル音声信号の信号レベルを同じにすることができる。
【0024】
好ましい実施形態においては、前記切換手段が、前記第1チャンネル音声信号ラインおよび前記第4チャン音声信号ラインのいずれを、前記合成手段が接続された前記第4チャンネル音声信号ラインに接続するかを切り換える第1スイッチ部と、前記第2チャンネル音声信号ラインおよび前記第5チャンネル音声信号ラインのいずれを、前記合成手段が接続された前記第5チャンネル音声信号ラインに接続するかを切り換える第2スイッチ部とを有する。
【0025】
ダイレクトモードがオン状態のときには、第1スイッチ部は、第1チャンネル音声信号ラインを第4チャンネル音声信号ラインに接続し、第1チャンネル音声信号を合成手段に供給し、第2スイッチ部は、第2チャンネル音声信号ラインを第5チャンネル音声信号ラインに接続し、第2チャンネル音声信号を合成手段に供給する。一方、ダイレクトモードがオフ状態のときには、第1スイッチ部は、第4チャンネル音声信号ライン(入力側)を第4チャンネル音声信号ライン(出力側)に接続し、第2スイッチ部は、第5チャンネル音声信号ライン(入力側)を第5チャンネル音声信号ライン(出力側)に接続する。従って、第1チャンネル音声信号ラインおよび第2チャンネル音声信号ラインは合成手段と切り離されるので、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号に合成手段のノイズが含まれることを防止できる。
【発明の効果】
【0026】
第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号が入力され、第1チャンネル音声信号、第2チャンネル音声信号および第3チャンネル音声信号を再生することができ、かつ、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号の音質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】AVアンプ100と、各チャンネルのスピーカーとの接続及び配置を説明する図である。
【図2】AVアンプ100の構成を示すブロック図である。
【図3】AVアンプ100の要部の構成を示す回路図である。
【図4】ダイレクトモード設定画面を示す図である。
【図5】ダイレクトモードにおける低域音声信号SWの再生有無設定画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態によるAVアンプ100について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0029】
図1は、本実施形態における、AVアンプ100、ディスプレイ装置200、及び、各スピーカーの配置の一例を説明する図である(DVDプレーヤは省略している)。AVアンプ100は、低域スピーカーSSWが内蔵されており、ディスプレイ装置200、前方左スピーカーSFL、前方右スピーカーSFR、中央スピーカーSC、サラウンド左スピーカーSSL、サラウンド右スピーカーSSR、サラウンド後方左スピーカーSSBLおよびサラウンド後方右スピーカーSSBRが接続されている。なお、低域スピーカーSSWはAVアンプ100に内蔵されるのではなく、AVアンプ100に外部接続されてもよい。
【0030】
AVアンプ100には、例えばDVDプレーヤから供給される2chのアナログ(又はデジタル、以下同様。)音声信号(前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FR)が入力される。後述するダイレクトモードがオン状態に設定されている場合、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRに基づいて、前方左スピーカーSFLおよび前方右スピーカーSFRからそれぞれ音声を再生する。また、ダイレクトモードがオン状態に設定されている場合、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRを合成手段において合成し、低域音声信号SWを生成し、低域スピーカーSSWから音声を再生する。一方、ダイレクトモードがオフ状態に設定されている場合、DSPにおいて、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRから各チャンネル分の音声信号が生成され、前方左スピーカーSFL、前方右スピーカーSFR、中央スピーカーSC、低域スピーカーSSW、サラウンド左スピーカーSSL、サラウンド右スピーカーSSR、サラウンド後方左スピーカーSSBLおよびサラウンド後方右スピーカーSSBRから音声を再生する。
【0031】
図2は、AVアンプ100の構成を示す概略ブロック図である。なお、図2では、説明を簡単化するために、中央スピーカーSC、サラウンド左スピーカーSSL、および、サラウンド右スピーカーSSRに対応する部分(信号ラインやアンプ部等)は省略している。
【0032】
AVアンプ100は、スイッチ部2,3と、アナログ−デジタル変換部(以下、ADCという。)4と、デジタル信号処理部であるDSP5と、デジタル−アナログ変換部(以下、DACという。)6と、切換手段であるスイッチ部7,8と、合成手段であるミックスアンプ9と、ミュート処理部10と、ゲイン切換部11と、出力手段であるフィルターアンプ12と、CPU13と、ミュート駆動部14と、低域アンプ(以下、SWアンプという。)15と、サラウンド後方左アンプ(以下、SBLアンプという。)16と、サラウンド後方右アンプ(以下、SBRアンプという。)17と、前方左アンプ(以下、FLアンプという。)18と、前方右アンプ(以下、FRアンプという。)19とを備える。
【0033】
スイッチ部2は、例えばDVDプレーヤ等から前方左音声信号FLが入力され、前方左音声信号FLをFLアンプ18に出力するか、又は、ADC4に出力するかをCPU13からの指示に応じて切り換える。つまり、スイッチ部2の端子2cは前方左音声信号ライン(以下、FL信号ラインという。)に接続され、端子2aはADC4に接続され、端子2bはFLアンプ18(FL信号ラインの出力側)に接続されている。
【0034】
スイッチ部3は、例えばDVDプレーヤ等から前方右音声信号FRが入力され、前方右音声信号をFRアンプ19に出力するか、又は、ADC4に出力するかをCPU13からの指示に応じて切り換える。つまり、スイッチ部3の端子3cは前方右音声信号ライン(以下、FR信号ラインという。)に接続され、端子3aはADC4に接続され、端子3bはFRアンプ19(FR信号ラインの出力側)に接続されている。
【0035】
FLアンプ18は、スイッチ部2又はDAC6から供給される前方左音声信号FLを増幅し、外部に接続される前方左スピーカーSFLに出力する。FRアンプ19は、スイッチ部3又はDAC6から供給される前方右音声信号FRを増幅し、外部に接続される前方右スピーカーSFRに出力する。
【0036】
スイッチ部7は、DAC6からのサラウンド後方左音声信号SBLと、例えばDVDプレーヤ等からの前方左音声信号FLとが入力され、サラウンド後方左音声信号SBL、又は、前方左音声信号FLのどちらを、サラウンド後方左音声信号ライン(以下、SBL信号ラインという。)、すなわちミックアンプ9およびSBLアンプ16に出力するかをCPU13からの指示に応じて切り換える。つまり、スイッチ部7の端子7aはSBL信号ラインの入力側に接続され、端子7bはFL信号ラインに接続され、端子7cはSBL信号ラインの出力側(すなわち、ミックアンプ9およびSBLアンプ16)に接続されている。
【0037】
スイッチ部8は、DAC6からのサラウンド後方右音声信号SBRと、例えばDVDプレーヤ等からの前方右音声信号FRとが入力され、サラウンド後方右音声信号SBR、又は、前方右音声信号FRのどちらを、サラウンド後方右音声信号ライン(以下、SBR信号ラインという。)、すなわちミックアンプ9およびSBRアンプ17に出力するかをCPU13からの指示に応じて切り換える。つまり、スイッチ部8の端子8aはSBR信号ラインの入力側に接続され、端子8bはFR信号ラインに接続され、端子8cはSBR信号ラインの出力側(すなわち、ミックアンプ9およびSBRアンプ17)に接続されている。
【0038】
好ましくは、スイッチ部7とミックスアンプ9との間にはバッファアンプ20が設けられ、スイッチ部8とミックスアンプ9との間にはバッファアンプ21が設けられている。
【0039】
SBLアンプ16は、DAC6からスイッチ部7を介して供給されるサラウンド後方左音声信号SBLを増幅し、外部に接続されるサラウンド後方左スピーカーSSBLに出力する。なお、スイッチ部7が端子7bを選択している場合には、SBLアンプ16はミュート状態とされ、前方左音声信号FLが再生されることが防止される。SBRアンプ17は、DAC6からスイッチ部8を介して供給されるサラウンド後方右音声信号SBRを増幅し、外部に接続されるサラウンド後方右スピーカーSSBRに出力する。なお、スイッチ部8が端子8bを選択している場合には、SBRアンプ17はミュート状態とされ、前方右音声信号FRが再生されることが防止される。
【0040】
ADC4は、FL信号ラインからスイッチ部2を介して供給される前方左音声信号FL、および、FR信号ラインからスイッチ部3を介して供給される前方右音声信号FRをデジタル信号に変換し、DSP5に供給する。
【0041】
DSP5は、ADC4から供給されるデジタルの前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRに基づいて、前方左音声信号FL、前方右音声信号FR、中央音声信号C、低域音声信号SW、サラウンド左音声信号SL、サラウンド右音声信号SR、サラウンド後方左音声信号SBLおよびサラウンド後方右音声信号SBRを含む7.1chのデジタル音声信号を生成し、DAC6に供給する。
【0042】
DAC6は、DSP5から供給された7.1chのデジタル音声信号を、デジタル−アナログ変換する。DAC6からの低域音声信号SWはフィルターアンプ12に供給され、前方左音声信号FLはFLアンプ18に供給され、前方右音声信号FRはFRアンプ19に供給され、サラウンド後方左音声信号SBLはスイッチ部7(SBL信号ラインの入力側)に供給され、サラウンド後方右音声信号SBRはスイッチ部8(SBR信号ラインの入力側)に供給される。
【0043】
ミックスアンプ9は、スイッチ部7が端子7bを選択し、かつ、スイッチ部8が端子8bを選択しているとき、FL信号ラインからSBL信号ラインを経由して供給される前方左音声信号FL、および、FR信号ラインからSBR信号ラインを経由して供給される前方右音声信号FRを合成し、低域音声信号SWを生成し、ミュート処理部10に供給する。なお、ミックスアンプ9は、スイッチ部7が端子7aを選択し、かつ、スイッチ部8が端子8aを選択しているとき、SBL信号ラインから供給されるサラウンド後方左音声信号SBLおよびSBR信号ラインから供給されるサラウンド後方右音声信号SBRを合成し、その合成信号をミュート処理部10に供給する。
【0044】
ミュート処理部10は、ミュート駆動部14によってミュート状態とミュート解除状態とが切り換えられる。スイッチ部7が端子7bを選択し、かつ、スイッチ部8が端子8bを選択しているとき、ミュート処理部10は、ミュート解除状態とされ、ミックスアンプ9から供給される低域音声信号SWをフィルターアンプ12に供給する。一方、スイッチ部7が端子7aを選択し、かつ、スイッチ部8が端子8aを選択しているとき、ミュート処理部10は、ミュート状態とされ、ミックスアンプ9から供給される合成信号を、接地電位へと流し込み、フィルターアンプ12には供給しないようにする。
【0045】
ゲイン切換部11は、ミュート駆動部14によって制御され、フィルターアンプ12のゲインを、フィルターアンプ12がDAC6、すなわち、低域音声信号ライン(以下、SW信号ラインという。)からの低域音声信号を増幅する際のゲイン(増幅率)と、フィルターアンプ12がミックアンプ9からの低域音声信号を増幅する際のゲインとのいずれかに切り換える。
【0046】
ミュート駆動部14は、CPU13からの制御信号に基づいて、ミュート処理部10をミュート状態またはミュート解除状態のどちらかに切り換える。また、ミュート駆動部14は、CPU13からの制御信号に基づいて、ゲイン切換部11にフィルターアンプ12のゲインを切り換えさせる。
【0047】
フィルターアンプ12は、DAC6又はミックスアンプ9から供給される低域音声信号SWから高周波数成分を除去し、かつ、ゲイン切換部11の状態によって決定される所定のゲインに基づいて低域音声信号SWを増幅し、SWアンプ15に供給する。SWアンプ15は、フィルターアンプ12から供給される低域音声信号SWを増幅し、低域スピーカーSSWに出力する。
【0048】
図3は、AVアンプ100の要部(ミックスアンプ9、ミュート処理部10、ゲイン切換部11、フィルターアンプ12およびミュート駆動部14)を示す回路図である。太線で示した信号ラインは接地電位を示している。
【0049】
ミックスアンプ9は、オペアンプQ1と、抵抗R1〜R3とを含む反転増幅回路(加算アンプ)である。オペアンプQ1の反転入力端子は抵抗R1を介してSBL信号ラインに接続され、抵抗R2を介してSBR信号ラインに接続され、かつ、抵抗R3を介してオペアンプQ1の出力端子に接続されている。オペアンプQ1の非反転入力端子は、接地電位に接続されている。抵抗R1〜R3は同じ抵抗値に設定されているので、ミックスアンプ9のゲインは−1となり、非反転入力端子に入力される前方左信号FLおよび前方右音声信号FWを加算することによって得られる低域音声信号SWを反転させて、出力する。
【0050】
ミックアンプ9を反転増幅回路によって構成することにより、FL信号ラインおよびFR信号ラインから見てオペアンプQ1の反転入力端子は接地電位と見なすことができる。その結果、図2のスイッチ部7および8を介して、FL信号ラインおよびFR信号ラインが間接的にオペアンプQ1に接続されるが、FL信号ラインおよびFR信号ラインをオペアンプQ1から分離させることができる。従って、ミックスアンプ9以後の回路に伝送される信号の影響により、FL信号ラインおよびFR信号ラインを流れる前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRにノイズ等が発生することを抑制することができる。
【0051】
ミュート処理部10およびゲイン切換部11は、トランジスタQ2,Q3と、抵抗R4〜R6とを含む。つまり、トランジスタQ2,Q3の2段階でミュート処理およびゲイン切換処理が実行される。しかし、これに限定されず、1つのトランジスタによってミュート処理およびゲイン切換処理が実行されてもよい。この場合、例えば、抵抗R4とトランジスタQ2を省略することができる。トランジスタQ2は、コレクタが抵抗R4の一端と抵抗R5の一端とに接続され、エミッタが接地電位に接続され、ベースがミュート駆動部14の出力に接続されている。トランジスタQ3は、コレクタが抵抗R5の他端と抵抗R6の一端とに接続され、エミッタが接地電位と抵抗R9の一端とに接続され、ベースがミュート駆動部14の出力に接続されている。抵抗R4の他端は、オペアンプQ1の出力端子と抵抗R3とに接続されている。
【0052】
トランジスタQ2,Q3は、ミュート駆動部14からハイレベルの信号が供給されると、オン状態になり、ミュート状態になるので、ミックアンプQ1からの合成信号を接地電位に流し込み、フィルターアンプ12に出力しない。一方、トランジスタQ2,Q3は、ミュート駆動部14からローレベルの信号が供給されると、オフ状態になり、ミュート解除状態になるので、ミックアンプQ1からの低域音声信号SWをフィルターアンプ12に出力する。
【0053】
トランジスタQ2のエミッタは、フィルターアンプ12が直接接続されている接地電位ライン(例えば、抵抗R9と接地電位との接続点)に接続せずに、各チャンネルのアンプ(SWアンプ,SBLアンプ16,SBRアンプ等)が接続されている接地電位ラインに接続されている。これにより、ミックアンプ9からの合成信号がトランジスタQ2を介して接地電位に流れ込む際に、接地電位ラインを介してフィルターアンプ12に流れ込むことを防止し、音質を向上させることができる。
【0054】
フィルターアンプ12は、オペアンプQ4と、抵抗R7〜R10と、コンデンサC1〜C3とを含む。オペアンプQ4は、反転入力端子が、抵抗R6の他端と抵抗R9の他端と抵抗R10の一端とコンデンサC3の一端とに接続されており、非反転入力端子が、抵抗R7の一端と抵抗R8の一端とコンデンサC2の一端とに接続されており、出力端子が、抵抗R10の他端とコンデンサC3の他端とSWアンプ15の入力とに接続されている。抵抗R7の他端とコンデンサC2の他端とは接地電位に接続されている。抵抗R8の他端は、コンデンサC1を介してDAC6の出力(すなわちSW信号ライン)に接続されている。
【0055】
DAC6(SW信号ライン)からオペアンプQ4の非反転入力端子に低域音声信号SWが入力される場合(この時にはトランジスタQ2,Q3がオン状態であるので、ミックアンプQ1からオペアンプQ4の反転入力端子には音声信号が入力されない)、フィルターアンプ12は非反転増幅回路として機能し、オペアンプQ4の非反転入力端子に入力される低域音声信号SWを非反転増幅して、SWアンプ15に出力する。
【0056】
一方、トランジスタQ2,Q3がオフ状態であり、ミックアンプ9からオペアンプQ4の反転入力端子に低域音声信号SWが入力される場合(この時にはDAC6(SW音声信号ライン)からオペアンプQ4の非反転入力端子に低域音声信号SWが入力されない)、フィルターアンプ12は反転増幅回路として機能し、オペアンプQ4の反転入力端子に入力される低域音声信号SWを反転増幅し、SWアンプ15に出力する。従って、反転増幅回路であるミックスアンプ9によって低域音声信号SWの極性が一旦反転されるが、フィルターアンプ12も反転増幅回路として働くので、フィルターアンプ12から出力される低域音声信号SWの極性がミックスアンプ9に入力される前の前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FR(すなわちDAC6からの低域音声信号SW)の極性と等しくすることができる。
【0057】
フィルターアンプ12のゲインは、ゲイン切換部11によって設定される。トランジスタQ2,Q3がオン状態の時には、フィルターアンプ12の非反転増幅回路としてのゲインG1は、1+(R10/(R6//R9)、但し、R6//R9は、R6×R9/(R6+R9)になる。一方、トランジスタQ2,Q3がオフ状態の時には、フィルターアンプ12の反転増幅回路としてのゲインG2は、−R10/(R4+R5+R6)になる。ここで、ミックスアンプ9から供給される低域音声信号SWは、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRを加算して反転したものであるので、その信号レベルが前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FR(DAC6からの地域音声信号SW)の信号レベルの2倍になっている。従って、ゲインG1とゲインG2との関係が、G1=2G2となるように、抵抗R4〜R6,R9,R10の値が設定されている。
【0058】
ミュート駆動部14は、トランジスタQ5,Q6と、抵抗R11〜R14と、コンデンサC4とを含む。トランジスタQ5は、ベースが抵抗R11の一端に接続され、コレクタがトランジスタQ6のベースに接続され、エミッタが接地電位に接続されている。トランジスタQ6は、エミッタが抵抗R12の一端と+12V電源とに接続され、コレクタが抵抗R13の一端に接続されている。抵抗R11の他端は、抵抗R12の他端に接続され、かつ、CPU13から制御信号が入力される。抵抗R13の他端は、ミュート駆動部14の出力端子であり、コンデンサC4を介して接地電位に接続され、抵抗R14を介して−12V電源に接続されている。
【0059】
CPU13からの制御信号がローレベルのとき、トランジスタQ5がオフ状態、トランジスタQ6がオフ状態であり、トランジスタQ2,Q3のベースにローレベルの信号が出力され、トランジスタQ2,Q3がオフ状態になる。CPU13からの制御信号がハイレベルのとき、トランジスタQ5がオン状態、トランジスタQ6がオン状態であり、トランジスタQ2,Q3のベースにハイレベルの信号が出力され、トランジスタQ2,Q3がオン状態になる。
【0060】
AVアンプ100にはダイレクトモードと呼ばれるモードが設けられている。ダイレクトモードは、2ch音声信号(前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FR)が入力された場合に、DSP5によって2ch音声信号から7.1ch音声信号を生成し7.1chの音声を再生するのではなく、2ch音声信号をDSP5で処理せずに、前方左スピーカーSFLおよび前方右スピーカーSFRに直接出力するモードである。ダイレクトモードでは、中央スピーカーSC、低域スピーカーSSW、サラウンド左スピーカーSSL、サラウンド右スピーカーSSR、サラウンド後方左スピーカーSSBLおよびサラウンド後方右スピーカーSSBRから音声が再生できないが、DSP5で処理しないことにより、前方左スピーカーSFLおよび前方右スピーカーSFRから再生される音声の音質を向上できる(音質向上とは、例えばノイズや歪みを低減することである)。
【0061】
ダイレクトモードをオン状態にするか、又は、オフ状態にするかは、ユーザ操作によって設定され、その設定内容がメモリに保存される。ダイレクトモードを設定する場合、例えば図4に示すようなダイレクトモード設定画面が表示部に表示され、ユーザ操作によってオン状態またはオフ状態に設定可能になっている。図4(a)はダイレクトモードがオン状態に設定された場合を、図4(b)はダイレクトモードがオフ状態に設定された場合を示している。
【0062】
AVアンプ100は低域スピーカーSSWを内蔵しているので、ダイレクトモードに設定されているために低域音声信号SWが低域スピーカーSSWから再生されないとユーザに違和感を与える。そこで、本実施形態においては、ダイレクトモードが設定されている場合に、ミックスアンプ9において前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRを合成し、低域音声信号SWを生成し、低域スピーカーSSWから再生する。
【0063】
ミックスアンプ9に供給される前方左音声信号FLは、FL信号ラインから直接ミックスアンプ9に供給されるのではなく、ダイレクトモード時には使用しない(つまり再生されないチャンネルの)信号ラインであるSBL信号ラインを経由してミックスアンプ9に供給される。言い換えると、ミックスアンプ9は、FL信号ラインに直接的には接続されず、SBL信号ラインに接続されている。従って、FL信号ラインを流れる前方左音声信号FLと、ミックアンプ9で生成される低域音声信号SWとが相互に干渉することが無く、前方左音声信号FLにノイズが混入することを防止できる。また、ダイレクトモードオフ時には、スイッチ部7が端子7aを選択することにより、FL信号ラインはミックスアンプ9から完全に切り離され、前方左音声信号FLにノイズが混入することをさらに良好に防止できる。さらに、スイッチ部7と、ミックスアンプ9との間にバッファアンプ20を設けることにより、ミックスアンプ9とFL信号ラインとを分断することができ、前方左音声信号FLにノイズが混入することをさらに良好に防止できる。
【0064】
同様に、ミックスアンプ9に供給される前方右音声信号FRは、FR信号ラインから直接ミックアンプ9に供給されるのではなく、ダイレクトモード時には使用しない(つまり再生されないチャンネルの)信号ラインであるSBR信号ラインを経由してミックスアンプ9に供給される。言い換えると、ミックスアンプ9は、FR信号ラインに直接的に接続されず、SBR信号ラインに接続されている。従って、FR信号ラインを流れる前方右音声信号FRと、ミックアンプ9で生成される低域音声信号SWとが相互に干渉することが無く、前方右音声信号FRにノイズが混入することを防止できる。また、ダイレクトモードオフ時には、スイッチ部8が端子8aを選択することにより、FR信号ラインはミックスアンプ9から完全に切り離され、前方右音声信号FRにノイズが混入することをさらに良好に防止できる。さらに、スイッチ部8と、ミックスアンプ9との間にバッファアンプ21を設けることにより、ミックスアンプ9とFR信号ラインとを分断することができ、前方左音声信号FRにノイズが混入することをさらに良好に防止できる。
【0065】
好ましくは、ダイレクトモードがオン状態の時に低域音声信号SWを低域スピーカーSSWから再生するか否かが、ユーザ操作によって設定され、その設定内容がメモリに保存される。ダイレクトモードにおける低域音声信号SWの出力有無を設定する場合、例えば図5に示すような設定画面が表示部に表示され、ユーザ操作によってオン状態またはオフ状態に設定可能になっている。図5(a)はダイレクトモードにおいて低域音声信号SWを出力する状態に設定された場合を、図5(b)はダイレクトモードにおいて低域音声信号SWを出力しない状態に設定された場合を示している。
【0066】
なお、ダイレクトモードにおいて低域音声信号SWを低域スピーカーSSWから再生するか否かがユーザ操作によって設定される代わりに、入力される音声信号の種類に基づいてCPU13がダイレクトモードにおいて低域音声信号SWを低域スピーカーSSWから再生するか否かを決定してもよい。例えば、ドルビーデジタルやDTSサラウンド等はその規格において低域音声信号SWを再生するように規定されている。従って、これらの信号が入力されたときには、ダイレクトモードにおいて低域音声信号SWを低域スピーカーSSWから再生するように決定され、これらの信号以外が入力されたときには、ダイレクトモードにおいて低域音声信号SWを低域スピーカーSSWから再生されないように決定されてもよい。
【0067】
以上の構成を有するAVアンプ100についてその動作を図2および図3を参照して説明する。
[1.ダイレクトモードがオン状態(低域音声信号SWを出力する場合)]
スイッチ部2は端子2bを選択し、スイッチ部3は端子3bを選択する。従って、前方左音声信号FLはDSP5を経由せずにFLアンプ18に供給され、FLアンプ18で増幅され、前方左スピーカーSFLに出力される。同様に、前方右音声信号FRはDSP5を経由せずにFRアンプ19に供給され、FRアンプ19で増幅され、前方右スピーカーSFRに出力される。
【0068】
スイッチ部7は端子7bを選択し、スイッチ部8は端子8bを選択する。従って、前方左音声信号FLはスイッチ部7及びSBL信号ラインを経由してミックスアンプ9(オペアンプQ1の反転入力端子)に供給される。前方右音声信号FRは、スイッチ部8及びSBR信号ラインを経由してミックスアンプ9(オペアンプQ1の反転入力端子)に供給される。ミックスアンプ9では、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRを加算し、反転増幅し、低域音声信号SWとして出力する。
【0069】
SBLアンプ16およびSBRアンプ17は、ミュート状態に制御されているので、サラウンド後方左スピーカーSSBLおよびサラウンド後方右スピーカーSSBRから前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRがそれぞれ再生されることはない。
【0070】
CPU13は、ローレベルの制御信号をミュート駆動部14のトランジスタQ5に出力する。従って、トランジスタQ5がオフ状態、トランジスタQ6がオフ状態になり、ローレベルの信号がミュート処理部10およびゲイン切換部11に供給される。ミュート処理部10およびゲイン切換部11において、トランジスタQ2,Q3がオフ状態になり、ミュート解除状態になる。その結果、ミックスアンプ9からの低域音声信号SWは、ミュート処理されずにフィルターアンプ12(オペアンプQ4の反転入力端子)に供給される。
【0071】
ADC4にはスイッチ部2およびスイッチ部3から前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRが供給されていないので、DAC6からは低域音声信号SWが出力されない。従って、フィルターアンプ12(オペアンプQ4の非反転入力端子)にはDAC6からの低域音声信号SWは供給されない。
【0072】
フィルターアンプ12は、ミックアンプ9からオペアンプQ4の反転入力端子に供給される低域音声信号SWを反転増幅し、SWアンプ15に出力する。SWアンプ15は、フィルターアンプ12から供給される低域音声信号SWを増幅し、低域スピーカーSSWから音声を再生する。
【0073】
従って、ダイレクトモードにおいて、DSP5が低域音声信号SWを生成しないが、ミックスアンプ9が前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRを合成して低域音声信号SWを生成するので、低域スピーカーSSWから音声を再生できる。
【0074】
[2.ダイレクトモードがオン状態(低域音声信号SWを出力しない場合)]
ここでは、[1]との差異点のみを説明する。CPU13は、ハイレベルの制御信号をミュート駆動部14のトランジスタQ5に出力する。従って、トランジスタQ5がオン状態、トランジスタQ6がオン状態になり、ハイレベルの信号がミュート処理部10およびゲイン切換部11に供給される。ミュート処理部10およびゲイン切換部11において、トランジスタQ2,Q3がオン状態になり、ミュート状態になる。その結果、ミックスアンプ9からの低域音声信号SWは、ミュート処理され、フィルターアンプ12(オペアンプQ4の反転入力端子)に供給されない。その結果、低域スピーカーSSWから低域音声信号SWが再生されない。
【0075】
[3.ダイレクトモードがオフ状態]
スイッチ部2は端子2aを選択し、スイッチ部3は端子3aを選択する。従って、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRはADC4に供給される。ADC4は、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRをアナログ信号からデジタル信号に変換し、DSP5に供給する。DSP5は、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRに基づいて、前方左音声信号FL、前方右音声信号FR、中央音声信号C、低域音声信号SW、サラウンド左音声信号SL、サラウンド右音声信号SR、サラウンド後方左音声信号SBLおよびサラウンド後方右音声信号を生成する。前方左音声信号FLはFLアンプ18に供給され、前方右音声信号FRはFRアンプ19に供給され、低域音声信号SWはフィルターアンプ12に供給され、サラウンド後方左音声信号SBLはスイッチ部7に供給され、サラウンド後方右音声信号SBRはスイッチ部8に供給される。
【0076】
FLアンプ18は、前方左音声信号FLを増幅し、前方左スピーカーSFLから音声を再生する。FLアンプ19は、前方右音声信号FRを増幅し、前方右スピーカーSFRから音声を再生する。
【0077】
スイッチ部7は端子7aを選択し、スイッチ部8は端子8aを選択する。従って、サラウンド後方左音声信号SBLはスイッチ部7を介してミックスアンプ9(オペアンプQ1の反転入力端子)に供給される。サラウンド後方右音声信号SBRは、スイッチ部8を介してミックスアンプ9(オペアンプQ1の反転入力端子)に供給される。ミックスアンプ9では、サラウンド後方左音声信号SBLおよびサラウンド後方右音声信号SBRを加算し、反転増幅し、合成信号を出力する。
【0078】
CPU13はハイレベルの制御信号をミュート駆動部14のトランジスタQ5に出力する。従って、トランジスタQ5がオン状態、トランジスタQ6がオン状態になり、ハイレベルの信号がミュート処理部10およびゲイン切換部11に供給される。ミュート処理部10およびゲイン切換部11において、トランジスタQ2,Q3がオン状態になり、ミュート状態になる。その結果、ミックスアンプ9からの合成信号は、ミュート処理され、フィルターアンプ12(オペアンプQ4の反転入力端子)に供給されない。
【0079】
フィルターアンプ12では、DAC6からオペアンプQ4の非反転入力端子に供給される低域音声信号SWを非反転増幅し、SWアンプ15に供給する。SWアンプ15は、低域音声信号SWを増幅し、低域スピーカーSSWから音声を再生する。
【0080】
SBLアンプ16は、スイッチ部7からサラウンド後方左音声信号SBLが供給され、当該信号を増幅し、サラウンド後方左スピーカーSSBLから音声を再生する。SBRアンプ17は、スイッチ部8からサラウンド後方右音声信号SBRが供給され、当該信号を増幅し、サラウンド後方右スピーカーSSBRから音声を再生する。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。入力される音声信号は、DVDプレーヤからの音声信号に限定されず、その他のソース機器からの音声信号やTV信号に含まれる音声信号でもよい。また、本発明は、AVアンプだけではなく、ディスプレイ装置やゲーム機などにも適用可能である。ミックスアンプ9は、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRから低域音声信号SWを生成するのではなく、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRから中央音声信号C等の他のチャンネルの音声信号を生成してもよい。また、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRから低域音声信号SWを生成するのではなく、サラウンド左音声信号SLおよびサラウンド右音声信号SR等の他のチャンネルの音声信号から低域音声信号SWを生成してもよい。また、前方左音声信号FLおよび前方右音声信号FRが、SBL信号ラインおよびSBR信号ラインを経由してミックスアンプ9に供給されるのではなく、SL信号ラインおよびSR信号ライン等の他の信号ラインを経由してミックスアンプ9に供給されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、AVアンプ等に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0083】
100 AVアンプ
2 スイッチ部
3 スイッチ部
4 ADC
5 DSP
6 DAC
7 スイッチ部
8 スイッチ部
9 ミックスアンプ
10 ミュート処理部
11 ゲイン切換部
12 フィルターアンプ
13 CPU
14 ミュート駆動部
15 SWアンプ
16 SBLアンプ
17 SBRアンプ
18 FLアンプ
19 FRアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号が入力される入力手段と、
第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を合成して第3チャンネル音声信号を生成する合成手段と、
前記合成手段によって生成された第3チャンネル音声信号を第3チャンネルスピーカーに出力する出力手段と、
第1チャンネル音声信号を、第1チャンネル音声信号ラインから、使用されていない第4チャンネル音声信号ラインを経由して、前記合成手段に供給させ、前記第2チャンネル音声信号を、第2チャンネル音声信号ラインから、使用されていない第5チャンネル音声信号ラインを経由して、前記合成手段に供給させる切換手段とを備える、音声処理装置。
【請求項2】
第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号が入力される入力手段と、
第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を、デジタル信号処理部において第3チャンネル音声信号の生成処理を実行せずに、第1チャンネルスピーカーおよび第2チャンネルスピーカーにそれぞれ出力するダイレクトモードを、オン状態又はオフ状態に設定するモード設定手段と、
ダイレクトモードがオン状態の時に、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を合成して第3チャンネル音声信号を生成する合成手段と、
前記合成手段によって生成された第3チャンネル音声信号を第3チャンネルスピーカーに出力する出力手段と、
第1チャンネル音声信号を、第1チャンネル音声信号ラインから、ダイレクトモードがオン状態の時に使用されない第4チャンネル音声信号ラインを経由して、前記合成手段に供給させ、前記第2チャンネル音声信号を、第2チャンネル音声信号ラインから、ダイレクトモードがオン状態の時に使用されない第5チャンネル音声信号ラインを経由して、前記合成手段に供給させる切換手段とを備える、音声処理装置。
【請求項3】
前記合成手段が、第1チャンネル音声信号および第2チャンネル音声信号を加算し、かつ、反転増幅することにより、第3チャンネル音声信号を生成する反転増幅回路を有し、
前記出力手段が、前記反転増幅回路からの第3チャンネル音声信号を反転増幅して出力する増幅回路を有する、請求項1または2に記載の音声処理装置。
【請求項4】
前記増幅回路が、ダイレクトモードがオフ状態の時には、前記合成手段からの信号ラインとは異なる第3チャンネル音声信号ラインから供給される第3チャンネル音声信号を非反転増幅して出力するものであり、
ダイレクトモードがオフ状態の時に前記第3チャンネル音声信号ラインからの第3チャンネル音声信号を非反転増幅する際の前記増幅回路の第1増幅率と、ダイレクトモードがオン状態の時に前記合成手段からの第3チャンネル音声信号を反転増幅する際の前記増幅回路の第2増幅率とを切り換える増幅率切換手段をさらに備える、請求項3に記載の音声処理装置。
【請求項5】
前記増幅率切換手段が、ダイレクトモードがオフ状態の時に、前記合成手段からの音声信号が前記増幅回路に供給されないように、前記合成手段からの音声信号にミュート処理を実行する、請求項4に記載の音声処理装置。
【請求項6】
前記増幅回路が、前記第3チャンネル音声信号ラインから第3チャンネル音声信号が供給される非反転入力端子と、前記合成手段から第3チャンネル音声信号が供給される反転入力端子とを含むオペアンプと、前記反転入力端子と接地電位との間に接続された第1抵抗と、前記反転入力端子と前記オペアンプの出力端子との間に接続された第2抵抗とを含み、
前記増幅率切換手段が、前記反転入力端子と前記合成手段の出力との間に設けられた第3抵抗および第4抵抗と、一端が前記第3抵抗と前記第4抵抗との間に接続され他端が接地電位に接続されたトランジスタとを含み、
ダイレクトモードがオフ状態の時には前記トランジスタがオン状態とされ、ダイレクトモードがオン状態の時には前記トランジスタがオフ状態とされる、請求項4または5に記載の音声処理装置。
【請求項7】
前記第1増幅率が、前記第2増幅率の2倍になるように、前記第1〜第4抵抗の抵抗値が設定されている、請求項6に記載の音声処理装置。
【請求項8】
前記切換手段が、前記第1チャンネル音声信号ラインおよび前記第4チャン音声信号ラインのいずれを、前記合成手段が接続された前記第4チャンネル音声信号ラインに接続するかを切り換える第1スイッチ部と、
前記第2チャンネル音声信号ラインおよび前記第5チャン音声信号ラインのいずれを、前記合成手段が接続された前記第5チャンネル音声信号ラインに接続するかを切り換える第2スイッチ部とを有する、請求項1〜7のいずれかに記載の音声処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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